(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成にあっては操作パネルを開く際と閉じる際とで同じ力が必要となり、操作パネルの姿勢を確実に維持する為に操作パネルを保持する力を大きくすると、操作パネルを開くのに大きな力が必要になってしまう。また逆に、小さな力で操作パネルを開けるようにすると、操作パネルを操作しただけで、操作パネルが閉じてしまう。更に別の課題として、フリクショントルクを発生させる部位と操作パネルとの間に歯車を設けると、歯車のバックラッシュ等により操作パネルが閉方向に戻ってしまうということもある。
【0006】
更に別の課題として、トルクリミッタの負荷で減速のための歯車輪列の歯が撓み、所謂スプリングバックが発生し、操作パネルを所望の角度に止めることができないといった課題も生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、閉方向により強く保持すると共に、より小さな力で開くことのできるチルト部を備える記録装置を得ることにある。また本発明は、これに加えて開いたときの閉方向への戻り量をより小さくできる記録装置を得ることにあり、或いは、スプリングバックを開放でき、スプリングバックによって操作パネルが所望の角度から動くことを抑制できる記録装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為の本発明の第1の態様の記録装置は、回動可能なチルト部と、前記チルト部の角度を保持する保持機構と、前記チルト部と前記保持機構との間で動力を伝達する伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、前記チルト部の上向き方向への回動時には前記保持機構への動力の伝達を切り、前記チルト部の下向き方向への回動時には前記保持機構へ動力を伝達するワンウェイクラッチを備えることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、上記ワンウェイクラッチによってチルト部の上向き方向への回動時には前記保持機構への動力の伝達が切られ、チルト部の上向き方向への回動時には前記保持機構へ動力が伝達されるので、前記チルト部の角度をより確実に保持する為に前記保持機構による保持力を大きくしても、より一層小さいトルクでチルト部を上向き方向に回動させることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記保持機構は、付勢手段により摩擦力を生じさせ、前記摩擦力により前記チルト部の角度を保持することを特徴とする。
本態様によれば、前記保持機構は、付勢手段により摩擦力を生じさせ、前記摩擦力により前記チルト部の角度を保持するので、前記保持機構を構造簡単にして且つ低コストに構成することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の記録装置は、第1の態様において、前記保持機構が、磁力により摩擦力を生じさせ、摩擦力によりチルト部の角度を保持することを特徴とする。本態様によれば、前記保持機構をより小型化することができ、また、トルクの調整のパラメータの数をより多くすることができる。
【0012】
本発明の第4の態様の記録装置は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、前記ワンウェイクラッチが、保持機構の直近に設けられていることを特徴とする。本態様によれば、チルト部側から保持機構側への動力伝達時に最も増速される保持機構の直近に設けられていることにより、チルト部の角度をより確実に保持することができる。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記伝達機構は、前記チルト部側から前記保持機構側に動力を伝達する場合増速し、前記保持機構側から前記チルト部側に動力を伝達する場合減速する歯車群を備えることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、チルト部側から保持機構側に動力を伝達する場合増速され、保持機構側からチルト部側に動力を伝達する場合減速されるので、例えばユーザーがチルト部を上向き方向に持ち上げて回動させ、手を離した場合には、バックラッシに伴うチルト部の戻りは上記増速の作用によって軽減することができる。また、チルト部を操作する際に当該チルト部に下向き方向の力を作用させた場合にも、上記増速側の作用によって、保持機構での保持作用が増幅され、チルト角を確実に保持できる。加えて、チルト部をモーター等により駆動する際には、上記減速の作用によって小さいトルクでチルト部を回動させることができる。
【0015】
本発明の第6の態様の記録装置は、第1から第5の態様のいずれかにおいて、チルト部が、記録装置の本体に対して装着されている部分の両側で伝達機構との間で動力を伝達することを特徴とする。本態様によれば、チルト部が本体に対して傾いてしまうことを防止でき、また、がたつきをより少なくすることができる。
【0016】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記伝達機構は、フライホイールを有することを特徴とする。
本態様によれば、前記伝達機構は、フライホイールを有するので、フライホイールに保存された運動エネルギーによって、伝達機構の撓みが開放され、スプリングバックを抑制でき、チルト部が所望の角度から変位するのを抑制できる。
【0017】
本発明の第8の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記保持機構に、フライホイールが含まれていることを特徴とする。
本態様によれば、前記保持機構に、フライホイールが含まれているので、フライホイールに保存された運動エネルギーによって、伝達機構の撓みが開放され、スプリングバックを抑制でき、チルト部が所望の角度から変位するのを抑制できる。加えて、フライホイールを保持機構の構成部材とすることで、フライホイールを省スペースに配置することができる。
【0018】
本発明の第9の態様の記録装置は、第1から第8の態様のいずれかにおいて、チルト部が、記録装置の操作部を構成する操作パネルであることを特徴とする。本態様によれば、操作パネルをより確実に操作することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1および
図2は、本発明の実施の形態の一例であるプリンター1の外観を示す斜視図である。
図1は、操作パネルを閉じた状態の、本発明の一実施形態に係るプリンター1の外観を示す斜視図であり、
図2は、操作パネルを開いたプリンター1の外観を示す斜視図である。
【0021】
プリンター1は、記録装置の一例である印刷装置であり、被記録媒体の一例である用紙に記録する。プリンター1の本体11には、ユーザーによって操作される操作パネル12が設けられている。本体11は、用紙を搬送する搬送部(不図示)やインクなどによって用紙に文字または画像を描画する記録ヘッド22、この記録ヘッド22及びインクカートリッジ(不図示)を備えるキャリッジ20、全体を制御する制御部(不図示)などが筐体に格納されてなる。なお、ユーザーとは、エンドユーザーに限られず、プリンター1の組立作業またはアフターメンテナンスを行う人など、プリンター1を扱う全ての人を意味する。
【0022】
なお、以下、プリンター1の側面のうち、操作パネル12が設けられている側面を正面と称し、正面側を前とも称する。また、以下、プリンター1の側面のうち、操作パネル12が設けられている側面の対面を背面と称し、背面側を後とも称する。さらに、以下、
図1および
図2中の左側を単に左側と称し、
図1および
図2中の右側を単に右側と称する。
【0023】
以下、操作パネル12について説明する。操作パネル12は、ユーザーによって操作されるパネルである。操作パネル12は、チルト部の一例であり、本体11に対してチルトする(傾ける)ことができる。操作パネル12は、各種の樹脂または金属などで形成されている。操作パネル12には、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどからなる表示部やユーザーによって押圧されるボタンなどからなる入力部が設けられている。
【0024】
図1に示されるように、操作パネル12は、下向き方向の限度まで回動し、閉じられた場合、本体11の面と操作パネル12の面とがほぼ面一になる。また、
図2に示されるように、操作パネル12は、本体11の天板とほぼ平行になるまで、上向き方向の限度まで回動し、開くことができる。なお、操作パネル12は、閉じた状態から本体11の天板とほぼ平行になるまでの途中の任意の傾きの状態に保持することができる。
【0025】
■■■■■第1実施形態■■■■■
図3及び
図4は、伝達機構20の構成を示す図である。操作パネル12は、本体11に設けられているフレーム31に回動自在に軸支されている。すなわち、操作パネル12の右側の端部と左側の端部とがフレーム31に軸支されている。扇形ギヤ32−1および32−2は、操作パネル12に設けられている、いわゆるセクタギヤである。扇形ギヤ32−1および32−2は、フレーム31に軸支されている軸と同軸とされている。扇形ギヤ32−1および32−2は、それぞれ、操作パネル12の右側の端部と左側の端部とに設けられている。
【0026】
フレーム31には、ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、歯車輪列37、クラッチ21、並びにモーター41が設けられている。なお、ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、歯車輪列37、並びにワンウェイクラッチ57は、操作パネル12とクラッチ21との間で動力を伝達する伝達機構20を構成する。ギヤ33、ギヤ34、並びにギヤ36−1および36−2は、平歯車である。
【0027】
ギヤ33は、扇形ギヤ32−1と歯合し、ギヤ34は、扇形ギヤ32−2と歯合する。シャフト35は、フレーム31に回転自在に軸支されている。シャフト35の右側の端部には、ギヤ36−1が設けられ、シャフト35の左側の端部には、ギヤ36−2が設けられている。ギヤ36−1は、ギヤ33と歯合し、ギヤ36−2は、ギヤ34と歯合する。さらに、ギヤ36−1は、歯車輪列37と歯合する。
【0028】
すなわち、操作パネル12がチルトさせられると(操作パネル12が開かれるか閉じられると)、操作パネル12に設けられている扇形ギヤ32−1および32−2が回動するので、扇形ギヤ32−1に歯合しているギヤ33と扇形ギヤ32−2に歯合しているギヤ34とが回転する。さらに、ギヤ33に歯合するギヤ36−1とギヤ34に歯合するギヤ36−2とがシャフト35と共に回転する。そして、ギヤ36−1は、操作パネル12がチルトさせられることによって生じた回転力を歯車輪列37に伝達する。
【0029】
歯車輪列37は、複合歯車の歯車輪列からなる。
図4は、歯車輪列37の構成の詳細を示す図であり、歯車輪列37を背面方向から見た斜視図である。歯車輪列37は、ギヤ51、ギヤ52、ギヤ53、ギヤ54、ギヤ55、ギヤ56からなる。
【0030】
ギヤ51は、ギヤ36−1に歯合するとともに、ギヤ52と同軸に設けられ、ギヤ52と共に回転する。ギヤ51のピッチ円径は、ギヤ52のピッチ円径より小さくされている。ギヤ53は、ギヤ52に歯合するとともに、ギヤ54と同軸に設けられ、ギヤ54と共に回転する。ギヤ53のピッチ円径は、ギヤ54のピッチ円径より小さくされている。また、ギヤ55は、ギヤ54に歯合するとともに、ギヤ56と同軸に設けられ、ギヤ56と共に回転する。ギヤ55のピッチ円径は、ギヤ56のピッチ円径より小さくされている。例えば、歯車輪列37の減速比は、本実施形態では操作パネル12とギヤ58(後述)との回転比が1:50となる様に設定されている。
【0031】
ワンウェイクラッチ57は、スプラグ式またはカム式のワンウェイクラッチであり、操作パネル12が下向き方向に回動する際にはクラッチ21に設けられているギヤ23に回転力(動力)を伝達し、操作パネル12が上向き方向に回動する際にはギヤ23への回転力(動力)の伝達を切る。尚、このワンウェイクラッチ57のより詳しい構成については
図9を参照しつつ後述する第2実施形態の中で説明する。
【0032】
クラッチ21は、保持機構の一例である。クラッチ21は、付勢手段の一例であるばねを用いたばね式の摩擦クラッチである。すなわち、クラッチ21は、付勢力により摩擦力を生じさせる。クラッチ21の構成を
図5および
図6を参照して説明する。
図5は、クラッチ21の構成を示す斜視図である。
図6は、クラッチ21の構成を示す分解図である。クラッチ21は、回転ディスク22、コイルばね24、固定ディスク25、およびストッパー26を含み構成されている。
【0033】
固定ディスク25は、例えば金属材料により形成され、ネジなどにより本体11に固定されている。回転ディスク22は、例えば金属材料により円盤状に形成され、円筒部22a及びギヤ23と一体に形成されている。コイルばね24は、円筒部22aに遊挿され、回転ディスク22を固定ディスク25に向けて付勢する。これにより回転ディスク22は、コイルばね24によって回転ディスク22に押し付けられ、回転ディスク22と固定ディスク25との間に摩擦力が生じる。
【0034】
尚、回転ディスク22において円筒部22aが立ち上がる部分には、円周方向に沿って複数の(本実施形態では4つの)穴22bが形成されており、ストッパー26が備える2つのフック26aと2つの舌片26bが、穴22bに入り込む様になっており、これにより回転ディスク22とストッパー26とが一体となって回転する様に構成されている。また、フック26aは
図5に示す様にコイルばね24を引っ掛ける機能を奏し、これにより圧縮コイルばねであるコイルばね24の付勢力(復元力)が、フック26aと回転ディスク22との間に作用する様になっている。
【0035】
そして以上の様にクラッチ21に生じた摩擦力により、歯車輪列37、ギヤ36−1および36−2、シャフト35、ギヤ34、並びにギヤ33を介して、本体11の天板とほぼ平行になるまで開かれているか、途中まで開かれているか、または閉じられている操作パネル12(のチルトの状態)が保持される。その保持力、つまりクラッチ21の摩擦力は、操作パネル12にボタン押圧力が加わっても操作パネル12が下向き方向に回動しない様に設定される。
【0036】
尚、
図3に示すモーター41は、回転駆動力を発生させる。モーター41の回転駆動力は、図示せぬ歯車輪列を介してシャフト35を回転させ、これにより、ギヤ36−1および36−2、ギヤ33、並びにギヤ34を回転させ、扇形ギヤ32−1および32−2を回動させることで、操作パネル12が開かれる(上向き方向に回動する)。
【0037】
このように、クラッチ21は、操作パネル12の角度を保持する。また、ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、並びに歯車輪列37は、操作パネル12とクラッチ21との間で動力を伝達する。ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、並びに歯車輪列37は、操作パネル12からクラッチ21に動力を伝達する場合増速し、クラッチ21から操作パネル12に動力を伝達する場合減速する構成を有する。歯車輪列37には、操作パネル12の開方向への回動時には動力の伝達を切り、操作パネル12の閉方向への回動時には動力を伝達するワンウェイクラッチ57が設けられている。
【0038】
ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、並びに歯車輪列37が、操作パネル12からクラッチ21に動力を伝達する場合増速し、クラッチ21から操作パネル12に動力を伝達する場合減速し、ワンウェイクラッチ57が、操作パネル12の開方向への回動時には動力の伝達を切り、操作パネル12の閉方向への回動時には動力を伝達するので、例えばユーザーが操作パネル12を上向き方向に持ち上げて回動させ、手を離した場合には、歯車のバックラッシに伴う操作パネル12の戻りは上記増速の作用によって軽減することができる。
【0039】
また、操作パネル12を操作する際に当該操作パネル12に下向き方向の力を作用させた場合にも、上記増速側の作用によって、クラッチ21での保持作用が増幅され、操作パネル12のチルト角を確実に保持できる。加えて、操作パネル12をモーター41により駆動する際には、上記減速の作用によって小さいトルクで操作パネル12を回動させることができるし、ワンウェイクラッチ57によってクラッチ21のトルクはモーター41には掛からないから、より一層小さいトルクで操作パネル12を回動させることができる。
【0040】
すなわち、操作パネル12を押し下げるトルクが押し上げるトルクより大きく設定されている。より詳細には、操作パネル12を押し下げるトルクは、操作パネル12に設けられた入力部であるボタンなどを押圧する力により発生するトルクより大きく設定されている。
【0041】
尚、歯車輪列37が上記増速及び減速の作用を奏しない構成であっても、操作パネル12をモーター41により駆動する際(上向きに回動させる際)にはワンウェイクラッチ57によりクラッチ21のトルクはモーター41には掛からないから、小さいトルクで操作パネル12を回動させることができる。
【0042】
また、クラッチ21が、付勢手段としてのコイルばね24の付勢力により摩擦力を生じさせるので、構造を簡単にすることができる。特に本実施形態では、コイルばね24が回転ディスク22の回転軸線方向に沿って回転ディスク22を付勢するので、付勢力のばらつき、即ちクラッチ21の保持力ばらつきを抑えることができる。
【0043】
さらに、ワンウェイクラッチ57が、クラッチ21の直近に設けられているので、操作パネル12側からクラッチ21側への動力伝達時に最も増速されるクラッチ21の直近に設けられていることにより、チルト角をより確実に保持することができる。
【0044】
さらにまた、操作パネル12が、本体11に対して装着されている部分の両側で、ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、並びに歯車輪列37との間で動力を伝達する。これにより、操作パネル12が本体11に対して傾いてしまうことを防止でき、また、がたつきをより少なくすることができる。
【0045】
以上のように、操作パネル12を開いたとき、バックラッシュなどによる操作パネル12の戻り量をより小さくできる。ワンウェイクラッチ57とクラッチ21とを使用することで、操作パネル12を開くときには軽く、閉じるときには所定のトルクで操作パネル12を保持できるようになる。
【0046】
■■■■■第2実施形態■■■■■
図7乃至
図9は、第2実施形態に係る伝達機構30の構成を示す図である。尚、
図7乃至
図9において、上述した第1実施形態と同一の構成については同一符号を付してあり、以下では適宜重複する説明は省略する。伝達機構30は、上述した第1実施形態と同様に、歯車輪列37、及びワンウェイクラッチ57を有しており、これらが
図7〜
図9に示されている。
以下では先ず、ワンウェイクラッチ57について補足の説明を行うこととする。
【0047】
ワンウェイクラッチ57は、スプラグ式またはカム式のワンウェイクラッチであり、
図9中の反時計回りに回転する場合、即ち操作パネル12が下向き方向に回動する際には回転力(動力)を伝達し、
図9中の時計回りに回転する場合、即ち操作パネル12が上向き方向に回動する際には回転力(動力)の伝達を切る。
【0048】
ワンウェイクラッチ57の内輪71は、ギヤ54側に突出するように形成され、その突出した部分の外側が歯車として成形されている。内輪71の歯車として成形されている部分は、ギヤ56と歯合する。また、ワンウェイクラッチ57の外輪72は、その外側が歯車として成形されている。歯車としての外輪72は、クラッチ38に設けられているギヤ58と歯合する。以上が、ワンウェイクラッチ57の構成である。
【0049】
次に、本実施形態において上述した第1実施形態と異なるのは、クラッチ38である。クラッチ38は、保持機構の一例である。クラッチ38は、磁石式の摩擦クラッチである。すなわち、クラッチ38は、磁力により摩擦力を生じさせる。クラッチ38の構成を
図10および
図11を参照して説明する。
図10は、クラッチ38の構成を示す斜視図である。
図11は、クラッチ38の構成を示す分解図である。クラッチ38は、回転ディスク91、磁石92、固定ディスク93、および両面テープ94を含み構成されている。
【0050】
回転ディスク91は、非磁性体の材料により円盤状に形成され、円筒状のギヤ58と一体に形成されている。回転ディスク91は、固定ディスク93に押しつけられることにより、摩擦力を生じさせる。磁石92は、輪状に形成されている。磁石92の内側の穴の径は、ギヤ58の歯先円径より大きく、磁石92の外径は、回転ディスク91の外径より小さくされている。磁石92の内側の穴が、ギヤ58に通されて、磁石92と回転ディスク91との間の両面テープ94によって、磁石92は回転ディスク91に粘着される。
【0051】
固定ディスク93は、磁性体の材料、例えば、金属などにより形成され、ネジなどにより本体11に固定されている。
図10および
図11に示されるように、回転ディスク91は、磁石92と固定ディスク93とにより挟まれるように配置される。磁石92は、磁性体である固定ディスク93との間に生じる磁力により回転ディスク91を固定ディスク93に押し付ける。これにより、回転ディスク91と固定ディスク93との間に摩擦力が生じる。
【0052】
クラッチ38に生じた摩擦力により、歯車輪列37、ギヤ36−1および36−2、シャフト35、ギヤ34、並びにギヤ33を介して、本体11の天板とほぼ平行になるまで開かれているか、途中まで開かれているか、または閉じられている操作パネル12(のチルトの状態)が保持される。その保持力は、操作パネル12にボタン押圧力が加わっても操作パネル12が下向き方向に回動しない様に設定される。
【0053】
尚、
図7に示すモーター41は、回転駆動力を発生させる。モーター41の回転駆動力は、図示せぬ歯車輪列を介してシャフト35を回転させ、これにより、ギヤ36−1および36−2、ギヤ33、並びにギヤ34を回転させ、扇形ギヤ32−1および32−2を回動させることで、操作パネル12が開かれる(上向き方向に回動する)。
【0054】
このように、クラッチ38は、操作パネル12の角度を保持する。また、ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、並びに歯車輪列37は、操作パネル12とクラッチ38との間で動力を伝達する。ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、並びに歯車輪列37は、操作パネル12からクラッチ38に動力を伝達する場合増速し、クラッチ38から操作パネル12に動力を伝達する場合減速する構成を有する。歯車輪列37には、操作パネル12の開方向への回動時には動力の伝達を切り、操作パネル12の閉方向への回動時には動力を伝達するワンウェイクラッチ57が設けられている。
【0055】
ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、並びに歯車輪列37が、操作パネル12からクラッチ38に動力を伝達する場合増速し、クラッチ38から操作パネル12に動力を伝達する場合減速し、ワンウェイクラッチ57が、操作パネル12の開方向への回動時には動力の伝達を切り、操作パネル12の閉方向への回動時には動力を伝達するので、例えばユーザーが操作パネル12を上向き方向に持ち上げて回動させ、手を離した場合には、歯車のバックラッシに伴う操作パネル12の戻りは上記増速の作用によって軽減することができる。
【0056】
また、操作パネル12を操作する際に当該操作パネル12に下向き方向の力を作用させた場合にも、上記増速側の作用によって、クラッチ38での保持作用が増幅され、操作パネル12のチルト角を確実に保持できる。加えて、操作パネル12をモーター41により駆動する際には、上記減速の作用によって小さいトルクで操作パネル12を回動させることができるし、ワンウェイクラッチ57によってクラッチ38のトルクはモーター41には掛からないから、より一層小さいトルクでチルト部を回動させることができる。
【0057】
すなわち、操作パネル12を押し下げるトルクが押し上げるトルクより大きく設定されている。より詳細には、操作パネル12を押し下げるトルクは、操作パネル12に設けられた入力部であるボタンなどを押圧する力により発生するトルクより大きく設定されている。
【0058】
尚、歯車輪列37が上記増速及び減速の作用を奏しない構成であっても、操作パネル12をモーター41により駆動する際(上向きに回動させる際)にはワンウェイクラッチ57によりクラッチ38のトルクはモーター41には掛からないから、小さいトルクで操作パネル12を回動させることができる。
【0059】
また、クラッチ38が、磁力により摩擦力を生じさせ、摩擦力により操作パネル12の角度を保持する。従って、より小型化することができ、また、トルクの調整のパラメータの数をより多くすることができる。具体的には、本実施形態では回転ディスク91の外径や厚み、回転ディスク91と固定ディスク93との間の摩擦係数、磁石92の磁力(磁石92の外径や厚み)、などによってトルク調整が可能である。
【0060】
さらに、ワンウェイクラッチ57が、クラッチ38の直近に設けられているので、操作パネル12側からクラッチ38側への動力伝達時に最も増速されるクラッチ38の直近に設けられていることにより、チルト角をより確実に保持することができる。
【0061】
さらにまた、操作パネル12が、本体11に対して装着されている部分の両側で、ギヤ33、ギヤ34、シャフト35、ギヤ36−1および36−2、並びに歯車輪列37との間で動力を伝達する。これにより、操作パネル12が本体11に対して傾いてしまうことを防止でき、また、がたつきをより少なくすることができる。
【0062】
以上のように、操作パネル12を開いたとき、バックラッシュなどによる操作パネル12の戻り量を小さくできる。ワンウェイクラッチ57とクラッチ38とを使用することで、操作パネル12を開くときには軽く、閉じるときには所定のトルクで操作パネル12を保持できるようになる。
【0063】
磁石式の摩擦クラッチであるクラッチ38を採用したので、バネ受けを設ける必要がなく、軸方向により小さくすることができる。さらに、クラッチ38が磁石式の摩擦クラッチなので、磁石92の力、磁石92と固定ディスク93との距離(回転ディスク91の厚さ)、固定ディスク93の厚み、および回転ディスク91の外径の4つのパラメータで操作パネル12を保持するトルクの調整が可能になる。
【0064】
■■■■■第3実施形態■■■■■
また、摩擦力を生じさせるクラッチに、フライホイールとしての機能を付与することもできる。
図12は、他の実施形態に係るクラッチを含む構成の詳細を示す斜視図である。尚、本実施形態においても上述した第1及び第2実施形態と同一の構成については同一符号を付してあり、以下では適宜重複する説明は省略する。
図12において伝達機構30は、上述した第1、第2実施形態と同様に、歯車輪列37、及びワンウェイクラッチ57を有している。但し、ワンウェイクラッチ57は
図12においてクラッチ111の陰に隠れており、図示はされていない。
【0065】
また、
図12に示される操作パネル12、扇形ギヤ32−1、ギヤ33、シャフト35、ギヤ36−1、および歯車輪列37、のこれらについても、
図3、
図4、
図7乃至
図9に示される場合と同様なのでその説明は省略する。なお、ワンウェイクラッチ57の外輪72であって、歯車としての外輪72は、クラッチ111に設けられているギヤ121と歯合する。
【0066】
クラッチ111は、保持機構の一例である。クラッチ111は、フライホイールとしての機能が付与されている、磁石式の摩擦クラッチである。すなわち、クラッチ111は、磁力により摩擦力を生じさせる。また、クラッチ111は、回転により運動エネルギーを保存する。クラッチ111の構成を
図13および
図14を参照して説明する。
図13は、クラッチ111の構成を示す斜視図である。
図14は、クラッチ111の構成を示す分解図である。
【0067】
クラッチ111は、回転ディスク131、磁石132、固定ディスク133、フライホイール134、および両面テープ135を含み構成されている。回転ディスク131は、非磁性体の材料により円盤状に形成されている。また、回転ディスク131は、円筒状のギヤ121およびフライホイール134と一体に形成されている。回転ディスク131は、固定ディスク133に押しつけられることにより、摩擦力を生じさせる。
【0068】
磁石132は、輪状に形成されている。磁石132の内側の穴の径は、ギヤ121の歯先円径より大きく、磁石132の外径は、回転ディスク131の外径より小さくされている。磁石132の内側の穴が、ギヤ121に通されて、磁石132と回転ディスク131との間の両面テープ135によって、磁石132は回転ディスク131に粘着される。
【0069】
固定ディスク133は、磁性体の材料、例えば、金属などにより形成され、ネジなどにより本体11に固定されている。
図13および
図14に示されるように、回転ディスク131は、磁石132と固定ディスク133とにより挟まれるように配置される。磁石132は、磁性体である固定ディスク133との間に生じる磁力により回転ディスク131を固定ディスク133に押し付ける。これにより、回転ディスク131と固定ディスク133との間に摩擦力が生じる。
【0070】
フライホイール134は、回転ディスク131の外側に、回転ディスク131と同軸の円盤状に形成される。
図13および
図14に示されるクラッチ111において、フライホイール134は、固定ディスク133との干渉を防止するために、回転ディスク131に対して軸方向にオフセットして形成されている。フライホイール134の慣性モーメントは、回転ディスク131の慣性モーメントに比較して大きくされている。フライホイール134は、回転することにより、運動エネルギーを保存する。
【0071】
クラッチ111に生じた摩擦力により、歯車輪列37、ギヤ36−1および36−2、シャフト35、ギヤ34、並びにギヤ33を介して、本体11の天板とほぼ平行になるまで開かれているか、途中まで開かれているか、または閉じられている操作パネル12(のチルトの状態)が保持される。
【0072】
また、操作パネル12が閉じられたとき、クラッチ111のフライホイール134が、回転し、運動エネルギーを保存するので、その運動エネルギーにより、歯車輪列37の撓みが開放され、歯車輪列37の撓みによるスプリングバックを抑えることができる。そのため、操作パネル12が開側に押し戻されることがなくなり、或いはその程度を軽減できる。従って、本体11との間に隙間を生じさせることなく、操作パネル12を確実に閉じることができる。
【0073】
またトルクリミッタを用いると、静止摩擦から動摩擦に変化する場合、操作力が変化してしまう。これに対して、フライホイール134を用いた場合、トルクリミッタのように静止摩擦係数に頼らないため、所定の角度で操作パネル12を保持している状態から操作パネル12を動かし始める動作への移行がスムースになる。
【0074】
さらに、回転ディスク131と固定ディスク133との間の摩擦力と、回転ディスク131の慣性モーメントとを同時に用いることで、クラッチ111の動き始めの回転負荷を大きくすることができ、より強い力(トルク)で操作パネル12を保持することができる。回転ディスク131と固定ディスク133との間の摩擦力を小さくすることで、スプリングバックの影響をより小さくすることができる。
【0075】
以上のように、開いたときの閉方向への戻り量をより小さくして、閉方向により強く保持すると共に、より小さな力で開くことができる。
尚、本実施形態ではフライホイール134をクラッチ111の構成要素としてが、クラッチ111の外側、例えば伝達機構30の構成要素としても良い。その際、伝達機構30においてクラッチ111の直近にフライホイールを設けることで、歯車輪列37の撓みによるスプリングバックを効果的に抑えることができる。
【0076】
なお、プリンター1は、印刷装置であると説明したが、印刷装置、複写機、またはファクシミリ装置その他の装置である記録装置であってもよい。
【0077】
また、操作パネル12に限らず、スキャナユニットのヒンジ部、スキャナのドキュメントカバーなど、重力方向に開閉し、かつ途中で角度保持が必要な部位に適用が可能である。
【0078】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。