特許第6044763号(P6044763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044763
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20161206BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B41J2/14 303
   B41J2/14 603
   B41J2/18
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-217983(P2012-217983)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2013-144430(P2013-144430A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2015年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-276297(P2011-276297)
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】堂前 美徳
(72)【発明者】
【氏名】小関 修
(72)【発明者】
【氏名】山村 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 禅
(72)【発明者】
【氏名】堀口 悟史
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−069127(JP,A)
【文献】 特開2011−207172(JP,A)
【文献】 特開2011−104791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が供給される供給ポートと、
液体を排出する排出ポートと、
前記供給ポートに連通する液体供給室と、
前記排出ポートに連通する液体排出室と、
前記液体供給室と前記液体排出室に連通し、前記液体供給室と前記液体排出室の間に並列して設置される複数のチャンネルからなるチャンネル列と、
複数の前記チャンネルにそれぞれ連通する複数のノズルと、
前記液体供給室から前記液体排出室に液体をバイパスさせる連絡路と、を備える、
液体噴射ヘッドにおいて、さらに、
前記チャンネル列が形成されるアクチュエータ基板と、
前記液体供給室と前記液体排出室を備え、前記アクチュエータ基板に接合されるカバープレートと、
前記供給ポートと前記排出ポートを備え、前記カバープレートに接合される流路部材と、
前記ノズルを備え、前記アクチュエータ基板に接合されるノズルプレートと、を備え、
前記連絡路は、前記チャンネルよりも液体の流路抵抗が小さく、かつ前記カバープレートに設置されている、
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記連絡路は、前記供給ポートの位置から最も離れたチャンネルの近傍に設置される請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記供給ポートは前記液体供給室又は前記液体排出室の長手方向における略中央に位置し、前記連絡路は前記チャンネル列の列方向における両端近傍にそれぞれ設置される請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記供給ポートは前記液体供給室の長手方向の一方の端部に位置し、前記連絡路は前記長手方向の他方の端部に対応する前記チャンネル列の端部の近傍に設置される請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記供給ポートは前記液体供給室の長手方向の一方の端部に位置し、前記排出ポートは前記液体排出室の長手方向の他方の端部に位置し、前記連絡路は前記チャンネル列の列方向における両端近傍にそれぞれ設置される請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記供給ポートは前記液体供給室の長手方向の一方の端部に位置し、前記排出ポートは前記液体排出室の長手方向の他方の端部に位置し、前記連絡路は前記長手方向の他方の端部に対応する前記チャンネル列の端部の近傍に設置される請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記チャンネル列はダミーチャンネルと吐出チャンネルが交互に配列し、
前記カバープレートは前記液体供給室及び前記液体排出室と前記チャンネル列との間にスリットを備え、
前記液体供給室及び前記液体排出室と前記吐出チャンネルとは前記スリットを介して連通し、前記ノズルは前記吐出チャンネルに連通する請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に図形や文字を記録する、あるいは機能性薄膜を形成する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字、図形を記録する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、チャンネルに充填したインクや液体材料をチャンネルに連通するノズルから吐出させる。インクの吐出の際には、液体噴射ヘッドや噴射した液体を記録する被記録媒体を移動させて、文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。
【0003】
特許文献1には、この種の液体噴射ヘッド100が記載されている。図7は、特許文献1の図5(a)に示される液体噴射ヘッドの斜視図である。液体噴射ヘッド100は、ノズルプレート101と、圧電プレート102と、カバープレート103と、流路部材104の積層構造を有する。圧電プレート102は、複数のチャンネルが配列するチャンネル列が形成される。カバープレート103は、複数のチャンネルの開口部を閉塞し、各チャンネルに液体を供給するための液体供給室106と、各チャンネルから液体を排出するための液体排出室107とを備える。流路部材104は、外部の図示しない液体タンクから液体を流入する供給用継手105aと液体タンクに液体を戻す排出用継手105bを備える。ノズルプレート101は吐出チャンネル110aに連通するノズル112を備える(図8参照)。
【0004】
図示しない液体タンクから供給される液体は、供給用継手105aから液体供給室106に流入し、複数のチャンネルからなるチャンネル列に充填され、更にチャンネル列から液体排出室107に流出し、排出用継手105bから液体タンクに戻される。従って、駆動時は液体が常に循環する。液体に混入した気泡や塵埃は循環する液体とともに液体タンク側に戻されるので、ノズルの目詰まりの発生が低減する。そのため、液体噴射ヘッド100の液交換や、クリーニングなどのメンテナンスが容易となり、クリーニング時に消費する液体の量が低減し、被記録媒体の消費量も低下するので、ランニングコストの上昇を抑えることができる利点を有する。特許文献2にも液体循環型のインクジェットヘッドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−93200号公報
【特許文献2】特許第4263742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8(a)は、液体噴射ヘッド100の流路部材104を除去したカバープレート103の平面模式図であり、図8(b)は液体噴射ヘッド100の部分AAの断面模式図であり、図8(c)は部分BBの断面模式図である。
【0007】
図8(c)の部分拡大図に示すように、圧電プレート102には吐出チャンネル110aとダミーチャンネル110bが交互に配列する。カバープレート103の液体供給室106及び液体排出室107の圧電プレート102側には複数のスリット109が形成される。吐出チャンネル110aはスリット109を介して液体供給室106に連通し、ダミーチャンネル110bはカバープレート103により閉塞される。
【0008】
流路部材104の供給用継手105aは液体供給室106の長手方向のほぼ中央に位置し、流路部材104の排出用継手105bは液体排出室107の長手方向のほぼ中央に位置する。液体は、供給用継手105aから流入すると液体供給室106の両端部まで充填され、各吐出チャンネル110aを流れて液体排出室107に排出され、排出用継手105bから図示しない液体タンクに戻される。
【0009】
しかし、この種の液体噴射ヘッド100は、図8(c)に示すように、液体中に混入した気泡111がスリット109の端部に付着して液体供給室106内に滞留することがある。スリット109の開口部に気泡111が付着すると吐出チャンネル110aに液体が供給されず、一定条件で液滴を吐出することができなくなる。この気泡111を取り除くために供給用継手105a側から液体を圧送しても、吐出チャンネル110aの流路抵抗が大きいので、吐出チャンネル110aを通して液体排出室107側に気泡111を排出することができないことがある。液体に気泡111が混入した場合でも、この気泡111を外部に除去することができる液体噴射ヘッド100が望まれる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、液体に混入した気泡を外部に迅速に排出することができる液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体が供給される供給ポートと、液体を排出する排出ポートと、前記供給ポートに連通する液体供給室と、前記排出ポートに連通する液体排出室と、前記液体供給室と前記液体排出室に連通し、前記液体供給室と前記液体排出室の間に並列して設置される複数のチャンネルからなるチャンネル列と、複数の前記チャンネルにそれぞれ連通する複数のノズルと、前記液体供給室から前記液体排出室に液体をバイパスさせる連絡路と、を備えることとした。
【0012】
また、前記連絡路は、前記供給ポートの位置から最も離れたチャンネルの近傍に設置されることとした。
【0013】
また、前記供給ポートは前記液体供給室又は前記液体排出室の長手方向における略中央に位置し、前記連絡路は前記チャンネル列の列方向における両端近傍にそれぞれ設置されることとした。
【0014】
また、前記供給ポートは前記液体供給室の長手方向の一方の端部に位置し、前記連絡路は前記長手方向の他方の端部に対応する前記チャンネル列の端部の近傍に設置されることとした。
【0015】
また、前記供給ポートは前記液体供給室の長手方向の一方の端部に位置し、前記排出ポートは前記液体排出室の長手方向の他方の端部に位置し、前記連絡路は前記チャンネル列の列方向における両端近傍にそれぞれ設置されることとした。
【0016】
また、前記供給ポートは前記液体供給室の長手方向の一方の端部に位置し、前記排出ポートは前記液体排出室の長手方向の他方の端部に位置し、前記連絡路は前記長手方向の他方の端部に対応する前記チャンネル列の端部の近傍に設置されることとした。
【0017】
また、前記連通路は前記チャンネルよりも液体の流路抵抗が小さいこととした。
【0018】
また、前記チャンネル列が形成されるアクチュエータ基板と、前記液体供給室と前記液体排出室を備え、前記アクチュエータ基板に接合されるカバープレートと、前記供給ポートと前記排出ポートを備え、前記カバープレートに接合される流路部材と、前記ノズルを備え、前記アクチュエータ基板に接合されるノズルプレートと、を備えることとした。
【0019】
また、前記チャンネル列はダミーチャンネルと吐出チャンネルが交互に配列し、前記カバープレートは前記液体供給室及び前記液体排出室と前記チャンネル列との間にスリットを備え、前記液体供給室及び前記液体排出室と前記吐出チャンネルとは前記スリットを介して連通し、前記ノズルは前記吐出チャンネルに連通することとした。
【0020】
また、前記連絡路は前記カバープレートに設置されることとした。
【0021】
また、前記連絡路は前記アクチュエータ基板に設置されることとした。
【0022】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれかに記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0023】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体が供給される供給ポートと、液体を排出する排出ポートと、供給ポートに連通する液体供給室と、排出ポートに連通する液体排出室と、液体供給室と液体排出室に連通し、液体供給室と液体排出室の間に並列して設置される複数のチャンネルからなるチャンネル列と、複数のチャンネルにそれぞれ連通する複数のノズルと、液体供給室から液体排出室に液体をバイパスさせる連絡路と、を備える。これにより、液体に混入する気泡を液体供給室の端部に押し流し、連絡路を介して液体排出室から外部に除去して、チャンネルやチャンネル開口部に気泡が付着して吐出特性が劣化することを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の液体噴射ヘッドの基本的な構成を示す概念図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドを説明するための図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの縦断面模式図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドを説明するための図である。
図5】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な斜視図である。
図6】本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
図7】従来公知の液体噴射ヘッドの斜視図である。
図8】従来公知の液体噴射ヘッドの模式図である。
図9】本発明の第六実施形態に係る液体噴射ヘッドを説明するための図である。
図10】本発明の第七実施形態に係る液体噴射ヘッドを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(基本構成)
図1(a)、(b)、(c)は、本発明による液体噴射ヘッド1の基本的な構成を示す概念図である。本発明の液体噴射ヘッド1は、液体が供給される供給ポート2と、液体を排出する排出ポート3と、供給ポート2に連通する液体供給室4と、排出ポート3に連通する液体排出室5と、一方の端部が液体供給室4に連通し、他方の端部が液体排出室5に連通し、液体供給室4と液体排出室5の間に並列して設置される複数のチャンネル6からなるチャンネル列7と、複数のチャンネル6にそれぞれ連通する複数のノズル8とを備える。液体噴射ヘッド1は、更に、液体供給室4から液体排出室5に液体をバイパスさせる連絡路9を備える。
【0026】
図1(a)に示す液体噴射ヘッド1は、供給ポート2が液体供給室4の長手方向における略中央に位置する。そのため連絡路9はチャンネル列7の列方向の両端近傍に設置される。また、図1(b)に示す液体噴射ヘッド1は、供給ポート2が液体供給室4の長手方向における一方の端部に位置する。そのため連絡路9は液体供給室4の長手方向の他方の端部に対応するチャンネル列7の端部の近傍に設置される。さらに、図1(c)に示す液体噴射ヘッド1は、供給ポート2が液体供給室4の長手方向における一方の端部に位置する。そして、排出ポート3が液体排出室5の長手方向における他方の端部に位置する。連絡路9はチャンネル列7の列方向の両端近傍に設置される。
【0027】
図示しない液体タンクから供給ポート2に液体が流入すると、液体供給室4は液体により満たされ、液体供給室4に連通するチャンネル列7の各チャンネル6に液体が流入する。各チャンネル6に流入した液体は、一部がノズル8から吐出され、その他は液体排出室5に流出して排出ポート3から液体タンクに戻される。
【0028】
更に、連絡路9を設置したので、供給ポート2から離れた液体供給室4の領域内においても液体の流れが生ずる。その結果、供給ポート2から離れたチャンネル6の液体供給室4に開口する開口部を横切る方向に液体の流れが発生し、この流れによってチャンネル6の開口部に気泡が付着し難くなる。これにより、液体中に気泡が混入しても、気泡は開口部を横切る方向の液体の流れにより液体供給室4の端部に押し流され、連絡路9を介して液体排出室5から外部に除去される。また、チャンネル6の開口部に気泡が付着した場合でも、供給ポート2から液体を圧送することにより、この付着した気泡を連絡路9に押し流し、液体排出室5及び排出ポート3を介して容易に除去することができ、メンテナンスが容易となる。
【0029】
なお、連絡路9は供給ポート2の位置から最も離れたチャンネル6の近傍に設置するのが好ましい。図1(a)に示す液体噴射ヘッド1では供給ポート2が液体供給室4の長手方向における略中央に位置し、供給ポート2の位置から最も離れたチャンネル6はチャンネル列7の両端のチャンネル6となり、この両端のチャンネル6の近傍に連絡路9が設置される。図1(b)に示す液体噴射ヘッド1では供給ポート2が液体供給室4の長手方向における一方の端部に位置し、供給ポート2の位置から最も離れたチャンネル6はチャンネル列7の上記一方の端部の反対側の他方の端部のチャンネル6となり、このチャンネル6の近傍に連絡路9が設置される。連絡路9をこのように設置することにより、全てのチャンネル6において液体供給室4に開口する開口部を横切る方向に液体の流れが発生し、この流れによって全てのチャンネル6の開口部に気泡が付着し難くなる。
【0030】
図1(c)に示す液体噴射ヘッド1では上述した図1(a)、(b)の基本構成と、チャンネル6の長手方向において、供給ポート2と排出ポート3が正面に向き合わずに位置している点が異なっている。言い換えれば、ノズル配列方向において、供給ポート2は液体供給室4の一方の端部に位置し、排出ポート3は液体排出室5の他方の端部に位置している。
【0031】
これにより、供給ポート2と排出ポート3が対面していないので、一方のポートに不図示のチューブを取り付ける際に、他方のポートに取り付けられている不図示のチューブが邪魔にならないので取り付けやすいという効果がある。
【0032】
なお、図1(c)に示す連通路9は、ノズル配列方向一端側および他端側の両方に配置したが、この形態に限られるものではない。連通路9は、ノズル配列方向一端側および他端側の片側に配置するように構成してもよい。連通路9を一端側にのみ配置する場合は、ノズル配列方向の他端側のポートを供給ポート2とするのが好ましい。これによって、一端側の供給ポート2から流入した液体が液体供給室4を通過する際に、捕捉した気泡や異物は液体供給室4を通って他端側へ移動し他端側に位置する連通路9から液体排出室5を介して排出ポート3から排出することができる。
なお、連通路9を両方に配置した場合は、どちらのポートを流入側としても、流入側のポートから遠い連通路9が上述した気泡や異物を排出するのに役立つ。つまり、どちらのポートでも供給ポート2(あるいは排出ポート3)として使用することができる。
【0033】
また、連絡路9の溝幅や溝の深さをチャンネル6の溝幅や溝の深さよりも大きくして、液体供給室4と液体排出室5の間の連絡路9の流路抵抗をチャンネル6の流路抵抗より小さくすることが好ましい。なお、後に説明するように、チャンネル列7を吐出チャンネルとダミーチャンネルが交互に配列し、スリットを介してチャンネル6に液体を流入させる場合には、このスリットの溝幅よりも連絡路9の溝幅を大きくすることが好ましい。以下、実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0034】
(第一実施形態)
図2は、本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図である。図2(a)は流路部材14を除去した液体噴射ヘッド1の上面模式図であり、図2(b)は部分CCの縦断面模式図であり、図2(c)は部分DDの縦断面模式図であり、図2(d)は部分EEの縦断面模式図であり、図2(e)は部分Rの拡大図である。
【0035】
図2(b)に示すように、液体噴射ヘッド1は、ノズルプレート12とアクチュエータ基板10とカバープレート11と流路部材14の積層構造を備える。図2(c)及び(e)に示すように、アクチュエータ基板10は吐出チャンネル6aとダミーチャンネル6bが交互に配列するチャンネル列7を備える。カバープレート11は、細長い凹部からなる液体供給室4と液体排出室5とを備え、その凹部の底部にはスリット13が形成され、このスリット13を介して吐出チャンネル6aと液体供給室4及び液体排出室5とが連通する。ダミーチャンネル6bはカバープレート11により閉塞される。
【0036】
流路部材14は供給ポート2と排出ポート3とを備える。供給ポート2は液体供給室4に連通し液体供給室4の略中央の位置に設置され、排出ポート3は液体排出室5に連通し液体排出室5の略中央の位置に設置される。流路部材14のカバープレート11側は、液体供給室4及び液体排出室5のそれぞれに対応して凹部17が形成され、液体供給室4又は液体排出室5の一部を構成し、液体供給室4及び液体排出室5の流路容積を拡大させる。ノズルプレート12は、複数の吐出チャンネル6aにそれぞれ連通する複数のノズル8を備える。
【0037】
連絡路9は、液体供給室4の供給ポート2が接続される位置から最も離れた吐出チャンネル6aの近傍、即ちチャンネル列7の列方向の両端近傍に設置される。図2(a)及び図2(d)に示すように、連絡路9はカバープレート11の液体供給室4及び液体排出室5のチャンネル列7の列方向の両端部に、液体供給室4と液体排出室5に跨って設置される。連絡路9の流路抵抗は吐出チャンネル6a及びスリット13の流路抵抗よりも小さく形成する。
【0038】
このように、供給ポート2が接続される位置から最も離れたチャンネル6の近傍に液体供給室4から液体排出室5に液体をバイパスさせる連絡路9を設けたので、供給ポート2から離れた液体供給室4の領域に液体の流れが生ずる。その結果、スリット13の開口部を横切る液体の流れが強くなり、スリット13の開口部に気泡が付着し難くなる。また、スリット13の開口部に気泡が付着した場合でも、供給ポート2から液体を圧送することにより、付着した気泡を連絡路9に押し流し、液体排出室5及び排出ポート3を介して容易に除去することができる。
【0039】
(第二実施形態)
図3は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の縦断面模式図である。図3図2(c)に対応する断面図である。第一実施形態と異なる部分は、流路部材14に設けた供給ポート2の位置と連絡路9の設置位置であり、その他の部分は第一実施形態と同様である。従って、以下異なる部分について説明する。
【0040】
図3に示すように、供給ポート2は流路部材14の一方の端部側に設置される。連絡路9は供給ポート2が設置される位置から最も離れた吐出チャンネル6aの近傍に設置され、液体供給室4から図示しない液体排出室に液体をバイパスさせる。図示しない排出ポートは、供給ポート2と同じく流路部材14の一方の端部に設置してもよいし、供給ポート2とは異なって流路部材14の他方の端部に設置してもよい。その他の構成は、第一実施形態と同様なので説明を省略する。
【0041】
このように連絡路9を設置すれば、供給ポート2から離れた液体供給室4の領域に液体の流れが生ずる。その結果、スリット13の開口部を横切る液体の流れが強くなり、スリット13の開口部に気泡が付着し難くなる。また、スリット13の開口部に気泡が付着した場合でも、供給ポート2から液体を圧送することにより、付着した気泡を連絡路9に押し流し、液体排出室5及び排出ポート3を介して容易に除去することができる。
【0042】
(第三実施形態)
図4は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図であり、図4(a)が図2(d)に対応し、連絡路9の縦断面模式図であり、図4(b)が図2(e)に対応する。第一実施形態と異なる部分は、連絡路9をアクチュエータ基板10に形成した点であり、その他の部分は第一実施形態と同様である。従って、以下異なる部分について説明する。
【0043】
図4に示すように、アクチュエータ基板10の供給ポート2から最も離れた吐出チャンネル6aの近傍に連絡路9を形成する。そして、カバープレート11の液体供給室4をアクチュエータ基板10の連絡路9の上部まで延設し、液体供給室4の底部に貫通孔15を形成し、連絡路9に連通させる。同様に、図示しない液体排出室を連絡路9の上部まで延設し、液体排出室5の底部に貫通孔15’を形成し、連絡路9に連通させる。これにより、液体供給室4の端部は貫通孔15、連絡路9及び貫通孔15’を介して連絡する。なお、第一実施形態のように液体供給室4と液体排出室5の間のカバープレート11の一部16を除去して連絡路9としてもよい。このように形成すれば、連絡路9の流路抵抗をチャンネル6a及びスリット13の流路抵抗よりも容易に小さく形成することができる。
【0044】
以上の実施形態において、アクチュエータ基板10に1本のチャンネル列7を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。チャンネル列7が複数本形成される液体噴射ヘッド1において、供給ポート2の位置から最も離れた吐出チャンネル6aの近傍に、液体供給室4から液体排出室5に液体をバイパスさせる連絡路9を形成する場合も本発明に含まれる。
【0045】
(第四実施形態)
図5は本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1の模式的な斜視図である。図5(a)は液体噴射ヘッド1の全体斜視図であり、図5(b)は液体噴射ヘッド1の内部斜視図である。
【0046】
図5に示すように、液体噴射ヘッド1はノズルプレート12とアクチュエータ基板10とカバープレート11と流路部材14の積層構造を備え、この積層構造は第一〜第三実施形態と同じである。ノズルプレート12とアクチュエータ基板10はy方向の幅がカバープレート11と流路部材14のy方向の幅よりも長く、カバープレート11はアクチュエータ基板10の一方の端部が露出するように接合される。アクチュエータ基板10の露出する上面には図示しない電極端子が形成される。カバープレート11はそのx方向の両端部に液体供給室4と液体排出室5とを連通する連絡路9を備える。
【0047】
流路部材流路部材14は、カバープレート11側の表面に開口しカバープレート11の液体供給室4と液体排出室5に対応する位置に図示しない凹部を備え、カバープレート3とは反対側の表面に液体供給室4に連通する供給ポート2と液体排出室5に連通する排出ポート3とを備える。
【0048】
フレキシブル基板21はアクチュエータ基板10の露出する上面に接合されている。フレキシブル基板21には図示しない多数の配線電極が形成され、アクチュエータ基板10の露出する上面に形成される図示しない電極端子と電気的に接続される。フレキシブル基板21はその表面に駆動回路としてのドライバIC28や接続コネクタ29を備える。ドライバIC28は、接続コネクタ29から入力した信号に基づいて図示しないチャンネル6を駆動するための駆動信号を生成し、図示しない電極端子を介して図示しない駆動電極に供給する。
【0049】
ベース30はノズルプレート12、アクチュエータ基板10、カバープレート11及び流路部材14の積層体を収納する。ベース30の下面にノズルプレート12の液体噴射面が露出する。フレキシブル基板21はベース30の側面から外部に引き出され、ベース30の外側面に固定される。ベース30はその上面に2つの貫通孔を備え、液体供給用の供給チューブ31aが一方の貫通孔を貫通して供給ポート2に接続し、液体排出用の排出チューブ31bが他方の貫通孔を貫通して排出ポート3に接続する。
【0050】
流路部材14を設け、上方から液体を供給し上方へ液体を排出するように構成するとともに、フレキシブル基板21にドライバIC28を実装し、フレキシブル基板21をz方向に折り曲げて立設した。フレキシブル基板21は液体の吐出面とは反対側の、アクチュエータ基板10の上面に接合するので、配線周りの空間を十分確保することができる。また、ドライバIC28やアクチュエータ部2は駆動時に発熱するが、熱はベース30や流路部材14を介して内部を流れる液体に伝導される。即ち、被記録媒体の記録用液体を冷却媒体として利用し、内部で発生した熱を効率よく外部に放熱することができる。そのため、ドライバIC28やアクチュエータ基板10の過熱による駆動能力の低下を防止することができる。また、溝内を液体が循環するとともに連絡路9を形成したので、気泡が混入した場合でもその気泡を外部に迅速に排出でき、無駄に液体を使用せず、記録不良による被記録媒体の無駄な消費を抑制することができる。これにより、信頼性の高い液体噴射ヘッド1を提供することが可能となる。
【0051】
<液体噴射装置>
(第五実施形態)
図6は本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置50の模式的な斜視図である。液体噴射装置50は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給し、液体噴射ヘッド1、1’から液体を回収する流路部35、35’と、流路部35、35’及び液体噴射ヘッド1、1’に液体を循環させる液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’とを備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は複数の吐出溝を備え、各吐出溝に連通するノズルから液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’は既に説明した第一〜第四実施形態のいずれかを使用する。
【0052】
液体噴射装置50は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して循環させる液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40とを備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0053】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39とを備えている。
【0054】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に循環させる。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0055】
(第六実施形態)
図9は、本発明の第六実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図である。図9に示す第六実施形態が上述した実施形態と異なる点は、連通路9がカバープレート11にのみ形成されている点と、連通路9がノズル配列方向端部ではなくノズル配列方向中央に形成されている点にある。
【0056】
まず、図9(b)に示すように、連通路9はカバープレート11の液体供給室4と液体排出室5の間のカバープレート11の一部を除去して形成している。除去した一部の厚み方向の深さは、カバープレート11の厚みの略半分ほどの深さや、液体供給室4とスリット13の境界となる深さと同等の深さで形成することができる。言い換えれば、連通路9はカバープレート11の流路部材側に所定深さで形成した凹部と、該凹部の上面を覆うようにカバープレート11に接合した流路部材14の接合面で構成された流路である。
【0057】
次に、図9(a)に示すように、連通路9はノズル配列方向の略中央の位置に形成されている。さらに、連通路9の幅W1は、液体供給室4と液体排出室5の幅W2および全てのスリット13の幅を合計した幅より狭く形成した。さらに、連通路9のチャンネル形成方向の断面積は、液体供給室4と液体排出室5のノズル配列方向の断面積および全てのスリット13の断面積を合計した断面積より小さく形成した。これにより、連通路9、液体供給室4、液体排出室5およびスリット13との流路構成において、気泡は連通路9を通過するとともに、液体は連通路9ではなく液体供給室4、液体排出室5およびスリット13を通過するように構成することができる。
【0058】
(第七実施形態)
図10は、本発明の第七実施形態に係る液体噴射ヘッド1を説明するための図である。図10に示す第七実施形態が上述した第六実施形態と異なる点は、連通路9がノズル配列方向中央ではなくノズル配列方向両端部に形成されている点にある。連通路9がカバープレート11にのみ形成されている点は、第六実施形態と第七実施形態で共通している。
【0059】
まず、図10(a)に示すように、連通路9はノズル配列方向の両端部の位置に形成されている。さらに、連通路9の幅W1は、液体供給室4と液体排出室5の幅W2および全てのスリット13の幅を合計した幅より狭く形成した。さらに、連通路9のチャンネル形成方向の断面積は、液体供給室4と液体排出室5のノズル配列方向の断面積および全てのスリット13の断面積を合計した断面積より小さく形成した。これにより、連通路9、液体供給室4、液体排出室5およびスリット13との流路構成において、気泡は連通路9を通過するとともに、液体は連通路9ではなく液体供給室4、液体排出室5およびスリット13を通過するように構成することができる。
【0060】
次に、図10(d)に示すように、連通路9はカバープレート11の液体供給室4と液体排出室5の間のカバープレート11の一部を除去して形成している。除去した一部の厚み方向の深さは、カバープレート11の厚みの略半分ほどの深さや、スリット13の深さと同等の深さで形成することができる。言い換えれば、連通路9はカバープレート11のアクチュエータ基板10側に所定深さで形成した凹部と、該凹部の下面を覆うようにカバープレート11に接合したアクチュエータ基板10の接合面で構成された流路である。
【符号の説明】
【0061】
1 液体噴射ヘッド
2 供給ポート
3 排出ポート
4 液体供給室
5 液体排出室
6 チャンネル、6a 吐出チャンネル、6b ダミーチャンネル
7 チャンネル列
8 ノズル
9 連絡路
10 アクチュエータ基板
11 カバープレート
12 ノズルプレート
13 スリット
14 流路部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10