(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044765
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ボイラのブローイングアウト用仮設配管系統およびブローイングアウト方法
(51)【国際特許分類】
F22B 37/48 20060101AFI20161206BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20161206BHJP
F01K 7/22 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F22B37/48 Z
F01D25/00 R
F01K7/22 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-233125(P2012-233125)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-85037(P2014-85037A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
(74)【代理人】
【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 剛
(72)【発明者】
【氏名】中本 充
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−153005(JP,A)
【文献】
特開平07−332014(JP,A)
【文献】
特開平10−331607(JP,A)
【文献】
特開平02−218803(JP,A)
【文献】
特開2010−127224(JP,A)
【文献】
特開昭54−005104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/48
F01D 25/00
F01K 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器(2)で発生した蒸気が蒸気ドラム(1)を介して過熱器(3)、主蒸気管(4)および高圧側の蒸気タービン(5)に供給される主蒸気系統(A)と、前記高圧側の蒸気タービン(5)に供給された蒸気が低温再熱蒸気管(7)を介して再熱器(8)と高温再熱蒸気管(9)と中低圧又は低圧側の蒸気タービン(10)に供給される再熱蒸気系統(B)とを備えたボイラの運転開始に先立ち、主蒸気系統(A)と再熱蒸気系統(B)を蒸気によりブローイングするボイラのブローイングアウト用仮設配管系統において、
主蒸気系統(A)には高圧側の蒸気タービン(5)をバイパスして系統外へ蒸気が流れる主蒸気系統用仮設配管(11)と再熱蒸気系統(B)には中低圧または低圧側の蒸気タービン(10)をバイパスして系統外へ蒸気が流れる再熱蒸気系統用仮設配管(13)を設け、
主蒸気系統用仮設配管(11)と再熱蒸気系統用仮設配管(13)にそれぞれ遮断弁(18、20)を設け、
各遮断弁(18、20)の後流側に各配管(11、13)の合流仮設配管(17)を設け、
該合流仮設配管(17)に清掃効果を確認するためのテストピース(14)を設け、
さらに、主蒸気系統用仮設配管(11)に設けた遮断弁(18)をバイパスして主蒸気管(4)から低温再熱蒸気管(7)に向けて蒸気を流す第1系統連絡用仮設配管(12a)と第2系統連絡用仮設配管(12b)を順次設けて過熱器(3)の出口側の蒸気を再熱器(8)の入口側に流す系統連絡用仮設配管(12)を構成し、
第1系統連絡用仮設配管(12a)には遮断弁(19)を設け、
第1系統連絡用仮設配管(12a)と第2系統連絡用仮設配管(12b)との間に異物捕集装置(15)を設けた
ことを特徴とするボイラのブローイングアウト用仮設配管系統。
【請求項2】
異物捕集装置(15)は、異物を含んだ蒸気が流入する第1系統連絡用仮設配管(12a)に接続する入口部(22)と、該入口部(22)に続く異物と蒸気を分離する分岐部(23)と、該分岐部(23)で分離した蒸気が低温再熱蒸気管(7)に接続する第2系統連絡用仮設配管(12b)に流れた後に残った異物を含んだ蒸気が流入する曲管部(24)と、該曲管部(24)に続く逆流防止部(30)と、異物捕集部(25)を順次設けた構成からなることを特徴とする請求項1記載のボイラのブローイングアウト用仮設配管系統。
【請求項3】
請求項1に記載のボイラのブローイングアウト用仮設配管系統を用いたボイラのブローイングアウト方法において、
まず、主蒸気系統用仮設配管(11)の遮断弁(18)を開き、第1系統連絡用仮設配管(12a)の遮断弁(19)を閉じて、蒸発器(2)で発生した主蒸気系統用の最大動圧の蒸気を主蒸気系統(A)から主蒸気系統用仮設配管(11)を介して合流仮設配管(17)に設けたテストピース(14)に流して主蒸気系統(A)のブローイングアウトによる清掃状況を検査し、
次に、主蒸気系統用仮設配管(11)に設けた遮断弁(18)を閉じ、第1系統連絡用仮設配管(12a)の遮断弁(19)を開き、再熱蒸気系統用仮設配管(13)に設けた遮断弁(20)を開いて、蒸発器(2)で発生した主蒸気系統用の最大動圧より大きい動圧の蒸気を主蒸気系統(A)から第1系統連絡用仮設配管(12a)、異物捕集装置(15)、第2系統連絡用仮設配管(12b)、低温再熱蒸気管(7)、再熱蒸気系統(B)及び再熱蒸気系統用仮設配管(13)を順次経由して合流仮設配管(17)に設けたテストピース(14)に流して再熱蒸気系統(B)のブローイングアウトによる清掃状況を検査することを特徴とするボイラのブローイングアウト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主蒸気系統と再熱蒸気系統とを有するボイラの蒸気系統に対して行うブローイングアウトにおける異物捕集装置を有するブローイングアウト用仮設配管系統と、前記ブローイングアウト用仮設配管系統によるブローイングアウト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設を完了したボイラは、蒸気タービンに蒸気を通気する前にボイラ内の異物が蒸気タービンに持ち込まれて蒸気タービンのブレードを損傷させないことを目的として、ボイラ自身から蒸気を発生させて、その蒸気の流体力を用いて異物をボイラ内から除去する操作を行う必要があり、このような操作を一般にブローイングアウトと呼んでいる。
【0003】
図4に再熱器8を有するボイラおよび従来のブローイングアウトの系統を示す。
図4に示すボイラは、蒸発器2で発生した蒸気が蒸気ドラム1を介して過熱器3、主蒸気管4および高圧側の蒸気タービン5に供給される主蒸気系統Aと、前記高圧側の蒸気タービン5に供給された蒸気が低温再熱蒸気管7を介して再熱器8、高温再熱蒸気管9および中低圧または低圧側の蒸気タービン10に供給される再熱蒸気系統Bとを有している。
【0004】
再熱器8を有するボイラの場合、再熱蒸気系統Bには蒸発器2がないため、蒸気タービン5をバイパスさせる形で主蒸気出口と再熱蒸気系統Bを結ぶ仮設の配管である系統連絡用仮設配管12によって、主蒸気系統Aからの発生蒸気を再熱蒸気系統Bに流すことによってブローイングアウトを実施している。
【0005】
すなわち、前記主蒸気系統Aには高圧側の蒸気タービン5をバイパスして系統外へ蒸気が流れる主蒸気系統用仮設配管11と、前記再熱蒸気系統Bには中低圧または低圧側の蒸気タービン10をバイパスして系統外へ蒸気が流れる再熱蒸気系統用仮設配管13を設け、前記それぞれの仮設配管11、13には遮断弁18、20を設け、主蒸気系統用仮設配管11と再熱蒸気系統用仮設配管13には合流仮設配管17を接続し、該合流仮設配管17に清掃効果を確認するためのテストピース14とを設け、さらに、遮断弁18をバイパスして主蒸気系統用仮設配管11から低温再熱蒸気管7に接続する系統連絡用仮設配管12を設け、該系統連絡用仮設配管12には遮断弁19を設けている。
【0006】
再熱蒸気系統Bは主蒸気を用いてブローイングアウトすることから、先ず蒸気源である主蒸気系統Aの主蒸気系統用仮設配管11に発生蒸気を流すことによってブローイングアウトし、その後で再熱蒸気系統Bのブローイングアウトを実施している。
【0007】
すなわち、まず主蒸気系統用仮設配管11の遮断弁18を開き、系統連絡用仮設配管12の遮断弁19を閉じて、蒸発器2で発生した主蒸気系統用の最大動圧の蒸気を主蒸気系統Aから主蒸気系統用仮設配管11を経由して流して合流仮設配管17に設けたテストピース14により主蒸気系統Aのブローイングアウトによる清掃状況を検査する。
【0008】
次に、主蒸気系統用仮設配管11の遮断弁18を閉じて、系統連絡用仮設配管12の遮断弁19を開き、再熱蒸気系統用仮設配管13の遮断弁20を開として、蒸発器2で発生した前記した主蒸気系統用の最大動圧より大きな動圧の蒸気を主蒸気系統Aから系統連絡用仮設配管12、低温再熱蒸気管7、前記再熱蒸気系統B及び再熱蒸気系統用仮設配管13を経由して流して合流仮設配管17に設けたテストピース14により再熱蒸気系統Bのブローイングアウトによる清掃状況を検査する。
【0009】
ブローイングアウトの成否は、ボイラ運転時にその内部で発生する最も動圧が大きくなる計画蒸気条件に対して、その最大発生動圧以上となる蒸気条件にてブローイングアウトを実施して、ボイラ運転中に飛散する可能性のある異物をボイラ外に排出できたか否かによる。ブローイングアウトの実施によって異物がボイラ外に排出できたか否かの確認は、合流仮設配管17の蒸気通過部に設置するテストピース14によって判定する。異物がある場合は、ブローイングアウトで飛散した異物がテストピース14に衝突し、打痕が残るので、打痕によってタービン5、10を損傷させる可能性のある異物が無いことを確認して、ブローイングアウトは終了となる。
【0010】
一例として、主蒸気系統Aの計画蒸気条件である最大発生動圧が34,000[N/m
2]であれば、主蒸気系統Aのブローイングアウト時に流す蒸気は34,000[N/m
2]以上の動圧とする必要がある。また、再熱蒸気系統Bの計画蒸気条件である最大発生動圧が8,500[N/m
2]であれば、再熱蒸気系統Bのブローイングアウト時に流す蒸気は最大発生動圧以上の8,500[N/m
2]以上とする必要がある。ただし、再熱蒸気系統Bのブローイングアウトは主蒸気系統Aからの発生蒸気を再熱蒸気系統Bに流すため、再熱蒸気系統Bで動圧を8,500[N/m
2]以上とするには、主蒸気系統Aでは51,000[N/m
2]以上の動圧が発生する。
【0011】
下記特許文献1にはボイラで生成した蒸気を蒸気タービンに供給する蒸気管路中に存在する異物をバイパス管路でのブローイングアウトによって除去して異物を回収する異物回収装置において、バイパス管路の途中に設けられた直管状の管路に対してほぼ直角に曲がる屈曲部と該屈曲部の蒸気進入方向の先の部分に設けられた逆流防止手段を有する筒状の異物回収部とからなる異物回収装置が開示されている。
【0012】
下記特許文献2にはボイラで生成した蒸気を高圧蒸気タービンに供給する蒸気管路と、蒸気タービンから排出した蒸気を再熱管で再度加熱して低圧蒸気タービンに供給する構成において、高圧蒸気タービン及び低圧蒸気タービンを迂回するバイパス管路に蒸気を流して蒸気管路中に存在する異物をブローイングアウトする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平2−218803号公報
【特許文献2】特開昭61−261604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記特許文献2及び
図4に示す再熱機を有するボイラにおけるブローイングアウトのための系統では次のような問題がある。
すなわち、例えば
図4に示す主蒸気系統Aと再熱蒸気系統Bではそれぞれ運転条件が大きく異なるため運転時に内部で発生しうる最大動圧も大きく異なる。そのため再熱蒸気系統Bをブローイングアウトする際に主蒸気系統Aで発生させる動圧が、主蒸気系統Aのブローイングアウトより相当大きくなるにもかかわらず、再熱蒸気系統Bに蒸発器2がないことから、主蒸気系統Aと再熱蒸気系統Bを仮設の配管11、12で接続した一連の流路とし、主蒸気系統Aで発生する蒸気により再熱蒸気系統Bをブローイングアウトしている。
【0015】
そのため、再熱蒸気系統Bのブローイングアウトを行う際には、主蒸気系統Aをブローイングアウトするのに必要な本来の動圧に対して過剰な動圧が主蒸気系統A内に加わることになり、主蒸気系統Aをブローイングアウトした時には飛散しなかった異物が主蒸気系統Aから再熱蒸気系統Bへと飛散してくることによって再熱蒸気系統Bに異物が供給される状況となりブローイングアウト時間の長期化を招いている。
【0016】
また、ブローイングアウト時間の長期化によってブローイングアウトの実施に必要な燃料および純水のようなユーティリティの消費量も膨大となっている。
本発明の課題は、以上のような問題を解消するためになされたもので、ブローイングアウトに要する期間を短縮でき、残留異物に対する管理を緩和できるブローイングアウト用仮設配管系統の構成とそのブローイングアウト方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記目的を達成するために、検討を重ねたところ、(1)再熱蒸気系統をブローイングアウトする場合は主蒸気系統内での発生動圧が大きくなり、異物が再熱蒸気系統に飛散する可能性があること、(2)一旦再熱蒸気系統に持ち込まれた異物は再熱蒸気系統で大きな動圧を確保することが困難であることから飛散しにくいこと、上記(1),(2)によってブローイングアウトが長期化する問題を解決するためには、再熱蒸気系統のブローイングアウト中に主蒸気系統から異物を持ち込まないことが有効であることの知見を得た。
【0018】
本発明は以上の知見に基づいてなされたものである。
すなわち、請求項1記載の発明は、蒸発器(2)で発生した蒸気が蒸気ドラム(1)を介して過熱器(3)、主蒸気管(4)および高圧側の蒸気タービン(5)に供給される主蒸気系統(A)と、前記高圧側の蒸気タービン(5)に供給された蒸気が低温再熱蒸気管(7)を介して再熱器(8)と高温再熱蒸気管(9)と中低圧又は低圧側の蒸気タービン(10)に供給される再熱蒸気系統(B)とを備えたボイラの運転開始に先立ち、主蒸気系統(A)と再熱蒸気系統(B)を蒸気によりブローイングするボイラのブローイングアウト用仮設配管系統において、
主蒸気系統(A)には高圧側の蒸気タービン(5)をバイパスして系統外へ蒸気が流れる主蒸気系統用仮設配管(11)と再熱蒸気系統(B)には中低圧または低圧側の蒸気タービン(10)をバイパスして系統外へ蒸気が流れる再熱蒸気系統用仮設配管(13)を設け、主蒸気系統用仮設配管(11)と再熱蒸気系統用仮設配管(13)にそれぞれ遮断弁(18、20)を設け、各遮断弁(18、20)の後流側に各配管(11、13)の合流仮設配管(17)を設け、該合流仮設配管(17)に清掃効果を確認するためのテストピース(14)を設け、さらに、主蒸気系統用仮設配管(11)に設けた遮断弁(18)をバイパスして主蒸気管(4)から低温再熱蒸気管(7)に向けて蒸気
を流す第1系統連絡用仮設配管(12a)と第2系統連絡用仮設配管(12b)を順次設け
て過熱器(3)の出口側の蒸気を再熱器(8)の入口側に流す系統連絡用仮設配管(12)を構成し、第1系統連絡用仮設配管(12a)には遮断弁(19)を設け、第1系統連絡用仮設配管(12a)と第2系統連絡用仮設配管(12b)との間に異物捕集装置(15)を設けたことを特徴とするボイラのブローイングアウト用仮設配管系統である。
【0019】
請求項2記載の発明は、異物捕集装置(15)は、異物を含んだ蒸気が流入する第1系統連絡用仮設配管(12a)に接続する入口部(22)と、該入口部(22)に続く異物と蒸気を分離する分岐部(23)と、該分岐部(23)で分離した蒸気が低温再熱蒸気管(7)に接続する第2系統連絡用仮設配管(12b)に流れた後に残った異物を含んだ蒸気が流入する曲管部(24)と、該曲管部(24)に続く逆流防止部(30)と、異物捕集部(25)を順次設けた構成からなることを特徴とする請求項1に記載のボイラのブローイングアウト用仮設配管系統である。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載のボイラのブローイングアウト用仮設配管系統を用いたボイラのブローイングアウト方法において、
まず、主蒸気系統用仮設配管(11)の遮断弁(18)を開き、第1系統連絡用仮設配管(12a)の遮断弁(19)を閉じて、蒸発器(2)で発生した主蒸気系統用の最大動圧の蒸気を主蒸気系統(A)から主蒸気系統用仮設配管(11)を介して合流仮設配管(17)に設けたテストピース(14)に流して主蒸気系統(A)のブローイングアウトによる清掃状況を検査し、
次に、主蒸気系統用仮設配管(11)に設けた遮断弁(18)を閉じ、第一系統連絡用仮設配管(12a)の遮断弁(19)を開き、再熱蒸気系統用仮設配管(13)に設けた遮断弁(20)を開いて、蒸発器(2)で発生した主蒸気系統用の最大動圧より大きい動圧の蒸気を主蒸気系統(A)から第1系統連絡用仮設配管(12a)、異物捕集装置(15)、第2系統連絡用仮設配管(12b)、低温再熱蒸気管(7)、再熱蒸気系統(B)及び再熱蒸気系統用仮設配管(13)を順次経由して合流仮設配管(17)に設けたテストピース(14)に蒸気を流して再熱蒸気系統Bのブローイングアウトによる清掃状況を検査することを特徴とするボイラのブローイングアウト方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のブローイングアウトによれば、主蒸気系統Aを蒸気源とした再熱蒸気系統Bのブローイングアウトにおいて、主蒸気系統Aから飛散してくる可能性がある異物が再熱蒸気系統Bに入る前に仮設の配管設備内で捕集することにより、ブローイングアウト中の再熱蒸気系統Bへの異物の持込が無くなり、元々再熱蒸気系統B内に残留していた異物のみを対象としたブローイングアウトを実施できる。
【0022】
従って、ブローイングアウトに要する期間の短縮ができ、燃料や純水などのユーティリティの消費量も低減できるため、経済的な効果を見込める。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例の再熱器を有するボイラのブローイングアウトの系統を示す図である。
【
図2】
図1のブローイングアウトの系統に用いられる異物捕集装置の構造図(
図2(a)は平面図、
図2(b)は側面図、
図2(c)は
図2(a)の矢印A’方向から見た図)である。
【
図3】従来技術の異物捕集装置の構造図(側面図)である。
【
図4】従来技術の再熱器を有するボイラのブローイングアウトの系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
図1は、本発明に係わる再熱器を有するボイラおよび本発明のブローイングアウトの系統を示す。以下、
図1を参照して本発明の実施例を説明する。
【0025】
図1に示すボイラは、蒸発器2で発生した蒸気が蒸気ドラム1を介して過熱器3、主蒸気管4および高圧側の蒸気タービン5に供給される主蒸気系統Aと、前記高圧側の蒸気タービン5に供給された蒸気が低温再熱蒸気管7を介して再熱器8、高温再熱蒸気管9および中低圧または低圧側の蒸気タービン10に順次供給される再熱蒸気系統Bとを有している。
【0026】
再熱器8を有するボイラの場合、再熱蒸気系統Bには蒸発器2がないため蒸気タービン5をバイパスさせる形で主蒸気出口と再熱蒸気系統Bを結ぶ仮設の配管である第1系統連絡用仮設配管12aと、第2系統連絡用仮設配管12bによって、主蒸気系統Aからの発生蒸気を再熱蒸気系統Bに流すことによってブローイングアウトを実施している。
【0027】
すなわち、主蒸気系統Aには高圧側の蒸気タービン5をバイパスして系統外へ蒸気が流れる主蒸気系統用仮設配管11を設け、再熱蒸気系統Bには中低圧または低圧側の蒸気タービン10をバイパスして系統外へ蒸気が流れる再熱蒸気系統用仮設配管13を設け、前記それぞれの仮設配管11、13には遮断弁18、20を設け、さらに、主蒸気系統用仮設配管11に遮断弁18を設ける。
【0028】
さらに、主蒸気系統用仮設配管11に設けた遮断弁18をバイパスして低温再熱蒸気管7に接続する第1系統連絡用仮設配管12aと第2系統連絡用仮設配管12bを順次設け、第1系統連絡用仮設配管12aには遮断弁19を設け、さらに第1系統連絡用仮設配管12aと第2系統連絡用仮設配管12bの間には異物捕集装置15を設ける。
【0029】
再熱蒸気系統Bは主蒸気を用いてブローイングアウトすることから、先ず蒸気源である主蒸気系統Aを主蒸気管4の出口の仮設の配管である主蒸気系統用仮設配管11に主蒸気系統Aで発生した蒸気を流すことによってブローイングアウトし、その後で再熱蒸気系統Bのブローイングアウトを実施している。
【0030】
すなわち、まず主蒸気系統用仮設配管11の遮断弁18を開き、第1系統連絡用仮設配管12aの遮断弁19を閉として、蒸発器2で発生した主蒸気系統用の最大動圧の蒸気を主蒸気系統Aから主蒸気系統用仮設配管11を介して合流仮設配管17に設けたテストピース14に向けて順次流して主蒸気系統Aのブローイングアウトによる清掃状況を検査する。
【0031】
次に、主蒸気系統用仮設配管11の遮断弁18を閉じて、第1系統連絡用仮設配管12aの遮断弁19と再熱蒸気系統用仮設配管13の遮断弁20を開いて、蒸発器2で発生した主蒸気系統用の最大動圧より大きな動圧の蒸気を主蒸気系統Aから第1系統連絡用仮設配管12aと第2系統連絡用仮設配管12b、低温再熱蒸気管7、再熱蒸気系統B、高温再熱蒸気管9及び再熱蒸気系統用仮設配管13を介して合流仮設配管17に設けたテストピース14に向けて順次流して再熱蒸気系統のブローイングアウトをする。
【0032】
このブローイングアウトによる清掃状況を検査する際に、第1系統連絡用仮設配管12aと第2系統連絡用仮設配管12bの間に設けた異物捕集装置15により主蒸気系統Aからの主蒸気系統用の最大動圧より大きな動圧の蒸気により、発生した異物を捕集する。
【0033】
ブローイングアウトの成否は、ボイラ運転時にその内部で発生する最も動圧が大きくなる計画蒸気条件に対して、その最大発生動圧以上となる蒸気条件でブローイングアウトを実施して、ボイラ運転中に飛散する可能性のある異物をボイラ外に排出できたか否かによる。
【0034】
上記ブローイングアウトの実施によって異物がボイラ外に排出できたか否かの確認は、合流仮設配管17に設置するテストピース14によって判定する。異物がある場合は、ブローイングアウトで飛散した異物がテストピース14に衝突して打痕が残るので、打痕によってタービン5、10を損傷させる可能性のある異物が無いことを確認して、ブローイングアウトは終了となる。
【0035】
一例として、主蒸気系統Aの計画蒸気条件である最大発生動圧が34,000[N/m
2]であれば、主蒸気系統Aのブローイングアウト時に流す蒸気は34,000[N/m
2]以上の動圧とする必要がある。また、再熱蒸気系統Bの計画蒸気条件である最大発生動圧が8,500[N/m
2]であれば、再熱蒸気系統Bのブローイングアウト時に流す蒸気は最大発生動圧以上の8,500[N/m
2]以上とする必要がある。
【0036】
ただし、再熱蒸気系統Bのブローイングアウト時には、主蒸気系統Aからの発生蒸気を再熱蒸気系統Bに流すため、再熱蒸気系統で動圧を8,500[N/m
2]以上とするには、主蒸気系統Aでは51,000[N/m
2]以上の動圧が発生する。再熱器8を有するボイラの場合、再熱蒸気系統Bには蒸発器2がないため蒸気タービン5、10をバイパスさせる形で主蒸気出口と再熱蒸気系統Bを結ぶ仮設の配管である第1、第2系統連絡用仮設配管12a、12bを経由して主蒸気系統Aからの発生蒸気を再熱蒸気系統Bに流すことによってブローイングアウトを実施している。
【0037】
再熱蒸気系統Bは主蒸気を用いてブローイングアウトすることから、先ず蒸気源である発生蒸気を主蒸気管4の出口の仮設の配管である主蒸気系統用仮設配管11に流すことによってブローイングアウトし、その後で再熱蒸気系統Bのブローイングアウトを実施している。
【0038】
ブローイングアウトの成否は、ボイラ運転時にその内部で発生する最も動圧が大きくなる計画蒸気条件に対して、その最大発生動圧以上となる蒸気条件によりブローイングアウトを実施して、ボイラ運転中に飛散する可能性のある異物をボイラ外に排出できたか否かによる。ブローイングアウトの実施によって異物がボイラ外に排出できたか否かの確認は、仮設の配管11、13が合流する仮設配管17に設けた蒸気通過部に設置するテストピース14によって判定する。異物がある場合は、ブローイングアウトで飛散した異物がテストピース14に衝突し、打痕が残るので、打痕によってタービンを損傷させる可能性のある異物が無いことを確認して、ブローイングアウトは終了となる。
【0039】
一例として、主蒸気系統Aの計画蒸気条件である最大発生動圧が34,000[N/m
2]であれば、主蒸気系統Aのブローイングアウト時に流す蒸気は34,000[N/m
2]以上の動圧とする必要がある。また、再熱蒸気系統Bの計画蒸気条件である最大発生動圧が8,500[N/m
2]であれば、再熱蒸気系統Bのブローイングアウト時に流す蒸気は最大発生動圧以上の8,500[N/m
2]以上とする必要がある。ただし、再熱蒸気系統Bのブローイングアウトは主蒸気系統Aからの発生蒸気を再熱蒸気系統Bに流すため、該再熱蒸気系統Bで動圧を8,500[N/m
2]以上とするには、主蒸気系統Aでは51,000[N/m
2]以上の動圧が発生する。
【0040】
本発明の再熱蒸気系統Bのブローイングアウトは、
図1の蒸発器2で発生した飽和蒸気を蒸気ドラム1で汽水分離し、過熱器3で過熱された蒸気を用いる。この蒸気は、主蒸気管4と再熱蒸気系統Bを結ぶ仮設の配管である第1系統連絡用仮設配管12a、第2系統連絡用仮設配管12bを通り、低温再熱蒸気管7、再熱器8及び高温再熱蒸気管9に供給され、再熱蒸気系統Bの出口の仮設の配管である再熱蒸気系統用仮設配管13から系外へ放出する。
【0041】
主蒸気管4と再熱蒸気系統Bを結ぶ系統を、主蒸気管4の出口と異物捕集装置15を結ぶ仮設の配管である第1系統連絡用仮設配管12a、異物捕集装置15、第2系統連絡用仮設配管12bとすることで、再熱蒸気系統ブローイングアウト中に主蒸気系統Aから蒸気とともに持ち込まれる主蒸気系統Aの異物を異物捕集装置15で捕集し、再熱蒸気系統Bに異物が持ち込まれることを防止する。
【0042】
図2は、ブローイングアウト用の仮設の配管である第1系統連絡用仮設配管12aと第2系統連絡用仮設配管12bの間に設置する異物捕集装置15の構造図である。
図2(a)は平面図、
図2(b)は側面図、
図2(c)は
図2(a)の矢印A'方向から見た図である。以下、
図2を参照して異物捕集装置15の構造を説明する。
【0043】
第1系統連絡用仮設配管12aと第2系統連絡用仮設配管12bを接続する異物捕集装置15の入口部22での動圧が、低温再熱蒸気管7の発生動圧より小さくなる様に大きな径に拡大し、流入する蒸気の流速を低下させることによって、低温再熱蒸気管7内において飛散しにくい大きさもしくは質量を有する異物を捕集する。
【0044】
分岐部23で流速の低下した蒸気は異物捕集装置15と低温再熱蒸気系統7を結ぶ第2系統連絡用仮設配管12bに流れる。一方、蒸気とともに持ち込まれた主蒸気系統Aの異物については分岐部23を直進し、曲管部(例えば下向きエルボ)24で渦流となって流れ、異物捕集部25に流入する。異物捕集部25の入口には逆流防止板30を設け、捕集した異物が逆流して再び蒸気に搬送されることを抑制する。異物捕集部25の先端には端板となる閉止板26を設け、さらに閉止板26には開放可能な清掃用ノズル27を設置して、異物捕集部25に捕集された異物29を清掃できる機能を有する。
【0045】
前記曲管部24の内面に沿った部分で発生する流体の渦流により複雑な流れとなり、逆流防止板30の中央部に渦流が発生するため、曲管部24の中央部分を通過して端板となる閉止板26に直進する流れからの逆流は防止され、これにより捕集された異物の舞い上がりによる第2系統連絡用仮設配管12b側への流出を防止できる。
【0046】
これに対し、従来、知られている異物捕集装置を
図3に示す。
図3において、管路の入口部36からの異物を含んだ流体は管体34を直進し、異物捕集部35の端面となる閉止板37に衝突して捕集されるが、捕集された異物38は管体34の出口部で逆流しやすい。このため異物の舞い上がりが管体出口部39から外部に流出しやすい。
【符号の説明】
【0047】
1 蒸気ドラム 2 蒸発器
3 過熱器 4 主蒸気管
5 高圧タービン 6 再熱蒸気系統
7 低温再熱蒸気管 8 再熱器
9 高温再熱蒸気管 10 中低圧タービン
11 主蒸気管出口の仮設の配管
12a 第1系統連絡用仮設配管
12b 第2系統連絡用仮設配管
13 再熱蒸気系統出口の仮設の配管
14 テストピース 15 異物捕集装置
16 異物捕集装置と再熱蒸気系統を結ぶ仮設の配管
17 合流仮設配管 18,19,20 遮断弁
22 入口部 23 分岐部
24 曲管部(下向きエルボ)
25 異物捕集部 26 端板となる閉止板
27 清掃用ノズル 29 捕集された異物
A 主蒸気系統 B 再熱蒸気系統