(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記用紙を前記読取部で読み取って得た読み取り画像における前記用紙のエッジ位置を、前記高濃度部と前記用紙の地の色との濃度差に基づいて検出し、該検出したエッジ位置を基準に前記読み取り画像の中の前記キャリブレーション用の画像の位置を特定する解析部を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な用紙サイズのキャリブレーションチャートを画像読取装置で読み取り、その読み取り画像内でのパッチの位置を自動検出する場合、用紙のエッジ位置を検出できれば、ここを基準にしてパッチの位置を正確に求めることができる。しかし、キャリブレーションチャートの読み取りに、全体が白色の背景板を使用すると、用紙の地の色と背景板との濃度差がほとんどないので、読み取り画像の中で用紙のエッジを正確に認識することはできない。
【0007】
そのため、
・パッチの探索範囲を広くしなければならず、処理量が増える
・パッチを探すためにパターン認識など高度の画像処理が必要になる
・誤検出の可能性が増える
・パッチの位置の検出精度が下がり、各パッチを小さくできない
といった問題が生じる。
【0008】
キャリブレーションチャートの読み取りに黒色の背景板を使用すると、用紙の地の色と背景板との濃度差が大きいので、読み取り画像の中で用紙のエッジを正確に認識することは可能になる。しかし、通常、オフィス機器の分野では原稿を読み取る際に白色の背景板が使用されるので、階調や色再現の補正のためのキャリブレーションチャートを黒色の背景板で読み取ると、特に用紙が薄い場合に、不適切な補正が行われてしまう。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、読み取り画像内での用紙のエッジ検出とキャリブレーション画像の適正な読み取りが可能な画像読取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0011】
[1]
キャリブレーション用の画像が形成された用紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部の搬送路上の所定の読み取り位置において前記搬送部によって搬送される前記キャリブレーション用の画像が形成された用紙を該用紙の搬送方向に直交する第1方向に該用紙の両外側領域を含めて繰り返し読み取ることを、前記用紙とその前後の所定範囲が前記読み取り位置を通過する間に行うことで、前記用紙をその外側領域を含む2次元の画像として読み取る読取部と、
前記読み取り位置において前記読取部に対向配置されて、前記読取部で前記用紙を読み取る際に該用紙の裏面側に位置する背景板と、
を備え、
前記背景板は、
前記第1方向の存在範囲が前記用紙とその両外側領域に及ぶと共に、前記用紙の前記第1方向の両端のエッジを跨ぐ部分と、前記用紙の前記搬送方向の全範囲で前記キャリブレーション用の画像が形成されていない箇所に対応する部分が高濃度部にされ、少なくとも前記用紙の前記搬送方向のいずれかの位置でキャリブレーション用の画像が形成されている箇所に対応する部分が低濃度部にされている
ことを特徴とする画像読取装置。
【0012】
上記発明では、読取部は、用紙の外側領域を含めて読み取り、背景板は、読取部でキャリブレーション用の画像の形成された用紙を読み取る際に、該用紙のエッジを跨ぐ部分は高濃度部に、該用紙のうちのキャリブレーション用の画像が形成された箇所に対応する部分は低濃度部になるようにされる。これにより、用紙の地の色と高濃度部との濃度差に基づいて、読み取り画像内での用紙のエッジ位置が検出可能になる。また、キャリブレーション用の画像は低濃度部を背景にして適切に読み取られる。なお、読取部はライン単位の読み取り位置と用紙とを相対移動させて用紙とその外側領域を2次元画像として読み取るものであってもよいし、用紙とその外側領域を含む範囲全体を2次元画像として一度に読み取るものであってもよい。
【0014】
上記発明では、読取部は、搬送部によって搬送される用紙を、その搬送方向と異なる第1方向のライン単位に読み取ることを繰り返し行うことで2次元画像を読み取る。ライン単位の読み取り範囲は用紙の両外側領域に及ぶ。背景板は、ライン単位の読み取り範囲と同様の用紙の両外側領域に及ぶ。読取部がライン単位の読み取りを繰り返す期間は、用紙とその前後の所定範囲が読み取り位置を通過する期間にされる。これにより、用紙とその四方の外側領域を含む範囲が読み取られる。該外側領域では背景板が読み取られる。
【0016】
上記発明では、1枚の用紙の読み取り中は、固定の濃淡パターンを有する1枚の背景板が使用される。この背景板は、たとえば、用紙の幅方向の両エッジを跨ぐように両端部に高濃度部を備え、それらの間に低濃度部を有する濃淡パターンにされる。
【0018】
上記発明では、ライン単位の読み取り方向の任意の位置において搬送方向の全範囲でキャリブレーション画像がなければ、その位置ではキャリブレーション用の画像を読み取ることがないので、該位置に対応する部分を高濃度部にする。これにより、用紙の先端および後端のエッジ検出に利用可能な高濃度部を増やすことができ、検出精度を高めることができる。
【0019】
[
2]
キャリブレーション用の画像が形成された用紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部の搬送路上の所定の読み取り位置において前記搬送部によって搬送される前記キャリブレーション用の画像が形成された用紙を該用紙の搬送方向に直交する第1方向に該用紙の両外側領域を含めて繰り返し読み取ることを、前記用紙とその前後の所定範囲が前記読み取り位置を通過する間に行うことで、前記用紙をその外側領域を含む2次元の画像として読み取る読取部と、
前記読み取り位置において前記読取部に対向配置されて、前記読取部で前記用紙を読み取る際に該用紙の裏面側に位置する背景板と、
前記用紙の前記搬送方向の端部を前記読み取り位置の上流で検出する用紙センサと、
前記用紙センサの検出結果から前記用紙の前記搬送方向の端部が前記読取部の前記読み取り位置を通過するタイミングを求め、該タイミングを基準にして、前記読み取り位置において前記読取部に対向配置される前記背景板の濃淡パターンを前記用紙の読み取り動作中に切り替える背景板切り替え部と、
を備え、
前記背景板切り替え部は、前記用紙の前記搬送方向の端部が前記読取部の前記読み取り位置を通過する前後の所定期間、および、前記用紙の前記搬送方向の途中に前記第1方向の全範囲でキャリブレーション用の画像が形成されていない領域が前記読取部の前記読み取り位置を通過する間は、前記読み取り位置で前記読取部に対向配置される前記背景板の全体を高濃度部にし、少なくとも前記用紙の前記第1方向のいずれかの位置にキャリブレーション用の画像が形成されている前記用紙の前記搬送方向の領域が前記読取部の前記読み取り位置を通過する間は、前記背景板の全体を低濃度部に切り替える
ことを特徴とす
る画像読取装置。
【0020】
上記発明では、用紙の読み取り中に、背景板の濃淡パターンを切り替える。
すなわち、用紙の搬送方向の端部が読み取り位置を通過する前後の所定期間、および、用紙の搬送方向の途中の第1方向の全範囲でキャリブレーション用の画像が形成されていない領域が読み取り位置を通過する間は、背景板の全体を高濃度部にし、少なくとも用紙の第1方向のいずれかの位置にキャリブレーション用の画像が形成されている用紙の搬送方向の領域が読み取り位置を通過する間は、背景板の全体を低濃度部に切り替える。
【0025】
[
3]前記用紙を前記読取部で読み取って得た読み取り画像における前記用紙のエッジ位置を、前記高濃度部と前記用紙の地の色との濃度差に基づいて検出し、該検出したエッジ位置を基準に前記読み取り画像の中の前記キャリブレーション用の画像の位置を特定する解析部を有する
ことを特徴とする[1]
または[2]に記載の画像読取装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る画像読取装置によれば、読み取り画像内での用紙のエッジ検出とキャリブレーション画像の適正な読み取りが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像読取装置10を含む印刷システム3の構成例を示している。印刷システム3は、印刷装置5とその後段に接続された画像読取装置10とから構成される。印刷システム3は、キャリブレーション用の画像(多数のパッチ)が用紙上に形成されたキャリブレーションチャートを、印刷開始前や印刷中の適宜のタイミングで印刷装置5にて印刷出力し、このキャリブレーションチャートを後段の画像読取装置10で直ちに読み取ってその画像を解析し、色再現性や印刷位置の補正を自動的に行う機能を備えている。
【0030】
このため、印刷システム3では、キャリブレーションチャートを画像読取装置10で読み取って得た読み取り画像内にある各パッチの位置を自動的に精度よく検出することが要請される。
【0031】
そこで、画像読取装置10は、キャリブレーションチャートを読み取る際に、読取部にて該用紙(キャリブレーションチャート)とその周囲の外側領域を含む範囲を光学的に読み取ると共に、この読取部に対向配置されて、読み取り対象の用紙の裏当てとなる背景板に、濃淡パターンを設ける、あるいは背景板を読み取り中に切り替えることで、背景板のうち用紙のエッジを跨ぐ部分は黒色等の高濃度部に、パッチが形成された箇所に対応する部分は白色等の低濃度部にする。これにより、用紙の地の色と高濃度部との濃淡差が大きくなり、読み取り画像において用紙のエッジを容易に検出することができる。また、パッチ部分の裏当ては、白色等の低濃度部になるので、キャリブレーション用のパッチを適切に読み取ることができる。
【0032】
図2は、画像読取装置10の電気的な概略構成を示すブロック図である。画像読取装置10は、当該画像読取装置10の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)11を有している。CPU11にはバスを通じてROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、不揮発メモリ14、読取部20、背景板ユニット30、搬送部15、用紙センサ16、解析部17、外部I/F(Interface)部18などが接続されている。
【0033】
CPU11は、OS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどを実行する。ROM12にはプログラムが格納されており、該プログラムに従ってCPU11が各種処理を実行することで画像読取装置10の機能が実現される。
【0034】
RAM13は、CPU11がプログラムに基づいて処理を実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや読み取って得た画像データ(読み取り画像)を格納する画像メモリなどとして使用される。
【0035】
不揮発メモリ14は、電源をオフにしても記憶内容が破壊されないメモリ(フラッシュメモリ)であり、各種設定情報の保存などに使用される。
【0036】
搬送部15は、上流の印刷装置5から到来する用紙を受け入れ、該用紙を、後述する読取部20の読み取り位置を通過させて、さらに下流の排出口から排出されるように搬送する機能を果たす。
【0037】
読取部20は、搬送部15によって搬送される用紙およびその周囲の外側領域を光学的に読み取って、用紙とその外側領域を含む2次元画像の画像データを取得する機能を果たす。読取部20は、搬送部15の搬送路上の所定の読み取り位置において、読み取り対象の用紙に光を照射する光源と、その反射光を受けて、用紙を、搬送方向と略垂直な方向(読み取り方向とする)に1ライン分読み取るラインイメージセンサなどを備えて構成される。読み取り位置は、ラインイメージセンサが1ライン分の画像を読み取る搬送経路上の特定の位置である。読み取り位置でのライン単位の読み取り動作を、搬送部15によって用紙を搬送しながら繰り返し行うことで、読取部20は、用紙をその周囲を含む2次元の画像として読み取る。
【0038】
背景板ユニット30は、読取部20と対向配置される背景板を切り替える機能を果たす。背景板ユニット30の詳細は後述する。
【0039】
用紙センサ16は、搬送部15によって搬送される用紙の端部(搬送方向の先端、後端)を、読取部20の読み取り位置の上流で検出する。用紙センサ16には、光センサ等が使用される。
【0040】
解析部17は、読取部20で用紙を光学的に読み取って得た読み取り画像を解析して、読み取り画像内での用紙のエッジ位置を検出し、このエッジ位置を基準にして読み取り画像内での各パッチの位置を正確に求める機能を果たす。なお、解析部17は画像読取装置10が備える必要はなく、外部装置や印刷装置5に設けられてもかまわない。
【0041】
外部I/F部18は、読み取り画像の画像データ、解析部17での解析結果等を印刷装置5やその他の外部装置へ出力する機能を果たす。
【0042】
図3は、画像読取装置10の主要部の機械的な概略構成を示している。搬送部15は、用紙の進路を規制して用紙の搬送経路を形成する搬送ガイド板15aと、搬送経路上の用紙を表裏から挟持するように配置された搬送ローラ15bと、搬送ローラ15bを回転駆動する図示省略のモータなどで構成される。
【0043】
搬送経路の中間位置の近傍には読取部20が設けられている。搬送部15によって搬送される用紙の表面側を読取部20で光学的に読み取るようになっている。背景板ユニット30は読み取り位置を通る用紙の裏面側に位置するように、読取部20から僅かに離して、読取部20に対向配置されている。背景板ユニット30は、多角柱(ここでは正六角形柱)の形状であってその長手方向に沿った各側面に異なる濃淡パターンの背景板が設けられた複合背景部材31と、複合背景部材31を回転させて読取部20に対向する側面を切り替える図示省略のモータなどで構成される。複合背景部材31は、その長手方向が読取部20のライン単位の読み取り方向と同一方向にされている。
【0044】
図4は、背景板ユニット30の複合背景部材31を示している。同図(a)は複合背景部材31の端面を、同図(b)は斜視図を、同図(c)は6つの側面に設けられた6種類の背景板32a〜32fの濃淡パターンを示している。
【0045】
背景板32aは全範囲が黒色となっている。背景板32b、32c、32d、32eはそれぞれ長手方向(読み取り方向)の両端部が黒色(高濃度部)でそれらの間は白色(低濃度部)になっている。低濃度部の長さは読み取り対象の用紙サイズ(用紙の幅方向のサイズ)に応じて定められている。複合背景部材31は、低濃度部の長さが異なる複数の背景板32b〜32eを有することで、複数種類の用紙サイズに対応可能となっている。背景板32fは全範囲が白色であり、シェーディング補正用のデータを読み取るために使用される。
【0046】
なお、画像読取装置10は印刷装置5などから用紙サイズの情報を受け取る、あるいは、自装置の搬送経路の入口部等に用紙サイズ(幅)を検知するセンサを設けることで、読み取り対象の用紙サイズを認識するようになっている。
【0047】
図5は、読取部20による読み取り範囲と、用紙と、両端部が高濃度部でその間が低濃度部となっている背景板32cとの関係を示している。
図5では、背景板32cを例に説明するが、他の背景板32b、32d、32eについても同様である。
【0048】
読取部20の読み取り方向の各ラインにおける読み取り範囲Rhは、読み取り対象の用紙Pの幅Wより大きくされており、用紙Pの幅方向の両外側領域Ehを含む範囲になっている。背景板32cの両端に設けられた高濃度部分は用紙Pの幅方向の端部(エッジ)をそれぞれ跨ぐように設けられている。
【0049】
読取部20による用紙Pの搬送方向の読み取り範囲Rvは、読み取り対象の用紙Pの長さLより大きくされており、用紙Pの先端および後端からさらに所定長の外側領域Evを含む範囲になっている。このように、読取部20は、読み取り方向にRh、搬送方向にRvの長さを有する矩形の領域(図中、斜線を施した領域)Rを読み取ることで、用紙Pをその四方の外側領域を加えた範囲で読み取る。
【0050】
図6は、背景板32cを裏当てに使用してキャリブレーション用のパッチ40が形成されたキャリブレーションチャート41を読み取る様子と、その読み取り画像42を示している。
図6および後述する
図7、
図8では、1枚のキャリブレーションチャートとその周囲を読み取る間は1枚の背景板が固定的に使用される。
【0051】
搬送方向の読み取り範囲Rvのうち、キャリブレーションチャート41の先端より前の外側領域および後端より後ろの外側領域では、読み取り方向の全範囲Rhにおいて背景板32cが読み取られ、搬送方向の読み取り範囲Rvのうちキャリブレーションチャート41が存在する範囲では、キャリブレーションチャート41の幅方向(読み取り方向)の両外側領域において背景板32cの高濃度部が読み取られる。
【0052】
キャリブレーションチャート41の幅方向の両エッジ(搬送方向に沿ったエッジ)の検出は、用紙の地の色と背景板32cの高濃度部分との境界が大きな濃度差となって用紙の全長に現われることで可能となる。キャリブレーションチャート41の先端および後端のエッジについては、用紙の地の色と背景板32cの高濃度部分との境界が大きな濃度差となって用紙の四隅近傍(図中、破線の楕円43で示す部分)に現われることで検出可能になる。
【0053】
一方、パッチ40が存在する部分は、背景板32cのうちの白色の部分(低濃度部)になっているので、シェーディング補正用の背景板32fを使用した場合と同じ条件でパッチ40を読み取ることができる。
【0054】
図7は、用紙サイズに応じて背景板を切り替える例を示している。同図(a)は、たとえばA4サイズのキャリブレーションチャート41に対して背景板32cを使用した例である。同図(b)は、同図(a)のキャリブレーションチャート41より幅の狭いキャリブレーションチャート45に対して背景板32cより低濃度部の長さが短い背景板32bを使用した例である。いずれの場合も、両端の高濃度部は、対応する用紙41、45の幅方向の両エッジを跨ぐ位置に配置されている。また、高濃度部の間の低濃度部は、対応するキャリブレーションチャート41,45においてパッチ40の存在する箇所をカバーしている。
【0055】
図8は、両端部のほかに低濃度部の適所に高濃度部を設けた背景板50と、これに対応するキャリブレーションチャート51と、背景板50を使用してキャリブレーションチャート51を読み取って得た読み取り画像52を示している。背景板50には、低濃度部の中の3箇所に部分的な高濃度部50aが設けられている。
【0056】
部分的な高濃度部50aは、キャリブレーションチャート51の搬送方向の全範囲においてキャリブレーション用の画像(パッチ40)が形成されていない箇所に対応する部分に設けられる。なお、背景板50のデザインを先に行い、該背景板50において部分的な高濃度部50aが存在する箇所を避けるようにしてキャリブレーションチャート51におけるパッチ40の配置を定めるようにしてもよい。
【0057】
図8に示す背景板50を使用することで、
図6に示す背景板32cを使用する場合に比べて、キャリブレーションチャート51の先端および後端において用紙と部分的な高濃度部50aとの境界にも大きな濃度差が生じるので(図中、破線の円53で示す部分)、これらを利用することで、より正確にキャリブレーションチャート51の先端および後端のエッジを検出することができる。
【0058】
次に、1枚のキャリブレーションチャートおよびその周囲の読み取り中に背景板を切り替える場合について説明する。
【0059】
図9は、用紙の裏当てに使用する背景板を、全体が黒(高濃度部)の背景板32aと、全体が白(低濃度部)の背景板32fとに読み取り中に切り替える場合を示している。図の左側には読み取り中の背景板の遷移を示し、図の中央には読み取られるキャリブレーションチャート41を示し、図の右側には読み取り画像47を示している。
【0060】
搬送部15によって搬送されて来るキャリブレーションチャート41の先端および後端を用紙センサ16によって読み取り位置の上流で検出する。背景板ユニット30は、この検出結果に基づいてキャリブレーションチャート41の先端、後端が読み取り位置を通過するタイミングを認識する。そして、
図9に示すタイミングで背景板32aと背景板32fとを切り替える。
【0061】
詳細には、読み取り開始前から、キャリブレーションチャート41の先端から所定の長さだけ後端側の箇所が読み取り位置を通過するまでの期間V1は、全体が黒の背景板32aを使用する。その後、全体が白の背景板32fに切り替える。全体が白の背景板32fは、キャリブレーションチャート41の後端から所定の長さだけ先端側の箇所が読み取り位置を通過するまで(期間V2)使用し、その後、再び全体が黒の背景板32aに切り替える(期間V3)。
【0062】
これにより、キャリブレーションチャート41の先端および後端のエッジは、用紙の地の色と背景板32aとの境界が大きな濃度差となって用紙の幅方向全体に渡って現われることで検出可能となる。キャリブレーションチャート41の幅方向の両エッジについては、用紙の地の色と背景板32aとの境界が大きな濃度差となって用紙の四隅近傍(図中、破線の楕円48で示す部分)に現われることで検出可能になる。
【0063】
一方、パッチ40が存在する部分では、全体が白の背景板32fが使用されるので、シェーディング補正時と同じ条件でパッチ40を読み取ることができる。
【0064】
図10は、用紙の幅方向全体にパッチのない領域が用紙の長手方向の途中に存在するキャリブレーションチャート61を読み取る場合に、そのパッチのない領域を読み取るタイミングで全体が黒の背景板32aに切り替える場合を示している。
図9と同様に、図の左側には読み取り中の背景板の遷移を示し、図の中央には読み取られるキャリブレーションチャート61を示し、図の右側には読み取り画像62を示している。
【0065】
搬送部15によって搬送されて来るキャリブレーションチャート61の先端および後端を用紙センサ16によって読み取り位置の上流で検出する。背景板ユニット30は、この検出結果に基づいてキャリブレーションチャート61の先端、後端が読み取り位置を通過するタイミングを認識して、
図10に示すタイミングで背景板32aと背景板32fとを切り替える。
【0066】
詳細には、読み取り開始前から、キャリブレーションチャート61の先端から所定の長さだけ後端側の箇所が読み取り位置を通過するまでの期間V1は、全体が黒の背景板32aを使用する。その後、全体が白の背景板32fに切り替え、前半のパッチ群40aが存在する間は白の背景板32fが使用される(期間V2)。前半のパッチ群40aが読み取り位置を通過した後、パッチ40の存在しない領域を読み取っている間は全体が黒の背景板32aに切り替える(期間V3)。そして、再び全体が白の背景板32fに切り替える。後半のパッチ群40bを読み取っている間は白の背景板32fを使用し(期間V4)、用紙の後端から所定の長さだけ先端側の箇所が読み取り位置を通過したら、再び全体が黒の背景板32aに切り替える(期間V5)。
【0067】
これにより、キャリブレーションチャート61の先端および後端のエッジは、用紙の地の色と背景板32aとの境界が大きな濃度差となって用紙の幅方向全体に渡って現われることで検出可能となる。キャリブレーションチャート61の幅方向の両エッジについては、用紙の地の色と背景板32aとの境界が大きな濃度差となって、用紙の四隅近傍(図中、破線の楕円48で示す部分)および期間V3に読み取った部分(図中、破線の楕円64で示す部分)に現われることで検出可能になる。
図9の場合に比べて楕円64で示す部分でもエッジを検出できるので、キャリブレーションチャート61の幅方向の両エッジの検出精度が向上する。
【0068】
図11は、用紙の裏当てに使用する背景板を、全体が黒(高濃度部)の背景板32aと、両端が高濃度部で中間が低濃度部の背景板32cとに読み取り中に切り替える場合を示している。図の左側には読み取り中の背景板の遷移を示し、図の中央には読み取られるキャリブレーションチャート61を示し、図の右側には読み取り画像65を示している。
【0069】
搬送部15によって搬送されて来るキャリブレーションチャート61の先端および後端を用紙センサ16によって読み取り位置の上流で検出する。背景板ユニット30は、この検出結果に基づいてキャリブレーションチャート61の先端、後端が読み取り位置を通過するタイミングを認識する。そして、
図11に示すタイミングで背景板32aと背景板32cとを切り替える。
【0070】
詳細には、読み取り開始前から、キャリブレーションチャート61の先端から所定の長さだけ後端側の箇所が読み取り位置を通過するまでの期間V1は、全体が黒の背景板32aを使用する。その後、両端部が高濃度部で中間が低濃度部の背景板32cに切り替える。背景板32cは、キャリブレーションチャート61の後端から所定の長さだけ先端側の箇所が読み取り位置を通過するまで(期間V2)使用し、その後、再び、全体が黒の背景板32aに切り替える(期間V3)。
【0071】
これにより、キャリブレーションチャート61の先端および後端のエッジは、用紙の地の色と背景板32aとの境界が大きな濃度差となって用紙の幅方向全体に渡って現われることで検出可能となる。また、キャリブレーションチャート61の幅方向の両エッジ(搬送方向に沿ったエッジ)は、用紙の地の色と背景板32cの高濃度部分との境界が大きな濃度差となって用紙の搬送方向全長に渡って現われることで検出可能となる。
【0072】
一方、パッチ40が存在する部分は背景板32cの低濃度部が裏当てに使用されるため、シェーディング補正時と同じ条件でパッチ40を読み取ることができる。
【0073】
図12は、用紙の裏当てに使用する背景板を、両端が高濃度部で中間が低濃度部の背景板32cと全体が白(低濃度部)の背景板32fとに読み取り動作中に切り替える場合を示している。図の左側には読み取り中の背景板の遷移を示し、図の中央には読み取られるキャリブレーションチャート61を示し、図の右側には読み取り画像67を示している。
【0074】
搬送部15によって搬送されて来るキャリブレーションチャート61の先端および後端を用紙センサ16によって読み取り位置の上流で検出する。背景板ユニット30は、この検出結果に基づいてキャリブレーションチャート61の先端、後端が読み取り位置を通過するタイミングを認識する。そして、
図12に示すタイミングで背景板32cと背景板32fとを切り替える。
【0075】
詳細には、読み取り開始前から、キャリブレーションチャート61の先端から所定の長さだけ後端側の箇所が読み取り位置を通過するまでの期間V1は、両端部が高濃度部で中間が低濃度部の背景板32cを使用する。その後、全体が白(低濃度部)の背景板32fに切り替える。背景板32fは、キャリブレーションチャート61の後端から所定の長さだけ先端側の箇所が読み取り位置を通過するまで(期間V2)使用し、その後、再び、両端部が高濃度部で中間が低濃度部の背景板32cに切り替える(期間V3)。
【0076】
これによりキャリブレーションチャート61の先端および後端のエッジ、およびキャリブレーションチャート61の幅方向の両エッジ(搬送方向に沿ったエッジ)は、用紙の地の色と背景板32cの高濃度部分との境界が大きな濃度差となって用紙の四隅近傍(図中、破線の円68で示す部分)に現われることで検出可能になる。
【0077】
この場合、用紙の四隅近傍以外はすべて裏当てとして低濃度部が使用されるので、用紙の四隅を除く広い範囲にパッチを配列することができる。
【0078】
図13は、用紙のエッジからパッチの位置を推定する手順の概念を示している。同図(a)は、読み取り画像70において検出された用紙71のエッジから、読み取り画像70における用紙の四隅の位置を特定し、これら四隅の位置を基準にパッチ40の位置を特定する様子を示している。用紙71の四隅の位置を特定することで、斜行した用紙を読み取った場合でも正確にパッチ40の位置を求めることができる。
【0079】
同図(b)は、読み取り画像70における用紙71のエッジから該用紙71の隅位置を特定し、この隅位置から予め定められたトンボ等の基準マーク72の位置を特定する。基準マーク72を解析することで用紙の斜行等を検出することができる。そして、基準マーク72を基準にしてパッチの位置を特定する。
【0080】
図14は、背景板ユニット30の他の構成例を示している。
図3に示した回転式の複合背景部材31に代えて、同図(a)に示すように、スライド式の複合背景板81を使用する。読み取り位置において読み取られる各ラインの幅は十分狭いので、濃淡パターンの異なる各背景板に必要な搬送方向の幅は0.5cmから1cmもあれば十分である。そこで、
図14(b)に示すように、1枚の平板に
図4の背景板32a〜32fに相当する6種類のパターンを配列した複合背景板81を読取部20に対向配置し、この複合背景板81を搬送方向にスライド移動させることで、所望のパターンの部分が読み取り位置に対向するように切り替える。なお、同図(b)に示す段階的な複合背景板81に代えて、同図(c)に示すような無段階の複合背景板82を使用してもよい。
【0081】
このように、本実施の形態に係る画像読取装置10では、キャリブレーション用のパッチが形成されたキャリブレーションチャートを読み取る際に、背景板のうち、用紙のエッジを跨ぐ(先端・後端のエッジ、および用紙の幅方向のエッジ)部分を黒色等の高濃度部とし、キャリブレーション用のパッチのある箇所に対応する部分は白色等の低濃度部分になるように、背景板の濃淡パターンを定めたり、複数種類の背景板を読み取り中に切り替えたりするので、読み取り画像において用紙のエッジを的確に検出することが可能になると共に、パッチ部分の画像を適切に読み取ることができる。
【0082】
これにより、たとえば、印刷装置5から出力されたキャリブレーションチャートの画像を後段の画像読取装置10で直ちに読み取り、その読み取り画像を解析して用紙のエッジ検出を行い、該検出したエッジ位置から各パッチの位置を特定して色再現性の補正や印刷位置を補正するといった一連の作業を、自動的に行うことが可能になる。
【0083】
また、低濃度部の長さが異なる複数種類の背景板32b〜32eを切り替えることで、様々な用紙サイズのキャリブレーションチャートに対応することができる。すなわち、読み取り画像においてキャリブレーションチャートのエッジ位置が明確になるので、そのエッジ位置を基準にして様々な用紙サイズにおいて読み取り画像の中のパッチ位置を正確に特定することができる。
【0084】
トンボなどの位置決め用の基準マーク72の位置解析を行う場合でも、検出した用紙のエッジ位置を基準に基準マークの探索範囲を絞り込むことができるので、効率的かつ高い信頼性で基準マーク72を検出することができる。
【0085】
また、表裏見当調整など正確な位置情報を得るには基準位置としての用紙のエッジ検出が不可欠であり、その調整パターンとキャリブレーションカラーパッチの調整を1枚の印刷出力とその読み取り解析で実現することができ、調整用に使用する用紙の量を削減することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0087】
実施の形態では、高濃度部を黒色、低濃度部を白色とした例を示したが、高濃度部は用紙の地の色より十分に濃い色であれば黒色に限定されない。また、低濃度部はシェーディング補正に使用される背景板の色と同一であることが好ましいが、パッチの読み取りに与える影響が少ない範囲においてある程度の薄いグレーや乳白色などであってもかまわない。
【0088】
背景板には、たとえば、電子ペーパなどの表示装置を使用してもよい。表示内容を書き換えることで、任意の濃淡パターンに変更することができる。
【0089】
実施の形態では、印刷装置5の後段に接続されて、印刷装置5で印刷出力されたキャリブレーションチャートを取り込んで自動的に読み取る画像読取装置10を例示したが、本発明の画像読取装置はこれに限定されるものではない。ユーザがセットしたキャリブレーションチャートを読み取るように構成されてもよい。
【0090】
キャリブレーションチャートおよびその周囲の外側領域を含む矩形領域等の全体を一度に読み取る方式であってもかまわない。この場合、背景板は、キャリブレーションチャートより一回り以上大きなサイズのものにされる。たとえば、
図9〜
図12の各左側に示す背景板を使用すればよい。