特許第6044781号(P6044781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044781
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20161206BHJP
   B60N 2/46 20060101ALI20161206BHJP
   B60N 2/015 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B60N2/64
   B60N2/46
   B60N2/015
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-83627(P2013-83627)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-205404(P2014-205404A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097386
【弁理士】
【氏名又は名称】室之園 和人
(72)【発明者】
【氏名】細田 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】三田 晃久
(72)【発明者】
【氏名】丸野 佑城
【審査官】 永安 真
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−131835(JP,U)
【文献】 実公昭63−37884(JP,Y2)
【文献】 実開平2−44536(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアに搭載されるシートクッションとシートバックを備え、
シートバックフレームの下端部に設けられた係止部が、シートクッションフレームの後端部に設けられた被係止部に係止している車両用シートであって、
前記シートバックにアームレストが設けられ、
前記アームレストは、使用状態と起立格納状態に切り換え自在な格納式に構成され、
前記起立格納状態のアームレストを支持する支持部材が、前記シートバックフレームに上下方向に沿って設けられ、
前記支持部材の下端部に板状のブラケットが板面をシート前後方向に向けて固着され、
前記係止部は前記ブラケットに板状に形成されている車両用シート。
【請求項2】
前記係止部は、前記ブラケットの一部分を切り起こしてフック状に形成され、
前記被係止部は環状に形成されている請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記係止部に隣接し、前記シートクッションの後端部の後面が当接する平面部が前記ブラケットに設けられている請求項1又は2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記ブラケットは、車体に固定される固定部を備えている請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両用シート。
【請求項5】
前記ブラケットの上部が前記支持部材の下端部に固着され、
前記ブラケットの下端部は、前記シートバックの座面部の下端よりも下方に突出し、
前記ブラケットの下端部に前記係止部が設けられ、
前記ブラケットの下端部の前記係止部の左右両側に前記固定部がそれぞれ設けられている請求項4記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
車体フロアに搭載されるシートクッションとシートバックを備え、
シートバックフレームの下端部に設けられた係止部が、シートクッションフレームの後端部に設けられた被係止部に係止している車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の車両用シートとして特許文献1に開示されている第1の技術や、特許文献2に開示されている第2の技術があった。前記第1の技術では、前記係止部と被係止部がいずれもワイヤーで形成されている。また、第2の技術では、車体に固定された板状のブラケットでシートバック側のワイヤーのシート前後方向の動きを規制するとともに、シートクッション側のワイヤーとシートバック側のワイヤーとを係止させてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−16933号公報
【特許文献2】実公昭53−41228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1の技術によれば、ワイヤーが変形しやすいために、係止部と被係止部の位置がずれやすかった。
第2の技術でもワイヤー同士が変形しやすくて、係止部と被係止部の位置がずれやすかった。その上、車体に固定された板状のブラケットでシートバック側のワイヤーのシート前後方向の動きを規制していたために、前記係止部が車体側の寸法誤差の影響を受けて、シートクッションとシートバックの位置を正確に保つことが難しかった。
本発明の目的は、シートクッションとシートバックの位置を正確に保つことができる車両用シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
車体フロアに搭載されるシートクッションとシートバックを備え、
シートバックフレームの下端部に設けられた係止部が、シートクッションフレームの後端部に設けられた被係止部に係止している車両用シートであって、
前記シートバックにアームレストが設けられ、
前記アームレストは、使用状態と起立格納状態に切り換え自在な格納式に構成され、
前記起立格納状態のアームレストを支持する支持部材が、前記シートバックフレームに上下方向に沿って設けられ、
前記支持部材の下端部に板状のブラケットが板面をシート前後方向に向けて固着され、
前記係止部は前記ブラケットに板状に形成されている点にあり、この構成によれば次の作用を奏することができる。(請求項1)
【0006】
アームレストを支持する支持部材は強度が確保されている。従って、前記支持部材の下端部に前記ブラケットを固着することで、ブラケットの位置を確実に固定することができる。そして、支持部材へのブラケットの固着状態を安定させることができる。しかも、ブラケットは車体側に直接固定されてはいないから、ブラケットが車体側の寸法誤差の影響を受けにくくなり、ブラケットの位置をより確実に固定することができる。これにより、ブラケットに形成された係止部の位置精度を向上させることができる。
さらに、ブラケットが板状に形成されていることで、ブラケットの変形を防ぐことができる。そして、従来の構造のように、ワイヤー同士が係止しているのではなく、板状の係止部と被係止部が係止しているから、係止部の変形を防止できる。
これにより、前記係止部に係止したシートクッションの被係止部をブラケットでしっかりと支持できて、シートクッションとシートバックの位置を正確に保つことができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記係止部は、前記ブラケットの一部分を切り起こしてフック状に形成され、
前記被係止部は環状に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
ブラケットとは別部材で係止部を形成した構造に比べると、部品点数を少なくすることができる。
そして、組み付け工程では、前記係止部を被係止部に引っ掛けて組み付ければよいので、シートバックとシートクッションの組み付けが容易で組み付け性を向上させることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記係止部に隣接し、前記シートクッションの後端部の後面が当接する平面部が前記ブラケットに設けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
係止部が被係止部に係止した状態で、シートクッションが左右に傾いても、ブラケットに設けられた前記平面部がシートクッションの後端部の後面に当接してシートクッションの動きを抑制する。従って、係止部や被係止部の変形を防止することができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記ブラケットは、車体に固定される固定部を備えていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
一般に、アームレストはシートバックの幅方向中央部に設けられる。シートバックの幅方向中央部は変形しやすいが、前記ブラケットは車体に固定されているので、ブラケットの変形を防止してブラケットの位置がずれるのを防止することができる。これにより、ブラケットに設けられた係止部をシートクッション側の被係止部に係止させることで、シートクッションとシートバックの位置をより正確に保つことができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記ブラケットの上部が前記支持部材の下端部に固着され、
前記ブラケットの下端部は、前記シートバックの座面部の下端よりも下方に突出し、
前記ブラケットの下端部に前記係止部が設けられ、
前記ブラケットの下端部の前記係止部の左右両側に前記固定部がそれぞれ設けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
前記ブラケットの下端部の前記係止部の左右両側に前記固定部がそれぞれ設けられているから、係止部の周りのブラケットの変形をより確実に防止でき、ブラケットに設けられた係止部の位置精度をより向上させることができる。(請求項5)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シートクッションとシートバックの位置を正確に保つことができる車両用シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シートバックの斜視図
図2】シートクッションの斜視図
図3】シートバック側の係止部とシートクッション側の被係止部の係止構造を示す分解斜視図
図4】シートバックフレームの斜視図
図5図4のX部の拡大図
図6】シートクッションフレームの斜視図
図7図6のY部の拡大図
図8図6のZ部の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1に、自動車の車体フロアに搭載されるリアシート(車両用シートに相当)のシートバック2を示し、図2に、前記リアシートのシートクッション3を示してある。
【0018】
図1に示すように、前記シートバック2の幅方向中央部(左右中央部)に、乗員の腕を乗せる格納式のアームレスト4が設けられている。このアームレスト4は、下端部側の横軸芯を中心として上下揺動自在にシートバックフレーム20(図4参照)に支持されて、略水平の使用状態と起立格納状態(図1参照)に切り換え自在に構成されている。
【0019】
[シートバックフレーム20の構造]
図4に示すように、前記シートバックフレーム20は、複数のワイヤーを格子状に溶接固着して構成されている。そして、前記起立格納状態のアームレスト4を支持する左右一対の帯板状の支持部材21が、シートバックフレーム20の左右中央部に上下方向に沿って設けられている。
【0020】
支持部材21の上端部は、シートバックフレーム20の上側のワイヤーにシート後方側から溶接固着され、支持部材21の下端部は、後述のブラケット22を介してシートバックフレーム20の下側のワイヤーにシート後方側から溶接固着されている。前記左右一対の支持部材21は、アームレスト4の両側部をシート後方側から各別に受け止めて支持する。
【0021】
図5にも示すように、支持部材21の下端部に板状のブラケット22が板面をシート前後方向に向けて溶接固着されている。すなわち、ブラケット22の上部が左右一対の支持部材21の下端部に架け渡されて溶接固着され、ブラケット22の下端部が、シートバック2の座面部2M(図3参照)の下端よりも下方に突出している。
【0022】
図4図5に示すように、シートバックフレーム20の下端部のブラケット22に第1係止部23([特許請求の範囲]に記載の係止部に相当)が板状に形成されている。前記第1係止部23は、ブラケット22の下端部の左右中央部の一部分を切り起こしてフック状に形成されている。
【0023】
詳述すると、第1係止部23は、ブラケット22からシート前方側に延びる第1切り起こし片23Aと、第1切り起こし片23Aの先端部から後下方に延びる第2切り起こし片23Bとから成る。第1切り起こし片23Aの表側の面は上方を向き、裏側の面は下方を向いている。第1切り起こし片23Aと第2切り起こし片23Bの接続部は断面円弧状に折れ曲がっている。
【0024】
図3図5に示すように、前記ブラケット22の下端部の第1係止部23の左右両側に、車体に固定される固定部24を備えている。固定部24はボルト挿通孔24Hを備え、このボルト挿通孔24Hに挿通されたボルトで車体に固定される。
【0025】
さらに、シート幅方向で前記第1係止部23に隣接する平面部25が、ブラケット22の下端部の第1係止部23の左右両側に設けられている。前記平面部25は、ブラケット22に形成された左右一対の上下方向に沿うビード27の頂面に形成されている。
【0026】
図4に示すように、シートバックフレーム20の上側のワイヤーの左端部に第2係止部20Aが形成され、上側のワイヤーの右端部に第3係止部20Bが形成され、上側のワイヤーの中央部に第4係止部20Cが形成されている。
【0027】
また、シートバックフレーム20の下側のワイヤーの左端部に第4係止部20Dが形成され、下側のワイヤーの右端部に第5係止部20Eが形成されている。前記第2係止部20A〜第5係止部20Eは、車体側の第2被係止部(図示せず)〜第5被係止部(図示せず)に各別に係止する。これにより、シートバックフレーム20が車体に固定される。
【0028】
[シートクッションフレーム30の構造]
図6に示すように、シートクッションフレーム30は、ワイヤーを横長の四角形の環状に折曲して構成されている。そして、図6図7に示すように、シートクッションフレーム30の左右中央部の後端部にワイヤーから成る環状の第1被係止部33が設けられている。
【0029】
図7に示すように、前記第1被係止部33は、シートクッションフレーム30の後側の第1ワイヤー部分33Aと、
第1ワイヤー部分33Aに直交する状態に溶接固着された左右一対の第2ワイヤー部分33Bと、
第2ワイヤー部分33Bのシート後方側の端部から後上方に立ち上がる左右一対の第3ワイヤー部分33Cと、
第3ワイヤー部分33Cの上端部同士を連結する第4ワイヤー部分33Dとから成る。
【0030】
図6図7に示すように、シートクッションフレーム30の前側のワイヤーの左端部に、下方に突出するU字状の第6係止部35Aが形成され、前記前側のワイヤーの右端部に、下方に突出するU字状の第7係止部35Bが形成されている。前記第6係止部35Aと第7係止部35Bはいずれもワイヤーで形成されている。前記第6係止部35Aと第7係止部35Bは、車体側に組み付けられた樹脂フック36(図8参照)に上方から挿入係止される。
【0031】
前記シートバックフレーム20の第1係止部23は、シートクッションフレーム30の第1被係止部33の第4ワイヤー部分33Dに係止している。
【0032】
本発明の構成によれば、
(1) 前記アームレスト4を支持する左右一対の支持部材21は強度が確保されているから、支持部材21の下端部に前記ブラケット22を固着することで、ブラケット22の位置を確実に固定することができる。そして、支持部材21へのブラケット22の固着状態を安定させることができる。しかも、ブラケット22は車体側に直接固定されてはいないから、ブラケット22が車体側の寸法誤差の影響を受けにくくなり、ブラケット22の位置をより確実に固定することができる。これにより、ブラケット22に形成された第1係止部23の位置精度を向上させることができる。
さらに、ブラケット22が板状に形成されていることで、ブラケット22の変形を防ぐことができる。そして、従来の構造のように、ワイヤー同士が係止しているのではなく、板状の第1係止部23と第1被係止部33が係止しているから、第1係止部23の変形を防止できる。
これにより、前記第1係止部23に係止したシートクッション3の第1被係止部33をブラケット22でしっかりと支持できて、シートクッション3とシートバック2の位置を正確に保つことができる。
【0033】
(2) 前記第1係止部23は、ブラケット22の下端部の左右中央部の一部分を切り起こして形成されているから、ブラケット22とは別部材で第1係止部23を形成した構造に比べると、部品点数を少なくすることができる。そして、組み付け工程では、前記第1係止部23を第1被係止部33に引っ掛けて組み付ければよいので、シートバック2とシートクッション3の組み付けが容易で組み付け性を向上させることができる。
【0034】
(3) アームレスト4が設けられたシートバック2の幅方向中央部(左右方向中央部)は変形しやすいが、前記ブラケット22は車体に固定されているので、ブラケット22の変形を防止してブラケット22の位置がずれるのを防止することができる。これにより、ブラケット22に設けられた第1係止部23をシートクッション3側の第1被係止部33に係止させることで、シートクッション3とシートバック2の位置をより正確に保つことができる。
【0035】
(4) 前記ブラケット22の下端部の前記第1係止部23の左右両側に前記固定部24がそれぞれ設けられているから、係止部23の周りのブラケット22の変形をより確実に防止でき、ブラケット22に設けられた第1係止部23の位置精度をより向上させることができる。
【0036】
[別実施形態]
シートクッション3の後端部3K(図2参照)の後面が前記平面部25に当接するよう構成してあってもよい。
この構成によれば次の作用を奏することができる。すなわち、第1係止部23が第1被係止部33に係止した状態で、シートクッション3が左右に傾いても、ブラケット22に設けられた前記平面部25がシートクッション3の後端部3Kの後面に当接してシートクッション3の動きを抑制する。従って、第1係止部23や第1被係止部33の変形を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
2 シートバック
2M シートバックの座面部
3 シートクッション
3K シートクッションの後端部
4 アームレスト
20 シートバックフレーム
21 支持部材
22 ブラケット
23 係止部(第1係止部)
24 固定部
25 平面部
30 シートクッションフレーム
33 被係止部(第1被係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8