特許第6044782号(P6044782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044782
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ヘッドガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20161206BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F16J15/08 P
   F02F11/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-107917(P2013-107917)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-228056(P2014-228056A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】大井田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】定松 秀明
【審査官】 中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−087246(JP,A)
【文献】 特開2003−049712(JP,A)
【文献】 特開2008−075483(JP,A)
【文献】 特開2005−016552(JP,A)
【文献】 特開2011−226641(JP,A)
【文献】 特開2002−257241(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0197577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合されたシリンダブロックとシリンダヘッドの端面に塗布されたFIPGを介してチェーンケースが接合されてなる内燃機関において、複数のガスケット部材を重合してなり、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に介装されるヘッドガスケットであって、
前記各ガスケット部材の前記端面側に配置されることとなる端縁が連結部により互いに連結され、該連結部の折り曲げ線を挟んで互いに線対称に成形されており、前記連結部の折り曲げ線で折り曲げることにより前記複数のガスケット部材が重合され、連結部が前記端面側に配置された状態で前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に介装されることを特徴とするヘッドガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドガスケットに関し、さらに詳しくは、互いに接合されたシリンダブロックとシリンダヘッドの端面に塗布されたFIPGを介してチェーンケースが接合されてなる内燃機関において、複数のガスケット部材を重合してなり、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に介装されるヘッドガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は一般に、シリンダブロックとシリンダヘッドを備えており、シリンダヘッドには動弁機構を潤滑するための潤滑油が供給される。そのため、潤滑油がシリンダブロックとシリンダヘッドとの接合部から漏れ出たり滲み出ないようにシールするために、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間にヘッドガスケットを挟んで組み付けることが一般に行われている。
【0003】
そして、このような内燃機関では、さらに、動弁機構を駆動するためのチェーンがシリンダブロックとシリンダヘッドの一端面に配設されたものが存在する。この場合には、図3に概略で示すように、組み付けられたシリンダブロック1とシリンダヘッド2との端面に対して、液状などの流動性を有する状態のガスケットをチェーンケースの形状などに応じて塗布されるFIPG(Formed In Place Gasket)5を介して、チェーンを覆うためのチェーンケース3が接合される。なお、本願においては、塗布される液状などのガスケット自体をFIPG3と称することとする。シリンダブロック1およびシリンダヘッド2の端面とチェーンケース3の接合部とは、所謂3面合わせ部を構成する。
【0004】
ところで、シリンダブロック1とシリンダヘッド2との間に介装させるヘッドガスケット4’として、シリンダブロック1とシリンダヘッド2との間の面圧を確保するために、複数の金属製のガスケット部材40’、40’を重合させたものがある。このようなヘッドガスケット4’においては、たとえば図4に示すように、薄板からなる各ガスケット部材40’、40’をほぼ同じ形状で個別に成形し、重合したガスケット部材40’、40’が互いにズレるのを防ぐために、一般に、たとえば図4に一点差線で示す位置にかしめ部45’を形成して、ガスケット部材40’、40’を互いに接合している。
【0005】
また、複数のガスケット部材を重合してなるヘッドガスケットにおいては、特許文献1に開示されているように、薄板金属材料から少なくとも2枚の金属ガスケット部材を相互に線対称の関係で連結した平面形状の金属ガスケット部材を形成し、連結された金属ガスケット部材を連結部位を中心として折り曲げて各金属ガスケット部材を相互に積層するものが知られている。
【0006】
特許文献1に開示されたガスケットは、各金属ガスケット部材の長手方向の辺に連結部が部分的(特許文献1の図1および図2では2箇所)に形成されて、金属ガスケット部材が互いに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−207673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したようにチェーンケースを接合する場合には、ヘッドガスケット4’の3面合わせ部がシリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面側に位置する端縁、すなわち、両者1、2の間に挟み込まれるヘッドガスケット4’の短手方向(幅方向)の辺に位置することとなる。一方、上記従来の技術のうち、図3に示したように、ただ単に個別に成形された複数のガスケット部材40’、40’を重合させてかしめ部45’により互いに接合してなるヘッドガスケット4’にあっては、図5に示すように、かしめ部45’を形成することによってガスケット部材40’、40’の端縁にズレGが生じる場合がある。この場合において、特に3面合わせ部側に位置する端縁にズレGが生じると、図6に示すように、後に塗布されるFIPG5との間に隙間Sが発生する原因となる。そして、この隙間Sにより、シリンダヘッド2に供給された潤滑油が外部に滲み出ることとなる経路が形成されるなどの問題があった。
【0009】
また、上記従来の技術のうち、特許文献1にあっても、各金属ガスケット部材の連結部がチェーンケースを接合する端面側に位置することのない長手方向の辺に形成されていることから、金属ガスケット部材の端縁が互いズレる場合があり、図6に示した場合と同様に塗布されるFIPGとの間に隙間が発生する原因となり、その結果、潤滑油が外部に滲み出るなどの問題があった。
【0010】
本発明は上述した問題を優位に解決するためになされたもので、簡単な構成で、複数のガスケット部材を重合させても、チェーンケースを接合するシリンダブロックとシリンダヘッドの端面側に位置する端縁がズレてFIPGとの間に隙間が生じることがなくシールすることができ、したがって、潤滑油が外部に滲み出るのを防止することができるシール構造を構成するためのヘッドガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のヘッドガスケットは、上記目的を達成するため、互いに接合されたシリンダブロックとシリンダヘッドの端面に塗布されたFIPGを介してチェーンケースが接合されてなる内燃機関において、複数のガスケット部材を重合してなり、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に介装されるヘッドガスケットであって、前記各ガスケット部材の前記端面側に配置されることとなる端縁が連結部により互いに連結され、該連結部の折り曲げ線を挟んで互いに線対称に成形されており、前記連結部の折り曲げ線で折り曲げることにより前記複数のガスケット部材が重合され、連結部が前記端面側に配置された状態で前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に介装されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヘッドガスケットは、互いに重合される各ガスケット部材の、チェーンケースが接合されるシリンダブロックとシリンダヘッドの端面側に配置されることとなる端縁が、連結部により互いに連結されている。そして、各ガスケット部材は、連結部の折り曲げ線を挟んで互いに線対称に成形されている。このように成形されたヘッドガスケットは、シリンダブロックとシリンダヘッドとを接合するに先立って、連結部の折り曲げ線で折り曲げることにより複数のガスケット部材が重合される。このとき、チェーンケースが接合されるシリンダブロックとシリンダヘッドの端面側に配置されることとなる各ガスケット部材の端縁は、連結部により連結されているために、互いに整合するように重合されており、ズレることがない。そのため、従来の技術のようにかしめ部を形成する必要もない。このようにガスケット部材が重合されたヘッドガスケットは、連結部が前記端面側(=3面合わせ部側)に配置された状態で、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に挟み込まれる。各ガスケット部材のFIPGが塗布される端面側に位置する端縁が互いに連結部により連結されており、かかる端縁が互いにズレることがないために、かかる端縁に対して塗布されたFIPGが密着して間に隙間が生じることがないことから、シリンダヘッド内に供給される潤滑油が外部に滲み出たりするのを確実に防止することができるシール構造を構成することができるヘッドガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のヘッドガスケットの実施の一形態を、折り曲げる前の展開した状態で示した平面図である。
図2】本発明のヘッドガスケットをシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に挟み込んで組み付けるとともに、シリンダブロックとシリンダヘッドの端面にFIPGを塗布してチェーンケースを組み付けた状態を説明するために示した部分拡大断面図である。
図3】本発明が適用される内燃機関を説明するために概略で示した正面図である。
図4】各ガスケット部材を個別に成形して重合させかしめ部を形成した、従来の一般的なヘッドガスケットを説明するために示した平面図である。
図5】各ガスケット部材を重合させてかしめ部を形成することにより、3面合わせ部側の端縁に互いのズレが生じた状態の従来の技術におけるヘッドガスケットを説明するために誇張して示した部分拡大断面図である。
図6図5に示した端縁にズレが生じた従来の技術におけるヘッドガスケットをシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に挟み込んで組み付けたことにより、シリンダブロックとシリンダヘッドの端面に塗布されたFIPGとの間に、潤滑油が滲み出るなどの原因となる隙間が生じることを説明するために示した部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のヘッドガスケットの実施の一形態を、主に図1および図2に基づいて説明する。
本発明のヘッドガスケットが適用される内燃機関は、シリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面にチェーンケース3が接合されてなるもので、シリンダブロック1とシリンダヘッド2との接合部とこれら1、2の端面に接合されるチェーンケース3との間には3面合わせ部が形成される。シリンダブロック1とシリンダヘッド2との間にはヘッドガスケット4が介装され、シリンダブロック1およびシリンダヘッド2の端面には、FIPG5が塗布されてチェーンケース3が接合される。ヘッドガスケット4とFIPG5は、内燃機関のシール構造を構成する。
【0015】
本発明のヘッドガスケット4は、弾性変形可能な金属製の薄板により構成されるもので、複数のガスケット部材40、40と、互いに隣接するガスケット部材40、40を連結する連結部41とが連続するように一体成形されている。各ガスケット部材40、40は、シリンダブロック1とシリンダヘッド2の間に介装されたときに両者1、2の接合面に応じた形状となるように成形されている。この形状については、後に詳しく説明する。少なくともシリンダブロック1とシリンダヘッド2のチェーンケース3が接合される端面側に配置されることとなる各ガスケット部材40、40の端縁(この端縁は「端面側に配置されることとなる各ガスケット部材40の短手方向または幅方向の辺」と表現することもできる。)に、連結部41が設けられる。すなわち、たとえば、ガスケット部材40、40を2層で構成する場合には、2つのガスケット部材40、40のチェーンケース3が接合されるシリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面側に配置される端縁が互いに連結部41により連結される。したがって、この場合においては、後述するように連結部41の折り曲げ線lに沿って折り曲げてガスケット部材40、40を互いに重合させてシリンダブロック1とシリンダヘッド2との間に挟み込んだときに、連結部41がシリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面側のみに配置される。一方、たとえば、3層以上のガスケット部材40、40、40・・・で構成する場合には、一連のガスケット部材40のうちの両端に位置するガスケット部材40以外のガスケット部材は、チェーンケース3が接合されるシリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面側に配置される端縁と、この端縁と対向する端縁とがそれぞれ連結部41、41により隣接するガスケット部材40と互いに連結され、一連のガスケット部材40のうちの両端に位置するガスケット部材40は、チェーンケース3が接合されるシリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面側に配置される端縁と、この端縁と対向する端縁とのいずれかが連結部41により隣接するガスケット部材40と互いに連結される。したがって、この場合においては、後述するように連結部41の折り曲げ線Lに沿って折り曲げてガスケット部材40、40を互いに重合させてシリンダブロック1とシリンダヘッド2との間に挟み込んだときに、シリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面側と、これとは反対側との双方に連結部41、41が配置されることになる。
【0016】
連結部41は、図1に示した実施の形態の場合、ガスケット部材40の端縁の短手方向の辺の、両端部の2箇所に離間させて形成されている。連結部41の中央には、図1に鎖線で示すように折り曲げ線Lが設定されている。折り曲げ線Lは、連結部41を折り曲げてガスケット部材40、40を重合させたときに、各ガスケット部材40、40の三面合わせ部側に位置する端縁が互いに整合するよう設定される。本発明のヘッドガスケット4は、連結部41の折り曲げ線Lで折り曲げられることにより、連結部41によって連結されたガスケット部材40、40の3面合わせ部側に位置する端縁が整合するように重合されるため、かかる端縁が互いにズレることがない。本発明の連結部41は、折り曲げ線Lで折り曲げることにより、ガスケット部材の3面合わせ部側に配置される端縁がズレることなく整合するものであればよく、ガスケット部材の短手方向に離間させて2箇所に形成することに限定されることはない。
【0017】
ガスケット部材40は、連結部41の折り曲げ線Lで折り曲げることにより互いに重合され、一致した形状となるように成形されている。そのため、図1に折り曲げる前の展開した状態では、折り曲げ線Lを挟んでガスケット部材40、40が線対称となる形状に成形されている。このように複数のガスケット部材40と連結部41を一体に連続させた形状とするために、ヘッドガスケット4を構成する金属製薄板を打ち抜くことにより容易に短時間で成形することができる。
【0018】
以上のように成形されたヘッドガスケット4は、連結部41の折り曲げ線Lで折り曲げられることにより、複数のガスケット部材40、40が互いに整合するよう重合される。そして、必要に応じてシリンダブロック1の上面にFIPG5が塗布され、その上に折り曲げられガスケット部材40、40が重合されたヘッドガスケット4を、その連結部41が3面合わせ部側に位置することとなるよう配置し、さらにその上にシリンダヘッド2を載置してボルトなどで締結する。また、シリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面にFIPG5を塗布し、チェーンケース3をボルトなどで締結して接合する。シリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面に塗布されたFIPG5は、シリンダブロック1とシリンダヘッド2との間にも入り込む。このとき、上述したように本発明のヘッドガスケット4は、連結部41によって連結されたガスケット部材40、40の3面合わせ部側に位置する端縁が互いに整合するように重合されているため、シリンダブロック1とシリンダヘッド2との間に入り込んだFIPG5がヘッドガスケット4の端縁との間に隙間S(従来の技術を示した図6を参照)を形成することなく密着することとなるため、内燃機関を運転するときにシリンダヘッド2に供給される潤滑油が外部に滲み出たりするのを確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のヘッドガスケット4は、図に示した実施の形態に限定されることはなく、上述したように互いに隣接する3つ以上のガスケット部材40、40,40・・・を連結部41、41・・・により連結することもできる。この場合には、連結部41は、シリンダブロック1とシリンダヘッド2の端面側だけでなく反対側にも配置されることとなる。
【符号の説明】
【0020】
1:シリンダブロック、 2:シリンダヘッド、 3:チェーンケース、 4:ヘッドガスケット、 5:FIPG、 40:ガスケット部材、 41:連結部、 L:折り曲げ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6