(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の内装材は、透光性基材と、透光性基材の裏面側に配設された照明手段と、透光性基材の表面側に配設された表皮層と、を備えている。
【0011】
本発明の内装材における上記透光性基材は、透光性を有する限り特に限定されず、使用目的に応じてその材質等を適宜選択することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリエステル樹脂等の透明合成樹脂、繊維基材、ウレタンフォーム等の透光性の部材等により構成することができる。更には、孔部等を設けることにより不透明な部材に透光性を付与したものを用いることもできる。
【0012】
上記繊維基材とは、繊維同士を熱可塑性樹脂で結着することにより、剛性を付与したものである。この繊維の種類、長さ及び太さ等は特に限定されないが、上記繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維及び無機有機複合繊維を用いることができる。
上記無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維(PAN系、ピッチ系、セルロース系等)、金属繊維(アルミニウム、ステンレス等)、セラミック繊維(バサルト、炭化ケイ素、窒化ケイ素等)等が挙げられる。
上記有機繊維としては、合成繊維、天然繊維等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維(アラミド繊維等)、ポリオレフィン系繊維、アクリル系繊維及びビニロン系繊維等が挙げられる。また、天然繊維としては、植物及び動物に由来する繊維が挙げられる。植物に由来する繊維としては、例えば、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、ジュート麻、綿花、雁皮、三椏、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹及び各種針葉樹等の各種植物から得られる植物性繊維が挙げられる。
これらの繊維は種類を問わず、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
特に、上記繊維として、無機繊維を用いる場合には、熱可塑性樹脂による結着性を向上させる観点から、繊維の表面に、熱可塑性樹脂との親和性を向上させる表面処理を施すことができる。このような表面処理としては、各種カップリング処理(シランカップリング処理等)が挙げられる。
【0014】
また、上記繊維の長さ(繊維長)は、通常、1〜100mmであり、より高い剛性を得るという観点において3〜70mmが好ましく、目付け制御の観点において3〜50mmがより好ましい。一方、繊維の直径は、通常、1〜30μmであり、より高い剛性を得るという観点において5〜25μmが好ましく、目付け制御の観点において7〜25μmがより好ましい。
尚、繊維長は、JIS L1015における直接法に準拠し、無作為に取り出した1本の繊維を伸張させずに真っ直ぐに延ばし、置尺上で測定した繊維長であり、繊維径は、繊維長を測定した繊維について、長さ方向中央部における径を、光学顕微鏡を用いて測定した値である。
【0015】
また、繊維基材を構成する熱可塑性樹脂は、繊維に対してバインダとして機能するものであり、その種類は特に限定されない。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、カルボキシル基又は酸無水物基により変性された変性ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリアクリル系樹脂としては、メタアクリレート、アクリレート等が挙げられる。
【0016】
上記繊維基材に含まれる繊維の含有割合は、繊維基材を100質量%とした場合に、20〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%、更に好ましくは30〜50質量%である。この含有割合が上記範囲内である場合、十分な透過率が得られるとともに、曲げ剛性を十分に確保することができる。
【0017】
また、上記繊維基材においては、含有される繊維の配向方向が制御されていてもよい。具体的には、繊維基材の略平面方向に繊維を配向させた繊維基材や、繊維基材の厚み方向に繊維を配向させた繊維基材とすることができる。
【0018】
尚、上記繊維基材には、必要に応じて各種の添加剤が含有されていてもよい。このような添加剤としては、発泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、軟化剤、繊維基材の耐衝撃性及び耐熱性等を向上させるための無機又は有機の各種充填剤、帯電防止剤、着色剤、可塑剤等が挙げられる。
【0019】
上記繊維基材を製造する方法は特に限定されない。具体的には、例えば、繊維及び熱可塑性樹脂を含んだウェブを加熱し、ウェブに含まれた熱可塑性樹脂を溶融させ、繊維同士を、熱可塑性樹脂の溶融物で結着した状態で固化させることにより、繊維基材を得ることができる。
また、上記ウェブを製造する方法も特に限定されない。具体的には、例えば、繊維と熱可塑性樹脂体とを気相中に分散させて混合し、混合された繊維及び熱可塑性樹脂を下方に堆積させることにより、ウェブを得ることができる(乾式法)。また、分散媒内で、繊維と熱可塑性樹脂とを堆積させることにより、ウェブを得ることもできる(湿式法)。尚、いずれの方法においても、必要に応じてウェブにニードリングを施すことができる。
【0020】
本発明の内装材における透光性基材は、上述の透光性を有する部材のみから構成されていてもよいし、不織布層(スクリム層等)、通気止めフィルム層(バリアフィルム層)、接着フィルム層等の他の層を更に備えていてもよい。尚、これらの他の層は、1層のみ配設されていてもよいし、2層以上配設されていてもよい。
この透光性基材の具体的な構成としては、例えば、スクリム層と、通気止めフィルム層と、繊維基材からなる繊維基材層と、接着フィルム層とを、この順に備えるものを挙げることができる。
【0021】
また、透光性基材の目付けは、300〜1500g/m
2であることが好ましく、より好ましくは300〜1000g/m
2、更に好ましくは400〜600g/m
2である。この目付けが上記範囲内である場合、十分な透過率が得られるとともに、曲げ剛性を十分に確保することができる。
【0022】
更に、透光性基材の板厚は、1〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜8mm、更に好ましくは1〜6mmである。この板厚が上記範囲内である場合、十分な透過率が得られるとともに、曲げ剛性を十分に確保することができる。
【0023】
また、透光性基材の透過率は、下記の測定方法において、35〜75%であることが好ましく、より好ましくは40〜70%、更に好ましくは45〜65%である。この透過率が上記範囲内である場合、十分な照度を得ることができる。
<透過率の測定方法>
図3に示すように、被照射面21から600mm離れたところに、100mm角の面発光光源23(株式会社オプトデザイン社製、「UniBrite」)を、その発光面25と被照射面21とが平行になるように設置し、面発光光源23の中央の直下における被照射面21の照度をaとする。次いで、
図4に示すように、被照射面21から600mm離れたところに、裏面に100mm角の上記面発光光源23を載せた透光性基材27を、その発光面29と被照射面21とが平行になるように設置し、透光性基材27上の面発光光源23の中央の直下における被照射面の照度をbとし、[(b/a)×100(%)]により、透過率を算出する。
【0024】
本発明の内装材における上記照明手段は、上述の透光性基材の裏面側に配設され、透光性基材の裏面側から本内装材の表面側に、その発光光を透過させることができる。
この照明手段は、人工光を利用するものであってもよいし、太陽光や月光等の自然光を利用するものであってもよく、その構成は特に限定されない。
人工光を利用する場合には、具体的には、例えば、発光ダイオード(LED)、白熱電球、蛍光灯等の光源を利用する形態の照明手段を挙げることができる。尚、これらの光源は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、自然光を利用する場合には、具体的には、例えば、太陽光等を集光する集光部材や導光部材を備える照明手段を挙げることができる。
【0025】
本発明の内装材における上記表皮層は、上述の透光性基材の表面側に配設され、通常、この表皮層の表面側が意匠面となる。そして、この表皮層の裏面には印刷部と非印刷部とが配されており、上述の照明手段を発光させると、透光性基材の裏面側から表皮層の表面側に光が透過することによって、印刷部による意匠が表皮層の表面に浮かび上がる。
上記表皮層は、透光性を有するものであればよく、不織布、織布、編布等により構成することができる。
上記印刷部は、例えば、凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷により形成することができる。この印刷部により表現される意匠は特に限定されないが、例えば、文字、記号、図柄、及びこれらを組合せたもの等が挙げられる。
また、表皮層の表面は、無地であってもよいし、文字、記号、図柄、及びこれらを組合せたもの等の意匠が印刷等により形成されていてもよい。そして、この表皮層の表面にも図柄等の意匠が形成されている場合には、上述の照明手段を発光させた際に浮かび上がる意匠と融合させることもできる。
【0026】
上記表皮層は、下記の算出方法における透過率の差Dが5〜60%であり、好ましくは10〜55%、より好ましくは15〜50%である。この透過率の差が5%未満の場合、照明時に、表皮層の表面において、図柄等の意匠を十分に浮かび上がらせることができないおそれがある。一方、60%を超える場合、非照明時に、表皮層の表面側から印刷部が透けてしまい、意匠性が低下してしまうおそれがある。
<透過率の差Dの算出方法>
表皮層の裏面に100mm角の面発光光源を設置して、表皮層の表面から600mm離れたところに、その表面と平行になるように被照射面を置いて、非印刷部の真下における被照射面での照度をAとし、印刷部の真下における被照射面での照度をBとする(
図2参照)。そして、[
((A−B)/A
)×100(%)]により、透過率の差Dを算出する
。
【0027】
表皮層の目付けは特に限定されないが、50〜400g/m
2であることが好ましく、より好ましくは75〜300g/m
2、更に好ましくは100〜200g/m
2である。この目付けが上記範囲内である場合、より意匠を浮かび上がらせることができる。
表皮層の厚みは特に限定されないが、0.5〜5mmであることが好ましく、より好ましくは1〜3mm、更に好ましくは1〜2mmである。この厚みが上記範囲内である場合、より意匠を浮かび上がらせることができる。
【0028】
本発明の内装材は、照明時に、表皮層の表面において、非照明時には表現されていない図柄等の意匠を浮かび上がらせることができるとともに、量産用の成形プレスを用いて製造することができるため、様々な分野における内装材として利用することができる。具体的には、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の分野における天井や壁面等に用いられる内装材として利用することができる。更には、建築物や家具等の分野において用いられる内装材として利用することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]内装材(実施例1〜
8)
(1−1)内装材の構成
実施例1〜
8の各内装材1は、車両の天井用内装材として用いられるものであり、
図1に示すように、透光性基材3と、透光性基材3の裏面側(天井側)に配設された照明手段5と、透光性基材3の表面側(室内側)に配設された表皮層7と、を備えている。
透光性基材3は、スクリム層9と、通気止めフィルム層11と、繊維基材層13と、接着フィルム層15とを、この順に備えている(透過率:45%)。
スクリム層9は、スパンポンド不織布により構成されている。
通気止めフィルム層11は、ポリアミド(PA)/ポリプロピレン(PP)により構成されている。尚、PA層側がスクリム層9側となるように配設されている。
繊維基材層13は、繊維(ガラス繊維)と、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)と、発泡剤とを用いて製造した。尚、繊維の含有割合は、繊維基材層を100質量%とした場合に、35質量%である。
接着フィルム層15は、ポリプロピレン(PP)により構成されている。
透光性基材3の目付けは505g/m
2(スクリム層9;15g/m
2、通気止めフィルム層11;60g/m
2、繊維基材層13;400g/m
2、接着フィルム層15;30g/m
2)であり、その板厚は5mmである。
照明手段5は、面状発光体(光源:LED)により構成されている。
表皮層7は、PET繊維を用いた表皮により構成されており、量産用の成形プレスによって、染み出し防止不織布16を介して透光性基材3と一体成形されている。
表皮層7の裏面には、スクリーン印刷により、印刷部と非印刷部とが配されている。
尚、実施例1〜
8の各内装材1の表皮層7においては、それぞれ、異なる印刷濃度で印刷部が形成されており、下記の算出方法による、印刷部と非印刷部における透過率の差D(%)が、表1に示す値となっている。
【0030】
<透過率の差Dの算出方法>
図2に示すように、表皮層7の裏面に100mm角の面発光光源17(株式会社オプトデザイン社製、「UniBrite」)を設置して、表皮層7の表面から600mm離れたところに、その表面と平行になるように被照射面19を置いて、非印刷部の真下における被照射面19での照度をAとし、印刷部の真下における被照射面19での照度をBとする。そして、[
((A−B)/A
)×100(%)]により、透過率の差Dを算出した。
尚、表皮層7を配さず、面発光光源17のみの場合における中心照度は12.84(lx)であった。この際には、面発光光源17の発光面から被照射面19との距離を600mmとした。
【0031】
【表1】
【0032】
[2]内装材の照明時における意匠評価
実施例1〜
8の各内装材1において、照明手段5を発光させ、表皮層7に光を透過させた際に、表皮層7の裏面に形成された印刷部による意匠が、表皮層7の表面に浮かび上がり、はっきりとその意匠を視認できるかどうかを下記の基準により評価した。尚、この際には、目的の意匠の非照明時における視認具合も加味して評価した。その結果を表1に併記する。
<評価方法>
「○」;照明時には、浮かび上がった意匠を十分に認識することができ、且つ、非照明時には、その意匠が認識されない。
「△」;(1)照明時には、浮かび上がった意匠を認識することができ、且つ、非照明時には、その意匠が認識されない。
(2)照明時には、浮かび上がった意匠を十分に認識することができるが、非照明時において、その意匠がぼんやりと認識される。
「×」;(1)照明時には、浮かび上がった意匠を認識することができるが、非照明時においても、その意匠がはっきりと認識される。
(2)照明時に、目的の意匠が全く認識できない。
【0033】
[3]実施例の評価結果及び作用効果
表1によれば、特定の透過率の差Dが
7.7〜47.7%の実施例1〜
8の内装材では、照明時には、浮かび上がった意匠を認識することができ、且つ、非照明時には、その意匠が認識されず、上記評価の結果が「○」又は「△」であった。
以上のことから、本発明における内装材は、照明手段による発光によって、照明時に、表皮層の表面において、非照明時には表現されていない図柄等の意匠を浮かび上がらせることができ、室内の雰囲気を向上させることができる。
【0034】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0035】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。