【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図11に基づいて説明する。
図1〜
図3に示すように、車両Vには、車室SとエンジンルームEとを前後に仕切るダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の前側に配設される左右1対のフロントサイドフレーム2と、これら1対のフロントサイドフレーム2の前端部に左右1対の断面略矩形筒状の内側クラッシュカン3(クラッシュカン)を介して支持されたバンパレインフォースメント(以下、バンパレインと略す)4と、1対のフロントサイドフレーム2の車幅方向外側上方に配置された左右1対のエプロンレインフォースメント(以下、エプロンレインと略す)5と、これら1対のエプロンレイン5の前端部から前方に延びた左右1対の延設部材6と、これら1対の延設部材6よりも前方に延びた左右1対の外側クラッシュカン7(突設部材)等が設けられている。
尚、以下、矢印F方向を前方とし、矢印L方向を左方として説明する。
【0019】
ダッシュパネル1は、フロントサイドフレーム2等に比べて板厚が薄く比較的剛性の低い鋼板からなる。このダッシュパネル1は、車室Sの前端部において上下方向に延びる縦壁部1aと、縦壁部1aの下端縁から後方に向かって後方下がり傾斜状に延びる傾斜部1bとを備えている。縦壁部1aの下端部と傾斜部1bの上端部はスポット溶接により接合されている。傾斜部1bの後端部分は、フロアパネル(図示略)の前端部分に接合されている。縦壁部1aの上端部は、車幅方向に延びるカウル部(図示略)に接合され、ダッシュパネル1の車幅方向両端部はフロントヒンジピラー(図示略)に接合されている。
【0020】
次に、左右1対のフロントサイドフレーム2について、説明する。
図1〜
図7に示すように、左右1対のフロントサイドフレーム2は、車室Sの前端を仕切るダッシュパネル1の前側においてエンジンルームEの左部と右部に夫々前後方向に延びるように配設されている。即ち、左右1対のフロントサイドフレーム2は、車両Vの前端側位置から後方へ向かって略水平状に延び且つ後端側途中部がダッシュパネル1の縦壁部1aに接合され、後端側部分が傾斜部1bとフロアパネルの下面に沿って後方下がり傾斜状に延びて接合されている。フロントサイドフレーム2の後端側部分はダッシュパネル1に接合されている。
【0021】
フロントサイドフレーム2は、車幅方向外側のアウタパネル2aと、車幅方向内側のインナパネル2bとにより前後方向に延びる断面略矩形状の閉断面構造に形成されている。
アウタパネル2aは、平板状のハイテン鋼板をプレス成形した部材であり、アウタパネル2aは、上側に位置するアウタ上フランジ部と、下側に位置するアウタ下フランジ部と、両者の中間に位置する鉛直断面略コ字状のアウタパネル本体部とを備えている。
同様に、ハイテン鋼板製インナパネル2bは、上側に位置するインナ上フランジ部、下側に位置するインナ下フランジ部、両者の中間に位置する鉛直断面略コ字状のインナパネル本体部を備えている。
【0022】
図5,
図6,
図10,
図11に示すように、アウタパネル2aの前端側部分には、上下方向に延びる折れ曲り予定部としてのアウタビード2cが形成され、
図1に示すように、インナパネル2bの後端側部分には、上下方向に延びる折れ曲り予定部としてのインナビード2dが形成されている。これにより、フロントサイドフレーム2に前方から衝撃荷重が作用したとき、フロントサイドフレーム2は、アウタビード2cを基点として車幅方向内側に谷折れ変形すると共にインナビード2dを基点として車幅方向外側に山折れ変形した後、全体的に潰れ変形されて車室Sに伝達される衝撃エネルギーを吸収している。
【0023】
次に、左右1対の内側クラッシュカン3について説明する。
図1〜
図6,
図10,
図11に示すように、フロントサイドフレーム2の前端部には、内側クラッシュカン3の後端部分が内嵌状に挿入されている。この内側クラッシュカン3は、フロントサイドフレーム2と同種の金属製筒状体で形成され、その後端部分には、車幅方向に延びる3つのパイプ状スペーサ(図示略)が配設されている。内側クラッシュカン3の後端部分がフロントサイドフレーム2の前端部と重なり合った部分が結合部Bに相当している。軽衝突等のように衝撃荷重が比較的小さい場合には、フロントサイドフレーム2を破損させることなく、内側クラッシュカン3のみが潰れることによって衝撃エネルギーを吸収し、また、内側クラッシュカン3の変形のみで衝撃エネルギーを吸収できない場合には、前述したようにフロントサイドフレーム2が折れ曲り変形する。
【0024】
左右1対のエプロンレイン5は、1対のフロントヒンジピラーの付け根部分からサスタワー8の前側位置まで左右1対のフロントサイドフレーム2に対して略平行に下側前方へ夫々延設され、1対のサスタワー8を夫々支持している。
図7に示すように、エプロンレイン5は、下壁部と外壁部とからなるアウタパネル5aと、上壁部と内壁部とからなるインナパネル5bとにより前後方向に延びる断面略矩形状の閉断面を構成している。これらエプロンレイン5の車幅方向外側部分には、左右両側のフェンダパネル(図示略)が夫々装着されている。
1対の筒状のサスタワー8は、フロントサイドフレーム2とエプロンレイン5との間でダッシュパネル1に近接配置されている。
【0025】
次に、左右1対の延設部材6について説明する。
図1〜
図8に示すように、左右1対の延設部材6は、左右1対のエプロンレイン5の前端部分から左右1対のフロントサイドフレーム2のアウタビード2cの後側近傍位置まで夫々車幅方向内側に向けて下方に湾曲状に移行している。
これら延設部材6は、アウタパネル6aとインナパネル6bとを備え、断面略矩形状の閉断面形状に夫々構成されている。
【0026】
図5,
図7,
図8に示すように、アウタパネル6aは、断面略コ字状に形成され、前後両端部に上下方向に亙って形成されたフランジ部と、上端部分に車幅方向に開口するように形成された前後1対のサービス穴6sと、下端部分に上下方向に開口するように形成された前後1対のボルト穴6hとを備えている。アウタパネル6aは、上端部分がアウタパネル5aの外壁部に溶接され、下端部分が外側クラッシュカン7を介して連結部材9の上面に連結されている。
【0027】
図6〜
図8に示すように、インナパネル6bは、パネル状に形成され、アウタパネル6aのフランジ部に対応するように前後両端部に上下方向に亙って形成されたフランジ部と、1対のボルト穴6hの上方位置において上下方向に開口するように形成された矩形状のサービス穴6tとを備えている。インナパネル6bは、上端部分がインナパネル5bの内壁部に溶接され、下端部分がアウタパネル2aに溶接されている。
【0028】
次に、左右1対の外側クラッシュカン7について説明する。
左右1対の外側クラッシュカン7は、左右1対のフロントサイドフレーム2の車幅方向外側に設けられ、前側程車幅方向外側に移行するように夫々形成されている。
外側クラッシュカン7は、フロントサイドフレーム2と同種の金属素材で構成され、断面略矩形閉断面状の本体部7aと、本体部7aの後端部から後方に延びる突出部7bと、本体部7aの前端部から前方に延びる突出部7cとを備えている。
これら外側クラッシュカン7は、軽衝突等のように衝撃荷重が比較的小さい場合には、外側クラッシュカン7のみが潰れることによって衝撃エネルギーを吸収し、また、外側クラッシュカン7の変形のみで衝撃エネルギーを吸収できない場合には、吸収できない衝撃エネルギーをエプロンレイン5とフロントサイドフレーム2とに伝達するように構成されている。
【0029】
図7に示すように、突出部7bは、前後1対のボルト穴7h(
図11参照)が上下貫通状に形成され、フロントサイドフレーム2のアウタパネル2aに固着された連結部材9にボルトb1(第1の締結部材)を介して延設部材6のアウタパネル6aと共に締結されている。
図9,
図10に示すように、連結部材9は、外側壁部を省略した略立方体状に形成され、上壁部と下壁部とに上下貫通状に形成された前後1対のボルト穴9hが設けられている。連結部材9は、内側壁部がアウタパネル2aのアウタビード2cの後側部分に溶接によって固定されている。連結部材9の内部には、前後1対のボルト穴9hに対応するように前後1対のパイプ状のスペーサs1が配設されている。
【0030】
図2〜
図4,
図11に示すように、突出部7cは、前後1対のボルト穴7iが上下貫通状に形成され、バンパレイン4の左右両端側後部に夫々設けられた上下方向に延びるパイプ状スペーサs2を上下から挟み込むように配設されている。外側クラッシュカン7とバンパレイン4は、各ボルト穴7iとスペーサs2とを上下方向に貫通したボルトb2(第2のボルト)により締結固定される。
【0031】
次に、内側クラッシュカン3と外側クラッシュカン7の組み付け手順について説明する。
まず、
図10に示すように、内側クラッシュカン3の後端部分をフロントサイドフレーム2の結合部Bに内嵌状に挿入し、ボルトb3が内側クラッシュカン3及びフロントサイドフレーム2を車幅方向に貫通した状態で締結固定される。この後、内側クラッシュカン3にバンパレイン4を内側クラッシュカン3に組み付ける。
【0032】
次に、外側クラッシュカン7を連結部材9に位置決めする。
図11に示すように、ボルト穴7hとボルト穴9hとが重なり合うように外側クラッシュカン7の突出部7bを連結部材9に外嵌させた後、延設部材6のアウタパネル6aを上側突出部7bの上に重ね合わせる。そして、ボルト穴6h,7h,9hに挿入されたボルトb1が連結部材9に設けられたスペーサs1を上下方向に貫通した状態で締結固定される。これにより、外側クラッシュカン7と延設部材6とがフロントサイドフレーム2に固定された連結部材9に固定される。
この後、外側クラッシュカン7の突出部7cのボルト穴7iに挿入されたボルトb3がバンパレイン4に設けられたスペーサs2を上下方向に貫通した状態で締結固定される。
【0033】
外側クラッシュカン7を交換する場合は、インナパネル6bのサービス穴6tから締結工具を挿入し、ボルトb1を取り外すことができるため、ボルトb1,2を外して容易に外側クラッシュカン7を交換することができる。また、軽衝突において、内側クラッシュカン3のみが潰れた場合、外側クラッシュカン7を取り外した後、ボルトb3を取り外して内側クラッシュカン3を交換する。
【0034】
次に、上記車両Vの前部車体構造の作用・効果について説明する。
この車両Vの前部車体構造によれば、内側クラッシュカン3の後端部分がフロントサイドフレーム2の前端部に挿入された結合部Bを介して固定されるため、バンパレイン4と内側クラッシュカン3の上下振動を抑制しながらボルト3により車幅方向から締結固定することができる。
外側クラッシュカン7が結合部Bの前後方向後側においてフロントサイドフレーム2のアウタパネル2aに連結部材9を介して連結され、外側クラッシュカン7と延設部材6とが連結部材9に連結されているため、衝撃荷重を外側クラッシュカン7を介して延設部材6からエプロンレイン5へ能率的に伝達でき、荷重伝達効率を向上することができる。
【0035】
外側クラッシュカン7が前側程車幅方向外側に移行するため、SOL衝突のとき、衝撃荷重を外側クラッシュカン7を介して延設部材6からエプロンレイン5へ一層能率的に伝達でき、荷重伝達効率を向上することができる。
延設部材6が連結部材9の上面に連結されているため、連結部材9と延設部材6との間の衝撃荷重の伝達経路を短縮化でき、荷重伝達効率を更に向上することができる。
【0036】
突設部材が外側クラッシュカン7であり、延設部材6がエプロンレイン5の前端部分から下側内方に移行するように形成され、連結部がフロントサイドフレーム2のアウタパネル2aに固着された連結部材9により形成され、延設部材6と外側クラッシュカン7が連結部材9に上下方向向きのボルトb1により締結されたため、内側クラッシュカン3及び外側クラッシュカン7の交換をボルトb1〜3の脱着によって行うことができ、軽衝突時のリペア性を向上することができる。
【0037】
外側クラッシュカン7の前端部分がバンパレイン4に上下方向向きのボルトb2により締結されている。これにより、外側クラッシュカン7の交換を上下方向からの作業で行えるため、作業能率を高くすることができ、一層軽衝突時のリペア性を向上することができる。
【0038】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、突設部材として軸圧縮変形可能な外側クラッシュカンを用いた例を説明したが、少なくともSOL衝突時、エプロンレインに衝撃荷重を伝達できれば良く、通常のメンバ部材であっても良い。
【0039】
2〕前記実施形態においては、連結部材を介して外側クラッシュカンと延設部材をフロントサイドフレームに固定した例を説明したが、連結部材を省略し外側クラッシュカンの突出部を連結部としてフロントサイドフレームに直接固定し、この突出部に延設部材を固定しても良い。
【0040】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。