特許第6044795号(P6044795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044795
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/34 20060101AFI20161206BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B60R19/34
   B62D25/08 D
   B62D25/08 E
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-126099(P2014-126099)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-2956(P2016-2956A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】亀井 丈広
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 重昭
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−199233(JP,A)
【文献】 特開2013−107091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
B60R 19/24 − 19/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるバンパレインフォースメントと、このバンパレインフォースメントを左右1対のクラッシュカンを介して支持する左右1対のフロントサイドフレームと、左右1対のエプロンレインフォースメントの前端部分から前記左右1対のフロントサイドフレームの前端側部分の車幅方向外側部まで夫々延びた左右1対の延設部材と、これら左右1対の延設部材よりも前方に夫々延びた左右1対の突設部材とを備えた車両の前部車体構造において、
前記クラッシュカンの後端部分が前記フロントサイドフレームの前端部に挿入された結合部を介して固定され、
前記突設部材は前側程車幅方向外側へ移行するように形成され、
前記突設部材の後端部が前記結合部の前後方向後側において前記フロントサイドフレームの車幅方向外側壁部に固着された連結部材に連結され、
前記延設部材の下端部が前記連結部材の上面に連結されたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記突設部材が外側クラッシュカンであり、
前記延設部材が前記エプロンレインフォースメントの前端部分から下側内方に移行するように形成され、
前記連結部が前記フロントサイドフレームの車幅方向外側壁部に固着された連結部材により形成され、
前記延設部材と外側クラッシュカンが前記連結部材に上下方向向きの第1の締結部材により締結されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記外側クラッシュカンの前端部分が前記バンパレインフォースメントに上下方向向きの第2の締結部材により締結されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エプロンレインフォースメントの前端部からフロントサイドフレームの前端側部分の車幅方向外側部まで延びた延設部材と、この延設部材よりも前方に延びた突設部材を備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の前面衝突時の乗員に対する衝撃荷重を低減する為に、フロントサイドフレームに入力される衝撃荷重によりフロントサイドフレームを所定の変形モードで変形させることで衝撃エネルギーを吸収する変形モード制御が知られている。
この変形モード制御においては、衝突初期に、フロントサイドフレームの前端部に設けられたクラッシュカンを潰れ変形させ、衝突中期に、フロントサイドフレームをダッシュパネルとの結合部を基点として車幅方向外側へ向かうように山折れ変形させ、衝突後期に、変形されたフロントサイドフレームを全体的に潰れ変形させることにより、衝突初期に車体減速度を大きくし、その後も大きな車体減速度を維持している。
【0003】
車両の前面衝突では、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側の車体部分に衝撃荷重が作用することがある。このスモールオーバーラップ衝突(以下、SOL衝突と略す)では、衝突物がフロントサイドフレームと前輪との間に入り込む虞があり、また、衝突物とフロントサイドフレームとがオーバーラップする場合に比べてフロントサイドフレームへの荷重伝達効率が低下し、フロントサイドフレームの変形による衝撃エネルギー吸収量が少なく、車室側へ伝達される衝撃荷重が増加する。
【0004】
特許文献1の車両の前部車体構造は、フロントサイドフレームから車幅方向外側に突出する荷重伝達部材としての突出部を設け、この突出部の前端を車体前後方向においてクラッシュカンとフロントサイドフレームとの連結部とセットプレートを介して連結し、突出部の車幅方向外側の側面を平面視において車体後方に向かって車幅方向内側へ傾斜するように形成し、突出部とパワーユニットとを車体前後方向にオーバーラップさせている。
【0005】
また、車体構成部材であるエプロンレインフォースメント(以下、レインフォースメントをレインと略す)を利用して荷重伝達部材を形成する技術も提案されている。
特許文献2の車両の車体構造は、フロントサイドフレームと、エプロンレインと、セットプレートを介してフロントサイドフレームの前端に取り付けられたクラッシュカンとを備え、フロントサイドフレームよりも車幅方向外側にエプロンレインの前端とセットプレートとを連結する荷重伝達部材としての連結部材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−212757号公報
【特許文献2】特開2005−231435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、前端部に大重量であるバンパレインが装着されたクラッシュカンは、その後端部が螺合可能な締結部材(例えばボルト)によってフロントサイドフレームの前端部に設けられたセットプレートに対して前後方向から締結固定されている。
それ故、車両の軽衝突時には、締結部材を取り外して破損したクラッシュカンのみを新しいクラッシュカンに取り替えることにより、リペア性を確保している。
このような構造では、クラッシュカンの後端部がセットプレートに対して締結固定された、所謂面で支持された片持ち構造になっているため、車両の走行振動に起因してバンパレインとクラッシュカンが上下方向に振動し易いことから、NVH(Noise Vibration Harshness)性能が低下し、乗員の室内の居住性が悪化するという問題があった。
【0008】
バンパレインとクラッシュカンの上下振動は、セットプレートによる固定を廃止して、フロントサイドフレームの前端部にクラッシュカンの後端部分を挿入し、締結部材により車幅方向から締結固定することで、クラッシュカンとフロントサイドフレームとの結合領域を増加してクラッシュカンの支持強度を向上させることができ、抑制することができる。
しかし、クラッシュカンをフロントサイドフレームに対して挿入し車幅方向から締結固定する場合、セットプレートが廃止されるため、特許文献1や特許文献2のような荷重伝達部材を、荷重伝達性の高い構造でフロントサイドフレームに結合することが課題となる。
【0009】
本発明の目的は、セットプレートが無い構造において、クラッシュカンのリペア性を確保しつつ、NVH性能と衝撃エネルギー吸収性能とを両立できる車両の前部車体構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の車両の前部車体構造は、車幅方向に延びるバンパレインフォースメントと、このバンパレインフォースメントを左右1対のクラッシュカンを介して支持する左右1対のフロントサイドフレームと、左右1対のエプロンレインフォースメントの前端部分から前記左右1対のフロントサイドフレームの前端側部分の車幅方向外側部まで夫々延びた左右1対の延設部材と、これら左右1対の延設部材よりも前方に夫々延びた左右1対の突設部材とを備えた車両の前部車体構造において、
前記クラッシュカンの後端部分が前記フロントサイドフレームの前端部に挿入された結合部を介して固定され、前記突設部材は前側程車幅方向外側へ移行するように形成され、
前記突設部材の後端部が前記結合部の前後方向後側において前記フロントサイドフレームの車幅方向外側壁部に固着された連結部材に連結され、前記延設部材の下端部が前記連結部材の上面に連結されたことを特徴としている。
【0011】
この車両の前部車体構造では、クラッシュカンの後端部分がフロントサイドフレームの前端部に挿入された結合部を介して固定されるため、バンパレインフォースメントとクラッシュカンの上下振動を抑制しながらボルト等の締結部材により車幅方向から締結固定することができる。
前記突設部材は前側程車幅方向外側へ移行するように形成され、突設部材の後端部が結合部の前後方向後側においてフロントサイドフレームの車幅方向外側壁部に固着された連結部材に連結され、突設部材と延設部材とが連結部材に連結されているため、SOL衝突のとき衝撃荷重を突設部材を介して延設部材からエプロンレインフォースメントへ能率的に伝達でき、荷重伝達効率を向上することができる。
【0012】
そして、前記延設部材の下端部が前記連結部材の上面に連結されているため、連結部材と延設部材との間の衝撃荷重の伝達経路を短縮化でき、荷重伝達効率を更に向上することができる。
【0013】
請求項の発明は、請求項の発明において、前記突設部材が外側クラッシュカンであり、前記延設部材が前記エプロンレインフォースメントの前端部分から下側内方に移行するように形成され、前記連結部が前記フロントサイドフレームの車幅方向外側壁部に固着された連結部材により形成され、前記延設部材と外側クラッシュカンが前記連結部材に上下方向向きの第1の締結部材により締結されたことを特徴としている。
これにより、クラッシュカン及び外側クラッシュカンの交換をボルトの脱着によって行うことができ、軽衝突時のリペア性を向上することができる。
【0014】
請求項の発明は、請求項の発明において、前記外側クラッシュカンの前端部分が前記バンパレインフォースメントに上下方向向きの第2の締結部材により締結されたことを特徴としている。
これにより、外側クラッシュカンの交換を上下方向からの作業で行えるため、作業能率を高くすることができ、一層軽衝突時のリペア性を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両の前部車体構造によれば、セットプレートが無い構造において、クラッシュカンのリペア性を確保しつつ、NVH性能と衝撃エネルギー吸収性能とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係る車両の前部車体の斜視図である。
図2】平面図である。
図3】フロントサイドフレームをエンジンルーム外方側から視た側面図である。
図4】延設部材周辺を斜め後方から視た図である。
図5】延設部材周辺の側面図である。
図6】延設部材のアウタパネルを省略した図5相当図である。
図7図2のVII−VII線断面図である。
図8】延設部材の斜視図である。
図9】連結部材の斜視図である。
図10】フロントサイドフレームに連結部材を組み付けた斜視図である。
図11】フロントサイドフレームに外側クラッシュカンを組み付けた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について図1図11に基づいて説明する。
図1図3に示すように、車両Vには、車室SとエンジンルームEとを前後に仕切るダッシュパネル1と、このダッシュパネル1の前側に配設される左右1対のフロントサイドフレーム2と、これら1対のフロントサイドフレーム2の前端部に左右1対の断面略矩形筒状の内側クラッシュカン3(クラッシュカン)を介して支持されたバンパレインフォースメント(以下、バンパレインと略す)4と、1対のフロントサイドフレーム2の車幅方向外側上方に配置された左右1対のエプロンレインフォースメント(以下、エプロンレインと略す)5と、これら1対のエプロンレイン5の前端部から前方に延びた左右1対の延設部材6と、これら1対の延設部材6よりも前方に延びた左右1対の外側クラッシュカン7(突設部材)等が設けられている。
尚、以下、矢印F方向を前方とし、矢印L方向を左方として説明する。
【0019】
ダッシュパネル1は、フロントサイドフレーム2等に比べて板厚が薄く比較的剛性の低い鋼板からなる。このダッシュパネル1は、車室Sの前端部において上下方向に延びる縦壁部1aと、縦壁部1aの下端縁から後方に向かって後方下がり傾斜状に延びる傾斜部1bとを備えている。縦壁部1aの下端部と傾斜部1bの上端部はスポット溶接により接合されている。傾斜部1bの後端部分は、フロアパネル(図示略)の前端部分に接合されている。縦壁部1aの上端部は、車幅方向に延びるカウル部(図示略)に接合され、ダッシュパネル1の車幅方向両端部はフロントヒンジピラー(図示略)に接合されている。
【0020】
次に、左右1対のフロントサイドフレーム2について、説明する。
図1図7に示すように、左右1対のフロントサイドフレーム2は、車室Sの前端を仕切るダッシュパネル1の前側においてエンジンルームEの左部と右部に夫々前後方向に延びるように配設されている。即ち、左右1対のフロントサイドフレーム2は、車両Vの前端側位置から後方へ向かって略水平状に延び且つ後端側途中部がダッシュパネル1の縦壁部1aに接合され、後端側部分が傾斜部1bとフロアパネルの下面に沿って後方下がり傾斜状に延びて接合されている。フロントサイドフレーム2の後端側部分はダッシュパネル1に接合されている。
【0021】
フロントサイドフレーム2は、車幅方向外側のアウタパネル2aと、車幅方向内側のインナパネル2bとにより前後方向に延びる断面略矩形状の閉断面構造に形成されている。
アウタパネル2aは、平板状のハイテン鋼板をプレス成形した部材であり、アウタパネル2aは、上側に位置するアウタ上フランジ部と、下側に位置するアウタ下フランジ部と、両者の中間に位置する鉛直断面略コ字状のアウタパネル本体部とを備えている。
同様に、ハイテン鋼板製インナパネル2bは、上側に位置するインナ上フランジ部、下側に位置するインナ下フランジ部、両者の中間に位置する鉛直断面略コ字状のインナパネル本体部を備えている。
【0022】
図5図6図10図11に示すように、アウタパネル2aの前端側部分には、上下方向に延びる折れ曲り予定部としてのアウタビード2cが形成され、図1に示すように、インナパネル2bの後端側部分には、上下方向に延びる折れ曲り予定部としてのインナビード2dが形成されている。これにより、フロントサイドフレーム2に前方から衝撃荷重が作用したとき、フロントサイドフレーム2は、アウタビード2cを基点として車幅方向内側に谷折れ変形すると共にインナビード2dを基点として車幅方向外側に山折れ変形した後、全体的に潰れ変形されて車室Sに伝達される衝撃エネルギーを吸収している。
【0023】
次に、左右1対の内側クラッシュカン3について説明する。
図1図6図10図11に示すように、フロントサイドフレーム2の前端部には、内側クラッシュカン3の後端部分が内嵌状に挿入されている。この内側クラッシュカン3は、フロントサイドフレーム2と同種の金属製筒状体で形成され、その後端部分には、車幅方向に延びる3つのパイプ状スペーサ(図示略)が配設されている。内側クラッシュカン3の後端部分がフロントサイドフレーム2の前端部と重なり合った部分が結合部Bに相当している。軽衝突等のように衝撃荷重が比較的小さい場合には、フロントサイドフレーム2を破損させることなく、内側クラッシュカン3のみが潰れることによって衝撃エネルギーを吸収し、また、内側クラッシュカン3の変形のみで衝撃エネルギーを吸収できない場合には、前述したようにフロントサイドフレーム2が折れ曲り変形する。
【0024】
左右1対のエプロンレイン5は、1対のフロントヒンジピラーの付け根部分からサスタワー8の前側位置まで左右1対のフロントサイドフレーム2に対して略平行に下側前方へ夫々延設され、1対のサスタワー8を夫々支持している。
図7に示すように、エプロンレイン5は、下壁部と外壁部とからなるアウタパネル5aと、上壁部と内壁部とからなるインナパネル5bとにより前後方向に延びる断面略矩形状の閉断面を構成している。これらエプロンレイン5の車幅方向外側部分には、左右両側のフェンダパネル(図示略)が夫々装着されている。
1対の筒状のサスタワー8は、フロントサイドフレーム2とエプロンレイン5との間でダッシュパネル1に近接配置されている。
【0025】
次に、左右1対の延設部材6について説明する。
図1図8に示すように、左右1対の延設部材6は、左右1対のエプロンレイン5の前端部分から左右1対のフロントサイドフレーム2のアウタビード2cの後側近傍位置まで夫々車幅方向内側に向けて下方に湾曲状に移行している。
これら延設部材6は、アウタパネル6aとインナパネル6bとを備え、断面略矩形状の閉断面形状に夫々構成されている。
【0026】
図5図7図8に示すように、アウタパネル6aは、断面略コ字状に形成され、前後両端部に上下方向に亙って形成されたフランジ部と、上端部分に車幅方向に開口するように形成された前後1対のサービス穴6sと、下端部分に上下方向に開口するように形成された前後1対のボルト穴6hとを備えている。アウタパネル6aは、上端部分がアウタパネル5aの外壁部に溶接され、下端部分が外側クラッシュカン7を介して連結部材9の上面に連結されている。
【0027】
図6図8に示すように、インナパネル6bは、パネル状に形成され、アウタパネル6aのフランジ部に対応するように前後両端部に上下方向に亙って形成されたフランジ部と、1対のボルト穴6hの上方位置において上下方向に開口するように形成された矩形状のサービス穴6tとを備えている。インナパネル6bは、上端部分がインナパネル5bの内壁部に溶接され、下端部分がアウタパネル2aに溶接されている。
【0028】
次に、左右1対の外側クラッシュカン7について説明する。
左右1対の外側クラッシュカン7は、左右1対のフロントサイドフレーム2の車幅方向外側に設けられ、前側程車幅方向外側に移行するように夫々形成されている。
外側クラッシュカン7は、フロントサイドフレーム2と同種の金属素材で構成され、断面略矩形閉断面状の本体部7aと、本体部7aの後端部から後方に延びる突出部7bと、本体部7aの前端部から前方に延びる突出部7cとを備えている。
これら外側クラッシュカン7は、軽衝突等のように衝撃荷重が比較的小さい場合には、外側クラッシュカン7のみが潰れることによって衝撃エネルギーを吸収し、また、外側クラッシュカン7の変形のみで衝撃エネルギーを吸収できない場合には、吸収できない衝撃エネルギーをエプロンレイン5とフロントサイドフレーム2とに伝達するように構成されている。
【0029】
図7に示すように、突出部7bは、前後1対のボルト穴7h(図11参照)が上下貫通状に形成され、フロントサイドフレーム2のアウタパネル2aに固着された連結部材9にボルトb1(第1の締結部材)を介して延設部材6のアウタパネル6aと共に締結されている。図9図10に示すように、連結部材9は、外側壁部を省略した略立方体状に形成され、上壁部と下壁部とに上下貫通状に形成された前後1対のボルト穴9hが設けられている。連結部材9は、内側壁部がアウタパネル2aのアウタビード2cの後側部分に溶接によって固定されている。連結部材9の内部には、前後1対のボルト穴9hに対応するように前後1対のパイプ状のスペーサs1が配設されている。
【0030】
図2図4図11に示すように、突出部7cは、前後1対のボルト穴7iが上下貫通状に形成され、バンパレイン4の左右両端側後部に夫々設けられた上下方向に延びるパイプ状スペーサs2を上下から挟み込むように配設されている。外側クラッシュカン7とバンパレイン4は、各ボルト穴7iとスペーサs2とを上下方向に貫通したボルトb2(第2のボルト)により締結固定される。
【0031】
次に、内側クラッシュカン3と外側クラッシュカン7の組み付け手順について説明する。
まず、図10に示すように、内側クラッシュカン3の後端部分をフロントサイドフレーム2の結合部Bに内嵌状に挿入し、ボルトb3が内側クラッシュカン3及びフロントサイドフレーム2を車幅方向に貫通した状態で締結固定される。この後、内側クラッシュカン3にバンパレイン4を内側クラッシュカン3に組み付ける。
【0032】
次に、外側クラッシュカン7を連結部材9に位置決めする。
図11に示すように、ボルト穴7hとボルト穴9hとが重なり合うように外側クラッシュカン7の突出部7bを連結部材9に外嵌させた後、延設部材6のアウタパネル6aを上側突出部7bの上に重ね合わせる。そして、ボルト穴6h,7h,9hに挿入されたボルトb1が連結部材9に設けられたスペーサs1を上下方向に貫通した状態で締結固定される。これにより、外側クラッシュカン7と延設部材6とがフロントサイドフレーム2に固定された連結部材9に固定される。
この後、外側クラッシュカン7の突出部7cのボルト穴7iに挿入されたボルトb3がバンパレイン4に設けられたスペーサs2を上下方向に貫通した状態で締結固定される。
【0033】
外側クラッシュカン7を交換する場合は、インナパネル6bのサービス穴6tから締結工具を挿入し、ボルトb1を取り外すことができるため、ボルトb1,2を外して容易に外側クラッシュカン7を交換することができる。また、軽衝突において、内側クラッシュカン3のみが潰れた場合、外側クラッシュカン7を取り外した後、ボルトb3を取り外して内側クラッシュカン3を交換する。
【0034】
次に、上記車両Vの前部車体構造の作用・効果について説明する。
この車両Vの前部車体構造によれば、内側クラッシュカン3の後端部分がフロントサイドフレーム2の前端部に挿入された結合部Bを介して固定されるため、バンパレイン4と内側クラッシュカン3の上下振動を抑制しながらボルト3により車幅方向から締結固定することができる。
外側クラッシュカン7が結合部Bの前後方向後側においてフロントサイドフレーム2のアウタパネル2aに連結部材9を介して連結され、外側クラッシュカン7と延設部材6とが連結部材9に連結されているため、衝撃荷重を外側クラッシュカン7を介して延設部材6からエプロンレイン5へ能率的に伝達でき、荷重伝達効率を向上することができる。
【0035】
外側クラッシュカン7が前側程車幅方向外側に移行するため、SOL衝突のとき、衝撃荷重を外側クラッシュカン7を介して延設部材6からエプロンレイン5へ一層能率的に伝達でき、荷重伝達効率を向上することができる。
延設部材6が連結部材9の上面に連結されているため、連結部材9と延設部材6との間の衝撃荷重の伝達経路を短縮化でき、荷重伝達効率を更に向上することができる。
【0036】
突設部材が外側クラッシュカン7であり、延設部材6がエプロンレイン5の前端部分から下側内方に移行するように形成され、連結部がフロントサイドフレーム2のアウタパネル2aに固着された連結部材9により形成され、延設部材6と外側クラッシュカン7が連結部材9に上下方向向きのボルトb1により締結されたため、内側クラッシュカン3及び外側クラッシュカン7の交換をボルトb1〜3の脱着によって行うことができ、軽衝突時のリペア性を向上することができる。
【0037】
外側クラッシュカン7の前端部分がバンパレイン4に上下方向向きのボルトb2により締結されている。これにより、外側クラッシュカン7の交換を上下方向からの作業で行えるため、作業能率を高くすることができ、一層軽衝突時のリペア性を向上することができる。
【0038】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、突設部材として軸圧縮変形可能な外側クラッシュカンを用いた例を説明したが、少なくともSOL衝突時、エプロンレインに衝撃荷重を伝達できれば良く、通常のメンバ部材であっても良い。
【0039】
2〕前記実施形態においては、連結部材を介して外側クラッシュカンと延設部材をフロントサイドフレームに固定した例を説明したが、連結部材を省略し外側クラッシュカンの突出部を連結部としてフロントサイドフレームに直接固定し、この突出部に延設部材を固定しても良い。
【0040】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0041】
V 車両
B 結合部
2 フロントサイドフレーム
3 内側クラッシュカン
4 バンパレイン
5 エプロンレイン
6 延設部材
7 外側クラッシュカン(突設部材)
9 連結部材
b1,b2 ボルト
s1,s2 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11