(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
伸縮方向に沿ってかつ互いに間隔を空けて設けられた複数本の細長状の弾性伸縮部材と、この弾性伸縮部材の一方側及び他方側にそれぞれ面する第1層及び第2層とを備えており、
前記第1層及び第2層が、伸縮方向に間欠的となる縞状パターンで塗布された接着剤により接合されて、シート接合部が形成されており、
前記弾性伸縮部材が、前記シート接合部と交差する位置で前記接着剤により前記第1層及び第2層に固定されており、
前記弾性伸縮部材の収縮に伴い前記第1層及び第2層が収縮することにより、前記第1層及び第2層におけるシート接合部間に位置する部分が互いに反対向きに膨らんでそれぞれ襞が形成されている、
吸収性物品の伸縮構造を製造する方法において、
前記第1層及び第2層をMD方向に移送しつつ、前記第1層の外面及び前記第2層の内面の両方に、MD方向に間欠的となる同一の前記縞状パターンで接着剤をそれぞれ塗布した後、前記第1層の接着剤のMD方向位置及び前記第2層の接着剤のMD方向位置が合わさるように前記第1層及び第2層を貼り合わせつつ、前記第1層及び第2層間にMD方向に沿って連続的に前記弾性伸縮部材を挟み、前記接着剤により前記弾性伸縮部材を前記第1層及び第2層に固定して、前記伸縮構造を形成するとともに、
前記第1層及び第2層を貼り合わせる前に、前記第1層及び第2層のいずれか一方の層を、そのCD方向中間となる位置で複数の部分に分割し、これら分割した部分のMD方向位置を個別に調整することにより、前記第1層の接着剤のMD方向位置及び前記第2層の接着剤のMD方向位置を合わせる、
ことを特徴とする吸収性物品の伸縮構造の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
<パンツタイプ使い捨ておむつ>
図1〜
図7は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。このパンツタイプ使い捨ておむつは、腹側外装体12Fの幅方向両側縁と背側外装体12Bの幅方向両側縁とが、上下方向全体にわたりヒートシールや超音波溶着等により接合されて筒状の外装体12F,12Bが形成されるとともに、外装体12F,12Bにおける腹側外装体12Fの幅方向中央部内面に内装体200の前端部がホットメルト接着剤等により連結され、背側外装体12Bの幅方向中央部内面に内装体200の後端部がホットメルト接着剤等により連結されている。符号12Aは腹側外装体12Fと背側外装体12Bとの接合部(サイドシール部)を示している。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口部の縁から後身頃Bのウエスト開口部の縁までの縦方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0031】
内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。なお、図中の点模様部分は各構成部材を接合するホットメルト接着剤を示しているが、対象部材の溶着により接合を行う溶着手段を用いることもできる。ホットメルト接着剤は、ベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル等のパターンで塗布する他、弾性伸縮部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性伸縮部材の外周面への塗布を採用することもできる。
【0032】
外装体12F,12Bの上部開口は、装着者の胴を通すウエスト開口部となり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁および内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口部となる。外装体12F,12Bの各溶着部12Aを剥がして展開した状態では、
図1及び
図2に示すように前後方向中間が括れた形状をなす。内装体200は、背側から股間部を通り腹側までを覆うように延在するものであり、排泄物を受け止めて液分を吸収し保持する部分であり、外装体12F,12Bは内装体200を装着者に対して支持する部分である。
【0033】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、
図3〜
図5にも示されるように、身体側となるトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担う本体部である。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させ、逆戻りを防止するために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に設けられた、身体側に起立する立体ギャザー60を示している。
【0034】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0035】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0036】
立体ギャザー60を設ける場合、トップシート30の両側部は、液不透過性シート11と立体ギャザー60との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及び立体ギャザー60に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0037】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0038】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m
2が好ましく、25〜60g/m
2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0039】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0040】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0041】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0042】
また、液不透過性シート11の内側、特に吸収体56側面に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータを設けることができる。
【0043】
(立体ギャザー)
立体ギャザー60は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。本形態の立体ギャザー60は、内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0044】
より詳細には、立体ギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。立体ギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向においてシート折り返し部分と反対側の端部)は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、突出部分66は、幅方向中央側に向かう付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返された先端側部分とからなる。この形態は面接触タイプの立体ギャザーであるが、幅方向外側に折り返されない線接触タイプの立体ギャザー(図示略)も採用することができる。そして、突出部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対してホットメルト接着剤やヒートシールにより固定された前後固定部67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸長状態で固定されている。
【0045】
ギャザーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m
2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザーシート62の間に防水フィルム64を介在させることもできる。
【0046】
立体ギャザー60の自由部分に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。
【0047】
立体ギャザー60の取付部分65の固定対象は、内装体200におけるトップシート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができる。
【0048】
かくして構成された立体ギャザー60では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが
図3に示すように身体側に起立する。特に、取付部分65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において立体ギャザー60が幅方向外側に開くように起立するため、立体ギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
【0049】
立体ギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば
図6に示すように、立体ギャザー60の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、立体ギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0050】
なお、図示形態と異なり、内装体200の左右各側において立体ギャザー60を二重に(二列)設けることもできる。
【0051】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0052】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m
2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m
2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0053】
吸収体56は長方形形状でも良いが、
図1に示すように、前端部、後端部及びこれらの間に位置し、前端部及び後端部と比べて幅が狭い括れ部とを有する形状を成していると、吸収体56自体と立体ギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0054】
また、吸収体56の寸法は適宜定めることができるが、前後方向及び幅方向において、内装体の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の幅を示している。
【0055】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0056】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量(JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」)が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0057】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度(JIS K7224−1996高吸水性樹脂の吸水速度試験方法)が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0059】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m
2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m
2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m
2を超えると、効果が飽和する。
【0060】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0061】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m
2、特に10〜30g/m
2のものが望ましい。
【0062】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0063】
(股間部カバーシート)
内装体における液不透過性シートの裏面には、内装体の露出部分の一部(例えば腹側外装体と背側外装体との間に露出する部分の前後方向全体にわたるが、内装体の前後端まで延びず、また幅方向両側縁も内装体の両側縁までは達しない程度)又は全体を覆うように、股間部カバーシートを貼り付けることもできる。股間部カバーシートとしては、後述する外装体に用いられるものと同様の素材を用いることができる。
【0064】
(外装体)
外装体12F,12Bは、サイドシール部12Aを有する縦方向範囲(ウエスト開口部WOから脚開口部LOの上端に至る縦方向範囲)として定まる胴周り部Tと、脚開口部LOを形成する部分の前後方向範囲(腹側外装体12Fのサイドシール部12Aを有する縦方向領域と背側外装体12Bのサイドシール部12Aを有する縦方向領域との間)として定まる中間部Lとを有する。胴周り部Tは、概念的にウエスト開口部の縁部を形成する「ウエスト縁部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下部」Uとに分けることができる。通常、胴周り部T内に幅方向伸縮応力が変化する境界(例えば弾性伸縮部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口部WO側の境界よりもウエスト開口部WO側がウエスト縁部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口部WO側がウエスト縁部Wとなる。これらの縦方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト縁部Wは15〜40mm、ウエスト下部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間部Lは省略することもでき、また腹側外装体及び背側外装体の両方に設けることもできるが、図示形態では背側外装体12Bにのみ中間部Lを設け、臀部をカバーする形態を採用している。中間部Lの脚側の縁を脚周りに沿うように曲線状に形成すると、脚周りに対するフィット性が良好となるため好ましい。
【0065】
外装体12F,12Bは、腹側外装体12F及び背側外装体12Bからなり、腹側外装体12F及び背側外装体12Bは脚側で連続しておらず、離間されている。この離間距離L8は150〜250mm程度とすることができる。内装体200における腹側外装体12F及び背側外装体12B間に露出する領域の一部又は全部は、図示しないカバーシートにより被覆することもできる。この場合におけるカバーシートの素材は外装体12F,12Bを構成する素材と同様のものを用いることができる。他方、
図9〜
図12に示す例のように、前身頃Fから後身頃Bまでを一体的な外装体12により連続的に覆う構成とすることもできる。
【0066】
腹側外装体12F及び背側外装体12Bは、
図5及び
図7に示されるように、二枚のシート材12S,12Hを接合して形成されており、外側に位置する第1シート材12Sが第2シート材12Hのウエスト開口部WOの縁において内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側の端部上までを被覆するように延在されている。
【0067】
シート材12S,12Hとしては、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。柔軟性を重視する場合には、第1シート材12S及び第2シート材12Hの少なくとも一方として、ポリプロピレン(PP)又はそのコポリマー(例えばポリエチレンや、エチレンを共重合成分として配合したコポリマー)の不織布(以下、PP系不織布ともいう)や、ポリエチレン(PE)を鞘に、ポリプロピレン(PP)を芯成分にした芯鞘繊維(PE/PP)の不織布を用いるのが好ましい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。特に、強度及び柔軟性に優れている点からスパンボンド不織布が好ましく、特にスパンボンド層を複数積層してなるスパンボンド不織布、例えばSS不織布(二層)や、SSS不織布(三層)を好適に用いることができ、四層以上のものを用いることもできる。また、不織布の厚みや目付けは特に限定されないが、厚みは0.1〜1mm、目付は10〜20g/m
2程度であることが望ましい。なお、シート材12S,12Hはそれぞれ一枚の不織布から構成される他、いずれか一方又は両方が複数枚の不織布の積層体であっても良い。
【0068】
そして、腹側外装体12F及び背側外装体12Bには、装着者の胴周り等に対するフィット性を高めるために、両シート材12S,12Hの少なくとも一方により形成される内側層21及び外側層22間に糸ゴム等の細長状の弾性伸縮部材19(後述するウエスト縁部弾性伸縮部材17、ウエスト下部弾性伸縮部材15、中間部弾性伸縮部材16)が所定の伸長率で設けられている。細長状の弾性伸縮部材19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
【0069】
図5に示される形態では、弾性伸縮部材19の外側に面する外側層22が第1シート材12Sにより形成され、弾性伸縮部材19の内側に面する内側層21が第2シート材12Hにより形成されているが、内側層21及び外側層22の構造は公知のものを特に限定無く利用することができる。例えば、
図10に示すように、ウエスト縁部Wでは内側層21を第1シート材12Sの折り返し部分12rにより、また外側層22を第1シート材12Sの外側部分によりそれぞれ形成し、ウエスト下部U及び中間部Lでは内側層21を第2シート材12Hにより、また外側層22を第1シート材12Sの外側部分によりそれぞれ形成することもできる。
図12に示すように、第1シート材12Sをウエスト開口部の縁で内側(外側とすることも可能である)に折り返して内側層21及び外側層22を構成することもできる。
図12に示す例は、前身頃Fから後身頃Bまでを一体的な外装体12により連続的に覆う形態を採用しているが、腹側外装体12F及び背側外装体12Bに二分割する形態においても、
図8に各種形態を示すように、腹側外装体12F及び背側外装体12Bの少なくとも一方において、全部の内側層21及び外側層22を一枚のシート材の折り返しにより形成するか、又は一部の内側層21及び外側層22を一枚のシート材の折り返しにより形成し、残りの部分の内側層21又は外側層22を二枚のシート材の貼り合わせによりそれぞれ形成することができる。なお、符号12d縦方向に隣接するシート材の離間部分を示しており、符号12wはシート材の重なり部分を示している。また、
図23及び
図24に示す形態のように、腹側外装体12F及び背側外装体12B(いずれかも一方でも良い)において、一枚のシート材の股間側及びウエスト側の折り返しにより、全部の内側層21及び外側層22を形成することもできる。
【0070】
また、
図5等に示される形態では、内側層21よりも内側への折り返し部分12rが形成されているが、
図12や
図8に示すように、内側層21よりも内側への折り返し部分12rは省略することもできる。
【0071】
弾性伸縮部材19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。弾性伸縮部材19は、外装体の全体にわたり一様に設けることもできるが、外装体12F,12Bの位置に応じて太さや間隔等を異ならしめることが好ましい。このため図示形態では、ウエスト縁部Wには、サイドシール部間の幅方向全体にわたり伸縮領域が形成されるように、複数のウエスト縁部弾性伸縮部材17が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。ウエスト縁部弾性伸縮部材17のうち、ウエスト下部Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト縁部弾性伸縮部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸長率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、ウエスト縁部弾性伸縮部材17は、その全てが同じ太さと伸長率にする必要はなく、例えばウエスト縁部Wの上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸長率が異なるようにしてもよい。
【0072】
また、ウエスト下部Uには、内装体200の固定領域内の幅方向中央部又は全部は非伸縮領域NAとされ、非伸縮領域NAとサイドシール部12Aとの間の幅方向全体にわたり伸縮領域が形成されるように、細長状弾性伸縮部材からなるウエスト下部弾性伸縮部材15,18が複数本、上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。
【0073】
ウエスト下部弾性伸縮部材15,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸長率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0074】
また、中間部Lには、内装体200の固定領域内の幅方向中央部又は全部は非伸縮領域NAとされ、非伸縮領域NAとサイドシール部12Aとの間の幅方向全体にわたり伸縮領域が形成されるように、細長状弾性伸縮部材からなる中間部弾性伸縮部材16が複数本、上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。
図2等に示す形態では、中間部Lが背側にのみ設けられているが、これとともに
図9等に示すように(又は図示しないがこれに代えて)腹側にも設けることができる。
【0075】
中間部弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸長率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0076】
なお、図示のように、内装体200の固定領域内の幅方向中央部又は全部は非伸縮領域NAとされ、非伸縮領域NAとサイドシール部12Aとの間の幅方向全体にわたり伸縮領域が形成されていると、弾性伸縮部材19の収縮力により内装体200が幅方向に収縮変形することがなく、吸収性や見栄え等の悪化を防止できる。この形態には、非伸縮領域NAに弾性伸縮部材19が存在しない形態の他、非伸縮領域NAにも弾性伸縮部材19が存在しているが、非伸縮領域NA内では弾性伸縮部材19が幅方向に細かく切断され、収縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材19を設けないことに等しい)形態も含まれる。もちろんウエスト下部弾性伸縮部材15,18及び中間部弾性伸縮部材16の配設形態は上記例に限るものではなく、ウエスト下部弾性伸縮部材15,18及び中間部弾性伸縮部材16の一部または全部を、内装体200を横切って両サイドシール部12A間にわたり設け、幅方向全体にわたる伸縮領域を設けることもできる。
【0077】
そして、特徴的には、
図7に示すように、腹側外装体12F及び背側外装体12Bに形成される全伸縮領域(一部でも良い)は、内側層21及び外側層22が、幅方向に間欠的となる縦縞状パターンで塗布された接着剤71により接合されたシート接合部70を有するとともに、シート接合部70と弾性伸縮部材19とが交差する部分で、弾性伸縮部材19の内外両側で縦方向に連続する接着剤71により弾性伸縮部材19が内側層21及び外側層22に固定されている。このような伸縮領域では、弾性伸縮部材19の内外両側で縦方向に連続する接着剤71によりシート接合部70は縦縞状に形成され、弾性伸縮部材19の収縮に伴い、
図7(b)に示すように、第1シート材12S及び第2シート材12Hにおけるシート接合部70間に位置する部分がそれぞれ収縮し、互いに反対向きに膨らんで襞80が形成される。
図7(b)は自然長の状態であるが、装着時にはこの状態から弾性伸縮部材1915,16がある程度まで伸長され、
図7(c)に示すように、襞80の裾が広がり、それに伴い襞80の高さ80hが低くなる。この伸縮構造は、縦方向連続接合形態であるため、伸縮領域に形成される襞80はシート接合部70に沿って縦方向に真直ぐに延び、見栄え、通気性に優れたものとなる。しかも、伸縮領域における弾性伸縮部材19は、シート接合部70の接着剤71と交差する部分で弾性伸縮部材19の内外両側において縦方向に連続する接着剤71により内側層21及び外側層22の両方にしっかりと接着されるため、弾性伸縮部材19の引き込み防止性にも優れたものとなる。
【0078】
図示しないが、引き込み防止性をより一層優れたものとするために、弾性伸縮部材19における伸縮領域の幅方向両端部では、縦縞状パターンで塗布された接着剤71によるシート接合部70と交差しない部分においても、弾性伸縮部材19の外周面に塗布された接着剤71により内側層21及び外側に固定されているのも好ましい形態である。なお、伸縮領域の両端部以外、例えば非伸縮領域NAにも必要に応じて弾性伸縮部材19の外周面に接着剤71を塗布することができるが、伸縮領域の両端部間となるMD方向範囲では弾性伸縮部材19の外周面に接着剤71を塗布しないものとする。
【0079】
図示形態のように、内装体200の固定領域内の幅方向中央部又は全部は弾性伸縮部材19の切断により非伸縮領域NAとされ、非伸縮領域NAとサイドシール部12Aとの間の幅方向全体にわたり伸縮領域が形成される形態の場合、非伸縮領域NAでは、切断後の弾性伸縮部材19の細片が内側層21及び外側層22を伴わずに収縮する方が好ましく、それゆえ弾性伸縮部材19の接着力は弱くてよい。よって、非伸縮領域NAでは、
図5に拡大して示すように、シート接合部70と弾性伸縮部材19とが交差する部分で、接着剤71が弾性伸縮部材19の内外いずれか一方側で縦方向に不連続とされているのも好ましい。これにより、接着剤71使用量の低減及び外装体12の非伸縮領域NAの柔軟性の向上も図ることができる。
【0080】
各シート接合部70の幅70w及び隣り合うシート接合部70の間隔70d(
図7参照)は適宜定めることができるが、各シート接合部70の幅方向の寸法70wは0.5〜4mmとされるのが好ましく、隣り合うシート接合部70の間隔70dが4〜8mm(好ましくは5〜7mm)とされるのが好ましい。シート接合部70の幅方向の寸法70wの下限は、1mmとすると製造容易性の観点からは好ましいが、柔軟性の観点からは0.5mmとすることが好ましい。一方、シート接合部70の幅方向の寸法70wの上限は2mmであると好ましく、1.5mmであるとより好ましい。
【0081】
各シート接合部70の幅70wは隣り合う襞80の間隔に影響を及ぼすものであり、縦方向連続接合形態のように、形成される襞80が薄い場合にこの幅が4mmを超えると、隣り合う襞80の間が広くなり過ぎ、個々の襞80が独立した見栄えとなるだけでなく、厚み方向の圧縮力により襞80が潰れ広がる、倒れる等の変形をするとき、隣り合う襞80が支え合う作用が弱くなる結果、変形に対する抵抗あるいは変更後の復元も弱くなり、結果的にフンワリ感が不十分となってしまう。
【0082】
しかも、単にシート接合部70の幅70wを0.5〜4mmとするだけで、隣り合うシート接合部70の間隔70dを4mm未満又は8mm超とした場合には次のようになる。すなわち、隣り合うシート接合部70の間隔70dは襞80の高さ80hや幅に影響するものであり、隣り合うシート接合部の間隔が2mm程度であると幅方向に連続固定した場合と同様の縦方向の連続性に乏しい襞80となってしまい(幅方向に間欠的にシート接合部70を設ける意味が無くなる)、3mmでは襞80は縦方向に真直ぐに延びるが、隣り合う襞80が支え合う作用は期待できず、フンワリ感は不足する。また、シート接合部70の間隔70dが8mmを超えると、包装時の圧縮により襞80が不規則に潰れてしまい、製品の見栄えが悪くなる。これに対して、シート接合部70の幅70wを0.5〜4mmとし、かつシート接合部70の間隔70dを4〜8mmとしたときに初めて、十分なフンワリ感が得られ、また、包装時の圧縮により襞80が不規則に潰れにくいものとなる(換言すると、真直ぐに延びる襞でありながら十分な高さと倒れにくさを両立させることができる)。しかも、縦方向連続接合形態において溶着によりシート接合部70を形成すると、硬い筋が形成されてしまい柔軟性の低下は避けえないが、接着剤71によりシート接合部70を形成すると、素材溶着による柔軟性の低下は発生せず、より柔軟性に優れたものとなる。
【0083】
なお、上記伸縮領域ではシート接合部70が幅方向に間欠的となるため、弾性伸縮部材19の固定力の低下は避けられず、弾性伸縮部材19が抜けてしまうおそれがある。特に、各シート接合部70の幅70wは狭いことが望ましいが、その場合、弾性伸縮部材19とシート接合部70とが交差する位置が小さくなり、この小さな位置で弾性伸縮部材19を固定することが必要となり、弾性伸縮部材19の固定力の確保が重要となる。したがって、上記のような幅の狭いシート接合部を設ける場合に、前述の両面塗布は好適である。
【0084】
第1シート材12S及び第2シート材12Hとしては不織布が好適であるが、その場合に幅方向の剛軟度が低いと、襞80が薄く鋭利な形状になるとともに倒れ易くなり、また、厚み方向の圧縮復元性も乏しくなる。これを改善するために不織布の目付を増やすことも考えられるが、ゴワゴワして(剛性が向上しすぎて)見た目はフンワリしていても触ったときの柔らかさが乏しくなるおそれがある。よって、第1シート材12S及び第2シート材12Hとして不織布を用い、幅方向の剛軟度が縦方向の剛軟度よりも高くすることが好ましい。これにより、襞80が丸く膨らみ易くなり、厚み方向の圧縮回復性に富むようになるとともに、襞80が倒れにくくなり、しかも触ったときの柔らかさに富むようになる。第1シート材12S及び第2シート材12Hの幅方向の剛軟度はそれぞれ、好ましくは30〜75mm、より好ましくは40〜55mmであり、縦方向の剛軟度は幅方向の剛軟度未満の範囲内で、好ましくは20〜50mmで、より好ましくは25〜35mmである。
【0085】
ここで不織布の剛軟度は、JIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の剛軟度A法(45度カンチレバー法)に準じて測定される値を意味する。
【0086】
不織布の縦方向の剛軟度を幅方向の剛軟度未満とするには、不織布の繊維配向が幅方向に沿うように構成すれば良い。ここで、繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、「繊維配向が幅方向に沿う」とは、不織布を構成する総繊維重量のうち、100%が幅方向に繊維配向されているものから、50%以上が幅方向に対して−45°〜+45°の範囲で繊維配向性を有するようにされているものまでのことをいう。不織布の繊維配向性の測定方法は、一般に用いられている測定方法を使用することができる。測定方法の例としては、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、幅方向及びその直交方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法を挙げることができる。後者の簡易的測定方法では、長さ200mm、幅50mmの試験片を、引張試験機を使用して、クロスヘッドスピード500mm/min、チャック間距離150mmの条件下で引張試験を行い、引張り時の最大荷重から引張強度を求め、引張強度の比(幅方向/縦方向)が1より大きければ、繊維配向が幅方向に沿うものとする。
【0087】
隣り合う弾性伸縮部材19の間隔19d(
図7参照)は適宜定めることができるが、10mmを超えると、縦方向間欠接合形態ほどではないが、襞80の厚みが縦方向に変化し、もこもことしてくるため、隣り合う弾性伸縮部材19の間隔19dは10mm以下、特に3〜7mmとすることが好ましい。
【0088】
弾性伸縮部材19の太さ、及び伸長率(伸縮構造を完全に展開した状態における伸長率)は、弾性伸縮部材19の取付位置に応じて適宜選択すれば良く、好ましい範囲については前述のとおりである。総じて、弾性伸縮部材19の太さは300〜1,000dtex程度、伸長率は200〜350%程度とすることが望ましい。
【0089】
(その他)
上記例では、パンツタイプ使い捨ておむつのウエスト縁部Wだけでなく、ウエスト下部U及び中間部Lまで同様の伸縮領域を形成しているが、ウエスト縁部W、ウエスト下部U、及び中間部Lの一部に他の公知の伸縮構造を適用しても良く、また中間部Lの弾性伸縮部材16を省略しても良い。また、図示例では各身頃におけるシート接合部70をウエスト縁部Wを含めて縦方向に連続させたが、ウエスト縁部Wのシート接合部70及びウエスト下部Uのシート接合部70を個別にかつ互いに間隔を空けて形成することもできる。
【0090】
<パンツタイプ使い捨ておむつの製造方法例>
(第1の形態)
図13〜
図15は、パンツタイプ使い捨ておむつの製造方法の一例を示している。この製造ラインは、おむつ幅方向がMD方向(マシンディレクション、ライン流れ方向)となる横流れ形態となっており、ここで腹側外装体12Fとなる腹側伸縮帯12f及び背側外装体12Bとなる背側伸縮帯12bが形成されるとともに、別のラインで製造された内装体200が腹側伸縮帯12f及び背側伸縮帯12bに取り付けられる。なお、説明を判り易くするために、製造過程で連続している部材についても、製造後の部材と同じ符号を用いている。
【0091】
より詳細に説明すると、この製造ラインは、接着剤塗布工程300、弾性部材取付工程301、弾性部材切断工程302、内装体取付工程305、折り畳み工程306、側部接合工程307、及び切り離し工程308を有しており、このうち主に接着剤塗布工程300から弾性部材取付工程301にかけての部分が従来と比べて特徴的な工程となっている。
【0092】
すなわち、接着剤塗布工程300では、腹側外装体12F用及び背側外装体12B用にそれぞれ所定の幅で帯状に連続する第1シート材12S(外側層22を含む)及び第2シート材12H(内側層21)を供給し、第1シート材12S及び第2シート材12Hをその連続方向に沿って移送しつつ、外側層22の内面(図中上面)及び内側層21の外面(図中下面)の両方に、MD方向に間欠的となる同一の縦縞状パターンで接着剤71をそれぞれ塗布する。
【0093】
そして、続く弾性部材取付工程301では、内側層21の接着剤71のMD方向位置及び外側層22の接着剤71のMD方向位置が合わさるように内側層21及び外側層22を貼り合わせつつ、内側層21及び外側層22間に多数の細長状弾性伸縮部材19をCD方向に間隔を空けてかつそれぞれMD方向に伸長した状態で連続的に挟み、接着剤71により弾性伸縮部材19を内側層21及び外側層22に固定することにより、帯状に連続する腹側伸縮帯12f及び背側伸縮帯12bが形成される。このように、内側層21及び外側層22の対向する両面に同一の縦縞状パターンで接着剤71を塗布し、両方の接着剤71位置が合わさるように内側層21及び外側層22を貼り合わせると、弾性伸縮部材19は接着剤71と交差する部分で内側層21及び外側層22の両方にしっかりと接着される。
【0094】
接着工程300における接着剤71としてはホットメルト接着剤71が好適に用いられる。ホットメルト接着剤71としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在し、特に限定無く使用できるが、粘着ゴム系(エラストマー系)を使用するのが望ましい。内側層21及び外側層22の貼り合わせの際の位置調整を容易に行うため、あるいは位置ズレを検査等するために、有色(透明及び白色除く)の接着剤を用いたり、特開2003−145028号公報に示されるように蛍光成分を含有する接着剤を用いたりすることも好ましい形態である。
【0095】
ホットメルト接着剤71の塗布方式は特に限定されるものではないが、前述のようにシート接合部70の幅70wを細く、例えば1mm以下とする場合、ホットメルト接着剤の塗布幅71wが狭くなり、カーテンやベタ等のようにノズルから噴射する塗布方式による間欠塗布では塗布が困難なため、細幅塗布に好適なパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤71の転写)を採用することが望ましい。
図16は、ホットメルト接着剤のパターンコート設備例を示している。すなわち、このパターンコート式の設備では、対象のシート材120(第1の形態における第1シート材12Sや第2シート材12H)は、ロール101に沿って案内される過程で、周方向に間欠的な凸パターンを有する版ロール102と接触され、搬送方向(MD方向。幅方向となる方向である。)に間欠的に、かつ搬送方向と交差する方向(CD方向)に連続的に、ホットメルト接着剤71が転写塗布されるものである。符号103は版ロール102の凸パターンにホットメルト接着剤71を所定の厚さで転写塗布するためのホットメルト接着剤供給ロール(凸版印刷におけるアニロックスロール)を示しており、符号104はホットメルト接着剤供給ロール103にホットメルト接着剤71を供給する供給ノズルを示している。
【0096】
ただし、このようなパターンコートによる塗布方式を採用した場合であっても、ホットメルト接着剤71の種類によってはホットメルト接着剤71が糸引きしてしまい、塗布幅(つまりシート接合部70の幅)の精度の低下や、操業安定性の低下をもたらすおそれがある。よって、ホットメルト接着剤71としては、温度140℃における溶融粘度が10000mpas以下、温度160℃における溶融粘度が5000mpas以下、かつループタック粘着力が2000g/25mm以上のものを用いることが望ましい。これにより、糸引きのおそれが少なくなり、塗布幅精度及び操業安定性の向上を図ることができる。
【0097】
なお、ホットメルト接着剤71のループタック粘着力は、次のように測定される値を意味する。すなわち、ホットメルト接着剤を厚さが50μmのPET板上に50μmの厚みで塗布する。これを、幅25mm、長さ125mmの大きさに切り取り、テープ状とした後、そのテープの両端を重ね合わせることでループ状とする。このループを、LT−100型ループタックテスター(ケムインストルメント社製)に固定した後、PE(ポリエチレン)板に対して、25mm×25mmの接着面積で、接着時間2秒で接着する。次いで、20℃で、引き剥がし速度300mm/分でループ状のテープを引き剥がし、最大の力を測定し、ループタック粘着力とする。
また、ホットメルト接着剤71の溶融粘度は、JIS Z 8803に従い、ブルックフィールドB型粘度計(スピンドルNo.027)を用いて、規定の温度で測定されるものである。
【0098】
弾性部材取付工程301を経て形成された伸縮帯12f、12bは、後述する内装体取付工程305に先立ち、必要に応じて弾性部材切断工程302が行われ、MD方向に所定の間隔を空けて、背側伸縮帯12bの弾性伸縮部材19及び腹側伸縮帯12fの弾性伸縮部材19の各一部(非伸縮領域NAとなる部分)が切断やヒートエンボス等の方法により幅方向に細く分断化され、当該領域は弾性伸縮部材19の収縮力が作用しない非伸縮領域NAとされる。この弾性部材切断工程302は省略することもできる。
【0099】
しかる後、内装体取付工程305では、予め別ラインで製造しておいた内装体200がMD方向に所定の間隔を空けて供給され、内装体200の前側の部分が腹側伸縮帯12fに、及び内装体200の後側の部分が背側伸縮帯12bに対してそれぞれ接合されることにより、内装組み付け体が形成される。これらの接合はホットメルト接着剤やヒートシール等の適宜手段により行うことができる。また、内装体200は、別ラインで完全体に形成されたものを供給してもよいし、別ラインで複数のパーツとして形成されたものを個別に供給し、伸縮体12f,12b上で組み上げるようにしてもよい。
【0100】
内装体取付工程305では、内装体200が伸縮帯の内面に接合された後に、必要に応じて、第1シート材12SのCD方向外側の端部がCD方向中央側に折り返されて、内装体200のCD方向両端部までの領域が第1シート材12Sの折り返し部分12rにより被覆される。この折り返し部分12rは第2シート材12Hの内面及び内装体200のCD方向両端部の内面に対して、ホットメルト接着剤71やヒートシール等の適宜手段により固定される。
【0101】
そして、折り畳み工程306において、腹側伸縮帯12fにおける内装体200の取り付け面と、背側伸縮帯12bにおける内装体200の取り付け面とが重なるように、内装組み付け体がCD方向中央で折り畳まれた後、側部接合工程307において、個々のおむつの両側部となる部分において腹側伸縮帯12f及び背側伸縮帯12bが接合されてサイドシール部12Aが形成され、切り離し工程308において、腹側伸縮帯12f及び背側伸縮帯12bを個々のおむつの境界において切断されて、個々のおむつDPが得られる。側部接合工程307及び切り離し工程308は同時的に行うことができる。なお、腹側伸縮帯12fと背側伸縮帯12bの幅が一致しない場合、サイドシール部12Aは、両伸縮帯12f,12bが重なっている部分のみに形成してもよいし、どちらか広いほうに形成される余剰部分を含めた全体に亘って形成してもよい。
【0102】
以上の製造手法により前述の
図1〜
図7に示す形態と同様のパンツタイプ使い捨ておむつを製造することができる。なお、上記例では、腹側用のシート材及び背側用のシート材を別々に供給又は形成し、それぞれ別々に接着剤塗布工程300及び弾性部材取付工程301を行い、背側伸縮帯12b及び腹側伸縮帯12fを独立的に形成しているが、
図17(a)に示すように腹側及び背側の両方分の幅の第1シート材12S及び第2シート材12Hを供給し、一枚の伸縮帯を形成した後に、センタースリット工程303でスリッターによりCD方向中間位置SLで分割して腹側伸縮帯12f及び背側伸縮帯12bを形成する手法を採用することもできる。また、
図17(b)に示すように、第1シート材12S及び第2シート材12Hは、インラインでスリッターにより一枚のシート材12QをCD方向中間位置SLで切断することにより形成し、そのまま接着剤塗布工程300へ供給することも可能である。
【0103】
(第2の形態)
上記第1の形態のように内側層21及び外側層22として別々の第1シート材12S及び第2シート材12Hを移送して貼り合わせる場合、第1シート材12Sの接着剤71のMD方向位置及び第2シート材12Hの接着剤71のMD方向位置がずれ易く、これを整合させるための位置調整も複雑となる。そこで、
図18及び
図19に示される第2の形態も提案される。すなわち、第2の形態では、接着剤塗布工程300及び弾性部材取付工程301を変更し、さらに弾性部材切断工程302と内装体取付工程305との間にセンタースリット工程303を追加した点が第1の形態と異なるものである。
【0104】
より詳細には、接着剤塗布工程300では、CD方向一方側から腹側外装体12Fの内側層21及び外側層22、並びに背側外装体12Bの外側層22及び内側層21をこの順に含む、帯状に連続する一枚のシート材12Qを供給し、このシート材12Qをその連続方向に沿って移送しつつ、その内面(図中上面)における腹側外装体12Fの内側層21及び外側層22の両方にわたる縦縞状パターン、並びに背側外装体12Bの内側層21及び外側層22の両方にわたる縦縞状パターンで接着剤71をそれぞれ塗布する。内側層21及び外側層22にMD方向位置が同一の縦縞状パターンとなる限り、内側層21のパターンと外側層22のパターンとが離間していても良い。また、後の弾性部材取付工程301以降の内側層21の位置に合わせて、
図18及び
図19に示すように、腹側の接着剤71の縦縞状パターンと背側の接着剤71の縦縞状パターンとを離間させる他、図示しないが、腹側の接着剤71の縦縞状パターンと背側の接着剤71の縦縞状パターンとを連続させることもできる。
【0105】
そして、続く弾性部材取付工程301では、シート材12QのCD方向中間に位置する外側層22の部分に、多数の弾性伸縮部材19がCD方向に間隔を空けてかつMD方向に伸長された状態で供給され、シート材12QにおけるCD方向中間の外側層22の部分よりもCD方向一方側に位置する腹側外装体12Fの内側層21の部分及び他方側に位置する背側外装体12Bの内側層21の部分が、CD方向中間の外側層22の部分における弾性伸縮部材19を有する側にそれぞれ折り返されて貼り合わされつつ、それら内側層21及び外側層22間に弾性伸縮部材19が挟まれ、接着剤71により弾性伸縮部材19が内側層21及び外側層22に固定されることにより、帯状に連続する伸縮帯が形成される。このように内側層21及び外側層22を、一枚の連続帯状のシート材におけるCD方向中間位置より一方側の部分及び他方側の部分として、接着剤71塗布後にCD方向に折り返して内側層21及び外側層22を貼り合わせるようにすると、位置調整をせずとも(しても良い)、内側層21の接着剤71のMD方向位置及び前記外側層22の接着剤71のMD方向位置のずれが少ない(少なくとも折り目側では位置のズレは全く発生しない)ものとなる。
【0106】
また、上述の弾性部材取付工程301におけるシート材12Sの折り方は、シート材12SにおけるCD方向中間外側層22の部分よりもCD方向一方側及び他方側の内側層21の部分が、CD方向中間の外側層22の部分における弾性伸縮部材19を有する側にそれぞれ折り返される折り方(所謂C折り)とされている。よって、シート材12Sの折り幅は格段に狭くて済むため、折り返しのための設備(セーラー)がコンパクトとなり、皺無く綺麗に折り返すことが容易となる。また、製品状態では、
図8(b)〜(f)に示される形態のように、腹側外装体12F及び背側外装体12Bの両方のウエストの縁が、シート材12Sの折り目となるため、ウエストの縁の肌触りや見栄えに優れたものとなる。なお、
図8(b)(c)に示される形態の離間部12dは、
図18及び
図19に示されるように、弾性部材取付工程においてCD方向一方側及び他方側の内側層21の部分を離間させることにより製造することができる。また、
図8(d)〜(f)に示される形態の重なり部分12wは、図示しないが、弾性部材取付工程においてCD方向一方側及び他方側の内側層21の部分の端部を一部重ねることにより製造することができる。
【0107】
続いて、必要に応じて弾性部材切断工程302を行った後、センタースリット工程303で、スリッターにより、伸縮帯がそのCD方向中間の所定部位SLで切断されることにより、背側伸縮帯12b及び腹側伸縮帯12fに分割され、背側伸縮帯12b及び腹側伸縮帯12fのCD方向間隔が所定距離まで拡大される。スリット位置SLは、伸縮帯のCD方向中央でも、腹側または背側に偏る位置でもよいが、一般的なパンツタイプ使い捨ておむつがそうであるように、腹側伸縮帯12fよりも背側伸縮帯12bのほうを縦長とするために、スリット位置SLを腹側に偏らせることが好ましい。
図18に示されるようにスリット位置SLを離間部12dに位置させると、
図8(b)に示される形態を製造でき、
図19に示されるようにスリット位置SLを離間部12dより背側にずらすと、
図8(c)に示される形態を製造できる。また、図示しないが、弾性部材取付工程301においてCD方向一方側及び他方側の内側層21の部分の端部を一部重ねて重なり部分を形成するとともに、スリット位置SLを適宜変更する等により、
図8(d)〜(f)に示される形態を製造できる。必要であれば、図示形態のように、センタースリット工程303の後に背側外装体12Bの脚側の縁を脚周りに沿う曲線状に切断するための打ち抜き工程304を追加しても良い。打ち抜き工程304は、弾性部材取付工程301より後でかつ切り離し工程308よりも前であれば可能ではあるが、折り畳み工程306よりも前であるのが好ましく、内装体取付工程305よりも前であるのがより好ましい。
【0108】
図示例では、一枚のシート材12Qから一枚の伸縮帯を組み立てた後に分割して腹側伸縮帯12f及び背側伸縮帯12bを形成する手法を採用しているが、腹側用のシート材及び背側用のシート材を別々に供給又は形成し、それぞれ別々に接着剤塗布工程300及び折り返しにより内側層21及び外側層22を形成する弾性部材取付工程301を行い、背側伸縮帯12b及び腹側伸縮帯12fを独立的に組み立てることもできる。その他は、以降の工程を含めて第1の形態と同様であるため説明を省略する。
【0109】
(第3の形態
:本発明の実施形態)
一般に、不織布等の連続帯状のシートを移送しながら組み立てを行う製造ラインでは、シートの幅(CD方向の長さ)が広いと、そのCD方向全体にわたりMD方向位置を正確に調整することは困難となる。よって、移送対象である内側層21及び外側層22の幅(CD方向の長さ)が広いと、そのCD方向全体にわたり、内側層21の接着剤71のMD方向位置及び外側層22の接着剤71のMD方向位置を整合させるのは困難である。そこで、
図20に示すように、内側層21及び外側層22を貼り合わせる前に、スリッターにより内側層21(外側層22としても良い)を、そのCD方向中間となる位置で複数の部分に分割する分割工程310を行い、これら分割した部分のMD方向位置を個別に調整することにより、内側層21の接着剤71のMD方向位置及び外側層22の接着剤71のMD方向位置を合わせ、内側層21及び外側層22を貼り合わせるのも好ましい形態である。このように、内側層21及び外側層22を貼り合わせる前にいずれか一方の層を分割して幅を狭くすることで、内側層21の接着剤71のMD方向位置及び外側層22の接着剤71のMD方向位置を整合させるための位置調整を容易に行うことができ、位置ずれも発生し難くなる。図示例では、この位置調整の手法を、よりCD方向幅の広い背側伸縮帯12bの形成に適用しているが、これに代えて又はこれとともに腹側伸縮帯12fの形成に適用することもできる。また、この位置調整手法は、前述の第2の形態にも適用できる。
【0110】
(第4の形態)
弾性部材切断工程302により伸縮領域を形成する場合、前述の非伸縮領域NAにおける接着剤71量を低減したパンツタイプ使い捨ておむつを製造するために、
図23に示すように、接着剤塗布工程300において、内側層21及び外側層22をMD方向に移送しつつ、その伸縮領域となる部位では、第1の形態と同様に内側層21の外面及び外側層22の内面の両方に、MD方向に間欠的となる同一の縦縞状パターンで接着剤71をそれぞれ塗布する一方で、非伸縮領域NAとなる部位では、内側層21の外面及び外側層22の内面のいずれか一方(図示形態では外側層21)には、伸縮領域から続けて縦縞状パターンで接着剤71を塗布するものの、他方(図示形態では内側層22)には接着剤71を塗布しない(換言すれば、内側層21及び外側のいずれか一方は縦縞状パターンの接着剤71がMD方向に間欠的(非伸縮領域NAでは塗布されない))のも好ましい形態である。このように非伸縮領域NAのみ片面塗布とすることにより、接着剤71使用量の低減及び外装体12の非伸縮領域NAの柔軟性の向上も図ることができる。
【0111】
以降は、第1の形態と同様に、弾性部材取付工程301、弾性部材切断工程302、内装体取付工程305、折り畳み工程306、側部接合工程307、及び切り離し工程308を行えば良い。
図24は、
図23に示される弾性部材切断工程302に続く、内装体取付工程305を示している。
【0112】
(第5の形態)
弾性部材切断工程302により伸縮領域を形成する場合、前述の引き込み防止性に優れたパンツタイプ使い捨ておむつを製造するために、図示しないが、弾性部材取付工程301に先立って、弾性伸縮部材19における伸縮領域の幅方向両端部となるMD方向範囲に、弾性伸縮部材19の外周面に接着剤71を塗布するのも好ましい形態である。なお、伸縮領域の両端部以外、例えば非伸縮領域NAとなるMD方向範囲にも必要に応じて弾性伸縮部材19の外周面に接着剤71を塗布することができる。ただし、伸縮領域の両端部間となるMD方向範囲では弾性伸縮部材19の外周面に接着剤71を塗布しないものとする。なお、弾性伸縮部材19の外周面に接着剤71を塗布する方式としては、シュアラップノズルを用いる方式、コームガンを用いる方式等を用いることができる。
【0113】
(第6の形態)
図9に示すような股間を介して腹側から背側まで連続する外装体12を有するパンツタイプ使い捨ておむつを製造する場合は、上述の製造方法において、おむつ全長に相当するCD方向幅の一枚の伸縮帯を形成し、脚開口部を形成するための打ち抜き工程を追加し、CD方向中間での分割はせずに内装体取付工程305を実施すれば良い。打ち抜き工程は、弾性部材取付工程301より後でかつ切り離し工程308よりも前であれば可能ではあるが、折り畳み工程306よりも前であるのが好ましく、内装体取付工程305よりも前であるのがより好ましい。
【0114】
(第7の形態)
腹側外装体12F及び背側外装体12Bに二分割する形態においては、
図23及び
図24に示す形態のように、接着剤塗布工程300で、腹側外装体12Fの内側層21及び外側層22となる部分を含む帯状に連続する一枚のシート材12Q、並びに背側外装体12Bの外側層22及び内側層21となる部分を含む帯状に連続する一枚のシート材12Qを供給し、弾性部材取付工程301で、これらシート材12QのCD方向両側(股間側及びウエスト側)の折り返しにより、腹側外装体12Fとなる腹側伸縮帯12f及び背側外装体12Bとなる背側伸縮帯12bを形成することもできる。
【0115】
(第8の形態)
上記各形態における弾性部材取付工程301において、両面塗布領域が形成される限り、内側層21の接着剤71の位置及び外側層22の接着剤71の位置をCD方向にずらして、両面塗布領域のCD方向一方側に片面塗布領域を形成することも本発明に含まれる。特に、
図23及び
図24に示す形態のように、非伸縮領域NAとなる部位と対応するCD方向範囲は弾性伸縮部材の引き込みのおそれがあるため両面塗布領域としつつ、非伸縮領域NAとなる部位と対応しないCD方向範囲は弾性伸縮部材が配置される部位であっても引き込みのおそれがないため片面塗布領域とするのは一つの好ましい形態である。図示形態では、ウエスト縁部弾性伸縮部材17の一部が配置される部位について片面塗布領域となる形態であるが、ウエスト縁部弾性伸縮部材17の全部が配置される部位を片面塗布領域としても良く、また弾性伸縮部材19が配置されない部位を片面塗布領域としても良い。いずれにせよ、非伸縮領域NAとなる部位と対応するCD方向範囲のみ両面塗布領域とすると、両面塗布領域をCD方向に狭くすることができ、内側層21の接着剤71のMD方向位置及び外側層22の接着剤71のMD方向位置を整合させるための位置調整を容易に行うことができ、位置ずれも発生し難くなる。このような位置ずれ防止効果は、
図23及び
図24に示す形態等のように、腹側外装体12Fとなる腹側伸縮帯12f及び背側外装体12Bとなる背側伸縮帯12bを別々のシート材により形成する場合は、より一層のものとなる。
【0116】
<実験1>
繊度1.6デニール、目付17g/m
2、厚み0.2mm(初期厚みT0:0.5g/cm
2圧力下での厚み)、MD方向(不織布の製造ラインの方向)の剛軟度55mm、CD方向(MD方向と直交する方向)の剛軟度28mmのポリプロピレン繊維SSS不織布を切断して、MD方向の長さ180mm、CD方向の長さ40mmの第1シート材及び第2シート材を用意した。また、弾性伸縮部材として470dtexの糸ゴムを用意した。
そして、第1シート材における第2シート材側の面に、幅1mmでCD方向に連続するホットメルト接着剤をMD方向に7mmの間隔を空けて塗布し、その上に、MD方向に連続する糸ゴムをCD方向に5mm間隔で7本、それぞれ270%の伸長状態で配置し、その上からMD方向及びCD方向が第1シート材と合うように第2シート材を被せて、第1シート材、弾性伸縮部材及び第2シート材を圧着し、伸縮シートのサンプルNo.1を作製した。なお、このサンプルNo.1のMD方向の自然長は67mmであった。さらに、ホットメルト接着剤の塗布幅を2mm、4mm、6mm、10mmに、及びホットメルト接着剤の塗布間隔を2mm、4mm、6mm、8mm、10mmに適宜変更し、サンプルNo.2〜13も作製した。
これらのサンプルで襞の形成状況を観察し、◎:襞が非常にきれいに形成されている、
○:襞が綺麗に形成されている、△:襞が形成されているが綺麗ではない、×:襞の形成が不十分、の四段階で評価した。評価結果は表1に示す通りであった。なお、ホットメルト接着剤の塗布間隔が10mmでは襞は形成されるが、大きすぎて圧縮時に潰れてしまい、2mmでは襞が形成されなかった。また、ホットメルト接着剤の塗布幅が6mm及び10mmのものでは、シート接合部も収縮して皺が形成された。
【0118】
この結果から、ホットメルト接着剤の塗布幅(すなわち、シート接合部の幅)が0.5〜4mmであり、ホットメルト接着剤の塗布間隔(すなわち、隣り合うシート接合部の間隔)が4〜8mmであると、望ましい結果が得られることが分かる。
【0119】
<実験2>
実験1と同様(ただし、ホットメルト接着剤の塗布幅2mm、塗布間隔6mm)にして伸縮シートのサンプルNo.14を作製した。
ホットメルト接着剤の連続方向を第1シート材及び第2シート材のMD方向とし、糸ゴムの方向を第1シート材及び第2シート材のCD方向とした以外は、サンプルNo.14と同様にしてサンプルNo.15を作成した。
そして、これらサンプルNo.14及びNo.15を自然長で、5か所の襞について襞の頂部位置に後述の加圧板の中心を合わせて圧縮特性(圧縮剛さLC、圧縮エネルギーWC、圧縮レジリエンスRC、初期厚みT0、最大荷重時の厚みTM)を測定し、平均値を算出した。なお、圧縮剛さLCは1に近い程圧縮剛いことを意味し、圧縮エネルギーWCは大きい程圧縮され易いことを意味し、圧縮レジリエンスRCは値が100に近い程圧縮に対する回復性がよいことを意味する。初期厚みT0、圧縮剛さLC、圧縮エネルギーWCおよび圧縮レジリエンスRCは、KES(Kawabata's Evaluation System for Fabrics)に基づき、KES-FB3-AUTO-A 自動化圧縮試験機を用いて計測する。測定は、圧縮面積2cm
2の円形平面をもつ鋼製加圧板間で、0gf/cm
2から最大圧縮荷重50gf/cm
2まで試料を圧縮し、元に戻す間で行う。初期厚みT0は、圧力0.5gf/cm
2における試料の厚みである。圧縮剛さLCは、圧縮変位の直線性を表わし、荷重と変位(圧縮による厚さの減少)が比例するもの程数値が大きくなる。圧縮エネルギーWCは圧縮の仕事量を表し、数値が大きい程、膨らみ感、腰感に優れる。圧縮レジリエンスRCは、圧縮回復性を表わし、数値が大きい程ヒステリシスが小さい。
【0121】
また、これらサンプルNo.14及びNo.15をMD方向に約1.65倍伸ばした状態(おむつの装着状態を想定)で、側面から顕微鏡撮影(倍率30倍)するとともに、その撮影結果からサンプルの襞の見かけの高さ80Y、及び幅80Xを各襞80について計測し、平均値を算出した。撮影写真を
図21に、また襞の高さ及び幅を表3に示した。また、顕微鏡撮影にはKEYENCEのデジタルマイクロスコープVHX−1000を使用した。
【0123】
これらの結果から、不織布の幅方向の剛軟度を縦方向の剛軟度より高くすると、襞が丸く膨らみ易くなり、厚み方向の圧縮回復性に富むようになるとともに、襞が倒れにくくなり、しかも触ったときの柔らかさに富むようになることが分かる。
【0124】
<実験3>
実験1と同じ第1シート材、弾性伸縮部材及び第2シート材、並びに溶融粘度及びループタック粘着力の異なる各種のホットメルト接着剤を用意し、
図13に示すのと同様の設備で、ライン速度187m/分で接着試験を行い、ホットメルト接着剤の糸引き等の操業安定性を、
○:糸引きが無く、安定して接着を行うことができた。
×:糸引きがあり、塗布幅の精度が低く、操業安定性の点で問題あり。
の二段階で評価した。
【0126】
この結果から、ホットメルト接着剤としては、温度140℃における溶融粘度が10000mpas以下、温度160℃における溶融粘度が5000mpas以下、かつループタック粘着力が2000g/25mm以上のものを用いると、望ましい結果が得られることが分かる。
【0127】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
(伸長率)
伸長率は、自然長を100%としたときの値を意味する。
【0129】
(目付け)
目付けは次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0130】
(厚み)
厚みは、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:10gf/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
【0131】
(測定条件)
試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。