(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伸縮部内において、接合部面積率が幅方向において相違しており、前記伸縮部の幅方向側縁がわの接合面積率が高く、幅方向中央がわの接合面積率が低くなっている請求項7記載の吸収性物品。
前記伸縮部内において、接合部面積率が幅方向において相違しており、前記伸縮部の幅方向側縁がわの接合面積率が低く、幅方向中央がわの接合面積率が高くなっている請求項7記載の吸収性物品。
前記第1シート層及び前記第2シート層が、間隔を開けた多数の接合部で、前記弾性フィルムに形成された貫通孔を通じて接合され形成されている請求項1記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、伸縮シートにおいて位置によって伸縮応力が相違する伸縮部を有する吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
【0011】
(基本形態)
本発明の吸収性物品は、少なくとも両側部に形成された、前後方向に伸縮可能な伸縮部を有する伸縮シートを備えたものである。
前記伸縮シートにおいて、伸縮性を有しない例えば不織布からなる第1シート層と、伸縮性を有しない例えば不織布からなる第2シート層との間に、前記前後方向に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、直接又は弾性フィルムを介して、間隔を開けた多数の接合部で接合されている。
前記伸縮部は、前記弾性フィルムの収縮力により収縮し、前記前後方向に外力を加えると伸長可能である。
前記伸縮シートにおいて、単位面積内に含まれる前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が幅方向に異なっていることにより、幅方向相互間で前後方向の伸縮応力が相違している。これにより前記前後方向に伸縮可能な伸縮部が形成されている。
【0012】
前記伸縮部は前後方向中間に形成されており、それより前後方向端縁までは伸縮性を示さない又は伸縮性が小さい領域とすることができる。
【0013】
前記伸縮部は直線状のほか、曲線を描くものであってもよい。例えば、使い捨ておむつでは股下区域において幅方向中央に向かった括れた曲線を描くものであってもよい。
【0014】
前記接合部の配置に限定はないが、例えば千鳥状とすることができる。
【0015】
前記伸縮部内において、接合部面積率が前後方向において相違している構成とすることができる。
例えば、使い捨ておむつにおいて、前記伸縮部内において、接合部面積率が前後方向において相違しており、前記伸縮部の少なくとも前後方向端縁側において、端縁に向かって接合面積率が高くなっている構成が採用可能である。伸縮部の中央部は伸縮力を強め、そこから端部に向かって伸縮力を弱めることにより、おむつ端部が丸まり易くなることを防止し、着用者への装着性が良好になる利点もある。
【0016】
前記伸縮部内において、接合部面積率が幅方向において相違している構成であってもよい。
【0017】
その一つの態様は、前記伸縮部の幅方向側縁がわの接合面積率が高く、幅方向中央がわの接合面積率が低くなっているものである。この場合には、横断面でおむつ外形が丸まり易くフィット性が高まる。
【0018】
二つ目の態様は、前記伸縮部の幅方向側縁がわの接合面積率が低く、幅方向中央がわの接合面積率が高くなっている構成である。この場合には、脚が太めの人にとって、股間部での締め付け力が高くなる利点がある。
【0019】
前記弾性フィルムは幅方向にも伸縮可能であってもよい。
【0020】
前記接合部は円形などのほか、前後方向長さより、幅方向長さが長いものでもよい。
【0021】
本発明の吸収性物品は使い捨ておむつのほか、生理用ナプキンなども包含する。
【0022】
本発明の伸縮シートでは、その第1シート層及び第2シート層に貫通する孔は形成されない。この点は、特許第4562391号公報の
図5又は
図7で示される伸縮シートと異なる。
しかしながら、第1シート層及び第2シート層は、間隔を開けた多数の接合部で、弾性フィルムに形成された貫通孔を通じて接合されていてもよい。すなわち、弾性フィルムには貫通孔が形成されていてもよい。
【0023】
本発明の伸縮部の接合部においては、例えば次の接合形態例がある。
(1)第1シート層及び第2シート層が部分溶融し、弾性フィルムに接合する、すなわち第1シート層及び第2シート層が弾性フィルムを介して接合する形態。
(2)弾性フィルムが溶融し、第1シート層及び第2シート層中に移行し、第1シート層及び第2シート層が、弾性フィルムを介在させることなく、直接接合する形態。
(3)(1)の形態と(2)の形態との中間の形態であって、弾性フィルムの両表面部分が溶融して第1シート層及び第2シート層中に移行し、しかし、弾性フィルムは部分的に残存していることにより、第1シート層及び第2シート層が残存弾性フィルムを介して接合する形態。
【0024】
これらの形態のうち、特に、(2)の形態及び(3)の形態では、接合部と非接合部とで弾性フィルム強度の差異が生じる。したがって、伸長を保持した伸縮シートの伸長状態を、いったん開放して収縮させて製品とした後;あるいは、伸長を保持した伸縮シートを他の部材と結合した後、伸長状態をいったん開放して収縮させて製品した後;伸縮方向に機械的にあるいは人力で伸長させると、接合部と非接合部との境界部分で破断が生じる。
その結果、貫通孔が形成される。
【0025】
上記の少なくとも両側部に形成された、前後方向に伸縮可能な伸縮部を有する伸縮シートは、例えば次の方法によって製造できる。
伸縮性を有しない第1シート層と、伸縮性を有しない第2シート層との間に、少なくとも一方向(製品の前後方向)に伸縮可能な弾性フィルムを伸長状態で介在させる供給工程と、
この供給工程において、前記第1シート層と前記第2シート層との間に前記弾性フィルムが介在した状態で、前記第1シート層及び前記第2シート層の外方から、熱溶融装置によって間隔を開けた多数の熱溶融部により前記弾性フィルムに熱溶融エネルギーを与え、前記弾性フィルムを溶融し、前記第1シート層及び前記第2シート層を、直接又は弾性フィルムを介して多数の接合部で接合する接合工程と、
を含み、
前記接合工程において、前記接合部領域全体に孔が形成されておらず前記第1シート層及び前記第2シート層が残存している、前記伸縮シートを形成する。そして、この伸縮性シートを材料として吸収性物品を製造するのである。
【0026】
前記弾性フィルムを、対向する一対のニップが前後方向に配置されたニップロール段に通し、前後ニップロール段相互で、前方のニップロール段の周速を後方のニップロール段の周速より速めることにより、前記弾性フィルムを伸長状態にて前記供給工程に供給する方法が提供される。他の方法は、弾性フィルムを駆動ロールに例えばS字状に巻き掛けながら一対のニップロール段だけを通すものでもよい。
【0027】
前記熱溶融装置は、アンビルロールと超音波ホーンとを有し、前記アンビルロールはその外表面にロール長方向及び外周方向に間隔を開けた多数の突部が形成され、この突部群と前記超音波ホーンとにより前記熱溶融部を構成する態様が提供される。
超音波熱溶融装置に替えて、他の熱溶融手段であってもよい。
【0028】
不織布からなる第1シート層の融点及び不織布からなる第2シート層の融点より、前記弾性フィルムの融点が低く、この融点より高く、かつ第1シート層の融点及び第2シート層の融点より低い温度に相当する溶融エネルギーを与えると、弾性フィルムは熱溶融する一方で、第1シート層及び第2シート層は全く溶融しないあるいは部分的に溶融する結果、接合部領域全体に孔が形成されておらず第1シート層及び第2シート層が残存している形態となる。
しかるに、伸縮シートの製造時におけるライン速度は高速である。したがって、第1シート層及び第2シート層の融点より高い温度に相当する溶融エネルギーを与えても、第1シート層及び第2シート層は全く溶融しないあるいは部分的に溶融するものの、接合部領域全体に孔が形成されていない形態を得ることができる。
【0029】
このような観点から、弾性フィルムの融点は80〜145℃程度のものが好ましく、第1シート層及び第2シート層の融点は85〜190℃程度、特に130〜190℃程度のものが好ましく、また、第1シート層及び第2シート層の融点と、より低い融点を示す弾性フィルム30の融点との差は50〜80℃程度であるのが好ましい。
好適な具体例としては、前記弾性フィルムの融点が95〜125℃であり、第1シート層の融点が125℃超〜160℃、より好ましくは130〜160℃、第2シート層の融点が125℃超〜160℃、より好ましくは130〜160℃である。
【0030】
接合部の好適例としては、伸縮領域における前記接合部の面積は0.14〜3.5mm
2であり、自然長状態における前記貫通孔の開口の面積は、前記接合部の面積の1〜1.5倍であり、伸縮領域における前記接合部の面積率は1.8〜22.5%である。
ここで、「面積率」とは単位面積に占める対象部分の割合を意味し、対象領域(例えば伸縮領域)における対象部分(例えば接合部、貫通孔の開口)の総面積を当該対象領域の面積で除して百分率で表すものであり、特に「接合部の面積率」とは、伸縮方向に弾性限界まで伸ばした状態の面積率を意味するものである。また、貫通孔の開口の面積は、当該伸縮構造が自然長の状態における値を意味し、貫通孔の開口の面積が、弾性フィルムの表と裏で異なる等、厚み方向に均一でない場合には最小値を意味する。
本明細書における接合部面積率は、後に説明するアンビルロールの突起部の大きさ、形状、離間間隔、ロール長方向及びロール周方向の配置パターンなどを選定することにより選択できる。
【0031】
「伸長応力」とは、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔(標線間距離)を50mmとし、引張速度を300mm/minとする引張試験により測定される「弾性限界の50%まで伸ばしたときの応力(N/35mm)」を意味する。幅35mmの試験片を切り出すことができない場合には、切り出し可能な幅で試験片を作成し、測定値を幅35mmに換算した値とする。
対象の領域が小さく、十分な試験片を採取できない場合、伸縮応力の比較であれば、適宜小さい試験片でも、少なくとも比較できる。
また、領域内に複数の伸長応力が相違するので、試験片の採取をどうするかが問題となる。そこで、伸縮応力の絶対値を求めることから離れて、伸縮応力の比較のためには、伸縮シートの各部位について試験片を採取し、それぞれの試験片について、自然状態の100%長さから150%長さに伸長したときの応力によって大小を比較することも可能である。
【発明の効果】
【0032】
以上のとおり、本発明によれば、少なくとも両側部に形成された、前後方向に伸縮可能な伸縮部を有する伸縮シートを備えた吸収性物品が得られる。そして、着用者の動きに対して、例えば使い捨ておむつの脚周りに伸縮部を配置した場合、脚の動きへの追従性が良好となり、漏れ防止などの効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。
【0035】
本発明の吸収性物品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、吸収パッドなどの体液を吸収し、保持する製品を意味する。
吸収性物品は、少なくとも前後方向に伸縮可能な伸縮部を有する。伸縮部を吸収性物品の両側部に形成される。
【0036】
前記伸縮シートは、
図5〜
図8に示すように、伸縮性を有しない例えば不織布からなる第1シート層21と、伸縮性を有しない例えば不織布からなる第2シート層22との間に、前記前後方向に伸縮可能な弾性フィルム30が積層されており、かつ、前記第1シート層21及び前記第2シート層22が、直接又は弾性フィルム30を介して、間隔を開けた多数の接合部40で接合されている。
ここで、第1シート層21及び第2シート層22が「伸縮性を有しない」とは全く伸縮しないことを意味するのではなく、弾性フィルムの伸縮性度合いとの比較では、実質的に伸縮しないことを意味する。
【0037】
接合に際しては、例えば
図9に示すように、外面に所定のパターンで形成した突起部60aを有するアンビルロール60と超音波ホーン61との間に、第1シート層21、弾性フィルム30及び第2シート層22を供給し、超音波ホーン61により超音波溶融エネルギーを与え、例えば主に弾性フィルム30を溶融することによって、第1シート層21及び前記第2シート層22と接合する。
なお、接合形態例については後に詳説する。
【0038】
弾性フィルム30の製造過程における伸長率(自然状態の長さを100%としたときを基準とする)は、例えば駆動回転するアンビルロール60の周速を、後方の駆動ロール62の周速より速め、それらのロールの速度差を選択することにより設定できる。63はガイドローラである。
【0039】
図6には接合後の伸縮シートについて、伸長状態における断面を模式的に図示してある。伸縮シートの伸長状態を解放すると、
図7(模式図)に示すように、弾性フィルム30の収縮力により収縮し、前後方向(
図7の左右方向)に外力を加えると伸長可能である。したがって、この伸縮シートを、その伸縮方向を、例えば使い捨ておむつの前後方向に一致させると、使い捨ておむつが前後方向に伸縮可能である。
【0040】
そして、伸縮シートは、所定の面積をもって製造できるので、所望の面積全体に収縮力を作用させたい場合に、その所望の面積に切断した伸縮シートを適用すればよい。従来の使い捨ておむつにおいては、シートに糸ゴムを複数本並列に固定することにより行うのが一般的であるが、これでは糸ゴムやシートへの固定用のホットメルト接着剤の劣化による品質低下、並びに製造時における安定した生産性の点で劣る。これらの問題点は上記の伸縮シートによって解決できる。
しかも、
図7の収縮状態を見ると分かるように、伸縮シートの外面が規則的な細かい皺又はひだが生成されるので、着用者の肌への感触性が良好である。
【0041】
他方、上記例では、第1シート層21と第2シート層22とを、弾性フィルム30を溶融させて接合した例である。この場合、(1)第1シート層21又は第2シート層22が弾性フィルム30の表面で接合する態様、(2)弾性フィルム30の表面部分が溶融し、第1シート層21及び第2シート層22のそれぞれの繊維間に侵入して接合する態様、(3)弾性フィルム30のほぼ全体が溶融し、第1シート層21及び第2シート層22のそれぞれの繊維間に侵入して接合する態様などがある。本発明において、層間の接合態様についてこれらの例に限定されるものではない。
これらの態様のうち(3)などの態様においては、第1シート層21と第2シート層22とが、直接、すなわち弾性フィルムを介在することなく接合していると評価することができる。
上記(1)〜(3)の態様は、弾性フィルム30の融点が、第1シート層21及び第2シート層22の融点より低い場合であるが、弾性フィルム30の融点が、第1シート層21及び又は第2シート層22の融点より高い場合であってもよい。この場合は、第1シート層21及び又は第2シート層22の弾性フィルム30側表面部分が活性化あるいは溶融して弾性フィルム30に接合する形態である。
さらに、弾性フィルム30が一部溶融するほか、第1シート層21及び又は第2シート層22も溶融することによって接合するものでもよい。
第1シート層21及び又は第2シート層22が不織布であり、その繊維が芯・鞘構造を有していてもよい。この場合において、例えば繊維の鞘成分のみが溶融して、接合に寄与させることができる。
【0042】
さて、本発明の主たる特徴は、少なくとも幅方向中央領域に伸縮部を有し、この伸縮部は吸収性物品の両側部に形成されたものである。
そして、伸縮シートにおいて、単位面積内に含まれる前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が幅方向に異なっていることにより、幅方向相互間で前後方向の伸縮応力が相違していることである。
そして、このための手段として、当該領域の単位面積内に含まれる接合部の総和面積が単位面積に占める割合、すなわち接合部面積率を選択することである。
本発明は使い捨ておむつ、特にテープタイプの使い捨ておむつに適用した場合において、高い効果又は利点をもたらす。仮にテープタイプの使い捨ておむつに適用した場合を仮定してみる。例えば、脚周りのみに伸縮性を付与したい場合、他の領域、例えばおむつの側縁領域や前後領域も伸縮性を示すことになると、その領域の形状や平坦性が定まらず、着用者へおむつを装着しづらい。また、幅方向中央領域が伸縮性であると、前後方向に凹凸を繰り返す中央領域のヒダ又は皺が側縁領域まで達し、いわゆる横漏れを生じるおそれがある。したがって、脚周りのみに伸縮性をもたせる場合などにおいて、前記伸縮シートの利用は極めて有用である。
【0043】
接合部面積率とは、
図1が参照されるように、単位面積S内に含まれる接合部40,40…の総和面積が占める割合を百分率で示したものである。この場合における単位面積Sとしては、接合部が10個以上含まれるような大きさに設定することが望ましい(少ない個数では伸縮応力の比較をし難い。)。
図1の例では、13個の接合部を含んでいる。また、単位面積Sを定める外形は、正方形以外に長方形や円などの他の形状であってもよい。
接合部40の一例は、
図1に示す円形である。もちろん、楕円や長方形などの形状であってもよい。
図1のLmはマシン方向の配列間隔長、Lcはマシン方向と直交する直交方向(クロス方向)の配列間隔長、Pmはマシン方向(MD(のピッチ長、Pcは直交方向(クロス方向:CD)のピッチ長である。
【0044】
伸縮シート内における領域によって、接合部面積率が異なる態様を
図2〜
図6に示した。
図2は、領域A、Bについて、接合部面積率をA<Bとすることによって、伸縮応力をA>Bの関係にしたものである。
例えば、ピッチ長Pm及びピッチ長Pcが長い場合Aと、ピッチ長Pm及びピッチ長Pcが短い場合Bとを比較すると、ピッチ長Pm・Pcが長い場合A(接合部面積率が低い場合)の方が、ピッチ長Pm・Pcが短い場合B(接合部面積率が高い場合)より伸長率が大きい。その結果、伸縮応力は、A>Bの関係になる。
図2の形態は、
図2の横方向での伸長応力を領域ごと異なるものとなるので、伸縮応力が大きいA領域を、吸収性物品の幅方向中央領域に対応させる。そして、伸縮応力が小さい(いわば伸縮が小さい)B領域を中央のA領域の両外側に対応させる。
【0045】
図3の場合には、中間領域内において、前後方向中間のA領域に対して、その前後に伸縮応力の小さいB領域を配置した例である。この例は、前後のB領域,B領域は例えば使い捨ておむつの前後方向端部に対応させることができ、この前後方向端部においては伸縮応力が小さいので、形状安定性が良好であるので着用者に対する装着が容易となる。
【0046】
本発明において、接合部面積率の相違は、配置パターンの粗密のほか、接合部面積を変えることによっても可能である。
このことを理解するために、
図4では、領域Cは小さな接合部を多数配置し、領域Dと同じ接合部面積とした例を示した。接合部面積をA<C=Dとすることによって、伸縮応力をA>C=Dの関係にしたものである。
【0047】
ところで、本発明における弾性フィルムは、前後方向のみに伸張可能なものでもよいが、直交方向する方向にも伸縮する2方向伸縮フィルムも使用できる。
【0048】
弾性フィルムの厚み、材料、ひずみ・応力特性、融点などの物性は適宜選択できる。この弾性フィルムと、これに与える超音波溶融エネルギーと、伸縮シートの製造時における弾性フィルムの伸長率との関係などを選択することにより、
図8に示すように、結合部40の周囲に貫通孔31を形成することができる。第1シート層21及び第2シート層22として例えば不織布により形成した場合、不織布は通気性を示すので、貫通孔31の形成によって、伸縮シートの表裏に通気性を示す。したがって、例えば使い捨ておむつの外形シート又は外装シートとして使用した場合、通気性が良好となる。
【0049】
通気貫通孔31が形成される理由は必ずしも明確ではないが、超音波溶融エネルギーによって弾性フィルム30が溶融し、かつ、アンビルロール60の突起部60aよる押圧によって結合部40は薄層化する。このとき弾性フィルム30も薄層化しながら、結合部40の周囲部が破断強度に達し、伸長弾性フィルム3に作用している伸縮応力によって破断が開始し、釣り合い個所まで収縮し、開孔するものと考えられる。
【0050】
図10には円形の貫通孔の場合における貫通孔31の形成例を模式的に示した。結合部40のマシン方向(伸長方向)の両側にほぼ三日月状の貫通孔31が形成される。
【0051】
結合部は、マシン方向(伸長方向)と直交する方向(クロス方向:CD方向)に長い形状とすることができる。この場合には、例えば
図11に示すように、大きく開孔する半円形の貫通孔31を形成でき、通気性を高めたい場合に好適は手段である。
【0052】
他方、全ての結合部に貫通孔31が形成されることは必須ではない。もし、確実に貫通孔31を形成すること、あるいは大きく開孔することが要請される場合には、
図12に示す手法を採ることができる。
すなわち、結合部40を形成した伸縮シートを、
図12(b)に示すように、突条又は突起64aを有する一対のロール64間に通し、一方のロール64の隣接する突起64a, 突起64a間に他方のロール64の突起64aを食い込ませて、伸縮シートに変形力を加えて貫通孔31を形成することができる。
【0053】
(使い捨ておむつへの適用例)
本発明に係る伸縮シートは、使い捨ておむつに適用できる。
図13に示すように、背側の両側部にテープTを有するテープタイプ使い捨ておむつTD1の脚周り部位に、すなわち製品の両側に股下区域を巡って前後方向に延在し、前後方向に伸縮する伸縮部83を形成できる。
この例では、伸縮シートを製造する際に、部分的に
接合部面積率を、他の部分の
接合部面積率より小さくすることにより伸縮部83を形成するものである。
【0054】
図13の例では、前後方向に沿う伸縮部83の
接合部面積率と、その幅方向両側域とで
接合部面積率を異ならせていることにより、幅方向相互間で前後方向の伸縮応力が相違している構成としたものである。
また、伸縮部83の
接合部面積率と、その前後方向の前後域とで
接合部面積率を異ならせていることにより、前後方向相互間でも前後方向の伸縮応力が相違している構成としたものである。
このようにして、伸縮部83が伸縮することにより、伸縮部83全体が面状に着用者の脚周りに当接するので、フィット性及び密着性が高まる。
【0055】
伸縮部83以外の領域では、
接合部面積率を高め、実質的に伸縮しないように構成できる。
一方、伸縮部83以外の領域において、
接合部面積率を過度に高めない限度で、ある程度の伸縮性を発揮させることもできる。
【0056】
テープタイプ使い捨ておむつの全体構造は、テープTのほか、当業者が知る範囲で公知のものを使用することができるので、その例の図示及びその説明を省略する。そして、吸収体、トップシートなどの素材や構造は適宜選択できる。
【0057】
テープタイプ使い捨ておむつには、
図14のように、長尺テープTaによって前身頃を包むいわゆる「ふんどし」タイプのものでもよい。
【0058】
テープタイプ使い捨ておむつには、
図15のように、両側縁がストレートないわゆる「ストレートタイプ」のものでもよい。
【0059】
図16のようにテープを備えず、そのまま下着の内側又はテープタイプ使い捨ておむつの内側に配置するパッドタイプ使い捨ておむつPDであってもよい。
【0060】
他方、
図17のように、伸縮部を脚周りカット部に沿って形成してもよい。すなわち、股下区域が中央に向かって括れており、そのくびれに沿って前後方向に延在し、前後方向に伸縮する伸縮部83Aを有するものとすることができる。
本発明の伸縮部の形成は、例えばホーンとアンビルロールで超音波接着を行う形態の場合、アンビルロールの突起部のパターンを適宜選択することが容易であるから、曲線の伸縮部83Aの形成が容易である。そして、広めに形成した伸縮部パターン部分を脚周りカットすれば、脚周り縁まで伸縮部83Aとすることができ、従来の糸ゴムを使用する場合に製造上必要となるフラップを形成しなくともよい。
【0061】
また、
図18ように、脚周り伸縮部83B中において、前後で伸縮応力が相違させることもできる。すなわち、脚周り伸縮部83Bの前後方向中間部の伸縮応力を大きく、前後で伸縮応力を小さくするのが好適である。
隙間ができ易い伸縮部中央部は伸縮力を強めて脚周りに密着させるように、そこから端部に向かって伸縮力を弱めることにより、おむつ端部が丸まり易くなることを防止し、着用者への装着性が良好になる利点もある。
かかる態様は。糸ゴムを使用する場合には採り得ない態様である。
【0062】
図19のように、脚周り伸縮部83C中において、幅方向で伸縮応力が相違させることもできる。これによって、着用者の体形に応じたフィットが可能となる利点をもたらす。
すなわち、脚周り伸縮部83Cの幅方向の外方の伸縮応力を大きく、幅方向の内方の伸縮応力を小さくすると、おむつの外形が体形の沿う円弧状になるので、着用者へのフィット性が高まる。
反対に、
図20のように、脚周り伸縮部83Cの幅方向の外方の伸縮応力を小さく、幅方向の内方の伸縮応力を大きくすると、大腿部が太めの着用者に対し、股間部における締付け力が大きくなり、フィット性が高まる。
これらの形態は、糸ゴムの並列配置により面状にフィットさせる従来例においては糸ゴムの太さの選定及び配置では煩雑であるのに対し、容易に達成できる点で、対照的である。
【0063】
(吸収性物品の具体例)
本発明の吸収性物品の具体例としては、特に使い捨ておむつにおいて、使用面側に吸収要素を有しないカバータイプの使い捨ておむつが最適である。
しかしながら、伸縮シートを外装シートとし、その使用面側に吸収要素を設けることもできる。この吸収体としては、綿状パルプを主体とする吸収体、あるいは綿状パルプ層に高分子吸収性ポリマーを含有させた吸収体を使用することができる。
吸収体の目付は200g/m
2以下、より望ましくは150g/m
2以下である。
【0064】
カバータイプの使い捨ておむつにおいて、吸収体を設けない、あるいは吸収体を設けるとしても薄く(例えば2mm未満)吸収容量が少ない場合には、弾性フィルムに貫通孔が形成されない又は少ないのが望ましい。このためには、弾性フィルム30の融点が、第1シート層21及び又は第2シート層22の融点より高くすることにより接合部は形成するが、貫通孔を形成しない態様となる。
この態様においては、吸収体の目付は200g/m
2以下、より望ましくは150g/m
2以下である。
【0065】
後にさらに詳説する吸収体も含めて、使用する吸収体としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本要素とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。この吸収体は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シートによって包装することができる。
吸収体の形状は、股間部に前後両側よりも幅の狭い括れ部分を有するほぼ砂時計状に形成することができるほか、長方形状等、適宜の形状とすることができる。
【0066】
<テープタイプ使い捨ておむつの具体例>
図21〜
図24は、テープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、この使い捨ておむつは、背面を形成する前述の積層裏面シート1の内面と、透液性トップシート2との間に、吸収体3が介在されているものである。
【0067】
(液不透過性積層裏面シート)
液不透過性積層裏面シート1は、吸収体3の周囲より外側に延在しており、吸収体3に吸収された排泄物の裏面側への移動を遮断するものである。積層裏面シート1の弾性フィルム
30としては、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。
【0068】
布製おむつ外面のような外観、肌触りとするために、積層裏面シート1の裏面全体は不織布層(前述の第1シート層21又は第2シート層22)で覆われており、両シート1、2の外周縁はおむつの外周縁まで及んでいる。不織布層としてはスパンボンド不織布が好適である。
【0069】
(トップシート)
トップシート2としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。また、不織布の加工方法としては、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の公知の方法を用いることができる。透液性トップシート2に用いる不織布の繊維目付けは15〜30g/m
2であるのが好ましく、厚みは0.05〜1mmであるのが好ましい。
【0070】
トップシート2は、吸収体3の周囲より外側に延在しており、吸収体3側縁より外側に延在する部分が積層裏面シート1に例えばホットメルト接着剤等により固着されている。なお、図中の点模様は固着部分を表しているものである。
【0071】
(脚周り立体ギャザー)
必要により、脚周り立体ギャザーを設けることができ、その形態例を図示してある。脚周り立体ギャザーシート4,4は、各種不織布(スパンボンド不織布が好適である)の他、バックシートに用いられるものと同様のプラスチックフィルム、又はこれらの伸縮シートを用いることができるが、肌への感触性の点で、撥水処理を施した不織布が好適である。脚周り立体ギャザーシートの幅方向中央側の突出部分は、前後方向両端部では倒伏状態で物品内面(図示形態ではトップシート2表面)にホットメルト接着剤等の手段により固着され、倒伏部分とされているが、これらの間の前後方向中間部は非固定の自由部分となっており、この自由部分の先端部等(展開状態における幅方向中央側の端部)には、糸ゴムなどの細長状弾性伸縮部材4Gが前後方向に沿って伸張した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性伸縮部材4Gは図示例では所定の間隔を空けて複数本設けられているが、一本でも良い。この自由部分は、細長状弾性伸縮部材4Gの収縮力が作用する結果、
図22に示されるように、おむつの使用面(図示形態ではトップシート2表面)に対して起立する脚周り立体ギャザーを構成する。
【0072】
(ファスニングテープ)
背側部分Bのサイドフラップ部には、その側縁からそれぞれ突出するファスニングテープTが取り付けられるとともに、腹側部分Fの胴回り部表面に幅方向に沿ってフロントターゲットテープ6が貼着されており、身体への装着に際しては、おむつを身体にあてがった状態で、両側のファスニングテープTを腰の各側から腹側外面に回してフロントターゲットテープ6にフック材5を介して止着する。フロントターゲットテープ6は省略することもでき、その場合にはファスニングテープTはおむつ外面の不織布に直に掛止止着させる。7は分割用ミシン目である。
【0073】
第1シート層21及び第2シート層22の構成材は、シート状のものであれば特に限定無く使用できるが、通気性及び柔軟性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10〜25g/m
2程度とするのが好ましい。
【0074】
ところで、個々の接合部40及び貫通孔31の自然長状態での形状は、真円形、楕円形、長方形等の多角形(線状や角丸のものを含む)、星形、雲形等、任意の形状とすることができる。個々の接合部40の大きさは、適宜定めれば良いが、大きすぎると接合部40の硬さが感触に及ぼす影響が大きくなり、小さすぎると接合面積が少なく資材同士が十分に接着できなくなるため、通常の場合、個々の接合部40の面積は0.14〜3.5mm
2程度とすることが好ましい。個々の貫通孔31の開口面積は、貫通孔31を介して接合部が形成されるため接合部以上であれば良いが、接合部の面積の1〜1.5倍程度とすることが好ましい。
【0075】
また、本発明の接合部としては、主伸縮部から非伸縮領域に直接移行するものでもよいが、その中間の遷移伸縮部を形成することもできる。
各領域における個々の接合部40の面積及び面積率は、通常の場合次のようにするのが好ましい。
(非伸縮領域)
接合部40の面積:0.14〜3.5mm
2(特に0.25〜1.0mm
2)
接合部40の面積率:16〜45%(特に25〜45%)
(主伸縮部83)
接合部40の面積:0.14〜3.5mm
2(特に0.14〜1.0mm
2)
接合部40の面積率:1.8〜19.1%(特に1.8〜10.6%)
(遷移伸縮部)
接合部40の面積:0.14〜3.5mm
2(特に0.25〜1.0mm
2)
接合部40の面積率:8〜22.5%(特に12.5〜22.5%)
【0076】
接合部40及び貫通孔31の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、
図25(a)に示すような斜方格子状や、
図25(b)に示すような六角格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、
図25(c)に示すような正方格子状、
図25(d)に示すような矩形格子状、
図25(e)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが伸縮方向に対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、接合部40の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。接合部40及び貫通孔31の配列形態は、主伸縮部83、遷移伸縮部、及び非伸縮領域において同じものとする他、異なるものとすることもできる。
【0077】
弾性フィルム30は特に限定されるものではなく、それ自体弾性を有する樹脂フィルムであれば特に限定なく用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーの1種又は2種以上のブレンド物を、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形によりフィルム状に加工したものを用いることができる。また、弾性フィルム30としては、無孔のものの他、通気のために多数の孔やスリットが形成されたものも用いることができる。特に、伸縮方向における引張強度が8〜25N/35mm、伸縮方向と直交する方向における引張強度が5〜20N/35mm、伸縮方向における引張伸度が450〜1050%、及び伸縮方向と直交する方向における引張伸度が450〜1400%の弾性フィルム30であると好ましい。なお、引張強度及び引張伸度(破断伸び)は、引張試験機(例えばSHIMADZU社製のAOUTGRAPHAGS−G100N)を用い、試験片を幅35mm×長さ80mmの長方形状とした以外は、JIS K7127:1999「プラスチック−引張特性の試験方法−」に準じて、初期チャック間隔を50mmとし、引張速度を300mm/minとして測定される値を意味する。弾性フィルム30の厚みは特に限定されないが、20〜40μm程度であるのが好ましい。また、弾性フィルム30の目付は特に限定されないが、30〜45g/m
2程度であるのが好ましく、特に30〜35g/m
2程度であるのが好ましい。
【0078】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:10gf/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。
【解決手段】少なくとも両側部に形成され、前後方向に伸縮可能な伸縮部を有し、前記伸縮部において、伸縮性を有しない第1シート層と、第2シート層との間に、前記少なくとも前後方向に伸縮可能な弾性フィルムが積層されており、かつ、前記第1シート層及び前記第2シート層が、直接又は弾性フィルムを介して、間隔を開けた多数の接合部で接合されており、前記伸縮部は、前記弾性フィルムの収縮力により収縮し、前後方向に外力を加えると伸長可能であり、前記伸縮シートの領域内において、単位面積内に含まれる前記接合部の総和面積が占める接合部面積率が幅方向に異なっていることにより、幅方向相互間で前後方向の伸縮応力が相違している。