特許第6044879号(P6044879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044879
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】手乾燥機
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/48 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A47K10/48 A
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2009-186867(P2009-186867)
(22)【出願日】2009年7月21日
(65)【公開番号】特開2011-24962(P2011-24962A)
(43)【公開日】2011年2月10日
【審査請求日】2012年3月13日
【審判番号】不服2015-5375(P2015-5375/J1)
【審判請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】509222659
【氏名又は名称】津崎 芳三
(72)【発明者】
【氏名】津崎 芳三
【合議体】
【審判長】 小野 忠悦
【審判官】 中田 誠
【審判官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−54670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータファンで圧縮された空気をノズルから噴出させる方式の手乾燥機において、モータファン収納容器底部の外壁に設けられた凸斜面と、一部が円弧状のノズルを形成するよう切欠かれた凹斜面を持つ円筒状の蓋で、圧力室が形成された手乾燥機。
【請求項2】
ノズル上方に設けられた空気取入口から取入れられた外気が、ファン吸入口6に至る空気通路を持つ請求項1記載の手乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手の平に付着した水を、高速の空気で吹き飛ばす方式の手乾燥機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手の平に付着した大粒の水滴は、100m/秒以下の風でも吹き飛ばせる。現行装置のカタログ記載の「脱水時間5−9秒」は、この時間、即ち、約85%の水分の脱水に必要な時間である。一方、手の平の皺の間に沁み込んだ約15%の水分を急速に脱水するには、100m/秒以上の風速が必要である。しかし現行装置の風速は、この値に達しないので、大量の温風で、温風乾燥が行われる。
【0003】
これまで、装置の低電力化、低価格化、周囲へ撒き散らされる水分の低減などの要求はあるが、現行装置は依然、業務用であり、一般家庭には普及していない。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献】特開2004−081878号公報 図1
【特許文献】特開平10−290767号公報 図1
【0005】
【非特許文献】
【非特許文献】「松下エコ:ハンドドライヤ」「三菱電機:ジェットタオル」
【0006】
図4は現行の手乾燥機の内部構造を示す断面図である。外気はノズル21の水平面以下の位置から吸込まれて、水分濾過フィルタ25を通過し、ファン吸入口26へ入り、モータファン23で圧縮される。圧縮された空気はノズル内部に組み込まれた約300Wの加熱素子22で暖められ、外部へ噴出される。
【0007】
すなわち、現装置(図4)では、手の平の想定位置での風速は100m/秒以下なので、手の平の皺の間に残留する水分を急速には脱水できない。これを補完するために、ノズル内部に組み込まれた、約300Wの発熱素子22が発生する温風により脱水が促進される。また外気はノズル21の水平面以下の位置から取り込まれるので、脱水された水分の一部が装置内部に吸込まれる。この水分を除去するために、空気通路には水分濾過フィルタ25が組み込まれる。
【0008】
また、現行装置(図4)のカバ28はノズル21を大きく覆っているので、見通しが悪く、手の平の想定位置はノズル21から、相当離れた位置に設定されている。これを補償するために、より消費電力の大きなモータファン23で大量の空気が、手の平に当てられる。
【0009】
即ち、現行装置(図4)は、手の平のやや広い部分に大量の温風を送ることにより脱水する方法なので、モータファン23の消費電力は約800Wと大きい。風量が多いので、脱水された水分の一部は、周囲に撒き散らされる。このように、現行装置(図4)は業務用であり、一般家庭には普及していない。
【0010】
なお、現行装置図4のノズル21の形状は、左右方向に、ほぼ水平であるため、空気流の水平断面の形状は幅を持った直線状である。この場合、手から脱水された水の一部が、左右に飛び散るのを防止出来ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、加熱素子、水分濾過フィルタを使わず、手の想定位置をノズルに接近させることにより、モータファンの消費電力を低下させて、構造を合理化、簡単化して、一般家庭でも使用可能な安価な装置を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明装置(図1)では、外径が約160mmの二個の円柱に形成された凹凸一組の斜面で圧力室10が構成されており、この一部が切り欠かれてノズル1が形成されている。すなわち、モータファン3収納容器の外壁に、約8度の凸斜面8が形成され、この対向面に、外周の一部がノズル1用に切欠かれた、約15度の凹斜面9を持つ蓋(図2)が固定されている。
【0013】
蓋(図2)の形状は、両端13a、13b間の水平距離は約130mm、凹凸の間隔はノズルの出口で約2mm、斜面の長さは約30mmである。即ち、ノズル1からは良く絞られ、減衰の少ない100m/秒以上の空気流が噴出される。
【0014】
ノズル1の凹凸斜面9,8は全周にわたって作られているので、この空間が圧力室(アキュームレータ)10の役割をして、モータファン3からの空気圧を安定化させる。従って、ノズル1から噴出される空気流は安定で、乱流の発生は防止されている。
【0015】
本発明装置(図1)では、ノズル1からより高速の空気を噴出させるために、風量は少ないが、より高い風圧を発生出来る二枚羽根を持つターボファンなどのモータファン3が採用される。また、この整流子モータの巻線の線径はやや細く、鉄心には熱間圧延珪素鋼板が使用される。これらは電気的損失が多少多いが、製造原価が安いうえ、次に述べる温風の発生や、突入電流抑制の効果がある。
【0016】
一般に、この種装置では装置内を流通する空気で、モータファン3の巻線や鉄心が空冷される。本発明装置(図1)では、流通する空気の流量は少ないので、ノズル1から出る空気流の温度は、これらの損失熱を吸収して、室温より約15℃上昇している。即ち、加熱素子22が無くても、必要な温風が得られる。
【0017】
本発明装置(図1)では、カバ12はノズル前方に位置する部分が大きく切り欠かれており、外気取入口2は、このカバ12と蓋図2との間の空間に形成されている。この外気取入口2は、ノズル1の前方に位置するので、手の平から脱水された水分は装置内部には取り込まれない。従って、現行装置図(4)に組み込まれている空気抵抗の大きな水分濾過フィルタ25は不要である。
【0018】
本発明装置(図1)では、カバ12はノズル1の上部で、外気取込口2として、大きく切り欠かれているので、見通しが良く、手の平を自然な形で、円柱の一部に作られたノズル1を囲む形で接近させる事が出来る。すなわち、手の平全体はノズル1と同心円状に配置されるので、手の平全体の想定位置はノズル1により近く、空気流の減速が、より少ない位置で脱水が行われる。なお、手の甲側は油脂質なので、ここに付着した水分は、ノズル1から多少離れていても、容易に脱水される。
【0019】
上記のように、本発明装置(図1)では、現行装置(図4)の加熱素子22および水分濾過フィルタ25は不要、手の平の想定位置はノズル1により近いので、モータファンの消費電力は約400W以下と半減されている。この場合、例えばモータの突入電流抑制回路は省略できる。即ち、本発明装置(図1)の消費電力は半減されているので、突入電流も少ない上、モータ巻線は細く設定されているので、電気抵抗が大きく、鉄心はB−H曲線が緩やかな熱間圧延珪素鋼板が使用されている。これらは突入電流抑制に効果がある。このように、本発明装置では制御回路の一部は省略され、あるいは小型化されるので、外気取込口2から、モータファン吸入口6に至る空間に、空気通路のスペースが確保された。
【0020】
次に、外気取入口2から取り込まれた空気を、装置吸入口4に導くために、図3に示すように、ファンモータ3を収納する容器の両側面にリブ16a、16bが取り付けられている。これにより外気取入口2以外からの空気は遮断される。従って、水分を含まない空気だけが、装置内部に吸込まれる。
【0021】
本発明装置(図1)ではノズル1の外周は円筒状で、蓋(図2)の凹斜面9の傾斜は約15度である。この場合、ノズル1を出た空気流の水平断面の形状は、例えば、拡げた傘の張り紙の一部のような形で噴出されるので、空気流は、手の平から脱水された水滴を囲むようにして下方へ流れる。従って、装置の両側方向に散らされる水滴は少ない。これはまた、装置の横幅を小さくすることが出来ることを意味する。
【0022】
なお極寒地などでの使用のためには、本発明による装置図1のモータファン吸込口6の周辺に、平板状発熱素子15を貼り付けることが出来る。この平板状発熱素子15の表面積は広いため、現行装置(図4)のノズル21内部に組込まれたPTCなどの発熱素子22のように、高温にする必要は無く、安全性が高いうえ、ノズル1からの空気流に乱流などの悪影響を与えることはない。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明装置(図1)では、加熱素子および水分濾過フィルタが不要であり、手の想定位置はノズルに近いので、装置の消費電力は半減される。この結果、制御回路5の一部は省略あるいは小型化される。ノズル1からは良く絞られ、減衰の少ない高速の温風が噴出され、装置外部への水分の飛散が少なく、装置は小型化できる。すなわち、本発明装置(図1)は現行装置(図4)と同等以上の脱水性能を有しながら、消費電力が少なく、安価に装置を構成できるので、業務用だけでなく、一般家庭への普及が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
手がノズル1下部位置に置かれると、センサ7がこれを感知して、モータファン3が始動し、ノズル1から高速の温風が噴出され、手の水分は脱水される。手がノズル1下部から離れるとモータファン3は停止する。なお、本発明装置(図1)では、ノズル1から噴出される空気流を、手の平の付け根から手先の方向へ順次当てれば、手の平の水分は手先の方向へ追いやられ、脱水は完了する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明装置(断面図)
図2】本発明装置の蓋
図3】本発明装置のリブ
図4】現行装置(断面図)
【符号の説明】
【0026】
1ノズル、2外気取入口、3モータファン(収納部)、4装置吸入口、5制御回路(収納部)、6ファン吸入口、7センサ、8容器凸斜面、9蓋凹斜面、10圧力室、11モータファン吹出口、12カバ、13a、13bノズル両端、14a、14b空気整流板、15平板状発熱素子、21ノズル、22発熱素子、23モータファン、24制御回路、25水分濾過フィルタ、26ファン吸入口、27外気取入口、28カバ、
図1
図2
図3
図4