(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044883
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
E21D9/06 311A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-113502(P2012-113502)
(22)【出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-238096(P2013-238096A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】坂村 博
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−044177(JP,A)
【文献】
特開2001−295580(JP,A)
【文献】
特開平04−213693(JP,A)
【文献】
特開2004−324679(JP,A)
【文献】
実開平06−037684(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側の鋼コンクリート合成鋼管からなる推進管の後端面に一体に備えられた筒状をした鋼製のカラー部内に、後方側の鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の前端に形成された差し込み部が挿入され、該差し込み部の外周と前記カラー部内面との隙間にリング状の止水パッキンを介在させた推進管の継手であって、
前記カラー部の後端の内周面にリング状に突出させたストッパー金具当接用の縮径部を備え、
前記差し込み部はその外周面が前記鋼コンクリート合成鋼管の外殻鋼管と一体に成形された差し込み部外殻に覆われており、
該差し込み部外殻には、その外周に前記カラー部の内周面に圧接して摺動する2条の止水パッキンが相対移動不能に支持され、
かつ、前記差し込み部には、前記2条の止水パッキンの間に半径方向に向けたストッパー金具嵌合用の貫通孔を周方向に間隔を隔てて複数備え、
前記貫通孔に、ストッパー金具が螺合され、
該ストッパー金具は、前記前方側の推進管のカラー部内に後方側の差し込み部が差し込まれた状態で、先端が前記カラー部の縮径部の内径より外側に位置するまで突出操作可能となっており、
前記該縮径部の後端側は、前記止水パッキン部分を縮径して通過できるようにカラー部外周側に傾斜した断面形状となっている鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手。
【請求項2】
前記差し込み部外殻には、その外周に2条の止水パッキン嵌合溝が形成されており、その各止水パッキン嵌合溝のそれぞれに、前記止水パッキンが嵌合されて前記差し込み部に対して相対移動不能に支持されている請求項1に記載の鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手。
【請求項3】
前記貫通孔は、両端が貫通開口した筒状のアンカーナットの先端を、前記差し込み部外殻に形成した孔内に挿入して溶接し、該アンカーナットを前記差し込み部のコンクリート層内に埋め込むことによって形成されている請求項1又は2に記載の鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管を使用した推進工法において軸方向に隣り合う推進管の間を離脱しないように連結する鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離脱防止機能付きのコンクリート管用管継手として、例えば特許文献1に示すように、一方のコンクリート管の端部のカラー部の内面にパッキン嵌合用の凹溝を形成し、これに止水パッキン(ゴム輪)を移動不能に嵌合させ、他方のコンクリート管の差し込み部(スピゴット)の外周に止水パッキンが軸方向に相対移動できるリング状凹溝を形成しておき、カラー部内に差し込み部を挿入して互いに連結することにより、リング状凹溝6内においては止水パッキンが軸方向に移動し、両コンクリート管の相対移動を吸収するが、該凹溝の端部からは離脱できないようにした構造のものが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−21166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1に示されているような離脱防止付き推進管の継手構造は、継手部に離脱方向の外力が作用した際に、推進管相互に間に、カラー部に対する止水パッキンのスライド長さ以上の相対移動が生じるような外力が作用した場合、止水パッキンのせん断抵抗力によってのみこれに対抗するものであるため、離脱防止効果が低く、特に農業用水路のように、使用開始時に衝撃的な内圧上昇が発生するような水路には使用できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、衝撃的な内圧上昇が発生する水路など、離脱方向に作用する荷重が大きい場合であっても十分に耐えることができる鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴は、前方側の鋼コンクリート合成鋼管からなる推進管の後端面に一体に備えられた筒状をした鋼製のカラー部内に、後方側の鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の前端に形成された差し込み部が挿入され、該差し込み部の外周と前記カラー部内面との隙間にリング状の止水パッキンを介在させた推進管の継手であって、
前記カラー
部の後端の内周面にリング状に突出させたストッパー金具当接用の縮径部を備え、
前記差し込み部はその外周面が前記鋼コンクリート合成鋼管の外殻鋼管と一体に成形された差し込み部外殻に覆われており、該差し込み部外殻には、その外周に前記カラー部の
内周面に圧接して摺動する
2条の止水パッキンが相対移動不能に支持され、かつ、前記差し込み部には、前記
2条の止水パッキンの間に半径方向に向けたストッパー金具嵌合用の貫通孔を
周方向に間隔を隔てて複数備え、
前記貫通孔に、ストッパー金具が螺合され、
該ストッパー金具は、前記前方側の推進管のカラー部内に後方側の差し込み部が差し込まれた状態で、先端が前記カラー部の縮径部の内径より外側に位置するまで
突出操作可能となっており、前記該縮径部の後端側は、前記止水パッキン部分を縮径して通過できるようにカラー部外周側に傾斜した断面形状となっている鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手にある。
【0007】
本発明の第2の特徴は、請求項1の構成に加え、
前記差し込み部外殻には、その外周に2条の止水パッキン嵌合溝が形成されており、その各止水パッキン嵌合溝のそれぞれに、前記止水パッキンが嵌合されて前記差し込み部に対して相対移動不能に支持されていることにある。
【0008】
本発明の第3の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、
前記貫通孔は、両端が貫通開口した筒状のアンカーナットの先端を、前記差し込み部外殻に形成した孔内に挿入して溶接し、該アンカーナットを前記差し込み部のコンクリート層内に埋め込むことによって形成されていることにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明において
は、前方側の鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の後端面に一体に備えられた筒状をした鋼製のカラー部内に、後方側の鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の前端に形成された差し込み部が挿入され、該差し込み部の外周と前記カラー部内面との隙間にリング状の止水パッキンを介在させた推進管の継手であって、前記カラー部後端の
内周面にリング状に突出させたストッパー金具当接用の縮径部を備え、前記差し込み部の外周に、前記カラー部の
内周面に圧接して摺動する止水パッキンが相対移動不能に支持され、かつ、前記差し込み部には、半径方向に向けたストッパー金具嵌合用の貫通孔を
周方向に間隔を隔てて複数備え、該貫通孔の
内周面には、該差し込み部内に埋設したアンカーナットのネジ孔を露出させ、該ネジ孔に、前記ストッパー金具の外周に形成した雄ネジを螺合させ、前記前方側の推進管のカラー部内に後方側の差し込み部が差し込まれた状態で、前記ストッパー金具を推進管内より操作することにより該ストッパー金具の先端が、前記カラー部の縮径部の内径より外側に位置するまで突出させるようにしたことにより、継手における離脱防止力は、ストッパー金具のせん断抵抗力によって得られるため、従来のようにゴム製の止水パッキンより大きいせん断抵抗が得られ、高い離脱防止効果が得られる。
【0010】
また、本発明では鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管に前述したストッパー金具を
周方向に間隔を隔てて配置した構造の離脱防止機構を採用したことにより、鋼コンクリート合成鋼管の外周が鋼殻で覆われているため、せん断強度が高く、ストッパー金具位置に応力が集中したとしても、通常のコンクリート推進管に比べて耐力が大きい。
【0011】
また、先行して地中に押し込まれて推進管に対して後方側の推進管を接合させて推進させた後において、地中においてストッパー金具を突出させる作業が実施でき、特に曲線推進においては、前後の推進管の軸方向の角度が、推進途中で変化するものであるが、本発明においては、完成した管路内からの操作によって離脱防止機能を発揮させることができるものであるため、管路の直線部分、曲線部分の継手部の状況に応じて適切な離脱防止状態を構成させることができる。
【0012】
本発明
は、差し込み部に支持させた止水パッキンを、前記ストッパー金具嵌合用の貫通孔より差し込み部先端側と、差し込み部後端側とに備えることにより、特に曲線推進施工のように、曲線部を含む管路が完成した後に、ストッパー金具の突出操作を行わなければならない場合において、ストッパー金具の先端が突出される部分への土砂の浸入が防止され、地中における継手部分の離脱防止のための作業を安全かつ確実に行うことができる。
【0013】
本発明
は、カラー部後端の縮径部は、その後端側がカラー部外周側に傾斜した断面形状となっていることにより、差し込み部をカラー内に挿入する際に、止水パッキン部分の縮径して通過が容易となり、水圧の急激上昇によってストッパー金具より後方にある止水パッキンが、カラー部から外れた状態となっても、減圧状態に戻る際に、外れた止水パッキンが支障なく、再度元の位置に戻ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の係る鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手の実施例を示すもので、該推進管推進時の状態を示す部分縦断面図である。
【
図2】同上の鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管の離脱防止継手のストッパー金具位置にて切断した半断面図である。
【
図3】同上の推進管の最大離反状態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。
【0016】
図において符号10aは、互いに接合される推進方向前方側の鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管であり、10bは、前方側の推進管10aの後端に接合される鋼コンクリート合成鋼管を使用した推進管である。これら推進管10a,10bはいずれも、外殻鋼管30の内周にコンクリート層31からなるライニングが施された構造となっている。
【0017】
尚、図中符号32は、前方側推進管10aの後端の端板であり、33は後方側推進管10bの前端、即ち後述する差し込み部13の前端の端板である。
【0018】
前方側の推進管10aの後端には、外殻鋼管30の後端を延長した鋼管からなる継手用のカラー部11が突設されている。
【0019】
カラー部11の後端には、その
内周面にリング状に突出させたストッパー金具当接用の縮径部12が一体に成形されている。この縮径部12の前方側が円弧状となっており、後端側がカラー部外周側に
広がった傾斜部12aとなっている。
【0020】
後方側の推進管10bの先端には、その中央部分の胴部より細く形成した差し込み部13が一体に成形されている。この差し込み部13は、外殻鋼管30の端部を縮径加工した差し込み部外殻30aを有し、その内周面が前述したコンクリート層31がライニングされた構造となっている。
【0021】
この差し込み外部殻30aの外周に、前後に間隔を隔てて2条の止水パッキン嵌合溝14,15が形成され、そのそれぞれに止水パッキン16,17が嵌合され、差し込み部13に対して軸方向の相対始動が阻止された状態で装着されている。
【0022】
止水パッキン16,17は、一例として、外週側が推進管の推進方向とは逆側に傾斜させた複数の湾曲部18aが切込み18bによって複数に分割された形状に一体成形されたものを使用している。
【0023】
差し込み部13には、半径方向に向けたストッパー金具嵌合用の貫通孔20が
周方向に間隔を隔てて複数形成されている。この貫通孔20は、前述した2条の止水パッキン嵌合溝14,15の間の差し込み部周方向の同一円周上に形成され、差し込み部13の中心に向けた放射状に配置されている。
【0024】
この貫通孔20は、アンカーナット21の先端を差し込み部外殻30aに形成した孔内に挿入して溶接し、これをコンクリート層31内に埋め込むことによって形成されている。これらの貫通孔20の
差し込み部内周面側には、これより径が大きく、かつ所定のコンクリートかぶり厚が得られる深さの後埋め用凹部22が形成されている。
【0025】
アンカーナット21内にはストッパー金具25が嵌合されている。このストッパー金具25は、円柱状に形成され、先端部を除く外周面には雄ネジが刻設されており、先端部には、雄ネジより小径に形成されている。後端には、角型レンチ、例えば六角レンチ嵌合用の六角穴からなるレンチ嵌合穴26が形成されている。
このストッパー金具25の外周の雄ネジをアンカーナット21のネジ孔内に螺合させている。
【0026】
また、ストッパー金具25の全長さ、即ち先端からレンチ嵌合穴26が開口している端面までの長さは、差し込み部13の厚さより短く形成され、後述する離脱防止のための操作時以外は、アンカーナット21の全長が差し込み部13の厚さ内に入り込んだ状態で操作することができるようになっている。
【0027】
このように構成される離脱防止継手は、
図1に示すように両推進管10a,10bの端板32,33間に、端面クッション材28を介材させ接合させ、所定の推進作業が終了した後に、
即ち、前方側の推進管のカラー部内に後方側の差し込み部が差し込まれた状態で、ストッパー金具25を、その先端が、前記カラー部11の縮径部12の内径より外側に位置するまで突出させる。この時の突出操作は、ストッパー金具の25の先端がカラー部11の
内周面に当接されるまで突出させることによって、所望の突出長さとなったことが確認できる。
【0028】
この状態で、両推進管10a,10bに互いに離反する方向の大きな外力が作用し、差し込み部13が抜け出し側に移動したとき、
図3に示すようにストッパー金具25が、カラー部11先端の縮径部12に達すると、これに側面が当接して離脱が阻止される。この時の離脱抵抗は、全ストッパー金具25のせん断抵抗によって受け持たれる。
【0029】
尚、この時、両止水パッキンの内、差し込み部13の後端側にある止水パッキン17は、カラー11の後端から抜け出ることとなるが、もう一方の止水パッキン16によって水密状態が維持される。このようにストッパー金具25より後方にある止水パッキン17が、カラー部11から外れた状態となっても、管路内が減圧状態に戻る際に、外れた止水パッキンが支障なく、再度元の位置に戻る。
【符号の説明】
【0030】
10a,10b 推進管
11 カラー部
11a 突条
12 縮径部
12a 傾斜部
13 差し込み部
14,15 止水パッキン嵌合溝
16,17 止水パッキン
18a 湾曲部
18b 切込み
20 貫通孔
21 アンカーナット
22 後埋め用凹部
25 ストッパー金具
26 レンチ嵌合穴
28 端面クッション材
30 外殻鋼管
30a 差し込み部外殻
31 コンクリート層
32,33 端板