(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本実施形態の実装方法について、
図1〜
図6に基づいて説明する。なお、
図1(a)〜(c)は、各々の左側の図が概略斜視図、右側の図が概略断面図である。
【0014】
本実施形態の実装方法は、
図1(c)に示すように、基板1上に複数個のチップ2を実装する実装方法である。この実装方法は、基板1に各チップ2の各々を仮接合する仮接合工程(
図1(a)参照)と、基板1に仮接合された各チップ2の各々を基板1に本接合する本接合工程(
図1(b)参照)とを備える。この実装方法では、仮接合の後よりも本接合の後のほうが、基板1と各チップ2の各々との接合強度が高くなる。
【0015】
仮接合工程は、第1基本工程を、基板1に実装するチップ2の数だけ繰り返す。第1基本工程は、第1ステップと、第2ステップとからなる。
【0016】
第1ステップでは、基板1の第1金属層11とチップ2の第2金属層21とを位置合わせする。
【0017】
第2ステップでは、第1ステップの後にチップ2側から加圧してチップ2の第2金属層21と基板1の第1金属層11とを第1規定温度において固相拡散接合することで基板1にチップ2を仮接合する。固相拡散接合は、チップ2の第2金属層21と基板1の第1金属層11との接合面間を固相状態で接合する方法である。第1規定温度は、第2金属層21及び第1金属層11が溶融しない温度に設定する。仮接合は、本接合の前に基板1の定められた位置にチップ2を位置決めした状態で保持するための接合を意味している。
【0018】
本接合工程は、第2基本工程を、基板1上のチップ2の数だけ繰り返す。第2基本工程は、第3ステップと、第4ステップとからなる。
【0019】
第3ステップでは、基板1に仮接合されているチップ2の位置を認識する。
【0020】
第4ステップでは、第3ステップの後にチップ2側から加圧してチップ2の第2金属層21と基板1の第1金属層11とを第2規定温度において液相拡散接合することでチップ2を基板1に本接合する。これにより、チップ2は、第2金属層21と第1金属層11との合金層からなる接合層31を介して基板1に接合される。本接合は、チップ2と基板1との接合状態を、より接合強度が高く且つ安定した接合状態とする最終的な接合を意味している。第2規定温度は、第2金属層21及び第1金属層11が溶融する温度に設定する。したがって、第2規定温度は、相対的に第1規定温度よりも高い温度に設定する。
【0021】
仮接合工程と本接合工程とは、別々の設備を用いて行うことができる。ところで、生産ラインにおいては、基板1に複数個のチップ2を実装する実装工程に複数の基板1が仕掛かることになる。これに対し、本実施形態の実装方法では、仮接合工程と本接合工程とを別々の設備を用いて行うことができるので、互いに異なる2枚の基板1に対して仮接合工程と本接合工程とを並行して行うことができる。ここで、仮接合工程は、第2ステップにおいて第2金属層21と第1金属層11とを固相拡散接合することで仮接合するので、第1ステップの後に続けて液相拡散接合を行う場合に比べて、所要時間(作業時間)を短くすることとが可能となる。また、本接合工程は、基板1に各チップ2が仮接合された状態で第3ステップにおいてチップ2の位置を認識するので、第1ステップのようにチップ2を高精度に認識してピックアップする必要がなく、第1ステップのようにチップ2及び基板1を高精度に認識する場合に比べてチップ2を簡易に認識すればよい。これにより、本接合工程では、第1ステップの後に続けて液相拡散接合を行う場合に比べて、所要時間を短くすることが可能となる。よって、本実施形態の実装方法では、仮接合工程と本接合工程とを並行して行うことにより、実装工程のタクトタイムの短縮化を図ることが可能になり、実装工程のスループットの向上を図ることが可能となる。また、特許文献1の実装方法では、ヘッドのヒータにより吸着コレットを介してLEDチップを規定の接合温度に加熱した状態で、チップ側接合用電極と基板側接合用電極との接合面同士を接触させるので、熱ゆらぎや熱膨張などに起因してチップ側接合用電極と基板側接合用電極との高精度の位置合わせが難しい場合も考えられる。これに対し、本実施形態の実装方法では、本接合を行う第2規定温度よりも相対的に低い第1規定温度で仮接合を行うので、高精度の位置合わせが容易になる。
【0022】
仮接合工程と本接合工程とは、別々の設備として、例えば、2つのダイボンド装置を用いることができる。各ダイボンド装置は、ボンディングヘッド、ステージ、認識装置、制御装置などを備えている。ボンディングヘッド、ステージ及び認識装置は、制御装置によって制御される。制御装置は、マイクロコンピュータに適宜のプログラムを搭載することによって構成される主制御部と、主制御部の指示に基づいてボンディングヘッド、ステージ及び認識装置それぞれを制御する個別制御部とを備えている。認識装置は、カメラ、画像処理部及びモニタにより構成される。なお、ダイボンド装置の構成は、特に限定するものではない。また、仮接合工程及び本接合工程それぞれを行う各設備は、ダイボンド装置に限定するものではない。
【0023】
以下では説明の便宜上、仮接合工程を行うダイボンド装置を第1ダイボンド装置、本接合工程を行うダイボンド装置を第2ダイボンド装置と称する。なお、第1ダイボンド装置と第2ダイボンド装置とは、同じ構成のものでもよいし、異なる構成のものでもよい。
【0024】
基板1としては、例えば、シリコンウェハから形成され各チップ2の搭載予定領域の各々に第1金属層11が設けられたウェハを採用することができる。基板1は、シリコンウェハから形成されたウェハの場合、シリコンウェハの表面にシリコン酸化膜などからなる絶縁膜が形成されているのが好ましい。第1金属層11は、例えば、フラックスレスのAuSn膜により構成することができる。フラックスレスのAuSn層は、例えば、めっき法やスパッタ法などにより形成することができる。第1金属層11と絶縁膜との間には、例えば、バリア層及び当該バリア層の下地層を介在させてもよい。第1金属層11がAuSn膜であり、絶縁膜がシリコン酸化膜である場合、バリア層の材料としては、例えば、Pt、Pdなどの白金族の材料を採用することができる。また、バリア層と絶縁膜との間に介在させる下地層の材料としては、例えば、Ti、Niなどを採用することができる。
【0025】
シリコンウェハとしては、例えば、直径が50〜300mm、厚みが200〜1000μm程度のものを用いることができる。
【0026】
基板1の材料は、シリコンに限らず、例えば、窒化アルミニウムや、アルミナなどでもよい。基板1の材料としてシリコンを採用する場合には、基板1が上述の絶縁膜を備えるのが好ましいが、基板1の材料として窒化アルミニウムやアルミナなどの絶縁材料を採用する場合には、基板1に絶縁膜を設けなくてもよい。
【0027】
チップ2としては、例えば、LEDチップを採用することができる。LEDチップとしては、例えば、チップサイズが0.3mm□(0.3mm×0.3mm)や0.45mm□や1mm□のものなどを用いることができる。また、LEDチップの平面形状は、正方形状に限らず、例えば、長方形状などでもよい。LEDチップの平面形状が、長方形状の場合、LEDチップのチップサイズとしては、例えば、0.5mm×0.24mmのものなどを用いることができる。
【0028】
LEDチップの発光波長は、特に限定するものではない。よって、LEDチップとしては、例えば、紫外LEDチップ、紫色LEDチップ、青色LEDチップ、緑色LEDチップ、黄色LEDチップ、橙色LEDチップ、赤色LEDチップなどを採用することができる。また、LEDチップとしては、白色LEDチップを採用することもできる。
【0029】
LEDチップとしては、
図3(a)に示すように、主表面側に第1電極2aが形成され、裏面側に第2電極2bが形成されたLEDチップを採用することができる。このLEDチップは、第2電極2bに第2金属層21が積層されたものでもよいし、第2電極2bの最表面側が第2金属層21を構成するものでもよいし、第2電極2bが第2金属層21を構成するものでもよい。なお、
図3(a)の実装形態において、第1電極2aと第2電極2bとは、一方がアノード電極、他方がカソード電極である。
【0030】
また、LEDチップとしては、
図3(b)に示すように、厚み方向の一面側に第1電極2a及び第2電極2bが形成されたLEDチップを採用することができる。このLEDチップは、第1電極2a及び第2電極2bの各々に第2金属層21が積層されたものでもよいし、第1電極2a及び第2電極2bの各々の最表面側が第2金属層21を構成するものでもよいし、第1電極2a及び第2電極2bの各々が第2金属層21を構成するものでもよい。なお、
図3(b)の実装形態において、第1電極2aと第2電極2bとは、一方がアノード電極、他方がカソード電極である。
【0031】
第2金属層21及び第1金属層11の各材料としては、フラックスレスの材料を採用する。
【0032】
チップ2は、第2金属層21の材料として、例えば、フラックスレスのAuを採用することができる。フラックスレスのAu層は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などにより形成することができる。
【0033】
チップ2の第2金属層21と基板1の第1金属層11との材料の組み合わせは、Au−AuSnに限らず、例えば、AuSn−Auでもよい。チップ2の第2金属層21と基板1の第1金属層11との材料の組み合わせをAu−AuSnやAuSn−Auとした場合には、例えば、複数個のチップ2が実装された基板1や、複数個のチップ2が実装された基板1から分割されたモジュールを、マザーボートなどにSuAgCuを用いて2次実装する場合に、接合層31が再溶融するのを防ぐことが可能となる。
【0035】
チップ2としてLEDチップを採用し、第2金属層21と第1金属層11とを液相拡散接合することで形成される接合層31をAuSn層とする場合には、上述の例に限らず、例えば、
図4〜
図6のいずれかの構成例も考えられる。
図4に示した構成例では、チップ2の第2金属層21をAu層21aとし、基板1の第1金属層11を、Sn層もしくはAuSn層からなる第1層11aと、この第1層11a上のAu層からなる第2層11bとで構成している。これにより、基板1は、第1金属層11におけるSn層が酸化するのを抑制することが可能となる。
【0036】
図5に示した構成例では、チップ2の第2金属層21をAu層21aとし、基板1の第1金属層11を、Sn層11cとAu層11dとが交互に積層され最表層がAu層11dとされた多層構造としている。これにより、基板1は、第1金属層11におけるSn層11cが酸化するのを抑制することが可能となる。また、本接合工程では、Snを溶融させた際のAuSnの形成を容易にすることが可能となる。
【0037】
図6に示した構成例では、チップ2の第2金属層21をAu層21aとし、基板1の第1金属層11を、格子状のスリットが形成された平面形状のAuSn層11eとしている。これにより、本接合工程では、AuSn層11eを溶融させた際に、接合の起点(合金化の起こる箇所)がばらつくのを抑制することが可能となり、接合強度のばらつきや、接合面積のばらつき、未接合領域などを低減させることが可能となる。
【0038】
なお、
図4〜
図6の構成例では、第1金属層11の構成と第2金属層21の構成とを逆にしてもよい。
【0039】
チップ2は、LEDチップに限らない。チップ2は、例えば、レーザダイオードチップ、フォトダイオードチップ、GaN系HEMT(high electron mobility transistor)チップ、MEMS(microelectro mechanical systems)チップ、赤外線センサチップ、ICチップなどでもよい。MEMSチップとしては、例えば、加速度センサチップ、圧力センサチップなどを採用することができる。
【0040】
チップ2は、チップサイズについても特に限定するものではなく、例えば0.2mm□〜5mm□程度のものを用いることができる。また、チップ2の平面視での外周形状は、正方形状に限らず、例えば、長方形状でもよい。
【0041】
チップ2は、厚みについても特に限定するものではなく、例えば0.1〜1mm程度のものを用いることができる。
【0042】
仮接合工程は、第1ダイボンド装置のステージ3a(
図1(a)参照)の表面側に基板1を載置する第1基板載置工程の後に行う。ステージ3aには、上記表面側に載置される基板1などを吸着するための複数の吸気孔(図示せず)が周部に形成されている。これにより、第1ダイボンド装置は、ステージ3aの上記表面側に載置した基板1を吸着した状態で保持することができる。
【0043】
仮接合工程の第1ステップでは、基板1に対してチップ2を位置合わせする。より具体的に説明すれば、第1ステップでは、例えば、ウェハテープ(粘着性樹脂テープ)やチップトレイなどに保持されているチップ2を第1ダイボンド装置のコレット5aにより真空吸着してピックアップする前に、ピックアップ対象のチップ2を第1ダイボンド装置の認識装置(図示せず)により高精度に認識する。その後、第1ダイボンド装置のステージ3aの表面側の基板1における接合予定領域を認識装置により高精度に認識し、コレット5aにより真空吸着しているチップ2と基板1とを位置合わせする(例えば、チップ2の姿勢を修正するチップアライメントを行う)。粘着性樹脂テープとしては、例えば、紫外線硬化型のダイシングテープや熱硬化型のダイシングテープなどがある。なお、粘着性樹脂テープは、ダイシング時に強い粘着力でチップ2を保持しているが、ダイシング後に紫外線照射や赤外線照射により粘着性を低下させることで、ピックアップ性を高めることができる。
【0044】
仮接合工程の第2ステップでは、チップ2と基板1との接合面同士を接触させ、チップ2側から加圧してチップ2の第2金属層21と基板1の第1金属層11とを第1規定温度で固相拡散接合する。本実施形態の実装方法では、この固相拡散接合により、チップ2と基板1とが仮接合される。第2ステップでは、ボンディングヘッド4aのヒータ(図示せず)によりコレット5aを介してチップ2を第1規定温度に加熱する。第2ステップでは、チップ2を第1規定温度よりもやや高い温度に加熱してから、チップ2と基板1との接合面同士を接触させることで第1規定温度となるようにしているが、チップ2と基板1との接合面同士を接触させてから第1規定温度となるように加熱してもよい。
【0045】
固相拡散接合は、例えば、超音波接合もしくは表面活性化接合であることが好ましい。これにより、第2ステップでは、チップ2や基板1の加熱温度を比較的低温としながらも仮接合することができるので、仮接合前にチップ2と基板1との少なくとも一方を加熱した状態でも、高精度な位置合わせが可能となる。
【0046】
超音波接合は、超音波振動を利用して行う固相拡散接合である。超音波接合としては、所定の加熱状態のもとで圧力と超音波振動とを利用して接合する超音波併用熱圧着が好ましい。超音波併用熱圧着では、圧力と超音波振動とを利用して常温で接合する場合に比べて、接合強度を高めることが可能となる。また、超音波併用熱圧着では、熱圧着に比べて、より低温での接合が可能となる。
【0047】
表面活性化接合は、接合前に互いの接合表面へアルゴンのプラズマ若しくはイオンビーム若しくは原子ビームを真空中で照射して各接合表面の清浄化・活性化を行ってから、接合表面同士を接触させ、第1規定温度下で適宜の荷重を印加して直接接合する。第1規定温度は、チップ2へ熱ダメージが生じない温度が好ましい。例えばチップ2がLEDチップの場合、第1規定温度は、LEDチップのジャンクション温度が最大ジャンクション温度を超えない温度が好ましく、常温〜100℃程度の範囲で設定することが好ましい。ここで、表面活性化接合は、例えば、第1規定温度を例えば80℃〜100℃の範囲で設定すれば、常温の場合に比べて、接合強度を高めることが可能となる。なお、表面活性化接合は、アルゴンのプラズマ若しくはイオンビーム若しくは原子ビームに限らず、例えば、ヘリウムやネオンなどのプラズマ若しくはイオンビーム若しくは原子ビームを利用するようにしてもよい。
【0048】
なお、固相拡散接合を行う第2ステップでは、接合時にチップ2と基板1との少なくとも一方を加熱することにより、接合強度を向上させることが可能となる。
【0049】
第2ステップは、空気雰囲気中ではなく、制御された雰囲気中で行うことが好ましい。制御された雰囲気としては、例えば、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気、還元性ガス雰囲気などが挙げられる。不活性ガス雰囲気としては、例えば、N
2ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気などが挙げられる。還元性ガス雰囲気としては、例えば、H
2ガス雰囲気が挙げられる。第2ステップでは、雰囲気を不活性ガス雰囲気もしくは真空雰囲気とすることにより、酸化を抑制することが可能となる。また、第2ステップでは、雰囲気を還元性ガス雰囲気とすることにより、不要な酸化物を除去することが可能となる。
【0050】
本接合工程は、第2ダイボンド装置のステージ3b(
図1(b)参照)の表面側に基板1を載置する第2基板載置工程の後に行う。ステージ3bには、上記表面側に載置される基板1などを吸着するための複数の吸気孔(図示せず)が周部に形成されている。これにより、第2ダイボンド装置は、ステージ3bの上記表面側に載置した基板1を吸着した状態で保持することができる。
【0051】
本接合工程の第3ステップでは、基板1に仮接合されているチップ2の位置を認識する。より具体的に説明すれば、第3ステップでは、第2ダイボンド装置のステージ3bに吸着されている基板1上のチップ2を第2ダイボンド装置の認識装置(図示せず)により簡易に認識し、ボンディングヘッド4bのコレット5bとチップ2とを位置合わせする。なお、第2ダイボンド装置は、チップ2を簡易に認識すればよいから、チップ2を高精度に認識する場合に比べて、画像処理部での画像処理を簡略化することができ、認識に要する時間を短縮することが可能となる。
【0052】
本接合工程の第4ステップでは、チップ2側から加圧して第2金属層21及び第1金属層11を溶融させる第2規定温度でチップ2を基板1に対して本接合する。より具体的に説明すれば、第4ステップでは、第2ダイボンド装置のボンディングヘッド4bによりチップ2側から加熱してチップ2と基板1とを液相拡散接合する。液相拡散接合は、チップ2の第1金属層21と基板1の第1金属層11との少なくとも一方を一時的に溶融、液化した後、拡散を利用し等温凝固させる方法である。ここでは、チップ2の第2金属層21と基板1の第1金属層11とを共晶接合させるようにしている。共晶接合は、液相拡散接合のうち液化に対して共晶反応を利用する接合方法である。
【0053】
第4ステップでは、第2ダイボンド装置のボンディングヘッド4bに設けられたコレット5bをチップ2に接触させ、ボンディングヘッド4bのヒータ(図示せず)によりコレット5bを介してチップ2を第2規定温度に加熱した状態で、ボンディングヘッド4b側からチップ2に適宜の規定圧力を規定時間だけ印加する。これにより、第4ステップでは、チップ2の第2金属層21と基板1の第1金属層11とを共晶接合させる。第2規定温度は、例えば、第2金属層21の材料がAu、第1金属層11の材料がAuSnの場合、AuSnの溶融温度よりも高い温度に設定すればよい。規定圧力は、例えば、2〜50kg/cm
2程度の範囲で適宜設定すればよい。また、規定時間は、例えば、0.5〜10秒程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0054】
第4ステップは、空気雰囲気中ではなく、制御された雰囲気中で行うことが好ましい。制御された雰囲気としては、例えば、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気、還元性ガス雰囲気などが挙げられる。不活性ガス雰囲気としては、例えば、N
2ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気などが挙げられる。還元性ガス雰囲気としては、例えば、H
2ガス雰囲気が挙げられる。第4ステップでは、雰囲気を不活性ガス雰囲気もしくは真空雰囲気とすることにより、酸化を抑制することが可能となる。また、第4ステップでは、雰囲気を還元性ガス雰囲気とすることにより、不要な酸化物を除去することが可能となる。
【0055】
第4ステップでは、チップ2側からの加熱だけでなく、ステージ3bのヒータ(図示せず)によりステージ3bを介して基板1側からの加熱も行っているが、これに限らず、チップ2側あるいは基板1側からのみ加熱するようにしてもよい。ここで、第2金属層21の材料がAuSn、第1金属層11の材料がAuの場合には、基板1よりもチップ2側の温度が高くなるように、ボンディングヘッド4bのヒータ及びステージ3bのヒータそれぞれの温度を設定することが好ましい。なお、ステージ3bのヒータの温度は、AuSnの融点以下に設定するのが好ましい。これは、チップ2の実装後にAuSnが再溶融すると、高精度に実装されたチップ2の位置ずれが発生してしまう懸念があるからである。
【0056】
液相拡散接合を行う際の接合条件は、接合界面のボイド率(未接合率)が例えば20%以下となるように設定するのが好ましい。ボイド率は、例えば、所望の接合領域の面積(例えば、所望の接合層31の面積)に占める未接合領域の面積の割合として規定することができる。所望の接合領域の面積及び未接合領域の面積は、例えば、液相拡散接合を行った後に、例えば、超音波顕微鏡による観察を行うことで得られる超音波顕微鏡像図から推測することができる。
【0057】
本実施形態の実装方法では、仮接合の後に本接合を行うことにより、接合強度を向上させることが可能となるとともに、ボイドを低減することが可能となる。これにより、本実施形態の実装方法では、チップ2と基板1との間の熱抵抗を低減することが可能となるとともに、熱抵抗のばらつきを低減することが可能となる。
【0058】
以上説明した本実施形態の実装方法は、基板1に各チップ2の各々を仮接合する仮接合工程と、基板1に仮接合された各チップ2の各々を基板1に本接合する本接合工程とを備える。ここで、仮接合工程は、第1ステップと第2ステップとからなる第1基本工程を、基板1に実装するチップ2の数だけ繰り返す。第1ステップは、基板1の第1金属層11とチップ2の第2金属層21とを位置合わせする。第2ステップは、第2金属層21と第1金属層11とを固相拡散接合することで仮接合する。また、本接合工程は、第3ステップと第4ステップとからなる第2基本工程を、基板1上のチップ2の数だけ繰り返す。第3ステップは、基板1に仮接合されているチップ2の位置を認識する。第4ステップは、第2金属層21と第1金属層11とを液相拡散接合することで本接合する。よって、本実施形態の実装方法では、仮接合工程と本接合工程とを別々の設備を用いて行うことができるので、互いに異なる2枚の基板1に対して仮接合工程と本接合工程とを並行して行うことが可能となる。よって、本実施形態の実装方法では、実装工程のタクトタイムの短縮化を図ることが可能となる。
【0059】
この実装方法においては、固相拡散接合を第1規定温度で行い、液相拡散接合を第1規定温度よりも高い第2規定温度で行うようにし、第2規定温度を、チップ2側と基板1側との少なくとも一方の加熱により到達させる温度とすることが好ましい。これにより、この実装方法では、チップ2と基板1との本接合の前後において、チップ2の位置がずれるのを抑制することが可能となり、また、基板1上の複数個のチップ2の熱履歴を揃えることが可能となる。
【0060】
また、実装方法では、基板1としてシリコンウェハから形成されたウェハを採用することにより、第1金属層11の下地の表面粗さを小さくすることが可能となり、第1金属層11の表面粗さを小さくすることが可能となる。よって、この実装方法では、第1金属層11の表面粗さに起因した仮接合や本接合でのボイドの発生を抑制することが可能となり、接合強度を向上させることが可能となる。第1金属層11の表面粗さについては、例えば、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaが10nm以下であることが好ましく、数nm以下であることが、より好ましい。