(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044890
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/24 20060101AFI20161206BHJP
E04D 3/30 20060101ALI20161206BHJP
E04D 3/40 20060101ALI20161206BHJP
E04D 13/17 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
E04D3/24 A
E04D3/30 A
E04D3/40 X
E04D13/17
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-248687(P2012-248687)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-95268(P2014-95268A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 崇
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−083538(JP,U)
【文献】
実開昭62−056637(JP,U)
【文献】
実開昭62−032291(JP,U)
【文献】
特開平06−308971(JP,A)
【文献】
米国特許第06780099(US,B1)
【文献】
米国特許第05561953(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0055733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/24
E04D 3/30
E04D 3/40
E04D 13/16,17
E04B 1/70
F16L 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に開口し上方に突出する凸部と上方に開口し下方に凹む凹部とが軒に沿う方向に交互に形成された凹凸屋根材を備え、この凹凸屋根材が野地板上に設けられて前記凸部と前記野地板との間に通気空間が形成され、前記凸部の対向する両側片部に対して非平行であると共に、前記凸部の上片部と前記野地板の上面に対しても非平行であるように前記両側片部のうち一方の前記側片部の下端から対向する他方の前記側片部の上端に向けて傾斜する傾斜部を有し、前記傾斜部の前記一方の側片部の下端に隣接する部分から前記一方の側片部の上端に隣接する部分まで設けられると共に、前記傾斜部の前記他方の側片部の上端に隣接する部分から前記他方の側片部の下端に隣接する部分まで設けられる反射板を備え、前記反射板の表面には吸音材が取付けられていることを特徴とする屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建造物の野地板上にスレート等の屋根材が設けられた屋根構造が知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、この屋根構造では、野地板と屋根材との間の通気性が良くないという問題があった。そこで、凸部と凹部とを軒方向に交互に有する凹凸屋根材を用い、凸部と野地板との間に通気空間を形成することが考えられた。そして、凹凸屋根材の野地板への固定に、凹凸屋根材の凸部内に挿入されて通気空間の軒側端部を閉塞し面戸として機能する閉塞部が用いられるものが開発された(特願2012−215632)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−167927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凹凸屋根材2は、
図4に示すように、下方に開口し上方に突出する凸部21と、上方に開口し下方に凹む凹部22を有している。凸部21と凹部22は軒方向に交互に複数形成されている。従来の凹凸屋根材2の凸部21は、凹部22の下片部の軒方向の両端から略垂直に突設し互いに平行な側片部23と、側片部23の上端を結合し野地板31の上面と平行となる上片部24と、で形成されている。この凸部21の形状は、二つの定常波41、42を発生させ易い形状となっている。
【0005】
一つ目の定常波41について説明する。凸部21の上片部24と野地板31の上面とが平行であるため、凸部21の上片部24の軒方向に沿って連続的に存在する
図4に示す上下方向の矢印で示す一つ目の定常波41(図中には一つだけ示す)が発生する。
【0006】
二つ目の定常波42について説明する。凸部21の対向する側片部23同士が互いに平行であるため、凸部21の側片部23の上下方向に沿って連続的に存在する
図4に示す左右方向の矢印で示す二つ目の定常波42(図中には一つだけ示す)が発生する。
【0007】
定常波41、42はその性質として、特定の周波数帯の音を増幅させる。そのため、二つの定常波41、42が発生しているので、二つの特定の周波数帯の音が増幅される。そうすると、従来の凹凸屋根材2の雨音の騒音は、全周波数帯の中で二つの騒音の大きさのピークを持つことになる。ピークを持つことにより、ピークとなる周波数帯の音が、大きな騒音となって聞こえてしまっていた。
【0008】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、騒音のピークが発生し難い屋根構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0010】
下方に開口し上方に突出する凸部と上方に開口し下方に凹む凹部とが軒に沿う方向に交互に形成された凹凸屋根材を備え、この凹凸屋根材が野地板上に設けられて前記凸部と前記野地板との間に通気空間が形成され、前記凸部の対向する両側片部に対して非平行であると共に、前記凸部の上片部と前記野地板の上面に対しても非平行である
ように前記両側片部のうち一方の前記側片部の下端から対向する他方の前記側片部の上端に向けて傾斜する傾斜部を有し、前記傾斜部の前記一方の側片部の下端に隣接する部分から前記一方の側片部の上端に隣接する部分まで設けられると共に、前記傾斜部の前記他方の側片部の上端に隣接する部分から前記他方の側片部の下端に隣接する部分まで設けられる反射板を備え
、前記反射板の表面には吸音材が取付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の屋根構造は、定常波を発生し難くし、騒音のピークを発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の凹凸屋根材とその内部に取付けられる反射板と、その反射板に反射される音波を示した断面図である。
【
図3】(a)は本発明の反射板の形状の例であり、(b)は本発明の反射板の形状の例であり、(c)は本発明の反射板の形状の例である。
【
図4】従来例の凹凸屋根材の内部で反射される音波を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
本実施形態の屋根構造は
図2に示すように片流れ屋根を有する建物3に適用したものである。以下では、傾斜した屋根面に沿って軒と棟を結ぶ矢印D1に示す方向を軒棟方向とし、軒に沿う矢印D2に示す方向を軒方向とする。
【0016】
建物3の屋根下地は、垂木に野地板31を設けることで形成されている。野地板31は棟側から軒側に向かって一様な角度で傾斜している。
【0017】
野地板31には凹凸屋根材2が軒方向に複数並べて載置されている。
【0018】
本実施形態の各凹凸屋根材2は鋼板製である。なお、各凹凸屋根材2は鋼板以外の金属板で形成してもよく、また、その材質は金属に限定されるものではない。凹凸屋根材2は、下方に開口し上方に突出する凸部21と、上方に開口し下方に凹む凹部22を有している。凸部21と凹部22は軒方向に交互に複数形成されている。各凸部21の側片部23は隣接する凹部22の側片部23を兼ねている。
【0019】
凹凸屋根材2は野地板31(
図1参照)の上に載置され、凹凸屋根材2の凹部22に釘を打ち込み野地板31まで貫通させることにより、凹凸屋根材2を野地板31に固定させる。そして、釘を打ち込んだ部分の水密性を保つためにコーキングを行う。
【0020】
野地板31とこの上に配置された各凹凸屋根材2の凸部21に囲まれた通気空間25が形成され、この通気空間25を第一通気空間26とする。第一通気空間26は、凹凸屋根材2の軒棟方向における略全長に亘って形成されている。
【0021】
図2に示されるように複数の凹凸屋根材2で構成される屋根面上に、機能パネルとしての太陽光発電パネル32が設けられている。太陽光発電パネル32は、シリコンを主材料とした半導体素子により太陽光発電エネルギーを電気エネルギーに変換して出力するものである。太陽光発電パネル32は、様々なものが公知となっていて、これらを適宜利用可能である。
【0022】
図2に示されるように太陽光発電パネル32は複数の凸部21の上面に跨って載置され、太陽光発電パネル32はボルト等の取付け部材により屋根面上に固定されている。太陽光発電パネル32と凹凸屋根材2の凹部22で囲まれた第二通気空間27が形成されている。各第二通気空間27は、太陽光発電パネル32の軒棟方向における全長に亘って形成されている。太陽光発電パネル32は、周囲の雰囲気温度が高い場合や、直射日光が長時間照射された場合等に、発電素子が高温になって発電効率(変換効率)が低下する恐れがある。しかし、本実施形態では太陽光発電パネル32を第一通気空間26と第二通気空間27を流れる外気により冷却することができるので、太陽光発電パネル32の発電効率の低下を抑えることができる。
【0023】
凹凸屋根材2は、凸部21の側片部23が凹部22の下片部から凸部21の対向する側片部23同士が互いに平行になるように立設し、凸部21の上片部24は野地板31に対して平行に設けられている。凹凸屋根材2の上片部24と野地板31の上面が互いに平行であるため、上片部24と野地板31との間の距離に応じた一つ目の定常波41(
図4参照)が発生し易くなっている。また、凹凸屋根材2の側片部23が互いに平行であるため、両側片部23間の距離に応じた二つ目の定常波42(
図4参照)が発生し易くなっている。これらの定常波41、42により、騒音レベルのピークが二箇所発生することになる。そして定常波41、42は、特定の周波数帯の音を増幅させる。そのため、騒音レベルがピークとなる周波数帯の音が増幅されるため、上記したように凹凸屋根材2から発生する騒音が大きな騒音であると感じてしまう。そこで、凸部21の内部に反射板1を備えることとした。
【0024】
反射板1は、本実施形態では
図1に示すように、凹凸屋根材2の凸部21の内部の対角線上に設けられている。しかし、反射板1は凸部21の対向する両側片部23に対して非平行であると共に、凸部21の上片部24と野地板31の上面に対して非平行であればよく、その形状は限定されない。例えば
図3(a)に示すように、反射板1が、凸部21の上片部24の端部から凸部21の側片部23の下端まで設けられ、側片部23の下端から上方に行く程対向する側片部23の上端に向けて傾斜し、その側片部23の上端から側片部23の下端まで設けられる形状でもよい。この形状では、両側片部23と両側片部23に当接する反射板1の部分とが接着又はネジ等で固定されることにより、反射板1は凸部21内部に固定されている。また、
図3(b)に示すように、反射板1が、凸部21の側片部23の下端から上端まで設けられ、その側片部23の上端から下方に行く程対向する側片部23の下端に向けて傾斜する形状でもよい。この形状では、側片部23と側片部23に当接する反射板の部分とが接着又はネジ等で固定されることにより、反射板1は凸部21内部に固定されている。そして、
図3(c)に示すように、反射板1は、凸部21の側片部23の下端から上方に行く程凸部21の上片部24の略中点に向けて傾斜し、その上片部24の略中点から下方に行く程対向する側片部23の下端に向けて傾斜する形状でもよい。
【0025】
上片部24と野地板31の上面とは平行であったが、上片部24から野地板31上面との間に上片部24と野地板31上面と非平行となる反射板1が介在するため、定常波41が発生し難くなる。また、両側片部23も互いに平行であったが、両側片部23の間に両側片部23と非平行となる反射板1が介在するため、定常波42が発生し難くなる。
【0026】
反射板1の材質は、木材や金属などが考えられるが、特に限定されない。反射板1の表面にフェルト等の吸音材を貼り付けることにより、吸音材の表面の凹凸形状による音波の乱反射で、定常波41、42発生を抑制することができる。また、凸部21の内部で発生する音を吸音材が吸収し、騒音を小さくすることができる。
【0027】
以上のような構成の屋根構造とすることにより、凸部21の両側片部23の間に発生していた定常波42と、凸部21の上片部24と野地板31の上面の間に発生していた定常波41と、が発生し難くなる。定常波41、42が発生し難くなると、騒音のピークが生じ難くなるため、大きな騒音を発生し難くすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 反射板
2 凹凸屋根材
21 凸部
22 凹部
23 側片部
24 上片部
25 通気空間
26 第一通気空間
27 第二通気空間
3 建物
31 野地板
41 定常波
42 定常波