【文献】
Eur. J. Biochem.,1999年,Vol. 259,pp. 275-280
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他の作用剤は、再生剤、抗加齢剤、抗シワ剤、鎮静剤、抗フリーラジカル剤、抗糖化剤、水和剤、抗細菌剤、抗真菌剤、角質溶解剤、筋肉弛緩剤、角質除去剤、引き締め剤、真皮の巨大分子の合成またはエネルギー代謝または微小循環または爪成長または髪成長の刺激剤、表皮の分化または色素沈着の調節剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、日焼け止め、および太陽光フィルターから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
真皮密度および肌の弾力を向上させるための、ならびに顔の造作のたるみ、真皮のしぼみ、肌が薄くなること、アトニー、細かいスジ、および深いシワの発生を遅らせるか減少させるための、請求項10に記載の組成物の美容目的の使用。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「細胞外基質タンパク質を活性化させるペプチドすなわち作用剤」は、直接または間接的に遺伝子発現を調節することによりタンパク質合成を増加させるか、または他の生体プロセス(タンパク質安定化もしくはメッセンジャーRNA転写の安定化など)によるかのいずれかで、細胞に存在する、あるいは分泌されるコラーゲン、フィブロネクチン、およびヒアルロン酸の量を増加させることができる一般式(I)の任意のペプチドを意味する。
【0013】
「線維芽細胞の老化サイン」は、細胞の老化表現形質に関連した生化学マーカーの発現プロファイルを意味する。
【0014】
肌は、肌、粘膜、および肌付属物(髪、まつげ、および眉毛を含む)で構成される被覆器官全てを示す。
【0015】
すなわち、第一に、本発明は、一般式(I)のペプチドに関する:
R
1−(AA)
n−X
1−Pro−X
2−Gly−Pro−X
3−X
4−(AA)
p−R
2
式中
X
1は、グリシンまたはアラニンまたはバリンを表し、
X
2は、グリシンまたはアラニンまたはバリンを表し、
X
3は、アスパラギンまたはリシンまたはグルタミンを表すか、またはアミノ酸がないことを表し、
X
4は、フェニルアラニンまたはチロシンを表すか、またはアミノ酸がないことを表し、
AAは、任意のアミノ酸を表し、ならびにnおよびpは0〜2の整数であり、
R
1は、N末端アミノ酸の第一級アミン官能基−NH2を表し、式中2つの水素原子のうち1つは、飽和もしくは不飽和のC
1〜C
30アルキル鎖、またはアシル基(R−CO−)(式中、R基は、飽和もしくは不飽和のC
1〜C
30アルキル鎖、好ましくはメチルであり)、またはベンゾイル型、トシル型、もしくはベンジルオキシカルボニル型の芳香族基のいずれかで置換可能であり、
R
2は、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基のヒドロキシル基−OHを表し、式中、水素原子は、C
1〜C
30アルキル鎖で置換可能であるか、またはNH
2、NHY、もしくはNYY基(式中、Yは、C
1〜C
4アルキル鎖を表し)を表し、
一般式(I)の上記配列は、5〜11個のアミノ酸残基からなり、塩の形を取ることができる。
【0016】
本発明の特別に好適な実施形態によれば、ペプチドは以下の配列のものである:
(配列番号1):Ala−Pro−Ala−Gly−Pro−NH
2
(配列番号2):Val−Pro−Ala−Gly−Pro
(配列番号3):Val−Pro−Gly−Gly−Pro−NH
2
(配列番号4):Gly−Pro−Ala−Gly−Pro
(配列番号5):Gly−Pro−Ala−Gly−Pro−NH
2
(配列番号6):Lys−Gly−Ala−Pro−Gly−GLy−Pro−Asn−Tyr−NH
2
【0017】
特に有用な実施形態によれば、ペプチドは配列番号4の配列に相当する。
【0018】
別の特に有用な実施形態によれば、ペプチドは配列番号5の配列に相当する。
【0019】
本発明によるペプチドを構成し、用語「AA」で示されるアミノ酸は、L配置およびD配置の異性体が可能である。好ましくは、アミノ酸はL型である。
【0020】
「ペプチド」という用語は、2つ以上のアミノ酸がペプチド結合により互いに結合している鎖を示す。
【0021】
「ペプチド」はまた、上記の通りの本発明の天然または合成ペプチド、あるいはそれらペプチドの断片の少なくとも1つ(これは、タンパク質分解によるものでも合成によるものでも構わない)、あるいは上記のペプチドの配列の全てまたは一部をその配列に含む任意の天然または合成ペプチドを示す。
【0022】
分解されにくくするために、本発明によるペプチドは、保護した形で用いる必要があるかもしれない。N末端アミノ酸の第一級アミン官能基は、アシル型(R−CO−、式中、R基は、飽和もしくは不飽和のC
1〜C
30アルキル鎖、好ましくはメチル基である)のR
1基で置換するか、またはベンゾイル型、トシル型、もしくはベンジルオキシカルボニル型の芳香族基で置換するかのいずれかにより、保護することが可能である。
【0023】
好ましくは、C末端アミノ酸のカルボキシル官能基は、C
1〜C
30アルキル鎖型のR
2基、あるいはNH
2、NHY、またはNYY基(式中、Yは、C
1〜C
4アルキル鎖を表す)で置換することにより、保護される。
【0024】
配列番号1〜配列番号6の配列を有する本発明によるペプチドは、N末端およびC末端の片方または両末端で保護することができる。
【0025】
本発明による一般式(I)のペプチドは、古典的な化学合成(固相中または均一液相中)によるか、酵素を利用した合成(Kullman et al. J. Biol. Chem., 1980, vol. 225, p.8234)によるかのいずれかで、構成アミノ酸から得ることができる。
【0026】
本発明によるペプチドは、天然物由来でも合成由来でもよい。好ましくは、本発明によれば、ペプチドは、化学合成により得られた合成由来のものである。
【0027】
本発明によれば、作用剤は、単一のペプチドであってもペプチド混合物であってもよい。
【0028】
有利なことに、本発明によるペプチドは、1種以上の生理学的に適切な溶媒(水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化またはプロポキシ化ジグリコール、環状ポリオール、およびこれらの溶媒の任意の混合物など)に対して可溶性である。
【0029】
「生理学的に適切な」は、毒性、不耐性、不安定性、アレルギー反応、および他の副作用の危険性がなく、ヒトの肌または肌付属物と接触させて使用するのに適した溶媒または媒体を意味する。
【0030】
ついで、希釈されたペプチドを、滅菌濾過により滅菌する。
【0031】
この希釈工程後、ペプチドを、化粧料用ベクター(リポソームまたは化粧料分野で使用される任意の他のマイクロカプセルなど)に封入または含有させるか、あるいは粉末有機ポリマーまたは鉱物キャリア(タルクおよびベントナイトなど)に吸着させるか、より一般的には、任意の生理学的に適切なベクターに溶解させるか、これに結合させることができる。
【0032】
第二に、本発明は、生理学的に適切な媒体中に、一般式(I)のペプチドを、肌の細胞外基質タンパク質合成を活性化する作用剤として含有する化粧料組成物に関する。
【0033】
本発明の有利な実施形態によれば、作用剤は、最終組成物の全重量に対して、0.0005〜500mg/kg、好ましくは0.01〜5mg/kgの濃度で組成物中に存在する。
【0034】
この濃度範囲は、所望の分子作用、すなわち、I型コラーゲン、III型コラーゲン、フィブロネクチン、およびヒアルロン酸の発現を活性化させるのに必要な作用剤の量を表す。
【0035】
好ましくは、本発明による組成物は、肌にとって生理学的に適切な媒体を含む、局所使用に適した形状をしている。
【0036】
「局所使用」は、本発明による作用剤、またはそれを含有する組成物を、肌表面に塗布または塗り広げることを示す。
【0037】
本発明の組成物は、具体的には、水溶液、水/アルコール溶液、または油性溶液;水中油または油中水乳濁液あるいは多重乳濁液、水性または無水ゲル、コロイドの形状をとることができる。本発明の組成物はまたは、肌、粘膜、唇、および/または肌付属物への使用に適したクリーム、懸濁液、または粉末の形状をとることができる。本発明の組成物は、流動性が高くても低くてもよく、クリーム、ローション、乳液、セラム、ポマード、クリーム、ペースト、またはフォームの外観を有することができる。本発明の組成物はまた、棒状などの固形でもよいし、エーロゾルの形で肌に使用してもよい。本発明の組成物は、肌用の手入れ用品および/または化粧用品として使用することができる。
【0038】
本発明の組成物は全て、さらに、想定される用途の分野で通常用いられる任意の添加物、ならびに組成物を配合するのに必要なアジュバント、例えば共溶媒(エタノール、グリセロール、ベンジルアルコール、湿潤剤、など)、増粘剤、希釈剤、乳化剤、抗酸化剤、着色剤、日焼け止め剤、顔料、増量剤、保存料、香料、異臭吸着剤、精油、微量元素、必須脂肪酸、界面活性剤、膜形成重合体、フィルター化合物もしくは鉱物、水和剤、および温泉水などを含有する。例えば、天然型水溶性重合体として、多糖類、ポリペプチド、メチルセルロースもしくはヒドロキシプロピルセルロース型のセルロース誘導体など、また合成重合体として、ポロキサマー、カルボマー、シロキサン、PVAまたはPVP、および具体的にはISP社が販売する重合体を挙げることができる。
【0039】
いずれにしろ、当業者は必ず、こうしたアジュバントの種類および割合を、本発明による組成物に求められる有利な性質をそがないように選択するだろう。こうしたアジュバントは、例えば、組成物の全重量の0.01〜20%の濃度で存在させることができる。本発明の組成物が乳濁液の場合、油相は組成物の全重量の5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%を占める。組成物に使用される乳化剤および共乳化剤は、想定される分野で従来から用いられているものから選択されるだろう。例えば、乳化剤および共乳化剤は、組成物の全重量に対して、0.3〜30重量%の割合で用いることができる。
【0040】
当然ながら、本発明の作用剤は、単独で用いることも他の作用剤と併用することもできる。
【0041】
有利なことに、本発明に従って使用可能な組成物は、さらに、肌の加齢サインを防ぎ改善する分野での、本発明による作用剤の作用を増強することを意図した少なくとも1種の他の作用剤、または想定される組成物の性質の範囲を拡張することを可能にする別の作用剤を含有する。
【0042】
制限ではなく例として、以下のクラスの成分を挙げることができる:再生剤、抗加齢剤、抗シワ剤、鎮静剤、抗フリーラジカル剤、抗糖化剤、水和剤、抗細菌剤、抗真菌剤、角質溶解剤、筋肉弛緩剤、角質除去剤、引き締め剤、真皮の巨大分子の合成またはエネルギー代謝または微小循環または爪成長または髪成長の刺激剤、表皮の分化または色素沈着の調節剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、ならびに日焼け止めおよび太陽光フィルター。
【0043】
本発明の特定の実施形態において、本発明による組成物は、本発明によるペプチドの他に、以下も含有できる、
・少なくとも1種のシトクロムc活性化化合物、および/または
・少なくとも1種の水和化化合物(アクアポリン活性化化合物など)および/または
・少なくとも1種のサーチュイン活性化化合物、および/または
・少なくとも1種の細胞接着増加化合物、および/または
・基質タンパク質(コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカンなど)の産生を増加させる少なくとも1種の化合物、および/または
・少なくとも1種のプロテアソーム活性調節化合物、および/または
・少なくとも1種の概日リズム調節化合物、および/または
・少なくとも1種のHSPタンパク質調節化合物、および/または
・少なくとも1種の細胞エネルギー増加化合物、および/または
・少なくとも1種の肌色素沈着調節化合物、および/または
・少なくとも1種の補酵素Q10活性化化合物、および/または
・バリア機能を改善する少なくとも1種の化合物(トランスグルタミナーゼまたはHMG−CoAレダクターゼ活性化化合物など)、および/または
・少なくとも1種のミトコンドリア保護化合物。
【0044】
上記化合物は、天然物由来(植物のペプチド加水分解物など)のものでも、合成由来(ペプチドなど)のものでもよい。
【0045】
組成物において本発明による作用剤と併用されるその他の作用剤は、その機能によらず、多様な化学構造を有することができる。制限ではなく例として、ペプチド、ビタミンCおよびその誘導体、ビタミンB群、DHEA(ジヒドロエピアンドロステロン)、植物ステロール、サリチル酸およびその誘導体、レチノイド、フラボノイド、糖アミン、アゾール、金属塩、植物由来のペプチド抽出物、および重合体を挙げることができる。
【0046】
第三に、本発明は、肌細胞による細胞外基質タンパク質合成を増加させるための、一般式(I)のペプチドを作用剤として含有する化粧料組成物の使用に関する。
【0047】
より詳細には、本発明によるペプチドを用いて、ヒトの肌の線維芽細胞によるコラーゲンIおよびIIIならびにフィブロネクチンの合成を増加させる。
【0048】
本発明のこの特定の実施形態によれば、一般式(I)のペプチドを用いて、真皮密度、ひいては肌の張りを向上させることで、顔の輪郭のたるみ、真皮のしぼみ、肌が薄くなること、アトニー、細かいスジ、深いシワ、および皮膚萎縮を遅らせるか減少させる。
【0049】
第四に、本発明は、線維芽細胞およびケラチン生成細胞の両方でのヒアルロン酸発現を増加させるための、一般式(I)のペプチドを作用剤として含有する化粧料組成物の使用に関する。
【0050】
本発明のこの特定の実施形態によれば、一般式(I)のペプチドを用いて、肌の全ての層の能力を増加させることで、保水力を高め、加齢による肌の乾燥を遅らせるか減少させる。
【0051】
第五に、本発明は、肌細胞の老化の現れを遅らせるか老化を減少させるための、一般式(I)のペプチドを作用剤として含有する化粧料組成物の使用に関する。
【0052】
「真皮細胞の老化の現れを遅らせるか老化を減少させる」という語句は、本発明のこの有利な態様によれば、本発明のペプチドが、FOXO3a遺伝子の消衰により老化が誘導されたヒト線維芽細胞における老化マーカーの発現を減少させることを意味する。
【0053】
第六に、本発明は、本発明による組成物を、手当すべき肌に局所的に使用することを特徴とする、皮膚の加齢サインおよび光加齢サインを遅らせるおよび/または手当することを意図した美容目的の手当法に関する。
【0054】
「皮膚の加齢サイン」は、加齢による肌および肌付属物の外見における全ての変化、例えば、肌が薄くなること、たるみ、保水力の低下およびアトニー、深いシワおよび細かいスジ、張りおよび調子が失われること、皮膚萎縮、および紫外線を浴びることによる肌のあらゆる内部破壊などを示す。
【0055】
本発明の他の利点および特徴は、以下の実施例に照らしてより明らかとなるだろう。実施例は例示のために提供されるもので、制限することを目的としない。
【実施例1】
【0056】
ヒト線維芽細胞での、コラーゲンI、コラーゲンIII、プロコラーゲン、フィブロネクチン、およびヒアルロン酸の発現における、配列番号4および5のペプチドの活性化効果の実証
【0057】
この研究の目的は、ヒト線維芽細胞での以下の細胞外基質タンパク質の発現における、配列番号4および5のペプチドならびに配列番号4のペプチドの影響を明らかにすることである:コラーゲンI、コラーゲンIII、プロコラーゲン、フィブロネクチン、およびヒアルロン酸。このため、真皮由来の正常ヒト線維芽細胞培養物に特異的標識を導入した。
【0058】
特異的標識化プロトコル:配列番号5のペプチドまたは配列番号4のペプチドを最終濃度0.5%、1%、および/または3%(40mg/kgの原液を基準として)で用いて、培養液に入ったヒト線維芽細胞を24時間、48時間、および/または72時間処理する。次いで、細胞を洗浄し、冷メタノールを用いて4℃で4分間(コラーゲンI、コラーゲンIII、およびヒアルロン酸標識化の場合)、またはホルムアルデヒドを3.7%で用いて室温で10分間(プロコラーゲンおよびフィブロネクチン標識化の場合)固定する。ウサギコラーゲンI特異的ポリクローナル抗体(Rockland、Ref:600−401−103−0.5)、ウサギコラーゲンIII特異的ポリクローナル抗体(Rockland、Ref:600−401−105−0.5)、ラットプロコラーゲン特異的ポリクローナル抗体(Millipore、Ref:MAB1912)、ウサギフィブロネクチン特異的ポリクローナル抗体(Sigma、Ref:F−3648)、次いで、蛍光色素が結合した抗ウサギ二次抗体(Invitrogen、Ref:A21206)または蛍光色素が結合した抗ラット(Invitrogen、A11006)の存在下で、細胞を培養する。ヒアルロン酸の標識化については、細胞を、特異的ビオチン化タンパク質(Coger、Ref:4007631A)、次いで、蛍光色素が結合したストレプトアビジン(Invitrogen、Ref:S32354)の存在下で培養する。次いで、細胞を落射蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E600顕微鏡)で検査する。
【0059】
結果:試験したどの条件下でも、配列番号5のペプチドまたは配列番号4のペプチドで処理された線維芽細胞では、対照条件下よりも強い蛍光が観測される。
【0060】
結論:配列番号5のペプチドおよび配列番号4のペプチドは、ヒト皮膚線維芽細胞によるコラーゲンI、コラーゲンIII、プロコラーゲン、フィブロネクチン、およびヒアルロン酸の発現を刺激する。
【実施例2】
【0061】
肌細胞診での、コラーゲンI、コラーゲンIII、プロコラーゲン、およびヒアルロン酸の発現における、配列番号5のペプチドの活性化効果の実証
【0062】
この研究の目的は、ヒトの肌での以下の細胞外基質タンパク質の発現における、配列番号5のペプチドの影響を明らかにすることである:コラーゲンI、コラーゲンIII、プロコラーゲン、フィブロネクチン、およびヒアルロン酸。このため、生体外で培養したヒト肌試料に特異的標識を導入した。
【0063】
プロトコル:ヒト肌試料を培養液の気液界面に置く。配列番号5のペプチドを、最終濃度0.5%、1%、または3%(40mg/kgの原液を用いて)で、試料に局所的に塗布し、次いで、試料を37℃で24時間、48時間、および/または72時間培養する。
【0064】
次いで、肌試料を、ホルムアルデヒドで固定してパラフィンに封入するか、OCTを用いて固定および封入を行い、次いで−20℃で凍結させる。次いで、厚さ4μmの切片を切り出す(凍結時は6μm)。
【0065】
コラーゲンIおよびコラーゲンIIIの標識化は、パラフィン封入試料で、特定部位のマスキングを外してから行う。ウサギコラーゲンI特異的ポリクローナル抗体(Rockland、Ref:600−401−103−0.5)、ウサギコラーゲンIII特異的ポリクローナル抗体(Rockland、Ref:600−401−105−0.5)、次いで蛍光色素が結合した抗ウサギ二次抗体(Invitrogen、Ref:A21206)を用いて免疫標識化を行う。ヒアルロン酸の標識化については、特異的ビオチン化タンパク質(Coger、Ref:4007631A)の存在下、次いで蛍光色素が結合したストレプトアビジン(Invitrogen、Ref:S32354)の存在下で細胞を培養する。
【0066】
プロコラーゲンの免疫標識化は、OCT封入試料で、冷アセトンで10分間固定してから行う。ラットプロコラーゲン特異的ポリクローナル抗体(Millipore、Ref:MAB1912)、次いで蛍光マーカーが結合した抗ラット二次抗体(Invitrogen、A11006)を用いて、免疫標識化を行う。
【0067】
次いで、細胞を落射蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E600顕微鏡)で検査する。
【0068】
結果:顕微鏡観察では、配列番号5のペプチドで処理した肌試料の真皮で、より強い蛍光が観察される。ヒアルロン酸の免疫標識化の場合、配列番号5のペプチドで処理した肌試料の表皮でも、強くなった蛍光が観測される。
【0069】
結論:配列番号5のペプチドは、真皮でのコラーゲンI、コラーゲンIII、プロコラーゲンの発現を刺激し、ヒト真皮および表皮でのヒアルロン酸発現を刺激する。
【実施例3】
【0070】
コラーゲンIメッセンジャーRNAの発現における、配列番号5のペプチドの活性化効果の、リアルタイムPCRによる実証
【0071】
この研究の目的は、ヒト線維芽細胞でのコラーゲンIメッセンジャーRNAの発現における、配列番号5のペプチドの影響を明らかにすることである。このため、コラーゲンIの発現をリアルタイムPCRで研究した。
【0072】
プロトコル:培養液に入ったヒト線維芽細胞を、配列番号5のペプチドを用いて、最終濃度0.5%および1%(40mg/kgの原液を用いて)で、24時間、48時間、および72時間処理する。抽出キット(QIAGEN)を用いて全RNAを抽出し、次いで、RNアーゼ阻害剤を含む専用キット(Applied Biosystems)を用いて逆転写させる。リアルタイムPCRは、コラーゲンI特異的TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystem、Hs99999901_s1)および内在対照として用いられる18S特異的TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystem、Hs00164004_m1)を用いて、サーモサイクラーで行う。コラーゲンIメッセンジャーRNAの発現の相対的定量化は、Ct比較法(Ct、すなわち閾値到達サイクル数は、増幅曲線と閾値の交点である)により行う。
【0073】
結果/結論:配列番号5のペプチドは、ヒト線維芽細胞でのコラーゲンIメッセンジャーRNAの発現を刺激する。
【実施例4】
【0074】
配列番号5のペプチドの存在下における老化マーカーP16の発現についての研究
【0075】
この研究の目的は、年齢とともに肌での発現が増加するタンパク質P16の発現における、配列番号5のペプチドの影響を明らかにすることである。P16は、細胞周期の負の調節に関与するタンパク質であり、細胞老化の信頼できるマーカーとして報告されている(Brookes S. et al. Experimental Cell Research 298, 2004)。
【0076】
プロトコル:培養液に入ったヒト線維芽細胞を、配列番号5のペプチドを用いて、最終濃度0.5%、および1%(40mg/kgの原液を用いて)で、48時間処理する。細胞は、Shandon Cytoblock(登録商標)細胞調製システムキット(Thermo Scientific、Ref:7401150)に従って調製する。
【0077】
次いで、細胞をホルムアルデヒドで固定してパラフィンに封入する。次いで、厚さ4μmの切片を切り出す。パラフィン封入細胞でのp16標識化は、特定部位のマスキングを外してから行う。免疫標識化は、マウスp16特異的ポリクローナル抗体(Santa−Cruz、Ref:sc−81157)、次いで蛍光色素が結合した抗マウス二次抗体(Invitrogen、Ref:A21202)を用いて行う。次いで、細胞を落射蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E600顕微鏡)で検査する。
【0078】
結果:顕微鏡観察では、配列番号5のペプチドで処理した細胞の核蛍光が弱まって観察される。
【0079】
結論:配列番号5のペプチドは、ヒト線維芽細胞でのp16老化マーカーの発現を減少させる。
【実施例5】
【0080】
ペプチド配列番号5のペプチドによる、線維芽細胞で誘導される細胞老化の逆転の実証
【0081】
この研究の目的は、FOXO3a遺伝子の消衰により老化が誘導された老化線維芽細胞への、配列番号5のペプチドの影響を明らかにすることである。こうした細胞は、その老化段階との関連で、beta−ガラクトシダーゼを過剰発現する。
【0082】
FOXO3aは、細胞寿命に関与するForkhead転写因子である。肌においては、FOXO3aの負の調節が、正常なヒト線維芽細胞の老化を加速させる(Hyun Kyoung K. et al. J. of Gerontol., 2005, vol.60A n1,pages4−9)。この性質を利用して、特異的干渉RNA(siRNA)によりFOXO3a発現を遮断することで、ヒト線維芽細胞の老化を誘導した。
【0083】
プロトコル:Lipofectamine(登録商標)RNAiMAX(Invitrogen、Ref:13778−075)遺伝子導入法を利用して、FOXO3aの特異的siRNAを用いて、最終濃度25nMで処理することにより、培養液に入ったヒト線維芽細胞を老化させる。未処理の対照も作製する。これらの線維芽細胞を、平行して、最終濃度1%(40mg/kgの原液を用いて)の配列番号5のペプチドにより48時間処理する。
【0084】
細胞をすすぎ、固定緩衝液(0.2%グルタルアルデヒド、2%ホルムアルデヒド)で固定する。次いで、細胞を、X−Ga1溶液(濃度1mg/mL、40mMのクエン酸/ホスフェート(pH6)、5mMのK3FeCN6、5mMのK4FeCN6、150mMのNaCl、および2mMのMgCl2を含む)を用いて、無CO2条件下、37℃で24時間培養する。次いで、細胞を白色光顕微鏡(Nikon Eclipse E600顕微鏡)で検査する。
【0085】
結果:特定のβ−ガラクトシダーゼ活性を有する老化細胞は青色に染色される。FOXO3aの特異的siRNAで処理した細胞は、老化の誘導に関連したβ−ガラクトシダーゼ活性の向上を示し、青色に染色された細胞数の増加に関与する。FOXO3aの特異的siRNAおよび1%の配列番号5のペプチドで処理した細胞は、β−ガラクトシダーゼ活性の低下を示し、青色に染色された細胞数の減少に関与する。
【0086】
結論:配列番号5のペプチドは、ヒト線維芽細胞で誘導される老化表現形質を減少させることができる。
【実施例6】
【0087】
組成物の調製
【0088】
1−抗加齢フェイシャルクリーム:
【0089】
【表1】
【0090】
A相を調製し65〜70℃で溶融させる。C相を65〜70℃に加熱する。相Bを相Aに加え、直ちにAをCに加え乳化させる。45℃前後で、D相を加えてカルボマーを中和する。次いで、30℃前後で、軽く撹拌しながらE相を加え、25℃になるまで冷却する。次いで、必要があれば相Fを加える。