特許第6044945号(P6044945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハートサイン テクノロジーズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6044945-除細動器の電極検査 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044945
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】除細動器の電極検査
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A61N1/39
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-115231(P2012-115231)
(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公開番号】特開2013-240466(P2013-240466A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】503338457
【氏名又は名称】ハートサイン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】アリスター ロバート マッキンタイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ジョニー ヒューストン アンダーソン
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−508940(JP,A)
【文献】 米国特許第05697955(US,A)
【文献】 米国特許第05645571(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
検査中に前記電極を互いに電気的に連結する連結部と、
前記電極に連結された除細動信号生成器と、
前記電極に連結され、患者信号生成器と患者信号受信器とを具える患者電気抵抗測定システムと、
前記除細動信号生成器および前記患者電気抵抗測定システムに連結された除細動器コントローラと、
電極検査システムとを具える除細動器であって、前記電極検査システムが、
前記患者信号受信器に連結され、患者信号の受信状態から電極検査信号の受信状態に前記患者信号受信器を変化させる少なくとも1の制御信号を生成する制御信号デバイスと、
前記患者信号生成器に連結され、前記患者信号生成器に前記電極へと検査信号を送信させる少なくとも1の検査開始信号を生成する検査開始信号デバイスと、
前記患者信号受信器に連結され、電極検査信号を受信して当該信号を処理し、前記電極に対する合格の検査結果または不合格の検査結果を判定する電極検査信号デバイスとを具えることを特徴とする除細動器。
【請求項2】
請求項1に記載の除細動器において、前記制御信号デバイスが、患者信号の受信状態から電極検査信号の受信状態に変化させるべく、前記患者信号受信器にその1以上の特性を調整させる制御信号を生成することを特徴とする除細動器。
【請求項3】
請求項2に記載の除細動器において、前記制御信号デバイスが、前記患者信号受信器にそのゲイン特性を調整させる制御信号を生成することを特徴とする除細動器。
【請求項4】
請求項3に記載の除細動器において、前記患者信号受信器が電圧制御増幅器を具え、前記制御信号デバイスが、前記増幅器にそのゲイン特性を調整させる電圧信号を含む制御信号を生成することを特徴とする除細動器。
【請求項5】
請求項3に記載の除細動器において、前記患者信号受信器が抵抗制御増幅器と、抵抗の接続を切り替えるように前記抵抗制御増幅器に接続されたスイッチとを具え、前記制御信号デバイスが、前記増幅器にそのゲイン特性を調整させる、前記スイッチに送信される論理信号を含む制御信号を生成することを特徴とする除細動器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の除細動器において、前記除細動器コントローラが第1の信号生成器を具え、前記制御信号デバイスが、前記少なくとも1の制御信号を生成するように前記第1の信号生成器に対して動作する制御信号ソフトウェアを具えることを特徴とする除細動器。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の除細動器において、前記制御信号デバイスが制御信号ソフトウェアと制御信号生成器とを具え、前記制御信号ソフトウェアは、前記少なくとも1の制御信号を生成するように前記制御信号生成器に対して動作することを特徴とする除細動器。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の除細動器において、前記除細動器コントローラが第2の信号生成器を具え、前記検査開始信号デバイスが、前記少なくとも1の検査開始信号を生成するように前記第2の信号生成器に対して動作する検査開始信号ソフトウェアを具えることを特徴とする除細動器。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載の除細動器において、前記検査開始信号デバイスが検査開始信号ソフトウェアと検査開始信号生成器とを具え、前記検査開始信号ソフトウェアは、前記少なくとも1の検査開始信号を生成するように前記検査開始信号生成器に対して動作することを特徴とする除細動器。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の除細動器において、前記除細動器コントローラが信号受信器を具え、前記電極検査信号デバイスが、前記電極検査信号を受信するように前記除細動器コントローラ前記信号受信器に対して動作する電極検査信号ソフトウェアを具えることを特徴とする除細動器。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れかに記載の除細動器において、前記電極検査信号デバイスが電極検査信号ソフトウェアと電極検査信号受信器とを具え、前記電極検査信号ソフトウェアは、前記電極検査信号を受信するように前記電極検査信号受信器に対して動作することを特徴とする除細動器。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の除細動器において、前記検査開始信号デバイスが検査開始信号を生成し、当該検査開始信号によって前記患者信号生成器が患者の電気抵抗を測定するために前記電極に送信される信号と同じ特性を有する検査信号を前記電極に送信することを特徴とする除細動器。
【請求項13】
除細動器の電極の電気伝導率を検査する方法であって、
検査中に前記電極を互いに連結するステップと、
前記除細動器の患者電気抵抗測定システムの患者信号受信器を患者信号の受信状態から電極検査信号の受信状態に変化させる、少なくとも1の制御信号を生成するステップと、
前記患者電気抵抗測定システムの患者信号生成器に前記電極へと検査信号を送信させる少なくとも1の検査開始信号を生成するステップと、
前記患者信号受信器から電極検査信号を受信し、当該信号を処理して前記電極に対する合格の検査結果または不合格の検査結果を判定するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は除細動器用の電極を検査することに関し、具体的には、電極の電気的完全性、すなわち電気信号を伝導する電極の性能を検査することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
除細動器は、患者の心臓に「ショック」、すなわち電気信号を与えるために用いられる。ショックの効果は心停止してからの時間が増加するにつれて著しく減少することを研究は明らかにしてきた。従って、除細動器を用いて出来る限り早く患者の心臓に電気信号を与えることが重要である。そのため、除細動器は現在、病院だけではなく様々な公共の場所で度々見つけられる。多くのこのような場所では、除細動器は相当の期間使用されないことがある。その間、除細動器の電極は通常、そのパッケージ内に置かれたままである。除細動器の電極の電気的完全性がこのような期間にわたって維持されること、あるいは、完全性が損なわれている場合にはその情報が除細動器の潜在的なユーザに提供されることが重要である。これは特に、除細動器の技術または操作の経験が殆どまたは全くない一般人によって除細動器が使用されうる場合に重要である。従って、電極の完全性を検査できる手段を有する除細動器を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によると、
電極と、
検査中に互いに電極を電気的に連結する連結部と、
電極に連結された除細動信号生成器と、
電極に連結され、患者信号生成器と患者信号受信器とを具える患者電気抵抗測定システムと、
除細動信号生成器および患者電気抵抗測定システムに連結された除細動器コントローラと、
電極検査システムとを具える除細動器を提供しており、この電極検査システムは、
患者信号受信器に連結され、患者信号受信器を患者信号の受信状態から電極検査信号の受信状態に変化させる少なくとも1の制御信号を生成する制御信号デバイスと、
患者信号生成器に連結され、患者信号生成器に電極へと検査信号を送信させる少なくとも1の検査開始信号を生成する検査開始信号デバイスと、
患者信号受信器に連結され、電極検査信号を受信し、当該信号を処理して電極についての合格の検査結果または不合格の検査結果を判定する電極検査信号デバイスとを具える。
【0004】
除細動信号を患者の心臓に与える場合、患者の電気抵抗は人によって、例えば20Ωから300Ωの間で異なるため、患者の電気抵抗を考慮することは重要であり、それが除細動信号のエネルギを決定する。従って、多くの除細動器は患者電気抵抗測定システムを提供している。これらのシステムは電極にac信号を適用しており、電極が患者に取り付けられたときに電極からac信号を測定し、これを利用して患者の電気抵抗を算出する。
【0005】
本発明では、検査システムは除細動器の電極に設けられている。これは、患者電気抵抗測定システムの構成要素を利用して、検査信号を電極に適用し、電極から得られた検査信号を測定している。従って、電極の電気的完全性の検査は除細動器内に既にある機器を用いて行われ、電極検査機能を有する除細動器を設ける費用等は減少する。
【0006】
制御信号デバイスは、少なくとも1の制御信号を生成するように除細動器の信号生成器に対して動作する制御信号ソフトウェアを具えうる。この制御信号ソフトウェアは、除細動器コントローラに実装されてもよい。制御信号デバイスは制御信号ソフトウェアと制御信号生成器とを具えてもよく、制御信号ソフトウェアは少なくとも1の制御信号を生成するように制御信号生成器に対して動作することができる。
【0007】
制御信号デバイスは、患者信号の受信状態から電極検査信号の受信状態に変化させるべく、患者信号受信器にその1以上の特性を調整させる少なくとも1の制御信号を生成しうる。制御信号デバイスは、患者信号受信器にそのゲイン特性を調整させる少なくとも1の制御信号を生成しうる。患者信号受信器は増幅器を具えてもよく、制御信号デバイスは、増幅器にそのゲイン特性を調整させる制御信号を生成してもよい。この増幅器は電圧制御増幅器を含んでもよく、制御信号デバイスは増幅器にそのゲイン特性を調整させる電圧信号を含む制御信号を生成しうる。この増幅器はスイッチに接続された抵抗制御増幅器を含んでもよく、制御信号デバイスは増幅器にそのゲイン特性を調整させる、スイッチに送信される論理信号を含む制御信号を生成することができる。
【0008】
制御信号デバイスは、検査起動信号を受け取り次第、少なくとも1の制御信号の生成を始めることができる。制御信号デバイスは、検査起動信号を受信する制御信号受信器を具えうる。制御信号デバイスは、コントローラによる、例えば自動の除細動器自己チェックプロセスの一部として電極検査が必要であるとの決定に基づいて、除細動器コントローラから検査起動信号を受信することができる。検査起動デバイスは、除細動器に設けられた、例えばボタンまたはスイッチなどの検査イニシエータから検査起動信号を受信することができる。
【0009】
検査開始信号デバイスは、少なくとも1の検査開始信号を生成するように除細動器の信号生成器に対して動作する検査開始信号ソフトウェアを具えうる。検査開始信号ソフトウェアは、除細動器コントローラに実装することができる。検査開始信号デバイスは検査開始信号ソフトウェアと検査開始信号生成器とを具えてもよく、この検査開始信号ソフトウェアは、少なくとも1の検査開始信号を生成するように検査開始信号生成器に対して動作することができる。
【0010】
検査開始信号は、患者信号生成器が、患者の電気抵抗を測定するために電極に送信される信号と同じ特性を有する検査信号を電極に送信するようにできる。検査開始信号は、患者信号生成器が、例えば約30kHzの周波数を有するac検査信号を電極に送信するようにできる。
【0011】
検査開始信号デバイスは、検査起動信号を受け取り次第、少なくとも1の検査開始信号の生成を始めることができる。検査開始信号デバイスは、検査起動信号を受信する検査開始信号受信器を具えうる。検査開始信号デバイスは、制御信号デバイスから検査起動信号を受信してもよい。検査開始信号デバイスは、コントローラによる、自動の除細動器自己チェックプロセスの一部として電極検査が必要であるとの決定に基づいて、除細動器コントローラから検査起動信号を受信することができる。検査開始信号デバイスは、検査イニシエータ、例えば除細動器に設けられたボタンまたはスイッチから検査起動信号を受信してもよい。
【0012】
電極検査信号デバイスは、電極検査信号を受信するように除細動器の信号受信器に対して動作する電極検査信号ソフトウェアを具えうる。この電極検査信号ソフトウェアは、除細動器コントローラに実装されてもよい。電極検査信号デバイスは電極検査信号ソフトウェアと電極検査信号受信器とを具えてもよく、この電極検査信号ソフトウェアは、電極検査信号を受信するように電極検査信号受信器に対して動作することができる。
【0013】
電極検査信号デバイスは、電極の電気抵抗の測定値を取得すべく電極検査信号を処理し、これを利用して電極の検査結果を判定する。電極検査信号デバイスは電極電圧信号を含む電極検査信号を受信し、電極の電気抵抗の測定値を取得すべく電極電気抵抗に対する電極電圧のルックアップテーブルを用いて電極電圧信号を処理する。電極検査信号デバイスは電極電圧信号を含む電極検査信号を受信し、それを利用して電極の電気抵抗の測定値を算出することにより、電極電圧信号を処理することができる。電極検査信号デバイスは電極電圧信号を含む電極検査信号を受信し、電極の電気抵抗の測定値を判定すべく固定値コンパレータを用いて電極電圧信号を処理することができる。電極検査信号デバイスは、適合して電極の合格の検査結果を与える電極の電気抵抗の閾値、および不適合で電極の不合格の検査結果を与える電極の電気抵抗の閾値を設定することができる。この閾値は単一の電極の電気抵抗値を含んでもよく、その値以上では電極の合格の検査結果が判定され、その値未満では電極の不合格の検査結果が判定される。この閾値は、例えば、電極の電気抵抗について1kΩの値を含んでもよい。この閾値は、電極の電気抵抗の数値範囲を含んでもよく、その範囲内では電極の合格の検査結果が判定され、その範囲外では電極の不合格の検査結果が判定される。この閾値は、電極の電気抵抗について、例えば1kΩ乃至5kΩの範囲を含んでもよい。
【0014】
電極検査信号デバイスは、電極検査信号を処理して電極の電圧を測定し、その電極電圧を利用して電極の検査結果を判定することができる。電極検査信号デバイスは、適合して電極の合格の検査結果を与える電極電圧に対する閾値、不適合で電極の不合格の検査結果を与える閾値を設定することができる。閾値は単一の電極の電圧値を含んでもよく、その値以上では電極の合格の検査結果が判定され、その値未満では電極の不合格の検査結果が判定される。この閾値は、例えば1.5Vの値の電極の電圧を含みうる。この閾値は電極の電圧値の範囲を含んでもよく、その範囲内では電極の合格の検査結果が判定され、その範囲外では電極の不合格の検査結果が判定される。閾値は、例えば1.5乃至2Vの範囲の電極の電圧を含んでもよい。
【0015】
電極検査信号デバイスは、電極の合格の検査結果を判定し、除細動信号の生成を可能にする信号を除細動器コントローラに送信することができる。電極検査信号デバイスは、電極の不合格の検査結果を判定し、除細動信号の生成を防ぐ信号を除細動器コントローラに送信することもできる。電極検査信号デバイスは電極の不合格の検査結果を判定し、不合格の検査結果を示す通知を発することができる。この通知は可聴警報音であってもよい。この通知は、除細動器に設けられた警告灯の動作といった可視通知であってもよい。
【0016】
検査時に電極を互いに電気的に連結する連結部は、電極が保管されるパッケージによって設けられてもよい。このパッケージは、1つの電極から他の電極への導電性パスを提供することもできる。この導電性パスは、電極に設けられたゲルを覆っているパッケージのライナーに穴を設けることによって実現することができ、これにより、パッケージに配置されたときに、電極は露出したゲルを介して連結される。
【0017】
本発明の第2の態様によると、除細動器の電極の電気伝導率を検査する方法が提供されており、当該方法は、
検査中に電極を互いに連結するステップと、
除細動器の患者電気抵抗測定システムの患者信号受信器を患者信号の受信状態から電極検査信号の受信状態に変化させる少なくとも1の制御信号を生成するステップと、
患者電気抵抗測定システムの患者信号生成器に電極へと検査信号を送信させる少なくとも1の検査開始信号を生成するステップと、
患者信号受信器から電極検査信号を受信し、この信号を処理して電極に対する合格の検査結果または不合格の検査結果を判定するステップとを含む。
【0018】
電極検査は、定期的に、例えば週に1度または月に1度実施されてもよく、患者にショックを与える前に実施されてもよく、あるいは除細動器の電源を入れたときに実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して例示としてのみ説明されている。
図1図1は、本発明の第1の態様による除細動器を概略的に表している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照すると、電極3と、検査時に電極を互いに電気的に連結する連結部と(図示せず)、除細動信号生成器5と、患者信号生成器7と患者信号受信器9とを具える患者電気抵抗測定システムと、除細動器コントローラ11と、電極検査システム13とを具える除細動器1が図示されている。患者信号受信器9は、差動増幅器15と、フィルタ17と、増幅器/整流器19とを具えている。除細動器コントローラ11は、第1の信号生成器21と、第2の信号生成器23と信号受信器25とを具えている。電極検査システム13は、制御信号デバイス27と、検査開始信号デバイス29と、電極検査信号デバイス31とを具えている。この実施形態では、除細動器1はさらに、除細動器の構成要素に電力を供給する電池(図示せず)を具える。除細動器1の様々な構成要素は、構成要素間で電気信号を受信および送信するために、図面に示すように互いに接続されている。図示されていない他の連結が、除細動器1の構成要素間に設けられてもよいと理解されたい。
【0021】
この実施形態では、電極検査システム13の構成要素は、除細動器コントローラ11のソフトウェアに実装されている。制御信号デバイス27は、除細動器コントローラ11の第1の信号生成器21に対して動作する制御信号ソフトウェアを具える。検査開始信号デバイス29は、除細動器コントローラ11の第2の信号生成器23に対して動作する検査開始信号ソフトウェアを具える。電極検査信号デバイス31は、除細動器コントローラ11の信号受信器25に対して動作する電極検査信号ソフトウェアを具える。制御信号デバイス27、検査開始信号デバイス29および電極検査信号デバイス31は、別個の構成要素として図示されている。これらはコントローラ11内の別個のソフトウェアモジュール内に実装することができるが、コントローラ11内の1つのソフトウェアモジュールに実装することもできると理解されたい。さらに、制御信号デバイス27、検査開始信号デバイス29および電極検査信号デバイス31は、コントローラ11とは分離し、それに連結されたメモリユニットに実装されてもよいと理解されたい。
【0022】
除細動器1は、患者の心臓に除細動信号を与えるために使用される。このために、除細動器1の電源が入れられて、電極3が患者の胸部に適用される。患者電気抵抗測定システムが、患者の経胸電気抵抗を測定するために最初に用いられる。これは、正確な除細動信号のエネルギを患者に送達するために必要である。信号を電極3に適用するために、除細動器コントローラ11は患者信号生成器7を動作させる。患者信号生成器7は高電気抵抗のac信号生成器を具え、約30kHzの周波数を有するac電流信号を第1の電極3に適用し、患者の胸部を通して残りの電極3へと適用する。電極3は、ac電圧信号を患者信号受信器9の差動増幅器15に出力する。増幅器15は電極の電極間の差異に比例するac電圧信号を出力し、このac電圧信号をフィルタ17に通過させる。フィルタ17はバンドパスフィルタとして構成され、ac電圧信号における不要な周波数を減衰させて、対象の周波数、すなわち30kHzを倍加させる。フィルタを通ったac電圧信号は増幅器/整流器17に出力され、これはdc電圧信号を生成するac電圧信号を修正してこの信号を増幅し、コントローラ11の入力要求に適合するdc電圧信号を生成する。このdc電圧信号はコントローラ11を通過し、これを利用して患者の電気抵抗を取得する。次いで、コントローラ11は制御信号を除細動信号生成器5に送信し、生成器5が電極3および患者に適用される適切なエネルギの除細動信号を生成するようにする。
【0023】
除細動信号を患者に与えるために、電極3は電気的完全性、すなわち電気信号を伝導する機能を有していなくてはならない。これは、電極検査システム13を用いて電極の電気伝導率を検査することによって判定される。これは患者電気抵抗測定システムの構成要素を用いて検査信号を電極3に適用し、電極3から得られた検査信号を測定する。従って、電極の電気的完全性の検査は、除細動器1内に既にある機器を用いて行われる。
【0024】
この実施形態では、電極検査は、電極3の電気抵抗の測定値を判定することによって行われる。電極の電気抵抗は、電極の電気的完全性が許容できる場合には約1kΩ乃至5kΩの範囲内にあるべきであり、電極の電気的完全性が損なわれている場合には5kΩ以上となる。患者の電気抵抗は通常、20Ω乃至300Ωの範囲内となる。除細動器1を使用する際、患者信号受信器9は、患者の電気抵抗の範囲内の電気抵抗を有する信号を受信できるように構成されている。除細動器1の電極3が検査されるとき、患者信号受信器9は、患者の電気抵抗の範囲よりも非常に広い電極の電気抵抗の範囲の電気抵抗を有する信号を受信できるように構成されねばならない。従って、患者信号受信器9を患者信号の受信状態から電極検査信号の受信状態に変化させることは不可欠である。
【0025】
電極3は、検査時に互いに電気的に連結されている。この実施形態では、電極の連結は、電極が保管されるパッケージによって与えられる。このパッケージは、1つの電極から他の電極への導電性パスを提供する。導電性パスは、電極に設けられたゲルを覆っているパッケージのライナーに穴を設けることによって実現し、これにより、パッケージに配置されたときに、電極は露出したゲルを介して連結される。しかしながら、他の連結手段を用いて電極を互いに電気的に連結してもよいと理解されたい。
【0026】
電極検査システム13は以下のように動作する。除細動器コントローラ11は、自動の除細動器自己チェックプロセスの一部として(例えば、タイマーを用いて)電極検査が必要で有ることを判定する。除細動器コントローラ11は、除細動器1の構成要素の電源を入れるよう指示する。(この実施形態では、除細動器1の各々の構成要素の電源が入れられるが、構成要素の一部のみ、例えば電極検査を実施するのに必要な要素のみの電源が入られてもよいと理解されたい。)除細動器コントローラ11は、電極検査の起動を制御信号生成器27に通信する。この制御信号生成器27は、コントローラ11の第1の信号生成器21に対して動作し、患者信号受信器9の増幅器/整流器19に送信される制御信号を生成する制御信号ソフトウェアを具える。増幅器/整流器19は電圧制御増幅器を具え、制御信号は、増幅器にそのゲイン特性を調整させて、その結果、患者信号受信器9を患者信号の受信状態から電極検査信号の受信状態に変化させる電圧信号を具えている。
【0027】
次いで、除細動器コントローラ11は、電極検査の起動を検査開始信号デバイス29に通信する。この検査開始信号デバイス29は、コントローラ11の第2の信号生成器23に対して動作し、患者信号生成器7に送信される検査開始信号を生成する検査開始信号ソフトウェアを具える。これにより、患者信号生成器7は電極3に検査信号を送信する。検査信号は電極3に送信された信号と同じ特性を有しており、患者の電気抵抗、すなわち約30kHzの周波数を有するac電流信号を測定する。
【0028】
ac電圧信号を含む電極検査信号が電極3に生成され、これが患者信号受信器9によって受信される。電極検査信号は、上記のように、患者信号と同様に患者信号受信器9の構成要素によって処理される。電極検査信号デバイス31は、コントローラ11の受信器25に対して動作し、患者信号受信器9から電極検査信号を受信する電極検査信号ソフトウェアを具える。dc電圧信号を含む電極検査信号は電極検査信号デバイス31によって処理され、電極の電気抵抗の測定値を取得する。この実施形態では、電極検査信号デバイス31は電気抵抗に対する電圧のルックアップテーブルを用いて、電極の電気抵抗の測定値を取得する。次いで、これを利用して電極3の検査結果を判定する。電極検査信号デバイス31は、電極の電気抵抗に対して約1kΩ乃至約5kΩの範囲の閾値を設定し、その範囲内およびそれ未満では電極3の合格の検査結果が判定され、それ以上では電極3の不合格の検査結果が判定される。電極検査信号デバイス31が電極3の合格の検査結果を判定した場合、これを除細動器コントローラ11に通信して、除細動信号生成器5による除細動信号の生成を可能にする。合格の検査結果は、各電極への連結の電気的完全性が損なわれておらず、電極構造が仕様の範囲内である可能性が高いということを判定している。電極検査信号デバイス31が電極3の不合格の検査結果を判定した場合、これを除細動器コントローラ11に通信して、除細動信号の生成を防ぐ。除細動器1は、可聴警告音および/または可視通知、例えば除細動器1に設けられた警告灯の動作といった、不合格の検査結果を示す通知を発することもできる。
図1