特許第6044972号(P6044972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人豊橋技術科学大学の特許一覧
特許6044972熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料
<>
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000005
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000006
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000007
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000008
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000009
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000010
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000011
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000012
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000013
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000014
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000015
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000016
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000017
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000018
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000019
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000020
  • 特許6044972-熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044972
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/22 20060101AFI20161206BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20161206BHJP
   C04B 35/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01L35/22
   H01L35/34
   C04B35/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-65326(P2012-65326)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-197460(P2013-197460A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】落合 淳志
(72)【発明者】
【氏名】山村 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】難波 匡玄
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−246678(JP,A)
【文献】 特開2009−188319(JP,A)
【文献】 特開2006−351754(JP,A)
【文献】 特開2003−034576(JP,A)
【文献】 Y.MASUDA et al.,Thermoelectric performance of Bi- and Na-substituted Ca3Co4O9 improved through ceramic texturing,Journal of Materials Chemistry,2003年,Vol.13, No.5,pp.1094-1099
【文献】 Gaojie XU et al.,High temperature transport properties of Ca3-xNaxCo4O9 system,Solid State Communications,2002年,Vol.124,pp.73-76
【文献】 FENG Jianlin,EFFECTS OF DOPING METAL IONS ON THERMOELECTRIC PROPERTIES OF Ca3Co4O9,JOURNAL OF THE CHINESE CERAMIC SOCIETY,2008年11月,Vol.36, No.11,pp.1501-1504
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/22
H01L 35/34
C01G 51/00
C04B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ca3-xBixCo49(式中、xは0<x≦1を満たす)で表される母材粒子の表面に、Naを付着させてNa付着粒子を得るNa付着工程と、
前記Na付着粒子を一軸加圧で成型して得られた成形体を同方向に加圧して焼成することにより、Ca3-xBixCo49(式中、xは0<x≦1を満たす)で表される母材及びNaを含み、加圧軸に垂直な面をCuKα線を用いて測定したXRDで15.0°≦2θ≦17.5°の範囲及び32.7°≦2θ≦33.8°の範囲に確認されるピークがいずれもシングルピークである熱電変換材料を得る焼結工程と、
を備えた熱電変換材料の製造方法。
【請求項2】
前記Na付着工程では、Naを含む液体中に母材粒子を分散させ、攪拌しながら乾燥させる、請求項1に記載の熱電変換材料の製造方法。
【請求項3】
前記Naを含む液体は、水にNaHCO3を溶解させたものである、請求項2に記載の熱電変換材料の製造方法。
【請求項4】
Ca3-xBixCo49(式中、xは0<x≦1を満たす)で表される母材及びNaを含み、元素マッピングのNa元素は粒界に局在しており、加圧軸に垂直な面をCuKα線を用いて測定したXRDで15.0°≦2θ≦17.5°の範囲及び32.7°≦2θ≦33.8°の範囲に確認されるピークがいずれもシングルピークであり、Na由来の結晶相のピークは確認されない、
熱電変換材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換とは、熱エネルギーと電気エネルギーを直接変換するものであり、物質から生じるゼーベック効果を用いて、効率良くエネルギー変換を行うものである。このような熱電変換が可能なP型、N型の素子を組み合わせたモジュールを用いて、大気中に廃棄されている熱エネルギー等を利用して発電することにより、エネルギー効率の改善を図ることが期待されている。このような使用を目的とする熱電変換材料には、ゼーベック係数が高く、電気伝導度が高く、かつ、熱伝導率が低い材料が好適であり、これらの物性を組み合わせた性能指数(ZT)と呼ばれる指標で特性が評価されている。比較的特性が高い熱電変換材料としては、金属間化合物系のものや、酸化物系のものが開発されている。
【0003】
酸化物系の熱電変換材料のうち、P型ではアルカリ金属又はアルカリ土類金属と遷移金属元素からなる複合酸化物材料が開発されている。これらの材料で高温において比較的高い特性を示す熱電変換材料としてCa3Co49が知られている。このようなものにおいて、CaをBiで置換したCa3-xBixCo4y(0<x≦1、8.5≦y≦10)の組成の材料は出力因子(PF=ゼーベック係数の2乗×導電率)が大きく、高特性を示すことが知られている(特許文献1参照)また、一般式:Caa1bCoc2de(式中、A1は、Na、K、Li、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Pb、Sr、Ba、Al、Bi、Yおよびランタノイドからなる群から選択される一種又は二種以上の元素であり、A2は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Ag、Mo、W、Nb及びTaからなる群から選択される一種又は二種以上の元素であり、2.2≦a≦3.6;0≦b≦0.8;2.0≦c≦4.5;0≦d≦2.0;8≦e≦10である。)で表されるものが知られている(例えば特許文献2参照)。また、Ca3Co49のCaをBi及びNaで置換することが提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3069701号公報
【特許文献2】特許第4595123号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Applied Physics Letters, Vol. 80, No. 20(2002)3760-3762
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載された熱電変換材料では、出力因子や性能指数がまだ十分でないことがあり、出力因子や性能指数をより高めることが望まれていた。また、非特許文献1に記載された熱電変換材料を本発明者らが作製してみたところ、導電率が42S/cmと低い値を示した。このため、出力因子や性能指数を高めるとともに導電率の低下を抑制できる熱電変換材料が望まれていた。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、出力因子及び性能指数を高めるとともに導電率の低下を抑制できる熱電変換材料を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱電変換材料の製造方法及び熱電変換材料は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明の熱電変換材料の製造方法は、
Ca3-xBixCo49(式中、xは0<x≦1を満たす)で表される母材粒子の表面に、Naを付着させてNa付着粒子を得るNa付着工程と、
前記Na付着粒子を成型して焼成する焼結工程と、
を備えたものである。
【0010】
この熱電変換材料の製造方法では、出力因子及び性能指数が高く、導電率の低下を抑制可能な熱電変換材料を製造することができる。このような効果が得られる理由は定かではないが、このような製造方法で得られた熱電変換材料は、結晶構造、キャリア濃度、バンド構造、微構造等が熱電特性や導電性を高めるのに好適なものとなるためと推察される。ここで、出力因子PF(Wm-1-2)は、ゼーベック係数をS(VK-1)、導電率をσ(Sm-1)とすると、PF=S2×σで表される値である。また、性能指数ZT(−)は、熱伝導率をκ(Wm-1-1)、測定温度をT(K)とするとZT=(PF/κ)×Tで表される値である。なお、熱伝導率κは、熱拡散率をα(m2-1)、定圧比熱をCp(Jg-1-1)、密度をρ(gm-3)としたときに、κ=α×Cp×ρで表される値である。
【0011】
本発明の熱電変換材料は、
Ca3-xBixCo49(式中、xは0<x≦1を満たす)で表される母材及びNaを含み、CuKα線を用いたXRDで15.0°≦2θ≦17.5°の範囲及び32.7°≦2θ≦33.8°の範囲に確認されるピークがいずれもシングルピークである。
【0012】
この熱電変換材料では、出力因子及び性能指数を高めるとともに導電率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】Naを添加した母材粒子のXRD回折パターンである。
図2】Naを添加した母材粒子のSEM写真である。
図3】Naを添加した母材粒子のSEM写真である。
図4】Naを添加した母材粒子の元素マッピング結果である。
図5】Naを添加した母材粒子の元素マッピング結果である。
図6】実施例1の焼結体のXRD回折パターンである。
図7】実施例1及び比較例1,2の焼結体のXRD回折パターンである。
図8】Naを添加した焼結体のプレス面のSEM写真である。
図9】Naを添加した焼結体のプレス面の元素マッピング結果である。
図10】Naを添加した焼結体のプレス面の元素マッピング結果である。
図11】Naを添加した焼結体の側面のSEM写真である。
図12】Naを添加した焼結体の側面の定量分析結果である。
図13】Naを添加した焼結体の側面の元素マッピング結果である。
図14】Agを添加した焼結体のプレス面の元素マッピング結果である。
図15】実施例1及び比較例3の焼結体のXRD回折パターンである。
図16】温度と出力因子(PF)との関係を示すグラフである。
図17】温度と性能指数(ZT)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の熱電変換材料は、Ca3-xBixCo49(式中、xは0<x≦1を満たす)で表される母材及びNaを含み、CuKα線を用いたXRDで15.0°≦2θ≦17.5°の範囲及び32.7°≦2θ≦33.8°の範囲に確認されるピークがいずれもシングルピークである。
【0015】
母材は、Ca3-xBixCo49で表されるものである。ここで、xは0<x≦1を満たすものであればよいが、例えば、0.1≦x≦0.5以下を満たすものなどとしてもよい。xは、出力因子や性能指数が大きくなるように適宜設定することができるが、さらに、ゼーベック係数の絶対値も大きくなるように設定することが好ましい。ゼーベック係数の絶対値が大きいと、以下の利点がある。即ち、ゼーベック係数は起電力の大きさの指標であり、ゼーベック係数の絶対値が大きいほど大きな電圧が得られる。大電圧が要求される場合には、その電圧を得るのに必要な数の素子を直列につないだモジュールが用いられるが、各素子のゼーベック係数の絶対値が大きい、即ち、大きな電圧が得られる素子を用いた場合、素子の数を少なくすることができる。このため、素子同士の接触部を減らすことが可能であり、接触部の抵抗の影響を抑制できる。また、素子を直列につなぐ場合、1つの素子が壊れると全体が作動しなくなり故障状態となるが、素子の数を少なくすることで故障状態となる確率が下がり、モジュール全体の信頼性を高めることができる。なお、ゼーベック係数が正の値を示すものはホールをキャリアとするP型素子であり、負の値を示すものは電子をキャリアとするN型素子である。本発明の熱電変換材料は、ゼーベック係数が正の値を示すP型熱電変換材料である。なお、母材は、化学量論組成のものでもよいし、元素の一部が欠損した非化学量論組成のものでもよいし、元素の一部が他の元素に置換されたものでもよい。また、Ca、Bi、Co組成及び酸素量について、各々数%(例えば5%以内など)のずれがあってもよい。
【0016】
Naは、単体として存在していてもよいし炭酸塩や水酸化物などの化合物として存在していてもよい。また、母材を構成する原子の一部を置換する形で存在していてもよい。このNaは、母材のCa3-xBixCo491モルに対して、0.1モル以上0.5モル以下の量であることが好ましく、0.2モル以上0.4モル以下の量であることがより好ましい。
【0017】
本発明の熱電変換材料は、CuKα線を用いたXRDで15.0°≦2θ≦17.5°の範囲(範囲X)及び32.7°≦2θ≦33.8°の範囲(範囲Y)に確認されるピークがいずれもシングルピークである。ここで、シングルピークであるとは、各範囲において、その範囲内で回折強度が最も大きいピークに対して1/10以上の回折強度を有するピークがないことをいうものとする。範囲X及び範囲Yに確認されるピークの少なくとも一方がシングルピークとならないものでは導電率が低下するが、両方がシングルピークとなるものでは導電率が比較的高い値を示す。この範囲に現れるシングルピークのピーク位置は、Ca9Co1228のピーク位置と一致する。なお、本発明者らが本発明の方法以外の方法で作製した熱電変換材料のうち、範囲X及び範囲Yの両方がダブルピークとなったものでは、ピーク位置は、範囲X及び範囲Yのいずれにおいても、一方はCa9Co1228のピークと一致し、他方はNa0.6CoO2のピーク位置と一致した。このことから、ダブルピークとなるものではNa0.6CoO2が多量に生成していて、これが導電率を低下させるのに対して、シングルピークとなるものではNa0.6CoO2のような導電率を低下させるものが生成しておらず、導電率が低下しにくいと考えられる。この熱電変換材料は、CuKα線を用いたXRDで10°≦2θ≦50°の範囲に確認されるピークのピーク位置がCa9Co1228で表される酸化物と一致することが好ましい。
【0018】
以上説明した本発明の熱電変換材料では、出力因子及び性能指数を高めるとともに導電率の低下を抑制できる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、本発明の熱電変換材料は、結晶構造、キャリア濃度、バンド構造、微構造等が熱電特性や導電性を高めるのに好適なものとなるためと推察される。
【0019】
次に、本発明の熱電変換材料の製造方法について説明する。この熱電変換材料の製造方法は、(1)母材粒子を製造する母材粒子製造工程と、(2)母材粒子の表面にNaを付着させてNa付着粒子を得るNa付着工程と、(3)Na付着粒子を成型して焼成する焼結工程と、を備えたものとしてもよい。
【0020】
(1)母材粒子製造工程
母材粒子製造工程では、まず、Ca3-xBixCo49(式中、xは0<x≦1を満たす)となるような混合比で、Ca源、Bi源及びCo源を配合し、混合する。Ca源、Bi源及びCo源は特に限定されないが、Ca,Bi及びCoのうちの1種以上を含む酸化物や水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、アルコキシドなどを用いることができる。より具体的には、Ca源としてはCaCO3、Bi源としてはBi23、Co源としてはCo34などを好適に用いることができる。混合工程では、遊星ミル、ポットミル、アトライターなどを用いて、原料粒子を混合粉砕するものとしてもよい。混合粉砕は、乾式法で行ってもよいし、湿式法で行ってもよい。湿式法で行う際には、環境負荷の低い水を用いてもよいし、アルコールやアセトンなど、揮発性の高い有機溶媒を用いてもよい。このようにして混合材料を得ることができる。
【0021】
次に、混合材料を焼成(仮焼)して酸化物を得る。焼成は、大気雰囲気や酸化性雰囲気などで行うことができ、常圧下で行ってもよいし、加圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。焼成温度は、例えば、973K以上1223K以下が好ましく、1103K以上1173K以下がより好ましい。焼成時間は例えば1時間以上50時間以下などの範囲で適宜設定することができる。このようにして得られた酸化物を粉砕して母材粒子とする。このとき、仮焼と粉砕とを複数回繰り返すことが好ましい。なお、粉砕は行わなくてもよい。
【0022】
このようにして得られた母材粒子は、Ca3-xBixCo49(xは0<x≦1)で表される。この母材粒子は、例えば、扁平した形状であり、その直径は約5μm以上10μm以下、厚さは約1μm以下などである。なお、この母材粒子は、化学量論組成のものでもよいし、元素の一部が欠損した非化学量論組成のものでもよいし、元素の一部が他の元素に置換されたものでもよい。また、Ca、Bi、Co組成及び酸素量について、各々数%(例えば5%以内など)のずれがあってもよい。
【0023】
(2)Na付着工程
Na付着工程では、得られた母材粒子表面にNaを付着させる。Naを付着させる方法は、特に限定されないが、Naを含む液体中に母材粒子を分散させ、攪拌しながら乾燥させることが好ましい。Naを含む液体としては、溶媒にNaの化合物を溶解させたものなどを用いることができる。溶媒としては、環境負荷の低い水を用いてもよいし、アルコールやアセトンなど、揮発性の高い有機溶媒を用いてもよい。Naの化合物としては、NaHCO3,Na2CO3、NaOH、NaNO3、Naアルコキシドなどを用いることができる。Naを含む液体は、母材粒子であるCa3-xBixCo491モルに対して0.1モル以上0.5モル以下の量のNaを含んでいることが好ましく、0.2モル以上0.4モル以下の量のNaを含んでいることがさらに好ましい。また、Naを含む液体におけるNa濃度は、例えば、0.53mol/L以上0.55mol/L以下が好ましい。乾燥は、常温で行ってもよいし、例えば80℃以上95℃以下の温度などで加熱しながら行ってもよい。
【0024】
このようにして得られたNa付着粒子は、母材粒子表面全体にNaが付着している。また、このNa付着粒子は、X線回折におけるピーク位置がCa9Co1228で表される酸化物と一致する。なお、Ca9Co1228以外のその他のピークを含んでいてもよい。その他のピークとしては、例えば、Bi2Ca3Co29や、CaOを示すものが挙げられる。なお、Naの存在を示唆するピークは、種々の原因により表出しないことがあるため、確認できなくてもよい。
【0025】
(3)焼結工程
焼結工程では、Na付着粒子を成型して焼成する。具体的には、例えば、Na付着粒子を型に詰めて加圧して成型体を作製し、得られた成型体を所定の焼結温度で所定時間焼成してもよい。成型方法は、例えば、一軸プレスや、静水圧プレス、ヒートプレス、押出成形などを用いることができる。成型する形状は、角柱状、円柱状など望まれる形状とすればよい。焼成は、例えば、大気雰囲気や酸化性雰囲気などで行うことができ、常圧下で行ってもよいし、加圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。焼成温度は、焼結に適した温度であればよく、例えば800℃以上950℃以下が好ましく、830℃以上900℃以下がより好ましい。また、焼成時間は、温度にもよるが、例えば1時間以上50時間以下である。焼成は、成型体を加圧しながら行うことが好ましく(ホットプレス)、例えば、25MPa以上75MPa以下での加圧が好ましく、45MPa以上55MPa以下での加圧がより好ましい。なお、焼成の前に焼成温度より低い温度で仮焼を行ってもよい。
【0026】
以上詳述した本実施形態の製造方法によれば、Ca3-xBixCo49(式中、xは0<x≦1を満たす)で表される母材及びNaを含み、CuKα線を用いたXRDで15.0°≦2θ≦17.5°の範囲及び32.7°≦2θ≦33.8°の範囲に確認されるピークがいずれもシングルピークである熱電変換材料を製造することができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
例えば、本発明の熱電変換材料は、上述した製造方法以外の方法で製造してもよい。
【0029】
上述した製造方法では、母材粒子製造工程を含むものとしたが、この工程を省略して市販のものを用いてもよいし、この母材粒子製造工程とは異なる方法で製造した母材粒子を用いてもよい。この母材粒子は、例えば、973K以上1223K以下の温度で焼成された仮焼粒子であることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下には、本発明の熱電変換材料を具体的に製造した例を実施例として説明する。
【0031】
[実施例1]
(1)Ca2.7Bi0.3Co49粉末(母材粒子)の作製
原料として、株式会社高純度化学研究所製CaCO3(4N,CAH08PB),Co34(3Nup,COO09PB),Bi23(4N,粒径2μm,BIO10PB)を使用した。1回のバッチサイズを15gとし、CaCO3:Co34:Bi23をモル比で2.7:1.33:0.15に秤量した後、乳鉢・乳棒を用いて約15〜20分間、手動で混合・粉砕を行った。得られた混合粉末を、大気中で900℃まで2時間で昇温、900℃で20時間保持し、その後2〜7時間で室温まで降温(炉冷)を行い、仮焼した。得られた仮焼粉について乳鉢・乳棒を用い、約15〜20分間、手動で粉砕・混合を行った。以上の仮焼・粉砕工程を計4回繰り返した。以上のようにしてCa2.7Bi0.3Co49粉末(母材粒子)を作製した。
【0032】
(2)Ca2.7Bi0.3Co49粉末(母材粒子)へのNaの添加
Ca2.7Bi0.3Co49粉末1に対しモル比で0.3となるようNaHCO3を0.4577g秤量し、脱イオン水10mlに溶解させてNa濃度が0.54mol/Lの水溶液をビーカーに作製した。作製した水溶液中にCa2.7Bi0.3Co49粉末を10g投入し、200℃に設定したホットプレート上にビーカーを置き、沸騰しないように温度を調節しながら、約30分間ガラス棒で攪拌しながら乾燥させた。
【0033】
得られた粉末について、XRD回折装置(リガク社製,型式RINT−2500)を用いて、XRD回折パターンを測定した。測定は、CuKα線を用い、スキャンスピード0.5°/min、発散スリット0.1°、散乱防止スリット0.5°で行った。その結果を図1に示す。得られた回折パターンはJCPDSカード番号00−021−0139のCa9Co1228のピークで同定された。なお、一般にCa3Co49と称される物質は酸素不定比性を有し、酸素量に幅があるため、Ca9Co1228のピークで同定できる。
【0034】
また、この粉末を、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製,型式JSM-6610LV,以下同じ。)を用いて観察し、SEM写真を撮影した。SEM写真を図2に示す。図2(a)は二次電子像であり、図2(b)は組成像である。また、図2よりも倍率を高くしたSEM写真を図3に示す。図3(a)は二次電子像であり、図3(b)は組成像である。図2,3より、この粉末は、長手方向に5〜10μm、厚みが1μm程度の粒子であることがわかった。次に、この粉末について、エネルギー分散型X線回折装置(Oxford Instruments社製,型式x-act,以下同じ。)を用いてEDSによる元素マッピングを行った。元素マッピング結果を図4に示す。図4(a)は観察視野の組成像であり、図4(b)はNa、図4(c)はCa、図4(d)はCo、図4(e)はBiのマッピング結果である。図4よりも倍率を高くした視野の元素マッピング結果を図5に示す。図5(a)は観察視野の組成像であり、図5(b)はNa、図5(c)はCa、図5(d)はCo、図5(e)はBiのマッピング像である。図4,5より、Naは粉末表面全体に分布していることがわかった。
【0035】
(3)焼結体の作製
得られた粉末を直径20mmの円筒型の型に詰め、一軸加圧120MPaで2minの成形を行った。得られた成型体の代表的な形状は直径20mm、厚さ4mm程度の円板状であった。成型体をアルミナ板で挟み、動かない程度に圧力をかけ、大気中で830℃まで1時間で昇温した。830℃に達した時点で16kNの圧力をかけた。このとき、1時間以内で圧力が16kNから低下した際には、随時手動で圧力が16kNになるように調整した(1時間以後はほとんど圧力変動無し)。そして、圧力をかけたまま830℃で計10時間保持し、圧力をかけたまま3時間で降温(炉冷)し、焼結体を作製し、これを実施例1の焼結体とした。
【0036】
得られた焼結体について、粉末にすることなく、XRD回折装置(リガク社製,型式RINT−2500)を用いてXRD回折パターンを測定した。測定は、CuKα線を用い、スキャンスピード0.5°/min、発散スリット0.1°、散乱防止スリット0.5°で行った。その結果を図6,7に示す。得られた回折パターンはJCPDSカード番号00−021−0139のCa9Co1228のピークで同定された。また、そのほかに、JCPDSカード番号00−052−0125のBi2Ca3Co29のピークで同定される相や、JCPDSカード番号00−048−1467のCaOのピークで同定される相も確認された。さらに、2θ=20°付近にこれら以外のピークが確認された。Na由来の結晶相のピークは確認されなかった。なお、図7において、一点鎖線がCa9Co1228のピーク位置であり、破線がBi2Ca3Co29のピーク位置であり、二点鎖線がCaOのピーク位置である。
【0037】
また、この焼結体の加圧方向に直交する面(プレス面)について、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、SEM写真を撮影した。図8に、そのSEM写真を示す。図8(a)は二次電子像であり、図8(b)は組成像である。次に、図8とほぼ同視野で、エネルギー分散型X線回折装置を用いてEDSによる元素マッピングを行った。元素マッピング結果を図9,10に示す。図9(a)は観察視野の組成像であり、図9(b)はNa、図10(a)はCo、図10(b)はBi、図10(c)はCaのマッピング結果である。
【0038】
さらに、この焼結体の加圧方向に平行な面(側面)について、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、SEM写真を撮影した。図11に、そのSEM写真を示す。図11(a)は二次電子像であり、図11(b)は組成像である。次に、図11とほぼ同視野で、エネルギー分散型X線回折装置を用いてEDSによる面分析及び元素マッピングを行った。図12には面分析結果を、図13に元素マッピング結果を示す。
【0039】
[比較例1]
Ca2.7Bi0.3Co49粉末(母材粒子)へのNaの添加(上記(2))を行わないこと及び上記(3)において焼結温度を850℃としたこと以外は実施例1と同様の方法で焼結体を作製し、これを比較例1とした。
【0040】
得られた焼結体について、実施例1と同様に、XRD回折装置を用いてXRD回折パターンを測定した。その結果を図7に示す。得られた回折パターンはJCPDSカード番号00−021−0139のCa9Co1228のピークで同定された。また、そのほかに、JCPDSカード番号00−052−0125のBi2Ca3Co29のピークで同定される相や、JCPDSカード番号00−048−1467のCaOのピークで同定される相も確認された。さらに、2θ=19°,20°,28°付近にこれら以外のピークが確認された。
【0041】
[比較例2]
Ca2.7Bi0.3Co49粉末(母材粒子)へのNaの添加(上記(2))に代えて、Ca2.7Bi0.3Co49粉末(母材粒子)へ以下に示す方法でAgを添加した以外は実施例1と同様の方法で、焼結体を作製し、これを比較例2とした。Agの添加は、Ca2.7Bi0.3Co49粉末1に対しモル比で0.3となるようAgNO3を秤量し、純水に溶解させて水溶液を作製した。作製した水溶液中にCa2.7Bi0.3Co49粉末を投入し、攪拌しながら乾燥させて行った。
【0042】
得られた焼結体について、実施例1と同様に、XRD回折装置を用いてXRD回折パターンを測定した。その結果を図7に示す。得られた回折パターンはJCPDSカード番号00−021−0139のCa9Co1228のピークで同定された。また、そのほかに、JCPDSカード番号00−052−0125のBi2Ca3Co29のピークで同定される相や、JCPDSカード番号00−048−1467のCaOのピークで同定される相、Agのピークも確認された。さらに、2θ=14°,19°,43°付近にこれら以外のピークが確認された。
【0043】
焼結前の粉末を実施例1と同様にSEMで観察したところ、長手方向に5〜10μm,厚みが1μm程度の粒子であった。また、EDSで元素マッピングしたところ、粒子表面全体からAgが検出された。
【0044】
また、得られた焼結体のプレス面について、実施例1と同様にEDSによる元素マッピングを行った。元素マッピング結果を図14に示す。図14(a)は観察視野の組成像であり、図14(b)はAg、図14(c)はCo、図14(d)はCa、図14(e)はBiのマッピング結果である。
【0045】
[比較例3]
母材粒子の作製(上記(1))において、原料としてNa2CO3も加えて母材粒子を作製し、母材粒子へのNaの添加(上記(2))を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で焼結体を作製し、これを比較例3とした。なお、原料の配合は、CaCO3:Co34:Bi23:Na2CO3がモル比で2.4:1.33:0.15:0.15となるようにした。
【0046】
得られた焼結体について、実施例1と同様にXRD回折装置を用いてXRD回折パターンを測定した。その結果を図15に示す。図15には実施例1のXRD回折パターンも示した。比較例3では、実施例1と同じくCa9Co1228のピークが確認された。一方、実施例1では確認されなかったJCPDSカード番号00−071−1281のNa0.6CoO2のピークが確認された(図中矢印で示したピーク)。
【0047】
[特性値の算出]
得られた焼結体から試験片を切り出し、以下に示すように、導電率(直流四端子法)、ゼーベック係数(定常直流法)、熱拡散率(レーザーフラッシュ法)、寸法密度、比熱(DSC:示差走査熱量測定)を求め、その結果から、出力因子(PF)及び性能指数(ZT)を算出して評価を行った。なお、Ca3Co49系の材料は、導電率、ゼーベック係数、熱伝導率に異方性がある。ここで、この系の材料の異方性についてはJournal of the Ceramic Society of Japan 109[8]647-650(2001)の記述があるため、これを参考にして評価を行った。
(A)導電率、ゼーベック係数の測定と出力因子の算出
焼結工程における加圧方向と垂直な方向(x方向)に、大気中で300,400,500,600,650,700,730℃で測定し、これらの結果から以下の式に従い、各温度における出力因子(PF)を算出した。
PFの算出式:PF=(S2×σ) σ:導電率 S:ゼーベック係数
(B)熱拡散率の測定
Ar雰囲気中500,650,730℃で焼結工程における加圧方向と同様の方向(z方向)にレーザーを照射し、この方向の熱拡散率を測定した。
(C)寸法密度の測定
測定は大気中室温で行った。
(D)比熱の測定
比熱はAr雰囲気中500,650,730℃で測定した。
(E)熱伝導率の算出
熱拡散率、比熱、密度の測定値から以下の式に従い、z方向の熱伝導率(κz)を算出した。また、上記異方性について文献の記載によれば、x方向の熱伝導率κxは、z方向の熱伝導率κzの2.4倍と見積もられるため、以下の式に従いkx方向の熱伝導率(κx)を算出した。
κzの算出式:κz=αz×Cp×ρ
(αz:z方向の熱拡散率 Cp:定圧比熱 ρ:密度)
κxの算出式:κx=κz×2.4
(F)性能指数(ZT)の算出
PFの値、κxの値、測定温度(T)を用い以下の式に従い、x方向の性能指数ZTを算出した。(熱伝導率が算出できている点のみ)
ZTの算出式:ZT=(PF/κx)×T
【0048】
[実験結果]
表1及び図16に、実施例1及び比較例1,2の出力因子を示す。また、表2及び図17に、実施例1及び比較例1,2の性能指数を示す。Naを添加した実施例1では、Naを添加しなかった比較例1及びAgを添加した比較例2に比して、測定した全温度範囲において、出力因子(PF)及び性能指数(ZT)が共に大きかった。このことから、Naの添加が熱電特性を向上させるのに有用であることがわかった。また、表3に、実施例1及び比較例1〜3の730℃における導電率、ゼーベック係数、熱伝導率、出力因子(PF)、性能指数(ZT)を示す。Naを添加した実施例1では、Naを添加しなかった比較例1及びAgを添加した比較例2に比して、出力因子(PF)及び性能指数(ZT)が共に大きいだけでなく、導電率及びゼーベック係数も大きいことがわかった。このことから、Naの添加が熱電特性の向上や導電率の向上に有用であることがわかった。一方で、Naを添加したものであっても、母材粒子にNaを付着させて添加した実施例1では導電率が比較例1,2と同等以上であったのに対し、母材粒子を作る原料の段階でNaを添加した比較例3では導電率が極めて低かった。このことから、母材粒子にNaを付着させてNaを添加する必要があることがわかった。また、実施例1のものではCuKα線を用いたXRDで15.0°≦2θ≦17.5°の範囲及び32.7°≦2θ≦33.8°の範囲に確認されるピークがいずれもシングルピークであったのに対して、比較例3のものではダブルピークであった。このことから、この範囲のピークはいずれもシングルピークである必要があることがわかった。なお、この範囲において実施例1のピーク位置は、Ca9Co1228のピーク位置と一致した。一方、比較例3のピーク位置は、一方はCa9Co1228のピークと一致し、他方はNa0.6CoO2のピーク位置と一致した。このことから、ダブルピークとなるものではNa0.6CoO2が多量に生成していて、これが導電率を低下させるのに対して、シングルピークのものではNa0.6CoO2がほとんど生成しておらず、導電率が低下しにくいと推察された。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、熱電変換材料を用いる産業に利用可能である。
図16
図17
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15