(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<A.感熱紙>
本発明の感熱紙は、基材層、感熱発色層、および、トップコート層をこの順に備える。上記トップコート層は、シリコーンアクリル樹脂を含む。
図1は、本発明の感熱紙の一つの好ましい実施形態を説明する概略断面図である。感熱紙100は、基材層10、感熱発色層20、および、トップコート層30をこの順に備える。感熱紙100では、感熱発色層20の表面(印字する際にサーマルヘッドと対向する面)にトップコート層30が設けられる。このトップコート層30がサーマルヘッドと接することにより、部分グレーズタイプのサーマルヘッドで印字した場合であっても、印字縮みを防止し得る。したがって、本実施形態の感熱紙は、従来の平面グレーズタイプのサーマルヘッドだけではなく、部分グレーズタイプのサーマルヘッドによる印字にも好適に用いることができる。トップコート層30は平滑な表面を有することにより、感熱紙100に光沢性を付与し得る。上記シリコーンアクリル樹脂は光沢性への悪影響が少ないため、トップコート層30は従来の光沢感熱紙と同程度の光沢性を感熱紙100に付与し得る。そのため、感熱紙100は、従来の光沢感熱紙と同程度の光沢性を維持し、かつ、印字縮みを防止し得る。
【0010】
図2は本発明の感熱紙の別の実施形態を説明する概略断面図である。この実施形態では、感熱紙100’は、基材層10、アンダーコート層40、感熱発色層20、保護層50、および、トップコート層30を備える。感熱紙100’がアンダーコート層40をさらに備えることにより各層の平滑性がさらに向上する。そのため、感熱紙とサーマルヘッドとの密着性がさらに向上し、より鮮明な印字が可能となる。また、感熱紙100’が保護層50を備えることにより、感熱発色層20を水や可塑剤、薬品等から保護し得る。なお、目的、各層の構成、および、所望の特性に応じて、アンダーコート層40および保護層50の一方は省略されてもよい。本発明の感熱紙は、上記の層以外にも任意の適切な他の層を備え得る。例えば、基材層と感熱発色層との間に別の保護層や、断熱層が設けられていてもよい。また、基材層10の感熱発色層20およびトップコート層30が設けられていない面に、バックコート層が設けられていてもよい。上記断熱層を備えることにより、サーマルヘッドから与えられた熱の拡散を防止し得る。上記バックコート層を備えることにより基材層10の湾曲が防止され、より平坦な感熱紙が提供され得る。また、本発明の感熱紙をラベルとして用いる場合、形成された粘着剤層の投錨力が向上し得る。
【0011】
<A−1.トップコート層>
トップコート層30は、感熱紙の最外層に設けられる。すなわち、トップコート層30は、本発明の感熱紙が印字される際に、サーマルヘッドに直接接する層である。トップコート層30は、シリコーンアクリル樹脂を含む。該シリコーンアクリル樹脂は、バインダーとして用いられる。部分グレーズタイプのサーマルヘッドは、従来使用されている平面グレーズタイプのサーマルヘッドに比べ、感熱紙により大きな圧力が加わる。そのため、より高精細な印字が可能になる反面、印字縮みが発生するという課題がある。本発明の感熱紙のトップコート層は、シリコーンアクリル樹脂を含むことにより、部分グレーズタイプのサーマルヘッドを用いて印字した場合であっても、印字縮みを防止し得る。トップコート層30は、平滑な表面を有することにより、感熱紙に光沢性を付与し得る。上記シリコーンアクリル樹脂は光沢性への悪影響が少ないため、トップコート層は、従来の光沢感熱紙と同程度の光沢性を感熱紙に付与し得る。そのため、本発明の感熱紙は、光沢感熱紙が好まれる用途に好適に用いることができる。上記トップコート層は、感熱発色層の印字が視認できるよう、透明であることが好ましい。
【0012】
上記トップコート層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。例えば、トップコート層の厚みは0.3μm以上であり、好ましくは0.3μm〜5.0μmである。トップコート層の厚みが上記の範囲内であれば、本発明の感熱紙に十分な光沢性を付与することができる。
【0013】
上記トップコート層は、上記シリコーンアクリル樹脂以外に、任意の適切な他の成分を含む。該他の成分としては、シリコーンアクリル樹脂以外のバインダー(樹脂)、滑剤、架橋剤、および、充填剤等が挙げられる。
【0014】
<A−1−1.バインダー>
上記トップコート層は、バインダーを含む。上記バインダーは、上記シリコーンアクリル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。上記トップコート層中のバインダーの含有量は、任意の適切な値に設定され得る。
【0015】
<A−1−1−1.シリコーンアクリル樹脂>
上記シリコーンアクリル樹脂としては、任意の適切なシリコーンアクリル樹脂が用いられる。シリコーンアクリル樹脂としては好ましくは、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合することにより得られるシリコーンアクリル樹脂が用いられる。
【0016】
【化3】
[式(1)中、R
1、R
2、および、R
3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基、または、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一つをハロゲン原子で置換した炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し;Yはラジカル反応性基、または、−SH基、もしくはその両方を有する有機基を表し;Z
1およびZ
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または、
【化4】
(式(2)中、R
4およびR
5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基、または、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表し;R
6は炭素数1〜20の炭化水素基、または、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、もしくは、ラジカル反応性基または−SH基もしくはその両方を有する有機基を表す)で表されるトリオルガノシリル基を表し;mは10,000以下の正の整数を表し;nは1以上の整数を表し;1分子中で、R
1〜R
6、Yはそれぞれ同一でも異なっていてもよい]。
【0017】
上記一般式(1)において、R
1〜R
3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基、または、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一つをハロゲン原子で置換した炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)において、Yはラジカル反応性基、または、−SH基、もしくはその両方を有する有機基を表す。具体的には、ビニル基、アリル基、γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−メルカプトプロピル基等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(1)において、Z
1およびZ
2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または、上記一般式(2)で表されるトリオルガノシリル基を表す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が挙げられる。
【0020】
上記一般式(2)において、R
4およびR
5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基、または、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基を表す。R
6は炭素数1〜20の炭化水素基、または、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、もしくは、ラジカル反応性基または−SH基もしくはその両方を有する有機基を表す。これらR
4〜R
6の炭化水素基等の具体的には、上記一般式(1)のR
1〜R
3およびYで例示したものが挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)において、mは10,000以下の正の整数であり、好ましくは500〜8000の整数である。上記一般式(1)において、nは1以上の整数であり、好ましくは1〜500の整数である。
【0022】
上記ポリオルガノシロキサンは任意の適切な方法で製造することができる。例えば、上記の記載で例示した官能基を有する鎖状や環状の低分子量ポリオルガノシロキサンやアルコキシシランを重合等することにより製造することができる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、任意の適切な(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
共重合を行う際の上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの配合比は、重量比で5/95〜95/5であることが好ましい。
【0025】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル以外にも、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体を共重合してもよい。上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体としては、任意の適切な単量体を用いることができる。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の不飽和アミド、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸等の二重結合を1個有する単量体の他にエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多不飽和単量体が挙げられる。上記他の単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記共重合可能な他の単量体の含有量は、上記(メタ)アクリル酸エステルと上記共重合可能な他の単量体との合計量100重量%に対して、30重量%以下であることが好ましい。また、共重合を行う際の上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンとの配合比は、(メタ)アクリル酸エステルと上記他の単量体との合計重量との配合比が上記の範囲内であればよい。
【0027】
上記シリコーンアクリル樹脂は、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとをグラフト共重合することにより得られ得る。一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとの重合は、任意の適切な重合方法により行うことができる。上記シリコーンアクリル樹脂は、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとを乳化重合法により、グラフト共重合して得られる樹脂であることが好ましい。
【0028】
上記乳化重合は、任意の適切な方法により行うことができる。例えば、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステルとを水中に乳化分散し、ラジカル重合開始剤の存在下に重合させ、グラフト共重合を行う方法が挙げられる。乳化重合の際に用いる乳化剤やラジカル重合開始剤としては、任意の適切な乳化剤、または、ラジカル重合開始剤が挙げられる。シリコーンアクリル樹脂の具体的な製造方法は、特公平7−5808号公報に開示されている。この開示は、本明細書に参考として援用される。
【0029】
上記シリコーンアクリル樹脂としては、市販されているシリコーンアクリル樹脂を用いてもよい。例えば、日信化学工業社製の商品名「シャリーヌ」シリーズが挙げられる。
【0030】
トップコート層に含まれるバインダー成分100重量%中のシリコーンアクリル樹脂の含有割合は、好ましくは25重量%〜100重量%であり、より好ましくは40重量%〜100重量%である。トップコート層に含まれるバインダー成分中のシリコーンアクリル樹脂の割合が25重量%未満の場合、印字縮みが十分に防止できない場合がある。
【0031】
<A−1−1−2.他のバインダー>
上記バインダーは、上記シリコーンアクリル樹脂以外に任意の適切な他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、例えば、水溶性樹脂および/または任意の適切な樹脂のエマルション等が挙げられる。具体的には、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、メチルビニル−無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリルニトリル、メチルビニルエーテル等が挙げられる。これらの樹脂のなかでも、アクリル系樹脂エマルションが好ましい。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
<A−1−2.滑剤>
上記滑剤としては、任意の適切な滑剤が用いられる。滑剤を含むことにより、感熱紙に良好な滑り性を付与し得る。滑剤としては、例えば、オレイン酸等の脂肪酸類、パラフィンワックス等の酸化ワックス類、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、カルナバワックス等のエステルワックス類、シリコンオイル、鯨油等が挙げられる。上記滑剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記滑剤の含有量は任意の適切な値に設定され得る。
【0033】
<A−1−3.架橋剤>
上記架橋剤は、用いるバインダーの種類に応じて、任意の適切な架橋剤が用いられる。架橋剤としては、例えば、グリオキザール、ポリアルデヒド、アミノ−ホルムアルデヒド等のジアルデヒド系架橋剤、ポリエチレンアミン等のポリアミン系架橋剤、ポリエチレンイミン等のポリイミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、ポリアミド樹脂、グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジル系架橋剤、炭酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム塩が挙げられる。上記架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記架橋剤の含有量は、使用するバインダーの種類や含有量に応じて、任意の適切な値に設定され得る。
【0034】
<A−1−4.充填剤>
上記充填剤としては、任意の適切な充填剤を用いることができる。充填剤を含むことにより、トップコート層に耐熱性を付与し得る。充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリナイト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機充填剤、ポリスチレン樹脂粒子、尿素−ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等の有機充填剤が挙げられる。上記充填剤は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記充填剤の含有量は、任意の適切な値に設定され得る。
【0035】
<A−1−5.他の成分>
上記トップコート層は、上記バインダー、滑剤、架橋剤、および、充填剤以外に任意の適切な添加剤をさらに含んでいてもよい。該添加剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、耐水化剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は、所望の特性等に応じて、任意の適切な値に設定され得る。
【0036】
上記トップコート層は、任意の適切な方法により形成され得る。例えば、上記シリコーンアクリル樹脂を含むバインダー、滑剤、架橋剤、充填剤および必要に応じて他の添加剤を含む水性分散体(トップコート層形成用組成物)を調製し、該分散体を塗布・乾燥することにより、形成され得る。上記トップコート層形成用組成物は、例えば、トップコート層形成用組成物100重量部(固形分乾重量)に対して、それぞれ乾重量で、バインダーを10重量部〜50重量部、充填剤を10重量部〜60重量部、滑剤を1重量部〜30重量部、架橋剤を1重量部〜10重量部含む。
【0037】
トップコート層形成用組成物を塗布後、該組成物が湿潤状態にある間に、平滑な表面を有する任意の適切な支持体を密着させ、該組成物を乾燥させることにより、トップコート層の表面を平滑な面とし得る。これにより、トップコート層が感熱紙の表面に光沢性を付与し得る。上記トップコート層に密着させる支持体は、平滑な表面を有する支持体であればよく、任意の適切な支持体を用いることができる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミド(ナイロン)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニールアルコール(ビニロン)フィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、エチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体フィルムやアイオノマーフィルム等のエチレン共重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、セロファンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アセテートフィルム等の高分子フィルム、または、アルミニウム箔等の金属箔等が挙げられる。これらの支持体は単独で用いてもよく、これらの支持体を紙またはフィルム等に貼付したものを用いてもよい。また、トップコート層形成後の支持体の剥離性を確保するため、上記支持体に任意の適切な離型処理を施していてもよい。
【0038】
<A−2.基材層>
上記基材層としては、任意の適切な基材が用いられる。例えば、上質紙、再生紙、片艶紙、耐油紙、コート紙、アート紙、クラフト紙、グラシン紙、キャスコート紙、樹脂含浸紙、合成繊維紙等の紙、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等のフィルムが挙げられる。基材層は、単一の層であってもよく、積層体であってもよい。
【0039】
上記基材層の厚みは、制限はなく、任意の適切な値に設定され得る。例えば、基材層の厚みは10μm〜100μmである。
【0040】
<A−3.感熱発色層>
上記感熱発色層は、発色剤、顕色剤、および、バインダーを含む。上記発色剤としては、感熱発色剤として使用される任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、フルオラン系化合物、トリアニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、スピロピラン系化合物、ラクタム系化合物、オーラミン系化合物、インドリノフタリド系化合物等のロイド化合物等が挙げられる。上記発色剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記顕色剤としては、上記発色剤を発色させ得る任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、ロイコ染料を発色させる電子受容性化合物が挙げられる。具体的には、安息香酸等の有機酸、サリチル酸亜鉛等の有機酸の金属塩系化合物、p−オクチルフェノール等のフェノール系、4−4´チオビス(6−ターシャルブチル−2−メチルフェノール)等のチオフェノール系化合物、N−N´−ジフェニルチオ尿素等のチオ尿素誘導体、3,3´−ジアリル−4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物等が挙げられる。上記顕色剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記発色剤および顕色剤として用いることができる具体的な化合物は、例えば、特開平6−180548号および特開2004−3080324号公報に開示されている。これらの開示は、本明細書に参考として援用される。
【0043】
上記感熱発色層のバインダーとしては、任意の適切な樹脂を用いることができる。例えば、上記トップコート層の項で例示した樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記感熱発色層は、発色剤、顕色剤およびバインダー以外の任意の適切な添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、顔料、填料、増感剤、安定剤、上記トップコート層の項で例示した、滑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、および、界面活性剤等が挙げられる。
【0045】
上記感熱発色層は、任意の適切な方法により形成され得る。例えば、上記感熱発色層は、発色剤、顕色剤、バインダー、および、必要に応じて他の添加剤を含む水性分散体(感熱発色層形成用組成物)を調製し、該分散体を塗布・乾燥することにより形成され得る。
【0046】
上記分散体を基材層に塗布することにより、感熱発色層を形成する場合、基材層が感熱発色層が形成される面にアンダーコート層を有することが好ましい。基材層の感熱発色層が形成される面にアンダーコート層が備えられていることにより、基材層表面の凹凸を平滑にし得る。これにより、得られる感熱紙のサーマルヘッドとの密接性がさらに向上し、感熱発色層の発色がさらに良くなり得る。
【0047】
また、感熱発色層を上記基材層とは異なる支持体上に形成した後、任意の適切な粘着剤層を介して、基材層に積層してもよい。該粘着剤としては、任意の適切な粘着剤を用いることができる。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体を主成分とするSBR系粘着剤、天然ゴム、SBRゴム、ブチルゴム等を主成分とする再生ゴム系粘着剤、ポリイソブチレン系樹脂を主成分とするポリイソブチレン系粘着剤、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマーを主成分とするブロックゴム系粘着剤、アクリル酸エステルにアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン等のモノマーを共重合したものを主成分とするアクリル系粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
<A−4.他の層>
本発明の感熱紙は、上記トップコート層、感熱発色層、および、基材層以外の任意の適切な他の層を含み得る。他の層としては、例えば、上記アンダーコート層、保護層、断熱層、バックコート層等が挙げられる。これらの層は、いずれかの層のみが設けられていてもよく、複数の層が組み合わせて設けられていてもよい。
【0049】
<A−4−1.アンダーコート層>
アンダーコート層は、例えば、バインダーと充填剤とを含む。該バインダーとしては、任意の適切な樹脂成分を用いることができる。例えば、任意の適切な樹脂のエマルションや水溶性樹脂が挙げられる。該エマルションとしては、例えば、アクリル−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルションが挙げられる。該水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。該バインダーは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記充填剤としては、任意の適切な充填剤を用いることができる。上記充填剤としては、例えば、無機充填剤、有機充填剤、および、中空粒子等が挙げられる。具体的には、アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機充填剤;尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、アミノ樹脂フィラー等の有機充填剤が挙げられる。上記中空粒子としては、任意の適切な中空粒子を用いることができる。例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、および、これらの共重合体等の熱可塑性樹脂からなる中空粒子が挙げられる。上記中空粒子の中空率は、例えば、35%〜95%である。これらの充填剤は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記アンダーコート層の厚みは、任意の適切な厚みに設定され得る。上記アンダーコート層の厚みは、例えば、2μm〜35μmである。
【0052】
上記アンダーコート層は任意の適切な方法により形成され得る。例えば、上記アンダーコート層は、バインダー、充填剤、および、必要に応じて他の添加剤を含む水性分散体(アンダーコート層形成用組成物)を調製し、該分散体を塗布・乾燥することにより形成され得る。
【0053】
<A−4−2.保護層>
上記保護層は、例えば、バインダーを含む。バインダーとしては、上記トップコート層の項で例示したバインダーが挙げられる。また、上記保護層は、バインダー以外の任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、充填剤、滑剤、架橋剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤等が挙げられる。充填剤、滑剤、および、架橋剤としては、例えば、上記トップコート層の項で例示したものが挙げられる。上記保護層は、感熱発色層の印字の視認性を確保するため、透明であることが好ましい。上記保護層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。上記保護層の厚みは、例えば、0.3μm〜3.0μmである。また、感熱発色層の上記保護層の設けられていない表面に、他の保護層を設けてもよい。
【0054】
上記保護層は任意の適切な方法により形成され得る。例えば、上記バインダーおよび必要に応じて任意の適切な添加剤を含む水性分散体(保護層形成用組成物)を調製し、該分散体を塗布・乾燥することにより、保護層を形成し得る。
【0055】
<A−4−3.断熱層>
上記断熱層は、例えば、バインダーおよび充填剤を含む。該バインダーおよび充填剤としては、上記トップコート層の項で例示したものが挙げられる。また、断熱層は、バインダーおよび充填剤以外に、任意の適切な他の添加剤を含んでいてもよい。該他の添加剤としては、架橋剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。上記断熱層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。上記断熱層の厚みは、例えば、1.0μm〜20μmである。
【0056】
上記断熱層は任意の適切な方法により形成され得る。例えば、バインダー、充填剤、および、必要に応じて他の添加剤を含む水性分散体(断熱層形成用組成物)を調製し、該分散体を塗布・乾燥することにより形成され得る。
【0057】
<A−4−4.バックコート層>
上記バックコート層は、例えば、バインダーおよび充填剤を含む。該バインダーおよび充填剤としては、上記トップコート層の項で例示したものが挙げられる。また、上記バックコート層は、より平滑性に優れた感熱紙を提供可能であることから、塩化ビニリデン樹脂、シリコン変性ポリビニルアルコール樹脂等のポリビニルアルコール系樹脂、澱粉、SBR系ラテックス、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂を用いて形成してもよい。上記バックコート層は、任意の適切な他の添加剤を含んでいてもよい。該他の添加剤としては、架橋剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。上記バックコート層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。上記バックコート層の厚みは、例えば、0.3μm〜5.0μmである。
【0058】
上記バックコート層は任意の適切な方法により形成され得る。例えば、バインダーまたは上記樹脂、添加剤、および、必要に応じて他の添加剤を含む水性分散体(断熱層形成用組成物)を調製し、該分散体を塗布・乾燥することにより形成され得る。
【0059】
<A−5.感熱紙の製造方法>
本発明の感熱紙は、任意の適切な方法により、製造され得る。例えば、以下の方法により得られる。まず、基材層にトップコート層以外の層を形成する組成物を順次、塗布・乾燥して積層体を得る。次いで、該積層体の各層が形成された表面(例えば、感熱発色層)にトップコート層を形成する組成物を塗布し、該トップコート層を形成する組成物が湿潤状態である間に、平滑な表面を有する任意の適切な支持体を密着させて、トップコート層を乾燥(硬化)させる。次いで、トップコート層に密着させた支持体を剥離することにより、本発明の感熱紙が得られる。
【0060】
上記各層を形成する組成物の塗布工程は、任意の適切な方法により行うことができる。例えば、バーコーター、ブレードコーター等を用いて各層を形成する組成物を塗布することにより行うことができる。
【0061】
また、感熱紙を製造する他の方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、上記平滑な表面を有する任意の適切な支持体にトップコート層を形成する組成物を塗布・乾燥してトップコート層を形成した後、感熱発色層および任意の他の層を形成する組成物または材料を塗布・乾燥して積層体を形成することにより、本発明の感熱紙が得られる。得られた積層体と基材層とを任意の適切な粘着剤層を介して積層した後、上記支持体を剥離することにより、本発明の感熱紙が得られる。
【0062】
具体的な感熱紙の製造方法については、例えば、特開2004−58440号公報および特開2004−308034号公報に記載の方法が挙げられる。また、市販の感熱紙の最外層(サーマルヘッドと接する面)に、上記トップコート層を形成する組成物を塗布し、乾燥することにより、本発明の感熱紙を得てもよい。
【0063】
本発明の感熱紙は、部分グレーズタイプのサーマルヘッドを用いて印字した場合であっても、印字縮みの発生を防止し得る。そのため、より細かな印字をすることが要求される用途に好適に用いることができる。また、本発明の感熱紙は、従来の光沢感熱紙と同程度の光沢性を有する。そのため、光沢感熱紙が好んで使用される用途に好適に用いることができる。例えば、後述するようにラベルとしての使用や、チケット、伝票等に好適に用いることができる。
【0064】
<B.ラベル>
本発明のラベルは、上記感熱紙を含む。本発明のラベルに用いられる感熱紙は、上記トップコート層を有するため、部分グレーズタイプのサーマルヘッドを用いて印字した場合であっても、印字縮みを防止し得る。さらに、上記トップコート層を平滑な表面とすることにより、従来の光沢感熱紙と同程度の光沢性を有している。そのため、光沢感熱紙が好まれる、スーパーやコンビニ等の食品表示用ラベルまたは値札用ラベルに特に好適に用いることができる。これらの用途においては、特に部分グレーズタイプのサーマルヘッドによる、より細かな情報の印字が求められており、本発明のラベルはこれらの要望を満たし得る。
【0065】
本発明のラベルは、1つの実施形態においては、粘着剤層を含む。該粘着剤層としては、任意の適切な粘着剤を含む。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等が挙げられる。上記粘着剤層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。上記粘着剤層の厚みは、通常、7μm〜60μm、好ましくは10μm〜35μmである。また、本実施形態のラベルは使用までの間、粘着剤層を保護するため、通常、セパレータが貼り合せられる。該セパレータとしては、任意の適切なセパレータを用いることができる。
【0066】
本実施形態のラベルは、任意の適切な方法により製造され得る。例えば、上記感熱紙の基材層の感熱発色層等の層が備えられていない面に、任意の適切な粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、該粘着剤層と任意の適切なセパレータを貼り合せることにより、製造され得る。
【0067】
上記の通り、本発明のラベルは部分グレーズタイプのサーマルヘッドを用いて印字した場合であっても、印字縮みの発生を防止し得る。そのため、より細かな印字をすることが要求される用途に好適に用いることができる。さらに、本発明のラベルは従来の光沢感熱紙と同程度の光沢性を有する。そのため、光沢性感熱紙が好んで使用される様々な用途に特に好適に適用され得る。例えば、本発明のラベルは、コンビニやスーパー等での食品表示用ラベルや、値札用ラベル等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0069】
[実施例1]
基材層として上質紙を用いた。該上質紙の一方の面に、感熱記録層形成用組成物を塗布・乾燥し、感熱記録層を形成した。次いで、表1に示す配合比(固形分重量基準)で各材料を均一に分散させ、トップコート層形成用組成物を調製した。該トップコート層形成用組成物を上記感熱記録層上に塗布し、塗布したトップコート層形成用組成物が硬化する前に、塗布したトップコート層形成用組成物とフィルムとを貼り合せた。トップコート層形成用組成物が乾燥し、トップコート層が形成された後、フィルムを剥離し、感熱紙を得た。
【0070】
[実施例2〜6]
トップコート層形成用組成物の組成をそれぞれ表1に記載の割合に変更した以外は実施例1と同様にして、感熱紙を得た。
【0071】
【表1】
【0072】
(比較例1および2)
トップコート層形成用組成物の組成を表1に記載の比率に変更した以外は実施例1と同様にして、感熱紙を得た。
【0073】
[評価]
実施例および比較例で得られた各感熱紙について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)光沢度
得られた感熱紙のトップコート層側表面について、光沢度計(日本電飾工業株式会社製、商品名:PG−1M)を用いて、JIS Z 8741に準じて、光沢度(測定反射角:60°、20°)を測定した。60°における光沢度が40以上、20°における光沢度が10以上であれば、光沢感熱紙が使用される用途にも好適に用いることができる。
(2)印字縮み
得られた感熱紙に部分グレーズタイプのサーマルヘッドを備えたプリンター(株式会社サトー製、商品名:レスプリR412v)用いて印字を行った(印字速度:50mm/sec、印字濃度:5)。印字した感熱紙を目視で確認し、印字縮みが全く発生していないものを◎、わずかに印字縮みが生じているが印字の視認性に問題がないものを○、印字縮みが発生し、印刷面の視認が困難であるものを×とした。
【0074】
【表2】
【0075】
表2からも明らかな通り、バインダーとしてシリコーンアクリル樹脂を含むトップコート層を有する実施例1〜6の感熱紙は部分グレーズタイプのサーマルヘッドを有するプリンターを用いて印字した場合であっても、印字縮みが防止され、印字面の視認性が確保された。特に、実施例2〜6の感熱紙においては、印字縮みが全く発生しなかった。また、実施例1〜6の感熱紙は、高い光沢性を有しており、光沢感熱紙としても十分に適用可能であった。
【0076】
一方、シリコーンアクリル樹脂を含まないトップコート層を有する比較例1および2の感熱紙は、光沢性は高いものの、印字縮みが発生し、部分グレーズタイプのサーマルヘッドを有するプリンターによる印字には適していなかった。