特許第6044987号(P6044987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044987
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】スピニング加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/16 20060101AFI20161206BHJP
   B21D 22/14 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B21D22/16 B
   B21D22/16 G
   B21D22/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-8312(P2013-8312)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-138946(P2014-138946A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(72)【発明者】
【氏名】木村 真也
(72)【発明者】
【氏名】村田 重雄
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−105041(JP,A)
【文献】 特開2005−305482(JP,A)
【文献】 特開2002−038936(JP,A)
【文献】 特開2009−039723(JP,A)
【文献】 特開2000−033443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/14
B21D 22/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動軸と、該回転駆動軸の先端部に設けられて、回転駆動軸と共に回転する回転体と、該回転体に設けられた複数の工具支持部に沿って回転体の径方向に移動可能に支持された第1の加工具及び第2の加工具と、該第1の加工具及び第2の加工具の位置を制御する加工具の位置制御機構とからなるスピニング加工装置において、前記加工具の位置制御機構が、回転駆動軸の外周に回転駆動軸の軸方向に移動可能に設けられて、回転駆動軸と共に回転する移動体と、該移動体の回転駆動軸の軸方向の位置を制御する移動体の位置制御機構と、移動体と第1の加工具及び第2の加工具とを、移動体に設けたピンと、第1の加工具及び第2の加工具に設けたピンとを介して、それぞれ接続する第1のリンク片及び第2のリンク片を備えたリンク機構とからなり、第1のリンク片及び第2のリンク片が回転駆動軸の中心軸を含む面内で揺動するようにしてなることを特徴とするスピニング加工装置。
【請求項2】
前記リンク機構の第1のリンク片及び第2のリンク片を、移動体の移動によって第1の加工具及び第2の加工具を互いに逆方向に移動するように設けてなることを特徴とする請求項1記載のスピニング加工装置。
【請求項3】
前記リンク機構の第1のリンク片及び第2のリンク片に、移動体の移動によって第1の加工具及び第2の加工具が移動しない静止域を設けてなることを特徴とする請求項1又は2記載のスピニング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニング加工装置に関し、特に、回転不能に支持した被加工部材に対し、ローラを公転駆動してスピニング加工を行うスピニング加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主に管素材の端部に対してスピニング加工を行って、例えば、テーパ状の管端部を形成するスピニング加工装置として、種々の形式のものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
このうち、特許文献1に記載のものは、被加工部材を回転不能に支持した状態で絞り工具を被加工部材の回りに公転駆動してスピニング加工を行うようにしている。
この主軸装置は、2重構造の主軸にカム板と工具取付台(面板)を設け、主軸後方に直列に装着した2組の遊星歯車機構を駆動し、回転中の主軸の内外管の間に速度差を生起させてカム板と工具取付台との間に相対回動を与え、主軸回りを公転する絞り工具を、径方向に摺動させてスピニング加工を行うように構成されている。
【0003】
また、特許文献2〜3に記載のものは、傾斜軸及び偏心軸を適宜組み合わせ、被加工部材回りに加工具であるローラを公転駆動してスピニング加工を行うようにしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の主軸装置のように、主軸回りを公転する加工具によってスピニング加工を行う装置においては、加工具を固定して被加工部材を回転させるスピニング加工装置とは異なり、例えば、絞り工具及び切断を行う刃具といった複数の種類の加工具を並設して加工することが困難であるため、スピニング加工終了後に、別工程で別の設備を用いて加工端部の切断を行う必要があった。
このようなスピニング加工後の切断工程は、特許文献2〜3に記載されているような傾斜軸や偏心軸を含むスピニング加工を行った後には、管端部の仕上げ加工として必須の工程となる。
また、主軸回りを公転する加工具によってスピニング加工を行う装置において、例えば、2種類のローラを用いて連続してスピニング加工を行い得るようにすることが要請されているが、特許文献1〜3に記載のものでは実現できなかった。
【0005】
ところで、本件出願人らは、先に、回転不能に支持した被加工部材に対し、加工具を公転駆動してスピニング加工を行うスピニング加工装置において、スピニング加工を適切に行うとともに、スピニング加工に連続して切断等の他の加工を行い得るスピニング加工装置を提案した(特許文献4参照。)。
このスピニング加工装置は、内管及び外管の二重管からなる主軸と、前記外管の先端部に設け前記外管の軸を中心に前記外管と共に回転する第1の回転体と、該第1の回転体と平行に前記内管の先端部に設け前記内管の軸を中心に前記内管と共に回転する第2の回転体であって、前記内管の軸回りに第1の案内路及び第2の案内路を形成した第2の回転体と、該第2の回転体の前記第1の案内路及び第2の案内路に沿って夫々移動可能に、前記第1の回転体に支持する第1の加工具及び第2の加工具と、前記内管及び前記外管を同方向に回転駆動し、かつ、必要に応じて前記内管と前記外管との間に回転差が生起されるように前記内管及び前記外管を相対的に回転駆動する駆動手段とを備え、前記第2の回転体が一方向に回転するとき前記第1の加工具と前記第2の加工具が相対的に逆方向に移動するように前記第1の案内路及び第2の案内路を形成し、回転不能に支持した被加工部材に対し、前記第1の加工具及び第2の加工具を公転駆動しながら、前記第1の加工具を前記第1の案内路に沿って径方向に駆動するとともに、前記第2の加工具を前記第2の案内路に沿って径方向に駆動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−167956号公報
【特許文献2】特開平11−147138号
【特許文献3】特開平11−151535号公報
【特許文献4】特開2001−105041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献4に記載のスピニング加工装置は、上記の所期の目的を達成できるものである反面、第1及び第2の案内路を形成した第2の回転体等の複雑な構造の部材を用い、内管及び外管の複雑な差速制御を必要とし、さらに、これらの部材には汎用性がないため、例えば、稼働状況の異なる2種類の加工具の組み合わせを変更した場合には、第2の回転体も併せて交換しなければならず、手数とコストを要するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来のスピニング加工装置の有する問題点に鑑み、回転不能に支持した被加工部材に対し、加工具を公転駆動してスピニング加工を行うスピニング加工装置において、スピニング加工を適切に行うとともに、スピニング加工に連続して切断等の他の加工を行い得るようにするという特許文献4に記載のスピニング加工装置の特性を享有しながら、簡易な機構を用い、制御が容易で、稼働状況の異なる2種類の加工具の組み合わせの変更等に容易に対応できるスピニング加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のスピニング加工装置は、回転駆動軸と、該回転駆動軸の先端部に設けられて、回転駆動軸と共に回転する回転体と、該回転体に設けられた複数の工具支持部に沿って回転体の径方向に移動可能に支持された第1の加工具及び第2の加工具と、該第1の加工具及び第2の加工具の位置を制御する加工具の位置制御機構とからなるスピニング加工装置において、前記加工具の位置制御機構が、回転駆動軸の外周に回転駆動軸の軸方向に移動可能に設けられて、回転駆動軸と共に回転する移動体と、該移動体の回転駆動軸の軸方向の位置を制御する移動体の位置制御機構と、移動体と第1の加工具及び第2の加工具とを、移動体に設けたピンと、第1の加工具及び第2の加工具に設けたピンとを介して、それぞれ接続する第1のリンク片及び第2のリンク片を備えたリンク機構とからなり、第1のリンク片及び第2のリンク片が回転駆動軸の中心軸を含む面内で揺動するようにしてなることを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記リンク機構の第1のリンク片及び第2のリンク片を、移動体の移動によって第1の加工具及び第2の加工具を互いに逆方向に移動するように設けるようにすることができる。
【0011】
また、前記リンク機構の第1のリンク片及び第2のリンク片に、移動体の移動によって第1の加工具及び第2の加工具が移動しない静止域を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスピニング加工装置によれば、回転駆動軸と共に回転する回転体に設けられた複数の工具支持部に沿って回転体の径方向に移動可能に支持された第1の加工具及び第2の加工具の位置を加工具の位置制御機構によって制御するようにすることにより、スピニング加工を適切に行うとともに、スピニング加工に連続して切断等の他の加工を行うことができる。
そして、加工具の位置制御機構を、回転駆動軸の外周に回転駆動軸の軸方向に移動可能に設けられて、回転駆動軸と共に回転する移動体と、該移動体の回転駆動軸の軸方向の位置を制御する移動体の位置制御機構と、移動体と第1の加工具及び第2の加工具とをそれぞれ接続する第1のリンク片及び第2のリンク片を備えたリンク機構とから構成することにより、リンク機構という簡易な機構を用い、制御が容易で、稼働状況の異なる2種類の加工具の組み合わせの変更等にも容易に対応できるスピニング加工装置を提供することができる。
【0013】
また、前記リンク機構の第1のリンク片及び第2のリンク片を、移動体の移動によって第1の加工具及び第2の加工具を互いに逆方向に移動するように設けるようにすることにより、第1の加工具及び第2の加工具が干渉することなく、スピニング加工に連続して切断等の他の加工を行うことができる。
【0014】
また、前記リンク機構の第1のリンク片及び第2のリンク片に、移動体の移動によって第1の加工具及び第2の加工具が移動しない静止域を設けることにより、回転駆動軸の軸心から第1の加工具及び第2の加工具の待避位置までの距離を必要最小限に設定することができ、第1の加工具及び第2の加工具の遠心力による回転駆動軸のブレを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のスピニング加工装置の一実施例を示す断面図である。
図2】同左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のスピニング加工装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図2に、本発明のスピニング加工装置の一実施例を示す。
このスピニング加工装置は、モータ11等からなる駆動機構によって回転駆動される回転駆動軸1と、回転駆動軸1の先端部に設けられて、回転駆動軸1と共に回転する回転体2と、回転体2に設けられた複数(本実施例においては、2個ずつの合計4個)の工具支持部3a、3bに沿って回転体2の径方向に移動可能に支持された第1の加工具4a及び第2の加工具4bと、第1の加工具4a及び第2の加工具4bの位置を制御する加工具の位置制御機構5とから構成するようにしている。
そして、加工具の位置制御機構5は、回転駆動軸1の外周に回転駆動軸1の軸方向に移動可能に設けられて、回転駆動軸1と共に回転する移動体51と、移動体51の回転駆動軸1の軸方向の位置を制御する移動体の位置制御機構52と、移動体51と第1の加工具4a及び第2の加工具4bとをそれぞれ接続する第1のリンク片53a及び第2のリンク片53bを備えたリンク機構53とからなる。
【0018】
この場合において、回転駆動軸1は、中空軸で構成し、その内部に中空軸で構成した第1のシャフト6を挿通し、さらに、その内部に中実軸で構成した第2のシャフト7を挿通するようにしている。
第1のシャフト6は、基端側をシリンダ機構61に接続し、回転駆動軸1と独立して、軸方向に移動可能に設けられるとともに、先端側にマンドレル62を取り付けるようにしている。
また、第2のシャフト7は、基端側をシリンダ機構71に接続し、回転駆動軸1及び第1のシャフト6と独立して、軸方向に移動可能に設けられるとともに、先端側がマンドレル62を貫通させることによって、加工したワークをマンドレル62から離脱できるようにしている。
【0019】
移動体の位置制御機構52は、移動体51に軸受を介して回転自在に、かつ、回転駆動軸1の軸方向に不動に配設された操作体52aと、操作体52aを回転駆動軸1と平行な方向に駆動するボールねじ機構52b及びサーボモータ52c等からなる駆動機構とからなる。
【0020】
リンク機構53の第1のリンク片53a及び第2のリンク片53bは、移動体51に設けたピン51a、51bと、第1の加工具4a及び第2の加工具4bに設けたピン41a、41bとを介して、移動体51と第1の加工具4a及び第2の加工具4bとをそれぞれ接続するように構成されている。
【0021】
そして、本実施例において、第1のリンク片53a及び第2のリンク片53bは、移動体51の移動によって第1の加工具4a及び第2の加工具4bを互いに逆方向に移動するように設けるようにしている。
これにより、第1の加工具4a及び第2の加工具4bが干渉することなく、例えば、図1の仮想線で示すスピニングロール(絞り工具)として構成した第1の加工具4aによるスピニング加工(このとき、第2の加工具4bは、図1の実線で示す径方向の外周側の待機位置に移動されている。)に連続して、図1の仮想線で示す切断を行う刃具として構成した第2の加工具4bによる切断加工(このとき、第1の加工具4aは、図1の実線で示す径方向の外周側の待機位置に移動されている。)を行うことができる。
【0022】
また、リンク機構53の第1のリンク片53a及び第2のリンク片53bに、移動体51の移動によって第1の加工具4a及び第2の加工具4bが移動しない静止域(「遊び」部分。本実施例においては、移動体51に設けたピン51a、51bが挿通される長孔54a、54b)を設けるようにしている。
これにより、回転駆動軸1の軸心から第1の加工具4a及び第2の加工具4bの図1の実線で示す径方向の外周側の待避位置までの距離を必要最小限に設定することができ、第1の加工具4a及び第2の加工具4bの遠心力による回転駆動軸1のブレを小さくすることができる。
【0023】
本実施例のスピニング加工装置は、回転駆動軸1と共に回転する回転体2に設けられた複数の工具支持部3a、3bに沿って回転体2の径方向に移動可能に支持された第1の加工具4a及び第2の加工具4bの位置を加工具の位置制御機構5によって制御するようにすることにより、スピニング加工を適切に行うとともに、スピニング加工に連続して切断等の他の加工を行うことができる。
そして、加工具の位置制御機構5を、回転駆動軸1の外周に回転駆動軸1の軸方向に移動可能に設けられて、回転駆動軸1と共に回転する移動体51と、移動体51の回転駆動軸1の軸方向の位置を制御する移動体の位置制御機構52と、移動体51と第1の加工具4a及び第2の加工具4bとをそれぞれ接続する第1のリンク片53a及び第2のリンク片53bを備えたリンク機構53とから構成することにより、リンク機構53という簡易な機構を用い、制御が容易で、稼働状況の異なる2種類の加工具の組み合わせの変更等にも容易に対応できる。
【0024】
以上、本発明のスピニング加工装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のスピニング加工装置は、スピニング加工を適切に行うとともに、スピニング加工に連続して切断等の他の加工を行い得るようにするという特性を享有しながら、簡易な機構を用い、制御が容易で、稼働状況の異なる2種類の加工具の組み合わせの変更等に容易に対応できることから、各種スピニング加工の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 回転駆動軸
2 回転体
3a、3b 工具支持部
4a 第1の加工具
4b 第2の加工具
41a、41b ピン
5 加工具の位置制御機構
51 移動体
51a、51b ピン
52 移動体の位置制御機構
53 リンク機構
53a 第1のリンク片
53b 第2のリンク片
54a、54b 長孔
図1
図2