(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記感圧接着剤組成物は、アクリル系ポリマーを主体とし、該アクリル系ポリマーが水に分散している水性エマルジョン型の感圧接着剤組成物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0018】
本発明に係る方法を適用して製造される両面粘着シート(テープ状等の長尺状のものであり得る。)は、例えば、
図1または
図2に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。
【0019】
図1に示す両面粘着シート11は、基材としての不織布(不織布基材)1の両面に粘着剤層2A,2Bが設けられ、それらの粘着剤層2A,2Bが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー3A,3Bによってそれぞれ保護された構成を有している。ここで、粘着剤層2A,2Bのうち一方または両方は、不織布1に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させる直接法により形成された粘着剤層である。好ましくは、粘着剤層2A,2Bのうちいずれか一方(例えば粘着剤層2B)は直接法により形成された粘着剤層であり、残りの一方は転写法により形成された粘着剤層である。該転写法は、例えば、粘着剤組成物を剥離ライナー3Aに付与(典型的には塗布)して乾燥させることによりライナー3A上に粘着剤層2Aを予め形成し、そのライナー(転写用支持体)3A上に保持された粘着剤層2Aを不織布1に貼り合わせる(粘着剤層2Aを不織布1に転写する)態様で好ましく実施され得る。かかる転写法に使用された剥離ライナー3Aは、そのまま粘着剤層2Aを保護する用途に利用することができる。その後、不織布1の他面(粘着剤層2Aが設けられた面とは反対側の面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させる直接法によって粘着剤層2Bを形成し、その粘着剤層2Bに剥離ライナー3Bを積層することにより
図1に示す構成の粘着シート11が製造され得る。
【0020】
図2に示す両面粘着シート12は、不織布1の両面に粘着剤層2A,2Bが設けられ、それらの粘着剤層のうち一方の粘着剤層2Aが、両面が剥離面となっている剥離ライナー3Aにより保護された構成を有している。この種の粘着シート12は、該粘着シート12を巻回することにより他方の粘着剤層2Bを剥離ライナー3Aの裏面(背面)に当接させ、該他方の粘着剤層2Bもまた剥離ライナー3Aによって保護された構成とすることができる。ここで、粘着剤層2A,2Bのうち一方または両方は、不織布1に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させる直接法により形成された粘着剤層である。好ましくは、粘着剤層2A,2Bのうちいずれか一方(例えば粘着剤層2B)は直接法により形成された粘着剤層であり、残りの一方は転写法により形成された粘着剤層である。該転写法は、
図1に示す粘着シート11についての上記説明と同様に、剥離ライナー3A上に粘着剤層2Aを予め形成し、そのライナー3A上に保持された粘着剤層2Aを不織布1に貼り合わせる態様で好ましく実施され得る。かかる転写法に使用された剥離ライナー3Aは、そのまま粘着剤層2Aを保護する用途に利用することができる。その後、不織布1の他面に粘着剤組成物を付与して乾燥させる直接法により粘着剤層2Bを形成し、これを捲回して粘着剤層2Bを剥離ライナー3Aの裏面に当接させることにより、両粘着剤層2A,2Bが剥離ライナー3Aで保護された形態の両面粘着シート12(典型的にはテープ状)を製造することができる。
ここで、粘着剤層2Aのみならず粘着剤層2Bも転写法により形成する場合には、該粘着剤層2Bを不織布1に転写するための転写用支持体(剥離ライナー等)を使用することとなるが、この支持体は製品(粘着シート12)の構成要素としては利用されず、該製品の製造のためにのみ使用される部材である。これに対して、一方の粘着剤層2Bを直接法により形成する方法では、粘着剤層2Bを不織布1に転写するための余分な支持体を必要としない。したがって、本発明に係る両面粘着シート製造方法は、
図2に示す両面粘着シート12のように一方の粘着剤層2Aを保護する剥離ライナー3Aの裏面(背面)に他方の粘着剤層2Bが当接した構成の両面粘着シートの製造に特に好ましく適用されて、所望の効果(例えば、生産コストの低減、廃棄物量の低減、生産効率の向上、のうち少なくとも一つの効果)をよりよく発揮するものであり得る。
【0021】
なお、
図1および
図2では図解の便宜のため粘着剤層2A,2Bと不織布1との界面を直線で表しているが、実際には粘着剤層2A,2Bの下部(不織布側)はそれぞれ不織布1に含浸している。また、粘着剤層2A,2Bの組成は同一であってもよく異なってもよい。典型的には、粘着剤層2A,2Bの組成が同一である。これら粘着剤層2A,2Bの形成に使用する粘着剤組成物の組成もまた同一であってもよく異なってもよい。通常は、同一の粘着剤組成物を用いて粘着剤層2A,2Bを形成する態様を好ましく選択し得る。
【0022】
ここに開示される技術は、両面粘着シートの構成に用いられる不織布(基材)が特定の厚さ、嵩密度および透気性を有する不織布であることによって特徴付けられる。
すなわち、上記不織布の厚さは凡そ15μm〜70μm(好ましくは凡そ15μm〜35μm、例えば凡そ20μm〜30μm)の範囲にある。上記不織布の嵩密度は凡そ0.3〜0.6g/cm
3(例えば凡そ0.35〜0.55g/cm
3)の範囲にある。また上記不織布は、該不織布を8枚重ねて透気抵抗度(ガーレー)を測定した場合において、該透気抵抗度が凡そ0.7秒〜2秒(好ましくは0.8秒〜2秒)となる透気性を有する。上記透気抵抗度が凡そ1秒〜2秒であってもよい。
【0023】
上記「透気抵抗度(ガーレー)」は、JIS P 8117:1998に規定するガーレー試験機法に準じて、一定量の空気が試験片(ここでは、不織布を8枚重ねてなる試験片)を通り抜けるのに要した時間を、典型的には市販のガーレー試験機(好ましくはB型)を用いて測定し、計算することによって求められる。
【0024】
上記厚さ、嵩密度および透気抵抗度をいずれも満たす不織布によると、該不織布に水分散型粘着剤組成物を直接付与する方法(すなわち直接法)によって、表面状態の良好な(平滑性の高い)粘着剤層を、該不織布によく含浸した状態で形成することができる。かかる粘着剤層を有する両面粘着シートは、良好な粘着性能を示すものであり得る。例えば、粘着性(剥離強度)、凝集性、曲面接着性(エッジリフト)等の特性を高レベルでバランスよく実現する両面粘着シートであり得る。
【0025】
上記透気抵抗度の値が上記範囲よりも小さすぎる(一定量の空気が試験片を通り抜けるのに要する時間が短すぎる)不織布では、該不織布に付与された粘着剤組成物を乾燥させる際に気泡が発生しやすく、該気泡により粘着剤層の表面状態(平滑性)が損なわれやすい。このように表面状態の荒れた粘着剤層は粘着性能(接着強度等)が低めになりがちである。一方、上記透気抵抗度の値が上記範囲よりも大きすぎる不織布では、該不織布の内部に粘着剤組成物が浸透(含浸)しにくいことから、該不織布によく含浸させて粘着剤層を形成することが困難となりがちである。かかる含浸性の不足は粘着性能(特に曲面接着性)を低下させる要因となり得るので好ましくない。上記不織布の厚さおよび/または嵩密度が大きすぎる場合にも、該不織布に粘着剤組成物が浸透(含浸)しにくいこと等により該不織布の内部に比較的多くのガスが取り残された状態となりやすい。このため、該取り残されたガスが乾燥時に外部に抜け出そうとすることにより気泡が発生し、そのガスが抜けた跡が窪みとなって残ることにより粘着剤層の表面状態が損なわれやすい。また、嵩密度が小さすぎる不織布は強度(引張強さ)が低下傾向となることがある。
【0026】
ここに開示される技術における不織布としては、両面粘着シートの分野において周知ないし慣用の不織布またはその他の不織布から、上記厚さ、嵩密度および透気抵抗度(ガーレー)を満たすものを適宜選択して用いることができる。例えば、木材パルプ、綿、麻(例えばマニラ麻)等の天然繊維から構成される不織布;ポリエステル繊維、レーヨン、ビニロン、アセテート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等の化学繊維(合成繊維)から構成される不織布;材質の異なる二種以上の繊維を併用して構成された不織布;等のいずれも使用可能である。特に限定するものではないが、坪量が凡そ8〜16g/m
2(例えば凡そ13〜16g/m
2)の不織布を好ましく採用することができる。
【0027】
上記不織布は、各種の一般的な抄紙用添加剤を用いて形成されたものであり得る。かかる添加剤の例として、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、デンプン、PVA、ガラクトマンナン等の紙力剤(湿潤紙力剤を含む概念である。)が挙げられる。このような添加剤の種類および使用量によって、得られる不織布の透気抵抗度、嵩密度等を調節して上記範囲に適合させることができる。上記不織布は、また、ビスコース、PVA、ポリアクリルアミド等の樹脂(バインダ)が含浸された不織布であってもよい。かかるバインダの含浸(樹脂の種類および使用量)によっても不織布の透気抵抗度、嵩密度等を調節することができる。
【0028】
本発明にとり好ましい不織布として、木材パルプ(すなわち、木材を原料とするパルプ)を主構成繊維とする不織布が例示される。かかる繊維組成の不織布は、上述した好ましい厚さ、嵩密度および透気抵抗度を満足し、かつ適度な「コシ」(弾力性)を有するものであり得る。また、該繊維組成の不織布は、上述した好ましい厚さ、嵩密度および透気抵抗度を満足し、かつ引張強さの高いものであり得る。これらの理由により、木材パルプを主構成繊維とする不織布は両面粘着シートの構成要素として好適である。
上記木材パルプとしては、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプのいずれも使用可能である。不織布構成繊維に占める木材パルプの質量割合は、典型的には凡そ50質量%以上であり、好ましくは凡そ70質量%以上、より好ましくは凡そ85質量%以上である。ここに開示される発明の好ましい一態様では、上記不織布として、構成繊維が実質的に木材パルプからなる不織布を使用する。
【0029】
ここに開示される方法では、前記不織布の一面および他面のうち少なくとも一方の面に直接法を適用して粘着剤層を形成する。すなわち、粘着剤組成物を不織布に直接付与(典型的には塗布)し、その付与された組成物を乾燥させる。かかる直接法に使用する粘着剤組成物は、粘着成分として機能し得るアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の公知の各種ポリマーが水に分散した形態の水分散型(典型的にはエマルジョン型)粘着剤組成物を適宜選択することができる。該粘着剤組成物の固形分濃度は、例えば凡そ30〜70質量%であり得る。通常は、固形分濃度が凡そ40〜65質量%(例えば凡そ45〜55質量%)の粘着剤組成物が好ましく使用され得る。
【0030】
上記直接法に用いる粘着剤組成物(典型的には、水性エマルジョン型粘着剤組成物)は、常温(23℃)においてB型粘度計により20rpmの条件で測定される粘度が凡そ2〜20Pa・S(より好ましくは凡そ5〜15Pa・S)であることが好ましい。このような流動性(典型的には粘度)を有する粘着剤組成物によると、より表面状態のよい(平滑性の高い)粘着剤層が形成され得る。かかる流動性は、例えば、公知の流動性調整剤(増粘剤、レベリング剤等)を用いて調節することができる。
【0031】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。特に限定するものではないが、粘着剤組成物の塗布量(ここでは、不織布の片面側に設けられる粘着剤層当たりの塗布量をいう。)は、乾燥後において(すなわち固形分基準で)例えば凡そ20μm〜150μm(典型的には凡そ40μm〜100μm)の粘着剤層が形成される程度の量とすることができる。好ましい塗布量の下限は、使用する不織布の性状によっても異なり得る。通常は、不織布の片面当たり、該不織布の厚さに対して凡そ0.5倍〜10倍(好ましくは凡そ1倍〜5倍)の厚さの粘着剤層が形成される程度の塗布量とすることが適当である。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。被塗布物(ここでは不織布)の材質にもよるが、通常は例えば凡そ40℃〜120℃程度の乾燥温度を好ましく採用することができる。ここに開示される技術によると、例えば凡そ80℃以上(典型的には凡そ80℃〜120℃)の乾燥温度を採用しても、表面平滑性のよい(気泡跡の少ない)粘着剤層を形成することができる。かかる乾燥温度を採用し得ることは生産性向上の観点から好ましい。
【0032】
ここに開示される方法において、前記不織布の一面および他面のうち他方の面には、直接法を適用して粘着剤層を設けてもよく、直接法以外の方法、例えば転写法を適用して粘着剤層を設けてもよい。かかる転写法において、不織布に貼り合わされる(転写される)粘着剤層は、剥離性を有する支持体(剥離ライナー等)表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与(典型的には塗布)してて乾燥または硬化させることにより形成されたものであり得る。該粘着剤組成物としては、水分散型、溶剤型、光硬化型等の各種形態の粘着剤組成物を使用可能である。これらのうち水分散型(典型的には水性エマルジョン型)の粘着剤組成物を好ましく採用し得る。例えば、直接法に用いる水分散型粘着剤組成物の好適例として上述した組成および性状(固形分濃度、粘度、TI値等)を有する組成物を、転写法においても好適に用いることができる。該組成物の塗布条件(塗布量、塗布方法等)および乾燥条件等についても、直接法において粘着剤組成物を不織布に塗布して乾燥させる際と同様の条件を好ましく採用し得る。
【0033】
ここに開示される両面粘着シート製造方法の好ましい一態様につき、
図3に示す模式図を参照しつつ説明する。
図3に示す両面粘着シート製造装置20は、第一塗工部22および第二塗工部24と、これらの塗工部22,24を経由して剥離ライナー3Aを走行させる巻出ロール32および巻取ロール34と、第一塗工部22から第二塗工部24に向かう剥離ライナー3Aに基材としての不織布1を供給する基材ロール36とを備える。
巻出ロール32から送り出される剥離ライナー3Aは第一塗工部22に導入される。この第一塗工部22は、上流側から順に、剥離ライナー3Aに粘着剤組成物を塗布するコーター(例えばリバースロールコーター)222と、その塗布された組成物を乾燥させる乾燥機(例えば熱風乾燥機)224とを備える。かかる構成の第一塗工部22により、該塗工部22を通過する剥離ライナー3Aの表面(
図3では上面)に粘着剤層2Aを形成する(
図4に示す
図3のIV−IV線断面図参照)。
【0034】
次に、剥離ライナー3A上に形成された粘着剤層2Aに向けて基材ロール36から不織布1を送り出し、該不織布1の一面を圧着ロール38により粘着剤層2Aに貼り合わせる。このようにして不織布1の一面に粘着剤層2Aが設けられる(転写法)。
粘着剤層2Aおよび不織布1が積層された剥離ライナー3A(
図5に示す
図3のV−V線断面図参照)は、次いで第二塗工部24に導入される。この第二塗工部24は、上流側から順に、不織布1の他面(粘着剤層2Aに貼り合わされた面の背面、すなわち
図3では上面)に粘着剤組成物を塗布するコーター(例えばリバースロールコーター)242と、その塗布された組成物を乾燥させる乾燥機(例えば熱風乾燥機)244とを備える。かかる構成の第二塗工部24により、不織布1の他面に粘着剤層2Bを形成する(直接法)。
このようにして、転写法による粘着剤層2A(該粘着剤層の転写に用いられた剥離ライナー(転写用支持体)3Aによってそのまま保護されている。)および直接法による粘着剤層2Bが不織布1の一面および他面にそれぞれ設けられた両面粘着シート12(
図2に示す
図3のII−II線断面図を参照)が形成される。この両面粘着シート12は巻取ロール34に巻き取られる。
かかる態様によると、巻出ロール32から送り出された剥離ライナー3Aが巻取ロール34に巻き取られるまでの間に両面粘着シート12を製造することができる。このように、途中でいったん巻き取って再度巻き出す操作を必要とすることなく(すなわちワンパスで)両面粘着シート12を連続的に製造することができるので生産効率がよい。また、製造過程において粘着剤層2Aの転写用支持体として使用された剥離ライナー3Aは、そのまま製品(両面粘着シート12)の構成要素として利用され、且つ粘着剤層2Bは直接法により形成されるので、余分な(製造のためにのみ使用される)転写用支持体を必要としない。したがって生産コストおよび廃棄物量を低減することができる。
【0035】
ここに開示される技術において好ましく使用される粘着剤組成物として、アクリル系ポリマーを主体とし(すなわち、該粘着剤組成物に含まれる不揮発分(固形分)に占めるアクリル系ポリマーの質量割合が50質量%を超える割合であり)、該アクリル系ポリマーが水に分散した形態の水性エマルジョン型粘着剤組成物が例示される。
上記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、すなわちアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを主モノマー(主構成単量体)とするモノマー原料を重合(典型的にはエマルジョン重合)してなる重合体であり得る。該モノマー原料を構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数2〜20(より好ましくは4〜10)のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。該アルキルアルコールにおけるアルキル基の具体例としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基等が挙げられる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとしてブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが例示される。
【0036】
上記モノマー原料は、主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートに加えて、任意成分としてその他のモノマー(共重合成分)を含有することができる。当該「その他のモノマー」は、ここで使用するアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な種々のモノマーから選択される一種または二種以上であり得る。例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基およびアルコキシシリル基等からなる群から選択される一種または二種以上の官能基を有するエチレン性不飽和単量体(官能基含有モノマー)を使用することができる。なかでもアクリル酸および/またはメタクリル酸の使用が好ましい。上記官能基含有モノマーは、主モノマーたるアルキル(メタ)アクリレートとともにモノマー原料の構成成分として用いられて、該モノマー原料から得られるアクリル系ポリマーに架橋点を導入するのに役立ち得る。上記官能基含有モノマーの種類およびその含有割合(共重合割合)は、使用する架橋剤の種類およびその量、架橋反応の種類、所望する架橋の程度(架橋密度)等を考慮して適宜設定することができる。
【0037】
本発明の方法に使用する水分散型粘着剤組成物は、上記のようなモノマー原料をエマルジョン重合に付して得られたものであり得る。上記エマルジョン重合の態様は特に限定されず、従来公知の一般的な乳化重合と同様の態様により、例えば公知の各種モノマー供給方法、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)、使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜採用して行うことができる。例えば、モノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に重合容器に供給する一括仕込み方式、連続供給方式、分割供給方式等のいずれも採用可能である。モノマー原料の一部または全部をあらかじめ水と混合して乳化し、その乳化液を反応容器内に供給してもよい。
【0038】
重合温度としては、例えば20〜100℃(典型的には40〜80℃)程度の温度を採用することができる。重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が例示されるが、これらに限定されない。重合開始剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して、例えば0.005〜1質量部程度とすることができる。
乳化剤(界面活性剤)としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤;等を使用できる。かかる乳化剤は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して例えば凡そ0.2〜10質量部程度(好ましくは0.5〜5質量部程度)とすることができる。
【0039】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えば、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類から選択される一種または二種以上であり得る。なかでもドデカンチオールの使用が好ましい。連鎖移動剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して例えば凡そ0.001〜0.5質量部程度とすることができる。この使用量が凡そ0.02〜0.05質量部程度であってもよい。
特に限定するものではないが、かかるエマルジョン重合は、例えば、得られたアクリル系ポリマーを酢酸エチルで抽出して残った不溶分の質量割合(ゲル分率)が0質量%以上凡そ15質量%未満となるように実施され得る。また、該アクリル系ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)で抽出した可溶分の質量平均分子量(Mw)が、標準ポリスチレン基準で例えば凡そ50万〜100万程度となるように実施され得る。
【0040】
ここに開示される方法に使用される粘着剤組成物(好ましくはアクリル系水性エマルジョン型粘着剤組成物)には、必要に応じて一般的な架橋剤、例えばカルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、シランカップリング剤等から選択される架橋剤が配合されていてもよい。これらの架橋剤は単独でまたは二種以上を組み合わせて使用し得る。特に限定するものではないが、架橋剤の使用量は、当該組成物から形成された粘着剤(すなわち、上記架橋剤による架橋後の粘着剤)を酢酸エチルで抽出して残った不溶分の質量割合(ゲル分率)が凡そ15〜70質量%(例えば凡そ30〜55質量%)となる程度の量とすることができる。
【0041】
上記粘着剤組成物には粘着付与剤が配合されていてもよい。かかる粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂等の各種粘着付与剤樹脂から選択される一種または二種以上を用いることができる。粘着付与剤の配合割合は、不揮発分(固形分)換算として、ポリマー成分(例えば、アクリル系水性エマルジョン型粘着剤組成物ではアクリル系ポリマー)100質量部に対して例えば凡そ50質量部以下とすることができる。通常は、上記配合割合を凡そ30質量部以下とすることが適当である。粘着付与剤含有量の下限は特に限定されないが、通常はポリマー成分100質量部に対して凡そ1質量部以上とすることにより良好な結果が得られる。
【0042】
高温環境下における凝集力を高める等の観点から、例えば軟化点が凡そ140℃以上(典型的には140〜180℃)の粘着付与剤を好ましく採用し得る。かかる軟化点を有する粘着付与剤の市販品としては、荒川化学工業株式会社製品の商品名「スーパーエステルE−865」、「スーパーエステルE−865NT」、「スーパーエステルE−650」、「スーパーエステルE−786−60」、「タマノルE−100」、「タマノルE−200」、「タマノル803L」、「ペンセルD−160」、「ペンセルKK」;ヤスハラケミカル株式会社製品の商品名「YSポリスターS」、「YSポリスターT」、「マイティエースG」;等が例示されるが、これらに限定されない。このような粘着付与剤は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。かかる粘着付与剤が水に分散された水分散液(粘着付与剤エマルジョン)の形態であって、かつ、有機溶剤を実質的に含有しない粘着付与剤エマルジョンの使用が特に好ましい。
【0043】
上記粘着剤組成物は、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。該組成物に含有され得る他の任意成分としては、粘度調整剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料、染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、水性粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。また、該粘着剤組成物には、不織布基材への粘着剤の含浸性を高めるために、公知の濡れ向上剤が添加されていてもよい。かかる濡れ向上剤の添加は、不織布基材の少なくとも一方の面に直接法を適用して粘着剤層を形成する場合に特に有効である。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0044】
ここに開示される方法を適用して製造された両面粘着シートは、直接法により形成された粘着剤層を備え、例えば製造後3日間50℃で保存した場合において上記粘着剤層の表面(粘着面)に気泡に起因するマクロな窪みが実質的に存在しない両面粘着シートであり得る。上記気泡に起因するマクロな窪みの典型例は、上述のような気泡跡である(典型的には略円形の開口形状を呈し、大まかにいって球面状の窪みであることが多い。)。ここに開示される両面粘着シート(ここに開示される方法を適用して製造された両面粘着シートであり得る。)は、例えば、直接法により形成された粘着面であって上記保存後の粘着剤層の表面を100倍の走査型電子顕微鏡で観察した場合における上記窪みの数が4個/mm
2未満の粘着面を備える両面粘着シートであり得る。このようにマクロな窪みの少ない(すなわち平滑性の高い)粘着面を有する両面粘着シートは、より良好な粘着性能を示すものであり得る。また、粘着面の表面形状が平滑であるので外観品質(例えば、貼付時等に粘着面が露出された際の見栄え)にも優れる。
【0045】
ここに開示される両面粘着シートの好適な一態様では、不織布の一面および他面に設けられた粘着剤層が該不織布によく含浸している。例えば、空隙面積が凡そ750μm
2/400μm以下(より好ましくは凡そ500μm
2/400μm以下)となる程度に粘着剤層が不織布によく含浸した両面粘着シートが好ましい。かかる両面粘着シートは、より良好な粘着性能(例えば、エッジリフト試験等により評価される曲面接着性)を示すものであり得る。ここに開示される方法は、このように粘着剤層が不織布によく含浸した両面粘着シートを製造する方法として好適である。
ここで「空隙面積」とは、両面粘着シートを構成する不織布基材の流れ方向(MD方向、典型的にはシートの長手方向)と直交する切断線に沿って該両面粘着シートを厚み方向に切断した断面(縦断面)において、該断面の長さ(典型的には、不織布基材の幅方向の長さに相当する。)400μm当たりに観察される空隙の面積(該断面への開口面積)をいう。この空隙面積は、例えば、上記断面を倍率100〜1000倍程度(例えば300倍)の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られた像(SEM像)を解析することにより把握することができる。SEM観察用の試料の調整(作製)は常法により行えばよく、例えば後述する実施例に記載の試料調整方法を好ましく採用することができる。SEM観察条件(測定条件)および得られたSEM像の解析方法についても同様である。不織布基材の流れ方向に切断位置を異ならせて少なくとも3箇所(より好ましくは5箇所以上、例えば5〜10箇所)の断面について空隙面積を求め、それらの平均値を採用することが好ましい。
【0046】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0047】
以下で使用した不織布の透気性は、次のようにして測定される透気抵抗度(ガーレー)により評価した。すなわち、該不織布を8枚重ね合わせて、サイズが凡そ50mm×50mmの正方形状の試験片を用意した。この試験片を市販のB型ガーレー試験機(試験面積645mm
2)にセットし、JIS P 8117:1998に規定するガーレー試験機法に準拠して、上記試験片を100mLの空気が透過するのに要する時間を測定した。各不織布につき5つの試験片を用いて上記測定を行い、それらの平均値を上記試験片の透気抵抗度[秒]とした。
【0048】
<例1>
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(重合開始剤)(和光純薬工業株式会社から入手可能な商品名「VA−057」を使用した。)0.1部およびイオン交換水35部を投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。これを60℃に保ち、ここにブチルアクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート70部、アクリル酸4部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社から入手可能な商品名「KBM−503」を使用した。)0.02部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.033部およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2部をイオン交換水40部に添加して乳化したもの(すなわち、モノマー原料のエマルジョン)を3時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマー原料エマルジョンの滴下終了後、さらに3時間同温度に保持して熟成させた。これに10%アンモニウム水を添加して液性をpH7.5に調整した。このようにして、アクリル系ポリマーの水分散液(エマルジョン)を得た。
該アクリル系ポリマーをTHFで抽出した可溶分の質量平均分子量(Mw)は86.8×10
4(標準ポリスチレン基準)であった。また、該アクリル系ポリマーの酢酸エチル不溶分の質量割合は40.8%であった。
【0049】
上記エマルジョンに対し、該エマルジョンに含まれるアクリル系ポリマー100部当たり20部(固形分基準)の割合で粘着付与剤のエマルジョン(荒川化学工業株式会社から入手可能な商品名「スーパーエステルE−865NT」、軟化点160℃の重合ロジン樹脂の水分散液)を添加して、例1に係る粘着剤組成物を得た。なお、この粘着剤組成物の粘度は一般的な増粘剤の添加により10Pa・sに調整した。
【0050】
両面粘着シートの基材として使用する不織布を用意した。本例では、該基材として、厚さ28μm、嵩密度0.50g/cm
3、坪量14g/m
2であって構成繊維が実質的に木材パルプからなる不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した。該不織布につき上記方法により測定された透気抵抗度(以下、単に「該不織布の透気抵抗度」ともいう。)は1.47秒であった。
上記粘着剤組成物を用いて、上記不織布(基材)の一面には転写法により、他面には直接法により粘着剤層を設けた。
すなわち、上質紙をシリコーン系剥離剤で処理してなる剥離ライナーに上記粘着剤組成物を塗布した。これを100℃で2分間乾燥して該ライナー上に厚さ約60μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層付き剥離ライナーを上記不織布の一面に貼り合わせることにより、該一面に転写法による粘着剤層を設けた。上記剥離ライナー(転写用支持体)は、上記貼り合わせの後、引き続き粘着剤層の保護に使用した。
次いで、乾燥膜厚が60μmとなる量の上記粘着剤組成物を上記不織布の他面に塗布し、100℃で3分間乾燥して、該他面に直接法による粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、上記転写用支持体とは別の剥離ライナーを積層した。このようにして例1に係る両面粘着シートを得た。
【0051】
<例2>
本例では、両面粘着シートの基材として、厚さ30μm、嵩密度0.37g/cm
3、坪量11g/m
2であって構成繊維が実質的に木材パルプからなる不織布(大福製紙株式会社から入手可能)を使用した。該不織布の透気抵抗度は0.80秒であった。その他の点については例1と同様にして両面粘着シートを得た。
【0052】
<例3>
基材として、厚さ20μm、嵩密度0.49g/cm
3、坪量9.8g/m
2のポリエステル系不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は0.82秒であった。
【0053】
<例4>
基材として、厚さ28μm、嵩密度0.50g/cm
3、坪量14g/m
2であって構成繊維が実質的に木材パルプからなる不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は3.56秒であった。
【0054】
<例5>
基材として、厚さ39μm、嵩密度0.32g/cm
3、坪量12.4g/m
2の麻系不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は0.15秒であった。
【0055】
<例6>
基材として、厚さ33μm、嵩密度0.43g/cm
3、坪量14.2g/m
2であって構成繊維が実質的に木材パルプからなる不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は0.60秒であった。
【0056】
<例7>
基材として、厚さ42μm、嵩密度0.33g/cm
3、坪量14g/m
2であって構成繊維が実質的に木材パルプからなる不織布(大福製紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は0.30秒であった。
【0057】
<例8>
基材として、厚さ60μm、嵩密度0.25g/cm
3、坪量14.9g/m
2のポリエステル系不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は0.11秒であった。
【0058】
<例9>
基材として、厚さ36μm、嵩密度0.39g/cm
3、坪量14.1g/m
2の、木材パルプ、レーヨンおよびビニロンを構成繊維とする不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は0.42秒であった。
【0059】
<例10>
基材として、厚さ32μm、嵩密度0.33g/cm
3、坪量10.6g/m
2の、木材パルプ、レーヨンおよびビニロンを構成繊維とする不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は0.15秒であった。
【0060】
<例11>
の基材として、厚さ30μm、嵩密度0.31g/cm
3、坪量9.4g/m
2の、木材パルプ、麻、ポリエステルおよびビニロンを構成繊維とする不織布(大昭和日本板紙株式会社から入手可能)を使用した点以外は例1と同様にして両面粘着シートを得た。該不織布の透気抵抗度は0.21秒であった。
【0061】
例1〜例11により得られた両面粘着シートを作製から3日間50℃で保存した。その後、直接法により形成された粘着剤層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により100倍で観察し、その表面状態を以下の三段階で評価した。
○:気泡に起因する窪みの数が4個/mm
2未満である。
△:上記窪みの数が4〜9個/mm
2である。
×:上記窪みの数が10個/mm
2以上である。
【0062】
また、例1〜例5により得られた両面粘着シートを作製から3日間50℃の環境下に保存した後、該シートを構成する不織布基材の流れ方向と直交する切断線に沿って厚み方向に切断し、4%オスミウム(Os)水溶液を用いて50℃で5時間蒸気染色した。その後、ミクロトームにより観察用試料を切り出して導電性粘着テープで試料台に固定し、Pt−Pdスパッタリングを20秒間施した。このようにして調整した試料の断面を以下の条件で観察した。
装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製品、電界放出型走査電子顕微鏡、型番「S−4800」;
測定条件:加速電圧3kV(倍率300倍)にて二次電子像を観察。
このようにして得られたSEM像を市販の画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製品、商品名「A像くん」を使用した。)で解析することにより、上記試料断面の長さ400μm当たりに観察される空隙の面積[μm
2/400μm]を求めた。なお、上記画像解析ソフトにおける解析モードは「粒子解析」とした。解析条件の設定にあたっては、個々のSEM像を見ながら、実際に空隙となっている部分が適切にピックアップされるように留意して、空隙か空隙でないかの閾値を手動で設定した。また、測定の目的たる空隙(すなわち、不織布への含浸の程度を示す空隙)とは明らかに異なる部分(例えば観察用試料の調整時に生じた粘着剤層のひび割れ等)は空隙面積に算入されないようにした。不織布基材の流れ方向に切断位置を異ならせた3箇所の断面について上記空隙面積を求め(すなわちn=3)、それらの平均値を当該両面粘着シートの空隙面積とした。
なお、3日間50℃保存後の上記粘着シートから採取した粘着剤サンプルの酢酸エチル不溶分の質量割合は41.3%であった。
【0063】
以上の結果を、使用した不織布の構成および性状(厚さ、嵩密度、透気抵抗度、引張強さ)とともに表1および表2に示した。
なお、各不織布の引張強さは以下のようにして測定した。すなわち、不織布基材の流れ方向が長手方向と一致するようにして該不織布を幅15mmの帯状にカットしたものを試験片とし、該試験片を引張試験機によりチャック間距離100mm、引張速度300mm/分の条件で引っ張ったときに観測された最大応力を、該不織布の縦方向(流れ方向)の引張強度[N/15mm]とした。また、不織布の幅方向が長手方向と一致するようにして該不織布基材を幅15mmの帯状にカットした試験片について同様の条件で観測された最大応力を、該不織布の横方向の引張強度[N/15mm]とした。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1,2に示されるように、厚さが15μm〜70μm(より具体的には20μm〜30μm)であり、嵩密度が0.3〜0.6g/cm
3(より具体的には0.35〜0.5g/cm
3)であり、かつ透気抵抗度(ガーレー)が0.7秒〜2秒(より具体的には0.8秒〜1.5秒)である不織布を用いて製造された例1〜3に係る両面粘着シートでは、いずれも該不織布に塗布された粘着剤組成物の乾燥時における発泡が少なく、平滑性のよい粘着面(直接法により形成された粘着剤層の表面)が形成されていた。また、これら例1〜3に係る両面粘着シートでは、いずれも不織布(基材)によく含浸して(すなわち空隙面積が500μm
2/400μm以下と少ない状態で)粘着剤層が設けられていた。特に、構成繊維が木材パルプからなる不織布を用いた例1の両面粘着シートは、適度なコシを有し、強度(引張強さ)にも優れていた。
これに対して、構成繊維、厚さおよび嵩密度は例1と同様だが透気抵抗が大きすぎる不織布(すなわち、透気性が低すぎる不織布)を用いた例4に係る両面粘着シートでは、例1に比べて粘着面の平滑性に劣り、粘着剤層の含浸性も低かった。これは、例4で用いた不織布では塗布された粘着剤組成物が浸透しにくいため該不織布の内部に閉じ込められる空気量が多く、その空気が乾燥時に気泡を生じて粘着剤層の表面状態を荒らしたためと考えられる。一方、透気抵抗が小さすぎる不織布(すなわち、透気性が高すぎる不織布)を用いた例5〜11に係る両面粘着シートも、また、直接法により形成された粘着面の平滑性に劣るものであった。これらの結果は、使用する不織布の透気性が高すぎても低すぎても粘着面の平滑性が低下すること、したがって本発明の課題を解決するためには透気抵抗度の値が所定範囲にある不織布を使用する必要があることを支持している。