(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045021
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】屋根上設置物の取付具およびその取付具を用いた屋根上設置物の取付方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20140101AFI20161206BHJP
E04D 13/00 20060101ALI20161206BHJP
E04D 3/40 20060101ALI20161206BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20161206BHJP
【FI】
E04D13/18ETD
E04D13/00 K
E04D3/40 V
H02S20/23 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-203834(P2012-203834)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-58797(P2014-58797A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2014年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
(72)【発明者】
【氏名】木村 英雄
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3157209(JP,U)
【文献】
特開2012−021340(JP,A)
【文献】
特開2009−007821(JP,A)
【文献】
特開2003−082824(JP,A)
【文献】
特開2008−196230(JP,A)
【文献】
特開2011−162958(JP,A)
【文献】
特開平09−291659(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/011320(WO,A1)
【文献】
実開昭63−081128(JP,U)
【文献】
特開2006−037545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
E04D 3/40
E04D 13/00
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根板材の上面に屋根上設置物を設置、固定する取付具であって、
屋根の軒側において立ち上がる側壁を有し、屋根の下地材に締結手段を介して固定される止め付け部と、この止め付け部の側壁の上端縁部に一体連結して屋根板材の上ハゼに嵌合可能な上ハゼ嵌合部と、この上ハゼ嵌合部の直下でその端縁に一体連結して前記屋根板材とは異なる他の屋根板材の下ハゼに嵌合可能な下ハゼ嵌合部と、この下ハゼ嵌合部の端縁につながり、前記上ハゼ嵌合部に嵌合させた屋根板材の上ハゼの小口に沿って起立する脚部と、この脚部の上端縁部に片持ち状態でつながり、前記上ハゼ嵌合部の直上にて屋根上設置物の載置、固定面を形成する載置、固定部からなり、
前記脚部は、屋根板材の表面に沿って伸延する底壁を有し、
該底壁と屋根板材の外表面との間には、雨水の浸透を回避する隙間を有することを特徴とする屋根上設置物の取付具。
【請求項2】
前記脚部の底壁は、水抜き孔が形成されたものであり、前記載置、固定部は、その表裏において貫通する長孔を有するものであることを特徴とする請求項1に記載した屋根上設置物の取付具。
【請求項3】
前記載置、固定部は、屋根の傾斜と同等の傾斜を有することを特徴とする請求項1または2に記載した屋根上設置物の取付具。
【請求項4】
前記上ハゼ嵌合部は、屋根の軒側に向けて凸状に湾曲し、該屋根の棟側において屋根板材の下ハゼの折り返し端縁を挿入する凹所を備えた湾曲片からなり、前記下ハゼ嵌合部は、屋根の棟側に向けて凸状に湾曲し、該屋根の軒側において屋根板材の上ハゼの折り返し端縁を挿入する凹所を備えた湾曲片からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載した屋根上設置物の取付具。
【請求項5】
前記止め付け部及び側壁に、それらの相互において連続的に伸延する少なくとも一本の補強リブを設け、前記脚部に、載置、固定部に至るまでの間で連続的に伸延する少なくとも一本の補強リブを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載した屋根上設置物の取付具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1に記載した取付具を用いて屋根板材の上に屋根上設置物を載置、固定する方法において、
屋根の下地材に予め設置された屋根板材につき、その屋根板材の下ハゼを取付具の下ハゼ嵌合部に嵌合させて止め付け部を締結手段を介して屋根の下地材に固定し、次いで、前記屋根板材とは異なる他の屋根板材の上ハゼを取付具の上ハゼ嵌合部に嵌合させたのち、屋根上設置物を取付具の載置、固定部に配置するとともに、該屋根上設置物の上面に挟持片を配置して該挟持片と載置、固定部とを締結手段を介して相互に連結することにより該屋根上設置物を該挟持片と載置、固定部との間で挟持することを特徴とする屋根上設置物の取付具を用いた取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル等の屋根上設置物を、建築構造物の屋根面(屋根板材の上面)に固定保持するための取付具とその取付具を用いた屋根上設置物の取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネル等の屋根上設置物は、屋根板材に直接固定可能な取付具(取付装置)を介して固定するのが一般的であり、その構造としては、例えば、特許文献1に開示されているように、屋根板材の上方に配置され外装パネルを支持する支持部材と、この支持部材の一側に設けられ、屋根板材の一側に設けられた凹嵌部に係止して固定される一側係止部材と、該支持部材の他側に設けられ、屋根板材の他側に設けられた凸嵌部に係止する他側係止部材とによって構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3157209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記先行文献1に開示された取付具(取付装置)は、複数部材から構成され、それを組み合わせて屋根上設置物を屋根に載置、固定する仕組みからなるものであって、効率的な取り付けを行うのが難しいものであった。
【0005】
また、屋根上設置物に作用する外力のうち最も大きな外力は風圧力(300kg/m
2程度)であり、これは、屋根面に対して垂直上向きに働くことになるが、上記従来の取付具においては、取付具の固定部位(荷重作用点)と、この取付具に固定される屋根上設置物の取付位置(支持点)が離れている(モーメントアームが長い)ため、屋根上設置物に上記の風圧力が作用した場合に取付具に比較的大きな曲げモーメントが作用することとなり、該取付具について十分な強度を確保するには、部材の厚肉化を図って剛性を高める等の必要があり、これが部材の重量増、製造コストの上昇につながる原因になっていた。
【0006】
本発明の課題は、構造の簡素化、薄肉による軽量化を図りつつも屋根上設置物を屋根板材に簡単かつ確実に設置、固定することができる取付具とその取付具を用いた屋根上設置物の取付方法を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、屋根板材の上面に屋根上設置物を設置、固定する取付具であって、屋根の軒側において立ち上がる側壁を有し、屋根の下地材に締結手段を介して固定される止め付け部と、この止め付け部の側壁の上端縁部に一体連結して屋根板材の上ハゼに嵌合可能な上ハゼ嵌合部と、この上ハゼ嵌合部の直下でその端縁に一体連結して前記屋根板材とは異なる他の屋根板材の下ハゼに嵌合可能な下ハゼ嵌合部と、この下ハゼ嵌合部の端縁につながり、前記上ハゼ嵌合部に嵌合させた屋根板材の上ハゼの小口に沿って起立する脚部と、この脚部の上端縁部に片持ち状態でつながり、前記上ハゼ嵌合部の直上にて屋根上設置物の載置、固定面を形成する載置、固定部からな
り、前記脚部は、屋根板材の表面に沿って伸延する底壁を有し、該底壁と屋根板材の外表面との間には雨水の浸透を回避する隙間を有することを特徴とする屋根上設置物の取付具である。
【0008】
上記の構成からなる屋根上設置物の取付具において、
1)脚部
の底壁は、水抜き孔が形成され
たものであり、載置、固定部は、その表裏において貫通する長孔を有するものであること、
2)また、載置、固定部は、屋根の傾斜と同等の傾斜を有すること、
3)上ハゼ嵌合部は、屋根の軒側に向けて凸状に湾曲し、該屋根の棟側において屋根板材の下ハゼの折り返し端縁を挿入する凹所を備えた湾曲片からなり、下ハゼ嵌合部は、屋根の棟側に向けて凸状に湾曲し、該屋根の軒側において屋根板材の上ハゼの折り返し端縁を挿入する凹所を備えた湾曲片からなること、
4)止め付け部及び側壁に、それらの相互において連続的に伸延する少なくとも一本の補強用リブを設け、脚部に、載置、固定部に至るまでの間で連続的に伸延する少なくとも一本の補強用リブを設けること、
が本発明の課題解決のための具体的手段として好ましい。
【0009】
さらに、本発明は、上記の構成からなる取付具を用いて屋根板材の上に屋根上設置物を載置、固定するに当たり、屋根の下地材に設置した屋根板材につき、その屋根板材の下ハゼを取付具の下ハゼ嵌合部に嵌合させて前記止め付け部を締結手段を介して屋根の下地材に固定し、次いで、前記屋根板材とは異なる他の屋根板材(建築構造物の棟側に隣接配置される屋根板材)の上ハゼを取付具の上ハゼ嵌合部に嵌合させたのち、屋根上設置物を前記取付具の載置、固定部に配置するとともに、該屋根上設置物の上面に挟持片を配置して該挟持片と載置、固定部とを締結手段を介して相互に連結することにより該屋根上設置物を該挟持片と載置、固定部との間で挟持することを特徴とする屋根上設置物の取付具を用いた取付方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の取付具によれば、屋根板材の上面に屋根上設置物を設置、固定する取付具を、屋根の軒側において立ち上がる側壁を有し、屋根の下地材に締結手段を介して固定される止め付け部と、この止め付け部の側壁の上端縁部に一体連結して屋根板材の上ハゼに嵌合可能な上ハゼ嵌合部と、この上ハゼ嵌合部の直下でその端縁に一体連結して他の屋根板材(建築構造物の棟側に隣接配置される屋根板材)の下ハゼに嵌合可能な下ハゼ嵌合部と、この下ハゼ嵌合部の端縁につながり前記上ハゼ嵌合部に嵌合させた屋根板材の上ハゼの小口に沿って起立する脚部とを備えたもので構成し、該脚部の上端縁部に、片持ち状態でつながり前記上ハゼ嵌合部の直上にて屋根上設置物の載置、固定面を形成する載置、固定部を設けるようにしたため、取付具を固定する部位と屋根上設置物を固定する部位との距離が短縮され、風圧力によって生じる曲げモーメントを小さくすることが可能となり、取付具を構成する部材の薄肉化を図ることができる。また、単純な形状で構成することができるため、取付具を単一部材(一部材)を用いたプレス加工によって製作することが可能となる。
【0011】
上記の構成からなる本発明の取付具によれば、脚部の末端に、屋根板材の表面に沿って伸延する底壁を設けるようにしたため、屋根板材の上ハゼを上ハゼ嵌合部に嵌合させるのに必要なスペースを確保しつつ、屋根上設置物を確実に支えることができる。また、載置、固定部に、その表裏において貫通する長孔を設けたため、この長孔において挿通する連結ボルトの如き締結手段を介して屋根上設置物を取付具に簡単に固定することが可能となる。また、底壁部に水抜き孔を形成することにより、該底壁部の上面に流れ込んだ雨水を軒先に向けて速やかに流下させることができる。
【0012】
また、本発明の取付具によれば、記載置、固定部を、屋根の傾斜と同等の傾斜を有するものとしたため、屋根上設置物を取付具に固定する際、該屋根上設置物の角度調整を省略することができる。
【0013】
また、止め付け部及び側壁部に、それられの相互において連続的に伸延する少なくとも一本の補強リブを設け、脚部に、該脚部とともに立ち上がり載置、固定部に至るまで連続的に伸延する少なくとも一本の補強リブを設けるようにしたため、風圧力が付加されたとしてもその初期形状を安定的に維持することができる。
【0014】
さらに、本発明の取付具によれば、上ハゼ嵌合部については、屋根の軒側に向けて凸状に湾曲し、該屋根の棟側において屋根板材の下ハゼの折り返し端縁を挿入する凹所を形成する湾曲片にて構成し、下ハゼ嵌合部については、屋根の棟側に向けて凸状に湾曲し、該屋根の軒側において屋根板材の上ハゼの折り返し端縁を挿入する凹所を形成する湾曲片にて構成したため、単一の板材を用いてそれに曲げ加工を施すだけで上ハゼ嵌合部と下ハゼ嵌合部を一体的に形成することが可能となる。
【0015】
また、本発明の取付方法によれば、屋根板材の下ハゼを、下ハゼ嵌合部に嵌合させた状態で取付具の止め付け部を締結手段を介して屋根の下地材に固定し、該屋根板材とは異なる他の屋根板材の上ハゼを上ハゼ嵌合部に嵌合させてから、屋根上設置物を前記取付具の載置、固定部に配置するとともに、該屋根上設置物の上面に設置した挟持片と載置、固定部とを締結手段を介して相互に連結することにより該屋根上設置物を該挟持片と載置、固定部との間で挟持するようにしたため、屋根上設置物の効率的な設置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に従う屋根上設置物の取付具の実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。
【
図2】
図1に示した取付具の正面を示した図である。
【
図3】
図1に示した取付具の左側面を示した図である。
【
図4】
図1に示した取付具の平面を示した図である。
【
図5】
図1に示した取付具の底面を示した図である。
【
図6】
図1に示した取付具の背面を示した図である。
【
図9】屋根板材の接続状態と屋根上設置物の固定状態を示した図である。
【
図10】従来の取付具において作用する曲げモーメントの分布状況を示した図である。
【
図11】本発明に従う取付具において作用する曲げモーメントの分布状況を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う屋根上設置物の取付具(金属製)の実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。また、
図2〜6は、
図1に示した取付具の正面、側面、平面、底面及び背面をそれぞれ示した図である。
【0018】
なお、本発明における取付具は、耐食性に優れた表面処理鋼板(亜鉛めっき鋼板等)やステンレス鋼板等の金属製部材から構成され、屋根板材同士がハゼ締め(嵌合)により相互につながっている接続部に配置されるものであって、ここでは、棟側の辺に下ハゼを有し、軒側の辺に上ハゼを有する、
図7に示す如き断面形状を有する屋根板材(横葺き屋根用の板材)に適用する場合について説明する。
図7における符号Sは上向きに折り返された鉤型形状をなす下ハゼ、Uは下向きに折り返された鉤型形状をなす上ハゼ、S
1は下ハゼSの折り返し端縁、U
1は上ハゼUの折り返し端縁である。
【0019】
図1〜6における符号1は、板状部材からなる止め付け部である。この止め付け部1は、屋根の下地材に釘やねじ等の締結手段を介して固定されるものであって、その縁部(
図1、
図3、
図8、
図9参照)には屋根の軒側において立ち上がる板状の側壁1aが設けられている。この側壁1aは、止め付け部1の幅寸法(X)と同等の寸法を有するものであって曲げ加工を施すことによって止め付け部1と一体的に形成される。
【0020】
2は、止め付け部1において適宜複数個設けられ、釘やビスを挿通させることができる開孔である。この開孔2に釘やビスを通して該釘やビスを屋根の下地材(野地板)に打ち付けるか、あるいはねじ込むことによって止め付け部1を固定する。
【0021】
また、3は、側壁1aの上端縁部に一体連結して屋根板材の上ハゼUに嵌合可能な上ハゼ嵌合部である。上ハゼ嵌合部3は、屋根の軒側に向けて凸状に湾曲した鉤型形状をなす湾曲片からなっており、屋根の棟側には屋根板材の下ハゼSの折り返し端縁S
1を挿入する凹所3aが形成されている。
【0022】
また、4は、上ハゼ嵌合部3の直下でその端縁3bに一体連結し屋根板材の下ハゼに嵌合可能な下ハゼ嵌合部である。この下ハゼ嵌合部4は、屋根の棟側に向けて凸状に湾曲した鉤型形状をなす湾曲片からなっており、屋根の軒側において屋根板材の上ハゼUの折り返し端縁U
1を挿入する凹所4aが形成されている。
【0023】
上記上ハゼ嵌合部3、下ハゼ嵌合部4は、止め付け部1の幅寸法と同等の寸法を有し、曲げ加工を施すことによって形成されるものであって、この例では、上ハゼ嵌合部3と下ハゼ嵌合部4とが一体連結することによりS字状の断面形状をなすものとして示したが、本発明は、図示のものに限定されることはない。また、上ハゼ嵌合部3、下ハゼ嵌合部4は、湾曲片に代えて屈曲片で構成することもできる。
【0024】
また、5は、下ハゼ嵌合部4の折り返し端縁4bにつながり、上ハゼ嵌合部3に嵌合させた屋根材の上ハゼUの小口面U
2(
図7参照)に沿って立ち上がる脚部である。この脚部5は、脚部本体5aと、下ハゼ嵌合部の端縁4bとを相互に一体連結し、屋根板材の外表面に沿う底壁5bを有している。底壁5bと屋根板材の外表面との間には、雨水等の浸透を回避するた
め、隙間が形成される。
【0025】
この脚部5も上ハゼ嵌合部3、下ハゼ嵌合部4と同様、曲げ加工を施すことによって形成されるものであって、止め付け部1の幅寸法と同等の寸法に設定されている。底壁5bには、雨水が流れ込んできても、それをすぐさま軒先へ向けて排出することができるようにその表裏において貫通する水抜き孔5cが形成されている(
図5参照)。
【0026】
また、6は、脚部5の上端縁部5cに片持ち状態で一体的につながり、上ハゼ嵌合部4の直上(屋根板材の上ハゼUと下ハゼSとを嵌合させた接続部の直上)にて屋根上設置物の載置、固定面Mを形成する載置、固定部である。この載置、固定部6は、屋根上設置物の下面に当接する平坦な面をもつ板状片からなり、その中央部には、表裏において貫通しかつ、幅方向に沿って伸延した長孔6aが設けられている。
【0027】
載置、固定部6は、脚部5との境界で曲げ加工を施すことにより形成されるものであって、止め付け部1と同じ幅寸法を有し、屋根の傾斜と同等の傾斜が適宜付与されており、この傾斜により屋根上設置物を屋根と平行に配置することができるようになっている。
【0028】
さらに、7は、止め付け部1と側壁1aの相互において連続的に伸延する補強リブ(L字状のリブであって、幅方向と交差する向きに延伸している)、8は、底壁5bから脚部本体5aを通り、載置、固定部6に至るまでの間で伸延する補強リブ(コ字状のリブであって、幅方向と交差する向きに伸延している)である。これらの補強リブ7、8は、それぞれ幅方向に沿い間隔をおいて2つ設けた場合について示したが、各部位において十分な強度が確保できる場合には、補強リブ7、8は省略される。
【0029】
補強リブ7、8は、押圧加工を施し、局所的に膨出させることによって形成することができるが、補強リブを形成するための部材を別途用意し、この部材を溶接等の手段によって接合するようにしてもよい。
【0030】
図8は、屋根上設置物の設置状況をその要部について示した外観斜視図である。上記の構成からなる取付具を用いて屋根上設置物を屋根板材の上に載置、固定するには、アスファルトルーフィングを施した下地材(野地板)9に屋根板材を配置、固定し、次いで、その屋根板材の下ハゼSに、取付具の下ハゼ嵌合部4を嵌合させたのち、止め付け部1を、屋根の下地材9に釘あるいはねじ10を用いて固定し、さらに、該屋根板材とは異なる別の屋根板材(棟側において隣接配置される他の屋根板材)を配置すべく、その上ハゼUを上ハゼ嵌合部3に嵌合させる。
【0031】
そして、屋根上設置物を、取付具の載置、固定部6に載置するとともに該屋根上設置物の上面に挟持片11を配置して、この該挟持片11と載置、固定部6とを長孔6aを通して配置される連結ボルト12を介して相互に連結し、該連結ボルト12に係合するナット12aを締め込んで屋根上設置物を、挟持片11と取付具の載置、固定部6との間で挟持すればよく、これにより、屋根上設置物は取付具に強固に固定される。
【0032】
屋根板材の接続状態と、屋根上設置物の固定状態を
図9に示す。なお、取付具による屋根上設置物の固定は、屋根板材の長手方向の複数個所で行われる。
【0033】
図10は、従来構造の取付具(取付装置)において作用する曲げモーメントの分布状況を示した図であり、
図11は、本発明に従う取付具に作用する曲げモーメントの分布状況を示した図である。
【0034】
この種の取付具は、いずれも支持点(取付具の固定位置)において曲げモーメントが最大値を示すことになるが、とくに、従来の取付具は、荷重作用位置(屋根上設置物の固定位置)─支持点(取付具の固定位置)間の距離が長くなるのが避けられないため、曲げモーメントの値が大きくならざるを得ない。
【0035】
これに対して、本発明に従う取付具は、荷重作用位置−支持点間の距離を短縮することができるため、支持点における曲げモーメントが従来構造のものに比較して小さくすることが可能であり、経済的な設計が可能となる。
【0036】
本発明の取付具は、挟持片11、連結ボルト12を除き、基本的には、単一部材(一枚板)で構成することが可能であって製作が容易であり、しかも取付作業も容易であり作業効率の改善を図ることができる利点がある。また、取付具を設置するに際しては、屋根板材に孔をあける必要がないため、雨仕舞にも優れている。
【0037】
取付具は、例えば、厚さ1.6〜3.2mm
程度の板材を適用することが可能であり、幅寸法(X)は、80〜100mm程度に、また、奥行き(Y)(
図3参照)は、100〜120mm程度に、高さ(Z)(
図3参照)は、50mm程度のサイズとすることができる。この場合において太陽電池パネルの重量が単位面積(m
2)当たり20kg程度とすると、取付具は、単位面積(m
2)当たり3個所程度配置するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、構成部材の薄肉化、構造の簡素化を実現し、比較的簡単な作業のもとに屋根上設置物を確実に屋根板材に固定することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 止め付け部
1a 側壁
2 開孔
3 上ハゼ嵌合部
3a 凹所
3b 端縁
4 下ハゼ嵌合部
4a 凹所
4b 端縁
5 脚部
5a 脚部本体
5b 底壁
5c 上端縁部
6 載置、固定部
6a 長孔
7 補強リブ
8 補強リブ
9 下地材
10 釘、ねじ
11 挟持片
12 連結ボルト
12a ナット
M 載置、固定面
S 下ハゼ
S
1 折り返し端縁
U 上ハゼ
U
1 折り返し端縁
U
2 小口面