特許第6045041号(P6045041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045041
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/08 20060101AFI20161206BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20161206BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B08B3/08 Z
   B08B3/02 C
   G02F1/13 101
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-161024(P2014-161024)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-91571(P2015-91571A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-203426(P2013-203426)
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大森 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】磯 明典
(72)【発明者】
【氏名】今岡 裕一
(72)【発明者】
【氏名】手島 理恵
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−029268(JP,A)
【文献】 特開2012−146690(JP,A)
【文献】 特開2004−125881(JP,A)
【文献】 特開2008−118109(JP,A)
【文献】 特開2000−206478(JP,A)
【文献】 特開2012−143708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00−13/00
G02F 1/13
1/137−1/141
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に配向膜となるポリイミド膜が形成され、前記ポリイミド膜がラビング処理済みである液晶表示パネル用基板を処理する基板処理方法であって、
水に少なくとも窒素ガスを含むガスを溶解させてなる窒素ガス溶解水により前記基板を洗浄する第1工程を含み、
前記窒素ガス溶解水の温度は、40℃以上80℃以下の範囲内に調整される基板処理方法。
【請求項2】
表面に配向膜となるポリイミド膜が形成され、前記ポリイミド膜がラビング処理済みである液晶表示パネル用基板を処理する基板処理方法であって、
水に少なくとも窒素ガスを含むガスを溶解させてなる窒素ガス溶解水により前記基板を洗浄する第1工程と、
前記第1工程より洗浄された前記基板を薬液により洗浄する第2工程と、
前記第2工程によって洗浄された前記基板を乾燥させる乾燥工程とを含み、
前記窒素ガス溶解水の温度は、40℃以上80℃以下の範囲内に調整される基板処理方法。
【請求項3】
前記窒素ガス溶解水の温度は、45℃以上80℃以下の範囲内に調整される請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記窒素ガス溶解水の温度は、60℃以上80℃以下の範囲内に調整される請求項3記載の基板処理方法。
【請求項5】
表面に配向膜となるポリイミド膜が形成され、前記ポリイミド膜がラビング処理済みである液晶表示パネル用基板を処理する基板処理装置であって、
水に少なくとも窒素ガスを含むガスを溶解させて窒素ガス溶解水を生成する窒素ガス溶解水生成部と、
該窒素ガス溶解水生成部にて生成される窒素ガス溶解水を40℃以上80℃以下の範囲内の温度に維持する温度維持機構と、
前記温度範囲内の温度に維持された前記窒素ガス溶解水により前記基板を洗浄する第1洗浄部とを有する基板処理装置。
【請求項6】
表面に配向膜となるポリイミド膜が形成され、前記ポリイミド膜がラビング処理済みである液晶表示パネル用基板を処理する基板処理装置であって、
水に少なくとも窒素ガスを含むガスを溶解させて窒素ガス溶解水を生成する窒素ガス溶解水生成部と、
前記窒素ガス溶解水生成部にて生成される窒素ガス溶解水を40℃以上80℃以下の範囲内の温度に維持する温度維持機構と、
前記温度範囲内の温度に維持された前記窒素ガス溶解水により前記基板を洗浄する第1洗浄部と、
前記第1洗浄部により洗浄された基板を、所定の薬液にて洗浄する第2洗浄部と、
前記第2洗浄部により洗浄された前記基板を、乾燥させる乾燥室とを有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルに用いられる基板を処理する基板処理方法及び基板処理装置、特に、ラビング処理済みの前記基板を処理する基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【0002】
液晶表示パネルの製造工程では、一般に、表面に配向膜(例えば、ポリイミド膜)の形成された液晶の基板に対してラビング処理が行われる。このラビング処理では、前記基板の配向膜の表面に例えばナイロン製のラビング布を巻いたローラが押し付けられ、そのローラを回転させて前記ラビング布が前記配向膜の表面を擦る。このようにラビング布を基板の配向膜に擦り付けることにより、配向膜(例えば、ポリイミド膜)表面の高分子鎖が一定方向に潰れ、そのために配向膜(高分子膜)に異方性が生じ、その配向膜の異方性により液晶分子の配向方向が規定される。
【0003】
このようなラビング処理により、配向膜(ポリイミド膜)の削れたカスや、ナイロン製のラビング布からのフッ素イオンの影響を受けた、配向膜成分(ポリイミド)により基板表面が汚染される。さらに、ポリイミド自体に含まれるフッ素イオンが他の部室と結合して、汚染物質(フッ素化合物)となることもある。このため、ラビング処理済みの基板を洗浄する必要がある。このラビング処理済みの基板を洗浄する従来の方法(例えば、特許文献1参照)では、基板における配向膜の表面に純水の遮蔽層が形成された状態で、当該基板表面に薬液がかけられる。これにより、薬液の表面に浮いて移動する塵芥は、純水の遮蔽層により被覆された配向膜表面に静電気的に付着することなく、前記薬液によって洗い流される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−299234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ラビング処理済みの基板の洗浄では、配向膜の削れたカスだけでなく、前記ラビング処理にて生じ得るフッ素イオンの影響を受けて生じた汚染成分(フッ素化合物)を効果的に除去できることも重要である。しかしながら、前述した従来の基板の洗浄方法(処理方法)では、フッ素イオンの影響を受けて生じた汚染成分については特に考慮がなされていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ラビング処理にて生じ得るフッ素イオンの影響を受けて生じた汚染成分を効果的に除去できる基板処理方法及び基板処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る基板処理方法は、表面に配向膜となるポリイミド膜が形成され、前記ポリイミド膜がラビング処理済みである液晶表示パネル用基板を処理する基板処理方法であって、水に少なくとも窒素ガスを含むガスを溶解させてなる窒素ガス溶解水により前記基板を洗浄する第1工程を含み、前記窒素ガス溶解水の温度は、40℃以上80℃以下の範囲内に調整される構成となる。
【0008】
このような構成により、40℃以上80℃以下の範囲内のある温度に調整された窒素ガス溶解水によりラビング処理済みの基板が洗浄される。その洗浄過程において、窒素ガス溶解水の少なくとも窒素成分及び水成分が、ラビング処理にて生じ得るフッ素イオンの影響を受けて生じた汚染成分と、40℃以上80℃以下の範囲内のある温度のもとで、化学的に反応し得る。
【0009】
本発明に係る基板処理方法において、前記第1工程により洗浄された前記基板を所定の薬液により洗浄する第2工程を含む構成とすることができる。
【0010】
このような構成により、前記窒素ガス溶解水により洗浄されたラビング済みの基板が、更に、所定の薬液により洗浄される。
【0011】
前記窒素ガス溶解水の温度は、より好ましくは、45℃以上80℃以下の範囲内に調整することができ、更に好ましくは、60℃以上80℃以下の範囲内に調整することができる。
【0012】
また、本発明に係る基板処理装置は、表面に配向膜となるポリイミド膜が形成され、前記ポリイミド膜がラビング処理済みである液晶表示パネル用基板を処理する基板処理装置であって、水に少なくとも窒素ガスを含むガスを溶解させて窒素ガス溶解水を生成する窒素ガス溶解水生成部と、該窒素ガス溶解水生成部にて生成される窒素ガス溶解水を40℃以上80℃以下の範囲内の温度に維持する温度維持機構と、前記温度範囲内の温度に維持された前記窒素ガス溶解水により前記基板を洗浄する第1洗浄部とを有する構成となる。
【0013】
このような構成により、第1洗浄部では、40℃以上80℃以下の範囲内のある温度に維持された窒素ガス溶解水によりラビング処理済みの基板が洗浄される。その洗浄過程において、窒素ガス溶解水の少なくとも窒素成分及び水成分が、ラビング処理にて生じ得るフッ素イオンの影響を受けて生じた汚染成分と、40℃以上80℃以下の範囲内のある温度のもとで、化学的に反応し得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る基板処理方法及び基板処理装置によれば、窒素ガス溶解水の少なくとも窒素成分及び水成分が、ラビング処理にて生じ得るフッ素イオンの影響を受けて生じた汚染成分と、40℃以上80℃以下の範囲内のある温度のもとで、化学的に反応し得るので、前記ラビング処理にて生じ得るフッ素イオンの影響を受けて生じた汚染成分を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る基板処理装置の基本的な構成を示す図である。
図2】窒素ガス溶解水を用いて洗浄した場合のその窒素ガス溶解水の温度と基板表面のパーティクル(汚染成分)の除去率との関係Q1と、純水を用いて洗浄した場合のその純水の温度と基板表面のパーティクル(汚染成分)の除去率との関係Q2とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
本発明の実施の一形態に係る基板処理装置は、図1に示すように構成される。
【0018】
図1において、この基板処理装置10は、第1洗浄室11(第1洗浄部)、第2洗浄室12(第2洗浄部)、リンス室13及びエアー乾燥室14を有している。洗浄対象となるラビング処理済みの液晶の基板Sは、搬送機構(図示略)によって、直列配置された第1洗浄室11、第2洗浄室12、リンス室13及びエアー乾燥室14を順次通って搬送される。この基板処理装置10に投入される基板Sは、表面に配向膜となるポリイミド膜が形成されており、その表面がラビング処理された状態になっている。
【0019】
基板処理装置10は、また、タンク20を有し、タンク20内には、純水(HO)が貯められるとともに、窒素ガス(Nガス)が供給される。タンク20(窒素ガス溶解水生成部)内において、純水中で窒素ガスがバブリングされて窒素ガス溶解水が生成される。タンク20にはヒータ装置21が付設されており、タンク20内に設けられた温度検出器(図示略)からの検出信号に基づいた図示外の制御装置によるヒータ装置21に対する通電制御により、タンク20内にて生成される窒素ガス溶解水の温度が所定の温度に調整される。
【0020】
第1洗浄室11には、複数のノズルを有するノズル機構111が設けられている。前記複数のノズルは、洗浄対象物である基板Sの搬送路の上側及び下側のそれぞれに所定数ずつ配置されている。タンク20に溜められた窒素ガス溶解水は、ポンプ22によってノズル機構111に供給され、当該窒素ガス溶解水がノズル機構111の各ノズルから搬送路に向けて噴出する。第1洗浄室11のノズル機構111から噴出された窒素ガス溶解水は、タンク20に回収され、ポンプ22によってタンク20から、再び、第1洗浄室11のノズル機構111に供給される。このように、第1洗浄室11とタンク20との間に循環経路が形成されており、タンク20に溜められた窒素ガス溶解水が繰り返し、第1洗浄室11での基板Sの洗浄に用いられる。
【0021】
第2洗浄室12にも、基板Sの搬送路の上側及び下側に配置された複数のノズルを有するノズル機構121が設けられている。第2洗浄室12のノズル機構121には、所定の薬液が供給され、ノズル機構121の各ノズルから薬液が搬送路に向けて噴出する。前記薬液は、ラビング処理済みの基板Sの洗浄に通常用いられる薬液であって、例えば、1,2-ヘキサンジオールまたはアルコール類、所定の添加物、及び純水を所定の割合で調合することにより作られる。
【0022】
リンス室13にも、基板Sの搬送路の上側及び下側に配置された複数のノズルを有するノズル機構131が設けられている。リンス室13のノズル機構131には、純水が供給され、ノズル機構131の各ノズルから純水が搬送路に向けて噴出する。また、エアー乾燥室14には複数のエアーナイフが設けられ、その複数のエアーナイフから高圧エアーが搬送路に向けて噴出される。
【0023】
上述したような基板処理装置10では、図示外の制御装置によって、次のように動作制御がなされる。搬送機構により搬送される基板Sが第1洗浄室11を通過する際に、ノズル機構111の各ノズルから噴出する窒素ガス溶解水が基板Sの両面に吹きかけられる。窒素ガス溶解水は、タンク20内で所定の温度に調整されており、第1洗浄室11において、基板Sは、その所定の温度に調整された窒素ガス溶解水により洗浄される(第1工程)。
【0024】
第1洗浄室11での窒素ガス溶解水による処理(洗浄)が終了し、搬送機構により搬送される基板Sが第2洗浄室12を通過する際に、ノズル機構121の各ノズルから噴出する薬液(1,2-ヘキサンジオールまたはアルコール類を含有する)が基板Sの両面に吹きかけられる。基板Sは、第2洗浄室12において、前記薬液により洗浄される(第2工程)。
【0025】
第2洗浄室12での薬液による処理(洗浄)が終了し、搬送機構により搬送される基板Sがリンス室13を通過する際に、ノズル機構131の各ノズルから噴出する純水が基板Sの両面に吹きかけられる。これにより、基板Sの両面に残った窒素ガス溶解水、薬液、及び窒素ガス溶解水及び薬液により除去された除去物が、純水により洗い流される。
【0026】
リンス室13での純水による処理(洗い流し)が終了し、搬送機構により搬送される基板Sがエアー乾燥室14を通過する際に、各エアーナイフから噴出する高圧エアーによって基板Sに付着した純水が飛ばされて、基板Sの表面が乾燥させられる。その後、基板Sは、搬送機構により次の工程(液晶パネルの組立工程等)に搬送される。
【0027】
上述したような基板処理装置10によれば、ラビング処理でのラビング布での機械的な擦りによって生じたゴミやフッ素イオンの影響を受けて生じた汚染成分(フッ素化合物)がポリイミド膜(配向膜)の表面に付着した基板Sであっても、第1洗浄室11において所定温度に調整された窒素ガス溶解水にて洗浄され、その後、第2洗浄室12において1,2-ヘキサンジオールまたはアルコール類を含有する薬液により洗浄されるので、それらゴミや汚染成分(フッ素化合物)を効果的に除去することができる。
特に、第1洗浄室11における窒素ガス溶解水での洗浄によって、フッ素化合物等の汚染成分を効果的に除去することができる。これは、窒素ガス溶解水中に含まれるH(HO)、N、及び汚染成分に含まれるフッ素イオンFが結合して、フッ化アンモニウムイオンNHが生成されるからであると推察される。
【0028】
なお、上記の実施の形態において、窒素ガス溶解水を生成する方法として、タンク20内の純水に窒素ガスをバブリングさせて溶解させる例を挙げて説明したが、これに限らず、中空糸膜を用いる方法など、窒素ガスを純水に溶解させて窒素ガス溶解水を生成することができる方法であればよい。
【0029】
また、上記の実施の形態において、溶解水として、窒素ガス溶解水を例に挙げて説明したが、純水に溶解させるガスは、窒素ガスだけに限らず、窒素ガスを含むガスであって、基板S上のフッ素化合物等の汚染成分と化学反応を起こすガスであればよい。
【0030】
なお、上記の実施の形態において、処理対象物である基板Sは両面を処理する例を説明したが、これに限らず、一方の面のみ処理を行うなど、工程によって必要な面を処理すればよい。
【0031】
以下に、図1に示す基板処理装置10において行なった実験例を示す。
・条件
窒素(N)ガスを1NL(ナノリットル)/分でタンク20に供給
窒素ガス溶解水の窒素(N)ガス濃度:8ppm
・測定方法
基板Sのパーティクル(汚染成分)の大きさと個数を光によって測定する装置を用い、基板処理装置10での処理前の測定値とその処理後の測定値との割合を除去率(%)とした。
・結果
図2の特性Q1に示すように、第1洗浄室11で用いられる窒素ガス溶解水の温度が40℃以上になると、急激に除去率が上昇し、その温度が約80℃で除去率が90%とになって、それを越える温度で大きな変化がなかった。窒素ガス溶解水の温度が45℃で特に除去率が大きく変化し、更に、窒素ガス溶解水の温度が60℃を越えると、除去率は飽和状態に近づいた。このことから、第1洗浄室11で用いられる窒素ガス溶解水の温度は、40℃以上80℃以下の範囲内の温度に調整されることが好ましいことが判った。その調整範囲のうち、特に好ましくは、45℃以上80℃以下の範囲であり、更に好ましくは、60℃以上80℃以下の範囲であった。
なお、第1洗浄室11において窒素ガス溶解水に代えて純水を用いた場合、その純水の温度と、除去率との関係は、図2の特性Q2のようになった。純水では、窒素ガス溶解水を用いた場合(Q1参照)のように、温度によって、除去率が大きく変動することはなかった。
上記の実験例では、窒素ガス溶解水の窒素(N)ガス濃度値は、8ppmであったが、本発明はこれに限定されない。窒素ガス溶解水が低温領域である場合においては、基板上のフッ素化合物等のパーティクルの分解の進捗が遅いためにパーティクル除去率は低いと考えられる。一方、窒素ガス溶解水が一定温度以上の高温領域である場合においては、液温に対して溶け込むガスの量が飽和状態となるため、パーティクル除去率も飽和状態となり、パーティクル除去率が頭打ちとなると考えられる。したがって、図2に示した特性Q1は、上述の通り、窒素ガス溶解水の窒素ガス濃度値が8ppmの場合の結果であるが、窒素ガス濃度値が8ppm以外であっても、この特性Q1と同様の傾向の特性が現れると考えられる。
窒素ガス溶解水の窒素(N)ガス濃度は、フッ素化合物等の汚染成分との化学反応が十分起こってその汚染成分の除去率が向上するという観点では、ある程度高いことが好ましい。しかし、高すぎても、化学反応に寄与しない量が増加してしまい窒素ガスが無駄になってしまう。実際には、窒素ガス溶解水の窒素(N)ガス濃度は、5〜25ppmの範囲で調整される。
なお、窒素ガスバブリングの際に、ナノバブル等の微細気泡として窒素ガスを純水に混入させるようにすれば、特に濃度設定を考慮する必要はない。ナノバブルは極めて小さい気泡であるため、液中に長時間留まり続けることが従来から知られている。この性質を利用すると、純水中の窒素ガスは長時間飽和状態であり続けるため、フッ素化合物等の汚染成分の除去効率も飽和状態が維持されるからである。
【符号の説明】
【0032】
10 基板処理装置
11 第1洗浄室(第1洗浄部)
12 第2洗浄室(第2洗浄部)
13 リンス室
14 エアー乾燥室
20 タンク
21 ヒータ装置
22 ポンプ
111、121、131 ノズル機構
図1
図2