特許第6045044号(P6045044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6045044マスタ発振器光学増幅器システムのキャリアエンベロープ位相安定化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045044
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】マスタ発振器光学増幅器システムのキャリアエンベロープ位相安定化
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20161206BHJP
   H01S 3/098 20060101ALI20161206BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01S3/10 D
   H01S3/098
   H01S3/23
【請求項の数】39
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-524043(P2014-524043)
(86)(22)【出願日】2012年8月1日
(65)【公表番号】特表2014-524662(P2014-524662A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012049134
(87)【国際公開番号】WO2013022667
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】13/204,429
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512095392
【氏名又は名称】コヒレント, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シル, アレクサンダー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】リ, チェンチュアン
(72)【発明者】
【氏名】フェリュ, フィリップ
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−511296(JP,A)
【文献】 特開2009−130347(JP,A)
【文献】 特表2009−542009(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/126810(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザシステムであって、該レーザシステムは、
モード同期パルスを発生させるレーザと、
該モード同期パルスを伸長するためのストレッチャと、
該モード同期パルスを増幅するための光増幅器と、
該増幅されたパルスを圧縮するためのパルスコンプレッサと、
該圧縮されたパルスのキャリアエンベロープ位相を測定し、それに対応する出力信号を発生させるための検出器と、
該出力信号の変化に応答して第1のフィードバック信号を発生させるための第1のコントローラであって、該第1のフィードバック信号は、該モード同期レーザを制御するためのものであり、該第1のフィードバック信号は、第1の周波数範囲を有する、第1のコントローラと、
該出力信号の変化に応答して第2のフィードバック信号を発生させるための第2のコントローラであって、該第2のフィードバック信号は、該第1の周波数範囲よりも低い第2の周波数範囲を有し、該第2のフィードバック信号は、該パルスストレッチャまたは該パルスコンプレッサのうち一方を制御するためのものである、第2のコントローラと
を備える、レーザシステム。
【請求項2】
前記検出器からの前記出力信号は、該信号を分割するための周波数スプリッタに供給されて、次いで、前記第1のフィードバック信号を発生させるための前記第1のコントローラおよび前記第2のフィードバック信号を発生させるための前記第2のコントローラに供給される、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項3】
前記検出器からの前記出力信号は、2つの部分に分割され、各部分は、別個の周波数フィルタを通過させられて、該部分は、前記第1のフィードバック信号を発生させるための前記第1のコントローラおよび前記第2のフィードバック信号を発生させるための前記第2のコントローラに供給される、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項4】
前記第1の周波数範囲と前記第2の周波数範囲とは、重複する、請求項3に記載のレーザシステム。
【請求項5】
前記第2のフィードバック信号を受信する前記パルスストレッチャまたは前記パルスコンプレッサは、少なくとも1つの回折格子を含み、該回折格子の角度は、該第2のフィードバック信号に応答して調節される、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項6】
前記第2のフィードバック信号を受信する前記パルスストレッチャまたは前記パルスコンプレッサは、一対の離間された回折格子を含み、該回折格子の間の間隔は、該第2のフィードバック信号に応答して調節される、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項7】
前記モード同期レーザは、励起レーザによって送達される励起ビームによって励起される光学的キャビティを含み、該励起ビームは、該キャビティに進入することに先立って可変モジュレータを通過し、前記第1のフィードバック信号は、該可変モジュレータに供給される、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項8】
前記可変モジュレータは、音響光学モジュレータである、請求項1に記載のレーザシステム。
【請求項9】
レーザシステムであって、該レーザシステムは、
モード同期パルスを発生させるレーザと、
該モード同期パルスを伸長するためのストレッチャと、
該モード同期パルスを増幅するための光増幅器と、
該増幅されたパルスを圧縮するためのパルスコンプレッサと、
該圧縮されたパルスのキャリアエンベロープ位相(CEP)を測定し、それに対応する出力信号を発生させるための検出器と、
該出力信号の変化に応答して第1のフィードバック信号を発生させるための第1のコントローラであって、該第1のフィードバック信号は、該モード同期レーザから該光増幅器に送達される該パルスのCEPを制御するためのものであり、該第1のフィードバック信号は、第1の周波数範囲を有する、第1のコントローラと、
該出力信号の変化に応答して第2のフィードバック信号を発生させるための第2のコントローラであって、該第2のフィードバック信号は、該パルスストレッチャまたは該パルスコンプレッサのうちの一方を制御するためのものであり、該第2のフィードバック信号は、該第1の周波数範囲よりも低い第2の周波数範囲を有し、該第2のフィードバック信号は、該圧縮されたパルスのCEPを制御するためのものである、第2のコントローラ
を備える、レーザシステム。
【請求項10】
前記検出器からの前記出力信号は、該信号を分割するための周波数スプリッタに供給されて、次いで、前記第1のフィードバック信号を発生させるための前記第1のコントローラおよび前記第2のフィードバック信号を発生させるための前記第2のコントローラに供給される、請求項9に記載のレーザシステム。
【請求項11】
前記検出器からの前記出力信号は、2つの部分に分割され、各部分は、別個の周波数フィルタを通過させられて、該部分は、前記第1のフィードバック信号を発生させるための前記第1のコントローラおよび前記第2のフィードバック信号を発生させるための前記第2のコントローラに供給される、請求項9に記載のレーザシステム。
【請求項12】
前記第1の周波数範囲と前記第2の周波数範囲とは、重複する、請求項11に記載のレーザシステム。
【請求項13】
前記第2のフィードバック信号を受信する前記パルスストレッチャまたは前記パルスコンプレッサは、少なくとも1つの回折格子を含み、該回折格子の角度は、該第2のフィードバック信号に応答して調節される、請求項9に記載のレーザシステム。
【請求項14】
前記第2のフィードバック信号を受信する前記パルスストレッチャまたは前記パルスコンプレッサは、一対の離間された回折格子を含み、該回折格子の間の間隔は、該第2のフィードバック信号に応答して調節される、請求項9に記載のレーザシステム。
【請求項15】
前記モード同期レーザは、励起レーザによって送達される励起ビームによって励起される光学的キャビティを含み、該励起ビームは、該キャビティに進入することに先立って可変モジュレータを通過し、前記第1のフィードバック信号は、該可変モジュレータに供給される、請求項9に記載のレーザシステム。
【請求項16】
レーザパルスを発生させるモード同期レーザを含むレーザシステムを動作させる方法であって、該レーザパルスは、ストレッチャに供給され、次いで増幅器に供給され、次いでコンプレッサに供給され、該方法は、
該コンプレッサを退出する該パルスのキャリアエンベロープ位相(CEP)をモニターし、それに対応する出力信号を発生させることと、
該モニターされたCEPに基づいて、別個の第1のフィードバック信号および第2のフィードバック信号を生成することであって、該第1のフィードバック信号は、第1の周波数範囲を有し、該第2のフィードバック信号は、第2の周波数範囲を有し、該第1の周波数範囲は、該第2の周波数範囲よりも周波数が高い、ことと、
該第1のフィードバック信号に基づいて該モード同期レーザのCEPを調節することと、
該ストレッチャまたは該コンプレッサの一方に該第2のフィードバック信号を供給することにより、該圧縮されたパルスのCEPを調節することと
を含む、方法。
【請求項17】
前記出力信号は、周波数スプリッタによって2つの部分に分割される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記出力信号は、2つの部分に分割され、各部分は、別個の周波数フィルタを通過させられる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の周波数範囲と前記第2の周波数範囲とは、重複する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のフィードバック信号を受信する前記パルスストレッチャまたは前記パルスコンプレッサは、少なくとも1つの回折格子を含み、該回折格子の角度は、該第2のフィードバック信号に応答して調節される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のフィードバック信号を受信する前記パルスストレッチャまたは前記パルスコンプレッサは、一対の離間された回折格子を含み、該回折格子の間の間隔は、該第2のフィードバック信号に応答して調節される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記モード同期レーザは、励起レーザによって送達される励起ビームによって励起される光学的キャビティを含み、該励起ビームは、該キャビティに進入することに先立って可変モジュレータを通過し、前記第1のフィードバック信号は、該可変モジュレータに供給される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
光学装置であって、光学装置は、
モード同期光パルスを発生させるためのレーザキャビティを含む発振器配列であって、光パルスのシーケンスは、増幅のためにそこから選択され、光パルスのシーケンスは、所定のパルス繰り返し周波数(PRF)を有する、発振器配列と、
増幅のために選択された光パルスのシーケンスを増幅し、増幅されたパルスの対応するシーケンスを送達するための光増幅器配列と、
光パルスのシーケンスのPRFに等しいかそれよりも小さい最大周波数において、増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間キャリアエンベロープ位相(CEP)を表す第1の信号を周期的に発生させるための干渉計と、
第1の信号を第2の信号および第3の信号に分割するための周波数スプリッタであって、第2の信号は、DCと最大周波数より小さい第1の周波数との間の第1の範囲における周波数成分を含み、第3の信号は、最大周波数より小さい第2の周波数と最大周波数との間の第2の範囲における周波数成分を含む、周波数スプリッタと、
増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスのCEPを調節するための低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラであって、低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラの各々は、発振器配列のレーザキャビティの外側に位置し、該低速応答CEPコントローラは、該第2の信号を受信するように配列され、該高速応答CEPコントローラは、該第3の信号を受信するように配列され、該低速応答CEPコントローラおよび該高速応答CEPコントローラは、第1の制御信号および第2の制御信号のそれぞれを発生させるように配列され、第1の制御信号および第2の制御信号の各々は、増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間CEPと所望のCEPとの間の差異を表す、低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラと
を備え、
第1の制御信号および第2の制御信号は、該増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間CEPと所望のCEPとの間の差異を最小限にするために用いられる、装置。
【請求項24】
前記第1の周波数および前記第2の周波数は、ほぼ等しい、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記第1の周波数は、前記第2の周波数より小さい、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記高速応答CEPコントローラは、前記第の信号に応答して、前記増幅されたパルスのCEPを調節するための前記発振器配列の前記レーザキャビティによって送達される前記モード同期パルスのCEPを調節するように配列される、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記発振器配列の前記レーザキャビティは、励起レーザによって送達される励起ビームによって光学的に励起され、前記高速応答CEPコントローラは、前記レーザキャビティによって送達される前記モード同期パルスのCEPを変動させるために、前記励起ビームを選択的に変調するための選択的可変モジュレータである、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記低速応答CEPコントローラは、前記第の信号に応答して、前記増幅されたパルスのCEPを調節するための増幅に先立って、前記パルスのシーケンスにおけるパルスのCEPを調節するように配列される、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記低速応答CEPコントローラは、前記第の信号に応答して、前記増幅されたパルスのCEPを調節するための増幅後、前記パルスのシーケンスにおけるパルスのCEPを調節するように配列される、請求項26に記載の装置。
【請求項30】
前記発振器配列の前記レーザキャビティは、前記パルスのシーケンスにおけるパルスの所定のPRFを上回るPRFにおいて、前記モード同期光パルスを送達し、前記発振器配列は、前記光パルスのシーケンスを前記モード同期光パルスから選択するためのパルスピッカを含む、請求項23に記載の装置。
【請求項31】
前記モード同期パルスのPRFは、約80メガヘルツであって、前記パルスのシーケンスの所定のPRFは、10キロヘルツである、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記増幅器配列は、増幅に先立って増幅されるべきパルスの持続時間を延長するためのパルスストレッチャと、前記増幅を提供するための光増幅器と、前記増幅されたパルスの持続時間を短縮するためのパルスコンプレッサとを含み、前記パルスピッカは、前記パルスストレッチャと前記光増幅器との間に位置する、請求項30に記載の装置。
【請求項33】
前記光増幅器は、再生増幅器である、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記パルスストレッチャおよび前記パルスコンプレッサのうちの1つは、追加的に、前記低速応答CEPコントローラとして機能する、請求項32に記載の装置。
【請求項35】
前記パルスストレッチャは、追加的に、前記低速応答CEPコントローラとして機能する、請求項23に記載の装置。
【請求項36】
前記低速応答CEPコントローラおよび前記高速応答CEPコントローラは、PIDコントローラである、請求項23に記載の装置。
【請求項37】
光学装置であって、該光学装置は、
モード同期光パルスを発生させるためのレーザキャビティを含む発振器配列であって、光パルスのシーケンスは、増幅のためにそこから選択され、光パルスのシーケンスは、所定のパルス繰り返し周波数(PRF)を有し、レーザキャビティは、励起レーザとレーザキャビティとの間の励起ビームにおいて位置する選択的可変モジュレータにより、励起レーザからの励起ビームによって光学的に励起される、発振器配列と、
増幅のために選択された光パルスのシーケンスを増幅して増幅されたパルスの対応するシーケンスを送達するためのチャープパルス光増幅器(CPA)配列であって、CPA配列は、増幅に先立ってパルスの持続時間を伸長するためのパルスストレッチャと、伸長されたパルスを増幅するための光増幅器と、増幅された伸長されたパルスを圧縮するためのパルスコンプレッサとを含む、CPA配列と、
光パルスのシーケンスのPRFに等しいかそれよりも小さい最大周波数において、増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間キャリアエンベロープ位相(CEP)を表す第1の信号を周期的に発生させるための干渉計と、
第1の信号を第2の信号および第3の信号に分割するための周波数スプリッタであって、第2の信号は、DCと最大周波数より小さい第1の周波数との間の第1の範囲における周波数成分を含み、第3の信号は、最大周波数より小さい第2の周波数と最大周波数との間の第2の範囲における周波数成分を含む、周波数スプリッタと、
増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスのCEPを調節するための低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラであって、低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラの各々は、発振器配列のレーザキャビティの外側に位置し、パルスコンプレッサおよびパルスストレッチャのうちの1つは、選択的可変分散を有し、低速応答CEPコントローラとして機能し、選択的可変励起ビームモジュレータは、高速応答CEPコントローラとして機能し、該低速応答CEPコントローラは、該第2の信号を受信するように配列され、該高速応答CEPコントローラは、該第3の信号を受信するように配列され、該低速応答CEPコントローラおよび該高速応答CEPコントローラは、第1の制御信号および第2の制御信号のそれぞれを発生させるように配列され、第1の制御信号および第2の制御信号の各々は、増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間CEPと所望のCEPとの間の差異を表す、低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラと
を備え、
第1の制御信号および第2の制御信号は、該増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間CEPと所望のCEPとの間の差異を最小限にするために用いられる、装置。
【請求項38】
前記所定のPRFを有する前記パルスのシーケンスは、前記パルスコンプレッサと前記光増幅器との間に位置するパルスピッカによって、前記レーザキャビティから送達される前記モード同期パルスから選択される、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記光増幅器は、再生増幅器である、請求項37に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、フェムト秒パルスを送達するためのレーザ発振器と増幅器との配列に関する。本発明は、特に、レーザパルスが増幅に先立って一時的に伸長され、増幅されたパルスが送達の前に一時的に圧縮されるような配列に関する。
【背景技術】
【0002】
数フェムト秒またはそれよりも短い持続時間を有する光パルスは、パルスのエンベロープ内のパルスの基本キャリア周波数におけるほんの数光サイクルのみを含み得る。パルスエンベロープは、典型的に、ガウスまたはSech形を有する。エンベロープにおけるピーク出力は、エンベロープに対するキャリアサイクルの位相に依存する。これは、キャリアエンベロープ位相(CEP)と当業者によって呼ばれる。図1Aは、キャリアが、パルスエンベロープに対して、量φCEだけ位相中で遅延させられた状態を図式的に図示するグラフである。最高ピーク出力は、キャリアサイクルのうちの1つのピークがエンベロープのピークと正確に同位相(φCE=0.0)であるときに生じる。これは、図1Bに図式的に図示される。エンベロープにおけるサイクルの数が少ないほど(すなわち、パルスが短いほど)パルス内のピーク出力のこの位相依存は大きくなる。
【0003】
レーザ発振器のCEPを安定化させるための技法は、長年、当該技術分野において公知である。そのような技法の1つは、CEPが測定され所望の値と比較される閉ループフィードバック配列を伴うものである。測定値と実際の値との間のいくらかの差異は、発振器の利得媒質に対する光励起出力を変動させて測定値を所望の値に戻すために、使用される。しかしながら、CEP安定化発振器からのパルスがチャープパルス増幅配列内で増幅される場合、増幅されたパルスのCEPは、通常、安定しないことが分かっている。そのような配列では、発振器からの入力パルスは、パルスストレッチャによって増幅前の元の持続時間から一時的に伸長され、光増幅器において増幅されて、おおよそ元のパルス持続時間に戻るようにパルスコンプレッサにおいて一時的に圧縮される。
【0004】
チャープパルス増幅配列からの出力パルスを安定化させるためのアプローチの1つは、特許文献1に開示されており、参照によって本明細書に組み込まれる。ここでは、安定化が、CEPが再び測定されて所望の値と比較される閉ループ配列によってもたらされる。測定値と実際の値との間のいくらかの差異は、増幅器のパルスストレッチャまたはコンプレッサ内の回折格子の分離を変動させ、測定値を所望の値に戻すために使用される。
【0005】
マスタ発振器と増幅器とのシステムにおけるCEP制御のためのこのアプローチおよび他の先行技術のアプローチに関する問題は、それらのアプローチが、全体的なCEPの不安定性に寄与する異なる要因を考慮しないことである。一例として、熱効果による低速CEPドリフトと、パルスストレッチャ、光増幅器、またはパルスコンプレッサ内の機械的共振に起因するより高周波数のドリフトが存在し得る。
【0006】
Yu et al.に付与された特許文献2は、励起レーザからのビームによって光学的に励起されるモード同期発振器のCEPを安定化させるための配列を、開示している。ここでは、平衡型ホモダイン検出システムが、f−2f干渉計において使用されることによって、超高速発振器のCEPを安定化させるために使用されるCEP誤差信号を発生させる。誤差信号の2つの部分(平衡型ホモダイン検出器配列の各アームから1つずつ)は、第1のPID(比例積分微分型)コントローラ(フィードバック回路)によって処理される。第1のPIDコントローラからのフィードバック信号は、2つの部分に分割される。2つの部分のうちの第1の部分は、第2のPIDコントローラにフィードされる。第2のPIDコントローラからの信号は、発振器内の低速(低周波数)応答アクチュエータ(この場合、発振器において発振器の共振器(レーザキャビティ)ミラー間に位置し、第2のPIDコントローラからの信号に応答して、圧電変換器(PZT)によって移動可能であるプリズム)を調節するために使用される。第1のPIDコントローラからの信号の2つの部分のうちの第2の部分は、レーザキャビティの外側の高速応答アクチュエータにフィードされ、その高速応答アクチュエータは、主に、第1のPIDコントローラからの信号の高周波数成分に応答する。この場合、アクチュエータは、励起レーザビーム内に挿入された音響光学モジュレータ(AOM)であって、発振器レーザキャビティ内の利得要素に送達される励起出力を精密に変調する。この方法論は、モード同期発振器のCE位相を安定化させる際に有効であると説明されている。
【0007】
Yu et al.の特許の配列の欠点の1つは、低周波数アクチュエータを制御する信号が、高周波数アクチュエータを制御する信号から独立していないことである。第1のPIDコントローラの利得のあらゆる調節は、直列の第1および第2のPIDコントローラの正味利得を自動的に調節する。Yu et al.の特許の配列の別の欠点は、高周波数アクチュエータおよび低周波数アクチュエータに印加される周波数帯を選択するための規定が存在しないことである。選択された特定のアクチュエータが、主に、存在するいかなる周波数選択をも決定する。Yu et al.の特許の配列のさらに別の欠点は、低周波数制御が発振器レーザキャビティにおける可動要素を必要とすることである。動作中のこの要素の移動は、発振器のモード同期に干渉し得る。Yu et al.の特許の開示のさらなる欠点は、発振器と増幅器とのシステムのCEPを制御する問題に対処しないことである。これは、使用されているほとんどの超高速レーザシステムが発振器と増幅器とのシステムであるため、重要である。
【0008】
超高速の発振器と増幅器とのレーザのシステムのCEPを制御するための方法および装置の必要性が残る。そのような方法および装置は、前述の周波数依存CEPの不安定性の源に対処することが可能である一方、発振器制御のためのYu et al.の配列の欠点を克服することが可能であるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0061411号明細書
【特許文献2】米国特許第7,701,982号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による装置の一側面は、モード同期光パルスを発生させるためのレーザキャビティを含む発振器配列を備え、そのシーケンスは、そこから増幅のために選択され、そのシーケンスは、所定のパルス繰り返し周波数(PRF)を有する。光増幅器配列が、増幅のために選択された光パルスのシーケンスを増幅し、増幅されたパルスの対応するシーケンスを送達するために提供される。光パルスのシーケンスのPRFに等しいかそれよりも小さい最大周波数において、増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間キャリアエンベロープ位相(CEP)を表す第1の信号を周期的に発生させるための配列。電子的手段が、第1の信号を第2の信号および第3の信号に分割するために提供される。第2の信号は、DCと最大周波数よりも小さい第1の周波数との間の第1の範囲における周波数成分を含み、第3の信号は、最大周波数よりも小さい第2の周波数と最大周波数との間の第2の範囲における周波数成分を含む。低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラが、増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスのCEPを調節するために提供される。CEPコントローラの各々は、発振器配列のレーザキャビティの外側に位置する。第1の信号処理デバイスが、第2の信号を受信するように配列され、第2の信号処理デバイスが、第3の信号を受信するように配列される。第1の信号処理デバイスおよび第2の信号処理デバイスは、第1の制御信号および第2の制御信号のそれぞれを発生させるように配列され、それらの各々は、増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間CEPと所望のCEPとの間の差異を表す。第1の制御信号および第2の制御信号は、それぞれ、低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラを調節し、増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間CEPと所望のCEPとの間の差異を最小限にする。
実施形態において、本発明は、例えば、下記の項目を提供する。
(項目1)
光学装置であって、前記光学装置は、
モード同期光パルスを発生させるためのレーザキャビティを含む発振器配列であって、前記光パルスのシーケンスは、増幅のためにそこから選択され、前記光パルスのシーケンスは、所定のパルス繰り返し周波数(PRF)を有する、発振器配列と、
増幅のために選択された前記光パルスのシーケンスを増幅し、増幅されたパルスの対応するシーケンスを送達するための光増幅器配列と、
前記光パルスのシーケンスのPRFに等しいかそれよりも小さい最大周波数において、前記増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間キャリアエンベロープ位相(CEP)を表す第1の信号を周期的に発生させるための干渉計と、
前記第1の信号を第2の信号および第3の信号に分割するための周波数スプリッタであって、前記第2の信号は、DCと前記最大周波数より小さい第1の周波数との間の第1の範囲における周波数成分を含み、前記第3の信号は、前記最大周波数より小さい第2の周波数と前記最大周波数との間の第2の範囲における周波数成分を含む、周波数スプリッタと、
前記増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスのCEPを調節するための低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラであって、前記低速応答CEPコントローラおよび前記高速応答CEPコントローラの各々は、前記発振器配列の前記レーザキャビティの外側に位置する、低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラと、
前記第2の信号を受信するように配列される第1の信号処理デバイスと、前記第3の信号を受信するように配列される第2の信号処理デバイスとであって、前記第1の信号処理デバイスおよび前記第2の信号処理デバイスは、第1の制御信号および第2の制御信号のそれぞれを発生させるように配列され、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号の各々は、前記増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間CEPと所望のCEPとの間の差異を表す、第1の信号処理デバイスおよび第2の信号処理デバイスと、
を備え、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号は、それぞれ、前記低速応答CEPコントローラおよび前記高速応答CEPコントローラを調節し、前記増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの前記瞬間CEPと前記所望のCEPとの間の差異を最小限にする、
装置。
(項目2)
前記第1の周波数および前記第2の周波数は、ほぼ等しい、項目1に記載の装置。
(項目3)
前記第1の周波数は、前記第2の周波数より小さい、項目1に記載の装置。
(項目4)
前記第1の周波数は、前記第2の周波数より小さい、項目1に記載の装置。
(項目5)
前記高速応答CEPコントローラは、前記第2の信号に応答して、前記増幅されたパルスのCEPを調節するための前記発振器配列のレーザキャビティによって送達される前記モード同期パルスのCEPを調節するように配列される、項目1に記載の装置。
(項目6)
前記発振器配列の前記レーザキャビティは、励起レーザによって送達される励起ビームによって光学的に励起され、前記高速応答CEPコントローラは、前記レーザキャビティによって送達される前記モード同期パルスのCEPを変動させるために、前記励起ビームを選択的に変調するための選択的可変モジュレータである、項目5に記載の装置。
(項目7)
前記低速応答CEPコントローラは、前記第1の信号に応答して、前記増幅されたパルスのCEPを調節するための増幅に先立って、前記シーケンスにおけるパルスのCEPを調節するように配列される、項目5に記載の装置。
(項目8)
前記低速応答CEPコントローラは、前記第1の信号に応答して、前記増幅されたパルスのCEPを調節するための増幅後、前記シーケンスにおけるパルスのCEPを調節するように配列される、項目5に記載の装置。
(項目9)
前記発振器配列の前記レーザキャビティは、前記シーケンスにおけるパルスの所定のPRFを上回るPRFにおいて、前記モード同期光パルスを送達し、前記発振器配列は、前記光パルスのシーケンスを前記モード同期光パルスから選択するためのパルスピッカを含む、項目1に記載の装置。
(項目10)
前記モード同期パルスのPRFは、約80メガヘルツであって、前記パルスのシーケンスの所定のPRFは、10キロヘルツである、項目9に記載の装置。
(項目11)
前記増幅器配列は、増幅に先立って増幅されるべきパルスの持続時間を延長するためのパルスストレッチャと、前記増幅を提供するための光増幅器と、前記増幅されたパルスの持続時間を短縮するためのパルスコンプレッサとを含み、前記パルスピッカは、前記パルスストレッチャと前記光増幅器との間に位置する、項目9に記載の装置。
(項目12)
前記光増幅器は、再生増幅器である、項目11に記載の装置。
(項目13)
前記パルスストレッチャおよび前記パルスコンプレッサのうちの1つは、追加的に、前記低速応答CEPコントローラとして機能する、項目11に記載の装置。
(項目14)
前記パルスストレッチャは、追加的に、前記低速応答CEPコントローラとして機能する、項目1に記載の装置。
(項目15)
前記第1の信号処理デバイスは、PIDコントローラを含む、項目1に記載の装置。
(項目16)
光学装置であって、該光学装置は、
モード同期光パルスを発生させるためのレーザキャビティを含む発振器配列であって、前記光パルスのシーケンスは、増幅のためにそこから選択され、前記光パルスのシーケンスは、所定のパルス繰り返し周波数(PRF)を有し、前記レーザキャビティは、励起レーザと前記レーザキャビティとの間の励起ビームにおいて位置する選択的可変モジュレータにより、前記励起レーザからの前記励起ビームによって光学的に励起される、発振器配列と、
増幅のために選択された前記光パルスのシーケンスを増幅して増幅されたパルスの対応するシーケンスを送達するためのチャープパルス光増幅器(CPA)配列であって、前記CPA配列は、増幅に先立ってパルスの持続時間を伸長するためのパルスストレッチャと、前記伸長されたパルスを増幅するための光増幅器と、前記増幅された伸長されたパルスを圧縮するためのパルスコンプレッサとを含む、CPA配列と、
前記光パルスのシーケンスのPRFに等しいかそれよりも小さい最大周波数において、前記増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間キャリアエンベロープ位相(CEP)を表す第1の信号を周期的に発生させるための干渉計と、
前記第1の信号を第2の信号および第3の信号に分割するための周波数スプリッタであって、前記第2の信号は、DCと前記最大周波数より小さい第1の周波数との間の第1の範囲における周波数成分を含み、前記第3の信号は、前記最大周波数より小さい第2の周波数と前記最大周波数との間の第2の範囲における周波数成分を含む、周波数スプリッタと、
前記増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスのCEPを調節するための低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラであって、前記低速応答CEPコントローラおよび前記高速応答CEPコントローラの各々は、前記発振器配列の前記レーザキャビティの外側に位置し、前記パルスコンプレッサおよび前記パルスストレッチャのうちの1つは、選択的可変分散を有し、前記低速応答CEPコントローラとして機能し、前記選択的可変励起ビームモジュレータは、前記高速応答CEPコントローラとして機能する、低速応答CEPコントローラおよび高速応答CEPコントローラと、
前記第2の信号を受信するように配列される第1の信号処理デバイスと、前記第3の信号を受信するように配列される第2の信号処理デバイスとであって、前記第1の信号処理デバイスおよび前記第2の信号処理デバイスは、第1の制御信号および第2の制御信号のそれぞれを発生させるように配列され、前記第1の制御信号および前記第2の制御信号の各々は、前記増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの瞬間CEPと所望のCEPとの間の差異を表す、第1の信号処理デバイスおよび第2の信号処理デバイスと、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号は、前記低速応答CEPコントローラおよび前記高速応答CEPコントローラのそれぞれを調節し、前記増幅されたパルスのシーケンスにおけるパルスの前記瞬間CEPと前記所望のCEPとの間の差異を最小限にする、
装置。
(項目17)
前記所定のPRFを有する前記パルスのシーケンスは、前記パルスコンプレッサと前記光増幅器との間に位置するパルスピッカによって、前記レーザキャビティから送達される前記モード同期パルスから選択される、項目16に記載の装置。
(項目18)
前記光増幅器は、再生増幅器である、項目16に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、量φCEだけ位相中のパルスエンベロープに遅れるキャリア波を図式的に図示するグラフである。
図1B図1Bは、パルスエンベロープと正確に同位相であるキャリア波を図式的に図示するグラフである。
図2図2は、本発明による装置の一つの好ましい実施形態を図式的に図示し、その実施形態は、CEP同期発振器を含み、増幅されるべきパルスをチャープパルス増幅器(CPA)に送達し、そのCPAは、増幅の前にパルスを一時的に伸長するためのパルスストレッチャと、一時的に伸長されたパルスを増幅するための光増幅器と、増幅された伸長パルスを一時的に圧縮するためのパルスコンプレッサと、圧縮された増幅パルスのCEPを測定するための干渉計と、CEP測定を高周波数成分にスプリッティングするための周波数スプリッティング手段とを含み、低周波数成分が、パルスストレッチャにおける分散を調節することによって増幅器のCEPを調節するために使用され、高周波数成分が、位相安定化された発振器のCEPを調節するために使用される。
図2A図2Aは、図2の発振器の詳細を図式的に図示する。
図3図3は、図2の装置の実験的実施例における圧縮された増幅パルスの測定されたCEPを、時間の関数として図式的に図示するグラフである。
図4図4は、本発明による装置の別の好ましい実施形態を図式的に図示し、その実施形態は、図2の装置に類似するが、CEP測定の低周波数成分がパルスコンプレッサ内の分散を調節することによって増幅器のCEPを調節するために使用される。
図5A図5Aは、単一の検出器要素のみを含む図2の装置内のCEP測定干渉計の配列を図式的に図示する。
図5B図5Bは、多要素の位置敏感検出器を含む図2の装置内のCEP測定干渉計の配列を図式的に図示する。
図5C図5Cは、CCDアレイ検出器のみを含む図2の装置内のCEP測定干渉計の配列を図式的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
類似特徴が類似参照番号によって指定される図面を継続して参照すると、図2および図2Aは、本発明による超高速発振器−増幅器装置の一つの好ましい実施形態10を図式的に図示する。これらの図面および本明細書で以下にさらに参照される他の図面では、電気経路は太線によって描写され、光学経路は細線によって描写される。
【0013】
装置10は、超高速レーザ発振器12(ここでは、チタンでドープされたサファイア(Ti:サファイア)利得媒質を含む発振器)を含む。発振器12(図2A参照)は、励起放射のビーム16を送達する励起レーザ14を含む。AOM等のモジュレータ18は、ビーム16を選択的に変調し、変調された励起ビーム20をもたらすために提供される。ビーム20は、モード同期レーザ共振器(レーザキャビティ)22内のTi:サファイア利得媒質(図示せず)を光学的に励起する。共振器22は、約数十メガヘルツ(MHz)のパルス繰り返し周波数において、モード同期パルスのシーケンス28を送達する。
【0014】
ビーム28におけるパルスのCEPは、インラインf−2f干渉計30を含んで電子装置(PLL電子装置)36を同期させる位相同期ループ32によって、所定のオフセット周波数および位相(同期点)に同期させられる。オフセット周波数は、経路28におけるパルスのPRFの整数の約数である。一例として、オフセット周波数0.25は、経路内の4つおきのパルスが先行または後続の4つ目のパルスとほぼ同じであることをもたらす。干渉計30は、経路28におけるパルスの瞬間CEPを表す信号34を同期電子装置36に提供する。
【0015】
超高速技術の当業者に周知のように、f−2f干渉計内では、CEP測定されるべきパルスの周波数スペクトルは、構造化ファイバ等の拡大デバイスによって、1オクターブを上回るようスペクトル的に拡大される。一般的な超高速利得媒質の利得帯域幅内の中心波長を有するパルスの場合、スペクトルは、白色光の連続体に拡大される。スペクトルは、高周波数部分および低周波数部分に分割され、その低周波数部分は、光学的非線形結晶によって、より高い周波数に変換される周波数である。高周波数部分および変換される低周波数部分は、一時的に分離され、時間的重複および対応するスペクトル重複を残す。2つの部分は、光学的に再結合され、RF信号として直接測定されるビート周波数を提供し、そのRF信号から信号34が計算される。同期電子装置は、瞬間CEPと所望の値との間の差異を表す制御信号38を提供し、その信号は、AOM28に送達され、そのAOMは、共振器22に送達される励起出力を変化させることによって、経路28におけるパルスのCEPを所定の同期点の値に調節する。AOMは、高周波数応答を有し、経路28におけるパルスのために想定される最高PRFにおいて応答可能である。
【0016】
発振器12のための一つの好適な発振器は、Coherent Inc.(Santa Clara, California)から市販されているモデルMicra−CEPSTMである。この発振器は、Menlo Systems GmbH(Munich, Germany)からモデルXPS800として市販のf−2f干渉計および関連付けられた同期電子装置によって、前述のように、位相同期される。
【0017】
継続して図2を参照すると、経路28における位相同期パルスは、パルスストレッチャ40、光増幅器46、およびパルスコンプレッサ48を含むチャープパルス増幅器(CPA)システム42に送達される。発振器12から送達されるパルスのPRFがパルスの後に続く増幅のためには高過ぎるため、パルスピッカまたは周波数分割器26が、ビーム経路28に沿って、パルス繰り返し周波数を数キロヘルツ(KHz)まで低減させるために、(ここでは、パルスストレッチャと増幅器との間に)提供される。CPA42として使用するために好適な一つの光増幅器は、Coherent Inc.のモデルLegend−EliteTMであって、このモデルでは、増幅器46が再生増幅器である。増幅器46は、Coherent Inc.のモデルEvolution−30TM DPSS励起レーザ(図示せず)によって光学的に励起される。
【0018】
パルスコンプレッサ48からの増幅されたパルスは、ビームスプリッティングミラー50によってサンプリングされ、サンプル52は、増幅されたパルスのCEPを測定するために、f−2f干渉計およびプロセッサ54に送られる。干渉計54は、好ましくは、各パルスのCEPを測定するために十分に高速である検出器配列を有し、その検出器配列は、パルスコンプレッサ48から送達されるそのシーケンスにおけるレーザパルス毎にデータ集合をもたらし、それによって、周波数ドメインにおいて検出されたCE位相雑音情報を最大限にする。本発明の装置の実験評価のために使用された干渉計54の実施例では、単一のアナログ検出器(光ダイオード)が、干渉計によって提供されるビート周波数スペクトルを測定するために使用された。検出器出力は、CPAからのパルスのPRFに等しい最大率でサンプリングされた。これは、パルス毎の検出を可能にし(適切な同期を伴って)、スペクトロメータ検出器の最大サンプリング率(例えば、約30Hz)とレーザシステムの繰り返し率(例えば、約10kHz)との間の周波数帯における周波数でのCE位相雑音情報を提供する。
【0019】
装置10において、干渉計54からのCEP電圧信号56は、電子周波数スプリッタ58によって、2つの部分に分割される。高周波数部分64は、所定のスプリッティング周波数と最大周波数との間の周波数を含み、その周波数は、好ましくは、増幅されたパルスのパルス繰り返し周波数である。低周波数部分64は、DCとスプリッティング周波数との間の周波数を含む。低周波数部分は、処理電子装置60(好ましくは、PIDコントローラPID−1)によって受信される。PID−1は、瞬間的に測定されたCEPと増幅されたパルスの所望のCEP値との間の差異を表す制御信号62を発生させる。この信号は、パルスストレッチャ40に送達され、このパルスストレッチャは、パルス伸長がパルスストレッチャにおける分散要素(回折格子またはプリズム等)によって提供される分散を変動させることによって選択的に変動され得るように、構成される。
【0020】
パルスストレッチャにおける分散を変動させることによるCEP制御は、当該技術分野において公知である。前述のように、チャープパルス増幅配列からの出力パルスを安定化するための一つのアプローチは、米国特許公開第2010/0061411号に開示されている。ここでは、測定値と所望の値との間の差異を表す誤差信号は、CPAシステムにおけるパルスストレッチャまたはコンプレッサにおける一対の回折格子の分離を変動させて測定値を所望の値に戻すために、使用される。好ましいアプローチは、分散、ひいてはCEPを変化させるために、パルスストレッチャまたはパルスコンプレッサにおける回折格子の傾斜を変動させるための誤差信号の使用を伴う。このアプローチは、本発明の譲受人に譲渡された米国付与前特許公開第20110019267号に説明されており、その完全な開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0021】
CEPを変化させるために必要とされる分散の変化は、パルス伸長のために必要とされる分散と比較して非常に小さい。したがって、前述の方法のいずれかを使用して、パルスストレッチャ40は、CPA増幅のために必要なパルス伸長機能を損なうことなく、低周波数CEPコントローラとして機能する。
【0022】
周波数スプリッタ58からの高周波数部分64は、信号処理電子装置66(PID−2)によって受け取られる。PID−2は、増幅されたパルスの瞬間的に測定されたCEPと所望のCEP値との間の差異を表す制御信号68を発生させる。この信号は、位相同期ループ32の発振器同期電子装置36に送達される。この信号は、信号34に追加され、CPA42に導入される高周波数CEP変化に対抗するために、同期電子装置によって、位相同期ループの同期点を変動させ、高周波数CEPコントローラ(AOM)18を介して、位相同期CEPを事前補償する。
【0023】
ここでは、高周波数部分および低周波数部分へのCEP制御信号56の分離は、周波数スプリッタ58によって達成されるように前述されているが、全周波数を含む2つの部分に信号56を分割することによって周波数スプリッティングを達成し、次いで、PID−1およびPID−2においてまたはそれらに先行して別個の電子フィルタリングデバイスを使用して、周波数フィルタリングを提供することもまた可能であることに、留意されたい。これは、例えば、各PIDコントローラの利得帯域幅のより高い部分を使用することが有利であることが証明される場合、選択される高周波数および低周波数の範囲の重複を可能にする。そのような重複状態では、低周波数範囲の高周波数限界は、高周波数範囲の低周波数限界を上回る。
【0024】
どのような周波数分離方法が選択される場合でも、高周波数および低周波数の範囲は、最大周波数までの周波数の範囲全体を満たす必要はない。実際、CPA36のいくつかの公知の特徴的機械共振周波数に整合するある程度の限定された高周波数範囲を選択することが、有用であり得る。重要なのは、信号処理電子装置(PID)が、相互から完全に独立して調節可能であって、前述のYu et al.の発振器安定化方法におけるように、相互に依存しないことである。
【0025】
本発明のCEP制御方法は、位相同期Ti:サファイア発振器12およびCPA36が、上記で例示されたようなものである装置10の実施例において評価された。パルスストレッチャ40におけるCEPの変動は、前述の付与前公開第20110019267号に説明される方法に準拠した。発振器出力パルスは、80メガヘルツ(MHz)のPRFにおいて、約20フェムト秒(fs)のFWHM持続時間を有していた。この持続時間は、パルスストレッチャ40において約150ピコ秒(ps)まで伸長された。伸長後、PRFは、パルスピッカ26によって10kHzまで低減された。増幅後、伸長されたパルスは、パルスコンプレッサ48において40fsより短い持続時間まで圧縮された。圧縮された増幅されたパルスは、約0.5ミリジュール(mJ)のパルスあたりエネルギーを有していた。PID−1に送達された低周波数信号部分は、DC〜10Hzの周波数を含んでいた。PID−2に送達された高周波数信号部分は、10Hz〜10KHzの周波数を含んでいた。PID−1およびPID−2として使用するために好適なPIDコントローラは、Stanford Research Systems Inc.(Sunnyvale, California)から市販されている。
【0026】
図3は、図2の装置の前述の実験的実施例における圧縮された増幅パルスの測定されたCEPを、時間の関数として、図式的に図示するグラフである。CIPは、120分の動作周期にわたって測定された。CEPのRMS位相変動は、約200ミリラジアン(mrad)である。グラフから、ピーク間変動は、約1.3ラジアンであることが分かる。ピーク間変動の約20%は、約60分の周期にわたる超低周波数ドリフトに起因する。
【0027】
図4は、本発明による装置10Aの別の好ましい実施形態を図式的に図示する。装置10Aは、図2の装置10に類似するが、パルスストレッチャではなくパルスコンプレッサが、低周波数CEPコントローラとして使用される。コンプレッサの好ましい配列は、前述の付与前公開第20110019267号に説明されている。
【0028】
本発明の実施形態は、二重機能を有していないCEPコントローラが使用されることが可能である。一例として、PID−2の出力は、図2および4の配列における干渉計30とパルスストレッチャ40との間の経路における独立した高周波数応答CEPコントローラを駆動するために使用され得る。独立した低周波数応答CEPコントローラは、これらの配列のCPA42における任意の場所に位置し得る。複数の段階の増幅を含む光増幅器では、そのような低周波数応答CEPコントローラは、増幅器段階間に位置し得る。本発明の装置のこれらの改変および他の改変は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行なわれ得る。
【0029】
独立した高速周波数応答CEPコントローラとして使用するために好適なデバイスとして、音響光学および電子光学周波数/位相シフタ(AOFS/AOPS/EOFS/EOPS)と、音響光学プログラマブル分散フィルタ(AOPDF)、例えば、FASTLITE(Paris, France)から市販されているDazzlerとが挙げられる。高速周波数応答のために列挙されるデバイスはまた、独立した低周波数応答アクチュエータとしても使用されることができる。相互に対して選択的に並進可能な一対のガラス製対向楔もまた、低周波数応答アクチュエータとして使用され得る。
【0030】
前述の本発明の装置の実験的実施例では、干渉計54は、干渉計において生成された干渉縞スペクトルを調べるための単一のアナログ検出器のみ含んでいた。図5Aは、簡略化された形態において、干渉計のこの特定の配列54Aを図式的に描写する。測定されるべきパルスから生成される白色光の連続体70は、前述のように機能する多色性干渉縞形成光学素子72に送達される。回折格子またはプリズム(図示せず)を含む分散デバイス74は、光学素子72における干渉縞パターンの干渉縞スペクトル76を投射する。
【0031】
スペクトルは、短波長λから長波長λまでの範囲内の波長における複数の干渉縞を有する。スペクトルは、例証の便宜上、ここでは、図面の平面に垂直な平面から図面の平面に回転されて示される。実験的実施例では、この範囲は、約490nm〜約570nmであった。スリット配列79は、単一のアナログ検出器80が干渉縞全体に満たないところ(好ましくは、干渉縞の縁)を見るように、スペクトルの1つの干渉縞の幅に満たない幅を備える開口78を有する。パルス間CEP変動は、矢印Mによって図面に示されるように、干渉縞スペクトル76の運動を生じさせる。これは、検出器80に、検出器出力電圧Vの単純変動としてCEP変化を検知させる。信号処理電子装置82は、検出器電圧をサンプリングし、対応する電圧(必要に応じて、増幅または減衰される)を発生させることによって、周波数スプリッティングのための信号56を送信する。この信号は、DCから最大サンプリング周波数(ここでは、実験的実施例において10kHzである増幅器出力のPRF)までの周波数成分を有する。
【0032】
図5Aの配列の欠点は、検出器80および関連付けられた信号処理電子装置82が、スペクトル運動M(位相雑音)および振幅雑音のため、電圧変動間を区別することができないことである。図3で実証されたロバストな位相同期は、このためいっそう注目に値する。振幅雑音からの位相雑音のデカップリングは、安定化の改善につながり得、増幅器出力CEPが、安定化された発振器の同期点に続くのではなく、選択されたCEPに同期されることを可能にするであろう。
【0033】
図5Bは、振幅雑音からの位相雑音のいくらかのデカップリングを提供可能な干渉計54の配列54Bを図式的に図示する。配列54Bは、配列54Aに類似するが、配列54Aの単一の検出器80は、配列55Bでは、多要素アレイ位置敏感検出器84によって置き換えられる。スリット配列79における開口は、検出器がスペクトル76の干渉縞全体を「見る」ことができるよう十分に広く作製される。検出器によって受け取られる干渉縞は、検出器にわたって移動し、スペクトル運動Mに対応する。
【0034】
位置敏感検出器は、アレイの軸に沿った干渉縞スポットの位置に敏感な電圧VおよびVを発生させる。電圧VとVとの間の差異は、検出器上の位置に比例し、それゆえ、干渉縞の位相に比例する。したがって、この差異信号は、直接、信号56として使用される(必要に応じて、増幅または減衰される)。位置敏感検出器84は、増幅器出力の繰り返し率を上回る動作帯域幅を有していなければならない。
【0035】
図5Cは、振幅雑音からの位相雑音の完全デカップリングを本質的に提供可能な干渉計54の配列54Cを図式的に図示する。配列54Cは、配列54Bに類似するが、配列54Bの位置敏感検出器84は、配列55Cでは、CCDアレイ56によって置き換えられる。スリット開口は、干渉縞スペクトル76の大部分がCCDアレイに達するよう十分に広く作製される。干渉縞スペクトルは、CCDアレイ上の位置を変化させ、スペクトル運動Mに対応する。処理電子装置82は、ここでは、増幅器出力のPRFにおいて、一連のCCDアレイをサンプリングする。位相電圧Vは、画素電圧VのV(Nは、典型的に、255である)への高速フーリエ変換から計算される。波長の関数としての干渉縞振幅の読み出しは、診断目的のために抽出されることができる。CCDアレイサンプルの取得から計算(フーリエ変換)までのサンプリングおよび計算の全体は、増幅されたレーザパルスのPRFで発生しなければならない。
【0036】
概して、本発明は、好ましい実施形態および他の実施形態を参照して上記で説明された。しかしながら、本発明は、説明および描写される実施形態に限定されない。むしろ、本発明は、本明細書に添付の請求項によって定義される。
図1A
図1B
図2
図2A
図3
図4
図5A
図5B
図5C