特許第6045082号(P6045082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6045082高密度スポットパターンを達成しながら球面ミラーを使用するマルチパスセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045082
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】高密度スポットパターンを達成しながら球面ミラーを使用するマルチパスセル
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20161206BHJP
   G01N 21/00 20060101ALN20161206BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALN20161206BHJP
   G01N 29/24 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
   G01N21/03 B
   !G01N21/00 A
   !G01N21/3504
   !G01N29/24
【請求項の数】25
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-501261(P2014-501261)
(86)(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公表番号】特表2014-513281(P2014-513281A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】US2012030226
(87)【国際公開番号】WO2012129458
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2015年3月6日
(31)【優先権主張番号】13/426,683
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/467,171
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513235854
【氏名又は名称】ザ レーザー センシング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE LASER SENSING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ソ,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】トーマツィー,デイヴィッド
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−243269(JP,A)
【文献】 特開2010−096550(JP,A)
【文献】 特表2007−514160(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0079760(US,A1)
【文献】 特表2009−503598(JP,A)
【文献】 特開昭54−131982(JP,A)
【文献】 特開平07−198608(JP,A)
【文献】 特開2006−058009(JP,A)
【文献】 特開2010−276363(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0279633(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/057188(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0212217(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/017570(WO,A1)
【文献】 米国特許第04225232(US,A)
【文献】 Boxwell S , et.al.,Design and optimization of optical components using genetic algorithms,Optical Engineering,2004年 7月,Vol. 43 No. 7,p.1643-1646
【文献】 山田昇、小川敬久,進化的アルゴリズムによる集光PV用プリズムアレイシートの最適設計,太陽エネルギー,2009年 3月31日,Vol.35, No.2,第53頁−第60頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G02B 7/00
G02B 7/18− 7/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチパス光学セルにおいて、
前記マルチパス光学セルの第1の終端部を形成する第1のミラー要素と、
前記マルチパス光学セルの第2の終端部を形成する少なくとも1つの第2のミラー要素と、
を備え、
前記第2のミラー要素が、前記マルチパス光学セルに注入される入力光ビームが前記第1のミラー要素と前記第2のミラー要素との間で複数回反射して、前記入力光ビームが前記第1及び第2のミラー要素の反射面に衝突する位置のスポットパターンを生成するように、前記第1のミラー要素に対して配置され、1つ又は複数のセルパラメータが、前記第1及び第2のミラー要素の実際の曲率値を利用した、前記入力光ビームを形成する複数の別個の光線の直接的な三次元の光線追跡を介する最適化を使用して調整され入り組んだ高密度スポットパターンを生成することを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記セルパラメータが、前記第1のミラー要素の光軸に対する前記入力ビームの向き、前記第1のミラー要素と前記第2のミラー要素との間隔、前記第1及び第2のミラー要素のうちのいずれか一方の出射穴の位置からなる群から選択されることを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項3】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記入力光ビームが、前記第1のミラー要素に形成される入射穴を通して注入され、前記セルパラメータは、前記第1のミラー要素の前記入射穴の位置をさらに含むことを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項4】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記第1及び第2のミラー要素が凹球面要素を含むことを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項5】
請求項4に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記第1のミラー要素の前記曲率が、前記第2のミラー要素の曲率と同じであり、対称マルチパス光学セルを形成することを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項6】
請求項3に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記第1のミラー要素の前記曲率が、前記第2のミラー要素の曲率と異なり、非対称マルチパス光学セルを形成することを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項7】
請求項3に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記第1及び第2のミラー要素の構成が、再入球面ミラーマルチパス光学セルと共に利用されるものよりも多数のパス数を定義する高密度スポットパターンを生成するように最適化されることを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項8】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記第1及び第2のミラー要素が非点収差ミラー要素を含むことを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項9】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
少なくとも1つのミラー要素が円筒鏡要素を含むことを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項10】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記第1のミラー要素はスプリット球面ミラー要素を含むことを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項11】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記少なくとも1つの第2のミラー要素は、前記第1のミラー要素と位置合わせされて、マルチパスセルを形成する複数のミラー要素を備え、前記マルチパスセルにおいて、前記入力光ビームは、前記セル内を移動する際、前記複数のミラー要素の各ミラー要素から反射されることを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項12】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記セルパラメータが、入りんだスポットパターンを発見するように、反復人工知能ベースの最適化プロセスを使用して変更されることを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項13】
請求項12に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記人工知能ベースの最適化プロセスが、遺伝アルゴリズム最適化プロセスを利用して、前記入り組んだスポットパターンを発見することを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項14】
請求項3に記載のマルチパス光学セルにおいて、
構成を生成するために分析される追加のセルパラメータが、前記ミラー要素に形成された前記入射穴と出射穴との間の最小の隔たり、スポットと前記出射穴との最小間隔、及びミラー開口部を含むことを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項15】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記マルチパス光学セルが、前記入力ビームを前記マルチパスセル光学セルに注入するとともに、前記マルチパス光学セルから出力ビームを抽出する光学結合構成をさらに備えることを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項16】
請求項15に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記光学結合構成が光ファイバベースの結合構成を備えることを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項17】
請求項15に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記光学結合構成が前記セルの第1及び第2の両終端部に結合され、いずれか一方の第1又は第2の終端部に、注入される入力ビームを提供することを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項18】
請求項17に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記光学結合構成が、前記入力ビームの注入位置を変更するスイッチをさらに含むことを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項19】
請求項1に記載のマルチパス光学セルにおいて、
前記マルチパス光学セルが、ガス充填吸収セル、光音響分光法、ファラデー回転分光法、キャビティ増強分光法、軸外積分キャビティ出力分光法、及びレーザ利得媒質からなる群から選択される用途に利用されることを特徴とするマルチパス光学セル。
【請求項20】
マルチパス光学セル内に高密度スポットパターンを生成する方法において、
a)第1のミラー要素を前記マルチパス光学セルの第1の終端部として位置決めするステップであって、前記第1のミラー要素は第1の定義された曲率を有する、ステップと、
b)第2のミラー要素を前記マルチパス光学セルの第2の終端部として位置決めするステップであって、前記第2のミラー要素は第2の定義された曲率を有し、前記第1及び第2のミラー要素は距離dだけ隔てられる、ステップと、
c)入力ビームを複数の別個の光線として定義するステップと、
d)別個の各光線が前記第1及び第2のミラー要素と相互作用する際、前記第1及び第2のミラー要素の実際の曲率の関数として、前記別個の各光線の反射の三次元の光線追跡を行うステップと、
e)人工知能最適化を使用して、前記第1のミラー要素の前記入射穴の位置、前記第1のミラー要素の光軸に対する入力ビームの向き、前記第1のミラー要素と前記第2のミラー要素との間隔、前記第1及び第2のミラー要素のうちのいずれか一方の出射穴の位置のうちの1つ又は複数の変更をシミュレートし、高密度スポットパターンを生成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、
人工知能を使用するステップe)が、以下:最小スポットサイズ、ミラー開口部、光路長、ビームの出射位置、出射角度、入射穴と出射穴との隔たり、出射穴に対するスポットの位置のうちの1つ又は複数の最適化をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法において、
ステップa)及びb)を実行するに当たり、球面ミラーが提供されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
記最適化は、再入球面ミラーマルチパス光学セルに関連するものよりも高密度のスポットパターンを有する構成を生成することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法において、
伝アルゴリズムが前記最適化プロセスに使用されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法において、
力ビーム整形に関連するパラメータが、所定の形状の出力ビームを生成するように最適化されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年3月24日に出願された米国仮特許出願第61/467,171号明細書の利益を主張するものであり、この仮特許出願を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、光学マルチパスセル(MPC)構成に関し、より詳細には、直接光線追跡技術を使用して、大きなビームスポット重複なしで各ミラーの表面の大部分を充填するスポットパターンを作成するように構成される構成に関する。
【背景技術】
【0003】
環境中の小量のガスを検出する既知の成功したシステムは、吸光分析の使用によるものである。この技術により、機器が検出するように設計された特定のガスにより高度に吸収される選択された波長の光ビームは、ガスの試料を通過する。光ビームの吸収率は、光ビーム内のガスの濃度レベルの指標として使用される。スペクトル吸収による低レベルのガス濃度を検出する感度を向上させるために、光ビームをガス試料の比較的長い経路に通す必要がある。言い換えれば、試料を通過する光ビームの長さが増大するほど、吸収が増大するため、非常に小さなレベルのガスを検出する機器の感度も増大する。
【0004】
ビームが、ガス試料を含む非常に長い管を通過する場合、そのような長い管を必要とする機器が極めて扱いづらく、それ故、可搬が容易には不可能であることを理解するのは容易である。この問題を克服するために、光ビームが対向するミラー間で繰り返し反射され、それにより、機器のサイズを実質的に低減することができるように、ガス試料へのビーム露出長を増大させるシステムが考案された。
【0005】
この種の典型的な吸収セルは、「マルチパスセル」と呼ばれ、細長い円筒形を備え、細長い円筒形内で、ミラーが両端部に配置され、光がミラーのうちの1つの穴を通ってセル内に導入される。これらのマルチパスセルは必然的に、ミラー跳ね返りスポット位置の重複を回避するが、その理由は、各スポットからの散乱光が重複スポットビーム方向に反射して、干渉エタロンフリンジパターンを生じさせるおそれがあるためである。これらのセルは一般に、凹面鏡面を使用して、ビームを各跳ね返りで再集束して、レーザビームが長い光路にわたって分散しないようにもする。
【0006】
図1は、一対のミラー2、3を備える従来技術による例示的なマルチパスセル構成1を示し、一対のミラー2、3は所定の間隔dだけ離間されて、光キャビティを形成する。ミラー2、3のそれぞれは、この例では同じ半径曲率を有し、集束点を有する球面ミラーの形態をとる。スポットパターンを生成するために、入力レーザビームは、軸外向き(すなわち、構成1の光軸OAに対して軸外)でキャビティ内に導入される。図1を参照すると、入力レーザビーム1は、レーザ源5により提供され、ミラー3に形成された穴4を通してシステム内に導入されるものとして示される。次に、入力レーザビーム1は、ミラー2と3との間で複数回跳ね返り、示されるように、最終的に穴4を通って出射し、検出器6に入る。この特定の従来技術による実施形態は、出力レーザビームが入力ビームと同じアパーチャを通るため、「再入」構成として説明される。
【0007】
跳ね返りにより形成される例示的なスポットパターンも図1に示される。明らかなことに、跳ね返りの数(ひいてはスポット数)を増大させることにより、光路長は増大する。上述した追跡ガス検知等の多くの構成では、比較的小さな物理的サイズ内で(すなわち、数cmのオーダである可能性が高い傾向を有する隔たりd)比較的長い光路長(時には数十のミラーで、m単位で測定される)を利用することが好ましい。スポット密度の増大により、この所望の結果が提供されるが、スポットの重複を回避することも重要である(スポットの重複は、回避されない場合、不要な干渉効果、フリンジパターン等を生じさせる)。従来技術による構成は通常、単一円形又は単一楕円形パターンのいずれの形態のスポットパターンを生成する球形部材を利用するが、これらのセルは、重複が生じるまでに形成することができるスポット数に関して制限される。
【0008】
比較的高密度パターンでスポットを重複させない様々なマルチパスセル構成が当該技術分野において既知である。これらの構成は一般に、従来の球面ミラーを使用するのではなく、純粋な非点収差セル又は円筒鏡ベースのマルチパスセルのいずれかの形態をとる。純粋な非点収差セルのミラーは、正確な非点収差量を達成するために、極めて高い許容差まで機械加工されなければならず(それにより、全体のシステムコストが増大する)、不一致ミラーは、ミラーの一方を回転させて、所望の再入状況(すなわち、米国特許第5,291,265号明細書に記載され、後述されるように、安定性を最大にするために、入力ビーム位置と出力ビーム位置との一致)を提供する必要がある。非点収差セルは初めて、Applied Optics,Vol.3,page 523 et seq.,1964に掲載されたD.Herriottらによる論文「Off−axis paths in spherical mirror interferometers」に記載された。非点収差構成の大きな問題は、安定した予測可能な再入パターンを達成するために、厳密な焦点距離を有する極めて高精度許容差ミラーのコストが高いことである。精密許容差の研磨ミラーに対する代替は、一軸に沿って応力を圧縮させて、ミラーを湾曲させ、非点収差ミラーを達成する球面ミラーを使用することであるが、これは安定した構成ではない。許容差を緩和した非点収差ミラーを使用するそのようなセルの開発に対する改良形態は、1994年3月1日にP.L.Kebabianに発行された米国特許第5,291,265号明細書に開示されるように、Aerodyne Research,Inc.により開発されており、その改良形態は、半径曲率の比率が実際に、シミュレーションから計算される値よりも大きいように製造された一対のミラーを利用する。この改良形態では、ミラーの軸を中心としたミラーの回転により、再入状況を達成することができ、より低い許容差のミラーを使用することができる。これらのセルは、ミラーの菱形エリアのみを充填するリサジューパターンを生成し、円形ミラーの周縁の周りのスペースが無駄になる。
【0009】
円筒鏡ベースのマルチパスセル(少なくとも1つのミラーが円筒形)は、同じ非点収差構成のスポットを提供し、より低コストである。しかし、円筒形パターンは、各ミラー跳ね返りでビームを垂直方向及び水平方向の両方で再集束させず、したがって、位置合わせがより難しく、非常に高い跳ね返り数の用途で要求されるパターン密度を達成することが難しい。円筒鏡を使用する最近の種類の非点収差セルが、「Near Reentrant Dense Pattern Optical Multipass Cell」という名称で、2007年12月11日にJ.A.Silverに発行された米国特許第7,307,716号明細書に記載されている。円筒鏡は通常、より低い精度の表面品質(λ)で研磨され、光ビームの散乱を生じさせ、λ/4、往々にしてλ8よりも良好に研磨される市販の球面ミラーと比較した場合、フリンジングを増大させるおそれがある。上述したKebabian構成と同様に、この円筒形ベースの設計もリサジューパターンを形成する(鏡面上のスペースが無駄になる)。
【0010】
より新しい種類のマルチパスセルの1つは、C.Robertによる「Simple,stable and compact multiple−reflection optical cell for very long optical paths」という名称の、Applied Optics,Vol.46,No.22,August 2007,p.5408 et seq.に掲載された論文に記載のように、一終端部として「スプリット球面ミラー」を利用する特別に設計された球面ミラーベースの構成を利用する。スポット密度の増大(その結果、光路長の増大)を提供するが、この種のセルは、スポットパターンを移動するビームが対称表面で反射されず、一方向へのビームの大きな歪みを生じさせるため、スポットパターンを中心に向けて螺旋状にし、いくつかのビーム品質問題を呈する。ビームが、反作用効果なしでこのように歪む場合、ミラー上に多数のスポットを形成することはより困難である。
【0011】
これら及び他の従来技術による構成の大半では、マトリックス光線追跡(matrix ray tracing)技術を実施して、実施前にスポットパターンをシミュレートする。一般に、薄レンズ近軸近似を用いる標準のABCDマトリックスにより、高速シミュレーションが可能であり、特にミラー上の同じ近似z平面にすべてのスポットを有する(例えば、単一円形スポットパターン)、標準球面Herriottコール(calls)のスポット位置の良好な近似を示す。ABCDEFマトリックスを使用して、変位表面及び傾斜表面を説明するが、近軸及び薄レンズ近似を保持する、より複雑なトレーサーが開発されている。
【0012】
しかし、これらの近似に頼り続けることにより、様々な従来技術による技術は、特に長路及び複数の反射後に、相当なエラーを光線追跡結果にもたらす。例えば、5°の角度では、θ≒sinθの近軸近似は0.1%の誤差であり、これらの誤差はこれらのマトリックスベースの計算で説明されない。
【発明の概要】
【0013】
当該技術分野に残っている必要性は本発明により対処され、本発明は、光学マルチパスセル(MPC)構成に関し、より詳細には、薄レンズ及び近軸近似を利用しないMPCを設計する新規の技術に関する。薄レンズ及び近軸近似の代わりに、本発明は、真の球面を有するものとしてシミュレートされる(すなわち、「厚レンズ」と定義される)ミラーを用いる直接光線追跡を介する反復人工知能ベースの最適化を利用して、特定のセル構成を識別し、その結果、スポットが大きく重複しない、各ミラー表面の大部分を充填するスポットパターン(以下、「入り組んだ非重複スポットパターン」又は考察の便宜上、単に「入り組んだ」と呼ぶ)を生成する。以下の考察から明らかになるように、様々な構成の本発明は、非点収差円筒形セルに関連する菱形パターンとは対照的に、円形の高密度スポットパターンを生成し、円形ミラー全体をスポットで充填する。
【0014】
本発明によれば、入力レーザビームは、光線の集合(ビーム幅境界を画定する幾何学的形状パターンに配置される)としてシミュレートされ、各光線は、一対のミラー間を移動する際、三次元(ベクトル)で独立して追跡される。このベクトルベースの光線追跡に基づく反復コンピュータシミュレーションを使用して、新規の入り組んだスポットパターンを生成する。様々な因子が操作されて(単独で、又は他のパラメータと組み合わせて)、大きな重複なしで鏡面の大部分を充填するこれらの新しい入り組んだスポットパターンを生成する。特に、人工知能(AI)遺伝アルゴリズムを使用して、パラメータの様々な組み合わせを選択してテストし、所望の高密度の入り組んだスポットパターンを生成する構成を識別する。このプロセスは、マルチパスセル構成の異なる構成要素の側面を最大化する異なるレベルを経る、情報に基づくモンテカルロ最適化型の分析を実行する。様々なパラメータは「遺伝子」として使用され、異なるランダムな組み合わせの様々な混合は、異なるレベルの適応性をもたらし、最強の組み合わせが次の反復に向けて生き残る。
【0015】
本発明によれば、許容可能な解を探すプロセス中に変更され得る入力パラメータセットは以下を含む:入力レーザビームの鏡面での位置(x,y)(ミラーの入射穴)、システムの光軸に対するこの入力ビームの配向角θ、θ、セルを形成する対向ミラーを隔てる距離d、及びビームがセルを出る前に経る通過数N。
【0016】
重要な設計目標は、高密度スポットパターンを達成する(すなわち、隣り合うスポットの間隔を最小化する)ことであるが、特定の構成を評価する際に考慮し得る他の基準としては、以下のうちの1つ又は複数が挙げられる:光線が球面ミラーの表面の「境界以内」に留まることの保証、十分に長い光路長の生成、入射穴に対する出射穴の位置、及び「最後」のスポットの近隣スポットに対する出射穴の位置(出射ビームに十分なサイズの穴を形成する物理的プロセスが、ミラー上の別のスポットに近すぎないことを保証する)。
【0017】
本発明の構成の利点は、単純な平凹球面ガラス基板をミラーとして使用することができることであり、特別に設計された非点収差ミラー、円筒鏡、スプリットミラー等を使用する必要がある従来技術による高密度スポットパターン構成と比較して、製造費用の大きな節減を提供する。しかし、本発明の直接光線追跡反復最適化方法を、必要に応じて、これらの他のミラー設計と共に使用して、無駄な鏡面面積を低減することも可能なことを理解されたい。
【0018】
例示的な一実施形態では、本発明は、マルチパス光学セルの第1の終端部を形成し、入力光ビームの入射口を形成する入射穴を含む第1のミラー要素と、マルチパス光学セルの第2の終端部を形成する第2のミラー要素と、を含むマルチパス光学セルを備え、第2のミラー要素は、入力光ビームが第1のミラー要素と第2のミラー要素との間で複数回反射して、ビームが第1及び第2のミラー要素の反射面に衝突する位置のスポットパターンを生成するように、第1のミラー要素に対して配置され、1つ又は複数のセルパラメータが、入力光ビームを形成する複数の別個の光線の直接追跡を介して、反復人工知能ベースの最適化を使用して構成され、第1及び第2のミラー要素の実際の曲率値を利用して、入り組んだ高密度スポットパターンを生成する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、マルチパス光学セル内に高密度スポットパターンを生成する方法を開示し、本方法は、a)第1のミラー要素をマルチパス光学セルの第1の終端部として位置決めするステップであって、第1のミラー要素は第1の定義された曲率を有する、ステップと、b)第2のミラー要素をマルチパス光学セルの第2の終端部として位置決めするステップであって、第2のミラー要素は第2の定義された曲率を有し、第1及び第2のミラー要素は距離dだけ隔てられる、ステップと、c)入力ビームを複数の別個の光線として定義するステップと、d)別個の各光線が第1及び第2のミラー要素と相互作用する際、第1及び第2のミラー要素の実際の曲率の関数として、別個の各光線の反射を追跡するステップと、e)人工知能最適化を使用して、第1のミラー要素の入射穴の位置、第1のミラー要素の光軸に対する入力ビームの向き、第1のミラー要素と第2のミラー要素との間隔、第1及び第2のミラー要素のうちのいずれか一方の出射穴の位置のうちの1つ又は複数の変更をシミュレートして、高密度スポットパターンを生成するステップと、を含む。この方法実施形態では、所定の形状の出力ビーム(例えば、球形出力ビーム等)を生成するように、入力ビームの形状を最適化することも可能である。
【0020】
他の代替の実施形態では、本発明の技術を、3つ以上のミラーを利用するマルチパスセル構成と併用し、各光線が、セルを横断し、各ミラーと相互作用する際に経路で個々に追跡されるのと同じ直線光線追跡反復最適化技術を適用することができる。さらに、ビームをセルに注入するために、ミラーの穴以外の構成を利用するマルチパスセル構成も、本発明の技術を利用することができる(適した構成を見つけるために最適化されたパラメータの適宜調整を伴って)。
【0021】
本発明の他及びさらなる態様及び利点が、以下の考察の過程において、関連する図面を参照することにより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、従来技術による例示的なマルチパスセルの図である。
図2図2は、光ビームの周縁を縁取るように配置された複数の別個の光線としての光ビームのシミュレーションを示す。
図3図3は、球面と相互作用する際に複数の別個の光線が辿る様々な経路を示す。
図4図4は、本発明の直接光線追跡プロセスを使用して作成された例示的なスポットパターンを示す。
図5図5は、図4のスポットパターンのコンピュータ生成された光線追跡図である。
図6図6は、図4の設計に関連するパラメータに基づいて構成された実際のマルチパスセルの写真である。
図7図7は、本発明の技術を使用して作成された別の例示的なスポットパターンを示し、この場合、マルチパスセル内のミラー間で通過が459回生じる。
図8図8は、図7の実施形態の写真である。
図9図9は、マルチパスセルの入力においてモード整合レンズを含むことにより作成される図7のスポットパターンの変更を示す。
図10図10は、本発明により形成されるさらに別のマルチパスセル構成のコンピュータ生成の光線トレースであり、この場合、2つの重複する「C」として現れるスポットパターンが生成される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述したように、従来技術によるマトリックスベースの光線追跡方法が、スポットパターンが非常に大きな曲率を有する表面から反射する場合を除き、近軸及び薄レンズ近似の使用により、長路及び複数の反射後に大きな誤差を含み得ることが分かっている。例えば、5°の角度では、近軸近似θ≒sinθは0.1%の誤差内にあり、曲率のより高い表面はさらに斜めの反射を生成する。従来、方程式に基づく解決策の直接光線追跡を行い、このより厳密な光線追跡に合うように最終的な構成を調整することにより、何らかの補正が得られた。しかし、近軸及び薄レンズ近似はこのプロセスでも同様に保持される。これらの近似の存在及び実際のセル設計に合う方程式に基づく設計の不在は、さもなければ実行可能なMPC構成を提供し得る他のスポットパターンを生成する能力を制限してきたと考えられる。特に、マトリックスベースの手法では容易にシミュレートされない球面収差の影響を考慮していないことは、これらの設計努力の主な限界と考えられる。
【0024】
本発明は、異なる技術の使用を紹介し、この技術は、従来可能であると考えられていたよりも高密度の構成を提供する多くの異なるスポットパターンの識別をもたらす(従来、一般に、球面ミラーを使用する高スポット密度を追求する唯一の構成は、円形又は楕円形であったため)。特に、三次元ベクトル光線追跡技術が本発明により使用され、従来技術の薄レンズ近似とは対照的に、光線が真の球面(「厚レンズ」と考えられる)と相互作用する際に、入力レーザビームを形成する光線がとる経路を直接計算する。
【0025】
特に、図2に示されるように、入力レーザビームIは複数の光線R−1〜R−Nによりシミュレートされ、各光線R−iの点源はまず、円形輪郭Iに配置されて、入力レーザビームIのビーム形状を画定する。図3は、光線Rのこの点源の側面図であり、真の球面Sに向かう光線R−1〜R−Nの初期方向をさらに示す。曲率は、説明のために誇張されるが、各光線がとる異なる経路を明確に示す。これは、これらの異なる経路を無視する、従来技術により使用される「薄レンズ」近似が、マルチパスセル設計を開発する全体プロセスに影響する重要な潜在的要因を欠くことを示す。したがって、これとは対照的に、本発明の方法論は、この真の球面設計情報を利用して、光線が一対の球面ミラー表面間を前後に跳ね返る際に、個々の各光線の進行を追跡し、それにより、重複がわずかであるか、又は重複がない高密度の入り組んだスポットパターンを生成する様々な異なるセル構成を定義する。
【0026】
図2及び図3を参照すると、光線Rは、ビーム波長を有する入り組んだビームパラメータをシミュレートすることにより計算し得る初期方向を有し、実際の実施に使用される特定のレーザの発散に等しい発散を示し得る。図3に示されるように、各光線の初期位置は、三次元ベクトル経路に沿って球Sとの相互作用まで追跡され、各光線の跳ね返りが球への角度から計算される。追跡プロセスは、各光線が対向する球面ミラー(図示せず)から跳ね返る際に継続される。特定のプロセスは線−球交点を使用して、光線の交点及び跳ね返りをシミュレートする。図2及び図3に示される例示的な構成は、ビームの周縁を画定する様に配置された複数の光線を利用するが、周縁が明確に画定される限り、光線位置の他の幾何学的形状を使用し得ることを理解されたい。例えば、追加の光線を設計の内部に位置決めし、同じ方法を使用してそれらの経路を追跡し得る。実際に、本発明の技術を使用して、好ましい幾何学的形状の出力ビームを形成する入力ビームの「最適化された」(例えば、球形出力ビームを形成する)形状を定義することがさらに可能である。
【0027】
従来技術の薄レンズ近似を使用する代わりに、本発明のプロセスは実際の球面(すなわち、「厚レンズ」)を利用し、例えば、調整可能な様々なパラメータ(第1のミラーの入射穴の位置(x,y)、入力ビームの軸外向き、ミラーの間隔、所望のパス数N、球面ミラーの直径、及び球面ミラーの焦点距離f)のすべてを探査することにより、従来技術による従来の球面ミラーベースのマルチパスセルと比較した場合、充填因子を実質的に増大させる様々な異なるスポットパターンが見つけられる。
【0028】
特に、適合度関数を利用して、許容可能なMPC設計を決定することができ、次に、上で定義した様々なパラメータに関して繰り返すことができる。許容可能な一適合度関数は、以下の形態:
(Nd)+id+hd
をとり、式中、dはミラーの間隔であり、Nはパス数であり、idは最小スポット間隔であり、hdはスポットと入射穴又は出射穴のいずれか一方との最小間隔である。鏡面の「境界」(ミラー開口部)を超える光線を生成する解は無視され、ゼロ又は負の近似に設定することができる。
【0029】
図4は、本発明の直接光線追跡反復プロセスを使用して発見された例示的な一スポットパターンを示し、図4の図は、一対の球面ミラーを使用し、入力レーザビームがミラー間で200回通過する場合に生成されるシミュレーションパターンである。図4を参照すると、入射穴11及び出射穴13は両方ともこの構成の一部をなし、非再入構成をもたらす。複数の別個の楕円形領域を含むこの種のパターンは、従来技術の構成に関連する標準の単一円形又は楕円形パターンとは大きく異なる。この場合、生成されたパターンは5つの別個のスポット領域I、II、III、IV、及びVを含むため、鏡面に形成されるスポットの数(その結果、スポット密度)を大幅に増大させる。
【0030】
光線追跡プロセス中、マルチパスセルパラメータのうちの1つ又は複数に小さな変更を導入することにより、最終的なスポット位置の感度を分析することも可能である。この特定のプロセスは、非再入パターンが出力ビーム位置及び角度の安定性にいかに影響するかを理解するのに役立つ。
【0031】
図5は、図4の構成の商用光線追跡図を示し、これらの5つの別個のスポット領域を生成する結果を検証する。図5は特に、第1の球面ミラー12及び第2の球面ミラー14を含むマルチパスセル10の形態でのこの実施を示す。従来では、再入条件に基づく球面マルチパスセルを使用して、非常に単純な方程式(近軸及び薄レンズ近位を用いる)が提供されて、マルチパス円形又は楕円形構成が生成された。しかし、本発明によれば、各光線が、セル内を移動する際に個々に追跡されるため、入力ビームの個々の各光線がわずかに異なる反射角を経験すること(実際の球面ミラー表面により)が考慮される。そのような複雑なプロセスは、式によりマルチパスセル設計パラメータの計算を可能にする(従来技術のように)任意の式と併用するには複雑すぎる。
【0032】
図6は、本発明により形成されるマルチパスセルの写真であり、図4及び図5の構成と同様のスポットパターンの生成を示す。この特定の構成は、物理的長さ約3.51cm(ミラーの間隔d)を有するが、光路長3.7m(合計で107回の跳ね返り)を生成する。
【0033】
本発明により形成されるこれらのマルチパスセルは、焦点距離fが短い用途に特に適する。短い焦点距離は、凹面境の大きな曲率を生み出し、比較的大きな球面収差を提供する。したがって、従来技術による「薄レンズ」近似を使用する場合、この球面収差は無視され、単純な設計式の使用が可能であるが、本明細書に記載されるものと同様の入り組んだパターンをシミュレーションすることは不可能である。
【0034】
本発明のシミュレーションプロセスの関心パラメータは以下を含む:(1)最小スポット間隔(各ミラーでの)−すなわち、重複しない最小間隔、(2)「境界内」−すべての光線が鏡面に「着陸」しなければならないという制限、(3)合計光路長(「最終距離」として定義される)、(4)光線が跳ね返るべきではないミラー内の任意の事前に定義されるギャップからの隙間、(5)入力ビームに対するミラーの入射穴のx、y位置、(6)出力ビームに対するミラーの出射穴のx、y位置、(7)入力ビームの角度(セルの光軸に対する)、(8)出力ビームの角度(セルの光軸に対する)、(9)ミラーの間隔、(10)ミラーの焦点距離、及び(11)ミラーの直径。
【0035】
本発明により最適化を実行するに当たり、許容可能な解を見つけるために反復される入力は以下のうちの1つ又は複数を含む:(a)第1のミラーでの入力ビームの入力位置(x,y)、(2)入力ビームの角度(システムの光軸に対して測定される)、(3)ミラーの間隔d、及び(4)パス数N。
【0036】
最適化することが望まれる出力は以下を含む:(a)最小スポットサイズ、(b)すべてのスポットが鏡面の境界内にあることの保証、(c)光路長、(d)ビームの出射位置、(e)出射角度、(f)入射アパーチャと出射アパーチャとの間隔、及び(g)出射穴に対する「最後のスポット」の位置(例えば、製造要件に十分なスペースがあることを確認するために)。
【0037】
人工知能ベースの最適化(遺伝アルゴリズムを使用して実施することができる)が、識別された入力パラメータのうちの1つ又は複数を変更して、マルチパスセルの最終設計を最適化することにより、本発明により許容可能なスポットパターンを生成する判断プロセスにおいて使用される。遺伝アルゴリズムは、選択、交差、及び突然変異等の自然に見られる進化の原理に基づく汎用検索アルゴリズムである。特定の「遺伝子」値は通常、定義された境界内のランダム値に初期化される。「染色体」は遺伝子の集まりからなり、したがって、適合度関数により評価されて、解の品質が特定される。
【0038】
上述したように、入力パラメータのうちの1つ又は複数を変更し、AIベースの最適化を使用することにより、いくつかの非常に異なるスポットパターンが、高密度構成を生成するものとして識別される。図7及び図8は、本発明の直接光線追跡及びAI最適化手順を使用して形成される例示的な高充填高密度マルチパスセルのシミュレートパターンを示す。特に、図7は、図8に示される関連付けられたマルチパスセルの写真と共に、459回のパスを含むマルチパスセルのシミュレーション結果の図である。モード整合レンズを構成の入力に追加することにより、図9に示されるように、スポットパターンサイズを変更することができる。この特定の実施形態は、12.6cm離間された直径1.5インチの平凹球面ミラーを使用して、光路長57.6mを生成する。
【0039】
図10は、本発明の技術を使用して形成されたさらに別のマルチパスセル構成のコンピュータ生成された光線トレースであり、入り組んだスポットパターンは重複する2つのCとして現れ、ここでも高密度スポットパターンを鏡面に生成する。
【0040】
上述したように、本発明の直接光線追跡技術は、より複雑なミラー構成と併用することもできる。例えば、2枚のミラーの焦点距離が異なる非対称セルを設計することができる。この場合、焦点距離の差は単に、光線がミラー間で跳ね返る際に光線を追跡するシミュレーションプロセスに追加される別のパラメータになる。すなわち、コンピュータ追跡アルゴリズムは単に、一方のミラーの半径曲率を変更することができ、同じAIベースの反復最適化プロセスを利用して、異なるセル構成解を見つけることができる。オフセット及び傾斜(及び異なる反射率)は単に、コンピュータ追跡アルゴリズムにおいてミラーの特徴を調整することにより対処することができる。異なる入力波長及びビームを形成する光線数の調整を利用することもできる。
【0041】
さらに、本発明の技術は、入力ビームが穴のないセルに注入されるマルチパスセル構成と併用することができる。したがって、この場合、「穴位置」変数は明らかに、最適化プロセスからなくなり、ミラー近傍の「注入位置」を定義する情報で置換される。キャビティ増強分光法及び積分キャビティ出力分光法(ICOS)は両方とも、ビームが、高反射率コーティング(通常>99%)を有するミラーで形成されるキャビティに注入される用途であり、これにより、一度に多くの横断モードがキャビティ内で可能になり、ビームは一般に再入しない。
【0042】
3つ以上のミラーを利用する他の可能なマルチパスセル構成も、本発明の直接光線追跡反復最適化技術を用いて分析することができる。一対のミラーを超えるミラーを利用する任意の構成は、設計がより複雑であり、より独立した光線の直接追跡を必要とするが、本発明の教示を、3枚以上のミラーを使用するマルチパスセル構成の発見に拡張することが可能である。
【0043】
広範囲の光学用途が、本発明により形成される高密度スポットマルチパスセルを用いて可能な相互作用長の増大から恩恵を受けると考えられる。例えば、上述した構成を、光音響分光法又はファラデー回転分光法(FRS)等の他の分光方法と組み合わせることができる。光音響分光法では、吸収変調光からの変調エネルギーが、音響周波数に設定することができ、後でマイクロホンを用いて検出することができる圧力波を生成する。FRSでは、光ビーム路に沿った偏極回転量は路長に依存する。したがって、本発明のコンパクトなマルチパスセル設計では、小容積で極めて長い路長を生成することが可能である。
【0044】
軸外積分キャビティ出力分光法等のキャビティ増強方法では、ガスセルが超高反射率ミラーを使用し、ビームを標準のマルチパスセルよりも多くの回数、跳ね返すことができる。これらのセルは通常、注入が穴を通して行われず、スポットが通常、個々の各光線が再入する前にミラーの多くの別個のスポット位置に配置するためにかなり重複するため、わずかに異なる方法で実施される。しかし、2球面ミラー軸外構成に注入されるスポットパターンは、これらのパターンが球面ミラーに基づく2ミラーセルに唯一のパターンであると仮定されていたため、円形である。これらの軸外キャビティのスポット間隔は、可能な限り再入解を回避するように設定される。これらのセルも非点収差スポットパターンから恩恵を受けるが、製造コストは通常高すぎて、正確な非点収差ミラー特徴及び超高反射率誘電コーティングの両方を提供することができないため、これらの種類の実施の大半は単純な球面ミラーを使用する。本発明は、スポットをミラーにわたって分散させ、標準の円形パターンよりも多くの跳ね返りで再入状況を回避することにより、球面ミラーを使用するそのような軸外キャビティに新しいパターンを提供することができる。
【0045】
本発明にマルチパスセルの他の変更形態は、光路の方向を容易に変更することができる光学結合を使用することにより、入射穴及び出射穴の身元を「切り替える」能力を含む(例えば、ファイバベースの結合が、ポート位置を比較的容易に変更し切り替える)。さらなる光学系(上述したレンズ等)を入力信号路に追加して、入力ビームの属性を変更し、その結果、生成されるスポットパターンを変更し得る。取り付けられたセンサ及び制御方法を使用して、温度及び圧力等の他の環境要因をセル内で制御することができる。
【0046】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱せずに、様々な変更及び変形を本発明のシステム及び方法において行い得ることが当業者には明らかだろう。したがって、本発明が、本発明の変更形態及び変形形態を、それらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物内にある場合は、包含することが意図される。
図1
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