特許第6045083号(P6045083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6045083-ジアゾナミドアナログ 図000115
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045083
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ジアゾナミドアナログ
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/22 20060101AFI20161206BHJP
   A61K 31/424 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C07D498/22CSP
   A61K31/424
   A61P35/00
   A61P43/00 111
【請求項の数】5
【全頁数】84
(21)【出願番号】特願2014-506470(P2014-506470)
(86)(22)【出願日】2012年4月15日
(65)【公表番号】特表2014-512384(P2014-512384A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】US2012033715
(87)【国際公開番号】WO2012145255
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】61/478,059
(32)【優先日】2011年4月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513265057
【氏名又は名称】ジョワイヤン ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Joyant Pharmaceuticals,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,キ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】シュ,シャオミン
(72)【発明者】
【氏名】コールドウェル,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ハラン,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ライ
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/134938(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0022607(US,A1)
【文献】 Burgett, Anthony W. G.; Li, Qingyi; Wei, Qi; Harran, Patrick G.,A concise and flexible total synthesis of (-)-diazonamide A,Angewandte Chemie, International Edition,2003年,Vol. 42, Iss. 40,P. 4961-4966
【文献】 Knowles, Robert R.; Carpenter, Joseph; Blakey, Simon B.; Kayano, Akio; Mangion, Ian K.; Sinz, Christopher J.; MacMillan, David W. C.,Total synthesis of diazonamide A,Chemical Science,2011年,Vol. 2, Iss. 2,P. 308-311,Pub Online: 2010.12.24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 498/00−498/22,301
C07D 503/00−505/24
C07D 513/00−521/00
A61K 31/33−33/44
A61P 1/00−43/00,171
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
および

からなる群から選択されることを特徴とする化合物、またはその薬学的に許容される塩
【請求項2】
および

からなる群から選択されることを特徴とする化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
および

からなる群から選択されることを特徴とする化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含有する単位投与剤形で請求項1、2または3に記載の化合物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
細胞増殖性障害の治療用または細胞を請求項1、2または3に記載の化合物と接触させることによる細胞死誘導用の医薬製造のための請求項1、2または3に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、式(I)のジアゾナミドアナログ、ならびにその塩、医薬組成物、およびコンジュゲートに関し、これらは抗増殖剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
ジアゾナミドAは、海洋生物のジアゾナ・アングラータ(Diazona angulata)から最初に単離された紡錘体破壊剤であり、構造:
を有する。
【0003】
カルボベンジルオキシ(Cbz)またはo−ニトロフェニルスルホニルのアミノ保護基を有する大環状インドリン中間体を介するジアゾナミドアナログの調製については、以前に記載されている。米国特許第7,022,720号明細書および米国特許第7,517,895号明細書は、ジアゾナミドAの構造について正確に開示しており、そのアナログの一部について合成を記載している。米国特許第7,851,620号明細書(米国特許出願第12/896,898号明細書の継続)は、インドリン中間体を介するジアゾナミドアナログの調製のための合成法について記載している。米国特許第7,538,129号明細書は、ジアゾナミドAアナログについて記載している。米国特許出願第12/432,615号明細書は、ジアゾナミド骨格のA環とE環を架橋する強固な大環状構造を欠くインドリンについて開示する関連係属出願である。本明細書では、強力な細胞傷害活性を有し、細胞増殖性障害の治療に有用である、式(I)の化合物およびさらなる新規ジアゾナミドアナログについて開示する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、式(I)の化合物ならびにその薬学的に許容される塩およびコンジュゲート、式(I)の化合物および/またはその塩もしくはコンジュゲートを含む医薬組成物、安定剤またはターゲティング剤にコンジュゲートしたそのような化合物の修飾形態、ならびにこれらの化合物および製剤の製造方法および使用方法に関し、ここで、式(I)は、
またはその薬学的に許容される塩またはコンジュゲートであり;
式中、
は、場合により置換されていてもよいC1〜C4アルキルであり;
は、Hであるか、場合により置換されていてもよいC1〜C4アルキルであり;
は、C1〜C12アルキル、C1〜C12ヘテロアルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12ヘテロアルケニル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ヘテロシクリル、C4〜C12シクロアルキルアルキル、C4〜C12ヘテロシクリルアルキル、C6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C14アリールアルキル、またはC6〜C14ヘテロアリールアルキルであり、これらのそれぞれは場合により置換されていてもよく;
は、Hであるか、場合により置換されていてもよいC1〜C4アルキルであり;
は、場合により置換されていてもよいC6〜C12アリールまたは場合により置換されていてもよいC5〜C12ヘテロアリールであり;
は、Hであるか、場合により置換されていてもよいC1〜C4アルキルであり;
YおよびY’はそれぞれ独立して、ハロ、OH、C1〜C4アルコキシ、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、C6〜C12アリール、またはC7〜C14アリールアルキル、またはこれらの1つのヘテロ型であり、これらのそれぞれは場合により置換されていてもよく;
mは0〜4であり;
m’は0〜3である。
【0005】
本発明は、本明細書に記載の式(I)の種々の好ましい実施形態/置換のあらゆる組合せを包含する。
【0006】
さらなる態様では、本発明は、式(I)の少なくとも1つの化合物またはその開示実施形態と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその開示実施形態は、本明細書に示す表の1つにある化合物またはそれらの化合物のうちの1つの薬学的に許容される塩もしくはコンジュゲートである。
【0008】
別の態様では、本発明は、細胞増殖性障害を治療するまたは寛解させる方法であって、式(I)の少なくとも1つの化合物もしくはその開示実施形態、またはその塩、コンジュゲート、もしくは医薬組成物の治療有効量を、その必要のある被験体に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、投与される量は細胞増殖を阻害するのに十分である。他の実施形態では、その量は、腫瘍増殖を遅延させるかまたは腫瘍サイズを減少させるのに十分である。一部の実施形態では、式(I)の化合物またはその開示実施形態は、別の化学療法剤または手法と併用して使用される。
【0009】
細胞において細胞増殖を阻害するための方法であって、本明細書に記載の式のうちの1つの化合物またはその塩もしくはコンジュゲートを、細胞増殖を阻害するのに有効な量で細胞に接触させることを含む方法も提供する。一部の実施形態では、細胞は、癌細胞株(例えば、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、または造血癌等に由来する細胞株)などの細胞株である。一部の実施形態では、細胞は組織内に存在し、一部のそのような実施形態では、その組織は被験体内に存在し得る。他の実施形態では、細胞は腫瘍内に存在し、時として被験体内の腫瘍に存在する。
【0010】
そのような治療の必要がある被験体内の癌を治療するための方法であって、本明細書に記載する、治療有効量となる、式(I)の化合物もしくはその開示実施形態、またはその塩もしくはコンジュゲートを、前記癌を治療するまたは寛解させるのに有効な量で被験体に投与することを含む方法も提供する。
【0011】
本発明は、異常な細胞増殖に関連した症状を治療するまたは寛解させるための方法をさらに提供する。例えば、被験体の細胞増殖性障害を治療するまたは寛解させる方法であって、本明細書に記載する式(I)の化合物もしくはその開示実施形態、またはその塩もしくはコンジュゲートを、その症状を治療するまたは寛解させるのに有効な量で、その必要のある被験体に投与することを含む方法も提供する。
【0012】
本明細書に記載の方法では、被験体は、例えば、異種移植片腫瘍(例えば、ヒト腫瘍)などの腫瘍を場合によっては含有する研究動物(例えば、げっ歯類、イヌ、ネコ、サル)であってもよく、ヒトであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、マウスのHCC461ヒト肺癌異種移植片モデルにおける対象化合物についてのデータを示す図である。
図2図2は、マウスのMiapaca膵臓癌異種移植片モデルにおける対象化合物についてのデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に含まれる本発明の好ましい実施形態についての以下の詳細な説明および実施例を参照することにより、本発明をより容易に理解することができる。本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、限定する意図はないことを理解されたい。本明細書で特に定義されていない限り、本明細書で使用する専門用語は、当技術分野で公知であるようなその従来の意味を有するべきであることも理解されたい。
【0015】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の指示がない限り、複数への言及を含む。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」は、ヒトまたは動物の被験体を指す。好ましい実施形態では、被験体はヒトである。
【0017】
特定の疾患または障害に関しての用語「治療する」、「治療すること」、または「治療」は、その疾患もしくは障害の予防、ならびに/またはその疾患もしくは障害の症候および/もしくは病状の軽減、改善、寛解、緩和、もしくは除去を含む。
【0018】
用語「治療有効量」または「有効量」は、研究者、獣医、医師、または他の臨床医が求める、細胞、組織、器官、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を惹起することになる薬物または医薬品の量を意味すると解釈される。この用語はまた、細胞増殖速度を低下もしくは停止させること(例えば、腫瘍増殖を遅延もしくは休止させること)または増殖性癌細胞の数を減少させること(例えば、腫瘍の一部もしくは全部を除去すること)を指すこともある。時として、速度または細胞増殖を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%以上低下させる。時として、増殖細胞数を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%以上減少させる。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」は、直鎖、分岐鎖、および環式の一価ヒドロカルビルラジカル、ならびにこれらの組合せを含み、これらが非置換の場合は、CおよびHのみを含有する。例としては、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2−プロペニル、3−ブチニル等が挙げられる。そのような基それぞれの炭素原子の総数を、本明細書に記載することがあり、例えば、その基が最大12個の炭素原子を含有し得る場合、それは1〜12CまたはC1〜C12またはC1〜12またはC1〜12として記載することができる。例えば、ヘテロアルキル基の場合のように、ヘテロ原子(典型的にはN、O、およびS)により、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基の炭素原子が置換されている場合、その基を記載する数は、例えばC1〜C6のように依然として記載されるが、その基内の炭素原子の数と記載される環または鎖内の炭素原子を置換して含まれているようなヘテロ原子の数との合計を表す。
【0020】
典型的には、本発明のアルキル、アルケニル、およびアルキニル置換基は、1〜12C(アルキル)または2〜12C(アルケニルもしくはアルキニル)を含有する。好ましくは、それらは、1〜8C(アルキル)または2〜8C(アルケニルもしくはアルキニル)を含有する。時として、それらは、1〜4C(アルキル)または2〜4C(アルケニルもしくはアルキニル)を含有する。1つの基が、2種以上の多重結合または2個以上の多重結合を含むことがあり;そのような基は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有する場合、用語「アルケニル」の定義内に含まれ、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含有する場合、用語「アルキニル」の範囲内に含まれる。
【0021】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、および「ヘテロアルキニル」等は、対応するヒドロカルビル(アルキル、アルケニル、およびアルキニル)基と同様に定義されるが、「ヘテロ」という用語は、O、S、およびN、ならびにそれらの組合せから選択される1個または複数のヘテロ原子を、主鎖残基内に含有する基を指し;したがって、対応するアルキル、アルケニル、またはアルキニル基の少なくとも1個の炭素原子が、指定したヘテロ原子の1つで置換されると、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル基が形成される。好ましくは、各ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、およびヘテロアルキニル基は、そのヘテロアルキル基の主鎖骨格の一部として、すなわち、場合により存在してもよい置換基を含めずに、1〜2個のみのヘテロ原子を含有する。したがって、ヘテロアルキルとしては、O−アルキル、アルキルエーテル、二級および三級のアルキルアミン、アルキルスルフィド、アルキルスルホニル等のアルコキシルが挙げられる。
【0022】
アルキル、アルケニル、およびアルキニル基のヘテロ型の典型的かつ好ましいサイズは、一般に、対応するヒドロカルビル基についてのものと同じであり、ヘテロ型上に場合により存在してもよい置換基は、ヒドロカルビル基について上記に記載したものと同じである。そのような基がNを含有する場合、その窒素原子は、NHとして存在してもよく、ヘテロアルキルもしくは同様の基が場合により置換されていてもよいと記載されている場合には、場合により置換されていてもよい。そのような基がSを含有する場合、その硫黄原子は、別段の指示がない限り、SOまたはSOに場合により酸化されていてもよい。化学的安定性の理由により、別段の指定がない限り、そのような基がヘテロアルキル鎖の一部として4個以上の連続したヘテロ原子を含むことはないが、ニトロまたはスルホニル基の場合のようにオキソ基がNまたはS上に存在し得ることも理解される。したがって、−C(O)NHは、=Oで置換されたC2ヘテロアルキル基とすることができ;−SONH−は、Sが1個の炭素と置換し、Nが1個の炭素と置換し、かつSが2個の=O基で置換されたC2ヘテロアルキレンとすることができる。
【0023】
本明細書で使用する「アルキル」は、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキル基を含むが、用語「シクロアルキル」は、環炭素原子を介して結合した、飽和または部分飽和の単環式または縮合もしくはスピロ多環式炭素環を具体的に記載するために本明細書で使用することができ、「シクロアルキルアルキル」は、アルキルリンカーを介して基礎分子に結合した炭素環式非芳香族基を記載するために使用することができる。同様に、「ヘテロシクリル」は、環員として少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、CまたはNであり得る、環式基の環原子を介して分子に結合した非芳香族環式基を記載するために使用することができ;「ヘテロシクリルアルキル」は、アルキルリンカーを介して別の分子に結合したそのような基を記載するために使用することができる。シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、およびヘテロシクリルアルキル基に適したサイズおよび置換基は、アルキル基について上記に記載したものと同じである。多くの場合、シクロアルキルおよびヘテロシクリル基はC3〜C8であり、シクロアルキルアルキルまたはヘテロシクリルアルキル基はC4〜C12である。シクロアルキルアルキルまたはヘテロシクリルアルキル基のサイズは、炭素原子の総数、または炭素原子とアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキル部分の炭素原子を置換したヘテロ原子との総数を表す。本明細書で使用する場合、これらの用語はまた、環が芳香族でない限り、1個または2個の二重結合を含有する環を含む。
【0024】
本明細書で使用する場合、「アシル」は、カルボニル炭素原子の2つの利用可能な原子価位置の1つに結合したアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアリールアルキルラジカルを含む基(これらは、本明細書では−C(=O)R、−C(O)R、またはCORとして表現することができる)を包含し、式中、Rはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアリールアルキル基であり、ヘテロアシルは、カルボニル炭素以外の少なくとも1個の炭素が、N、O、およびSから選ばれたヘテロ原子で置換された対応する基を指す。したがって、ヘテロアシルには、例えば、−C(=O)ORおよび−C(=O)NR、ならびに−C(=O)−ヘテロアリールが含まれる。チオアシル置換基、例えば−C(=S)R、およびイミン基、例えば−C(=NH)Rも、ヘテロアシル基の定義内に含まれる。
【0025】
アシルおよびヘテロアシル基は、カルボニル炭素の開放原子価を介して結合した任意の基または分子に結合している。典型的には、それらは、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、およびベンゾイルを含むC1〜C8アシル基、ならびにメトキシアセチル、エトキシカルボニル、および4−ピリジノイルを含むC2〜C8ヘテロアシル基である。アシルまたはヘテロアシル基を含むヒドロカルビル基、アリール基、およびそのような基のヘテロ型は、アシルまたはヘテロアシル基の対応する成分のそれぞれに概ね適した置換基として、本明細書に記載の置換基で置換することができる。
【0026】
「芳香族」部分または「アリール」部分は、芳香族性の周知の特徴を有する単環式部分または縮合二環式部分を指し、例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。炭素環式アリール環および環構造、典型的には、6〜12個の炭素環原子、および、芳香族環に縮合した飽和または部分不飽和炭素環式環、例えばテトラヒドロナフタレン、インダン、またはインデン環構造を含むことができる。同様に、「ヘテロ芳香族」および「ヘテロアリール」は、O、S、およびNから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を環員として含有する、そのような単環式または縮合二環式環構造を指す。ヘテロ原子を包含すると、6員環と同様に5員環に芳香族性が可能になる。典型的なヘテロ芳香族系には、ピリジン、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、およびテトラゾリル環などの単環式C5〜C6芳香族基、およびこれらの単環式基の1つを、C8〜C12二環式基を形成するようにフェニル環または任意のヘテロ芳香族単環式基と縮合させることによって形成された縮合二環式部分、例えば、インドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリニル、キノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズイソオキサゾリル、ピラゾロピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル等が含まれる。環構造の全体にわたる電子分布の点から芳香族性の特徴を有する、いずれの単環式または縮合環二環式環構も、この定義に含まれる。これにはまた、たとえ非芳香族環と縮合している場合でも、少なくとも一方の環が芳香族性の特徴を有する二環式基が含まれる。典型的には、環構造は5〜12個の環員原子を含有する。好ましくは、単環式アリールおよびヘテロアリール基は、5〜6個の環員を含有し、二環式アリール及びヘテロアリール基は8〜10個の環員を含有する。
【0027】
同様に、「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」は、置換または非置換の飽和または不飽和、環式または非環式リンカーを含む、アルキレンなどの連結基を介してそれらの結合点に結合する芳香族およびヘテロ芳香族環構造を指す。典型的には、リンカーは、C1〜C8アルキルまたはそのヘテロ型であり、好ましくはC1〜C4アルキルである。これらのリンカーはまた、カルボニル基を含むことができ、それにより、アシルまたはヘテロアシル部分として置換基を提供することが可能になる。
【0028】
本明細書で使用する「アリールアルキル」基は、非置換の場合、ヒドロカルビル基であり、環およびアルキレンまたは同様のリンカーの炭素原子の総数により記載される。したがって、ベンジル基はC7−アリールアルキル基であり、フェニルエチルはC8−アリールアルキルである。好ましくは、アリールアルキル基は、1つまたは2つの場合により置換されていてもよいフェニル環と、非置換であるか、または1つもしくは2つのC1〜C4アルキル基もしくはC1〜C4ヘテロアルキル基で置換されているC1〜C4アルキレンとを含み、ここで、アルキルまたはヘテロアルキル基は、場合によっては環化してシクロプロパン、ジオキソラン、またはオキサシクロペンタンなどの環を形成することができ、またアルキルまたはヘテロアルキル基は、場合によりフッ素化されていてもよい。アリールアルキル基の例としては、場合により置換されていてもよいベンジル、フェニルエチル、ジフェニルメチル、およびトリフェニルメチル基が挙げられる。アリールアルキル基のアリール環上に存在する場合、場合により存在してもよい置換基は、アリール環について本明細書で記載したものと同じである。アリールアルキル基は、典型的には7〜20個の原子、好ましくは7〜14個の原子を含有する。
【0029】
上記の「ヘテロアリールアルキル」は、連結基を介して結合したアリール基を含む部分を指し、アリール部分の少なくとも1個の環原子または連結基の1個の原子が、N、O、およびSから選択されるヘテロ原子である点で「アリールアルキル」と異なる。ヘテロアリールアルキル基は、環とリンカーを合わせた原子の総数に基づいて本明細書に記載され、ヘテロアルキルリンカーを介して連結したアリール基;アルキレンなどのヒドロカルビルリンカーを介して連結したヘテロアリール基;およびヘテロアルキルリンカーを介して連結したヘテロアリール基を含む。例えば、ヘテロアリール基としては、ピリジルメチル、ピリジルエチル、−O−ベンジル等が挙げられる。ヘテロアリールアルキル基は、典型的には6〜20個の原子、好ましくは6〜14個の原子を含有する。
【0030】
本明細書で使用する「アルキレン」は、二価のヒドロカルビル基を指し;それは、二価であるため、2つの他の基を同時に連結することができる。典型的には、それは、−(CH−(式中、nは1〜8であり、好ましくは、nは1〜4である)を指すが、指定されている場合には、アルキレンは他の基により置換されていてもよく、長さが異なっていてもよく、開放原子価が鎖の反対側の末端にある必要もない。したがって、−CH(Me)−および−C(Me)−もアルキレンと呼ぶことができ、シクロプロパン−1,1−ジイルなどの環式基もそのように呼ぶことができる。しかしながら、明確にするために述べると、アルキレン基である3原子リンカーは、例えば、他の基に結合するために利用可能な原子価が、−(CH−のように3原子によって分離されている二価の基を指す。すなわち、指定の長さは、ヒドロカルビル基の原子の総数ではなく結合点を連結する原子の数を表し:したがって、−C(Me)−は、利用可能な原子価が1原子のみによって分離されているで、1原子リンカーになる。アルキレン基が置換されている場合、その置換基は、本明細書に記載する、アルキル基上に典型的に存在するものを含み、したがって、−C(=O)−は、1炭素置換アルキレンの一例である。アルキレンは、不飽和と記載されている場合には、1個または複数の二重結合または三重結合を含むことができる。
【0031】
本明細書で使用する「ヘテロアルキレン」は、対応するアルキレン基と同様に定義されるが、「ヘテロ」という用語は、O、S、およびN、ならびにそれらの組合せから選択される1個または複数のヘテロ原子を、主鎖残基内に含有する基を指し;したがって、対応するアルキレン基の少なくとも1個の炭素原子が指定のヘテロ原子の1つで置換されると、ヘテロアルキレン基が形成される。したがって、−C(=O)NH−は、Nが1個の炭素と置換し、Cが=O基で置換されている2炭素置換ヘテロアルキレンの一例である。
【0032】
本明細書で使用する「ヘテロ型」は、指定の炭素環式基の少なくとも1個の炭素原子が、N、O、およびSから選択されるヘテロ原子に置換された、アルキル、アリール、またはアシルなどの基の誘導体を指す。したがって、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アルキニル、アシル、アリール、およびアリールアルキルのヘテロ型はそれぞれ、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロシクリル、ヘテロアルキニル、ヘテロアシル、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルである。ヘテロ原子が包含されると5員環の芳香族性が可能になるので、アリールまたはアリールアルキル部分のヘテロ型は、対応するすべての炭素系よりも1個少ない「C」原子を含有することができることが理解されよう。例えば、C6〜C12アリールのヘテロ型は、C5〜C12ヘテロアリールであり、C7〜C20アリールアルキルのヘテロ型は、C6〜C20ヘテロアリールアルキルである。オキソ基がNまたはSに結合してニトロまたはスルホニル基を形成する場合を除いて、またはトリアジン、トリアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールなどの特定のヘテロ芳香族環の場合に、通常、2個以下のN、O、またはS原子が連続して結合していることが理解される。
【0033】
別段の指示がない限り、用語「oxo」は=Oを指す。
【0034】
本明細書で使用する「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。多くの場合、フルオロ、クロロ、およびブロモが好ましい。
【0035】
本明細書で使用する「アミノ」は、NHを指すが、アミノが「置換されている」または「場合により置換されていてもよい」と記載される場合は、この用語はNRを含み、式中、Rはそれぞれ独立して、Hであるか、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、もしくはアリールアルキル基、またはこれらの基のうちの1つのヘテロ型であり、本明細書でさらに定義されるように、これらのそれぞれは、対応する種類の基に適しているとして本明細書に記載される置換基で場合により置換されていてもよい。この用語はまた、1個の窒素原子上の2つのR基(すなわち、NR)が互いに連結して、3〜8員単環式アザ環式環構造または8〜12員二環式縮合アザ環式環構造を形成する形態を含み、これらのそれぞれは、飽和、不飽和、または芳香族であってもよく、N、O、およびSから独立して選択されるアザ環式環の窒素原子を含む1〜3個のヘテロ原子(すなわち、アザ環式環の窒素原子に加えてN、O、およびSから選択される0〜2個のヘテロ原子)を、環員として含有してもよく、アルキル基に適したものとして記載される置換基で場合により置換されていてもよく、またはNRが芳香族基を含む場合には、アリールもしくはヘテロアリール基に典型的であるとして記載される置換基で場合により置換されていてもよい。好ましいそのようなアザ環式環としては、ピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、およびホモピペラジンが挙げられる。
【0036】
アミノ基は、場合によっては、保護された形態であることも、保護されていない形態であることもある。適切なアミン保護基が、特定の分子に存在する官能性およびアミノ基の性質に応じて異なり得るものであることは、当業者ならば認識していよう。適切に保護されたアミンとしては、例えば、カルバメート(例えば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、フルオレニルメトキシ−カルボニル(Fmoc)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、または(トリアルキルシリル)エトキシカルボニル)、カルボキサミド(例えば、ホルミル、アシルまたはトリフルオロアセチル、ベンゾイル)、スルホンアミド、フタルイミド、スクシンイミド、シッフ塩基誘導体等として保護されたアミンが挙げられる。アルキルアミンまたはアリルアミン、およびトリアルキルシリルアミンも含まれる。
【0037】
アミンが保護形態で存在する場合、保護基を除去することが望ましいことがある。したがって、本発明の方法は、アミンまたはアミノアルキル基上の任意の保護基を除去するステップも、場合によっては含む。
【0038】
本明細書で使用する用語「アルキルスルホニル」および「アリールスルホニル」は、アルキルおよびアリールが上記のように定義される、形態−SOアルキルまたは−SOアリールの部分を指す。場合によりフッ素化されていてもよいC1−4アルキル基および場合により置換されていてもよいフェニル基がスルホニル部分にとって好ましい。アリールスルホニル部分のフェニル基は、アリール環に適した1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく;例えば、それらは、ハロ、メチル、ニトロ、アルコキシ、アミノ等により場合により置換されていてもよい。このようなスルホニル部分は、酸素上に存在するとスルホネートを形成する。このようなスルホニル部分は、窒素上に存在するとスルホンアミドを形成し、炭素上に存在するとスルホンを形成する。代表的なスルホネートとしては、例えば、−OSOMe(メシレート)、−OSOCF(トリフレート)、−OSOトリル(トシレート)等が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用する用語「アルコキシカルボニル」は、形態−COOR’の部分を指し、式中、R’はC1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C5〜C6アリール、またはC7〜C14アリールアルキル、トリアルキルシリル等であり、これらのそれぞれは場合により置換されていてもよい。窒素上に存在すると、そのようなアルコキシカルボニル部分はカルバメートを形成し、これらは窒素保護基として使用されることが多い。一部のこのような実施形態では、R’は、場合によりハロゲン化されていてもよいC1〜C4アルキル(例えば、tert−ブチル、メチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチル)、アリル、場合により置換されていてもよいベンジル、フルオレニルメチル、またはトリアルキルシリル(例えば、トリイソプロピルシリル、トリエチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル)であってもよい。炭素上に存在すると、このような部分は、カルボン酸エステル、カルボアルコキシ基等と呼ばれることもある。カルボン酸エステル官能基を含有する一部の実施形態では、R’はC1〜4アルキル基であることが好ましい。一部のこのような実施形態では、R’は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、またはt−ブチルである。
【0040】
用語「置換されている」は、指定の基または部分が1つまたは複数の非水素置換基を有することを意味する。用語「非置換の」は、指定の基がそのような置換基を有していないことを意味する。
【0041】
本明細書で使用する「場合により置換されていてもよい」は、記載される特定の1つまたは複数の基が非水素置換基を有していなくても、その1つまたは複数の基が1つまたは複数の非水素置換基を有していてもよい(すなわち、その基が置換されていても、置換されていなくてもよい)ことを示す。別段の指定がない限り、存在し得るそのような置換基の総数は、記載される基の非置換形態上に存在するH原子の数と等しい。場合により存在してもよい置換基がカルボニル酸素(=O)のように二重結合を介して結合している場合、その基が2つの利用可能な原子価を占めるので、含まれ得る置換基の総数は、利用可能な原子価の数に従って減少する。
【0042】
アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、そのような置換が化学的に意味のある程度に置換されることが多い。典型的な置換基としては、これらに限定されないが、ハロ、OH、=O、=N−CN、=N−OR、=NR、OR、NR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、およびNOが挙げられ、式中、Rはそれぞれ独立して、Hであるか、または場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C5〜C20アリールアルキル、もしくはC5〜C20ヘテロアリールアルキルであり、かつRはそれぞれ、ハロ、OH、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’、およびNOから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく、式中、R’はそれぞれ独立して、H、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C5〜C20アリールアルキル、またはC5〜C20ヘテロアリールアルキルである。アルキル、アルケニル、およびアルキニル基はまた、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C12アリール、またはC5〜C12ヘテロアリール(これらのそれぞれは、特定の基に適切である置換基によって場合により置換されていてもよい)により場合により置換されていてもよい。
【0043】
アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基、またはこれらの1つのヘテロ型の上に存在する場合に好ましい置換基としては、ハロ、OH、=O、OR、SR、およびNRが挙げられ、式中、Rは上記に定義されるとおりであり;時として、Rは、H、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルキル、または場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アシルである。R上に存在する場合に特に好ましい置換基としては、OH、=O、C1〜C4アルコキシ、OAc、NHAc、NH、およびNHMeが挙げられる。時として、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基、またはこれらの1つのヘテロ型の上に存在していてもよい置換基としては、NRSOR、NRCONR、COOR、またはCONRが挙げられ、式中、Rは上記に定義されるとおりであり;好ましくは、Rはそれぞれ独立して、H、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルキルであるか、またはC6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C20アリールアルキル、もしくはC6〜C20ヘテロアリールアルキルであり、これらのそれぞれは場合により置換されていてもよい。
【0044】
アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリル部分は、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、C1〜C8アシル、およびこれらのヘテロ型、C6〜C12アリール、ヘテロアリールについてはC5〜C12、C6〜20アリールアルキル(ヘテロアリールアルキルについてはC5〜20)を含む種々の置換基で置換されていてもよく、これらのそれぞれはそれ自体、さらに置換されていてもよく;アリールおよびヘテロアリール部分についての他の置換基としては、ハロ、OH、OR、CHOH、CHOR、CHNR、NR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、C(O)R、およびNOが挙げられ、式中、Rはそれぞれ独立して、H、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C20アリールアルキル、またはC6〜C20ヘテロアリールアルキルであり、かつRはそれぞれ、アルキル基について上記に記載のように場合により置換されていてもよい。アリールまたはヘテロアリール基上の置換基は、当然、その置換基を含む各種の基に適したものとして本明細書に記載される基でさらに場合により置換されていてもよい。アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリル部分の上に存在する場合に好ましい置換基としては、ハロ、OH、OR、CHOH、CHOR、CHNR、SR、NR、CN、COOR、CONR、およびNOが挙げられ、式中、Rは上記のように定義されるか、または場合により置換されていてもよいC6〜C12アリールもしくはC5〜C12ヘテロアリール環である。
【0045】
アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基が場合により置換されていてもよいと記載される場合、置換基は、その基のアルキルもしくはヘテロアルキル部分、またはアリールもしくはヘテロアリール部分のいずれの上にあってもよい。アルキルまたはヘテロアルキル部分の上に場合により存在してもよい置換基は、概してアルキル基については上記のものと同じであり;アリールまたはヘテロアリール部分の上に場合により存在してもよい置換基は、概してアリール基については上記のものと同じである。
【0046】
本発明は、対象化合物の異性体、具体的には立体異性体を包含し、例えば、式(I)中の置換基Rを有する炭素原子または式(I)の開示実施形態における対応する原子は、(S)−立体配置を有する。
【0047】
本発明は、増殖性障害、具体的には癌の治療または寛解に有用である、式(I)の新規インドリンアナログを提供する。
【0048】
本発明は、本明細書に記載の好ましい実施形態および好ましい置換基のあらゆる組合せを包含する。
【0049】
好ましくは、Rは、場合により置換されていてもよいC2〜C4アルキル、好ましくはC2〜C4アルキル、好ましくはプロピルまたはブチル、好ましくはイソプロピルまたはt−ブチルである。
【0050】
好ましくは、R、R、およびRは独立して、Hまたはメチル、好ましくはHである。Rの置換基は保護基として機能してもよく、本明細書に記載の方法は、分子上に存在する任意の保護基を除去するための任意選択の脱保護ステップを含む。
【0051】
好ましくは、Rは一般式(−CR)の置換メチルであって、式中、RはOH、OR、CHOR、SR、およびNRであり、かつRはそれぞれ独立して、H、場合によりハロゲン化されていてもよい(好ましくは、フッ素もしくは塩素化)C1〜C4アルキルまたは場合によりハロゲン化されていてもよいC1〜C4アシル、および好ましくはOHであり;RおよびRはそれぞれ独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキルアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C14アリールアルキル、またはこれらの1つのヘテロ型であり、これらのそれぞれは置換されていてもよく、それぞれ好ましくはHまたはC1〜C4低級アルキル、より好ましくはHおよびイソプロピルまたはt−ブチルであり;あるいはRおよびRは、それらが結合した炭素原子と一体となって、場合により置換されていてもよいC3〜C8シクロアルキルまたはC3〜C8ヘテロシクリル環を形成してもよい。例えば、RおよびRは一体となって、場合により置換されていてもよいシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフラン、テトラヒドロチオピラン、ピロリジン、またはピペリジン環等を形成してもよい。好ましい実施形態では、RおよびRのそれぞれは、一体となって、シクロヘキシルまたはシクロペンチル環を形成する。一部の実施形態では、RおよびRにより形成される環は、置換または非置換フェニル環に融合して、例えばインデニルまたはテトラヒドロナフチル環構造を提供してもよい。
【0052】
他の好ましい実施形態では、Rは、C1〜C4アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C4〜C8シクロアルキルアルキル、またはC6〜C8アリールアルキルであり、これらのそれぞれは場合により置換されていてもよい。好ましい実施形態では、Rの一部を含むアルキル基は、OH、OR、CHOR、SR、およびNRからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されており、式中、Rはそれぞれ独立して、H、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルキル、または場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アシルである。好ましくは、Rは、OH、OMe、OAc、NH、NHMe、CHOH、およびNHAcからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換されている。より具体的な実施形態では、Rは、C1〜C8、好ましくはC1〜C4、より好ましくはC2〜C3、最も好ましくはC2直鎖、分枝鎖、またはシクロアルキル基であり、これらのそれぞれは、Rの一部であるカルボニル基に隣接した炭素原子上でOH、OMe、OAc、NH、NHMe、CHOH、またはNHAc、好ましくはOHで置換されている。
【0053】
好ましくは、Rは、場合により置換されていてもよいフェニル、ナフチル、ベンゾイミダゾール、ベンゾキサゾール、ベンズチアゾール、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、またはピリダジニル環であり、より好ましくは、Rは、場合により置換されていてもよいオキサゾール、オキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピロール、ピロリン、イソオキサゾール、イソキサゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、またはテトラゾール環である。
【0054】
好ましい置換基としては、ハロ、ニトロ、シアノ、または場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルキル、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルコキシ、COOR、CONR、C6〜C12アリール、またはC5〜C12ヘテロアリールが挙げられ、これらのそれぞれは置換されていてもよく;式中、Rは、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C6〜C12アリール、もしくはC7〜C14アリールアルキル、またはこれらの1つのヘテロ型であり、これらのそれぞれは置換されていてもよく;Rはそれぞれ独立して、H、またはC1〜C12アルキル、C1〜C12ヘテロアルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12ヘテロアルケニル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ヘテロシクリル、C4〜C12シクロアルキルアルキル、C4〜C12ヘテロシクリルアルキル、C6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C14アリールアルキル、またはC6〜C14ヘテロアリールアルキルであり、これらのそれぞれは置換されていてもよく;あるいは同じN上の2つのRは、環化して、環員としてN、O、およびSから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有する、場合により置換されていてもよい3〜8員アザ環式環を形成してもよく;好ましいそのようなアザ環式環としては、ピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、およびホモピペラジンが挙げられる。
【0055】
特定の好ましい実施形態では、Rは、場合により置換されていてもよいオキサゾールまたはチアゾール環である。一部のそのような実施形態では、Rは、場合により置換されていてもよいC6〜C12アリールまたはC5〜C12ヘテロアリール環で置換されているオキサゾール環である。一部の実施形態では、Rは、1つまたは複数のアルキル、ハロ、カルボン酸、エステル、またはアミド置換基で置換されているオキサゾール環である。
【0056】
式(I)の特定の実施形態では、Rは、式:
の場合により置換されていてもよいヘテロ環式環またはヘテロ芳香族環であり、
式中、Qは、O、S、またはNR13であり、ここでR13はHまたはC1〜C4アルキルであり;R14はそれぞれ独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、または場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルキル、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルコキシ、COOR、CONR、C6〜C12アリール、もしくはC5〜C12ヘテロアリールであり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく;ここで、Rは、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C6〜C12アリール、もしくはC7〜C14アリールアルキル、またはこれらの1つのヘテロ型であり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく;Rはそれぞれ独立して、H、またはC1〜C12アルキル、C1〜C12ヘテロアルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12ヘテロアルケニル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ヘテロシクリル、C4〜C12シクロアルキルアルキル、C4〜C12ヘテロシクリルアルキル、C6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C14アリールアルキル、もしくはC6〜C14ヘテロアリールアルキルであり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく;同じN上の2つのRは環化して、環員としてN、O、およびSから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有する、場合により置換されていてもよい3〜8員アザ環式環を形成してもよく;pは0〜3であり;qは0〜4である。このようなアザ環式環は、飽和、不飽和、または芳香族であってもよく;好ましいそのようなアザ環式環としては、ピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、およびホモピペラジンが挙げられる。
【0057】
式(I)の特定の好ましい実施形態では、Rは、
であり、
式中、R11およびR12はそれぞれ独立して、H、ハロ、ニトロ、シアノ、または場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルキル、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルコキシ、COOR、CONR、C6〜C12アリール、もしくはC5〜C12ヘテロアリールであり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく;ここで、Rは、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C6〜C12アリール、もしくはC7〜C14アリールアルキル、またはこれらの1つのヘテロ型であり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく;
はそれぞれ独立して、H、またはC1〜C12アルキル、C1〜C12ヘテロアルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12ヘテロアルケニル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ヘテロシクリル、C4〜C12シクロアルキルアルキル、C4〜C12ヘテロシクリルアルキル、C6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C14アリールアルキル、またはC6〜C14ヘテロアリールアルキルであり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく;あるいは同じN上の2つのRは環化して、環員としてN、O、およびSから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によっては含有する、場合により置換されていてもよい3〜8員アザ環式環を形成してもよい。このようなアザ環式環は、飽和、不飽和、または芳香族であってもよく;好ましいそのようなアザ環式環としては、ピロリジン、ピペリジン、ホモピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、およびホモピペラジンが挙げられる。
【0058】
一部のそのような実施形態では、R11およびR12はそれぞれ独立して、H、ハロ、ニトロ、シアノ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、COORまたはCONR、C6〜C12アリールまたはC5〜C12ヘテロアリールであり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく、また特定の実施形態では、R11は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、COORまたはCONR、C12アリールまたはC5〜C12ヘテロアリールであり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく、かつR12はHである。
【0059】
式(I)の大環状環のインドールおよびチロシン成分上の置換基である、それぞれYおよびY’は、式II:
[式中、R6は、式(I)で定義されるとおりである]で示される対応する環の位置に配置され、したがって、Yは、インドール部分の位置4、5、6、および7の1つまたは複数にあってよく、Y’はチロシン部分の位置2、3、および5の1つまたは複数にあってよい。
【0060】
好ましくは、YおよびY’はそれぞれ独立して、ハロ(F、Cl、Br、またはI)、OH、C1〜C4アルコキシ、好ましくはハロ、具体的にはClまたはFであり;好ましくは、mは3、2、1、または好ましくは0であり;好ましくは、m’は2、1、または好ましくは0である。
【0061】
好ましい実施形態では、Yは、位置5、6、および7の1つまたは複数に、位置5および7の1つまたは複数に、位置5、6、および7の1つに、位置5および7の1つに、位置5のみに、または位置7のみにあってもよい。好ましい実施形態では、Y’は、位置2および3の1つまたは複数に、位置2および3の1つに、位置2のみに、または位置3のみにあってもよい。特定の実施形態では、一方または両方の環が置換されている。
【0062】
本発明は、好ましい実施形態および好ましい置換基のあらゆる組合せを、すなわち、R1の好ましい置換基とR2〜R6およびY/Y’/m/m’の1つまたは複数にある好ましい置換基との組合せ等を、あたかも、それぞれが根気よく記載されているかのように、包含する。そのような組合せの具体的な例として、以下のものが挙げられる。
【0063】
Ia.オキサゾール、4位にメチルエステル以外のエステルを有する4−オキサゾイル誘導体:
は、C1〜C4アルキル、具体的にはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
、R、およびRは、Hであり、
は、式(−CR)の置換メチルであって、式中、RはOHであり、RはHであり、Rはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
は、
[式中、RはH、C1〜C4アルキル、またはC1〜C4アルキルオキシ、具体的にはメチル、H、またはメトキシである]であり、
Yは、位置5および/または7、好ましくは5にあるFおよび/またはCl、好ましくはFであり、
mは、0、1、または2、好ましくは0または1であり、
m’は0である。
【0064】
Ib.オキサゾール、4位にリン酸エステルを有する4−オキサゾイル誘導体:
は、C1〜C4アルキル、具体的にはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
、R、およびRは、Hであり、
は、式(−CR)の置換メチルであって、式中、RはOHであり、RはHであり、Rはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
は、
、[式中、Rは、H、C1〜C4アルキル、具体的にはメチルまたはHである]であり、
Yは、位置5および/または7、好ましくは5にあるFおよび/またはCl、好ましくはFであり、
mは、0、1、または2、好ましくは0または1であり、
m’は0である。
【0065】
II.オキサゾール、4位にアルコールまたはケトンを有する4−オキサゾイル誘導体:
は、C1〜C4アルキル、具体的にはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
、R、およびRは、Hであり、
は、式(−CR)の置換メチルであって、式中、RはOHであり、RはHであり、Rはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
は、
[式中、Rは、ヒドロキシルもしくはC1〜C4アルコール、またはC1〜C4ケトン、具体的にはヒドロキシル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、または1−ヒドロキシイソプロピルである]であり、
Yは、位置5および/または7、好ましくは5にあるFおよび/またはCl、好ましくはFであり、
mは、0、1、または2、好ましくは0または1であり、
m’は0である。
【0066】
III.オキサゾール、4位にアミド、アミン、カルバメート、またはスルホンアミドを有する4−オキサゾイル誘導体:
は、C1〜C4アルキル、具体的にはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
、R、およびRは、Hであり、
は、式(−CR)の置換メチルであって、式中、RはOHであり、RはHであり、Rはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
は、
[式中、Raは、場合により置換されていてもよいC0〜C4アルキルであり、RbおよびRcは独立して、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C6〜C12アリール、またはこれらの1つのヘテロ型であり、これらのそれぞれは、置換されていてもよく、具体的には、式中、RaはC0またはC1アルキルであり、RbはHであり、RcはH、メチル、メチルエステル、メチルスルホニル、またはフェニルスルホニルである]であり、
Yは、位置5および/または7、好ましくは5にあるFおよび/またはCl、好ましくはFであり、
mは、0、1、または2、好ましくは0または1であり、
m’は0である。
【0067】
IV.オキサゾール、4位にシアノを有する4−オキサゾイル誘導体:
は、C1〜C4アルキル、具体的にはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
、R、およびRは、Hであり、
は、式(−CR)の置換メチルであって、式中、RはOHであり、RはHであり、Rはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
は、
[式中、Rは、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C6〜C12アリール、またはこれらの1つのヘテロ型であり、これらのそれぞれは、場合により置換されていてもよく、具体的には、式中、RはH、メチル、またはNHAcである]であり、
Yは、位置5および/または7、好ましくは5にあるFおよび/またはCl、好ましくはFであり、
mは、0、1、または2、好ましくは0または1であり、
m’は0である。
【0068】
V.オキサゾール、4位に複素環を有するオキサゾイル誘導体:
は、C1〜C4アルキル、具体的にはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
、R、およびRは、Hであり、
は、式(−CR)の置換メチルであって、式中、RはOHであり、RはHであり、Rはイソプロピルまたはt−ブチルであり、
は、
[式中、Rは、C3〜C8ヘテロシクリル、C4〜C12ヘテロシクリルアルキル、C5〜C12ヘテロアリール、またはC6〜C14ヘテロアリールアルキルであり、これらのそれぞれは、場合により置換されていてもよく、具体的には、場合により置換されていてもよいオキサゾール、オキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピロール、ピロリン、イソオキサゾール、イソキサゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、またはテトラゾール環であり、好ましい置換基は、ハロ、ニトロ、シアノ、または場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルキル、場合によりフッ素化されていてもよいC1〜C4アルコキシ、COOR、CONR、C6〜C12アリール、もしくはC5〜C12ヘテロアリールであり、これらのそれぞれは、場合により置換されていてもよく;ここで、Rは、H、またはC1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C6〜C12アリール、もしくはC7〜C14アリールアルキル、またはこれらの1つのヘテロ型であり、これらのそれぞれは、場合により置換されていてもよく;Rはそれぞれ独立して、H、またはC1〜C12アルキル、C1〜C12ヘテロアルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12ヘテロアルケニル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8ヘテロシクリル、C4〜C12シクロアルキルアルキル、C4〜C12ヘテロシクリルアルキル、C6〜C12アリール、C5〜C12ヘテロアリール、C7〜C14アリールアルキル、またはC6〜C14ヘテロアリールアルキルであり、これらのそれぞれは、場合により置換されていてもよく;場合によっては、環員としてN、O、およびSから選択されるさらなるヘテロ原子を含有する]であり、
Yは、位置5および/または7、好ましくは5にあるFおよび/またはCl、好ましくはFであり、
mは、0、1、または2、好ましくは0または1であり、
m’は0である。
【0069】
不斉炭素が化学構造に含まれる場合、特定の配向が示されない限り、両方の立体異性型が包含されると解釈される。式(I)の化合物およびその開示実施形態は、例えば、2つ以上の不斉中心を有することがあり、そのため、種々の鏡像異性型および/またはジアステレオ異性型で存在することがある。本明細書に記載される化合物のすべての光学異性体および立体異性体ならびにそれらの混合物は、ラセミ体、1つまたは複数の鏡像異性型、1つまたは複数のジアステレオ異性型、またはそれらの混合物を含めて、本発明の範囲内にあると見なされる。具体的には、記載されたものなどの個々のジアステレオマーのラセミ混合物、90%超または約95%超のジアステレオ異性過剰度(d.e.)を有するジアステレオマー、および90%超または約95%超の鏡像異性過剰度(d.e.)を有する鏡像異性体。同様に、二重結合が存在する場合には、化合物は、場合によりシスまたはトランス異性体のいずれかとして存在することができ;本発明は、各異性体を個々に含むと同時に、異性体の混合物も含む。記載された化合物が互変異性型でも存在し得る場合には、本発明は、すべてのそのような互変異性体およびそれらの混合物の使用に関する。
【0070】
式(I)の化合物およびその開示実施形態は、遊離塩基形態で供給することができ、または薬学的に許容される塩として、もしくは遊離塩基形態と対応する塩の混合物として供給することができる。本発明の化合物は、塩基性アミンまたはカルボン酸などのイオン化可能な基が存在する場合、塩として単離することができる。本発明は、薬学的に許容される対イオンを有するこれらの化合物の塩を含む。そのような塩は、当技術分野で周知であり、例えば、その反応によって導入される対イオンが薬学的使用のために許容される限り、有機または無機の塩基との反応によって形成される酸性基の塩、および有機または無機の酸との反応によって形成される塩基性基の塩を含む。無機塩基の例には、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、カルシウム、マグネシウム等の水酸化物)、およびアルミニウム、アンモニウム等の水酸化物がある。使用することができる有機塩基の例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0071】
適切な塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫化水素塩等の無機酸の塩、または有機酸付加塩が挙げられる。使用することができる無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。有機酸の例としては、ギ酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。アルギニン、リシン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩、およびアスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との塩も挙げられる。
【0072】
加えて、式(I)の化合物およびその開示実施形態は、ターゲッティング剤などの成分とカップリングまたはコンジュゲートさせることができる。そのようなターゲッティング剤の中には、腫瘍抗原に対するまたは腫瘍に関連した受容体もしくはインテグリンに対する一本鎖抗体型、これらの部分に対するペプチドミメティック等を含む、抗体またはそれらの免疫活性断片がある。加えて、式(I)の化合物およびその開示実施形態は、Advanced Drug Delivery Reviews theme issue(Vol 61,November 2009)entitled,Polymer Therapeutics:Clinical Applications and Challenges for Development,including Pasut and Veronese,Adv Drug Delivery Rev 61(13):1177−1188,2009に記載されるような、薬物動態を改変するためのポリエチレングルコール等のポリマー賦形剤などの賦形剤にカップリングまたはコンジュゲートさせることができる。選択されるPEGは、任意の好都合な分子量のものであってよく、直鎖状であっても分岐状であってもよく、かつ場合によってはリンカーによりコンジュゲートされていてもよい。PEGの平均分子量は、好ましくは、約2キロダルトン(kDa)〜約100kDaの範囲、さらに好ましくは、約5kD〜約40kDaの範囲である。
【0073】
式(I)の化合物およびその開示実施形態は、細胞増殖性疾患の治療または寛解に有用である。具体的には、本明細書に記載の化合物および方法は、乳房、卵巣、肺(SCLCおよびNSCLC)、結腸、直腸、前立腺、精巣、皮膚(例えば、黒色腫、基底細胞癌、および扁平上皮癌)、膵臓、肝臓、腎臓、脳(例えば、神経膠腫、髄膜腫、シュワン細胞腫、および髄芽種)、ならびに血液および造血系(例えば、白血病、非ホジキンリンパ腫、および多発性骨髄腫を含む)に関連した腫瘍および悪性病変の治療または寛解に有用である。
【0074】
本明細書に記載の方法では、例えば、細胞増殖を低下させることができ、かつ/またはアポトーシスもしくはアポトーシス細胞死などの細胞死を誘導することができる。細胞増殖性障害は、ヒトまたは動物被験体における腫瘍性癌であっても非腫瘍性癌であってもよい。
【0075】
細胞増殖の低下および/または細胞死の誘導のために本明細書で提供される化合物および方法は、単独で、あるいは外科手術、放射線、化学療法、免疫療法、ならびに骨髄および/もしくは幹細胞移植法と併用して、または栄養もしくは健康状態を補助する化合物、制吐剤等の他の緩和剤と併用して、使用することができる。
【0076】
一部の実施形態では、本発明の化合物を、化学療法剤と併用して投与し、それを使用して、細胞増殖の低下、細胞死の誘導、および/または細胞増殖性障害を治療するまたは寛解させる。
【0077】
本明細書に記載の化合物はまた、特定の薬物耐性の腫瘍および癌細胞株に対して、具体的には、TAXOL(登録商標)および/またはビンカアルカロイド抗癌剤に耐性である癌に対して有用である。
【0078】
追加の化学療法薬が投与される場合、それは、典型的には、細胞増殖抑制活性、細胞傷害活性、または抗腫瘍活性を有することが知られているものである。これらの薬剤としては、限定はされないが、代謝拮抗剤(例えば、シタラビン、フルダラビン(fludaragine)、5−フルオロ−2’−デオキシウリジン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキセート);DNA活性薬剤(例えば、ブレオマイシン、クロランブシル、シスプラチン、シクロホスファミド);インターカレート剤(例えば、アドリアマイシンおよびミトキサントロン);タンパク質合成阻害剤(例えば、L−アスパラギナーゼ、シクロヘキシミド、ピューロマイシン);トポイソメラーゼI型阻害剤(例えば、カンプトテシン、トポテカン、またはイリノテカン);トポイソメラーゼII型阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシドアントラキノン、アントラサイクリン、およびポドフィロトキシン);微小管阻害剤(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン、コルセミド、コルヒチン、またはビンブラスチンおよびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド);キナーゼ阻害剤(例えば、フラボピリドール、スタウロスポリン、およびヒドロキシスタウロスポリン)、Hsp90に影響を及ぼす薬物(例えば、ゲルダナマイシンおよびゲルダナマイシン誘導体、ラディシコール、プリン誘導体、およびHsp90に選択的に結合する抗体または抗体断片)、TRAIL、TRAIL受容体抗体、TNF−αもしくはTNF−β、および/または放射線療法が挙げられる。
【0079】
一部の好ましい実施形態では、この追加の癌療法剤は、TRAIL、TRAIL受容体抗体、TNF−αまたはTNF−βである。他の好ましい実施形態では、本発明の化合物と同時投与するこの追加の薬物は、Hsp90(熱ショックタンパク質90)に影響を及ぼす。
【0080】
適切なHsp90阻害剤としては、17−(アリルアミノ)−17−デスメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)、そのジヒドロ誘導体、17−AAGH、および17−ジメチルアミノエチルアミノ−17−ジメトキシ−ゲルダナマイシン(17−DMAG)、11−オキソゲルダナマイジン、および5,6−ジヒドロゲルダナマイシンなどのゲルダナマイシンの17−アミノ誘導体を含む、ゲルダナマイシンおよびゲルダナマイシン誘導体などのアンサマイシン誘導体が挙げられ、これらは、米国特許第4,261,989号明細書、同第5,387,584号明細書、および同第5,932,566号明細書に開示されており、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。他の適切なHsp90阻害剤としては、Soga,et al.,Curr.Cancer Drug Targets,3,359−69(2003),およびYamamoto,et al.,Angew.Chem.,42,1280−84(2003);ならびにMoulin,et al.,J.Amer.Chem.Soc.,vol 127,6999−7004(2005)に開示されている、ラディシコールおよびオキシムならびにそれらの他のアナログ;PU3、PU24FCI、およびPUH64などのプリン誘導体(Chiosis et al.,ACS Chem.Biol.Vol.1(5),279−284(2006)を参照のこと)、ならびにPCT出願国際公開第2002/0236075号パンフレットに開示のもの;PCT出願国際公開第2005/028434号パンフレットに開示の関連複素環誘導体;ならびにCheung,et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,vol.15,3338−43(2005)に開示の3,4−ジアリールピラゾール化合物が挙げられる。Hsp90に選択的に結合する抗体または抗体断片もまた、Hsp90の阻害をもたらす薬物として投与することができ、本発明の化合物と併用して使用することができる。
【0081】
本明細書に記載の化合物を別の治療薬と共にまたは併用して使用する場合、これら2つの薬剤を同時投与することも、またはそれらを別々に投与することもでき、そこでは、2つの薬剤が同時にもしくは逐次的に作用するように、それらの投与を調整する。
【0082】
したがって、本明細書に記載の方法で使用される組成物は、本発明の少なくとも1つの化合物を含み、場合によっては、これらに限定されないが、上記に開示のものなど、1つまたは複数の追加の細胞傷害性または細胞増殖抑制性治療薬を含むことができる。同様に、本発明の方法は、癌の治療が必要であると診断された被験体を本発明の少なくとも1つの化合物または組成物で治療し、かつ上記の追加の治療薬の1つまたは複数と同時にまたは併用して治療する方法を含む。
【0083】
製剤および投与
本発明で有用な製剤には、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,latest edition,Mack Publishing Co.,Easton,PAに記載されるものなどの標準的な製剤が含まれる。そのような製剤には、経口送達、徐放、局所投与、非経口投与、または担当する医師もしくは獣医によって決定される任意の他の適切な経路のために設計されたものが含まれる。したがって、投与は、全身的であっても、局所的であってもよい。適切なビヒクルまたは賦形剤には、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、ポリマー材料、緩衝剤、および実務者に公知のあらゆる種類の製剤が含まれる。
【0084】
全身用製剤としては、注射(例えば、筋肉内、静脈内、または皮下注射)用に設計されたもの、および経皮、経粘膜、または経口投与用に調製されたものが挙げられる。製剤には、一般に、希釈剤、および場合によってはアジュバント、緩衝剤、防腐剤等が含まれることになる。化合物は、リポソーム組成物中で、またはマイクロエマルジョンとして投与することができる。
【0085】
注射方法は、全身治療用化合物の適切な投与経路であることも、また局所治療用化合物の適切な投与経路であることもある。これらの方法としては、静脈内、筋肉内、皮下に向けた方法、ならびに粘膜および皮膚バリアを回避して被験体の生体組織に組成物を直接送達する他の体内送達方法が挙げられる。
【0086】
注射用に、溶液もしくは懸濁液として、または注射の前に液体に溶解もしくは懸濁させるのに適した固体形態として、またはエマルジョンとして、従来の形態で製剤を調製することができる。適切な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等が挙げられる。そのような組成物はまた、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート等の非毒性補助物質の量を含有することができる。
【0087】
薬物のための種々の持続放出システムも考案されており、本発明の化合物について利用することができる。例えば、米国特許第5,624,677号明細書を参照されたい。本発明の組成物は、適切な場合にはそのような放出制御送達システムで使用することができる。
【0088】
全身投与には、坐剤、経皮パッチ、経粘膜送達、および鼻腔内投与の使用など、比較的非侵襲的な方法も含めることができる。経口投与もまた、本発明の化合物に適している。適切な形態としては、当技術分野で理解されているようなシロップ剤、カプセル剤、錠剤等が挙げられる。
【0089】
所与の被験体および適応症のための特定の投与経路の選択は、当技術分野における通常の技能レベルの範囲内に十分入っている。例えば、被験体が有効な経口送達を妨げる悪心嘔吐を経験している場合、坐剤としての直腸送達が適切であることが多い。経皮パッチは、放出制御投薬を、数日間にわたってまたは特定の部位に送達することが一般に可能であり、したがって、これらの効果が所望される被験体に適している。
【0090】
経粘膜送達も本発明の組成物および方法の一部に適している。したがって、当技術分野で公知の技術および製剤方法を使用して、本発明の組成物を経粘膜投与してもよい。
【0091】
選択される投与経路にかかわらず、適切な水和形態で使用することができる本明細書に記載の化合物および/または本発明の医薬組成物は、当業者には公知の従来法によって薬学的に許容される投与剤形に製剤化される。
【0092】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、患者に有毒ではなく、特定の患者、組成物、および投与方法に対して所望の治療応答を達成するために有効である活性成分量を得るように変更することができる。
【0093】
選択される投薬レベルは、使用される本発明の特定の化合物またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時期、使用される特定の化合物の排泄または代謝の速度、吸収の速度および程度、治療期間、使用される特定の化合物と併用して使用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、症状、健康状態、および以前の病歴、ならびに医療分野で周知の同種の要因を含む、種々の要因に依存することになる。
【0094】
動物またはヒトの被験体への投与の場合、本発明の化合物の投薬量は、典型的には、1投与当たり10〜2400mgである。しかしながら、投薬レベルは、症状の性質、患者の症状、実務者の判断、ならびに投与の頻度および方法に多分に依存する。そのような化合物の投薬量の選択は、当業者の技術範囲内であり、比較的低い投薬量で開始して、許容可能な効果が達成されるまで投薬量を増加させることによって達成することができる。
【0095】
本発明の化合物の投与頻度も、当業者が周知の技術を使用して容易に決定することができる。例えば、本発明の化合物または組成物を低い投薬量にて、多くの場合、1日1回以下などの低頻度で投与することができ;かつその投薬量および/または投与頻度を、患者に所望の効果が達成されるまで、系統的に増加させることができる。
【0096】
合成プロセス
スキーム1に示すように、対象化合物は、効率的な多段階プロセスを通して調製した。このプロセスの重要な工程は、式(I)のインドリン化合物を得るためのフェノール性中間体の電気化学的酸化的環化を含み、そのインドリン化合物に、本明細書に記載の化合物により例示されるように、さらに官能性をもたせることができる。この酸化的環化は、2008年6月6日に出願され、米国特許出願公開第2009/0005572号明細書として公開された米国特許出願第12/134,984号明細書に記載された。
【0097】
スキーム1に示すように、ジペプチド出発原料を、当技術分野で公知の標準条件下で、例えば、保護アミノ酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたは別の活性化エステルをセリンとカップリングさせることによって調製した。ペプチドおよびペプチドミメティックの合成を記載する広範囲の文献群を含む、多種多様の適切な条件を利用して、このジペプチド出発原料を形成させることができることは、当業者には理解されよう。
【0098】
このジペプチドを、場合によってはプロトン酸の存在下で、場合により置換されていてもよいインドールおよび活性化剤と反応させてインドール含有ジペプチドが得られた。適切な活性化剤としては、例えば、カルボン酸無水物、混合無水物、またはハロゲン化アシル(例えば、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、塩化アセチル、塩化オキサリル)、スルホン酸無水物またはハロゲン化物(例えば、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、塩化メタンスルホニル)、鉱酸ハロゲン化物(例えば、塩化チオニルまたは塩化ホスホリル)等が挙げられる。
【0099】
好ましい実施形態では、この活性化剤は無水酢酸であり、プロトン性溶媒として酢酸を用いて反応を実施した。具体的に好ましい実施形態では、ジペプチドおよび場合により置換されていてもよいインドールを酢酸中にて、約80℃で無水酢酸と反応させて、所望の化合物が得られた。
【0100】
無水酢酸および酢酸中でのセリンまたはN−アセチルセリンと場合により置換されていてもよいインドールとの反応によるN−アセチルトリプトファン誘導体の調製は、以前に報告されている。Y.Yokoyama,et al.,Tetrahedron Letters(1999),40:7803;Y.Yokoyama,et al.,Eur.J.Org.Chem.(2004),1244;Y.Konda−Yamada,et al.,Tetrahedron(2002),58:7851;M.W.Orme,et al.,米国特許第6,872,721号明細書。しかしながら、これらの条件下における、本発明のジペプチドアナログなどの他のアシル化トリプトファン誘導体の調製は、本発明者らが知る限り、以前には記載されていない。
【0101】
遊離カルボン酸をエステル化した後、酸化剤、例えばDDQによってジペプチド中間体を酸化的環化して、オキサゾール中間体が得られた。例えば、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、硝酸第二セリウムアンモニウム、超原子価ヨウ化物試薬等の使用など、他の酸化的条件を利用し得ることは、当業者には理解されよう。
【0102】
存在する場合には保護アミノ基の脱保護、およびアミド結合形成により、フェノール性中間体が得られた。フェノール性中間体の電気化学的酸化的環化により、大環状インドリン化合物が得られた。これらの化合物は、一連の直接的な化学変換によって、式(I)の化合物に解明された(elucidated)。例えば、Cbz基の除去およびアシル化またはアミド結合形成を行って、Rがアシル置換基、例えば−C(O)Rである式(I)の化合物が得られた。これらの工程の順序が、導入される官能基の性質および利用される保護基に応じて逆になり得ることは、当業者には理解されよう。
【0103】
スキーム1に、式(I)の大環状インドリン化合物の調製に有用な一般的な合成経路を示す。本発明の本質を改変することなく、特定の反応条件を変更し得ることは、当業者には認識されよう。例えば、カップリング反応は、単なる例として、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、ペルフルオロフェニルエステル、N−ヒドロキシフタルイミドエステル、カルボン酸とカルボジイミドの反応によって生成する活性化エステル、およびアミンをアシル化してアミド結合を形成するために従来から使用されている他の活性化エステルなど、種々の活性化エステルを用いて遂行することができる。加えて、アミノ基はカルボベンジルオキシ(Cbz)基で好都合に保護されるが、他の適切な保護基も利用し得ることは、当業者には認識されよう。適切な保護基およびそれらを結合および除去する方法は当技術分野で周知であり、例えば、T.H.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,第2版に記載されている。
【0104】
スキーム1に記載したプロセスは、式(I)のインドリンを高収率および高純度で調製するために有用である。具体的には、本発明の化合物は、好収率および高いジアステレオ異性純度で、好ましくは95%超のジアステレオ異性過剰度で、時として98%のジアステレオ異性過剰度で入手可能である。
【0105】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく、説明するために提示するものである。
【実施例】
【0106】
化合物57の合成
【0107】
【0108】
磁気撹拌棒が入った乾燥した100mlフラスコに、Cbz−L−α−t−ブチルグリシンDCHA塩(5.0g、11.2mmol)、L−トリプトファンメチルエステル塩酸塩(3.14g、12.3mmol、1.1当量)、HOBt(1.76g、13.4mmol、1.2当量)、無水DMF(30ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.93ml、16.8mmol、1.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(2.58g、13.4mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(300ml)/水(100ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×50ml)により抽出した。合わせた有機層を水(100ml)、10%NaHSO水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和NaHCO(100ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0109】
【0110】
DDQ(6.2g、27.3mmol、2.4当量)のTHF溶液(100ml)を、上記の工程1で合成した化合物(11.2mmol)のTHF還流溶液(200ml)に加え、この暗溶液を油浴中にて、85℃で1時間、還流加熱した。冷却後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。残査を酢酸エチル(500ml)に溶解し、水(200ml)、飽和NaHCO水溶液(2×200ml)、水(2×200ml)、食塩水(100ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl中の20%EtOAc)により精製した。これにより、3.24g(収率64%)の生成物を得た。
【0111】
【0112】
上記の工程2で合成した物質(3.24g、7.02mmol)を含有する100mlフラスコに、N下で、メタノール(30ml)およびPd/C(10%)(650mg、0.61mmol、0.09当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。3時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×10ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0113】
【0114】
磁気撹拌棒が入った乾燥した100mlフラスコに、工程3で合成したアミン(2.06g、6.29mmol)、Cbz−L−チロシン(1.98g、6.91mmol、1.1当量)、HOBt(0.94g、6.91mmol、1.1当量)、無水DMF(30ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.31ml、7.54mmol、1.2当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(1.33g、6.91mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(300ml)/水(100ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×50ml)により抽出した。合わせた有機層を水(100ml)、10%NaHSO水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和NaHCO(100ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0115】
【0116】
ガラスシリンダー(直径6cm×高さ11cm)と9本の垂直グラファイト棒(直径6.15mm×長さ12cm)を支持するカスタムラック(ポリプロピレンおよびナイロン)とを使用して、電気化学電池を組み立てた。6つの陽極および3つの陰極を有するこれらの棒を、環のパターンに配置した。電極を深さ6.5cmに浸した。上記の工程4で合成したフェノール性物質(5.00g、8.0mmol)、EtNBF(4.00g、18.4mmol、2.9当量)、および(NHCO(1.0g、10.4mmol、1.3当量)、ならびにID水(4ml)を、DMF(200ml)中に加えた。この溶液を、撹拌プレート(約600rpm)で激しく撹拌した。1.5〜1.6ボルトの電位で電気化学反応を実施した。3日後、220nMでのHPLC積分により判定すると、最初のSMの大部分は消費されていた。反応混合物をロータリーエバポレーター(浴槽温度、35℃以下)で濃縮し、真空マニホールドでさらに乾燥した。残査を、EtOAc(200ml)と0.5N HCl水溶液(60ml)との間で分配した。有機層を飽和NaHCO水溶液(50ml)、次いで飽和NaCl水溶液(50ml)で洗浄した。水層をEtOAc(2×50ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を乾燥(NaSO)し、デカントし、蒸発させた。この物質を、CHCl中の20%EtOAcを用いて、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、立体異性体の混合物(254nMでのHPLC積分により測定すると71:29)として、1.24g(収率24.8%)の生成物を得た。
【0117】
【0118】
工程6で合成した化合物(725mg、2.33mmol)をメタノール(22ml)に溶解し、その溶液を氷浴中で冷却した。LiOH(558mg、23.3mmol、10当量)の水溶液(7.0ml)を5分間にわたり加えた。氷浴を取り除き、混合物を18時間攪拌した。混合物を氷浴中で冷却し、反応温度を10℃未満に維持しながら、水(30ml)、その後に1N HCl水溶液(24ml)を加えた。混合物を水(15ml)とEtOAc(100ml)との間で分配し、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄した。水層をEtOAc(30ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を乾燥(NaSO)し、デカントし、蒸発させて、微細白色結晶として酸性生成物を得た。
【0119】
【0120】
磁気撹拌棒が入った乾燥した100mlフラスコに、上記の工程6で合成したカルボン酸(2.33mg)、L−セリンメチルエステル塩酸塩(435mg、2.8mmol、1.2当量)、HOBt(378mg、2.8mmol、1.2当量)、無水DMF(25ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.01ml、5.83mmol、2.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(537mg、2.8mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。残査をEtOAc(100ml)/水(30ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×20ml)により抽出した。合わせた有機層を水(40ml)、10%NaHSO水溶液(40ml)、水(40ml)、飽和NaHCO(40ml)、および食塩水(2×40ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0121】
【0122】
乾燥したフラスコに、上記の工程8からの粗生成物(2.33mmol)および無水CHCl(40ml)を加えた。この反応溶液は、ドライアイス/アセトン/水の浴槽中で−20℃に冷却されるにつれて、混濁するようになった。新たに調製したビス(2−メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(0.644ml、0.022mmol、2.8当量)のCHCl(4ml)原液を、滴下して加えた。得られた反応混合物を−20℃で1時間撹拌し、室温に温めた。飽和NaHCO(20ml)水溶液の添加により、反応混合物をクエンチし、EtOAc(100ml)で希釈し、水(2×30ml)および食塩水(30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0123】
【0124】
上記の工程8からの粗生成物(2.33mmol)を含有する乾燥したフラスコに、無水CHCl(40ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却した。次いで、CBrCl(0.345ml、3.5mmol、1.5当量)およびDBU(0.523ml、3.5mmol、1.5当量)を、別々に加えた。得られた混合物を室温に戻し、1時間撹拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(100ml)で希釈し、10%NaHSO(30ml)、水(2×30ml)、飽和NaHCO水溶液(30ml)、水(30ml)、および食塩水(30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0125】
【0126】
上記の工程9で合成した物質(400mg、0.58mmol)を含有する50mlフラスコに、N下で、メタノール(15ml)、t−ブチルアミン(0.086ml、0.87mmol、1.5当量)、およびPd/C(10%)(62mg、0.058mmol、0.1当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。4時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×10ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0127】
【0128】
上記の工程10で合成したアミン(0.58mmol)を含有する乾燥した25mlフラスコに、(S)−(+)−2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(82mg、0.696mmol、1.2当量)、HOBt(94mg、0.696mmol、1.2当量)、無水DMF(8ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.152ml、0.87mmol、1.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(133mg、0.696mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(80ml)/水(30ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×20ml)により抽出した。合わせた有機層を水(30ml)、10%NaHSO水溶液(30ml)、水(30ml)、飽和NaHCO(30ml)、および食塩水(2×30ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0129】
【0130】
乾燥したフラスコに、工程11で合成した粗物質(0.58mmol)、THF(4ml)、および2−プロパノール(12ml)を加えた。この溶液を0℃に冷却した後、固体の水素化ホウ素リチウム(152mg、6.96mmol、12当量)を加えた。得られた混合物を室温に戻し、22時間撹拌した。反応をLCMSによりモニターした。出発原料はほぼ残存していなかった。反応混合物を0℃に冷却した。2−プロパノール(24ml)および水(40ml)を加えた後、NHCl(3.1g、58mmol、100当量)を加えた。反応混合物を1時間攪拌してEtOAc(250ml)/水(50ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×50ml)により抽出した。合わせた有機層を水(3×50ml)、10%NaHSO水溶液(2×50ml)、水(2×50ml)、飽和NaHCO(50ml)、および食塩水(2×50ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、残査をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAcから10%EtOAc/MeOHに)により精製して、所望の生成物(188mg、0.108mmol、3工程に対して52%)を灰白色固体として得た。MS:m/z=627.9(M+1)。
【0131】
化合物81の合成
【0132】
乾燥した250mlフラスコに、5−フルオロ−DL−トリプトファン(5.0g、22.5mmol)および無水メタノール(120ml)を加えた。この懸濁液を0℃に冷却した後、6℃未満に反応温度を維持するような速度で、クロロトリメチルシラン(12.8ml、101.3mmol、4.5当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で20時間攪拌した。反応をTLCによりモニターした。大部分の揮発性物質を減圧下で蒸発させた。この粗製物を次の工程に使用した。
【0133】
【0134】
磁気撹拌棒が入った乾燥した250mlフラスコに、上記の工程1で合成したアミン塩(22.5mmol)、Cbz−L−バリン(6.22g、24.75mmol、1.1当量)、HOBt(3.34、24.75mmol、1.1当量)、無水DMF(80ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(11.8ml、67.5mmol、3.0当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(4.74g、24.75mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで、残査をEtOAc(600ml)/水(200ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×50ml)により抽出した。合わせた有機層を水(100ml)、10%NaHSO水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和NaHCO(100ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0135】
【0136】
DDQ(12.8g、56.25mmol、2.5当量)のTHF溶液(500ml)を、上記の工程2で合成した化合物(22.5mmol)のTHF還流溶液(250ml)に加え、この暗溶液を油浴中にて、85℃で1時間保持した。冷却後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。残査を酢酸エチル(600ml)に溶解し、NaHCO(13g)を加えた。混合物を1時間攪拌した後、フリット漏斗を通して濾過した。濾液を、水(200ml)、飽和NaHCO水溶液(2×200ml)、水(2×200ml)、食塩水(100ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl中の5%EtOAc)により精製した。これにより、4.63g(収率44.2%)の生成物を得た。
【0137】
【0138】
上記の工程3で合成した物質(4.63g、9.94mmol)を含有する250mlフラスコに、N下で、メタノール(50ml)およびPd/C(10%)(530mg、0.497mmol、0.05当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。1時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×15ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0139】
【0140】
磁気撹拌棒が入った乾燥した100mlフラスコに、工程4で合成したアミン(9.94mmol)、Cbz−L−チロシン(3.45g、10.93mmol、1.1当量)、HOBt(1.48、10.93mmol、1.1当量)、無水DMF(30ml)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(2.10g、10.93mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(400ml)/水(150ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×100ml)により抽出した。合わせた有機層を水(200ml)、10%NaHSO水溶液(150ml)、水(150ml)、飽和NaHCO(150ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物(6.58g)を次の工程に直接使用した。
【0141】
【0142】
ガラスシリンダー(直径6cm×高さ11cm)と9本の垂直グラファイト棒(直径6.15mm×長さ12cm)を支持するカスタムラック(ポリプロピレンおよびナイロン)とを使用して、電気化学電池を組み立てた。6つの陽極および3つの陰極を有するこれらの棒を、環のパターンに配置した。電極を深さ6.5cmに浸した。上記の工程5で合成したフェノール性物質(2.00g、3.18mmol)、EtNBF(2.00g、9.2mmol、3当量)、KCO(0.44g、3.18mmol、1.0当量)、およびID水(4ml)を、DMF(200ml)中に加えた。この溶液を、撹拌プレート(約600rpm)で激しく撹拌した。1.5〜1.6ボルトの電位で電気化学反応を実施した。3日後、220nMでのHPLC積分により判定すると、最初のSMの大部分は消費されていた。電気化学反応を4回反復して、工程5で合成したフェノール性物質をすべて消費させた。合わせた反応混合物をロータリーエバポレーター(浴槽温度、35℃以下)で濃縮し、真空マニホールドでさらに乾燥した。残査をEtOAc(500ml)で希釈した後、フリット漏斗を通して濾過した。濾液を水(2×200ml)、食塩水(200ml)で洗浄した。水層をEtOAc(2×50ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を、乾燥(NaSO)し濃縮した。この物質を、CHCl中の15%MeCNを用いて、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、3工程において収率14%で900mgの所望の生成物を得た。
【0143】
【0144】
工程6で合成した化合物(900mg、1.43mmol)をメタノール(28ml)に溶解し、その溶液を氷浴中で冷却した。LiOH(344mg、14.3mmol、10当量)の水溶液(4.5ml)を5分間にわたり加えた。氷浴を取り除き、混合物を室温で18時間攪拌した。混合物を氷浴中で冷却し、反応温度を10℃未満に維持しながら、水(40ml)、その後に1N HCl水溶液(14.5ml)を加えた。混合物を水(25ml)とEtOAc(200ml)との間で分配し、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄した。水層をEtOAc(50ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を乾燥(NaSO)し、デカントし、蒸発させて、微細白色結晶として酸性生成物を得た。
【0145】
【0146】
磁気撹拌棒が入った乾燥した50mlフラスコに、上記の工程7で合成したカルボン酸(1.43mmol)、L−セリンメチルエステル塩酸塩(268mg、1.72mmol、1.2当量)、HOBt(232mg、1.72mmol、1.2当量)、無水DMF(15ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.624ml、3.58mmol、2.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(330mg、1.72mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。残査をEtOAc(150ml)/水(50ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×30ml)により抽出した。合わせた有機層を水(60ml)、10%NaHSO水溶液(60ml)、水(60ml)、飽和NaHCO(60ml)、および食塩水(2×60ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0147】
【0148】
乾燥したフラスコに、上記の工程8からの粗生成物(1.43mmol)および無水CHCl(25ml)を加えた。この反応溶液は、ドライアイス/アセトン/水の浴槽中で−20℃に冷却されるにつれて、混濁するようになった。新たに調製したビス(2−メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(0.395ml、2.15mmol、1.5当量)のCHCl(4ml)原液を、滴下して加えた。得られた反応混合物を−20℃で1時間撹拌し、室温に温めた。飽和NaHCO水溶液(15ml)の添加により、反応混合物をクエンチし、EtOAc(100ml)で希釈し、水(2×20ml)および食塩水(30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0149】
【0150】
上記の工程9からの粗生成物(1.43mmol)を含有する乾燥したフラスコに、無水CHCl(25ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却した。次いで、CBrCl(0.211ml、2.15mmol、1.5当量)およびDBU(0.321ml、2.15mmol、1.5当量)を、別々に加えた。得られた混合物を室温に戻し、1時間撹拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(100ml)で希釈し、10%NaHSO(30ml)、水(2×30ml)、飽和NaHCO水溶液(15ml)、水(30ml)、および食塩水(30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0151】
【0152】
上記の工程10で合成した物質(1.43mmol)を含有する100mlフラスコに、N下で、メタノール(20ml)、t−ブチルアミン(0.226ml、2.15mmol、1.5当量)、およびPd/C(10%)(152mg、0.143mmol、0.1当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。4時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×15ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0153】
【0154】
上記の工程11で合成したアミン(1.43mmol)を含有する乾燥した25mlフラスコに、(S)−(+)−2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(203mg、1.72mmol、1.2当量)、HOBt(232mg、1.72mmol、1.2当量)、無水DMF(15ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.374ml、2.15mmol、1.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(330mg、1.72mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(150ml)/水(50ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×30ml)により抽出した。合わせた有機層を水(50ml)、10%NaHSO水溶液(50ml)、水(30ml)、飽和NaHCO(50ml)、および食塩水(2×50ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0155】
【0156】
乾燥したフラスコに、工程12で合成した粗物質(1.43mmol)、THF(13ml)、および2−プロパノール(40ml)を加えた。この溶液を0℃に冷却した後、固体の水素化ホウ素リチウム(467mg、21.45mmol、15当量)を加えた。得られた混合物を室温に戻し、18時間撹拌した。反応をLCMSによりモニターした。出発原料はほぼ残存していなかった。反応混合物を0℃に冷却した。2−プロパノール(40ml)および水(80ml)を加えた後、NHCl(7.6g、143mmol、100当量)を加えた。反応混合物を1時間攪拌してEtOAc(400ml)/水(100ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×100ml)により抽出した。合わせた有機層を水(3×100ml)、10%NaHSO水溶液(2×100ml)、水(2×100ml)、飽和NaHCO(100ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、残査をフラッシュカラムクロマトグラフィー(純粋EtOAcから7%MeCN/EtOAcに)により精製して、所望の生成物(215mg、0.340mmol、7工程に対して24%)を灰白色固体として得た。
【0157】
化合物85の合成
【0158】
乾燥した250mlフラスコに、5−フルオロ−DL−トリプトファン(6.0g、27.0mmol)および無水メタノール(120ml)を加えた。この懸濁液を0℃に冷却した後、6℃未満に反応温度を維持するような速度で、クロロトリメチルシラン(15.4ml、121.5mmol、4.5当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で20時間攪拌した。反応をTLCによりモニターした。大部分の揮発性物質を減圧下で蒸発させた。この粗製物を次の工程に使用した。
【0159】
【0160】
磁気撹拌棒が入った乾燥した250mlフラスコに、上記の工程1で合成したアミン塩(27mmol)、Cbz−L−α−t−ブチルグリシンDCHA塩(13.26g、29.7mmol、1.1当量)、HOBt(4.01、29.7mmol、1.1当量)、無水DMF(100ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(14.1ml、81mmol、3.0当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(5.69g、29.7mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで、残査をEtOAc(700ml)/水(200ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×50ml)により抽出した。合わせた有機層を水(100ml)、10%NaHSO水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和NaHCO(100ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0161】
【0162】
DDQ(15.32g、67.5mmol、2.5当量)のTHF溶液(100ml)を、上記の工程2で合成した化合物(27mmol)のTHF還流溶液(300ml)に加え、この暗溶液を油浴中にて、85℃で1時間保持した。冷却後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。残査を酢酸エチル(700ml)に溶解し、NaHCO(15g)を加えた。混合物を1時間攪拌した後、フリット漏斗を通して濾過した。濾液を、水(200ml)、飽和NaHCO水溶液(2×200ml)、水(2×200ml)、食塩水(100ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl中の5%EtOAc)により精製した。これにより、6.42g(収率50%)の生成物を得た。
【0163】
【0164】
上記の工程3で合成した物質(6.42g、13.4mmol)を含有する250mlフラスコに、N下で、メタノール(60ml)およびPd/C(10%)(1.43g、1.34mmol、0.1当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。1時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×15ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0165】
【0166】
磁気撹拌棒が入った乾燥した100mlフラスコに、工程4で合成したアミン(13.4mmol)、Cbz−L−チロシン(4.65g、14.74mmol、1.1当量)、HOBt(2.0、14.74mmol、1.1当量)、無水DMF(40ml)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(2.83g、14.74mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(500ml)/水(150ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×100ml)により抽出した。合わせた有機層を水(200ml)、10%NaHSO水溶液(150ml)、水(150ml)、飽和NaHCO(150ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0167】
【0168】
ガラスシリンダー(直径6cm×高さ11cm)と9本の垂直グラファイト棒(直径6.15mm×長さ12cm)を支持するカスタムラック(ポリプロピレンおよびナイロン)とを使用して、電気化学電池を組み立てた。6つの陽極および3つの陰極を有するこれらの棒を、環のパターンに配置した。電極を深さ6.5cmに浸した。上記の工程5で合成したフェノール性物質(2.00g、3.11mmol)、EtNBF(2.00g、9.2mmol、3当量)、KCO(0.409g、2.96mmol、0.95当量)、およびID水(4ml)を、DMF(200ml)中に加えた。この溶液を、撹拌プレート(約600rpm)で激しく撹拌した。1.5〜1.6ボルトの電位で電気化学反応を実施した。3日後、220nMでのHPLC積分により判定すると、最初のSMの大部分は消費されていた。電気化学反応を4回反復して、工程5で合成したフェノール性物質をすべて消費させた。合わせた反応混合物をロータリーエバポレーター(浴槽温度、35℃以下)で濃縮し、真空マニホールドでさらに乾燥した。残査をEtOAc(500ml)で希釈した後、フリット漏斗を通して濾過した。濾液を水(2×200ml)、食塩水(200ml)で洗浄した。水層をEtOAc(2×50ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を、乾燥(NaSO)し濃縮した。この物質を、CHCl中の15%MeCNを用いて、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、3工程において収率6.4%で553mgの所望の生成物を得た。
【0169】
【0170】
工程6で合成した化合物(553mg、0.863mmol)をメタノール(17ml)に溶解し、その溶液を氷浴中で冷却した。LiOH(207mg、8.63mmol、10当量)の水溶液(2.7ml)を5分間にわたり加えた。氷浴を取り除き、混合物を室温で18時間攪拌した。混合物を氷浴中で冷却し、反応温度を10℃未満に維持しながら、水(20ml)、その後に1N HCl水溶液(8.8ml)を加えた。混合物を水(15ml)とEtOAc(100ml)との間で分配し、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄した。水層をEtOAc(30ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を乾燥(NaSO)し、デカントし、蒸発させて、微細白色結晶として酸性生成物を得た。
【0171】
【0172】
磁気撹拌棒が入った乾燥した50mlフラスコに、上記の工程7で合成したカルボン酸(0.863mmol)、L−セリンメチルエステル塩酸塩(161mg、1.036mmol、1.2当量)、HOBt(140mg、1.036mmol、1.2当量)、無水DMF(15ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.346ml、1.99mmol、2.3当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(199mg、1.036mmol、1.3当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。残査をEtOAc(100ml)/水(30ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×20ml)により抽出した。合わせた有機層を水(40ml)、10%NaHSO水溶液(40ml)、水(40ml)、飽和NaHCO(40ml)、および食塩水(2×40ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0173】
【0174】
乾燥したフラスコに、上記の工程8からの粗生成物(0.863mmol)および無水CHCl(15ml)を加えた。この反応溶液は、ドライアイス/アセトン/水の浴槽中で−20℃に冷却されるにつれて、混濁するようになった。新たに調製したビス(2−メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(0.239ml、1.29mmol、1.5当量)のCHCl(2ml)原液を、滴下して加えた。得られた反応混合物を−20℃で1時間撹拌し、室温に温めた。飽和NaHCO水溶液(10ml)の添加により、反応混合物をクエンチし、EtOAc(50ml)で希釈し、水(2×15ml)および食塩水(20ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0175】
【0176】
上記の工程9からの粗生成物(0.866mmol)を含有する乾燥したフラスコに、無水CHCl(15ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却した。次いで、CBrCl(0.128ml、1.29mmol、1.5当量)およびDBU(0.193ml、1.29mmol、1.5当量)を、別々に加えた。得られた混合物を室温に戻し、1時間撹拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(50ml)で希釈し、10%NaHSO(15ml)、水(2×15ml)、飽和NaHCO水溶液(15ml)、水(15ml)、および食塩水(15ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0177】
【0178】
上記の工程10で合成した物質(0.863mmol)を含有する50mlフラスコに、N下で、メタノール(12ml)、t−ブチルアミン(0.137ml、1.3mmol、1.5当量)、およびPd/C(10%)(91mg、0.0863mmol、0.1当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。4時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×10ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0179】
【0180】
上記の工程11で合成したアミン(0.863mmol)を含有する乾燥した25mlフラスコに、(S)−(+)−2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(122mg、1.036mmol、1.2当量)、HOBt(140mg、1.036mmol、1.2当量)、無水DMF(10ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.225ml、1.29mmol、1.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(199mg、1.036mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(100ml)/水(30ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×20ml)により抽出した。合わせた有機層を水(30ml)、10%NaHSO水溶液(30ml)、水(30ml)、飽和NaHCO(30ml)、および食塩水(2×30ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0181】
【0182】
乾燥したフラスコに、工程12で合成した粗物質(0.863mmol)、THF(10ml)、および2−プロパノール(30ml)を加えた。この溶液を0℃に冷却した後、固体の水素化ホウ素リチウム(282mg、12.95mmol、15当量)を加えた。得られた混合物を室温に戻し、22時間撹拌した。反応をLCMSによりモニターした。出発原料はほぼ残存していなかった。反応混合物を0℃に冷却した。2−プロパノール(24ml)および水(40ml)を加えた後、NHCl(4.6g、86.3mmol、100当量)を加えた。反応混合物を1時間攪拌してEtOAc(250ml)/水(50ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×50ml)により抽出した。合わせた有機層を水(3×100ml)、10%NaHSO水溶液(2×100ml)、水(2×100ml)、飽和NaHCO(100ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、残査をフラッシュカラムクロマトグラフィー(70%EtOAc/DCM)により精製して、所望の生成物(124mg、0.192mmol、7工程に対して22%)を灰白色固体として得た。
【0183】
化合物86の合成
【0184】
乾燥した250mlフラスコに、5−フルオロ−DL−トリプトファン(5.0g、22.5mmol)および無水メタノール(120ml)を加えた。この懸濁液を0℃に冷却した後、6℃未満に反応温度を維持するような速度で、クロロトリメチルシラン(12.8ml、101.3mmol、4.5当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で20時間攪拌した。反応をTLCによりモニターした。大部分の揮発性物質を減圧下で蒸発させた。この粗製物を次の工程に使用した。
【0185】
【0186】
磁気撹拌棒が入った乾燥した250mlフラスコに、上記の工程1で合成したアミン塩(22.5mmol)、Cbz−L−バリン(6.22g、24.75mmol、1.1当量)、HOBt(3.34、24.75mmol、1.1当量)、無水DMF(80ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(11.8ml、67.5mmol、3.0当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(4.74g、24.75mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで、残査をEtOAc(600ml)/水(200ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×50ml)により抽出した。合わせた有機層を水(100ml)、10%NaHSO水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和NaHCO(100ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0187】
【0188】
DDQ(12.8g、56.25mmol、2.5当量)のTHF溶液(500ml)を、上記の工程2で合成した化合物(22.5mmol)のTHF還流溶液(250ml)に加え、この暗溶液を油浴中にて、85℃で1時間保持した。冷却後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。残査を酢酸エチル(600ml)に溶解し、NaHCO(13g)を加えた。混合物を1時間攪拌した後、フリット漏斗を通して濾過した。濾液を、水(200ml)、飽和NaHCO水溶液(2×200ml)、水(2×200ml)、食塩水(100ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl中の5%EtOAc)により精製した。これにより、4.63g(収率44.2%)の生成物を得た。
【0189】
【0190】
上記の工程3で合成した物質(4.63g、9.94mmol)を含有する250mlフラスコに、N下で、メタノール(50ml)およびPd/C(10%)(530mg、0.497mmol、0.05当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。1時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×15ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0191】
【0192】
磁気撹拌棒が入った乾燥した100mlフラスコに、工程4で合成したアミン(9.94mmol)、Cbz−L−チロシン(3.45g、10.93mmol、1.1当量)、HOBt(1.48、10.93mmol、1.1当量)、無水DMF(30ml)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(2.10g、10.93mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(400ml)/水(150ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×100ml)により抽出した。合わせた有機層を水(200ml)、10%NaHSO水溶液(150ml)、水(150ml)、飽和NaHCO(150ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物(6.58g)を次の工程に直接使用した。
【0193】
【0194】
ガラスシリンダー(直径6cm×高さ11cm)と9本の垂直グラファイト棒(直径6.15mm×長さ12cm)を支持するカスタムラック(ポリプロピレンおよびナイロン)とを使用して、電気化学電池を組み立てた。6つの陽極および3つの陰極を有するこれらの棒を、環のパターンに配置した。電極を深さ6.5cmに浸した。上記の工程5で合成したフェノール性物質(2.00g、3.18mmol)、EtNBF(2.00g、9.2mmol、3当量)、KCO(0.44g、3.18mmol、1.0当量)、およびID水(4ml)を、DMF(200ml)中に加えた。この溶液を、撹拌プレート(約600rpm)で激しく撹拌した。1.5〜1.6ボルトの電位で電気化学反応を実施した。3日後、220nMでのHPLC積分により判定すると、最初のSMの大部分は消費されていた。電気化学反応を4回反復して、工程5で合成したフェノール性物質をすべて消費させた。合わせた反応混合物をロータリーエバポレーター(浴槽温度、35℃以下)で濃縮し、真空マニホールドでさらに乾燥した。残査をEtOAc(500ml)で希釈した後、フリット漏斗を通して濾過した。濾液を水(2×200ml)、食塩水(200ml)で洗浄した。水層をEtOAc(2×50ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を、乾燥(NaSO)し濃縮した。この物質を、CHCl中の15%MeCNを用いて、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、3工程において収率14%で900mgの所望の生成物を得た。
【0195】
【0196】
工程6で合成した化合物(900mg、1.43mmol)をメタノール(28ml)に溶解し、その溶液を氷浴中で冷却した。LiOH(344mg、14.3mmol、10当量)の水溶液(4.5ml)を5分間にわたり加えた。氷浴を取り除き、混合物を室温で18時間攪拌した。混合物を氷浴中で冷却し、反応温度を10℃未満に維持しながら、水(40ml)、その後に1N HCl水溶液(14.5ml)を加えた。混合物を水(25ml)とEtOAc(200ml)との間で分配し、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄した。水層をEtOAc(50ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を乾燥(NaSO)し、デカントし、蒸発させて、微細白色結晶として酸性生成物を得た。
【0197】
【0198】
磁気撹拌棒が入った乾燥した50mlフラスコに、上記の工程7で合成したカルボン酸(1.43mmol)、L−セリンメチルエステル塩酸塩(268mg、1.72mmol、1.2当量)、HOBt(232mg、1.72mmol、1.2当量)、無水DMF(15ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.624ml、3.58mmol、2.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(330mg、1.72mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。残査をEtOAc(150ml)/水(50ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×30ml)により抽出した。合わせた有機層を水(60ml)、10%NaHSO水溶液(60ml)、水(60ml)、飽和NaHCO(60ml)、および食塩水(2×60ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0199】
【0200】
乾燥したフラスコに、上記の工程8からの粗生成物(1.43mmol)および無水CHCl(25ml)を加えた。この反応溶液は、ドライアイス/アセトン/水の浴槽中で−20℃に冷却されるにつれて、混濁するようになった。新たに調製したビス(2−メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(0.395ml、2.15mmol、1.5当量)のCHCl(4ml)原液を、滴下して加えた。得られた反応混合物を−20℃で1時間撹拌し、室温に温めた。飽和NaHCO水溶液(15ml)の添加により、反応混合物をクエンチし、EtOAc(100ml)で希釈し、水(2×20ml)および食塩水(30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0201】
【0202】
上記の工程9からの粗生成物(1.43mmol)を含有する乾燥したフラスコに、無水CHCl(25ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却した。次いで、CBrCl(0.211ml、2.15mmol、1.5当量)およびDBU(0.321ml、2.15mmol、1.5当量)を、別々に加えた。得られた混合物を室温に戻し、1時間撹拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(100ml)で希釈し、10%NaHSO(30ml)、水(2×30ml)、飽和NaHCO水溶液(15ml)、水(30ml)、および食塩水(30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0203】
【0204】
フラスコに、工程10からの生成物(0.735mmol)、メタノール(30ml)、アンモニア水溶液(28%、15ml)を加えた。得られた反応混合物を室温で24時間攪拌した。反応をTLCによりモニターした。大部分のメタノールを減圧下で蒸発させた。残査を酢酸エチル(3×30ml)により抽出し、2%NaHSO(30ml)、水(30ml)、5%NaHCO(30ml)、食塩水(30ml)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に使用した。
【0205】
【0206】
上記の工程11で合成した物質(0.735mmol)を含有する100mlフラスコに、N下で、メタノール(20ml)、t−ブチルアミン(0.116ml、1.1mmol、1.5当量)、およびPd/C(10%)(78mg、0.052mmol、0.1当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。4時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×15ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0207】
【0208】
上記の工程12で合成したアミン(0.735mmol)を含有する乾燥した25mlフラスコに、(S)−(+)−2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(104mg、0.882mmol、1.2当量)、HOBt(119mg、0.882mmol、1.2当量)、無水DMF(10ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.192ml、1.1mmol、1.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(169mg、0.882mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(100ml)/水(30ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×30ml)により抽出した。合わせた有機層を水(50ml)、10%NaHSO水溶液(50ml)、水(30ml)、飽和NaHCO(50ml)、および食塩水(2×50ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0209】
【0210】
乾燥したフラスコに、工程13で合成した粗物質(0.735mmol)、ジオキサン(10ml)、およびCHCl(10ml)、およびピリジン(1.2ml、14.7mmol)を加えた。この溶液を−17℃に冷却した後、−10〜−17℃で無水トリフルオロ酢酸(1.5ml、11mmol)を加えた。添加後、得られた混合物を−15℃で1時間撹拌した。次いで、NH水溶液(28%、10ml)を−15℃で滴下して加えた後、室温に温め、1時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で除去した。残査を酢酸エチル(3×20ml)により抽出し、水(2×20ml)、5%NaHSO(20ml)、水(20ml)、飽和NaHCO(20ml)、水(20ml)、および食塩水(20ml)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥した。濃縮後、残査をフラッシュカラムクロマトグラフィー(30%MeCN/DCMから40%MeCN/DCMに)により精製して、所望の生成物(115mg、0.184mmol、8工程に対して25%)を灰白色固体として得た。
【0211】
化合物87の合成
【0212】
乾燥した250mlフラスコに、5−フルオロ−DL−トリプトファン(6.0g、27.0mmol)および無水メタノール(120ml)を加えた。この懸濁液を0℃に冷却した後、6℃未満に反応温度を維持するような速度で、クロロトリメチルシラン(15.4ml、121.5mmol、4.5当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で20時間攪拌した。反応をTLCによりモニターした。大部分の揮発性物質を減圧下で蒸発させた。この粗製物を次の工程に使用した。
【0213】
【0214】
磁気撹拌棒が入った乾燥した250mlフラスコに、上記の工程1で合成したアミン塩(27mmol)、Cbz−L−α−t−ブチルグリシンDCHA塩(13.26g、29.7mmol、1.1当量)、HOBt(4.01、29.7mmol、1.1当量)、無水DMF(100ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(14.1ml、81mmol、3.0当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(5.69g、29.7mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで、残査をEtOAc(700ml)/水(200ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×50ml)により抽出した。合わせた有機層を水(100ml)、10%NaHSO水溶液(100ml)、水(100ml)、飽和NaHCO(100ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0215】
【0216】
DDQ(15.32g、67.5mmol、2.5当量)のTHF溶液(100ml)を、上記の工程2で合成した化合物(27mmol)のTHF還流溶液(300ml)に加え、この暗溶液を油浴中にて、85℃で1時間保持した。冷却後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。残査を酢酸エチル(700ml)に溶解し、NaHCO(15g)を加えた。混合物を1時間攪拌した後、フリット漏斗を通して濾過した。濾液を、水(200ml)、飽和NaHCO水溶液(2×200ml)、水(2×200ml)、食塩水(100ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl中の5%EtOAc)により精製した。これにより、6.42g(収率50%)の生成物を得た。
【0217】
【0218】
上記の工程3で合成した物質(6.42g、13.4mmol)を含有する250mlフラスコに、N下で、メタノール(60ml)およびPd/C(10%)(1.43g、1.34mmol、0.1当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。1時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×15ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0219】
【0220】
磁気撹拌棒が入った乾燥した100mlフラスコに、工程4で合成したアミン(13.4mmol)、Cbz−L−チロシン(4.65g、14.74mmol、1.1当量)、HOBt(2.0、14.74mmol、1.1当量)、無水DMF(40ml)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(2.83g、14.74mmol、1.1当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(500ml)/水(150ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×100ml)により抽出した。合わせた有機層を水(200ml)、10%NaHSO水溶液(150ml)、水(150ml)、飽和NaHCO(150ml)、および食塩水(2×100ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0221】
【0222】
ガラスシリンダー(直径6cm×高さ11cm)と9本の垂直グラファイト棒(直径6.15mm×長さ12cm)を支持するカスタムラック(ポリプロピレンおよびナイロン)とを使用して、電気化学電池を組み立てた。6つの陽極および3つの陰極を有するこれらの棒を、環のパターンに配置した。電極を深さ6.5cmに浸した。上記の工程5で合成したフェノール性物質(2.00g、3.11mmol)、EtNBF(2.00g、9.2mmol、3当量)、KCO(0.409g、2.96mmol、0.95当量)、およびID水(4ml)を、DMF(200ml)中に加えた。この溶液を、撹拌プレート(約600rpm)で激しく撹拌した。1.5〜1.6ボルトの電位で電気化学反応を実施した。3日後、220nMでのHPLC積分により判定すると、最初のSMの大部分は消費されていた。電気化学反応を4回反復して、工程5で合成したフェノール性物質をすべて消費させた。合わせた反応混合物をロータリーエバポレーター(浴槽温度、35℃以下)で濃縮し、真空マニホールドでさらに乾燥した。残査をEtOAc(500ml)で希釈した後、フリット漏斗を通して濾過した。濾液を水(2×200ml)、食塩水(200ml)で洗浄した。水層をEtOAc(2×50ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を、乾燥(NaSO)し濃縮した。この物質を、CHCl中の15%MeCNを用いて、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、3工程において収率6.4%で553mgの所望の生成物を得た。
【0223】
【0224】
工程6で合成した化合物(553mg、0.863mmol)をメタノール(17ml)に溶解し、その溶液を氷浴中で冷却した。LiOH(207mg、8.63mmol、10当量)の水溶液(2.7ml)を5分間にわたり加えた。氷浴を取り除き、混合物を室温で18時間攪拌した。混合物を氷浴中で冷却し、反応温度を10℃未満に維持しながら、水(20ml)、その後に1N HCl水溶液(8.8ml)を加えた。混合物を水(15ml)とEtOAc(100ml)との間で分配し、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄した。水層をEtOAc(30ml)で連続して抽出した。合わせた有機層を乾燥(NaSO)し、デカントし、蒸発させて、微細白色結晶として酸性生成物を得た。
【0225】
【0226】
磁気撹拌棒が入った乾燥した50mlフラスコに、上記の工程7で合成したカルボン酸(0.863mmol)、L−セリンメチルエステル塩酸塩(161mg、1.036mmol、1.2当量)、HOBt(140mg、1.036mmol、1.2当量)、無水DMF(15ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.346ml、1.99mmol、2.3当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(199mg、1.036mmol、1.3当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で蒸発させた。残査をEtOAc(100ml)/水(30ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×20ml)により抽出した。合わせた有機層を水(40ml)、10%NaHSO水溶液(40ml)、水(40ml)、飽和NaHCO(40ml)、および食塩水(2×40ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0227】
【0228】
乾燥したフラスコに、上記の工程8からの粗生成物(0.863mmol)および無水CHCl(15ml)を加えた。この反応溶液は、ドライアイス/アセトン/水の浴槽中で−20℃に冷却されるにつれて、混濁するようになった。新たに調製したビス(2−メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(0.239ml、1.29mmol、1.5当量)のCHCl(2ml)原液を、滴下して加えた。得られた反応混合物を−20℃で1時間撹拌し、室温に温めた。飽和NaHCO水溶液(10ml)の添加により、反応混合物をクエンチし、EtOAc(50ml)で希釈し、水(2×15ml)および食塩水(20ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0229】
【0230】
上記の工程9からの粗生成物(0.866mmol)を含有する乾燥したフラスコに、無水CHCl(15ml)を加えた。この混合物を0℃に冷却した。次いで、CBrCl(0.128ml、1.29mmol、1.5当量)およびDBU(0.193ml、1.29mmol、1.5当量)を、別々に加えた。得られた混合物を室温に戻し、1時間撹拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(50ml)で希釈し、10%NaHSO(15ml)、水(2×15ml)、飽和NaHCO水溶液(15ml)、水(15ml)、および食塩水(15ml)で洗浄し、NaSOで乾燥した。濃縮後、この残渣を次の工程に直接使用した。
【0231】
【0232】
フラスコに、工程10からの生成物(0.52mmol)、メタノール(25ml)、アンモニア水溶液(28%、10ml)を加えた。得られた反応混合物を室温で24時間攪拌した。反応をTLCによりモニターした。大部分のメタノールを減圧下で蒸発させた。残査を酢酸エチル(3×30ml)により抽出し、2%NaHSO(30ml)、水(30ml)、5%NaHCO(30ml)、食塩水(30ml)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に使用した。
【0233】
【0234】
上記の工程11で合成した物質(0.52mmol)を含有する100mlフラスコに、N下で、メタノール(10ml)、t−ブチルアミン(0.082ml、0.78mmol、1.5当量)、およびPd/C(10%)(55mg、0.052mmol、0.1当量)を加えた。Hバルーンを付加して、そのフラスコをHで4回パージした。次いで、Hバルーンを反応系に開放した。4時間の攪拌後、出発原料はほぼ残存していなかった。反応を停止した。反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、黒色ケークをメタノール(3×15ml)で洗浄した。濾液を濃縮し、残査はさらに精製することなく、次の工程に直接使用した。
【0235】
【0236】
上記の工程12で合成したアミン(0.52mmol)を含有する乾燥した25mlフラスコに、(S)−(+)−2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸(74mg、0.624mmol、1.2当量)、HOBt(85mg、0.624mmol、1.2当量)、無水DMF(10ml)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.136ml、0.78mmol、1.5当量)を加えた。この反応混合物を0℃に冷却した後、EDC・HCl(120mg、0.624mmol、1.2当量)を加えた。得られた反応混合物を室温で16時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。反応混合物をEtOAc(100ml)/水(30ml)で希釈した。有機相を分離し、水相をEtOAc(2×30ml)により抽出した。合わせた有機層を水(50ml)、10%NaHSO水溶液(50ml)、水(30ml)、飽和NaHCO(50ml)、および食塩水(2×50ml)で洗浄した後、NaSOで乾燥した。濃縮後、この粗製物を次の工程に直接使用した。
【0237】
【0238】
乾燥したフラスコに、工程13で合成した粗物質(0.52mmol)、ジオキサン(7ml)、およびCHCl(7ml)、およびピリジン(0.841ml、14.7mmol)を加えた。この溶液を−17℃に冷却した後、−10〜−17℃で無水トリフルオロ酢酸(1.1ml、7.8mmol)を加えた。添加後、得られた混合物を−15℃で1時間撹拌した。次いで、NH水溶液(28%、7ml)を−15℃で滴下して加えた後、室温に温め、1時間攪拌した。反応をLCMSによりモニターした。大部分の溶媒を減圧下で除去した。残査を酢酸エチル(3×20ml)により抽出し、水(2×20ml)、5%NaHSO(20ml)、水(20ml)、飽和NaHCO(20ml)、水(20ml)、および食塩水(20ml)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥した。濃縮後、残査をフラッシュカラムクロマトグラフィー(20%MeCN/DCMから30%MeCN/DCMに)により精製して、所望の生成物(51mg、0.080mmol、8工程に対して16%)を灰白色固体として得た。
【0239】
細胞生存率アッセイプロトコール
細胞生存率アッセイは、当業者に公知の標準プロトコールを使用して行った。細胞を、1ウェル当たり3,000〜10,000細胞の密度で、96ウェルプレートに播種した。24時間後に、漸増濃度(1nM〜1μM)の試験化合物で細胞を処理した。さらに48時間後、製造業者が提供するプロトコールに従い、Cell−Titer−Glo(登録商標)試薬(Promega)を使用して細胞生存を測定した。IC50値を、細胞集団の50%を死滅させる試験化合物の濃度として決定した。
【0240】
代表的な生物学データ
上記のプロトコールに従って生成される細胞生存率データを、A2058およびU937細胞において代表的化合物に関し生成した。表1に示す化合物は、構造的に類似の化合物について本明細書に記載した方法により調製した。参照化合物は、構造:
を有する合成ジアゾナミドアナログとした。















【0241】
異種移植片腫瘍モデル
化合物を、5〜6週齢のHarlan Athymic Nude−Foxnlnuマウスにおける、HCC461ヒト肺癌異種移植片およびMiapaca膵臓癌異種移植片の腫瘍モデルで試験した。
【0242】
プロトコール:
腫瘍細胞の調製
腫瘍細胞を完全RPMI培地で培養し、いかなる汚染も排除した。細胞が70〜80%コンフルエントになったときに、培地を除去して細胞を無血清培地で洗浄し、トリプシン処理して回収し、遠心分離により3回無血清培地で洗浄した。最後の洗浄後、細胞をカウントし、容量比率1:1でマトリゲルと混合した。注射当たり必要な細胞数が200μlに含有される容量に細胞を懸濁した。
【0243】
注射の準備
マウスの接種領域をヨード溶液およびエタノールにより清浄にして滅菌する。細胞を1cc注射器にとる。腫瘍細胞(1×10)をマウスの下側腹部に皮下注射(s.c.)する。腫瘍サイズが200〜300mmに到達したときに、1群当たりマウス5匹の処置群にマウスをランダムに割り当てた。週2回、マウスの体重を測定し、ノギスを使用して腫瘍を測定した。mm単位の腫瘍体積を次式により計算する:体積(mm)=(長さ×幅)/2。
【0244】
処置
化合物をクレモホール/エタノール(1:1)に原液として20mg/mlで溶解し、次いで、生理食塩水で2.5mg/mlに希釈した。化合物およびビヒクル(生理食塩水中の6.25%クレモホール/6.25%エタノール)を、合計6回の処置のために、週3回、全容積0.2mlで静脈内投与した。
【0245】
HCC461肺癌異種移植片モデルでは、腫瘍細胞注射後7、11、14、および18日目に、動物に注射した。
【0246】
Miapaca膵臓癌異種移植片モデルでは、腫瘍細胞注射後6、13、および20日目に、動物に注射した。
【0247】
結果
代表的な化合物の活性および投薬量を図1および2に示す。
【0248】
本明細書で参照される特許、特許出願、刊行物、および文献はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。上記の特許、特許出願、刊行物、および文献の引用は、前述のいずれについても、関連する従来技術であることを自認するものではなく、またこれらの刊行物または文献の内容または日付に関していかなる自認も構成するものではない。
【0249】
本発明の基本態様を逸脱することなく、前述したものに修正を施すことができる。1つまたは複数の具体的な実施形態を参照して実質的に詳細に本発明を説明してきたが、本出願の具体的な開示実施形態に変更を施すことができ、しかもこれらの修正形態および改善形態が本発明の範囲および精神の範囲内であることは、当業者には理解されよう。
図1
図2