特許第6045102号(P6045102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6045102コイル部品ユニット、その放熱構造、及びコイル部品ユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045102
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】コイル部品ユニット、その放熱構造、及びコイル部品ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20161206BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20161206BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20161206BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20161206BHJP
   H01F 27/22 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01F27/28 F
   H01F27/32 A
   H01F37/00 S
   H01F37/00 G
   H01F37/00 J
   H01F41/12 A
   H01F27/22
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-251257(P2012-251257)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-99549(P2014-99549A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】野口 昭一
(72)【発明者】
【氏名】大葉 育
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−183571(JP,A)
【文献】 特開2012−199350(JP,A)
【文献】 特開昭55−075297(JP,A)
【文献】 実開昭56−155419(JP,U)
【文献】 特開2010−118466(JP,A)
【文献】 特開平06−290947(JP,A)
【文献】 実開昭57−100208(JP,U)
【文献】 特開2010−118503(JP,A)
【文献】 実開平03−067409(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00−19/08、27/00−27/22
H01F 27/28−27/32、30/00−38/12
H01F 38/16、38/42、41/00−41/04
H01F 41/08−41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の一方側に開口する有底筒状に形成された樹脂製の収容ケースと、該収容ケース内に収容されるコイル部品と、前記収容ケース内に充填されて前記コイル部品を埋設する充填樹脂と、を備え、
前記収容ケースの底壁部の一部に、該収容ケースよりも熱伝導率の高い熱伝導部材がインサート成形され、
該熱伝導部材が前記収容ケースの内側及び外側の両方に露出し、
前記コイル部品と前記熱伝導部材との間に前記充填樹脂が介在し
前記収容ケースの内周面のうちその周方向の一部が該内周面の径方向外側に窪むことで、前記内周面によって形成される前記コイル部品の収容空間の径方向外側に、樹脂流入空間が形成され、
前記樹脂流入空間が、前記収容ケースの内周面の径方向外側に向かうにしたがって前記内周面の周方向の第一方向側に向かうように窪むことで形成されると共に、前記樹脂流入空間の窪み方向の先端側から基端側に向かうにしたがって前記第一方向側に偏るように広がっていることを特徴とするコイル部品ユニット。
【請求項2】
前記樹脂流入空間のうち前記収容ケースの開口端側の空間が、前記収容ケースの底壁部側の空間よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品ユニット。
【請求項3】
前記収容ケースの内周面に、前記収容ケースの軸線方向に延びる軌道が形成され、
前記内周面に対向する前記コイル部品の外周面に、前記軌道の長手方向に摺動する摺動突起が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコイル部品ユニット。
【請求項4】
前記コイル部品が、前記収容ケース内に収容される本体部と、該本体部の軸線方向端部に設けられて前記本体部の外周面よりも径方向外側に突出する台座部と、を備え、
前記本体部を前記収容ケース内に収容した状態で、前記台座部が前記収容ケースの開口端に当接することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイル部品ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコイル部品ユニットと、前記コイル部品ユニットを搭載する搭載面を有する基板と、前記搭載面に間隔をあけた位置に配された放熱部材と、を備え、
相互に対向する前記コイル部品ユニットの底壁部と前記放熱部材との間に、弾性変形可能な放熱シートあるいは放熱グリスが介在していることを特徴とするコイル部品ユニットの放熱構造。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコイル部品ユニットを製造する方法であって、
前記収容ケース内に溶融状態の充填樹脂を流し込む流入工程の後に、前記コイル部品を収容ケース内に挿入する挿入工程を実施することを特徴とするコイル部品ユニットの製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載のコイル部品ユニットを製造する方法であって、
前記収容ケース内に、前記コイル部品を挿入すると共に溶融状態の充填樹脂を流し込んだ後に、前記溶融状態の充填樹脂をキュアして硬化させるキュア工程を実施し、
該キュア工程において、治具により前記台座部が前記収容ケースの開口端に接触した状態に保持することを特徴とするコイル部品ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル部品ユニット、その放熱構造、及びコイル部品ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載される電力変換装置等の電子機器は、電源ライン等を経由して外部から電子機器内部に侵入するノイズによって電子機器が度作動しないように、筐体内部にノイズフィルタを組み込んで構成されている。ノイズフィルタは、コモンモードチョークコイル等のコイル部品を備えている。この種のコイル部品は通電により発熱するため、コイル部品の放熱を考慮する必要がある。
そこで、従来では、例えば特許文献1のように、コイル部品を収容ケースに収容すると共に、充填樹脂を収容ケース内に充填してコイル部品を埋設することが考えられている。この構成では、コイル部品の熱を充填樹脂側に拡散することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−198147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、収容ケースを構成する樹脂は一般に熱伝導率が低いため、コイル部品の熱を収容ケース外部に十分に逃がすことができない虞がある。なお、収容ケース自体を熱伝導率の高い樹脂によって構成すればコイル部品の放熱を十分に行えるが、収容ケースを構成可能な熱伝導率の高い樹脂は高価であり、好ましくない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、安価にコイル部品の放熱効率を向上することが可能なコイル部品ユニット、コイル部品ユニットの放熱構造、及び、コイル部品ユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明のコイル部品ユニットは、軸線方向の一方側に開口する有底筒状に形成された樹脂製の収容ケースと、該収容ケース内に収容されるコイル部品と、前記収容ケース内に充填されて前記コイル部品を埋設する充填樹脂と、を備え、前記収容ケースの底壁部の一部に、該収容ケースよりも熱伝導率の高い熱伝導部材がインサート成形され、該熱伝導部材が前記収容ケースの内側及び外側の両方に露出し、前記コイル部品と前記熱伝導部材との間に前記充填樹脂が介在し、前記収容ケースの内周面のうちその周方向の一部が該内周面の径方向外側に窪むことで、前記内周面によって形成される前記コイル部品の収容空間の径方向外側に、樹脂流入空間が形成され、前記樹脂流入空間が、前記収容ケースの内周面の径方向外側に向かうにしたがって前記内周面の周方向の第一方向側に向かうように窪むことで形成されると共に、前記樹脂流入空間の窪み方向の先端側から基端側に向かうにしたがって前記第一方向側に偏るように広がっていることを特徴とする。
【0007】
上記コイル部品ユニットによれば、収容ケースをなす樹脂の熱伝導率が低くても、コイル部品の熱を充填樹脂側に拡散し、さらに、充填樹脂から収容ケースにインサート成形された熱伝導部材に伝達することで収容ケースの外部に効率よく放熱することができる。
また、熱伝導部材をインサート成形した収容ケースは、収容ケースを熱伝導率の高い樹脂で成形する場合、及び、熱伝導部材と収容ケースとを別個に形成して相互に固定する場合と比較して、より安価に製造することができる。さらに、熱伝導部材と収容ケースとを別個に形成して相互に固定する場合と比較すると、収容ケースの構成部品点数が少ないため、コイル部品ユニットの製造効率向上を図ることもできる。
また、上記コイル部品ユニットでは、その製造に際して、収容ケース内に溶融状態の充填樹脂(溶融樹脂)を流し込んだ後、コイル部品を収容ケース内に挿入したときに、溶融樹脂が収容空間から樹脂流入空間に流れ込むことで、溶融樹脂が収容ケース外部に溢れることを防止することができる。
【0008】
また、本発明のコイル部品ユニットの放熱構造は、前記コイル部品ユニットと、前記コイル部品ユニットを搭載する搭載面を有する基板と、前記搭載面に間隔をあけた位置に配された放熱部材と、を備え、相互に対向する前記コイル部品ユニットの底壁部と前記放熱部材との間に、弾性変形可能な放熱シートあるいは放熱グリスが介在していることを特徴とする。
【0009】
上記放熱構造では、コイル部品の熱を、充填樹脂から熱伝導部材に伝達した後、さらに、放熱シートあるいは放熱グリスを介して放熱部材に効率よく逃がすことができる。
また、基板の搭載面に加熱されることが好ましくない電子部品が搭載されていても、この電子部品がコイル部品の熱によって加熱されることを抑制できる。
さらに、上記放熱構造を製造する際に、各種部品の寸法誤差等によってコイル部品ユニットの底壁部と放熱部材との間に隙間が生じていたり、底壁部の外面がコイル部品ユニットに対向する放熱部材の平坦面に対して傾いていても、放熱シートあるいは放熱グリスによってこの隙間を埋めることができる。したがって、コイル部品の熱を熱伝導部材から放熱部材に効率よく伝えることができる。
【0011】
また、前記コイル部品ユニットにおいて、前記樹脂流入空間のうち前記収容ケースの開口端側の空間が、前記収容ケースの底壁部側の空間よりも大きいとよい。
上記コイル部品ユニットでは、その製造に際して、溶融樹脂を収容ケース内に流し込んだ後にコイル部品を収容ケース内に挿入すると、溶融樹脂が収容空間から樹脂流入空間に流れ込んだ後、収容ケースの底壁部側に向けて流れるよりも収容ケースの開口端側に位置するコイル部品の外周面に向けて流れやすくなる。このため、溶融樹脂(充填樹脂)をコイル部品の外周面全体に付着させることが可能となる。
【0012】
さらに、前記コイル部品ユニットにおいては、前記収容ケースの内周面に、前記収容ケースの軸線方向に延びる軌道が形成され、前記内周面に対向する前記コイル部品の外周面に、前記軌道の長手方向に摺動する摺動突起が形成されていると好ましい。
上記コイル部品ユニットによれば、コイル部品を収容ケースに収容する際に、コイル部品の軸線方向が収容ケースの軸線方向に対して傾くことを抑制できる。このようにコイル部品と収容ケースとの相対的な傾きを抑えることで、前述した放熱構造を構成する際に、収容ケースの底壁部の外面が放熱部材の平坦面に対して傾くことを抑制して、コイル部品の熱を熱伝導部材から放熱部材に効率よく伝えることが可能となる。
また、上記コイル部品ユニットでは、収容ケースとコイル部品との相対的な周方向位置を容易に位置決めできる。
【0013】
また、前記コイル部品ユニットにおいては、前記コイル部品が、前記収容ケース内に収容される本体部と、該本体部の軸線方向端部に設けられて前記本体部の外周面よりも径方向外側に突出する台座部と、を備え、前記本体部を前記収容ケース内に収容した状態で、前記台座部が前記収容ケースの開口端に当接するとよい。
上記コイル部品ユニットによれば、本体部を収容ケースに収容した状態で、コイル部品の軸線方向が、収容ケースの軸線方向に対して傾くことを抑制できる。このようにコイル部品と収容ケースとの相対的な傾きを抑えることで、前述した放熱構造を構成する際に、収容ケースの底壁部の外面が放熱部材の平坦面に対して傾くことを抑制して、コイル部品の熱を熱伝導部材から放熱部材に効率よく伝えることが可能となる。
【0014】
そして、本発明のコイル部品ユニットの製造方法は、前記コイル部品ユニットを製造する方法であって、前記収容ケース内に溶融状態の充填樹脂を流し込む流入工程の後に、前記コイル部品を収容ケース内に挿入する挿入工程を実施することを特徴とする。
上記製造方法によれば、収容ケースの底壁部と収容ケース内に収容されたコイル部品との隙間が狭くても、また、溶融樹脂の粘度が高くても、コイル部品と底壁部との間に確実に充填樹脂を介在させることができる。
【0015】
また、本発明のコイル部品ユニットの製造方法は、前記コイル部品ユニットを製造する方法であって、前記収容ケース内に、前記コイル部品を挿入すると共に溶融状態の充填樹脂を流し込んだ後に、前記溶融状態の充填樹脂をキュアして硬化させるキュア工程を実施し、該キュア工程において、治具により前記台座部が前記収容ケースの開口端に接触した状態に保持することを特徴とする。
上記製造方法によれば、キュア工程における充填樹脂の膨張に伴って台座部が収容ケースの開口端から浮き上がることを防止できる。すなわち、キュア工程においてコイル部品の軸線方向が、収容ケースの軸線方向に対して傾くことを抑制できる。このようにコイル部品と収容ケースとの相対的な傾きを抑えることで、前述した放熱構造を構成する際に、収容ケースの底壁部の外面が放熱部材の平坦面に対して傾くことを抑制して、コイル部品の熱を熱伝導部材から放熱部材に効率よく伝えることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安価にコイル部品の放熱効率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品ユニットを示す断面図である。
図2図1のコイル部品ユニットを上方から見た上面図である。
図3図2のB−B矢視断面図である。
図4図1〜3のコイル部品ユニットを製造する方法において、収容ケースに収容されたコイル部品を治具によって挟み込んだ状態を示す断面図である。
図5図1〜3のコイル部品ユニットを基板及び放熱部材に取り付けた放熱構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜5を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1〜3に示すように、この実施形態に係るコイル部品ユニット1は、コイル部品2と、収容ケース3と、充填樹脂4とを備えている。なお、図1図2におけるA−A矢視断面図となっている。
コイル部品2は、通電により発熱するものであり、本体部11と台座部12とを備える。本体部11は、例えば例えばコモンモードチョークコイル等のように、磁性体からなるコア(磁芯)に導線を巻回して構成されている。なお、図示例では本体部11が円柱状に形成されているがこれに限ることはない。
【0019】
本実施形態の本体部11には、その外周面から径方向外側に突出する摺動突起14が形成されている。摺動突起14は、周方向に等間隔で複数配列されている。本実施形態では、摺動突起14が二つ配列され、二つの摺動突起14は本体部11の軸線L1を中心に互いに逆向きに突出している。なお、図示例の摺動突起14は、本体部11の軸線L1方向の一端から他端まで延びて形成されているが、例えば本体部11の軸線L1方向の中途部や一端部、他端部のみに形成されてもよい。
以上のように構成される本体部11は、後述する収容ケース3内に収容される。
【0020】
台座部12は円板状に形成されて、本体部11の軸線L1方向の一方の端部に設けられている。台座部12は、本体部11の外周面よりも径方向外側に突出している。すなわち、台座部12の径寸法は本体部11の径寸法よりも大きく設定されている。
そして、軸線L1に直交する台座部12の端面には、本体部11の導線に電気接続された端子13が突出している。
【0021】
収容ケース3は、コイル部品2を収容するものであり、樹脂材料によって軸線L2方向の一方側に開口する有底筒状に形成されている。収容ケース3の底壁部21及び周壁部22は、コイル部品2に対応する形状に形成されている。本実施形態では、底壁部21がコイル部品2の本体部11よりも一回り大きい円板状に形成され、周壁部22がコイル部品2の本体部11よりも一回り大きい円筒状に形成されている。すなわち、収容ケース3の底壁部21の内面及び周壁部22の内周面は、コイル部品2の本体部11の収容空間E1を形成している。また、周壁部22の径寸法は台座部12の径寸法以下に設定されている。このため、本体部11を収容ケース3内に収容した状態では、台座部12が収容ケース3の開口端に当接している。
【0022】
収容ケース3の底壁部21には、銅材等のように収容ケース3よりも熱伝導率の高い熱伝導部材23がインサート成形されている。熱伝導部材23は、底壁部21と同じ厚みを有する板状に形成され、底壁部21の内側及び外側に露出している。本実施形態では、熱伝導部材23が底壁部21の内面及び外面と同一平面をなすように成形されている。また、本実施形態の熱伝導部材23は、収容ケース3の軸線L2を中心とする円板状に形成されているが、これに限ることはなく、例えば矩形板状など、任意の平面視形状を有してよい。
【0023】
周壁部22の内周面には、収容ケース3の軸線L2方向に延びる軌道24が形成されている。軌道24は、コイル部品2の摺動突起14の形成位置に対応付けた位置に形成されている。すなわち、軌道24は、周壁部22の周方向に等間隔で複数配列されている。本実施形態では、軌道24が二つ配列され、二つの軌道24は収容ケース3の軸線L2を中心に互い対向するように配されている。なお、図示例の軌道24は、周壁部22の内周面から突出すると共に周壁部22の周方向に間隔をあけて配された一対のリブ24A,24Bによって構成されているが、例えば、周壁部22の内周面から窪んで形成されてもよい。
【0024】
前述したコイル部品2の摺動突起14は、コイル部品2の本体部11を収容ケース3内に収容する際に上記軌道24内に挿入されることで、軌道24の長手方向に摺動するようになっている。このように構成されていることで、収容ケース3とコイル部品2との相対的な周方向の位置決めを容易に行うことができる。
なお、収容ケース3の軌道24は、周壁部22の軸線L2方向の一端(底壁部21側の端部)から他端(収容ケース3の開口端)まで延びて形成されることに限らず、少なくともコイル部品2の本体部11を収容ケース3内に収容する際にコイル部品2の摺動突起14が軌道24の長手方向に摺動するように形成されていればよい。例えば、軌道24は周壁部22の軸線L2方向の中途部や一端部、他端部のみに形成されてもよい。
【0025】
そして、本実施形態の収容ケース3では、その内周面の周方向の一部が内周面の径方向外側に窪むことで、内周面によって形成されるコイル部品2の収容空間E1の径方向外側に樹脂流入空間E2が形成されている。
本実施形態の収容ケース3には、その外周面から突出すると共に収容ケース3の開口端側及び収容空間E1側に開口する樹脂流入槽25が形成されており、この樹脂流入槽25の内部空間が上記樹脂流入空間E2となっている。この樹脂流入槽25は、周壁部22の周方向に等間隔で複数配列されている。本実施形態では、樹脂流入槽25が二つ配列され、二つの樹脂流入槽25は収容ケース3の軸線L2を中心に互い対向するように配されている。
【0026】
また、本実施形態では、図3に示すように、樹脂流入空間E2のうち収容ケース3の開口端側の空間が、収容ケース3の底壁部21側の空間よりも大きくなっている。本実施形態では、樹脂流入槽25の内面が、収容ケース3の軸線L2方向に沿って収容ケース3の底壁部21側から開口部側に向かうにしたがって径方向外側に傾斜する傾斜内面25aを有している。なお、図示例における樹脂流入槽25の内面は、底壁部21の周縁から延びる傾斜内面25aに加え、傾斜内面25aの延出方向先端から、収容ケース3の開口端まで収容ケース3の軸線L2方向に延びる平行内面25bも有しているが、例えば傾斜内面25aのみによって形成されてもよい。
【0027】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、平面視した樹脂流入槽25の突出方向が、周壁部22の径方向に対して周方向の第一方向側(図示例で反時計回りの方向側)に傾斜している。
また、本実施形態の樹脂流入槽25は、平面視で樹脂流入槽25の突出方向の先端側から基端側に向かうにしたがって広がるように形成されている。特に、本実施形態の樹脂流入槽25では、周壁部22の周方向の第一方向側に偏るように広がっている。なお、樹脂流入槽25の周方向の第二方向側(図示例で時計回りの方向側)には、前述した軌道24が隣り合うように位置している。
【0028】
図1,3に示すように、充填樹脂4は、収容ケース3よりも熱伝導率が高い樹脂材料、例えばセラミックからなる熱伝導率の高いフィラーを添加した樹脂材料によって構成されている。この充填樹脂4は、収容ケース3内において本体部11全てを覆っている。すなわち、充填樹脂4は、本体部11と収容ケース3の底壁部21及び周壁部22との間に介在している。特に、充填樹脂4が本体部11と底壁部21の熱伝導部材23との間に介在していることで、コイル部品2と熱伝導部材23との電気的な絶縁が図られている。
以上のように構成されるコイル部品ユニット1では、通電により発熱したコイル部品2の熱が充填樹脂4側に拡散し、さらに、充填樹脂4から収容ケース3の底壁部21に設けられた熱伝導部材23に伝達されることで、収容ケース3の外部に放熱できる。
【0029】
次に、上記構成のコイル部品ユニット1を製造する方法の一例について説明する。
コイル部品ユニット1を製造する際には、予め前述したコイル部品2、収容ケース3及び溶融した充填樹脂4(溶融樹脂)を用意しておき、はじめに、収容ケース3内に溶融樹脂を流し込む(流入工程)。この流入工程において収容ケース3内に流し込む溶融樹脂の量は、後述する挿入工程後において溶融樹脂が収容ケース3外に溢れ出さないように設定される。
【0030】
次いで、コイル部品2を収容ケース3内に挿入する(挿入工程)。挿入工程では、本体部11の摺動突起14を収容ケース3の軌道24に挿入して摺動突起14が軌道24の長手方向に摺動するように、本体部11をその軸線L1方向の一方の端部(先端部)側から収容ケース3内に挿入する。この挿入によって、収容ケース3内における溶融樹脂の水位が上昇し、本体部11が溶融樹脂に埋設される。また、本体部11が収容ケース3内に収容されることで、台座部12が収容ケース3の開口端に当接する。
【0031】
ところで、収容ケース3が収容空間E1のみを有している場合(樹脂流入槽25を備えない場合)に、コイル部品2を収容ケース3に勢いよく挿入すると、前述した流入工程において流し込まれる溶融樹脂の量が収容ケース3の収容空間E1の容積から本体部11の容積を除いた容積に対応していていも、溶融樹脂が収容ケース3の外部に溢れ出してしまい、本体部11のうち収容ケース3の開口端側の端部が溶融樹脂に埋設されない虞がある。このように溶融樹脂が溢れる現象は、溶融樹脂の粘度が高い場合に顕著となる。
【0032】
これに対し、本実施形態の収容ケース3は樹脂流入槽25を備えるため、コイル部品2を勢いよく挿入しても、溶融樹脂が樹脂流入空間E2に流れ込むことで、溶融樹脂が収容ケース3の外部に溢れることを防止できる。
また、本実施形態の収容ケース3では、樹脂流入空間E2のうち収容ケース3の開口端側の空間が、収容ケース3の底壁部21側の空間よりも大きいため、樹脂流入空間E2に流れ込んだ溶融樹脂は、収容ケース3の底壁部21側に向けて流れるよりも、収容ケース3の開口端側に位置する本体部11の外周面に向けて流れやすくなる。これにより、溶融樹脂を本体部11のうち収容ケース3の開口端側の端部に付着させることが可能となる。
【0033】
さらに、本実施形態の収容ケース3では、樹脂流入空間E2をなす樹脂流入槽25の突出方向の基端側が平面視で周方向の第一方向側(軌道24に隣り合う第二方向側と逆側)に偏って広がっているため(図2参照)、樹脂流入空間E2に流れ込んだ溶融樹脂が収容空間E1に戻る際には、図2の矢印Xで示すように、本体部11と収容ケース3の周壁部22との隙間で第一方向に流れやすくなる。したがって、本体部11と収容ケース3の周壁部22との隙間が狭くても、この隙間を溶融樹脂で埋めることができる。
【0034】
上記挿入工程後には、溶融樹脂をキュアして硬化させて充填樹脂4とする(キュア工程)。この工程の実施に際しては、図4に示すように、治具Jによってコイル部品2の台座部12が収容ケース3の開口端に接触した状態に保持しておく。治具Jは、収容ケース3の底壁部21側及び開口端側に配される一対の狭持板J1,J2と、一対の狭持板J1,J2を相互に固定する連結部J3とを備えている。一対の狭持板J1,J2の間隔は、連結部J3によって所定距離に保持されている。この治具Jは、コイル部品2の台座部12を収容ケース3の開口端に押し付けるように構成されてもよいが、これに限ることはない。
上記キュア工程を行うことで、コイル部品ユニット1の製造が完了する。
【0035】
次に、本実施形態に係るコイル部品ユニット1の放熱構造について説明する。
本実施形態の放熱構造は、図5に示すように、上述したコイル部品ユニット1と、基板5と、放熱部材6とを備える。
基板5には配線パターン(不図示)が形成されており、この配線パターンにコイル部品ユニット1のコイル部品2や他の電子部品が電気接続されることで回路が形成されている。コイル部品ユニット1等は基板5の搭載面5aに搭載されている。本実施形態では、コイル部品2の台座部12の端面が基板5の搭載面5aに接触するようにコイル部品2の端子13を基板5のスルーホール5bに挿通させた上で、端子13を基板5にはんだ付けしている。
このように基板5に搭載されたコイル部品ユニット1の軸線L1(L2)は、基板5の搭載面5aに直交していることが好ましい。
【0036】
放熱部材6は、例えばアルミニウム等のように熱伝導性に優れた導電性材料からなり、基板5の搭載面5aに間隔をあけた位置に配されている。本実施形態では、基板5に対向する放熱部材6の面が平坦に形成されている。この放熱部材6の平坦面6aは基板5の搭載面5aに平行していることが好ましい。このような放熱部材6の具体例としては、例えば基板5及びコイル部品ユニット1を収容する筐体が挙げられる。これら基板5及び放熱部材6は、例えばねじ止め等によって相互に固定されている。
【0037】
さらに、本実施形態の放熱構造では、基板5に固定されたコイル部品ユニット1のうち収容ケース3の底壁部21の外面が、放熱部材6の平坦面6aに対向している。なお、底壁部21の外面は放熱部材6の平坦面6aに平行していることが好ましい。
これら収容ケース3の底壁部21と放熱部材6との間には、放熱シート7が介在している。放熱シート7は熱伝導率が高く、かつ、弾性変形可能な材料によって構成されている。この放熱シート7は、収容ケース3の底壁部21と放熱部材6との隙間を埋めることで、コイル部品ユニット1の熱を放熱部材6側に逃がす役割を果たす。すなわち、コイル部品ユニット1の放熱構造では、通電により発熱したコイル部品2の熱を、前述したように充填樹脂4から熱伝導部材23に伝達した後、さらに、放熱シート7を介して放熱部材6に効率よく逃がすことができる。
【0038】
次に、上述のように構成されるコイル部品ユニット1の放熱構造の製造方法について説明する。
コイル部品ユニット1の放熱構造を製造する際には、コイル部品ユニット1を基板5の搭載する搭載工程を実施した後、基板5の搭載面5aが放熱部材6の平坦面6aに間隔をあけて対向するように基板5及び放熱部材6を相互に固定する基板固定工程を実施すればよい。
【0039】
搭載工程においては、台座部12の端面が基板5の搭載面5aに対して確実に面接触するように、不図示の治具によってコイル部品ユニット1を基板5の搭載面5aに向けて押し付ける、あるいは、コイル部品2の自重によって台座部12の端面を基板5の搭載面5aに面接触させることが好ましい。これにより、コイル部品ユニット1の軸線L1(L2)を基板5の搭載面5aに直交させることができる。すなわち、収容ケース3の底壁部21の外面を基板5の搭載面5aに平行させることができる。
基板固定工程においては、放熱シート7が収容ケース3の底壁部21と放熱部材6との間に介在するように、放熱シート7を予め収容ケース3の底壁部21の外面あるいは放熱部材6の平坦面6aに配した上で、基板5及び放熱部材6を相互に固定すればよい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のコイル部品ユニット1及びその放熱構造によれば、収容ケース3の底壁部21に熱伝導部材23がインサート成形されているため、収容ケース3をなす樹脂の熱伝導率が低くても、コイル部品2の熱を収容ケース3の外部に効率よく放熱することができる。また、熱伝導部材23をインサート成形した収容ケース3は、収容ケース3を熱伝導率の高い樹脂で成形するよりも安価に製造することができる。
【0041】
さらに、本実施形態の放熱構造によれば、熱伝導部材23に伝達されたコイル部品2の熱を、熱伝導部材23から放熱シート7を介して放熱部材6に効率よく逃がすことができる。
また、本実施形態の放熱構造によれば、基板5の搭載面5aに加熱されることが好ましくない電子部品が搭載されていても、この電子部品がコイル部品2の熱によって加熱されることも抑制できる。
【0042】
さらに、本実施形態のコイル部品ユニット1では、収容ケース3に形成された軌道24、及び、コイル部品2に形成されて軌道24の長手方向に摺動する摺動突起14により、コイル部品2を収容ケース3に収容する際に、コイル部品2の軸線L1方向が収容ケース3の軸線L2方向に対して傾くことを抑制できる。
また、コイル部品2を収容ケース3に収容する際に、コイル部品2の台座部12を収容ケース3の開口端に当接させることでも、コイル部品2の軸線L1方向が収容ケース3の軸線L2方向に対して傾くことを抑制できる。
【0043】
さらに、本実施形態のコイル部品ユニット1の製造方法では、キュア工程において治具によってコイル部品2の台座部12が収容ケース3の開口端に接触した状態に保持するため、キュア工程における充填樹脂4の膨張に伴って台座部12が収容ケース3の開口端から浮き上がることを防止できる。すなわち、キュア工程においてコイル部品2の軸線L1方向が、収容ケース3の軸線L2方向に対して傾くことを抑制できる。
以上のようにコイル部品2と収容ケース3との相対的な傾きを抑えることで、前述した放熱構造を構成する際に、収容ケース3の底壁部21の外面が放熱部材6の平坦面6aに対して傾くことを抑制することができる。したがって、放熱部材6の平坦面6aに対する底壁部21の外面の傾きによって、底壁部21の外面や放熱部材6の平坦面6aと放熱シート7との間に隙間が生じることを抑制し、コイル部品2の熱を熱伝導部材23から放熱部材6に効率よく伝えることができる。
【0044】
また、本実施形態のコイル部品ユニット1の放熱構造によれば、収容ケース3の底壁部21と放熱部材6との間に弾性変形可能な放熱シート7が介在していることで、各種部品の寸法公差等によって底壁部21と放熱部材6との間に隙間が生じていたり、底壁部21の外面がコイル部品ユニット1に対向する放熱部材6の平坦面6aに対して傾いていても、放熱シート7によってこの隙間を埋めることができる。したがって、コイル部品2の熱を熱伝導部材23から放熱部材6に効率よく伝えることができる。
【0045】
さらに、本実施形態のコイル部品2の製造方法では、流入工程後に挿入工程を実施しているため、収容ケース3の底壁部21と収容ケース3内に収容されたコイル部品2との隙間が狭くても、また、溶融樹脂の粘度が高くても、コイル部品2と底壁部21との間に確実に充填樹脂4を介在させることができる。
【0046】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態のコイル部品ユニット1では、樹脂流入槽25の内面が傾斜内面25aを有して構成されているが、少なくとも樹脂流入空間E2のうち収容ケース3の開口端側の空間が、収容ケース3の底壁部21側の空間よりも大きくなっていればよく、例えば樹脂流入槽25の内面が階段状に形成されてもよい。また、上記実施形態のコイル部品ユニット1では、樹脂流入空間E2が収容ケース3の底壁部21側から開口端側にわたって形成されているが、例えば収容ケース3の開口端側のみに形成されてもよい。
【0047】
また、上記実施形態の放熱構造では、収容ケース3の底壁部21と放熱部材6との間に、放熱シート7が介在するとしたが、例えば放熱グリスであってもよい。さらに、収容ケース3と放熱部材6との間で電気的な絶縁が図られていれば、収容ケース3の底壁部21と放熱部材6との間に放熱シート7や放熱グリスを介在させず、底壁部21と放熱部材6とを直に接触させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 コイル部品ユニット
2 コイル部品
11 本体部
12 台座部
14 摺動突起
3 収容ケース
21 底壁部
22 周壁部
23 熱伝導部材
24 軌道
25 樹脂流入槽
E1 収容空間
E2 樹脂流入空間
4 充填樹脂
5 基板
5a 搭載面
6 放熱部材
図1
図2
図3
図4
図5