(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の便器洗浄タンクは、
前記第1タンクと前記第2タンクが、前記連通路において分離可能となっていてもよい。
この構成によれば、メンテナンス等の際には、必要に応じて第1タンクと第2タンクを分離できるので、利便性が良い。
本発明の便器洗浄タンクは、
前記連結管が、
前記第1タンク側に設けられた第1接続管と、
前記第2タンク側に設けられ、前記第1接続管に対して軸方向の相対移動を可能に嵌合される第2接続管とを備えて構成されて
おり、
前記第1タンクと前記第2タンクとを前記便器本体に対して個別に固定してもよい。
この構成によれば、第1タンクと第2タンクを相対移動させることができるので、便器本体が製造工程において寸法誤差を生じていても、第1タンクと第2タンクを便器本体に対して個別に固定することができる。
【0011】
本発明の便器洗浄タンクは、
前記第1タンクが、前記第2タンクよりも上方であって前記便鉢部よりも後方の領域に配置され、
前記第1タンクに機能部材が取り付けられていてもよい。
この構成によれば、機能部材が取り付けられている第1タンクは、第2タンクよりも上方であって便鉢部よりも後方の領域に配置されているので、機能部材に対してメンテナンス等を行う場合に、作業を行い易い。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1〜
図13を参照して説明する。本実施例1の便器洗浄タンクBは、水洗式大便器Aの便器本体60に設けられ、便器本体60の便鉢部61に吐水される洗浄水Wを貯留するためのものである。洗浄水Wとしては、水道水の他に、井戸水や中水を利用することができる。便器洗浄タンクBは、水洗式大便器Aの大型化を抑えながら、洗浄水Wの貯水容量を増大させることを実現している。便器洗浄タンクBは、第1タンク10、第2タンク20、電気駆動式のポンプ40、及び吐水路50を備えて構成される。
【0013】
第1タンク10は、
図1に示すように、合成樹脂材からなり洗浄水Wを貯留する第1貯水ケース11と、第1貯水ケース11を包囲する発泡樹脂材料からなる第1防露材12とから構成されている。第1防露材12の断熱機能により、第1タンク10に洗浄水Wが貯留されたときの結露が防止される。第1タンク10には、第1貯水ケース11の上壁部の一部を円筒状に上方へ突出させた形態の流入用筒部13が形成されている。この流入用筒部13には、
図7に示す給水路85の下流端が接続され、洗浄水Wが給水路85を通って第1貯水ケース11(第1タンク10)内に流入するようになっている。
【0014】
図4,5に示すように、第1タンク10には、第1貯水ケース11の底壁部の一部を円筒状に下方へ突出させた形態の第1接続管14が一体に形成されている。第1タンク10内の洗浄水Wは、第1接続管14を通って第2タンク20内に流出するようになっている。
【0015】
図1に示すように、第1タンク10の上面には、吸排気部15(請求項に記載の機能部材)が設けられている。吸排気部15は、第1タンク10内に洗浄水Wを供給する際に、第1タンク10及び第2タンク20内の空気を大気中に排出する。また、吸排気部15は、第1タンク10内と第2タンク20内の洗浄水Wが便鉢部61側へ排出される際に、大気中から空気を第1タンク10内に流入させることができる。この吸排気部15により、便器洗浄タンクBへの洗浄水Wの貯留動作が円滑に行われるとともに、便器洗浄タンクB内に貯留した洗浄水Wの便鉢部61側への吐水が円滑に行われる。
【0016】
第1タンク10の上端面には、フロートスイッチ16(請求項に記載の機能部材)が取り付けられている。このフロートスイッチ16は、第1タンク10が満水状態であるか否かを検知し、その検知信号に応じて、給水路85に設けた開閉弁86が開閉する。これにより、第1タンク10と第2タンク20に所定量の洗浄水Wが貯水される。第1タンク10と吐水路50の間にはオーバーフロー管17が接続され、第1タンク10内の洗浄水Wの水位が設定高さを超えると、オーバーフロー水が、オーバーフロー管17と吐水路50を介して後述する便鉢部61内に排出される。
【0017】
第2タンク20は、
図4に示すように、合成樹脂材からなり洗浄水Wを貯留する第2貯水ケース21と、第2貯水ケース21を包囲する発泡樹脂材料からなる上下一対の第2防露材22とから構成されている。第2防露材22の断熱機能により、第2タンク20に洗浄水Wが貯留されたときの結露が防止される。第2タンク20の上方には、上記した第1タンク10が配置され、両タンク10,20は、連結管29を介して連結されている。
【0018】
第2タンク20の上面には、便器洗浄タンクBを後述する便器本体60内に配置した際に、後述する便器排水管部62の凸形状に応じた凹部23が形成されている。凹部23は、左右方向における中央部に位置している。第2タンク20は、便器洗浄タンクBを便器本体60内に配置した際に、後述する排水接続管70との干渉を回避するために、上下両方へ開放された形態の切欠部24を有している。切欠部24は、凹部23より後方(
図1において右上方向)に位置している。
【0019】
第2貯水ケース21のうち凹部23よりも後方において切欠部24を左右両側から挟む部分は、後方へ片持ち状に突出した形態の左右一対の貯水部25L,25R、となっている。左右両貯水部25L,25R、は、第2貯水ケース21のうち凹部23を包囲する周縁部よりも上方に突出している。この左右両貯水部25L,25R、は、便器洗浄タンクBを便器本体60内に配置した際、排水接続管70を左右両側から挟むように配置される。
【0020】
第2タンク20の右側(
図1において奥側)の貯水部25Rの上端面からは、貯水部25R内に収容された吸水用接続筒部26の上端部が、上向きに突出している。同じく、右側の貯水部25Rの上端面には、連通管27の一方の端部が連通状態で接続されている。この連通管27の他方の端部は、第1タンク10の前面に連通状態で接続されている。第2タンク20に洗浄水Wを貯水する際、第2タンク20内の水位が上昇すると、第2タンク20の右側の貯水部25Rの上端部に空気が集まるが、この空気は、連通管27を介して第1タンク10内に逃がされる。これにより、第2タンク20の右側の貯水部25Rには、上部に空気溜まりを生じさせることなく満水状態で洗浄水Wを貯留することができる。
【0021】
左側の貯水部25Lには、その上面から上方へ突出する第2接続管28が一体に形成されている。
図4,5に示すように、第2接続管28内には、第1タンク10の第1接続管14が気密状に嵌合されるようになっている。また、第1接続管14と第2接続管28は上下方向に相対移動可能である。
図4は、上下方向において第1タンク10が第2タンク20から最も離間した状態をあらわし、
図5は、上下方向において第1タンク10が第2タンク20に最も接近した状態をあらわす。第1接続管14と第2接続管28は、第1タンク10(第1貯水ケース11)と第2タンク20(第2貯水ケース21)を、連通状態で且つ上下に分離可能に連結する連結管29を構成する。
【0022】
連結管29の内部は、第1タンク10と第2タンク20との間で洗浄水Wを流動させるための所定長さを有する連通路30となっている。連通路30を水平に切断したときの断面積は、第1タンク10及び第2タンク20を水平に切断したときの断面積よりも小さい。連通路30は、給水路85を通して便器洗浄タンクBに供給された洗浄水Wが便鉢部61側へ吐水される際に、洗浄水Wの流動経路に沿って第1タンク10と第2タンク20を直列に連結し、この直列連結経路に沿って洗浄水Wを流動させるための洗浄用流路として機能する。この連通路30は、第1タンク10の第1貯水ケース11と第2タンク20の第2貯水ケース21との間で、空気の流動を可能にする。
【0023】
図4,5に示すように、便器洗浄タンクBの内部には、通気管31が収容されている。通気管31は、図示しない取付け手段により、第1貯水ケース11の内面に固定されている。固定された通気管31は、軸線を上下方向、つまり連結管29(連通路30)と平行に向けている。通気管31の下端部は連通路30の内部に収容され、通気管31のうち連通路30よりも上方の領域は、第1タンク10内に収容されている。
【0024】
通気管31の内部は、上下両端が開放されて空気の流動を可能にした通気路32となっている。
図9に示すように、通気管31(通気路32)の上端は、第1貯水ケース11の内部において、第1タンク10の最大貯水時の水位よりも高い位置で上向きに開口している。通気管31の下端は、連通路30内において連通路30(第2接続管28)の下端よりも高い位置で、第2貯水ケース21の内部に向かって下向きに開口している。したがって、通気管31の下端の開口は、第2貯水ケース21の最大貯水時の水位よりも高い位置において、第2タンク20内と連通するように開口している。
【0025】
ポンプ40は、
図1に示すように、第2タンク20の右側の貯水部25Rの上方に配置されている。
図5に示すように、ポンプ40の下面からは吸水管41が下方へ延びており、吸水管41は、吸水用接続筒部26の上端部に気密状に嵌合している。吸水用接続筒部26は、第2タンク20内に開口する吸水口42に連通して、上方へ突出している。ポンプ40の外側面に設けた吐出口(図示省略)には、吐水路50の上流端が接続されている。
【0026】
吐水路50は、
図1及び
図2に示すように、上流端がポンプ40の吐出口に接続された第1吐水管51と、第1吐水管51の下流端に接続された継手52と、継手52の二股に分岐した下流端に接続された左右一対の分岐管53とから構成されている。分岐管53の先端部(下流端部)には、夫々、吐水口54が開口している。
【0027】
上記便器洗浄タンクBを備える水洗式大便器Aは、
図3に示すように、便器洗浄タンクBの他に、便器本体60、排水接続管70、及び便座装置82を備えて構成されている。便座装置82は、便器本体60の上面に載置された便座装置本体83と、便座装置本体83の前部に回動自在に軸支された便座及び便蓋84を有している。便座装置本体83内には、便器洗浄タンクBのうち便器本体60よりも上方に突出した第1タンク10の上端部が収容されている。
【0028】
便器本体60は、陶器製であって、便鉢部61と、この便鉢部61の下流側に連通した便器排水管部62と、便鉢部61を全周に亘って包囲する周壁部63とを一体に形成したものである。便鉢部61は上端周縁に形成したリム通水路64を有している。また、便鉢部61は、封水面65よりは下方であって、垂直方向に開口した流出口66を有している。
【0029】
便器排水管部62は、この流出口66に連続して形成し、後方に向けて斜めに下降する第1下降流路67、この第1下降流路67の下流側に連続して形成し、後方に向けて斜めに上昇する上昇流路68、及びこの上昇流路68の下流側に連続して形成し、下降する第2下降流路69を有している。第2下降流路69は下流端部が垂直下方に向けて延びている。第2下降流路69の下端には、排水接続管70の上端が接続されている。排水接続管70の下端は、床面Fに引き出された排水管71に接続されている。便器排水管部62と排水接続管70と排水管71は、便鉢部61内の貯留水、便鉢部61に吐水された洗浄水W及び汚物を、排出するための排水路72を構成する。
【0030】
便器本体60は、便鉢部61の封水面65よりも下方の部分と、第1下降流路67と、上昇流路68とによって、封水部73を形成している。便器本体60には、封水部73の下方を覆うように、便器排水管部62の第1下降流路67及び上昇流路68に沿った形状の断熱材74が取付けられている。これによって、封水部73の外表面に結露が生じることを防止することができる。
【0031】
便器本体60は上面の外周縁から下方に延びる周壁部63を有している。この周壁部63は、便器本体60の上面の外周縁より外側に広がらずに下方に延びており、周壁部63の下端は、その全周に亘って床面Fに接している。便器本体60の内部には、便鉢部61の下面における最下端よりも前方の領域と、周壁部63の左右両側壁部における前端側領域とを繋げた形態の補強壁75が、一体に形成されている。
【0032】
また、
図5に示すように、便器本体60の内部には、便器排水管部62の第2下降流路69の外面と、周壁部63の内面とを繋ぐ形態の支持壁部76が、一体に形成されている。支持壁部76は、全体としては概ね水平をなし、詳細には周壁部63から第2下降流路69に向かって次第に高くなるような緩勾配を有している。この支持壁部76は、便鉢部61から片持ち状に突出した形態の第2下降流路69が、便器本体60の成形工程で自重により下方へ変形するのを防止するために形成したものである。支持壁部76には、第2下降流路69を挟むように配された左右一対の貫通孔77が形成されている。貫通孔77には、ポンプ40の吸水管41と連結管29が貫通される。
【0033】
便器本体60の内部空間のうち便鉢部61よりも後方の領域は、後部空間78となっている。後部空間78は、左右両側と後側が周壁部63で区画されているとともに、上方及び下方に開放された形態である。後部空間78内には、上記した支持壁部76と、排水路72を構成する第2下降流路69及び排水接続管70と、排水管71が存在している。後部空間78は、便器本体60の内部に形成されたスペースであるから、平面視において便器本体60の形成領域の範囲内に収まっている。
【0034】
便器本体60の内部空間のうち便鉢部61、第1下降流路67、上昇流路68及び断熱材74よりも下方であって補強壁75よりも後方の領域は、空間79となっている。この便鉢部61の下方の空間79は、左右両側が周壁部63で区画され、前側が補強壁75で区画され、下方に開放されている。便鉢部61の下方に空間79が存在するのは、便座の適正な高さと、便鉢部61内における適正な水位と、封水部73に貯留される水量等を勘案して便鉢部61を設計したことによる。空間79も、後部空間78と同じく、便器本体60の内部に形成されたスペースであるから、平面視において便器本体60の形成領域の範囲内に収まっている。この空間79と上記の後部空間78は、前後に並ぶように配置されて互いに連通し、便器洗浄タンクBを収容するための収容空間80を構成している。
【0035】
便器洗浄タンクBのうち第1タンク10の上端部を除いた大部分は、収容空間80内に収容されている。具体的には、第2タンク20のうち凹部23が形成されている部分は、便鉢部61の下方の空間79内に収容される。凹部23は、便器排水管部62の第1下降流路67及び上昇流路68に沿って配置された断熱材74の凸面形状に沿うように凹んだ形状に形成されている。これにより、第2タンク20のうち凹部23が形成されている部分が、断熱材74と干渉しないように配置されるので、便鉢部61の下方の空間79が第2タンク20を収容するためのスペースとして有効活用される。
【0036】
第2タンク20のうち凹部23よりも後方の左右両貯水部25L,25Rは、後部空間78のうち支持壁部76よりも下方の領域内に収容され、排水路72(排水接続管70)の左右両側に配置される。つまり、第2タンク20の後端部は、切欠部24を形成したことにより、排水路72と干渉しないようになっている。収容空間80に収容された第2タンク20は、その前端部に設けた固定部材81と後端部に設けた固定部材(図示省略)を介して、便器本体60の内面にボルト締めにより固定される。
【0037】
便器本体60の第2タンク20を固定した状態では、
図5に示すように、左側の貯水部25Lの上端面が支持壁部76に対して下から対向し、第2接続管28が、左側の貫通孔77内に収容されて上向きに開口する。また、右側の貯水部25Rの上端面が支持壁部76に対して下から対向し、右側の貯水部25Rの上端面から突出する吸水用接続筒部26が、右側の貫通孔77内に収容されて上向きに開口する。
【0038】
第2タンク20を便器本体60内に収容して固定した後、第1タンク10とポンプ40が取り付けられる。第1タンク10は、支持壁部76の上方から第1接続管14を第2タンク20の第2接続管28に嵌合させるようにして、第2タンク20に組み付けられる。また、連通管27は、右側の貫通孔77を通して右側の貯水部25Rと第1タンク10とに接続される。さらに、ポンプ40は、支持壁部76の上方から吸水管41を吸水用接続筒部26に嵌入するようにして、第2タンク20に組み付けられる。
【0039】
吐水路50は、ポンプ40とオーバーフロー管17に接続される。吐水路50の吐水口54は、便鉢部61のリム通水路64に臨むように配置される。第1タンク10と第2タンク20内に貯留されている洗浄水Wは、第2タンク20からポンプ40で吸い上げられ、吐水路50を通って便鉢部61内に吐水される。これにより、便鉢部61内の汚物が排出されて、便鉢部61内が洗浄される。
【0040】
本実施例1の便器洗浄タンクBは、便器本体60における平面視の範囲内に配置される第1タンク10と、便器本体60における平面視の範囲内で第1タンク10との間に上下に間隔を空けて配置される第2タンク20と、両タンク10,20を連通状態で且つ分離可能に連結し、内部が洗浄水Wを流動させる所定長さの連通路30となっている連結管29とを備える。この構成の技術的意義は、次の通りである。
【0041】
便器本体60の内部には、便座の高さ、便鉢部61の水位、封水部73の貯水量、便鉢部61に接続された排水路72の配索経路確保等の設計条件により、空間79がデッドスペースとして存在する。この便鉢部61の下方の空間79は、便器洗浄タンクBを収容するための収容空間80の一部として有効利用することが考えられる。しかし、便器本体60の内部には、排水路72や、排水路72を構成する第2下降流路69を支持する支持壁部76が存在しているので、便器洗浄タンクBを便器本体60内に組み付けようとしたときに、排水路72や支持壁部76が邪魔になり、その結果、空間79を最大限に活かすことができなくなることが懸念される。
【0042】
そこで本実施例1では、排水路72や支持壁部76の存在を勘案した上で空間79の有効利用を図るため、便器洗浄タンクBを、上下に分離可能な第1タンク10と第2タンク20とに分けた上で、この両タンク10,20を所定の長さを有する連結管29で連結する構成とした。そして、支持壁部76を挟むように第1タンク10と第2タンク20を上下に分けて配置することにより、空間79を含む収容空間80を便器洗浄タンクBの収容スペースとして最大限に有効活用することを実現した。また、第1タンク10と第2タンク20は、いずれも、便器本体60における平面視の範囲内に配置されている。したがって、本実施例1の便器洗浄タンクBは、水洗式大便器Aの大型化を抑えながら、貯水容量を増大させることが可能である。
【0043】
また、本実施例1の便器洗浄タンクBは、第1タンク10側に設けられて連結管29を構成する第1接続管14と、第2タンク20側に設けられて連結管29を構成し、第1接続管14に対して軸方向(上下方向)の相対移動を可能に嵌合される第2接続管28とを備えている。この構成によれば、第1タンク10と第2タンク20を上下方向に相対移動させることができるので、便器本体60が製造工程において寸法誤差を生じていても、第1タンク10と第2タンク20を便器本体60に対して個別に固定することができる。
【0044】
また、本実施例1の便器洗浄タンクBは、第1タンク10が、第2タンク20よりも上方であって便鉢部61よりも後方の領域に配置され、第1タンク10に機能部材(吸排気部15とフロートスイッチ16)が取り付けられている。機能部材が取り付けられている第1タンク10を、第2タンク20よりも上方であって便鉢部61よりも後方の領域に配置したことにより、機能部材に対してメンテナンス等を行う場合に、作業を行い易くなっている。
【0045】
また、本実施例1の便器洗浄タンクBは、上下2つのタンク10,20に分割し、第1タンク10を洗浄水Wの給水路85に接続し、第2タンク20を、便鉢部61に向けて洗浄水Wを吐水する吐水路50に接続し、両タンク10,20を連通路30を介して直列に連結し、第1タンク10内の洗浄水Wを第2タンク20内の洗浄水Wと一緒に便鉢部61側へ流出させるようになっている。このように2つのタンク10,20を直列に連結する構造では、相互のタンク10,20間で空気が移動することに起因する異音の発生が懸念される。
【0046】
異音の発生形態としては、次のようなものがある。本実施例1では、連通路30を通って第1タンク10内の洗浄水Wが第2タンク20へ流出するときの単位時間当たりの流量(以下、単に「流量」という)が、第1タンク10に洗浄水Wが流入するときの流量よりも少ない。したがって、便鉢部61への吐水が完了した後に、便器洗浄タンクB内に洗浄水Wを貯留する過程では、第1タンク10から第2タンク20に流出する洗浄水Wによって連通路30が封止され、第2タンク20内の空気が閉じこめられた状態となる。そのため、第2タンク20内の水位の上昇に伴い、第2タンク20内に閉じ込められた空気が、洗浄水Wの流れに逆らって連通路30内を第1タンク10側へ向かって上昇し、このときにボコボコという異音が発生する虞がある。
【0047】
そこで、本実施例1の便器洗浄タンクBは、洗浄水Wの給水路85に接続される第1タンク10と、便鉢部61に向けて洗浄水Wを吐水する吐水路50に接続される第2タンク20と、両タンク10,20を直列に連結する連通路30と、一方の端部(上端)が第1タンク10における最大貯留時の水位よりも高い位置に開口し、他方の端部(下端)が第2タンク20と連通するように開口する通気路32とを備える構成とした。この構成によれば、次述する作用により、便器洗浄タンクBに洗浄水Wを供給する際の異音の発生を防止できる。
【0048】
便器洗浄タンクB内に洗浄水Wを供給する過程では、第1タンク10への洗浄水Wの給水流量が、連通路30を通過して第1タンク10から第2タンク20に流出する洗浄水Wの流量よりも多い。そのため、
図7に示すように、連通路30のうち通気管31以外の領域(連通路30における洗浄水Wの流動領域)が、第1タンク10から第2タンク20に流入する洗浄水Wによって塞がれた状態となる。しかし、この状態で第2タンク20内の水位が上昇しても、第2タンク20内の空気は、通気路32を通って第1タンク10の上端部へ排出される。また、第1タンク10内の空気は、吸排気部15を通って大気中(第1タンク10外)へ排出される。
【0049】
これにより、
図8に示すように、第2タンク20内の水位が上昇しても、第2タンク20内の空気は、閉じ込められた状態とはならず、大気圧に保たれる。したがって、第2タンク20内の空気が、連通路30のうち通気管31以外の領域において、洗浄水Wの流れに逆らって第1タンク10側へ移動する、ということはない。これにより、第2タンク20内の空気が連通路30を通って第1タンク10側へ移動することに起因する異音の発生が防止される。この異音の防止は、
図9に示すように第1タンク10と第2タンク20の両方が満水状態に至るまで、継続する。
【0050】
また、2つのタンク10,20を直列に連結した場合において相互のタンク10,20間で空気が移動することに起因する異音発生の形態としては、次のようなものもある。洗浄水Wは非圧縮性流体であり、連通路30の断面積は第2タンク20内に開口するポンプ40の吸水口42の断面積よりも小さいので、第1タンク10と第2タンク20に貯留されている洗浄水Wが便鉢部61側へ流出する際には、第2タンク20から流出する洗浄水Wの流速よりも、連通路30を通過する洗浄水Wの流速の方が速くなる。したがって、便器洗浄のために両タンク10,20から便鉢部61側へ流出する洗浄水Wの流量が大流量である場合には、連通路30における洗浄水Wの流出の勢いにより、第1タンク10の水面が連通路30の近傍で局所的に下がる。すると、第1タンク10内の空気が第1タンク10内の洗浄水Wと一緒に連通路30に引き込まれ、このときに、ボコボコという異音が発生することも懸念される。
【0051】
この対策手段として、上記した通気路30が効果を発揮する。
図9に示すように便器洗浄タンクB内に洗浄水Wが貯留されている状態から、その洗浄水Wが便鉢部61へ吐水される際には、その吐水の勢いにより、
図10に示すように、第2タンク20に連通している通気路32内の洗浄水Wの水位が、第1タンク10の水位よりも低くなり、
図11に示すように、第1タンク10内の空気が、通気路32を通して第2タンク20内に引き込まれる。第1タンク10内は、吸排気部15を介して大気中と連通しているので、第2タンク20内に引き込まれた空気の圧力も大気圧に保たれる。
【0052】
したがって、
図11に示す状態から洗浄水Wの吐水が進んで第2タンク20の水位が下がっていく過程では、
図12に示すように、第1タンク10内の空気が通気路30を通して第2タンク20内に流入するので、第2タンク20の洗浄水Wの単位時間当たりの流出量が多くても、連通路30における洗浄水Wの流速は速くならずに済む。これにより、連通路30における洗浄水Wの流出の勢いによって第1タンク10内の空気が連通路30に引き込まれる、という虞がない。したがって、第1タンク10内の空気が連通路30に引き込まれることに起因する異音の発生が防止される。
【0053】
また、本実施例1の便器洗浄タンクBは、第1タンク10が第2タンク20よりも上方に配置され、連通路30が第1タンク10の底面に開口されている。この構成によれば、第1タンク10内に貯留されている洗浄水Wが、全て第2タンク20を経由して便鉢部61側へ吐水されるので、高い洗浄効果を期待することができる。
【0054】
また、本実施例1の便器洗浄タンクBは、通気路32の下端部(少なくとも一部)が連通路30内に収容されている。この構成によれば、通気路32を連通路30の外部に配置して両タンク10,20間を連通させた場合に必要となる通気路32用のシール構造が不要となる。したがって、部品点数の削減を図ることができるとともに、構造の簡素化を図ることができる。
【0055】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、便器洗浄タンクが、第1タンクと第2タンクの2つのタンクを連結して構成されているが、便器洗浄タンクは、3つ以上のタンクを連結して構成されていてもよい。
(2)上記実施例1では、便器洗浄タンクが、第1タンクと第2タンクを上下に並べて配置する形態としたが、便器洗浄タンクは、第1タンクと第2タンクが水平方向(例えば、前後や左右)に並ぶような位置関係で配置してもよい。
(3)上記実施例1では、連結管を構成する2つの接続管が、第1タンク又は第2タンクに一体に形成されていたが、2つの接続管のうち少なくとも一方の接続管は、第1タンク又は第2タンクとは別体の部品であってもよい。
(4)上記実施例1では、連結管を構成する第1接続管と第2接続管が軸方向に相対移動可能に嵌合されるようにしたが、第1接続管と第2接続管は相対移動できないように嵌合されていてもよい。
(5)上記実施例1では、第1タンクと第2タンクが連通路において分離可能となっているが、第1タンクと第2タンクは、一旦、連結した後に分離できないようになっていてもよい。