特許第6045125号(P6045125)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045125
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】分離型電流/電圧、電圧/電圧変換器
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G01R19/00 B
【請求項の数】27
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2010-532111(P2010-532111)
(86)(22)【出願日】2008年10月7日
(65)【公表番号】特表2011-502261(P2011-502261A)
(43)【公表日】2011年1月20日
(86)【国際出願番号】US2008079096
(87)【国際公開番号】WO2009058524
(87)【国際公開日】20090507
【審査請求日】2010年6月29日
【審判番号】不服2014-21446(P2014-21446/J1)
【審判請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】60/983,884
(32)【優先日】2007年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/115,452
(32)【優先日】2008年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514196891
【氏名又は名称】ピーエーアイ・キャピタル・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】PAI Capital LLC.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153028
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 忠
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,シルヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ガンメンターラー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】カプイス,アライン
【合議体】
【審判長】 酒井 伸芳
【審判官】 清水 稔
【審判官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第4229948(DE,A1)
【文献】 米国特許第3422352(US,A)
【文献】 特表平10−513549(JP,A)
【文献】 特開昭52−10514(JP,A)
【文献】 特開平1−189567(JP,A)
【文献】 特表2001−511893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流センサであって、
一次巻線と、二次巻線と、実質的に環状の磁気変圧器コアとを有し、前記一次巻線および二次巻線が前記コアを通過する、変圧器であって、
前記一次巻線が測定対象電流を通すように構成され、
前記二次巻線が、サンプリング巻線と補助巻線とに分割され、前記磁気変圧器コア内に飽和磁場を誘起するために、パルス状飽和電流を通し、更に前記磁気変圧器コア内に前記飽和磁場とは逆向きの磁場を誘起するために、パルス状サンプリング電流を通すように構成された、変圧器と、
前記二次巻線に電流を供給する電源と、
前記サンプリング巻線に結合された検知回路であって、前記測定対象電流の大きさに実質的に比例する電圧を測定するように構成された、検知回路と、
前記パルス状飽和電流を前記補助巻線に印加し、前記パルス状サンプリング電流を前記サンプリング巻線に印加するように構成された、制御回路と、
からなり、
前記制御回路は、更に、前記パルス状サンプリング電流を前記サンプリング巻線に印加する前に前記補助巻線における前記パルス状飽和電流をオフし、前記パルス状飽和電流を前記補助巻線に印加する前に前記サンプリング巻線における前記パルス状サンプリング電流をオフするように構成された、電流センサ。
【請求項2】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記制御回路は、更に、最初に前記パルス状飽和電流を前記補助巻線に印加し、次いで前記パルス状飽和電流および前記パルス状サンプリング電流が同時に流れるように前記パルス状サンプリング電流を前記サンプリング巻線に印加し、次いで前記パルス状サンプリング電流および前記パルス状飽和電流を実質的に同時にオフにするように構成された、電流センサ。
【請求項3】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記制御回路は、更に、該制御回路が前記パルス状サンプリング電流をオフにしたときに、前記補助巻線から前記電源にエネルギが流れて戻るように構成された、電流センサ。
【請求項4】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記制御回路は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、およびディスクリート・ディジタル論理素子を含む回路のうち少なくとも1つを含む、電流センサ。
【請求項5】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記制御回路はアナログ回路を含む、電流センサ。
【請求項6】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記検知回路は、前記制御回路からタイミング・パルスを受けるように構成されたサンプル・ホールド回路を含む、電流センサ。
【請求項7】
請求項6記載の電流センサにおいて、前記検知回路は、更に、前記制御回路から制御信号を受けるように構成されたアナログ/ディジタル変換器を含む、電流センサ。
【請求項8】
請求項7記載の電流センサにおいて、前記検知回路は、更に、アナログ電圧出力を生成するように構成されたディジタル/アナログ変換器を含む、電流センサ。
【請求項9】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記検知回路は、
検知抵抗器と、
アナログ電圧基準と、
前記検知抵抗器両端間に発生する電圧を前記アナログ電圧基準と比較するように構成されたアナログ比較器と、
前記アナログ比較器からデータ信号を受け、前記制御回路からタイミング信号を受けるように構成されたラッチ回路と、
を含む、電流センサ。
【請求項10】
請求項1記載の電流センサであって、更に、
少なくとも第1検知抵抗器と第2検知抵抗器と、
選択的に前記第2検知抵抗器を前記第1検知抵抗器に並列に接続するように構成された少なくとも1つの範囲選択スイッチと、
を含み、前記制御回路は、更に、前記少なくとも1つの範囲選択スイッチを選択的に開および閉にするように構成された、電流センサ。
【請求項11】
請求項1記載の電流センサであって、更に、
少なくとも第1検知抵抗器と第2検知抵抗器であって、前記第1検知抵抗器が前記第2検知抵抗器と直列に配された、少なくとも第1検知抵抗器と第2検知抵抗器と、
前記第2検知抵抗器を選択的に迂回するように構成された少なくとも1つの範囲選択スイッチと、
を含み、前記制御回路は、更に、少なくとも1つの範囲選択スイッチを選択的に開および閉にするように構成された、電流センサ。
【請求項12】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記一次巻線は、前記実質的に環状の磁気変圧器コアを1回通過する1つの導体を含む、電流センサ。
【請求項13】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記磁気変圧器コアは、アモルファス合金、ナノクリスタル合金、フェライト材料、パーマロイ、およびスーパーマロイのうちの少なくとも1つを含む、電流センサ。
【請求項14】
請求項1記載の電流センサにおいて、前記磁気変圧器コアは、基板上にめっきされたコアを含む、電流センサ。
【請求項15】
電流センサであって、
一次巻線と、補助巻線と、二次巻線と、該一次巻線と補助巻線と二次巻線が通過する実質的に環状の磁気変圧器コアとを有する変圧器であって、
前記一次巻線が測定対象電流を通すように構成され、
前記補助巻線が、前記磁気変圧器コア内に飽和磁場を誘起するために、パルス状飽和電流を通すように構成され、
前記二次巻線が、前記磁気変圧器コア内に、前記パルス状飽和電流によって誘起された飽和磁場とは逆方向の磁界を誘起するために、パルス状サンプリング電流を通すように構成された、変圧器と、
前記補助巻線および前記二次巻線に電流を供給する電源と、
前記補助巻線を前記電源に選択的に接続するために、前記補助巻線に動作上結合された飽和スイッチと、
前記二次巻線を前記電源に選択的に接続するために、前記二次巻線に動作上結合されたサンプリング・スイッチと、
前記二次巻線と直列に動作上接続された検知抵抗器と、
前記検知抵抗器の両端間に発生する電圧を測定するように構成された検知回路であって、サンプル・ホールド回路およびアナログ/ディジタル変換器を含む、検知回路と、
前記飽和スイッチおよび前記サンプリング・スイッチを選択的に開および閉にするように、更に前記サンプル・ホールド回路および前記アナログ/ディジタル変換器に制御信号を送るように構成されたディジタル制御回路と、
を含み、
前記ディジタル制御回路は、更に、最初に前記飽和スイッチを閉として前記パルス状飽和電流を前記補助巻線に印加し、次いで前記サンプリング・スイッチを閉として前記パルス状サンプリング電流を前記二次巻線に印加し、前記飽和スイッチ及び前記サンプリング・スイッチが同時に閉になることがないように構成された、電流センサ。
【請求項16】
請求項15記載の電流センサにおいて、前記制御回路は、更に、該制御回路が前記パルス状サンプリング電流をオフにしたときに、前記補助巻線から前記電源にエネルギが流れ戻るように構成された、電流センサ。
【請求項17】
請求項15記載の電流センサにおいて、前記制御回路は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、およびディスクリート・ディジタル論理素子を含む回路のうち少なくとも1つを含む、電流センサ。
【請求項18】
請求項15記載の電流センサにおいて、前記検知回路は、更に、アナログ電圧出力を生成するように構成されたディジタル/アナログ変換器を含む、電流センサ。
【請求項19】
請求項15記載の電流センサであって、更に、
少なくとも1つの範囲選択抵抗器と、
前記少なくとも1つの範囲選択抵抗器を前記検知抵抗器に選択的に並列に接続するように構成された少なくとも1つの範囲選択スイッチと、
を含み、
前記制御回路は、更に、前記少なくとも1つの範囲選択スイッチを選択的に開および閉にするように構成された、電流センサ。
【請求項20】
請求項15記載の電流センサであって、更に、
前記検知抵抗器と直列に配された少なくとも1つの範囲選択抵抗器と、
前記少なくとも1つの範囲選択抵抗器を選択的に迂回するように構成された少なくとも1つの範囲選択スイッチと、
を含み、
前記制御回路は、更に、少なくとも1つの範囲選択スイッチを選択的に開および閉にするように構成された、電流センサ。
【請求項21】
請求項15記載の電流センサにおいて、前記一次巻線は、前記実質的に環状の磁気変圧器コアを1回通過する1つの導体を含む、電流センサ。
【請求項22】
請求項15記載の電流センサにおいて、前記磁気変圧器コアは、アモルファス合金、ナノクリスタル合金、フェライト材料、パーマロイ、およびスーパーマロイのうちの少なくとも1つを含む、電流センサ。
【請求項23】
請求項15記載の電流センサにおいて、前記磁気変圧器コアは、基板上にめっきされたコアを含む、電流センサ。
【請求項24】
電流センサであって、
第1一次巻線と、第1二次巻線と、該第1一次巻線と第1二次巻線が通過する実質的に環状の第1磁気変圧器コアとを有する第1変圧器であって、
前記第1一次巻線が測定対象電流を通すように構成され、
前記第1二次巻線が、前記第1磁気変圧器コア内に第1飽和磁場を誘起するために、第1パルス状飽和電流を通すように、更に前記第1磁気変圧器コア内に、前記第1飽和磁場とは逆方向の磁場を誘起するために、第1パルス状サンプリング電流を通すように構成された、第1変圧器と、
第2一次巻線と、第2二次巻線と、該第2一次巻線と前記第2二次巻線が通過する実質的に環状の第2磁気変圧器コアとを有する第2変圧器であって、
前記第2一次巻線が測定対象電流を通すように構成され、
前記第2二次巻線が、前記第2磁気変圧器コア内に第2飽和磁場を誘起するために、第2パルス状飽和電流を通すように、更に前記第2磁気変圧器コア内に、前記第2飽和磁場とは逆方向の磁場を誘起するために、第2パルス状サンプリング電流を通すように構成された、第2変圧器と、
前記第1変圧器の前記第1二次巻線に結合された第1検知回路であって、前記第1一次巻線を流れる電流の大きさに実質的に比例する電圧を測定するように構成された第1検知回路と、
前記第2変圧器の前記第2二次巻線に結合された第2検知回路であって、前記第2一次巻線を流れる電流の大きさに実質的に比例する電圧を測定するように構成された第2検知回路と、
前記第1パルス状飽和電流を前記第1二次巻線に、前記第2パルス状飽和電流を前記第2二次巻線に選択的に印加し、出力選択スイッチを切り換え、前記第1パルス状サンプリング電流を前記第1二次巻線に、前記第2パルス状サンプリング電流を前記第2二次巻線に選択的に印加するように構成された制御回路であって、
前記第1パルス状サンプリング電流および前記第2パルス状サンプリング電流の内の一方が流れ、
前記出力選択スイッチが、前記第1パルス状サンプリング電流が流れているときには前記第1検知回路を選択し、前記第2パルス状サンプリング電流が流れているときには前記第2検知回路を選択する、ようにする、制御回路と、
を含む、電流センサ。
【請求項25】
請求項24記載の電流センサにおいて、
前記第1二次巻線は、更に、第1サンプリング巻線と第1補助巻線とに分割され、
前記第2二次巻線は、更に、第2サンプリング巻線と、第2補助巻線とに分割され、
前記制御回路は、更に、
前記第1パルス状飽和電流を前記第1補助巻線に印加し、
前記第1パルス状サンプリング電流を前記第1サンプリング巻線に印加し、
前記第2パルス状飽和電流を前記第2補助巻線に印加し、
前記第2パルス状サンプリング電流を前記第2サンプリング巻線に印加するように構成された、
電流センサ。
【請求項26】
請求項24記載の電流センサにおいて、前記制御回路は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、およびディスクリート・ディジタル論理素子を含む回路、のうち少なくとも1つを含む、電流センサ。
【請求項27】
請求項24記載の電流センサにおいて、前記検知回路は、更に、アナログ電圧出力を生成するように構成されたディジタル/アナログ変換器を含む、電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のデータ
本願は、U.S.C.§119(e)にしたがって、2007年10月30日に出願された米国仮特許出願第60/983,884号の優先権を主張する。
発明の分野
本発明は、電流を電圧に変換することによって電流を測定するデバイスに関する。更に特定すれば、本発明は、測定しようとする回路から分離された、直流電流および交流電流双方を測定する高帯域幅デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電流を測定するための技法は、いくつか知られている。最も単純なものでは、電流経路に挿入された分路抵抗器を備えている。この方法は安価であるが、分離には備えておらず、特に大きな信号振幅が要求されるときには、過大な電力を消費する。
【0003】
別の技法に、ホール効果電流センサを採用したものがある。この種のセンサは、分離、高分解能、および低損失に備えている。生憎、このようなデバイスの帯域幅は数百キロヘルツに抑えられ、分路抵抗器と比較するとコストが高い。更に、このセンサは、追加の補償回路を採用したとしても、測定可能な程の温度ドリフトを呈する。更に、殆どの目的に対して満足できる精度を得るためには、電流導通導体周囲の磁界をしかるべく集中させるためにギャップを有する比較的大きな磁気コアを用いて、センサを実現しなければならない。このため、この種の電流センサは、余分にかさばり、重くなり、コスト高となる。
【0004】
近年、異方性磁気抵抗(AMR)効果に基づく電流センサが導入された。AMR効果は、印加した磁界が存在する中における強磁性体の抵抗変化から生ずる。この効果を用いると、ホール効果センサよりも高い帯域幅を有するセンサを作ることができるが、このようなセンサの出力電圧は、温度変動の影響を受ける。更に、十分な出力電圧を発生するためには、増幅回路が必要となり、デバイスにコストが加算されることになる。全体的に、このセンサはホール効果電流センサまたは単純な分路抵抗器よりも高価となる。
【0005】
巨大磁気抵抗(GMR)効果も、電流測定に用いることができる。この効果は、多層構造の抵抗の磁気感度によって得られる。GMR効果はAMR効果よりも高い感度を呈するが、GMR効果は強い非線形挙動も呈する。これまでに、この技法に基づいた電流センサは市販されるに至っていない。
【0006】
フラックスゲートに基づくセンサ(fluxgate-based sensor)は、前述の原理のいずれに基づくセンサよりも、高い精度および優れた温度挙動を有するが、これを達成するには、遥かに高いコストがかかり、しかも物理的サイズも大きくなる。このため、このようなセンサは多くの用途には望ましくないものとなっている。
【0007】
別の部類のセンサでは、測定する電流を、変圧器の一次側を通過させ、それを用いて変圧器のコアを飽和状態に保持する原理に基づくものがある。次いで、電圧を二次側に印加して、コアを線形範囲に押し込み、二次側を通過して、一次電流に比例する電流を生成する。次いで、この二次電流を、センサ抵抗器を用いて測定する。しかしながら、このようなセンサは、磁気コアを飽和させるには不十分な小電流を測定することはできない。
【0008】
ゼロ付近の電流は、コアを飽和状態に維持するような大きさとした定常電流を通すバイアス巻線を追加することによって測定することができる。しかしながら、バイアス電流は、定常電力流出を生じ、更にセンサ抵抗器において電圧オフセットを生ずる。したがって、高精度を達成するには、バイアス巻線を通過する電流を高い精密度(precision)で制御しなければならない。更に、この種の電流センサの帯域幅は、必然的に非常に小さくなる。何故なら、断面積が大きなフェライトまたはパーマロイ材料の磁気コアを採用しているからである。加えて、フェライトおよびパーマロイ・コアは、温度変化の影響を非常に受けやすいので、この種のセンサは著しい温度依存性を呈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、広い測定範囲において交流および直流電流を測定しつつ、高帯域幅および高精度を呈し、しかも低電力消費、測定する電流からの確実な分離、低温度感度、および低コストを達成する、改良電流センサが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
変圧器を用いて、高精度、高帯域幅電流センサを達成する。この変圧器は、測定対象電流を通す1つ以上の巻線を有する一次巻線と、一次電流をサンプリングするために用いられる二次巻線と、一次電流の大きさに関係なくコアを選択的に飽和状態にする補助巻線とを有する磁気コアを備えている。あるいは、補助巻線を取り除いて、制御回路が多少複雑になることを犠牲にして、サンプリング機能および飽和機能の双方を、二次巻線を用いて実行することもできる。この電流センサは、消費する電力が少なく、測定電流とセンサとの間に直流電気分離を備え、低温度感度を呈し、磁気コア材料の特質、および巻線を制御する方法のために、安価である。
【0011】
以下で論ずる本発明による電流センサの様々な実施形態において、直流電流または交流電流を、定められた再現可能な伝達特性で、電圧に変換する。センサから得られた出力電圧は、数ボルトの振幅を有するので、アナログ/ディジタル変換器(ADC)と直接インターフェースすることが可能になる。このセンサは、測定対象電流と検知回路との間に分離を備え、一次側にゼロの平均電圧降下を誘起する。このセンサは、最小の電力損失で、1MHzを超える帯域幅の正および負電流を測定することができる。また、先行技術のセンサが採用する一定電流の変わりに、パルス状補助電流を用いて磁気コア材料を選択的に飽和させることにより、0アンペアまでの電流を精度高く測定することもできる。この方法により、電力消費および出力電圧オフセットが大幅に低減し、これによってセンサが測定することができる入力電流のダイナミック・レンジが改善する。補助電流をパルス状にするので、補助巻線は、変圧器の磁束を制御するために用いたエネルギの実質的な量を復元するように構成することができ、その結果、先行技術のセンサと比較して、50%までの電力損失の低減となる。更に、本発明は、オフセット電圧の供給電圧に対する依存性を排除するので、一定補助電流を用いる先行技術のセンサよりも、測定精度が向上する。加えて、補助電流が測定精度に影響を及ぼさないので、非常に単純で低価格の回路によって発生することができる。パルス状補助電流の更に別の効果は、様々な先行技術のセンサにおいて生じたような、過剰電流の発生がオフセット電圧を変化させることがないという点にある。
【0012】
補助電流のパルス状の特質によって可能となる本発明の別の実施形態では、補助巻線を取り除くことができ、飽和機能を二次巻線が担うことができる。本発明は、一定電流が補助巻線を通過する必要がないので、二次巻線を時間で共有することができ、最初に磁気コアを飽和させ、次いで一次電流をサンプリングする役割を果たすことができる。これによって、回路は多少複雑になるものの、磁気回路のサイズが縮小し、複雑さが低下する。しかしながら、制御回路およびスイッチを特定用途集積回路(ASIC)に実装すれば、回路の複雑さが上昇しても、センサのコストや大きさ(bulk)が増大することはない。
【0013】
本発明によるセンサの出力電圧は、ディジタル的に処理して、当業者には周知の曲線当てはめおよび温度補償技法を用いることによって、更に精密度を向上させることもできる。しかしながら、ディジタル補正技法を採用しない代替実施形態も、本発明の範囲および主旨の範囲内に入る。以下では電流センサの様々な具体的な実施形態について論ずるが、これらは、当業者には本発明によって得られる利点の代表例と捕らえられてしかるべきであり、本発明をいずれの特定の実施形態にも限定することは意図していない。
【0014】
本発明による電流センサの第1実施形態は、磁気コアを有する変圧器を含む。磁気コアの周囲には、1つ以上の巻線を含む一次巻線と、一次電流を測定するために用いられる二次巻線と、磁気コアを飽和状態にするために用いられる補助巻線とが巻回されている。一次巻線を通過する電流が、それ自体で磁気コアを飽和させるには不十分な場合であっても、磁気コアを飽和状態にするために、補助巻線の両端間に電圧を選択的に印加するためにプログラマブル飽和スイッチを用いる。電力消費を低減するために、磁気コアを確実に飽和させるのに十分な長さだけ飽和スイッチを閉にする。次いで、飽和スイッチを開にし、サンプリング・スイッチを閉にする。サンプリング・スイッチは、二次巻線の両端間に電圧を印加し、磁気コアを線形領域に引き戻す。一旦そうすると、二次巻線を通過する電流が、一次巻線における電流に比例するようになる。この電流を、検知抵抗器間の電圧に変換し、次いでこの検知電圧をアナログ/ディジタル変換器によってサンプリングする。次いで、サンプリング・スイッチを開にし、二次巻線を通過する電流は、1組のダイオードを自由に通過し、結局回路をその元の状態に戻すことになる。測定プロセスを繰り返すことができる頻度は、コアを飽和状態から引き出し、測定信号が安定になる状態とし、ついでサンプリング・スイッチを開にした後に回路をリセットするために要する時間のみによって制限される。磁気コア材料の材料および幾何学的形状の賢明な選択によって、1MHzを超えるサンプリング・レートも可能になる。あるいは、センサは測定プロセスの間だけ電力を消費するに過ぎないので、サンプリング・レートを低下させることによって、電力消費を一層低減することもできる。
【0015】
変圧器を飽和状態から引き出すために必要なオフセット電流および時間を最小限に抑えるために、本発明による電流センサの一実施形態では、低保磁力および正方形に近いB−Hループを有する磁気材料を選択する。サンプリング周波数は、コア材料の断面積を縮小することによって増大させることができ、測定精度には影響を及ぼさない。アモルファスおよびナノクリスタル合金は、所望の特性を呈する磁性体の例である。パーマロイおよびスーパーマロイの方が一般にコストがかかり、温度安定性に劣るが、これらを基板上にめっきすると、非常にコンパクトな幾何学的形状にすることが可能になる。したがって、これらの材料も本発明の範囲および主旨の範囲内に入るものとする。
【0016】
本発明によるセンサの第2実施形態は、電力消費の多少の増大、および磁気コアを飽和させるために用いられる補助電流に対する測定の依存性が生ずるものの、単一方向電流だけでなく、双方向電流も測定するために用いることができる。これを達成するには、第1実施形態の回路を用いるが、そのスイッチ制御方式を変更する。サンプリング・スイッチを閉にするときに、飽和スイッチを開にするのではなく、これを閉にしたままにしておく。このため、補助電流によって形成される磁場が、一次電流によって形成される磁場に追加され、その結果検知抵抗器にオフセット電圧が現れる。つまり、一次電流測定の精度が、補助電流の精密度に依存するようになるが、双方向電流を測定することが可能になるという利点が得られる。検知抵抗器の電圧を測定した後補助電流をオフにするので、センサの全体的な電力消費は、先行技術のセンサと比較しても、低いままである。
【0017】
本発明による電流センサの第3実施形態は、電流源ではなく電圧源の測定を可能にするための、一次側入力回路に対する変更を含む。このようにするために、抵抗を電圧源と直列に配置して、一次電流を通過するように導かれる電流を発生する。電力を保存するためには大きな抵抗器および対応して小さな電流が望ましいので、一次巻線の巻線数を増加させて、減少させた電流を補償するとよい。電流センサのこの実施形態は、特に、高浮動電圧電位上に重畳された電圧の測定を必要とする用途において有用であり、高帯域幅および高精度の電圧プローブの製作が可能になる。また、この実施形態は、例えば、分離型切り換えモード電源の一次側と二次側との間における分離境界(isolation boundary)を克服するために、電圧の分離測定を必要とするときに、特に優れた低コストの解決策となる。尚、一次側には補助電源を必要としないことは、注記すべきであろう。
【0018】
本発明による電流センサの第4実施形態は、アナログ/ディジタル変換器を取り除き、その代わりに単純なサンプル・ホールド回路を用いることによって、低コストのアナログ出力を発生する。このサンプル・ホールド回路は、正しい時点で検知電圧を確実に取り込むために、スイッチを管理する制御回路によってクロックで駆動される(clocked)。
【0019】
本発明による第5実施形態では、過剰電流警報または保護回路として作用するように、出力回路を構成する。アナログ比較器を用いて、検知抵抗器両端間にかかる電圧を、基準電圧レベルと比較する。D−Qフリップ・フロップまたは切り換えタイミングを制御する制御回路によってクロック駆動されるその他のラッチ回路を用いて、比較器の出力をラッチする。こうして、D−Qフリップ・フロップの出力は、安定なロジックレベルの過剰電流警報または保護信号として有用となる。
【0020】
本発明による電流センサの第6実施形態では、1つ以上の範囲選択スイッチを含ませることによって、電流センサのダイナミック・レンジを改善する。この範囲選択スイッチは、制御回路が追加の抵抗器を、検知抵抗器に並列または直列な回路に加入または離脱させるように選択的に切り換えることを可能にする。これによって、1つ以上の範囲選択スイッチの位置を変化させることによって高範囲または低範囲を選択して、高い相対精度で1つのアナログ/ディジタル変換器によって低電流源および高電流源の双方を測定することが可能になる。
【0021】
本発明による電流センサの第7実施形態では、補助巻線を取り除き、二次巻線を用いて、サンプリング・スイッチを閉にする前に、磁気コアを飽和させる。補助電流は、サンプリング・スイッチが閉にされている時間間隔においてのみ必要なので、1つの二次巻線を、飽和機能およびサンプリング機能間で時間共有することができる。2つの巻線だけがあればよいので、この実施形態は、集積レベルの向上、そして潜在的なコスト低減を達成する。この実施形態は、特に、特定用途集積回路による制御に適している。これについては以下で更に詳しく論ずる。しかしながら、この実施形態では、必然的に、サンプリング・スイッチが閉じている間は飽和スイッチを開くことが必要になるので、第2実施形態において述べたような双方向電流を測定するためには用いることはできない。
【0022】
本発明による第8実施形態では、センサ回路の2つの複製を、1つの一次電流を測定するように構成し、一次電流の連続測定に備えて、測定帯域幅を大幅に広げる。一次電流は、2つの変圧器コアの一次巻線を通過するように導かれ、1つの制御回路が、本発明にしたがって動作する2つの測定回路を管理する。この制御回路は、2つの測定回路間で出力を周期的に切り換え、各回路のサンプリング・デューティ・サイクルが50%よりも高く維持されており、約180度位相がずれている限り、一次電流の連続測定を維持する。
【0023】
本発明による第9実施形態では、センサは、変圧器を制御するために用いられたエネルギの一部を、補助巻線を通じて電源に回収することによって、電力損失を低減するように構成されている。これによって、50%まで電力損失を低減することができる。更に、素子数が減少し、システム・コストが低減する。この実施形態は、一定の補助電流を用いる先行技術のセンサに勝る、追加の重要な利点を指摘する。先行技術のセンサにおける一定補助電流のために、補助巻線はエネルギを復元するように構成することができず、サンプリング・スイッチを開にした後に流れる電流が消散し、その結果電力損失が大幅に多くなる。
【0024】
前述した実施形態のうち任意のものにおいて、制御回路は、飽和スイッチおよびサンプリング・スイッチのタイミングおよびデューティ・サイクルを制御することができ、更に、検知回路によって発生した電圧をサンプリングするために用いられるアナログ/ディジタル変換器のタイミングも制御することができる。また、制御回路は検知電圧をサンプリングするために用いられるサンプル・ホールド回路またはD−Qフリップ・フロップも制御することができる。この制御回路は、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途集積回路(ASIC)、ディスクリート・ロジックで組み立てた回路、または当業者には周知のその他のディジタル制御回路のうち任意のものを備えることができる。切り換えタイミングを制御するためにアナログ回路を用いることも、本発明の範囲および主旨の範囲内に入るものとする。
【0025】
以上の電流センサの様々な実施形態の説明は、本発明によって得られる利点の当業者に対する代表例としての役割を果たすことを意図しており、本発明をいずれの1組の特定実施形態にも限定することは意図していない。以下の好適な実施形態の詳細な説明を検討することにより、高精度および高帯域幅電流測定値を提供し、低温度感度および低コストをもたらす電流センサ、ならびにその付加的な利点および目的の実現の一層完全な理解が当業者に得られる。添付図面を参照するが、最初にこれらについて端的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、飽和型変圧器を採用した従来の電流センサの模式図である。
図2図2は、飽和型変圧器を採用し、ゼロ付近の電流の測定を可能にするように変更した、従来の電流センサの模式図である。
図3図3は、本発明による電流センサの第1実施形態例の模式図である。
図4図4は、本発明による電流センサの実施形態例において用いられる磁性体における磁界強度(H)と磁束密度(B)との間の関係を示す代表的ヒステリシス・プロットである。
図5a図5aは、本発明による電流センサの代表的実施形態の異なる位置において測定した代表的な電圧波形を示す。
図5b図5bは、本発明による電流センサの代表的実施形態の異なる位置において測定した代表的な電圧波形を示す。
図5c図5cは、本発明による電流センサの代表的実施形態の異なる位置において測定した代表的な電圧波形を示す。
図6図6は、任意の電圧電位上に重畳させた電圧を測定するように構成した、本発明の第3実施形態の模式図である。
図7図7は、アナログ出力信号を生成するように構成した、本発明の第4実施形態の模式図である。
図8図8は、ディジタル過剰電流指示信号を生成するように構成した、本発明の第5実施形態の模式図である。
図9図9は、2つの選択可能な電流範囲において電流を測定するように構成した、本発明の第6実施形態の模式図である。
図10図10は、磁気コアを飽和させ更に一次電流をサンプリングするための双方に1つの巻線のみを用いるように構成した、本発明の第7実施形態の模式図である。
図11図11は、高帯域幅連続アナログ出力信号を供給するように構成した本発明の第8実施形態の模式図である。
図12図12は、電力損失を大幅に低減するように構成した本発明の第9実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、一次電流の大きさには関係なく、選択的に飽和させられる磁気コア変圧器を用いて、一次巻線を通過する電流を測定するように構成した電流センサを提供する。このセンサは、高精度および高帯域幅電流測定を提供し、しかも低温度感度および低コストに備えている。以下に続く詳細な説明では、図面の1つ以上に現れる同様の要素を示すために同様の番号を用いることとする。
【0028】
図1は、測定回路から、測定対象電流を分離するために変圧器を採用し、直流電流を測定することができる従来の電流センサの模式図を示す。測定対象電流1102は、変圧器の一次巻線1104を通過する。この変圧器は、一次巻線1104を通過する電流によって飽和状態に保持されている磁気コア1106を備えている。発振器116を用いて周期的パルスを発生して、スイッチ1112をオンにし、電源1126から変圧器の二次巻線1108に電圧を印加する。二次電流によって、磁気コアは線形領域に戻され、二次巻線1108両端間に電圧降下1118が生ずる。電圧降下1118をVで示す。スイッチ1112が開になっているとき、ダイオード1120および1114によって、電流は二次巻線1108を自由に通過する。Vで示す電圧降下1122がセンサ抵抗器1110の両端間に生じ、アナログ・フィルタ1124に導かれ、アナログ・フィルタ1124は、測定対象電流1102に比例する電圧1128を出力する。この回路の欠点は、測定対象電流1102によってコアを飽和状態に保持しなければならないことであり、このため、コアを飽和状態にするには不十分な磁界を変圧器内に生成する低電流を測定するためには、この回路を用いることができない。更に、この回路は双方向電流を測定することもできない。
【0029】
図2は、ゼロ付近の電流を測定するという問題を解決する、従来の代替電流センサの模式図を示すが、この電流センサは電力消費の増大、そして測定精度がバイアス電流の精密制御に依存するという余分な欠点を招く。この回路では、測定対象電流1202は、磁気コア1206を有する変圧器の一次巻線1204を通過する。この変圧器は、二次巻線1208およびバイアス巻線1212の双方を含む。バイアス巻線1212を通過するバイアス電流Iは、電源1224と直列となっている抵抗器1214によって設定される。電流Iは、一次電流がゼロ付近にある場合でも、変圧器を飽和状態に保持する役割を果たす。図1に示した回路におけると同様、発振器1230が周期的にスイッチ1210を閉じて、二次巻線1208に電圧を印加し、コア1206を線形領域に引き戻す。これによって、検知抵抗器1216の両端間にVで示す電圧降下1218が生ずる。この電圧降下1218は、バイアス巻線1212を通過するバイアス電流と、一次巻線1204を通過する一次電流との和に比例する。これらの電流は、巻線1204、1208、および1212の巻線比によって倍率調整されている。検知抵抗器1216間の電圧降下は、アナログ処理回路1228を用いて測定される。アナログ処理回路1228は、バイアス電流によって生成されるオフセット電圧を補償し、測定対象の一次電流に比例するアナログ出力電圧1226も生成する。しかしながら、このバイアス電流は定常電力流出を起こし、更に一次電流測定値にオフセットを付加するので、この測定値の精度はバイアス電流の安定性によって抑えられてしまうことが、当業者には認められよう。
【0030】
図3は、本発明による電流センサの第1実施形態例を示す。この実施形態では、電流センサは、環状磁気コア112で構成された変圧器を備えている。この変圧器は、一次巻線126、二次巻線128、およびコア112を選択的に飽和状態にするように構成されている補助巻線130を含む。一次巻線126は、少なくとも1回のターンを備えており、測定対象電流108を通す。一次巻線126における巻線数、二次巻線128における巻線数、および補助巻線130における巻線数の比は、N:N:Nauxで表される。検知抵抗器134が、二次巻線128と直列に設けられており、Vで示す電圧降下114を生ずる。この電圧降下114は、一次電流をN/Nの比率で倍率調整し、検知抵抗器134の値で乗算した値に比例する。変圧器コア112、一次巻線126、および二次巻線128は、このように、測定対象電流108と、その電流の測定値を表す電圧114との間に分離を備える。
【0031】
この実施形態では、飽和スイッチ132が、制御回路102の制御の下で、パルス状に閉にされる。制御回路102は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途集積回路(ASIC)、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラとして実現することができ、あるいはディスクリート・ディジタル・コンポーネントで組み立てることもできる。しかしながら、飽和スイッチ132は、アナログ回路の制御によって閉にすることもでき、その場合でも本発明の範囲および主旨に該当することに変わりはないことは認められてしかるべきである。飽和スイッチ132が閉にされると、電流Iauxが電源110から補助巻線130を通過して流れる。電流Iauxの大きさはVdc/Rに制限され、ここでVdcは電源110の電圧であり、Rは電流制限抵抗器122の抵抗値である。この電流の大きさは、一次電流108の測定前に磁気コア112を確実に飽和状態にするように選択される。しかしながら、飽和スイッチ132が開いているとき、補助巻線130には電流が流れず、したがってオフ・サイクルの間ここでは電力が消散されないことは注記してしかるべきである。
【0032】
サンプリング・スイッチ124は、制御回路102の制御によって、パルス状に閉にされる。サンプリング・スイッチ124が閉にされると、電圧が二次変圧器巻線128に印加され、変圧器コア112を飽和状態から追い出す。一旦サンプリング・スイッチ124が開いたなら、2つのダイオード120および118によって、電流は自由に二次巻線128を通過することが可能になる。
【0033】
図4は、本発明による電流センサの一実施形態についての動作点および設定点を示す。磁気コア112のB−Hヒステリシス曲線が示されており、磁界強度(H)が横軸に沿ってプロットされており、磁束密度(B)が縦軸に沿ってプロットされている。サンプリング・スイッチ124を開にし飽和スイッチ132を閉にすると、コア112の磁化が、コア112が飽和する動作点202に移動する。動作点202の正確な位置は、一次電流の値に依存する。しかしながら、保持電流を慎重に選択すれば、動作点202がB−H曲線の飽和領域から外側に移動することは決してないことが保証される。一旦コアがこの動作点に来ると、飽和スイッチ132を開にし、サンプリング・スイッチ124を閉にして、磁化をB−H曲線に沿って設定点204まで移行させる。設定点204において、一次電流108を表す検知電圧114を測定する。この測定プロセスについては、図5a〜図5cのタイミング図を参照して以下で更に説明する。
【0034】
図5a〜図5cは、本発明の一実施形態による代表的タイミング図を示す。図5a、図5b、および図5cの時間軸は同一であり、互いに対応する。検知電圧114は、一次電流108(図3参照)に比例し、Tで示すサンプリング時間期間302毎に1回サンプリングされる。サンプリング期間Tは、更に、3つの時間期間、即ち、tで表す第1時間期間304、tで表す第2時間期間306、およびtで表す第3時間期間308に再分割されている。図5aの縦軸314は、下のトレース312で示す飽和スイッチ132の状態と、上のトレース310で示すサンプリング・スイッチ124の状態とを表す。時間期間tの間、飽和スイッチ132はオンになっており、サンプリング・スイッチ124はオフになっている。時間期間tの間、飽和スイッチ132がオフになり、サンプリング・スイッチ124はオンになっている。時間期間tの間、飽和スイッチ132およびサンプリング・スイッチ124双方がオフになっている。
【0035】
図5bの縦軸316は、検知抵抗器134(図3参照)の両端間にかかる検知電圧114の大きさを表す。検知電圧114の大きさは、Vで示されている。図5cの縦軸324は、Vで示す、二次巻線電圧116の大きさを表す(図3参照)。時間期間の間、飽和スイッチ132は閉にされており、Iaux=Vdc/Rの一定電流が補助巻線130を通過し、図4に示す動作点202において、変圧器コア112を飽和状態にする。飽和スイッチ132を閉にする前に、一次電流108が、それ自体でコア112を飽和状態に保持するのには十分でなかった場合、電流Iauxは直ちにVdc/Rにまで上昇せず、二次巻線128両端間には一時的な負電圧が現れる。代表的な負電圧過渡を図5cに示し、破線のトレース330で図示する。時間期間tは、Iauxがその定常状態レベルにまで上昇できる程に長く存続しなければならない。定常状態レベルに達した時点で、磁気コア112は飽和状態となり、動作点202に到達している。
【0036】
次いで、時間期間tの開始時に、飽和スイッチ132を開にし、サンプリング・スイッチ124を閉にする。この時点で、補助電流Iauxは流れが止まり、二次巻線128を通過する電流Iが優勢となる。二次巻線の両端間にかかる電圧Vは、以下の式で示される。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、Vdcは電源110の電圧であり、Rは、図3に示す検知抵抗器134の値である。一旦図4に示すように磁化がB−H曲線に沿って設定点204に移行し、磁気コアがもはや飽和状態でなくなったなら、二次巻線電流Iは、以下の式で示される。
【0039】
【数2】
【0040】
ここで、Imagは、磁気コア112によって誘起される磁化電流であり、Iは一次電流108であり、Nは一次巻線126の巻線数であり、Nは二次巻線128の巻線数である。尚、二次電流は、補助電流にもサンプリング・スイッチ124のオン状態抵抗値にも依存しないことは注記してしかるべきである。磁化電流Imagは、次のように記述することができる。
【0041】
【数3】
【0042】
ここで、Iは、変圧器コアの形状によって決まる磁路長であり、Hは、保磁力であり、コアを構成する磁性体の特性である。低保磁力を呈するコアを選択することによって、以下の式を満たす状態が得られる。
【0043】
【数4】
【0044】
つまり、磁化電流の影響を無視することができる。これが望ましい理由は、保磁力Hの値にはデバイス間でばらつきがあり、異なる温度依存性を呈するからである。この場合、二次電流Iは、単純に、一次電流Iに巻線比N/Nを乗算した値に等しい。アモルファスまたはナノ結晶合金に基づく磁気コアは、特に適している。何故なら、これらは低い保磁力を有し、低温度ドリフトを呈するからである。パーマロイおよびスーパーマロイは、高温安定性はないが、かなり低い保磁力を呈し、しかも加工性が高いので、本発明と共に用いるのに適している。フェライト材料は、低保磁力も低温度ドリフトももたらさないが、低コストおよび高加工性を呈するので、低コストの低精密度電流検知用途には魅力的である。つまり、フェライト材料で作られたコアも、本発明の範囲および主旨に該当する。磁化電流を無視できない高精密度の用途では、温度およびオフセット補償を、当業者には周知の任意の数の方式によって実現することができる。
【0045】
磁気コア112の断面積は、測定精度については何の関係もない。実際には、断面積Aが小さい方が好ましい。何故なら、コアを飽和状態にするための時間が短縮するからであり、二次巻線の両端間に印加しなければならないボルト−秒が少なくて済むからである。図4を参照すると、206に示す磁束変化を達成するために必要な時間tonは、完全に矩形のB−Hループを有するコアについて、以下の式によって示される。磁束変化はΔBで示されている。
【0046】
【数5】
【0047】
つまり、磁気コア112の断面積を縮小すると、電流センサのサイズ縮小およびコスト低減が得られるだけでなく、そのサンプリング・レートが高くなる。あるいは、サンプリング・レートを一定に保つのであれば、断面積が小さい程、電力消費が減少する。更に、コアの総体積が減少するので、コア損失も低減する。
【0048】
on時間期間334が経過した後、サンプリング時点320において検知電圧114をサンプリングする。本発明による電流センサの一実施形態では、検知電圧114をサンプリングする際、サンプル・ホールド・フロント・エンド回路を有するアナログ/ディジタル変換器104を用いる。このディジタル信号を、次に制御回路102によって処理することができ、あるいは任意のディジタル/アナログ変換器106(図3参照)を用いて、アナログ出力136に逆変換することもできる。
【0049】
時間期間tの終了時に、サンプリング・スイッチ124を開にし、二次巻線128を通過する電流は、ダイオード118および120を自由に通り抜ける。図5のトレース332で示すように、二次巻線の両端間にかかる電圧Vが負になり、時間期間Tの残りの間その元の値にリセットするまで、時間期間toff336の間そこに留まる。尚、検知抵抗器134両端間には負の電圧は現れないことを注記しておく。このため、保護回路を全く設けずに、アナログ/ディジタル変換器104を直接接続することができる。サンプリング・スイッチ124は、電源110の電圧Vdcとダイオード118および120両端間に生じる電圧降下との和を遮断できなければならない。時間期間tの残りの間、補助電流は流れないので、本発明による回路における電力消散は、先行技術に対して大幅に減少する。
【0050】
時間期間tの長さは、一次電流がゼロであっても、回路が磁気コア112を飽和状態にすることができるように設定されている。一方、tの最小間隔は、図4に示す設定点204に到達するのに要する時間tonに設定されている。磁気コア112の材料およびその幾何学的形状が、この値に影響を及ぼす。電力消費を減少させるためには、tをできるだけ短く抑えることが望ましい。例示の目的で、図5は、実際に必要となるよりも長い時間tを示す。一旦検知電圧が安定値に達したなら、アナログ/ディジタル変換器はその値を取り込むことができ、次いでサンプリング・スイッチ124を直ちに開にすることができる。時間間隔toff336は、変圧器の磁化を、Iによって駆動される値に戻すのに必要なボルト−秒の数によって決定され、これが時間間隔tの最小長を設定する。しかしながら、多くの用途において、サンプリング・レートを低くすることを犠牲にして電力消費を減少させる目的で、tはその最小値よりも長く選択される。時間期間toffの後、時間期間tの残りの間電力は消散されず、一次側の挿入インピーダンスはゼロとなる。一次側の平均電圧降下は、変圧器磁化インダクタンスのためにゼロになることを注記することは興味深いことである。この電圧降下は、二次巻線の両端間にかかる電圧Vに変圧器の巻線比N/Nを乗算することによって求められる。
【0051】
図3に示した本発明の実施形態は、飽和スイッチおよびサンプリング・スイッチを動作させる様式を変化させることによって、双方向一次電流も測定することができる。双方向の用途では、飽和スイッチ132は、時間間隔t306の間閉にしたままにしておくことができる。この場合、補助電流Iauxは、磁化電流Imagとともに、出力電圧Vのオフセットを決定する。このモードでは、補助電流の精度が出力電圧の精度に影響を及ぼすので、それに十分な精密度を与えることが重要である。このモードでは、一次入力電流に対する検知電圧Vの利得mは、以下の式で示される。ここで、抵抗R122は、補助電流を設定するために用いられる。
【0052】
【数6】
【0053】
また、補助電流を設定するために、抵抗器Rの変わりに、出力インピーダンスが大きな電流源を用いることもできる。この場合も、Rは非常に大きくなるので、利得は巻線比および検知抵抗器R134のみに依存する。
【0054】
図6は、本発明による電流センサの第3実施形態である。この場合、本発明による電流ではなく、電圧または電圧差を測定することが望ましい。このようにするために、抵抗器404を用いて、入力電圧402を電流に変換する。この電流は、一次巻線126を通過する。電圧源Vpot406は任意の電圧であり、センサが、直流電気分離を備えることによって、高く変化する電圧電位406上に重畳された電圧差または電圧402を測定できることを強調している。電力消費を低く抑えるために抵抗器404を一般に非常に大きく選択することにより、一次巻線126を通過する電流を減少させる。検知回路の感度を維持するためには、一次巻線126における巻線数を増加させればよい。この回路の残りの部分は、図6には示されていない任意のディジタル/アナログ変換器106を除いて、図3に示すものと同一である。
【0055】
図7は、本発明による電流センサの第4実施形態を示す。低コストのアナログ出力を供給するために、単純なサンプル・ホールド回路504を用いて、抵抗134両端間に現れるパルス状電圧を取り込む。サンプル・ホールド回路は、このパルス状電圧信号を定常アナログ電圧出力506に変換する。
【0056】
図8は、本発明による電流センサの第5実施形態である。ここでは、出力回路が、測定対象電流108が既定値を超えたときに状態を変化させるディジタル出力信号を供給するように構成されている。アナログ比較器606を用いて、基準電圧レベル608を、検知抵抗器134両端間にかかる電圧114と比較する。測定した電圧114が基準電圧608を超えた場合、比較器606の出力が変化する。電圧114は時間tの間でないと得られないので、D−Qフリップ・フロップを用いて、サンプル時点320(図5参照)において比較器の状態を取り込む。
【0057】
図9は、本発明による電流センサの第6実施形態を示す。範囲選択スイッチ704が前述した回路に追加されている。制御回路102が範囲選択スイッチ704を閉にすると、範囲選択抵抗702が切り換えられて、検知抵抗134と並列な回路に入り、二次巻線128と接地との間の抵抗値を減少させ、対応して、アナログ/ディジタル変換器104が測定する電圧が変化する。これによって、同じアナログ/ディジタル変換器を、高および低一次電流双方に用いることが可能となる。つまり、一次電流が小さい場合、範囲選択スイッチ704を切り換えることによって、アナログ/ディジタル変換器の入力における電圧を、アナログ/ディジタル変換器の最大分解能まで広げることができ、検知回路のダイナミック・レンジの拡大が可能となる。あるいは、範囲選択スイッチによって、ビット分解能が低い安価なアナログ/ディジタル変換器を採用することが可能になり、しかも低電流レベルにおいて適当な分解能を維持する。また、1つよりも多い範囲選択スイッチを用いて、追加の電流測定範囲を設けることもできる。更に、範囲選択スイッチは、直列に配した検知抵抗群に対して動作するように構成することもできる。例えば、範囲選択スイッチを用いて、2つの直列検知抵抗器のうち1つを迂回し、ADCに現れる電圧を変化させることができる。
【0058】
図10は、補助巻線を不要にするように構成した、本発明による第7実施形態の模式図である。別個の二次巻線および補助巻線を用いる変わりに、この実施形態の回路は、二次巻線840を、コア112を飽和させるためおよび一次電流108をサンプリングするための双方に用いるように構成されている。この実施形態は、特に、842で示すような、特定用途集積回路内に集積するのに非常に適している。この実施形態では、2つの飽和スイッチ826および828、ならびに2つのサンプリング・スイッチ822および824が必要となる。何故なら、二次巻線840の極性を期間tおよびt図5参照)間で変化させなければならないからである。飽和スイッチ826および828は、コア112を飽和状態にするために、飽和時間期間中一緒に閉にされる。図10は、抵抗ではなく、電流源832によって供給される飽和電流を示す。これは、このような電流源は集積回路内に集積するのに非常に適しているからである。しかしながら、代案として、飽和スイッチ828と接地との間に抵抗器を用いることも可能である。一旦コアを動作点202(図4参照)まで移動させたなら、飽和スイッチ826および828を開にし、サンプリング・スイッチ822および824を閉にする。これによって、一次電流108に比例する電流が二次巻線840を通過し、検知抵抗器830両端間に電圧が生ずる。この電圧を、ADC806によってサンプリングするか、または他の実施形態において示したような他の方法によってサンプリングする。次いで、サンプリング・スイッチ822および824を開にし、磁化電流がダイオード818および820を自由に流れ始める。他の実施形態とは異なり、この結果、以下の式で示される電圧が、二次巻線の両端間に発生する。
【0059】
【数7】
【0060】
ここで、V816は二次巻線840両端間にかかる電圧であり、Vdcは電源802の電圧であり、Vd1はダイオード818両端間において生ずる電圧降下であり、Vd2はダイオード820両端間において生ずる電圧降下である。
【0061】
この実施形態の利点の1つは、図3に示した実施形態と比較して、電力損失を50%まで低減することである。何故なら、ダイオード118および120において電力が消散される変わりに、電源802によって電力が復元されるからである。以前に指摘したように、そして本願において記載する全ての実施形態の特徴として、時間間隔t306における二次電流は、サンプリング・スイッチ822および824のオン抵抗に依存しない。つまり、電流測定の精密度は、磁気コア材料によって誘起される磁化電流の安定性のみに依存する。
【0062】
本発明のこの第7実施形態の欠点の1つは、前述のように飽和スイッチおよびサンプリング・スイッチ双方を閉にしたまま維持することによって、双方向電流を測定することができないことである。これは、同じ巻線をサンプリング回路と共有するので、サンプリング・フェーズの間補助電流を供給できないからである。
【0063】
図11は、本発明による電流センサの第8実施形態の模式図である。この実施形態では、電流センサは、連続アナログ出力信号を提供するように構成されており、測定システムの帯域幅を格段に広げる。この実施形態は、本質的に、共通制御回路952の制御によって、2つのセンサを組み合わせたものである。このセンサは、2つの磁気コア908および910を備えている。第1一次巻線904が第1コア908の周囲に巻回されており、第2一次巻線906が第2コア910の周囲に巻回されている。一次電流902は双方の一次巻線を通過する。コアの各々は、補助巻線914および918に加えて、それ自体の二次巻線912および916を有する。更に、各コアは、それ自体の電子回路が関連付けられている。この電子回路は、第1検知抵抗器928および第2検知抵抗930、第1飽和スイッチ922および第2飽和スイッチ926、ならびに第1サンプリング・スイッチ920および第2サンプリング・スイッチ924を含む。制御回路952は、本発明の他の代替実施形態について前述したように、双方の測定回路を制御するように構成されている。更に、制御回路952は、50%を超えるオン・デューティ・サイクルで各サンプリング・スイッチを動作させるように構成されており、第1サンプリング・スイッチ920の動作を、第2サンプリング・スイッチ924とはほぼ180度位相ずれとなるように維持する。本質的に、この結果、第2サンプリング・スイッチが開いているときは第1サンプリング・スイッチは閉じている、またはその逆となる。また、制御回路952は、出力選択スイッチ954を切り換えるように構成されている。出力選択スイッチ954は、第1検知抵抗器928の両端間にかかる電圧または第2検知抵抗器930の両端間にかかる電圧のいずれかを選択的に出力956まで導出する。制御回路952は、出力選択スイッチ954の切り換え時機を合わせて、出力が切り換えられた時点において、選択された回路の電圧出力が常に有効であることを確保する。つまり、一次電流902をサンプリングするために各磁気コアにおけるサンプリング電流をパルス状にするという事実にも拘わらず、図11における電流センサの出力956は連続的であり、一次電流902を非常に高い帯域幅で追跡する。
【0064】
図12は、本発明による電流センサの第9実施形態の模式図である。この実施形態の目的は、補助巻線130を図5に示した時間間隔toff336の間エネルギを復元するように構成することによって、電力損失を大幅に低減することである。二次巻線128の両端間に接続されていたダイオードを省略し、こうして時間間隔toff336の間電流がダイオード1252を通過するように促す。順方向降下電圧によるダイオード1252における小さな電力損失を除いて、時間間隔toff336の間に流れる電流は、完全に電源110に回収される。この実施形態の制御方式および動作原理は、図5において説明したのと同一である。本明細書において記載した他の実施形態とは対照的に、時間間隔toff336の間、電圧V116は、電源110の電圧に、補助巻線130の二次巻線128に対する巻線比を乗算した値によって決定される。
【0065】
以上、分離型電流センサの様々な実施形態について説明したが、本発明の一定の利点が達成されたことは、当業者には明白なはずである。また、本発明の範囲および主旨の範囲内で、その種々の修正、適合、代替実施形態も可能であることも認められてしかるべきである。更に、本発明は以下の特許請求の範囲によって定められるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5a-5c】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12