特許第6045160号(P6045160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6045160-造波装置及び造波方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045160
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】造波装置及び造波方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 10/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G01M10/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-46434(P2012-46434)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-181869(P2013-181869A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】織田 幸伸
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−033153(JP,U)
【文献】 実公昭48−038937(JP,Y1)
【文献】 特開平08−200298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、該水槽内の水と連通した気密空間を有するチャンバと、を少なくとも有し、前記気密空間を負圧状態にして前記水槽の水を前記チャンバ内に吸い上げ、前記負圧状態の解除により前記吸い上げた水を落下させて、水槽内に波を発生させる造波装置であって、前記気密空間は1つの区画からなり、
前記チャンバに、前記気密空間を負圧状態にするための吸引弁と、開閉の有無のみを制御可能な電磁弁からなり、前記負圧状態の解除に用いる、複数の給気弁と、前記複数の給気弁に個別に接続する、複数の流量調整弁と、を少なくとも備えたことを特徴とする、造波装置。
【請求項2】
前記給気弁の開閉タイミングおよび前記流量調整弁の開度を電子制御可能な制御部をさらに備えたことを特徴とする、請求項1に記載の造波装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の造波装置を用いた造波方法であって、
前記給気弁の開閉タイミングと、前記流量調整弁の開度のうち、何れか一方或いは両方をそれぞれ変えることによって、異なる波形の波を発生させることを特徴とする、造波方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の造波装置を用いた造波方法であって、
前記流量調整弁の開度と前記給気弁の開閉タイミングを予め設定した状態としてから、前記給気弁の開閉を行って、所望の波形の波を発生させることを特徴とする、造波方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、造波装置及び造波方法に関し、より詳細には、安価に任意波形の長周期波を造波可能な造波装置及び造波方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水理実験において、津波のような長周期の波を造波する方法としては、ロングストロークのピストン式のものや、ポンプによるものがあるが、これらは装置が大規模となり、設置費用が高価である。
なお、比較的簡易に造波する装置としては、チャンバ内に水槽よりも高い位置まで水を貯め、これを吐き出すことによる造波装置が知られているが、造波する波の波形を任意に制御することが困難である。
【0003】
波形を任意制御する一例として、下記の特許文献1に記載の造波装置がある。
特許文献1に記載の造波装置では、チャンバ内に水位検出計を設け、チャンバ内の水位変動を検知しつつ、給気弁の開度を制御しながらチャンバ内に給気することによって、波の形状を整える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−14350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来技術では、以下に示す問題を有する。
(1)特許文献1の造波装置を実用に供するためには、一般的な水理実験スケールでみた場合、1秒以下の短時間で給気弁の開度を正確に制御可能な給気弁と制御部を設ける必要がある。しかし、一般に入手できる開度調整可能な吸排気弁には、このような短時間で制御可能なものはなく、既製品を使用できないため、造波装置の製作が非常に高価なものとなってしまう。
【0006】
すなわち、本願発明は、安価に任意波形の波を造波可能な造波装置及び造波方法の提供を目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、水槽と、該水槽内の水と連通した気密空間を有するチャンバと、を少なくとも有し、前記気密空間を負圧状態にして前記水槽の水を前記チャンバ内に吸い上げ、前記負圧状態の解除により前記吸い上げた水を落下させて、水槽内に波を発生させる造波装置であって、前記気密空間は1つの区画からなり、前記チャンバに、前記気密空間を負圧状態にするための吸引弁と、開閉の有無のみを制御可能な電磁弁からなり、前記負圧状態の解除に用いる、複数の給気弁と、前記複数の給気弁に個別に接続する、複数の流量調整弁と、を少なくとも備えたことを特徴とする、造波装置を提供するものである。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記給気弁の開閉タイミングおよび前記流量調整弁の開度を電子制御可能な制御部をさらに備えたことを特徴とするものである。
また、本願の第3発明は、前記第1または第2発明に記載の造波装置を用いた造波方法であって、前記給気弁の開閉タイミングと、前記流量調整弁の開度のうち、何れか一方或いは両方をそれぞれ変えることによって、異なる波形の波を発生させることを特徴とする、造波方法を提供するものである。
また、本願の第4発明は、前記第1または第2発明に記載の造波装置を用いた造波方法であって、前記流量調整弁の開度と前記給気弁の開閉タイミングを予め設定した状態としてから、前記給気弁の開閉を行って、所望の波形の波を発生させることを特徴とする、造波方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、下記に示す効果のうち、少なくとも何れか一つを得ることができる。
(1)高価な給気弁を用いる必要がなく、既製品を用いた製作が可能であるため、安価に製作できる。
(2)複数の給気弁を利用することにより、任意の波形の造波が可能となる。
(3)流量調整弁の併用により、より自由度の高い造波が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願発明の第1実施例に係る造波装置の概要図。
図2】本願発明の造波例1の波形を示す図。
図3】本願発明の造波例2の波形を示す図。
図4】本願発明の造波例3の波形を示す図。
図5】本願発明の第2実施例に係る造波装置の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図面を参照しながら、本願発明の造波装置について説明する。
【実施例1】
【0011】
<1>全体構成
本願発明の造波装置の構成を図1に示す。
本願発明に係る造波装置は、水槽1と、水槽2に底部を没するように配置したチャンバ2と、前記チャンバ2に設ける吸引部3及び給気部4と、少なくとも前記給気部4の動作を制御可能な制御部5と、で構成することができる。
水槽1は、水理実験等に用いる一般的な実験水層であり、詳細な説明を省略する。
【0012】
<2>チャンバ
チャンバ2は、チャンバ2内への水の吸引・吐出により、前記水槽1内で造波を行うための装置である。
チャンバ2の底部近傍には、前記水槽2の水中に没するように設けた開口21を形成する。前記開口21を介した水の流出入により、水槽1内で造波を行う。
チャンバ2の内部は、チャンバ2の外壁と水槽内の水面とで囲まれた気密空間22となる。
【0013】
<3>吸引部
吸引部3は、チャンバ2内の気密空間を負圧状態にして水槽1内の水をチャンバ2内に吸い込むための装置である。
吸引部3は、吸引路に設ける吸引弁31及び吸引ポンプ32でもって構成することができる。吸引ポンプ32による吸引力を吸引弁31の開放で伝えることにより、前記気密空間22を負圧状態にする。チャンバ2において、吸引部3を設ける箇所は特に限定しない。
【0014】
<4>給気部
給気部4は、チャンバ2内の気密空間22に給気して、チャンバ2内に引き込まれた水を吐き出すための装置である。
給気部4は、管路に設ける給気弁41を複数設けることによって構築する。
給気弁41には、短時間で開閉の有無を制御可能な可変式の給気弁が望ましく、例えば、電磁弁を利用することができる。
なお、給気弁41を複数設け、それらの給気弁41を個別制御することで、チャンバ2内の給気量を任意に制御することから、給気弁41について開閉角度の設定を短い応答時間で制御可能な高価な部材を使用する必要は無い。
また、本発明において給気弁41の数、配置箇所等は特に制限されない。
【0015】
<5>制御部
制御部5は、少なくとも前記給気部4を制御するための装置である。
制御部5は、電子計算機などの情報処理装置を用いることができ、前記給気弁4の開閉の有無やタイミングを個別に電子制御可能に構成する。
なお、制御部5は、必要に応じて前記吸引部3も制御可能に構成してもよい。
【0016】
<6>使用方法
次に、本願発明の造波装置の使用方法について説明する。
(1)吸引工程
まず、吸引弁31を開き吸引ポンプ32によりチャンバ2内の空気を吸引する。この時、給気弁41は全て閉じておく。これによりチャンバ2内の圧力が低下し水位が上昇する。所定の高さまで水を吸引したら吸引弁31を閉じる。
【0017】
(2)給気工程
チャンバ2内の水位が上昇した状態から、給気弁41を開放することにより、チャンバ2内の水柱が落下し、開口21より水が排出されることによって、水槽1内で造波を行う。
この時、各給気弁41の解放タイミングを制御部5によって適宜変えることにより、造波波形を変更することができる。
【0018】
<7>造波例
図2〜4に、本願発明の造波装置を用いた水理実験によって確認した結果を示す。これらは、給気弁41を6つ設置したときの例である。
図2は、6つの給気弁41を0.1秒おきに順に開放した場合、図3は、同様に0.3秒おきに順に開放した場合、図4は0.3秒おきに6つの給気弁41を順に開放したのち、連続して0.3秒おきに給気弁41を順に閉じた場合の、造波された波の時系列を示している。
【0019】
これらを比較すると、水位の上昇速度や下降速度がそれぞれ異なった造波が可能であることが示されている。
また、不連続で段階的な給気弁41の開度変化にも関わらず、滑らかな波形の造波が可能であることが分かる。図2〜4は単純な造波例であるが、6つ程度の給気弁41であっても、自由度の高い滑らかな波形の造波が可能であることが分かる。
【実施例2】
【0020】
本願発明の造波装置の第2実施例について、図5を参照しながら説明する。
本願発明は、第1実施例より更に自由度の高い造波装置として、給気部4に流量調整弁42を更に設けることができる。
この流量調整弁42を、目的の波形を造波出来るように予め給気弁41毎の流量を個別に調整しておくことにより、より目的の波形に近い波を造波することが可能となる。
【0021】
なお、造波に際し、制御部5による給気弁41の開閉制御のタイミングや、流量調整弁42の開度は、予め予備実験や数値計算により設定しておけばよい。
【符号の説明】
【0022】
1 水槽
2 チャンバ
21 開口
22 気密空間
3 吸引部
31 吸引弁
32 吸引ポンプ
4 給気部
41 給気弁
42 流量調整弁
5 制御部
図1
図5
図2
図3
図4