(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本明細書に開示された発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し、本明細書に開示された発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本明細書に開示された発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、説明を分かりやすくするために、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0028】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0029】
[実施の形態1]
本実施の形態の蓄電装置の一形態について
図1を用いて説明する。ここでは、蓄電装置として、二次電池の断面構造について、以下に説明する。
【0030】
二次電池として、リチウム含有金属酸化物を用いたリチウムイオン電池は、容量が高く、安全性が高い。ここでは、二次電池の代表例であるリチウムイオン電池の構造について、説明する。
【0031】
図1は、蓄電装置100の断面図である。
【0032】
蓄電装置100は、負極101と、正極111と、負極101及び正極111で挟持された固体電解質(以下、電解質121と示す)とで構成される。また、負極101は、負極集電体102及び負極活物質層103とで構成されてもよい。正極111は、正極集電体112及び正極活物質層113で構成されてもよい。また、電解質121は、負極活物質層103及び正極活物質層113と接する。
【0033】
負極集電体102及び正極集電体112はそれぞれ異なる外部端子と接続する。また、負極101、電解質121、及び正極111は、図示しない外装部材で覆われている。
【0034】
なお、活物質とは、キャリアであるイオンの挿入及び脱離に関わる物質を指し、グルコース等を用いた炭素層などを含むものではない。後に説明する塗布法により正極及び負極等の電極を作製する時には、炭素層が形成された活物質と共に、導電助剤やバインダ(結着剤ともいう)、溶媒等の他の材料を混合したものを活物質層として集電体上に形成する。よって、活物質と活物質層は区別される。
【0035】
はじめに、本実施の形態に示す蓄電装置100に含まれる電解質121について説明する。
【0036】
電解質121には、イオン伝導性を有する高分子化合物、無機酸化物、及びアルカリ金属電解質塩が含まれる。なお、電解質121は、複数の種類のイオン伝導性を有する高分子化合物を有してもよい。また、電解質121は、複数の種類の無機酸化物を有してもよい。また、電解質121は、複数の種類のアルカリ金属電解質塩を有してもよい。
【0037】
イオン伝導性を有する高分子化合物の代表例としては、分子量が1万以上100万以下のポリアルキレンオキサイドがある。ポリアルキレンオキサイドの代表例としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイド等である。
【0038】
無機酸化物としては、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、酸化リチウム、酸化グラファイト、チタン酸バリウム、メタ珪素酸リチウム等がある。
【0039】
無機酸化物の粒子の直径は、50nm以上10μm以下が好ましい。
【0040】
アルカリ金属電解質塩としては、リチウム電解質塩、ナトリウム電解質塩等を有する。リチウム電解質塩の代表例としては、LiCF
3SO
3、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiSCN、LiN(SO
2CF
3)
2(LiTFSIともいう)、LiN(SO
2C
2F
5)
2(LiBETIともいう)等がある。ナトリウム電解質塩の代表例としては、NaClO
4、NaPF
6、NaBF
4、NaCF
3SO
3、NaN(CF
3SO
2)
2、NaN(C
2F
5SO
2)
2、NaC(CF
3SO
2)
3等がある。
【0041】
電解質において、イオン伝導性を有する高分子化合物、無機酸化物、及びアルカリ金属電解質塩は、それぞれ15〜65重量%、12〜80重量%、5〜50重量%の割合で、且つ全体で100重量%になるように混合する。
【0042】
次に、本実施の形態に示す蓄電装置100に含まれる負極101について説明する。
【0043】
負極集電体102は、銅、ステンレス、鉄、ニッケル等の導電性の高い材料を用いることができる。また、負極集電体102は、箔状、板状、網状等の形状を適宜用いることができる。
【0044】
負極活物質層103としては、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な材料を用いる。代表的には、リチウム、アルミニウム、黒鉛、シリコン、錫、ゲルマニウムなどが用いられる。負極集電体102を用いずそれぞれの負極活物質層103を単体で負極として用いてもよい。黒鉛と比較すると、ゲルマニウム、シリコン、リチウム、アルミニウムの理論リチウム吸蔵容量が大きい。吸蔵容量が大きいと小面積でも十分に充放電が可能であり、負極として機能するため、コストの節減及び二次電池の小型化につながる。ただし、シリコンなどはリチウム吸蔵により体積が4倍程度まで増えるために、材料自身が脆くなる事に十分に気をつける必要がある。
【0045】
なお、負極活物質層103にリチウムをプレドープしてもよい。リチウムのプレドープ方法としては、スパッタリング法により負極活物質層103表面にリチウム層を形成してもよい。または、負極活物質層103の表面にリチウム箔を設けることで、負極活物質層103にリチウムをプレドープすることができる。
【0046】
負極活物質層103の厚さは、20μm以上100μm以下の間で所望の厚さを選択する。
【0047】
なお、負極活物質層103には、バインダ、導電助剤を有してもよい。
【0048】
なお、上記のバインダとしては、多糖類、熱可塑性樹脂またはゴム弾性を有するポリマーなどが挙げられる。例えば、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムなどを用いることができる。その他、ポリイミドや、ポリビニルアルコールやポリエチレンオキシドなどを用いてもよい。
【0049】
導電助剤としては、その材料自身が電子導電体であり、蓄電装置内で他の物質と化学変化を起こさないものであればよい。例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、VGCF(登録商標)などの炭素系材料、銅、ニッケル、アルミニウムもしくは銀などの金属材料またはこれらの混合物の粉末や繊維などがそれに該当する。導電助剤とは、活物質間の導電性を助ける物質であり、離れている活物質の間に充填され、活物質同士の導通をとる材料である。
【0050】
次に、本実施の形態に示す蓄電装置100に含まれる正極111について説明する。
【0051】
正極集電体112は、白金、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス等の導電性の高い材料を用いることができる。また、正極集電体112は、箔状、板状、網状等の形状を適宜用いることができる。
【0052】
正極活物質層113は、LiFeO
2、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、LiFePO
4、Li
3Fe
2(PO
4)
3、LiCoPO
4、LiNiPO
4、LiMn
2PO
4、Li
1−x1Fe
y1M
1−y1PO
4(x1は0以上1以下)(Mは、Mn、Co、及びNiの一以上)(y1は0以上1未満)、Li
2FeSiO
4、Li
2MnSiO
4、V
2O
5、Cr
2O
5、MnO
2、その他の材料がある。また正極活物質層113として、ルベアン酸等の有機化合物を用いてもよい。
【0053】
正極活物質層113の厚さは、20μm以上100μm以下の間で所望の厚さを選択する。なお、クラックや剥離が生じないように、正極活物質層113の厚さを適宜調整することが好ましい。
【0054】
また、正極活物質層113には、負極活物質層103と同様に、バインダ及び導電助剤を有してもよい。バインダ及び導電助剤は、負極活物質層103に列挙するバインダ及び導電助剤を適宜用いることができる。
【0055】
リチウムイオン電池は、メモリー効果が小さく、エネルギー密度が高く、容量が大きい。また、出力電圧が高い。これらのため、小型化及び軽量化が可能である。また、充放電の繰り返しによる劣化が少なく、長期間の使用が可能であり、コスト削減が可能である。また、本実施の形態において、電解質に、イオン伝導性を有する高分子化合物と共に無機酸化物を有するため、イオン伝導性を有する高分子化合物の結晶化が抑制され、電解質のイオン伝導率が高まる。これらの結果、正極及び負極の間でのキャリアイオンが可動となり、放電容量を高めることができる。
【0056】
次に、本実施の形態に示す蓄電装置100の作製方法について、
図2乃至
図3を用いて説明する。
【0057】
図2に示すように、工程S301に示すように、電解質、正極及び負極を作製する。
【0058】
はじめに、電解質の作製方法について、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0059】
電解質の材料として、イオン伝導性を有する高分子化合物、無機酸化物、及びアルカリ金属電解質塩をそれぞれ秤量する。また、溶媒を秤量する。溶媒としては、脱水アセトニトリル、乳酸エステル、N−メチル−2ピロリドン(NMP)等を用いることができる。
【0060】
ここでは、イオン伝導性を有する高分子化合物としてポリエチレンオキサイド、無機酸化物として酸化シリコン及び酸化アルミニウムの混合物、並びに、酸化リチウム、アルカリ金属電解質塩としてLiTFSIを用いる。また、溶媒として脱水アセトニトリルを用いる。
【0061】
次に、
図3の工程S201に示すように、電解質の材料及び溶媒を混合し、混合溶液を形成する。
【0062】
ここで、当該工程において、電解質の材料を均質に混合する一形態について、
図4を用いて説明する。ここでは、材料を入れた容器に自転及び公転を同時に行う撹拌装置を用いることで、均質に撹拌することができる。
【0063】
図4(A)に示すように、電解質の材料を入れた容器251を撹拌装置にセットし、容器251を自転させながら、左側へ公転させる。
図4(B)、
図4(C)、及び
図4(D)はそれぞれ、
図4(A)の位置から、容器251を90度、180度、及び270度公転させた状態である。このように、容器251を自転しつつ公転させることで、電解質の撹拌の際に空気を含ませず、材料を均質に混合させることができる。
【0064】
次に、
図3の工程S211に示すように、基板上に混合溶液を塗布する。基板としては、後の乾燥工程の温度に耐えうる基板を適宜用いればよい。基板の代表例としては、ガラス基板、ウェハー基板、プラスチック基板等がある。ここでは、基板としてガラス基板を用いる。また、自動塗工機に基板をセットし、上記混合溶液を基板に塗布する。
【0065】
次に、
図3の工程S221に示すように、基板上に塗布された混合溶液を乾燥する。ここでは、溶媒が蒸発する温度で加熱すればよい。ここでは、通風乾燥機中で溶媒を蒸発させ乾燥させる。この結果、基板上に電解質が形成される。
【0066】
次に、
図3の工程S231に示すように、基板から電解質を剥離する。電解質として無機酸化物を混入することで、容易に基板から電解質を剥離することができる。ここでは、ピンセットを用いて、基板から電解質を剥離する。
【0067】
この後、さらに乾燥処理を行ってもよい。この結果、電解質から水分、溶媒等を除去することができる。
【0068】
以上の工程により、電解質を作製することができる。
【0069】
次に、負極の作製方法について説明する。
【0070】
負極集電体102上に、塗布法、スパッタリング法、蒸着法などにより負極活物質層103を形成することで、負極を作製することができる。または、負極として、リチウム、アルミニウム、黒鉛、及びシリコンの箔、板、または網を負極として用いることができる。ここでは、炭素にリチウムをプレドープして負極を作製する。
【0071】
次に、正極の作製方法について、説明する。
【0072】
正極集電体112上に、塗布法、スパッタリング法、蒸着法などにより正極活物質層113を形成することで、正極を作製することができる。
【0073】
次に、
図2の工程S311に示すように、正極、電解質、及び負極の順に重ね合わせ、電解質を正極及び負極で挟持する。
【0074】
次いで工程S321に示すように、電解質を挟持した正極及び負極を、例えば50℃で加熱する。
【0075】
次に、工程S331に示すように、定電流定電圧で充電及び定電流で放電を行う。なおこのときの温度は室温である。定電流定電圧での充電とは、最初は所定の電流値で充電を行い、所定の電圧値に達した後は当該所定の電圧値で充電を行うことである。また定電流での放電とは、所定の電流値で放電を行うことである。なお、定電流での充電の電流値と、定電流での放電の電流値は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
以上の工程により、蓄電セルを作製することができる。
【0077】
本実施の形態で作製される蓄電セルでは、電解質を正極及び負極で挟持させた後、定電流定電圧の充電及び定電流の放電を行う。
【0078】
本実施の形態では、定電流及び定電圧での充電、並びに、定電流での放電(エージング処理)において、まず蓄電セルを所定の電流値にて充電を行う。次いで、当該蓄電セルへの充電が所定の電圧値に到達した後は、当該所定の電圧値にて充電を継続する。また蓄電セルへの放電は、所定の電流値で行う。
【0079】
これにより移動しやすいキャリアイオン(例えばリチウムイオン)だけでなく、活物質層内の移動しにくいキャリアイオンを可動させることができる。
【0080】
以上により、固体電解質を有する蓄電装置において、室温で動作する蓄電装置を得ることができる。
【0081】
また本実施の形態により、固体電解質を有する蓄電装置において、放電容量を高めることが可能な蓄電装置を得ることができる。
【0082】
[実施の形態2]
本実施の形態では、実施の形態1に示す蓄電装置よりも放電容量を高めるため、実施の形態1に示す蓄電装置において、正極及び負極の一以上を塗布法により作製する。
【0083】
本実施の形態で説明する蓄電装置は、正極、電解質、及び負極により構成される。電解質は実施の形態1に示す電解質を適宜用いることができる。
【0084】
また、負極を構成する負極活物質層は、活物質となるアルミニウム、黒鉛、シリコン、錫、ゲルマニウム等の粒子と、導電助剤と、バインダとを有し、バインダとして、軟化点が、電解質に含まれるイオン伝導性を有する高分子化合物の軟化点以下の高分子化合物を用いる。
【0085】
また、正極を構成する正極活物質層は、活物質となるLiFeO
2、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、LiFePO
4、Li
3Fe
2(PO
4)
3、LiCoPO
4、LiNiPO
4、LiMn
2PO
4、Li
1−x1Fe
y1M
1−y1PO
4(x1は0以上1以下)(Mは、Mn、Co、及びNiの一以上)(y1は0以上1未満)、Li
2FeSiO
4、Li
2MnSiO
4、V
2O
5、Cr
2O
5、MnO
2等と、導電助剤と、バインダとを有する。さらに、バインダとして、軟化点が、電解質に含まれるイオン伝導性を有する高分子化合物の軟化点以下である高分子化合物を用いることを特徴とする。
【0086】
軟化点が、電解質に含まれるイオン伝導性を有する高分子化合物の軟化点以下である高分子化合物としては、スチレンブタジエン共重合体がある。
【0087】
また、軟化点が、電解質に含まれるイオン伝導性を有する高分子化合物の軟化点以下である高分子化合物の代わりに、電解質に含まれるイオン伝導性を有する高分子化合物の軟化点以下である、イオン伝導性を有する高分子化合物をバインダとしてもよい。この場合、電解質に含まれるイオン伝導性を有する高分子化合物と、正極活物質層に含まれるバインダとが、同じイオン伝導性を有する高分子化合物であってもよく、または異なっていてもよい。
【0088】
なお、本実施の形態では、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも一において、バインダとして、軟化点が、電解質に含まれるイオン伝導性を有する高分子化合物の軟化点以下である高分子化合物を用いればよい。
【0089】
次に、本実施の形態に示す蓄電装置の作製方法について、
図2を用いて説明する。
【0090】
図2に示すように、工程S301に示すように、電解質、正極及び負極を作製する。電解質は、実施の形態1と同様に作製することができる。
【0091】
次に、負極及び正極の作製方法について説明する。
【0092】
はじめに本実施の形態に示す負極の作製方法について説明する。
【0093】
負極活物質、導電助剤、バインダ、及び溶媒を加えて混合する。なお、バインダとしては、本実施の形態で述べた、軟化点が、電解質に含まれるイオン伝導性高分子化合物の軟化点以下である高分子化合物を適宜用いることができる。
【0094】
負極活物質、導電助剤、及びバインダは、それぞれ80〜96重量%、2〜10重量%、2〜10重量%の割合で、且つ全体で100重量%になるように混合する。更に、活物質、導電助剤、及びバインダの混合物と同体積程度の有機溶媒を混合し、スラリーを形成する。なお、後に形成される活物質層の活物質及び導電助剤の密着性が弱い時にはバインダを多くし、活物質の抵抗が高い時には導電助剤を多くするなどして、活物質、導電助剤、バインダの割合を適宜調整する。
【0095】
次に、負極集電体上にキャスト法、塗布法等によりスラリーを塗布し薄く広げ、ロールプレス機で更に延伸し、厚みを均等にした後、真空乾燥(10Pa以下)や加熱乾燥(150〜280℃)して、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
【0096】
なお、正極は、負極と同様に、正極活物質、導電助剤、バインダ、及び溶媒を加えて混合しスラリーを形成した後、当該スラリーを正極集電体上に塗布し乾燥して、正極集電体上に正極活物質を形成する。なお、バインダとしては、本実施の形態で述べた、軟化点が、電解質に含まれるイオン伝導性高分子化合物の軟化点以下である高分子化合物を適宜用いることができる。
【0097】
次に、
図2の工程S311に示すように、正極、電解質、及び負極の順に重ね合わせ、電解質を正極及び負極で挟持する。
【0098】
次いで工程S321に示すように、電解質を挟持した正極及び負極を、例えば50℃で加熱する。
【0099】
次に、工程S331に示すように、定電流定電圧で充電及び定電流で放電(エージング処理)を行う。なおこのときの温度は室温である。なお本実施の形態のエージング処理の工程は、実施の形態1で述べたエージング処理の工程と同様である。
【0100】
以上の工程により、蓄電セルを作製することができる。
【0101】
本実施の形態で作製される蓄電セルでは、電解質を正極及び負極で挟持させた後、定電流定電圧の充電及び定電流の放電を行う。これにより移動しやすいキャリアイオン(例えばリチウムイオン)だけでなく、活物質層内の移動しにくいキャリアイオンを可動させることができる。
【0102】
以上により、固体電解質を有する蓄電装置において、室温で動作する蓄電装置を得ることができる。
【0103】
また本実施の形態により、固体電解質を有する蓄電装置において、放電容量を高めることが可能な蓄電装置を得ることができる。
【0104】
[実施の形態3]
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2で説明した蓄電装置の応用形態について
図10を用いて説明する。
【0105】
実施の形態1及び実施の形態2で説明した蓄電装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう。)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置等の電子機器に用いることができる。また、電気自動車、ハイブリッド自動車、鉄道用電気車両、作業車、カート、電動車椅子等の電気推進車両に用いることができる。ここでは、電気推進車両の例を説明する。
【0106】
図10(A)に、電気推進車両の一つである四輪の自動車500の構成を示す。自動車500は、電気自動車またはハイブリッド自動車である。自動車500は、その底部に蓄電装置502が設けられている例を示している。自動車500における蓄電装置502の位置を明確にするために、
図10(B)に、輪郭だけ示した自動車500と、自動車500の底部に設けられた蓄電装置502とを示す。実施の形態1及び実施の形態2で説明した蓄電装置を、蓄電装置502に用いることができる。蓄電装置502は、プラグイン技術や無線給電システムによる外部からの電力供給により充電をすることができる。
【0107】
[実施の形態4]
本実施の形態では、本発明の一態様に係る蓄電装置の一例である二次電池を、無線給電システム(以下、RF給電システムと呼ぶ。)に用いた場合の一例を、
図11および
図12のブロック図を用いて説明する。なお、各ブロック図では、受電装置および給電装置内の構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとして示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが困難であり、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0108】
はじめに、
図11を用いてRF給電システムについて説明する。
【0109】
受電装置600は、給電装置700から供給された電力で駆動する電子機器または電気推進車両であるが、この他電力で駆動する装置に適宜適用することができる。電子機器の代表的としては、デジタルカメラやビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、表示装置、コンピュータ等がある。また、電気推進車両の代表例としては、電気自動車、ハイブリッド自動車、鉄道用電気車両、作業車、カート、電動車椅子等がある。また、給電装置700は、受電装置600に電力を供給する機能を有する。
【0110】
図11において、受電装置600は、受電装置部601と、電源負荷部610とを有する。受電装置部601は、受電装置用アンテナ回路602と、信号処理回路603と、二次電池604とを少なくとも有する。また、給電装置700は、給電装置用アンテナ回路701と、信号処理回路702とを少なくとも有する。
【0111】
受電装置用アンテナ回路602は、給電装置用アンテナ回路701が発信する信号を受け取る、あるいは、給電装置用アンテナ回路701に信号を発信する役割を有する。信号処理回路603は、受電装置用アンテナ回路602が受信した信号を処理し、二次電池604の充電、二次電池604から電源負荷部610への電力の供給を制御する。また、信号処理回路603は、受電装置用アンテナ回路602の動作を制御する。すなわち、受電装置用アンテナ回路602から発信する信号の強度、周波数などを制御することができる。電源負荷部610は、二次電池604から電力を受け取り、受電装置600を駆動する駆動部である。電源負荷部610の代表例としては、モータ、駆動回路等があるが、その他の電力を受け取って受電装置を駆動する装置を適宜用いることができる。また、給電装置用アンテナ回路701は、受電装置用アンテナ回路602に信号を送る、あるいは、受電装置用アンテナ回路602からの信号を受け取る役割を有する。信号処理回路702は、給電装置用アンテナ回路701が受信した信号を処理する。また、信号処理回路702は、給電装置用アンテナ回路701の動作を制御する。すなわち、給電装置用アンテナ回路701から発信する信号の強度、周波数などを制御することができる。
【0112】
本発明の一態様に係る二次電池は、
図11で説明したRF給電システムにおける受電装置600が有する二次電池604として利用される。
【0113】
RF給電システムに本発明の一態様に係る二次電池を利用することで、従来の二次電池に比べて放電容量又は充電容量(蓄電量ともいう)を増やすことができる。よって、無線給電の時間間隔を延ばすことができる(何度も給電する手間を省くことができる)。
【0114】
また、RF給電システムに本発明の一態様に係る二次電池を利用することで、電源負荷部610を駆動することができる放電容量又は充電容量が従来と同じであれば、受電装置600の小型化および軽量化が可能である。従って、トータルコストを減らすことができる。
【0115】
次に、RF給電システムの他の例について
図12を用いて説明する。
【0116】
図12において、受電装置600は、受電装置部601と、電源負荷部610とを有する。受電装置部601は、受電装置用アンテナ回路602と、信号処理回路603と、二次電池604と、整流回路605と、変調回路606と、電源回路607とを、少なくとも有する。また、給電装置700は、給電装置用アンテナ回路701と、信号処理回路702と、整流回路703と、変調回路704と、復調回路705と、発振回路706とを、少なくとも有する。
【0117】
受電装置用アンテナ回路602は、給電装置用アンテナ回路701が発信する信号を受け取る、あるいは、給電装置用アンテナ回路701に信号を発信する役割を有する。給電装置用アンテナ回路701が発信する信号を受け取る場合、整流回路605は受電装置用アンテナ回路602が受信した信号から直流電圧を生成する役割を有する。信号処理回路603は受電装置用アンテナ回路602が受信した信号を処理し、二次電池604の充電、二次電池604から電源回路607への電力の供給を制御する役割を有する。電源回路607は、二次電池604が蓄電している電圧を電源負荷部610に必要な電圧に変換する役割を有する。変調回路606は受電装置600から給電装置700へ何らかの応答を送信する場合に使用される。
【0118】
電源回路607を有することで、電源負荷部610に供給する電力を制御することができる。このため、電源負荷部610に過電圧が印加されることを低減することが可能であり、受電装置600の劣化や破壊を低減することができる。
【0119】
また、変調回路606を有することで、受電装置600から給電装置700へ信号を送信することが可能である。このため、受電装置600の充電量を判断し、一定量の充電が行われた場合に、受電装置600から給電装置700に信号を送信し、給電装置700から受電装置600への給電を停止させることができる。この結果、二次電池604の充電量を100%としないことで、二次電池604の充電回数を増加させることが可能である。
【0120】
また、給電装置用アンテナ回路701は、受電装置用アンテナ回路602に信号を送る、あるいは、受電装置用アンテナ回路602から信号を受け取る役割を有する。受電装置用アンテナ回路602に信号を送る場合、信号処理回路702は、受電装置に送信する信号を生成する回路である。発振回路706は一定の周波数の信号を生成する回路である。変調回路704は、信号処理回路702が生成した信号と発振回路706で生成された一定の周波数の信号に従って、給電装置用アンテナ回路701に電圧を印加する役割を有する。そうすることで、給電装置用アンテナ回路701から信号が出力される。一方、受電装置用アンテナ回路602から信号を受け取る場合、整流回路703は受け取った信号を整流する役割を有する。復調回路705は、整流回路703が整流した信号から受電装置600が給電装置700に送った信号を抽出する。信号処理回路702は復調回路705によって抽出された信号を解析する役割を有する。
【0121】
なお、RF給電を行うことができれば、各回路の間にどんな回路を設けてもよい。例えば、受電装置600が信号を受信し整流回路605で直流電圧を生成したあとに、後段に設けられたDC−DCコンバータやレギュレータといった回路によって、定電圧を生成してもよい。そうすることで、受電装置600内部に過電圧が印加されることを抑制することができる。
【0122】
本発明の一態様に係る二次電池は、
図12で説明したRF給電システムにおける受電装置600が有する二次電池604として利用される。
【0123】
RF給電システムに本発明の一態様に係る二次電池を利用することで、従来の二次電池に比べて放電容量又は充電容量を増やすことができるので、無線給電の時間間隔を延ばすことができる(何度も給電する手間を省くことができる)。
【0124】
また、RF給電システムに本発明の一態様に係る二次電池を利用することで、電源負荷部610を駆動することができる放電容量又は充電容量が従来と同じであれば、受電装置600の小型化および軽量化が可能である。従って、トータルコストを減らすことができる。
【0125】
なお、RF給電システムに本発明の一態様に係る二次電池を利用し、受電装置用アンテナ回路602と二次電池604を重ねる場合は、二次電池604の充放電による二次電池604の変形と、当該変形に伴うアンテナの形状の変化によって、受電装置用アンテナ回路602のインピーダンスが変化しないようにすることが好ましい。アンテナのインピーダンスが変化してしまうと、十分な電力供給がなされない可能性があるためである。例えば、二次電池604を金属製あるいはセラミックス製の電池パックに装填するようにすればよい。なお、その際、受電装置用アンテナ回路602と電池パックは数十μm以上離れていることが望ましい。
【0126】
また、本実施の形態では、充電用の信号の周波数に特に限定はなく、電力が伝送できる周波数であれば、どの帯域であっても構わない。充電用の信号は、例えば、135kHzのLF帯(長波)でも良いし、13.56MHzのHF帯(短波)でも良いし、900MHz〜1GHzのUHF帯(極超短波)でも良いし、2.45GHzのマイクロ波帯でもよい。
【0127】
また、信号の伝送方式としては電磁結合方式、電磁誘導方式、共鳴方式、マイクロ波方式など様々な種類があるが、適宜選択すればよい。ただし、雨や泥などの、水分を含んだ異物によるエネルギーの損失を抑えるためには、周波数が低い帯域、具体的には、短波である3MHz〜30MHz、中波である300kHz〜3MHz、長波である30kHz〜300kHz、および超長波である3kHz〜30kHzの周波数を利用した電磁誘導方式や共鳴方式を用いることが望ましい。
【0128】
本実施の形態は、上記実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0129】
本実施例では、開示される発明の一様態にかかる蓄電装置の充放電特性について、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9を用いて説明する。
【0130】
はじめに、蓄電装置として、リチウムイオン二次電池の作製工程及び構成について、説明する。
【0131】
<電解質の作製工程及び構成>
電解質の材料として、1gのポリエチレンオキサイド(以下、PEOと示す。軟化点65〜67度)と、0.33gのリチウム ビストリフルオロメタンサルフォニルイミド(LiN(SO
2CF
3)
2:Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide(以下「LiTFSI」という))と、0.1gの酸化シリコン(以下、SiO
2と示す)と、0.29gの酸化リチウム(以下、Li
2Oと示す)と、0.11gの酸化アルミニウム(以下、Al
2O
3と示す)を秤量した。
【0132】
次に、PEO、LiTFSI、SiO
2、Li
2O、Al
2O
3の混合物に、溶媒として12mlの脱水アセトニトリルを混合し、混合溶液を形成した。
【0133】
次に、自動塗工機にガラス基板を設けた後、ガラス基板上に混合溶液を塗布した。このときの混合溶液の厚さを300μmとした。
【0134】
次に、室温の通風乾燥機に上記基板を設置し、混合溶液を自然乾燥して、電解質を形成した。
【0135】
次に、ガラス基板から電解質を剥がした後、2枚のフッ化樹脂シートで電解質を挟んだ状態で、真空乾燥機において80度で3時間加熱し、電解質中の溶媒を乾燥させた。以上の工程により、PEO、LiTFSI、SiO
2、Li
2O、及びAl
2O
3を有する電解質を作製した。
【0136】
<正極の構成>
活物質層の材料として、79.4gのLiFePO
4、14.8gのアセチレンブラック、5gのPEO、及び0.8gのLiPF
6を混合し、スラリーを形成した。
【0137】
次に、集電体であるアルミニウム箔上に、スラリーを塗布した後、真空乾燥及び加熱乾燥により活物質層を形成した。以上の工程により、集電体上に活物質層を有する正極を形成した。
【0138】
<負極の構成>
ここでは、負極としてリチウム箔を準備した。当該リチウム箔は、集電体及び活物質の両方として機能する。
【0139】
<二次電池の作製工程>
次に、本実施例の二次電池の作製工程を示す。
【0140】
上記電解質を、正極及び負極で挟んで二次電池を作製した。この二次電池に絶縁Oリングやスペーサー、バネ等を設け、蓄電セルを作製した。
【0141】
当該蓄電セルを作製後、当該蓄電セルに50℃での加熱を行った。
【0142】
次に、蓄電セルの正極及び負極に電圧を印加し、室温(25℃)で、定電流定電圧での充電及び定電流での放電(以下「エージング処理」という)を行った。当該エージング処理において、充電時の電流は0.02mA、電圧が4.2Vに達した後は電圧4.2Vで固定し充電を続けた。また放電時の電流は0.02mAであった。また当該エージング処理では、充電及び放電を繰り返し10回行った。このときの容量及び電圧の関係を
図5に示す。なお
図5中「充」は充電、「放」は放電、数字は充電及び放電の回数を示す。例えば、「充3」は3回目の充電であり、「放10」は10回目の放電である。
【0143】
図5には、充電及び放電が繰り返されることにより、容量が増大していることが示されている。エージング処理後の蓄電セルの放電容量は、63mAh/gであった。
【0144】
図6にエージング処理後に定電流で充電及び放電を行ったときの容量及び電圧の関係を示す。なお
図6においても、充電及び放電も室温(25℃)で繰り返し10回行った。
【0145】
図6に示すように、エージング処理を行った後の蓄電セルは、室温(25℃)で動作し、かつ、エージング処理を行った後の蓄電セルの放電容量は、エージング処理時の最大放電容量とほぼ同様である。
図6では、エージング処理後に充電及び放電を繰り返しても、最大放電容量が低下せず維持されることが示された。
【0146】
図7に、蓄電セルにエージング処理を行わず、定電流のみで充電及び放電を行った場合の容量及び電圧の関係を示す。なお
図7においては、充電及び放電は室温(25℃)で繰り返し2回行った。
【0147】
図7に示されるように、エージング処理を行わない蓄電セルでは、最大放電容量は37mAh/gであった。このように、エージング処理を行わない蓄電セルでは、エージング処理を行った後の蓄電セルに比べて放電容量が小さい。
【0148】
本実施例で作製される蓄電セルでは、電解質を正極及び負極で挟持させた後、定電流定電圧の充電及び定電流の放電を行う。これにより移動しやすいキャリアイオン(例えばリチウムイオン)だけでなく、活物質層内の移動しにくいキャリアイオンを可動させることができる。これにより蓄電セルの放電容量を高めることができ、かつ室温での動作を可能とすることができる。
【0149】
また本実施例の蓄電セルにおいて、蓄電セルの充電及び放電における抵抗について、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0150】
図8及び
図9はそれぞれ、定電圧定電流での充電時及び定電流での放電(エージング処理)時休止抵抗の測定結果である。
図8及び
図9において、横軸は休止数、縦軸は蓄電セルの抵抗値である。
【0151】
なお本明細書では、所定の時間充電又は放電を行った後、また別の所定の時間充電又は放電を休止し、充電又は放電、及びその休止を1サイクルとして、サイクルを複数回行った時の抵抗の測定を休止抵抗の測定とする。
【0152】
蓄電セルの休止抵抗の測定は、北斗電工株式会社製の電池充放電試験機(HJ−SM8A)を用いて行った。充電の休止抵抗の測定では、充電を60分行った後、充電を1分休止した。また充電60分及び充電休止1分を30回繰り返し行った。当該充電及び充電休止を30回繰り返すことを1サイクルとし、1サイクル終了後に放電を行った。蓄電セルに蓄えられた電気が消失するまで放電を行った後、次のサイクルを開始した。
【0153】
なお放電の休止抵抗の測定では、放電を60分行った後、放電を1分休止した。また放電60分及び放電休止1分を20回繰り返し行った。当該放電及び放電休止を20回繰り返すことを1サイクルとし、1サイクル終了後に充電を行った。蓄電セルが十分な電気を蓄えるまで充電を行った後、次のサイクルを開始した。
【0154】
以上のようにして、蓄電セルの休止抵抗の測定を行った。
【0155】
図8には、定電圧定電流での充電において、充電を繰り返すことにより蓄電セルの抵抗が下がっていることが示されている。蓄電セルの抵抗が下がるのは、定電流定電圧の充電により、移動しやすいキャリアイオン(例えばリチウムイオン)だけでなく、活物質層内の移動しにくいキャリアイオンを移動させることが容易となったためである。
【0156】
以上により、本実施例の蓄電セルの放電容量を高めることができ、かつ室温での動作を可能とすることができる。
【実施例2】
【0157】
本実施例では、実施例1とは異なる材料で形成された蓄電装置の充放電特性について、
図13、
図14、
図15を用いて説明する。
【0158】
本実施例のリチウムイオン二次電池(蓄電装置)の電解質としては、イオン伝導性を有する高分子化合物としてPEO、リチウム電解質塩としてLiTFSI、無機酸化物としてLi
2Oを用いる。
【0159】
より具体的には、1gのPEOと、0.33gのLiTFSIと、0.5gのLi
2Oを秤量した。なお電解質の材料以外は実施例1と同様であるので、二次電池の作製方法については割愛する。
【0160】
実施例1と同様に蓄電セルを作製し、その後50℃での加熱を行った。
【0161】
次に、蓄電セルの正極及び負極に電圧を印加し、室温(25℃)で、定電流定電圧での充電及び定電流での放電(エージング処理)を行った。当該エージング処理において、充電時の電流は0.02mA、電圧が4.2Vに達した後は電圧4.2Vで固定し充電を続けた。また放電時の電流は0.02mAであった。また当該エージング処理では、充電及び放電を繰り返し10回行った。このときの容量及び電圧の関係を
図13に示す。なお実施例1と同様、
図13中「充」は充電、「放」は放電、数字は充電及び放電の回数を示す。例えば、「充3」は3回目の充電であり、「放10」は10回目の放電である。
【0162】
図13には、充電及び放電が繰り返されることにより、容量が増大していることが示されている。エージング処理後の蓄電セルの最大放電容量は、69mAh/gであった。
【0163】
図14には、
図13のエージング処理終了後、さらに定電流定電圧での充電及び定電流での放電を4回行うエージング処理を行った場合の容量及び電圧の関係を示す。
【0164】
図14では、エージング処理後の蓄電セルの放電容量がさらに増大している。
図14における最大放電容量は、放電3回目のときの放電容量で、78mAh/gであった。
【0165】
図13及び
図14に示すエージング処理後に、定電流で充電及び放電を行ったときの容量及び電圧の関係を
図15に示す。なお
図15においては、充電及び放電は室温(25℃)で繰り返し5回行った。
【0166】
図15では、エージング処理後の蓄電セルの定電流による放電容量がさらに増大している。
図15における最大放電容量は、放電2回目のときの放電容量で、86mAh/gであった。
【0167】
以上説明したように、本実施例では実施例1よりも放電容量が増加した。さらに、エージング処理を行う回数が増えるに従い、放電容量も増加した。
【0168】
本実施例で放電容量が増加したのは、エージング処理を行うことにより、リチウムイオンの伝導性が向上したことが一因である。エージング処理を行うと、無機酸化物(Li
2O)粉末表面の酸素原子及びPEOによって、リチウムイオン以外のアニオンの移動が抑制され、リチウムイオンが動きやすくなる。これにより、リチウムイオンの伝導性が向上し、蓄電セルの放電容量が増加する。