(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示制御手段は、入力手段からの入力を受け付ける領域を前記表示手段に表示させるとともに、前記領域への入力に応じた大きさの前記閉曲線を前記前眼部画像上に表示させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の眼科装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る装置は、被検眼、皮膚、内臓等の被検体に適用することができる。また、本発明に係る装置としては、例えば、眼科装置や内視鏡等である。以下、本発明の一例として、本実施形態に係る眼科装置について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
[装置の全体構成]
図1は、本実施形態における眼科装置の構成の一例を示す概略図である。
【0014】
本装置は、SS−OCT(Swept Source OCT;以下、単にOCTという場合がある)100、走査型検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:以下、SLOという場合がある)140、前眼部撮像部160、内部固視灯170、制御部200から構成される。なお、本発明においてSLO140は必須の構成ではない。すなわち、本眼科装置はSLO140を備えないこととしてもよい。
【0015】
内部固視灯170を点灯して被検眼に注視させた状態で、前眼部撮像部160により観察される被検眼の前眼部の画像を用いて、装置のアライメントが行われる。アライメント完了後に、OCT100とSLO140による眼底の撮像が行われる。
【0016】
<OCT100の構成>
OCT100の構成の一例について説明する。
【0017】
OCT100は被検眼の前眼部の断層画像を取得する。すなわち、OCT100は前眼部の断層画像を取得する断層画像取得手段の一例に相当する。
【0018】
光源101は、可変波長光源であり、例えば、中心波長1040nm、バンド幅100nmの光を出射する。光源101から出射される光の波長は制御部191によって制御される。より具体的には、断層画像を取得する際に、制御部191によって光源101から出射される光の波長は掃引される。すなわち、制御部191は光源から出射される光の波長を掃引させる制御手段の一例に相当する。光源101から出射された光は、ファイバ102、偏光コントローラ103を介して、ファイバカップラ104に導かれ、光量を測定するファイバ130とOCT測定するファイバ105に分岐される。光源101から出射された光は、ファイバ130を介し、PM(Power Meter)131にてパワーが測定される。ファイバ105を介した光は、第二のファイバカップラ106に導かれる。ファイバカップラ106において、光は、測定光(OCT測定光とも言う)と参照光に分岐される。
【0019】
偏光コントローラ103は、光源101から出射された光の偏光の状態を調整するものであり、直線偏光に調整される。ファイバカップラ104の分岐比は、99:1であり、ファイバカップラ106の分岐比は、90(参照光):10(測定光)である。なお、分岐比はこれらの値に限定されるものではなく、他の値とすることも可能である。
【0020】
ファイバカップラ106で分岐された測定光は、ファイバ118を介してコリメータ117から平行光として出射される。出射された測定光は、眼底Erにおいて測定光を水平方向(紙面上下方向)にスキャンするガルバノミラーから構成されるXスキャナ107、レンズ108を介してレンズ109に到達する。さらに、レンズ109からの測定光は眼底Erにおいて測定光を垂直方向(紙面奥行き方向)にスキャンするガルバノミラーから構成されるYスキャナ110を介し、ダイクロイックミラー111に到達する。ここで、Xスキャナ107、Yスキャナ110は、駆動制御部180により制御され、眼底Erで所望の範囲の領域を測定光により走査することができる。ダイクロイックミラー111は、例えば950nm〜1100nmの光を反射し、それ以外の光を透過する特性を有する。
【0021】
ダイクロイックミラー111により反射された測定光は、レンズ112を介し、ステージ116上に乗ったフォーカスレンズ114に到達する。フォーカスレンズ114で測定光は、被検体である眼の前眼部Eaを介し、眼底Erの網膜層にフォーカスされる。すなわち、光源101から被検眼までの光学系は、光源から出射された光を被検眼に導く照明光学系の一例に相当する。眼底Erを照射した測定光は各網膜層で反射・散乱し、上述の光学経路を介してファイバカップラ106に戻る。眼底Erからの測定光はファイバカップラ106からファイバ125を介し、ファイバカップラ126に到達する。
【0022】
なお、フォーカスレンズ114の光軸方向への移動は駆動制御部180により制御される。また、本実施形態ではフォーカスレンズ114はOCT100とSLO140と共通に用いられているが、これに限定されるものではなく、それぞれの光学系に別々にフォーカスレンズを備えることとしてもよい。また、フォーカスレンズの駆動制御部180による制御は光源101が用いる波長と光源141が用いる波長との違いに基づいてフォーカスレンズを駆動することとしてもよい。例えば、OCT100とSLO140とに共通でフォーカスレンズが設けられている場合、駆動制御部180はSLO140による撮影とOCT100による撮影とが切り替えられると、波長の違いに応じてフォーカスレンズ114を移動させる。また、フォーカスレンズがOCT100およびSLO140のそれぞれの光学系に設けられている場合、一方の光学系のフォーカスレンズが調整されると駆動制御部180は波長の違いに応じて他方の光学系のフォーカスレンズを移動させる。
【0023】
また、前眼部の断層撮影を行う撮影モードの場合、フォーカス位置を眼底ではなく前眼部の所定の部位に合わせる。この前眼部へのフォーカス調整は、フォーカスレンズ114の位置を移動させることにより行っても良いが、あるいは専用のレンズ等の光学部材をフォーカスレンズ114の前後の光路に挿入することでフォーカス位置を調整することができる。この場合、光学部材は駆動部により光路に対して挿脱可能である。駆動制御部180は前眼部撮影モードが選択された場合には光学部材を光路に挿入し、眼底撮影モードが選択された場合には光学部材を光路中から退避させる。
【0024】
一方、ファイバカップラ106で分岐された参照光は、ファイバ119を介してコリメータ120−aから平行光として出射される。出射された参照光は分散補償ガラス121を介し、コヒーレンスゲートステージ122上のミラー123−a、123−bで反射され、コリメータ120−b、ファイバ124を介し、ファイバカップラ126に到達する。コヒーレンスゲートステージ122は、被検眼の眼軸長の相違等に対応する為、駆動制御部180で制御される。
【0025】
ファイバカップラ126に到達した測定光と参照光とは合波されて干渉光となり、ファイバ127、128を経由し、光検出器である差動検出器(balanced receiver)129によって干渉信号が電気信号に変換される。すなわち、被検眼から差動検出器129までの光学系は制御手段により掃引された光の被検眼からの戻り光を撮像手段に導く撮像光学系の一例に相当する。変換された電気信号は信号処理部190で解析される。なお、光検出器は差動検出器に限定されるものではなく、他の検出器を用いることとしてもよい。
【0026】
また、ファイバカップラ126において測定光と参照光とが干渉する構成となっているが、これに限定されるものではない。例えば、ミラー123−aを参照光をファイバ119へ反射するように配置し、ファイバカップラ106において測定光と参照光とを干渉させることとしてもよい。この場合ミラー123−b、コリメータ120−b、ファイバ124およびファイバカップラ126は不要となる。なお、この際にはサーキュレータを用いることが好ましい。
【0027】
<SLO140の構成>
SLO140の構成の一例について説明する。
【0028】
SLO140は被検眼の眼底画像を取得する眼底画像取得手段の一例に相当する。
【0029】
光源141は、例えば半導体レーザであり、本実施形態では、例えば、中心波長780nmの光を出射する。光源141から出射された測定光(SLO測定光とも言う)は、ファイバ142を介し、偏光コントローラ145で直線偏光に調整され、コリメータ143から平行光として出射される。出射された測定光は穴あきミラー144の穴あき部を通過し、レンズ155を介し、眼底Erにおいて測定光を水平方向にスキャンするガルバノミラーから構成されるXスキャナ146、レンズ147、148、眼底Erにおいて測定光を垂直方向にスキャンするガルバノミラーから構成されるYスキャナ149を介し、ダイクロイックミラー154に到達する。なお、偏光コントローラ145を設けないこととしてもよい。Xスキャナ146、Yスキャナ149は駆動制御部180により制御され、眼底上で所望の範囲を測定光で走査できる。ダイクロイックミラー154は、例えば760nm〜800nmを反射し、それ以外の光を透過する特性を有する。
【0030】
ダイクロイックミラー154にて反射された直線偏光の測定光は、ダイクロイックミラー111を透過後、OCT100のOCT測定光と同様の光路を経由し、眼底Erに到達する。
【0031】
眼底Erを照射したSLO測定光は、眼底Erで反射・散乱され、上述の光学経路をたどり穴あきミラー144に達する。穴あきミラー144で反射された光が、レンズ150を介し、アバランシェフォトダイオード(以下、APDともいう)152で受光され、電気信号に変換されて、信号処理部190で受ける。
【0032】
ここで、穴あきミラー144の位置は、被検眼の瞳孔位置と共役となっており、眼底Erに照射された測定光が反射・散乱された光のうち、瞳孔周辺部を通った光が、穴あきミラー144によって反射される。
【0033】
<前眼部撮像部160>
前眼部撮像部160の構成の一例について説明する。
【0034】
前眼部撮影部160は被検眼の前眼部画像を取得する取得手段の一例に相当する。
【0035】
前眼部撮像部160は、レンズ162、163、164および前眼部カメラ165を備える。
【0036】
例えば波長850nmの照明光を発するLED115−a、115−bから成る照明光源115は前眼部Eaを照射する。前眼部Eaで反射され光は、フォーカスレンズ114、レンズ112、ダイクロイックミラー111、154を介し、ダイクロイックミラー161に達する。ダイクロイックミラー161は、例えば820nm〜900nmの光を反射し、それ以外の光を透過する特性を有する。ダイクロイックミラー161で反射された光は、レンズ162、163、164を介し、前眼部カメラ165で受光される。前眼部カメラ165で受光された光は、電気信号に変換され、信号処理部190で受ける。そして、信号処理部190は前眼部画像を生成する。
【0037】
<内部固視灯170>
内部固視灯170について説明する。
【0038】
内部固視灯170は、表示部171、レンズ172で構成される。表示部171としては例えば複数の発光ダイオード(LD)がマトリックス状に配置されたものを用いる。発光ダイオードの点灯位置は、駆動制御部180の制御により撮像したい部位に合わせて変更される。表示部171からの光は、レンズ172を介し、被検眼に導かれる。表示部171から出射される光は例えば520nmで、駆動制御部180により所望のパターンが表示される。
【0039】
<制御部200>
制御部200について説明する。
【0040】
制御部200は、駆動制御部180、信号処理部190、制御部191、表示部192から構成される。制御部200は例えば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)である。また、FPGA(Field Programable Gate Array)によって構成することとしてもよい。なお、制御部200には図示しないマウスやキーボード等の入力手段が有線または無線を介して接続されている。なお、本実施形態におけるマウスの一例では、検者の手によってマウス本体が2次元的に移動されたときの移動信号を検出するセンサと、検者の手によって押圧されたことを検知するための左右2つのマウスボタンとを備える。さらに、マウスは左右2つのマウスボタンの間に前後方向に回転可能なホイール機構が設けられている。なお、制御部200には図示しないメモリ等の記憶手段が有線または無線を介して接続されている。例えば、制御部200は記憶手段に記憶されているプログラムを実行することで、各種の機能を実現する。
【0041】
駆動制御部180は、上述の通り各部を制御する。
【0042】
信号処理部190は、差動検出器129、APD152、前眼部カメラ165からそれぞれ出力される信号に基づき、画像の生成、生成された画像の解析、解析結果の可視化情報の生成を行う。なお、画像の生成などの詳細については、後述する。
【0043】
制御部191は、本装置全体を制御すると共に、信号処理部190で生成された画像等を表示部192の表示画面に表示する。表示部192は表示手段または表示装置の一例に相当する。なお、信号処理部190で生成された画像データは、制御部191に有線で送信されても良いし、無線で送信されても良い。
【0044】
表示部192は、例えば、液晶等のディスプレイである。表示部192は、制御部191の制御の下、後述するように種々の情報を表示する。なお、制御部191からの画像データは、表示部192に有線で送信されても良いし、無線で送信されても良い。また、表示部192等は、制御部200に含まれているが、本発明はこれに限らず、制御部200とは別に設けられても良い。
【0045】
また、制御部191と表示部192とを一体的に構成した、ユーザが持ち運び可能な装置の一例であるタブレットでも良い。この場合、表示部192にタッチパネル機能を搭載させ、タッチパネル上で画像の表示位置の移動、拡大縮小、表示される画像の変更等の操作可能に構成することが好ましい。なお、制御部191と表示部192とが一体的に構成された場合でなくとも表示部192にタッチパネル機能を搭載させてもよい。すなわち、入力手段としてタッチパネルを用いることとしてもよい。
【0046】
[画像処理]
次に、信号処理部190における画像生成、画像解析について説明する。
【0047】
<断層画像生成、及び、眼底画像生成>
信号処理部190は、差動検出器129から出力された干渉信号に対して、一般的な再構成処理を行うことで、断層画像を生成する。
【0048】
まず、信号処理部190は、干渉信号から固定パターンノイズ除去を行う。固定パターンノイズ除去は例えば検出した複数のAスキャン信号を平均することで固定パターンノイズを抽出し、これを入力した干渉信号から減算することで行われる。
【0049】
次に、信号処理部190は、有限区間でフーリエ変換した場合にトレードオフの関係となる、深さ分解能とダイナミックレンジとを最適化するために、所望の窓関数処理を行う。次に、FFT処理を行う事によって、断層画像を生成する。
【0050】
OCT100によれば、SD(Spectral domain OCT)−OCTに比べて広い範囲(横方向の大きさが大きいとの意味)での断層画像の撮像が可能となる。これは以下の理由によるものである。SD−OCTの分光器では、回折格子による干渉光の損失がある。一方、SS−OCTでは、分光器を用いず干渉光を例えば差動検出する構成とすることで感度向上が容易である。よって、SS−OCTは、SD−OCTと同等の感度で高速化が可能となり、この高速性を活かして、広画角の断層画像を取得することが可能となる。
【0051】
またOCT100によれば、SD−OCTに比べて深さ方向に深い(縦方向の大きさが大きいとの意味)断層画像の撮像が可能である。これは以下の理由によるものである。SD−OCTで用いられる分光器は、回折格子によって干渉光を空間で分光するため、ラインセンサの隣接する画素間で干渉光のクロストークが発生し易くなる。深さ位置Z=Z0に位置する反射面からの干渉光は、波数kに対してZ0/πの周波数で振動するため、Z0が大きくなる(すなわちコヒーレンスゲート位置から遠く離れる)に従って、干渉光の振動周波数は高くなり、ラインセンサの隣接する画素間での干渉光のクロストークの影響が大きくなる。これによって、SD−OCTでは、より深い位置を撮像しようとすると、感度低下が顕著となる。一方、分光器を用いないSS−OCTは、SD−OCTよりも、深い位置での断層画像の撮像が有利となる。また、SS−OCTに用いられる光源の波長はSD−OCTで用いられる光源の波長に比べて長いことも深さ方向に深い断層画像を得られる要因となっている。
【0052】
なお、断層画像を表示部192の表示領域に表示する場合、断層自体の画像が無い領域を表示しても意味が無い。そこで、本実施形態では、断層画像を表示する場合、制御部191は、信号処理部190内のメモリに展開されたデータから断層自体の画像の部分を認識し、表示領域の大きさに合う断層画像を切り出して表示するようにしている。なお、断層自体の画像とは被検眼の眼底組織の画像を指す。
【0053】
<セグメンテーション>
信号処理部190は、前述した輝度画像を用いて断層画像のセグメンテーションを行う。
【0054】
まず、信号処理部190は、処理の対象とする断層画像に対して、メディアンフィルタとSobelフィルタをそれぞれ適用して画像を作成する(以下、それぞれメディアン画像、Sobel画像ともいう)。次に、作成したメディアン画像とSobel画像から、Aスキャン毎にプロファイルを作成する。メディアン画像では輝度値のプロファイル、Sobel画像では勾配のプロファイルとなる。そして、Sobel画像から作成したプロファイル内のピークを検出する。検出したピークの前後やピーク間に対応するメディアン画像のプロファイルを参照することで、網膜層の各領域の境界を抽出する。
【0055】
更に、Aスキャンラインの方向に各層厚をそれぞれ計測し、各層の層厚マップを作成する。なお、各層層厚を計測せずに角膜のみの厚さを計測し、角膜の層厚マップを作成することとしてもよい。すなわち、信号処理部190は断層画像に基づいて角膜の厚みを算出する算出手段の一例に相当する。
【0056】
図2に人間の目の構造を示す。眼球は例えば直径約24mmで内部は硝子体で満たされている。眼の一番表面の部分が透明角膜で、その後に眼底方向に虹彩と瞳孔とがあり、続いて水晶体がある。瞳孔を通った光は眼球の内側の網膜に像を結ぶ。空気の屈折率1.0に対して屈折率が約1.38の角膜と屈折率が約1.42の水晶体による屈折より、入射光は網膜に結像する。なお、屈折率は一例であり、本実施形態を限定するものではない。角膜は老齢化や外傷、病により濁る。角膜が濁ると光が散乱してしまい光は正確に網膜に結像しなくなるので、角膜移植手術を行い、角膜の再生を行う。
【0057】
図3は本眼科装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0058】
まず、アライメントやコヒーレンスゲート等の各種の調整を行った後、被検眼の前眼部の断層画像を取得する。具体的にはOCT100により得られた信号に基づいて信号処理部190が前眼部の断層画像を生成する。制御部191はOCT100がOCT測定光をラジアルスキャン、またはラスタースキャンすることにより得られた前眼部の断層画像を取得して、この前眼部の断層画像から角膜のボリュームデータ(3次元データ)を取得する。すなわち、制御部191は前眼部の断層画像を取得する断層画像取得手段の一例に相当する。
【0059】
さらに、前眼部撮影部160によって得られた信号から信号処理部190は角膜の正面画像を生成する。制御部191は信号処理部190によって生成された角膜の正面画像を取得する。すなわち、制御部191は被検眼の前眼部画像を取得する取得手段の一例に相当する。以上の動作がステップS1にて行われる。
【0060】
なお、ボリュームデータを取得する範囲は、角膜全体が映し出される範囲が望ましい。ここでは、ラジアルスキャンであれば半径8mmの円の範囲、ラスターデータであれば一辺が16mmの正方形の範囲とする。このように角膜全体の画像を取得することが必要となるためSS−OCTを用いることが好ましい。なお、スキャン範囲の値は上記の値に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0061】
上記の例では、正面画像を取得する際、OCT100により撮像とほぼ同時に前眼部撮像部160により同軸から被検眼の前眼部面像を撮影している。但し、これに限定されるものではなく、OCT100を用いることで得られたボリュームデータを信号処理部190が再構築して前眼部画像(正面画像)を生成してもよい。なお、断層画像と前眼部画像とは略同時に同軸を用いて取得しているため、対応関係をとることが可能である。
【0062】
次にステップS2では信号処理部190が断層画像のセグメンテーションを行う。まず、信号処理部190は、処理の対象とする断層画像に対して、メディアンフィルタとSobelフィルタをそれぞれ適用して画像を作成する(以下、メディアン画像、Sobel画像とする)。次に、作成したメディアン画像とSobel画像から、Aスキャン毎にプロファイルを作成する。メディアン画像では輝度値のプロファイル、Sobel画像では勾配のプロファイルとなる。そして、Sobel画像から作成したプロファイル内のピークを検出する。検出したピークの前後やピーク間に対応するメディアン画像のプロファイルを参照することで、角膜の前後面の境界を抽出する。
【0063】
更に、Aスキャンラインの方向に各層厚をそれぞれ計測し、各層の層厚マップを作成する。
【0064】
ステップS3では制御部191が
図4のように表示部192に前眼部画像等を表示する。
図4は表示部192における表示例600を示す図である。具体的には、制御部191は、表示部192に前眼部画像610、瞳孔中心から角膜切開の予定位置までの距離Xを指定するインターフェース620(以下、単にインターフェース620という場合がある)および角膜切開面の厚さのラインプロファイル640(以下、単にラインプロファイル640という場合がある)、角膜最薄部の情報630を表示させる。なお、角膜切開の予定位置を単に角膜の切開位置という場合がある。表示部192に表示された前眼部画像はステップS1で取得した画像である。
図4に示す例においては、インターフェース620、角膜切開面の厚さのラインプロファイル640、角膜最薄部の情報については、表示枠だけを表示し、データは入力または表示されていない。なお、
図4に示す表示例600では、前眼部画像610、インターフェース620、角膜最薄部の情報630およびラインプロファイル640が表示されているが、これに限定されるものではない。例えば、
図4に示す情報を任意に選択して表示させることとしてもよいし、他の情報を更に表示させることとしてもよい。また、表示部192に表示される情報の配置は
図4に示す例に限定されるものではなく、他の配置としてもよい。
【0065】
前眼部画像610は、前眼部撮影部160により得られた信号に基づいて信号処理部190により生成された画像である。インターフェース620は、入力手段を介して検査者からの入力を受け付ける領域である。すなわち、制御部191は入力手段からの入力を受け付ける領域を表示手段に表示させる。
【0066】
角膜最薄部の情報630は、検査者により指定された角膜位置における角膜が最も薄い部分に関する情報であり、例えば、角膜が最も薄い位置を示す情報と最も薄い角膜厚の値である。角膜が最も薄い位置を示す情報の一例は瞳孔の中心を通る水平な線に対する瞳孔中心と角膜が最も薄い位置とを結ぶ線の角度である。なお、
図4においては時計周りの角度を表示することとしているが、反時計まわりの角度を表示することとしてもよい。なお、この角度や最薄部の厚さは信号処理部190によって求められ、制御部191により表示部192に表示させる。なお、角膜最薄部の情報630はこれに限定されるものではなく、2番目に薄い角膜の位置や角膜の厚さを
ラインプロファイル640は入力手段を介して指定された角膜の位置における角膜の厚さを示すグラフである。
図4に示す例では、角度で表された角膜の各位置における角膜の厚さが表示されている。
【0067】
次にステップS4では、前眼部画像610上でマウスやタッチパネル等の入力手段を用いて瞳孔中心を手動で選択する。選択された点は、制御手段191によって前眼部画像610上に瞳孔中心として表示部192に表示される。
図5は、手動で瞳孔中心を選択する方法を説明するための図である。具体的には
図8は、入力手段に対する入力に対応して移動するカーソル800が位置する前眼部画像610上の位置を瞳孔中心として選択する場合を示している。なお、瞳孔中心の選択は手動による選択に限定されるものではなく、画像処理により瞳孔中心を抽出してもよい。具体的には、信号処理部190が前眼部画像を2値化して瞳孔を検出し、検出した瞳孔の重心を求めることで瞳孔の中心を抽出することができる。なお、本実施形態において、瞳孔の中心とは瞳孔の完全な中心のみを含む概念ではなく、瞳孔の略中心を含む概念である。
【0068】
瞳孔の中心が選択されると、ステップS5において、瞳孔中心から予定角膜切開位置までの距離Xが入力手段を介してインターフェース620に入力される。制御部191はステップS4にて選択された位置を中心とした半径Xの円を前眼部画像610に重畳して表示させる。すなわち、制御部191は前眼部画像と前眼部画像上に被検眼の角膜の切開位置を示す閉曲線とを表示手段に表示させる表示制御手段の一例に相当する。また、制御部191はインターフェース620(領域)への入力に応じた大きさの閉曲線を前眼部画像上に表示させる。
【0069】
本実施形態では例えば、距離Xを3.5mmとする。なお、入力される距離Xはこの値に限定されるものではなく、他の値とすることが可能である。なお、ステップS4、ステップS5が実行される順序は逆であってもよい。
【0070】
ステップS6ではステップS5で前眼部画像610上に表示された半径Xの円に沿った角膜厚さのラインプロファイル640を表示部192に表示する。すなわち、制御部191は閉曲線上の位置に対する閉曲線が位置する部分の角膜の厚みを示すグラフを表示手段に表示させる。なお、半径Xの円に沿った角膜厚さは信号処理部190によって求められる。
【0071】
ここで、ラインプロファイル640の縦軸は角膜厚さを表し、横軸は瞳孔中心を基準としてあらわされる角度θを表す。
図6は角膜厚さのラインプロファイル640の一例を表す図である。
【0072】
半径Xの円に沿った角膜厚さが求められた後、ステップS7が実行される。ステップS7では、半径Xの円に沿った角膜厚における最小の角膜厚さと、その位置の角度とを制御部191が表示部192に角膜最薄部の情報630として表示させる。すなわち、制御部191は、閉曲線が位置する部分の角膜の厚みのうち最も薄い角膜の厚みを表示手段に表示させる。さらに、制御部191は、閉曲線が位置する部分の角膜の厚みのうち角膜の厚みが最も薄くなる位置を示す表示形態を表示手段に表示させる。
【0073】
また、制御部191は半径Xの円において角膜厚が最小となる位置を示す矢印を前眼部画像610上に表示させる。なお、径Xの円において角膜厚が最小となる位置を示す表示は
図4に示す矢印に限定されるものではなく、角膜厚が最小となる位置を示すものであれば他の表示形態としてもよい。すなわち、制御部191は閉曲線が位置する部分の角膜の厚みのうち角膜の厚みが最も薄くなる位置を示す表示形態を前眼部画像上に表示させる。
【0074】
なお、ラインプロファイル640が表示される前に角膜最薄部の情報630が表示されることとしてもよい。
【0075】
このように、本実施形態によれば、角膜を切開しようとする位置を前眼部画像上で確認することができる。
【0076】
また、フェムト秒レーザーは屈折矯正手術にも使用されるなど、角膜移植手術以外の他の手術と共用で用いられることがある。このように共用で用いられる場合、フェムト秒レーザー装置が置かれている場所からオペ室まで物理的に距離があり角膜切開からオペまで時間がかかる場合がある。フェムト秒レーザーによる角膜切開からオペまで時間がかかる場合は、感染を防ぐためにフェムト秒レーザーで完全に角膜を切り離すことをせずに、角膜を貫通しないような厚さ、例えば、角膜切開面の最薄部の90%の深さで切開し(プレカット)オペの直前にダイヤモンドナイフで角膜を完全に取り除くという工程が必要になる。角膜を貫通しないような厚さは被検眼の角膜の厚さによって異なるため、前眼部OCTなどの断層画像装置を用いて被検眼の角膜厚さを検査し、角膜切開面の最薄部の例えば90%の厚さをプレカットの切開深さに設定する。しかし角膜厚を色別に示すエレベーションマップでは具体的な角膜厚は表示されず、どの程度の厚さプレカットすればよいか正確に把握することが困難であった。
【0077】
しかし、本実施形態によれば、角膜切開の予定位置における最も薄い角膜厚保を表示することとしているため、検査者は容易にどの程度の厚さプレカットすればよいかを把握することが可能となる。
【0078】
また、例えば、SD−OCTはSS−OCTと比較して画角が狭いため、指定された角膜切開の予定位置(例えば半径3.5mmの位置)の断層像を取得出来ていない場合または画像が不鮮明な場合がSS−OCTを用いた場合と比較して多く表れてしまう。
【0079】
しかし、SS−OCTはSD−OCTに比べて高速かつ広画角な断層画像を得ることができるため、被検眼の動きによる影響や画角の制限を受けづらく、角膜切開の予定位置が瞳孔から半径3.5mm等指定された位置における角膜の厚みを正確かつ確実に表示可能である。さらに、SS−OCTにより得られた深さ方向において鮮明な断層画像から角膜厚を求めているため、より正確に角膜の最も薄い厚さを把握することが可能となる。
【0080】
また、フェムト秒レーザーは外部からの制御情報に基づいて所望位置の角膜を切開可能である。従って、本実施形態で得られた角膜厚さのラインプロファイルのデータをフェムト秒レーザーに入力することで、任意の角膜切開面において最適の深さで切開することができる。なお、この場合、本実施形態で得られた角膜厚さのラインプロファイルのデータの角膜厚に関して0.9を乗算した値をフェムト秒レーザーに入力する。
【0081】
(その他の実施形態)
本件は上記の実施形態に限定されるものではなく、本件の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変形、変更して実施することができる。
【0082】
例えば、上記実施形態では、ステップS5において距離Xが入力された後に半径Xの円を前眼部画像610上に表示することとしているが、これに限定されるものではない。例えば、ステップS4で瞳孔中心が選択されと予め定められた半径Xの円が自動的に前眼部画像610上に表示されることとしてもよい。なお、この半径Xの初期値は例えば3.5mmにするなど任意に設定することが可能である。このようにすれば、検査者による半径Xの入力を省略できる可能性がある。なお、半径3.5mm(直径7mm)は角膜移植手術の際に多く用いられる値であるため、この値を初期値とすることで被験者による半径Xの入力を省略できる可能性が高くなる。
【0083】
また、半径Xは検査者がインターフェース620に入力することで変更可能だがこれに限定されるものではない。例えば、前眼部画
図620上にカーソル位置させマウスのホイールを回転させると回転方向に応じて半径Xが変化することとしてもよい。このようにすれば、半径Xの変更がより容易になる。なお、半径Xの変更を容易とするために半径Xの円が前眼部画像620上に表示された状態で、半径Xの円をドラッグすることで半径Xの値を変更可能としてもよい。
【0084】
さらに、上記実施形態ではSS−OCTを用いることとしたが、これに限定されるものではなく、TD(Time−Domain)−OCTまたはSD−OCTを用いることとしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では前眼部の角膜断面の画像を取得するためにOCTを用いているが、これに限定されるものではなくシャインプルークカメラを用いることとしても良い。また、前眼部画像を前眼部撮影部160を用いて取得しているが、これに限定されるものではなく、SLO140を用いて前眼部画像を取得することとしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態における角膜切開の予定位置は円であるものとしたが、これに限定されるものではなく、閉曲線であればよい。なお、円以外の閉曲線を表示させる場合、入力手段により前眼部画像上で複数点を指定することで、それらの点を結ぶ線を表示させる。
【0087】
さらに、上記実施形態では半径Xを入力手段により入力しているが、これに限定されるものではなく、直径を入力することとしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では角膜の最薄部の値を表示することとしているが、これに限定されるものではなく、プレカットの値を表示することとしてもよい。例えば、最薄部の値に例えば0.9を乗算することでプレカットの値を表示する。なお、この乗算処理は信号処理部190で行われる。なお、プレカットの深さは最薄部の90%でなくてもよく、他の値とする場合には乗算され値も変更される。
【0089】
さらに、上記実施形態では角膜切開の予定位置を瞳孔の中心に基づいて決定しているが、これに限定されるものではなく、角膜頂点の位置に基づいて角膜切開の予定位置を決定することとしてもよい。すなわち、表示制御手段により表示される閉曲線は前記被検眼の瞳孔の中心または前記角膜の頂点を中心とする円である。
【0090】
なお、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。