(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045174
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】光学部品の高精度調芯方法及び高精度調芯装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
G02B6/42
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-86057(P2012-86057)
(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公開番号】特開2013-217999(P2013-217999A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100074550
【弁理士】
【氏名又は名称】林 實
(72)【発明者】
【氏名】木村 克巳
(72)【発明者】
【氏名】中田 卓見
(72)【発明者】
【氏名】下平 努
【審査官】
奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−054206(JP,A)
【文献】
特開2004−279802(JP,A)
【文献】
特開2005−148466(JP,A)
【文献】
特開平06−148448(JP,A)
【文献】
特開2003−107308(JP,A)
【文献】
特開2013−190721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255−6/27
G02B 6/30− 6/34
G02B 6/36− 6/43
G11B 5/00− 5/024
G11B 5/31
G11B 5/56− 5/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路が上下面方向に開口されたスライダを支持してX軸方向のみに移動するX軸ステージと、前記スライダを支持してY軸方向のみに移動するY軸ステージと、前記X軸ステージ及びY軸ステージに支持されたスライダの下側に半導体レーザ素子を離間して把持するレーザ把持治具と、前記スライダの上側に位置して所定フレームレートによる複数フレーム画像の撮影を行う観察カメラと、前記X軸ステージ及びY軸ステージによるスライダのXY軸方向移動制御及び前記観察カメラによる撮影を制御する制御手段とを備え、
半導体レーザ素子とスライダとをXY軸方向に移動させながらスライダの上側から所定フレームレートによる複数フレーム画像の撮影を行い、前記撮影したフレーム画像に基づいて半導体レーザ素子と光導波路との位置決めを行う光学部品の高精度調芯方法であって、
前記制御手段が、
前記XY軸ステージの移動によってスライダをXY軸方向に移動しながらスライダの上側を観察カメラによって撮影し、所定フレーム毎に撮影した複数のフレーム画像を取得する第1工程と、
前記第1工程によって取得した複数のフレーム画像から、光画像の周囲長をL、面積をSとしたとき、「L2/4πS」の計算式によって光画像の円形度を算出し、前記円形度が所定の閾値以下且つ最も照度が大きい基準フレーム画像を抽出する第2工程と、
前記第2工程によって選択した光画像のXY座標に基づいてレーザ光の光軸と推定される目標座標を算出する第3工程と、
前記第3工程によって算出した目標座標にスライダを位置付ける第4工程とを行うことを特徴とする光学部品の高精度調芯方法。
【請求項2】
前記高精度調芯方法の第2工程の光画像の円形度の抽出において、前記光導波路の径に基づいた光導波路面積に対して所定範囲内の面積か否かの条件を確認することを特徴とする請求項1記載の光学部品の高精度調芯方法。
【請求項3】
半導体レーザ素子から発するレーザ光を光導波路が上下方向に開口されたスライダ一下面に照射し、前記半導体レーザ素子とスライダとをXY軸方向に移動させながらスライダ上側から所定フレームレートによる複数フレーム画像の撮影を行い、前記撮影したフレーム画像に基づいて半導体レーザ素子と光導波路との位置決めを行う光学部品の高精度調芯装置であって、
前記スライダを支持してX軸方向のみに移動するX軸ステージと、前記スライダを支持してY軸方向のみに移動するY軸ステージと、前記X軸ステージ及びY軸ステージに支持されたスライダの下側に半導体レーザ素子を離間して把持するレーザ把持治具と、前記スライダの上側に位置して所定フレームレートによる複数フレーム画像の撮影を行う観察カメラと、前記X軸ステージ及びY軸ステージによるスライダのXY軸方向移動制御及び前記観察カメラによる撮影を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、
前記XY軸ステージの移動によってスライダをXY軸方向に移動しながらスライダの上側を観察カメラによって撮影し、所定フレーム毎に撮影した複数のフレーム画像を取得する第1工程と、
前記第1工程によって取得した複数のフレーム画像から、光画像の周囲長をL、面積をSとしたとき、「L2/4πS」の計算式によって光画像の円形度を算出し、前記円形度が所定の閾値以下且つ最も照度が大きい基準フレーム画像を抽出する第2工程と、
前記第2工程によって選択した光画像のXY座標に基づいてレーザ光の光軸と推定される目標座標を算出する第3工程と、
前記第3工程によって算出した目標座標にスライダを位置付ける第4工程とを行うことを特徴とする光学部品の高精度調芯装置。
【請求項4】
前記高精度調芯装置の第2工程の光画像の円形度の抽出において、前記光導波路の径に基づいた光導波路面積に対して所定範囲内の面積か否かの条件を確認することを特徴とする請求項3記載の光学部品の高精度調芯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ素子の光軸を部品に設けられた光導波路に高精度に位置付けることができる光学部品の高精度調芯方法及び高精度調芯装置に関し、特に磁気ヘッドのスライダに半導体レーザ素子を装着する磁気ヘッド製造装置における半導体レーザ素子の光軸をスライダに設けられた光導波路に高精度に位置付けることができる光学部品の高精度調芯方法及び高精度調芯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に磁気ディスク装置は、記憶容量の増大に伴う高記録密度化が望まれており、近年、この記録密度を飛躍的に向上させる技術の一つとして、磁気ディスク上の数10nm×数10nm程度の微小領域に半導体レーザ光を照射して200℃以上の熱と磁場を加える熱アシスト磁気記録技術が提案されている。この熱アシスト磁気記録技術を採用した磁気ディスク装置は、磁気ヘッド素子を搭載するスライダの所望位置にレーザ光を透過させる光導波路を開口し、この光導波路に半導体レーザ素子を高精度に位置付けしてUV(紫外線)硬化樹脂等によって接着固定するように構成されている。
【0003】
この熱アシスト磁気記録技術を採用した磁気ディスク装置は、スライダの所望位置に開口された光導波路に半導体レーザ素子を高精度に位置付けする必要があるが、例えば、スライダのサイズが幅0.7mm×奥行き0.85mm×高さ0.23mmの微小部品であり、半導体レーザ素子サイズが幅0.2mm×奥行き0.1mm×高さ0.5mm且つ発光点が1μm径であり、スライダに開口された光導波路が1μm径のため、高精度の位置決めが困難であった。
【0004】
このスライダの所望位置に開口された光導波路に半導体レーザ素子を高精度に位置付けする従来技術は、サブマウントに取り付けられた半導体レーザ素子に対してスライダをXY方向に移動しながら前記スライダの光導波路を通過した光をNFP(near field pattern:近視野像観察)カメラで撮影し、この撮影したカメラ画像の光量が最大となるスライダ位置のXY座標を画像処理によって検出し、この最大光量のスライダ位置において半導体レーザ素子を接着固定するものであって、具体的に説明すると、
図5に示す如く、磁気ディスク装置用のスライダ26に開口された光導波路30とサブマウント40により支持されレーザ光90を発する半導体レーザ素子01の光軸を高精度に位置付けるためのものであって、前記レーザ光90を発する半導体レーザ素子01を固定した状態でスライダ26をXY軸方向に移動させながら図示しないNFPカメラがスライダ26の底面側から撮影を行い、撮影光量が最大となるスライダ26のXY軸座標に基づいてスライダ26の位置決めを行い、この後にスライダ26の光導波路30に半導体レーザ素子01を降下させ、スライダ26とサブマウント40間のUV硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させることによって調芯及び固着を行うものである。
【0005】
従来技術による調芯技術は、撮影を行うNFPカメラのフレームレート(1秒間に撮影可能なフレーム数)に限界があり、高精度の位置決めを行うためには前述した半導体レーザ素子に対してスライダをXY方向に移動する際の移動速度を高速に行うことができず、このため調芯時間が長時間になり、磁気ヘッド製造時間が冗長となる課題があった。
【0006】
なお、一般の光軸の調芯を行う技術が記載された文献としては、下記の特許文献が挙げられ、下記の特許文献1には、複数の光学部品の一方を順次光量測定点に位置決めして一方の光学部品から他方の光学部品へ入射する光の量を測定し、最大光量となる最適位置を求める光部品の調芯方法において、最初の光量測定点における光量が所定の光量値未満の場合は、以降の光量測定点と最初の光量測定点との距離を大きな所定距離に設定し、最初の光量測定点における光量が前記所定の光量値以上の場合は、以降の光量測定点と最初の光量測定点との距離を小さな所定距離に設定して調芯処理を行う調芯技術が記載され、下記の特許文献2には、第1の光学部品から出射されて第2の光学部品に導入された光を光検出器で検出し、前記光検出器の出力を増幅手段で増幅し、前記増幅手段の出力に基づいて前記第1の光学部品と前記第2の光学部品との相対的な位置を調整する光学部品の調芯方法において、前記第1の光学部品と前記第2の光学部品とを相対的に、1つの軸に関して1次元的に繰り返して往復走査させつつ、前記往復走査に従って得られる前記増幅手段の出力に基づいて前記1つの軸に関する1次元的な光強度分布を得る光強度分布取得段階と、前記光強度分布取得段階で得られた1次元的な光強度分布に基づいて前記第1の光学部品と前記第2の光学部品との相対的な位置が調芯位置となるように、当前記相対的な位置を調整する位置調整段階とを行う調芯技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−345925号公報
【特許文献2】特開2008−186035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の最大照度のXY座標にスライダを位置付ける調芯技術は、
図6(a)に示した最大照度の座標Aの撮像フレームf0中の円形状の導波光20の破線で示す最大照度のXY座標(Xa,Ya)に基づいてスライダの位置決めを行うものであるが、近年の磁気ディスク装置のスライダは半透明又は透過性の材質を採用することが検討されており、このスライダの材質変化によって、
図6(b)に示す如く、導波光20による円形の導波光20とは別にスライダを透過及び内部反射した迷光50が発生し、この迷光50の照度が導波光20の照度より高い場合、迷光50の破線で示す最大照度のXY座標(Xb,Yb)に基づいてスライダが位置決めされる可能性があるという課題があった。
【0009】
また、前記の特許文献に記載された技術は、光ファアイバーに対する半導体レーザ素子の位置決めを行うものであって、本発明の対象とする光導波路が開口された磁気ヘッドスライダに半導体レーザ素子を取り付ける際に、サブマウントに取り付けられた半導体レーザ素子に対してスライダをXY方向に移動しながら前記スライダの光導波路を通過した光をNFPカメラで撮影し、この撮影したカメラ画像の光量が最大に基づいた調芯技術に適用することが困難であり、調芯時間が長時間になり、磁気ヘッド製造時間が冗長となるという課題があった。さらに、従来技術による調芯方法は、光学系装置固有ノイズやカメラ素子固有の出力のバラツキや迷光成分による各種ノイズが含まれ、正確なXY座標の抽出が困難であるという課題もあった。
【0010】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、迷光が発生する磁気ヘッドスライダであっても光導波路と半導体レーザ素子とを高精度且つ高速に調芯することができる光学部品の高精度調芯方法及び高精度調芯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために請求項1記載の発明は、光導波路が上下面方向に開口されたスライダを支持してX軸方向のみに移動するX軸ステージと、前記スライダを支持してY軸方向のみに移動するY軸ステージと、前記X軸ステージ及びY軸ステージに支持されたスライダの下側に半導体レーザ素子を離間して把持するレーザ把持治具と、前記スライダの上側に位置して所定フレームレートによる複数フレーム画像の撮影を行う観察カメラと、前記X軸ステージ及びY軸ステージによるスライダのXY軸方向移動制御及び前記観察カメラによる撮影を制御する制御手段とを備え、半導体レーザ素子とスライダとをXY軸方向に移動させながらスライダの上側から所定フレームレートによる複数フレーム画像の撮影を行い、前記撮影したフレーム画像に基づいて半導体レーザ素子と光導波路との位置決めを行う光学部品の高精度調芯方法であって、前記制御手段が、前記XY軸ステージの移動によってスライダをXY軸方向に移動しながらスライダの上側を観察カメラによって撮影し、所定フレーム毎に撮影した複数のフレーム画像を取得する第1工程と、前記第1工程によって取得した複数のフレーム画像から、光画像の周囲長をL、面積をSとしたとき、「
L2/4πS」の計算式によって光画像の円形度を算出し、前記円形度が所定の閾値以下且つ最も照度が大きい基準フレーム画像を抽出する第2工程と、前記第2工程によって選択した光画像のXY座標に基づいてレーザ光の光軸と推定される目標座標を算出する第3工程と、前記第3工程によって算出した目標座標にスライダを位置付ける第4工程とを行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記特徴
の高精度調芯方法の第2工程の光画像の円形度の抽出において、前記光導波路の径に基づいた光導波路面積に対して所定範囲内の面積か否かの条件を確認することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、半導体レーザ素子から発するレーザ光を光導波路が上下方向に開口されたスライダ一
下面に照射し、前記半導体レーザ素子とスライダとをXY軸方向に移動させながらスライダ上側から所定フレームレートによる複数フレーム画像の撮影を行い、前記撮影したフレーム画像に基づいて半導体レーザ素子と光導波路との位置決めを行う光学部品の高精度調芯装置であって、前記スライダを支持してX軸方向のみに移動するX軸ステージと、前記スライダを支持してY軸方向のみに移動するY軸ステージと、前記X軸ステージ及びY軸ステージに支持されたスライダの下側に半導体レーザ素子を離間して把持するレーザ把持治具と、前記スライダの上側に位置して所定フレームレートによる複数フレーム画像の撮影を行う観察カメラと、前記X軸ステージ及びY軸ステージによるスライダのXY軸方向移動制御及び前記観察カメラによる撮影を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記XY軸ステージの移動によってスライダをXY軸方向に移動しながらスライダの上側を観察カメラによって撮影し、所定フレーム毎に撮影した複数のフレーム画像を取得する第1工程と、前記第1工程によって取得した複数のフレーム画像から、光画像の周囲長をL、面積をSとしたとき、「
L2/4πS」の計算式によって光画像の円形度を算出し、前記円形度が所定の閾値以下且つ最も照度が大きい基準フレーム画像を抽出する第2工程と、前記第2工程によって選択した光画像のXY座標に基づいてレーザ光の光軸と推定される目標座標を算出する第3工程と、前記第3工程によって算出した目標座標にスライダを位置付ける第4工程とを行うことを特徴とする。
【0014】
請求項
4記載の発明は、前記特徴
の高精度調芯装置の第2工程の光画像の円形度の抽出において、前記光導波路の径に基づいた光導波路面積に対して所定範囲内の面積か否かの条件を確認することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による光学部品の高精度調芯方法及び高精度調芯装置は、複数のフレーム画像内から円形度を確認した光画像を含む最も照度が大きい基準フレーム画像を抽出し、前記抽出したフレーム画像中に含まれる光画像に基づいて位置決めを行うことによって、迷光によるスライダの誤位置決めを防止し、磁気ヘッドスライダの光導波路と半導体レーザ素子光軸とを高精度且つ高速に調芯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による光学部品の高精度調芯装置の構成を示す図。
【
図2】本実施形態による高精度調芯装置の調芯動作の全体概要を示すフロー図。
【
図3】本実施形態による高精度調芯装置の調芯動作の詳細を示す図。
【
図4】本実施形態による円形度確認処理を説明するための図。
【
図5】本発明の対象となるスライダ及び半導体レーザ素子を示す図。
【
図6】従来技術による迷光による課題を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による光学部品の高精度調芯方法及び高精度調芯装置の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
[構成説明]
本実施形態による高精度調芯装置は、
図1に示す如く、図中の右側に描いた半導体レーザ素子01及びスライダ26を搭載し相対的にXYZ軸方向移動し、半導体レーザ素子01から照射されてスライダ26の光導波路30(
図5参照)を通過したレーザ光をNFP(near field pattern:近視野像観察)カメラ23によって撮影する機構系ユニットと、図中の左側に描いた前記機構系ユニットの各XYZ軸方向の移動及び撮影を制御する制御コンピュータ18と、前記制御コンピュータ18からの制御信号によって前記機構系ユニットの各部位を駆動するための駆動回路系ユニットとから構成される。
【0018】
前記機構系ユニットは、除振台07上に搭載されてスライダ26をY軸方向のみに移動するY軸ステージ05と、前記Y軸ステージ05によって支持されてスライダ26をX軸方向のみに移動するX軸ステージ04と、前記X軸ステージ04及びY軸ステージ05によって支持され、半導体レーザ素子01を搭載したレーザ把持治具03と、除振台07上に搭載されてZ軸方向のみ移動するZ軸ステージ02と、スライダ26を搭載し、前記Z軸ステージ02上に搭載されたX軸ピエゾステージ27及びY軸ピエゾステージ28と、除振台07上に搭載されてZ軸方向のみに移動するZ軸ステージ25と、前記Z軸ステージ25によって支持されたNFP(near field pattern:近視野像観察)カメラ23及びNFP光学系24と、前記スライダ26の側面方向の画像を撮影するためのCCD(Charge Coupled Device)カメラ22とから構成される。
【0019】
前記駆動回路系ユニットは、前記NFPカメラ23及びNFP光学系24を制御するためのカメラコントローラ20と、前記XYZ軸ステージを駆動するためのモータドライバ21と、前記X軸ピエゾステージ27及びY軸ピエゾステージ28を駆動するための微細XY軸コントローラ08と、半導体レーザ素子01の発光を制御するファンクションジェネレータ12及びLDドライバ09とから構成される。なお、前記X軸ピエゾステージ27及びY軸ピエゾステージ28は、圧電性物質の結晶に電圧を加えることによって電圧に比例した歪みによる動作力が発生するピエゾ効果を利用したステージである。
【0020】
前記制御コンピュータ18は、ディスプレイ19を含み、一般のCPU(Central Processing Unit)、メモリ、磁気ディスク装置等の記憶手段、キーボード等の入出力機器、各種インターフェース機器、基本OS(オペレーティングシステム)及び本実施形態による調芯を制御するソフトウェアを含むものであって、本実施形態においてはソフトウェアによって、NFPカメラ23及びCCDカメラ22とリンクするためのカメラリンク17と、前記ピエゾXY軸ピエゾステージ27及び28を駆動するためのモータドライバ21を制御するモータコントローラ16と、アナログデータとディジタルデータ間の変換を行うAD変換器15及びDA変換器14の各機能を実現するように構成されている。
【0021】
[動作説明]
このように構成された高精度調芯装置の全体動作は、
図1及び
図2に示す如く、半導体レーザ素子01をレーザ把持治具03にセットする工程S21と、スライダ26を前記X軸ピエゾステージ27及びY軸ピエゾステージ28にセットする工程S23と、半導体レーザ素子01の発光によるフォーカス制御によって合焦点の位置調整を行う工程S24と、前記半導体レーザ素子01とスライダ26の上面間にギャップを設けた状態でX軸ステージ04及びY軸ステージ05を第1の所定速度で移動させながら半導体レーザ素子01からの光導波路30を通過したレーザ光をNFPカメラ23によって受光し、前記受光したレーザ光による光画像が円形であることを確認する円形度確認処理を満足し且つ光量(照度)が最も大きいフレームのXY座標にスライダ26をX軸ステージ04及びY軸ステージ05によって粗調芯位置付けを行う工程S25と、スライダ26を半導体レーザ素子01に接近させてギャツプが最小になるように降下させる工程S26と、前記X軸ピエゾステージ27及びY軸ピエゾステージ28を第2の所定速度で移動させながら半導体レーザ素子01からの光導波路30を通過したレーザ光をNFPカメラ23によって受光し、前記工程26によって選択したXY座標に基づいて後述する調芯計算及び円形度確認処理を用いてスライダ26をX軸ピエゾステージ27及びY軸ピエゾステージ28によって微調芯位置付けを行う工程S27と、紫外線の照射によってレーザ素子01とスライダ26とを接着するUV接着を行う工程S28と、半導体レーザ素子01を固着したスライダ26回収する工程S29とを行うことによって、半導体レーザ素子01をスライダ26の光導波路30に高精度に調芯した状態で両者を固着する。本実施形態においては、前記工程S25及び27による調芯位置決め動作の際、X軸ピエゾステージ27及びY軸ピエゾステージ28を比較的高速な第2の所定速度でスキャンすることによっても高精度な位置決めを行うことができ、この高精度調芯の詳細を
図1及び
図3を参照して説明する。
【0022】
図3は本実施形態の特徴である調芯位置決め動作の各工程を左側に描き、スライダ上に照射されるレーザ光の導波位置を右側に描いたものであって、前記XY軸ステージの移動によってスライダ26をXY軸方向に移動しながらスライダ26の底面をスキャンし、NFPカメラ23による所定フレーム(例えば、100枚/秒)毎に撮影した複数のフレーム画像(スライダを粗位置決めした粗位置決め領域全体の写真画像)を取得する工程S401と、前記工程S401によって抽出した多数のフレーム画像内から、フレーム画像内の光画像の形状が円形であることを確認する円形度確認処理を満足し且つ最も照度が大きい座標A(基準座標)のフレーム画像f0を抽出する工程S402と、この工程S402により抽出したフレームのXY座標軸を基準としてXY方向に±3フレーム離れたXY周辺フレーム画像を抽出し、該抽出したXY周辺フレーム画像の円形度確認処理を満足し且つ最大光量の光画像のXY座標を抽出する工程S403と、この工程S403により抽出した7フレーム画像のXY軸毎に二次近似演算による多項式曲線フィッティングを行うことによってレーザ光軸位置と推定される座標Bを算出する微細調芯の工程S404と、前記工程S404によって算出した座標Bへスライダを移動させる工程S405とを実行することによって、迷光による誤位置付けを防止した高精度調芯を行うことができる。
【0023】
前記工程S402及び403における円形度確認処理は、フレーム中から最大照度の光画像(本実施形態では迷光50による歪んだ光画像)を抽出する第1工程と、同フレーム中から前記最大照度の光画像に続く照度の光画像(本実施形態では導波光20による円形の光画像)を抽出する第2工程と、前記第1及び第2工程によって抽出した光画像の円形度を算出する第3工程と、この第3工程によって算出した2つの円形度から後述の所定閾値以下であって円形度が値「1」に相対的に近い光画像(本実施形態では導波光20による円形の光画像)を選択する第4工程とを実行することによって行われ、前記円形度は、光画像の周囲長をL、面積をSとしたとき、「円形度=L
2/4πS」の計算式によって算出され、円形度が「1」に近いほどに真円に近いことを表すことができ、前記した閾値は、迷光がスライダを透過又は内部反射した複数光の合成のため円形状にはならず、これに対して導波光は円筒状の導波路を垂直に通過して円形状になることから、「1.05」〜「1.2」程度の値が好ましい。なお、前記円形状と判断できる光画像が存在しないと判定したときは、調芯失敗、すなわち導波路が無かったものとしてエラーを返すように動作する。
【0024】
この円形度確認処理は、撮像フレームの中から最大輝度フレームを抽出する際の判断材料となる輝度値を読みとろうとする際に、その光の形状が円形状であることを判断した上で輝度値として読取り、この円形状として判断された輝度値の中から最大輝度フレームを抽出することによって、数百枚の撮像フレームにその都度円形度を判定してから輝度値を読むため、コンピュータによるソフト処理上も負担が少なく、調芯時間に影響せず、高速に調芯処理を行うことができる。
【0025】
なお、本例では最大照度の光画像と、次照度の光画像を抽出する例を説明したが、この円形度確認処理は、この例に限られるものではなく、フレーム中に含まれる複数の光画像を抽出し、この複数の光画像から円形度が所定の閾値(例えば、値「1.1」)以下且つ円形度が値「1」に相対的に最も近い光画像を選択するように構成しても良く、光画像の面積を円形確認判定のファクター(例えば、導波路20の径rを基づいた面積πr
2の面積に対して0.95倍〜1.05倍の範囲内面積の光画像を選択する条件)を加えても良い。
【0026】
つぎに、前記工程S404による微細調芯原理を説明する。従来技術における調芯技術においては、例えば、座標Aにおけるスライダを移動させるXY走査平面領域を10μm×10μm、X軸方向の振動速度を2Hz振動、Y軸方向の送り速度を2μm/秒、NFPカメラのフレームレートを100fps、レーザ光及び光導波路径を1μmの走査条件としたときの従来技術の調芯時間が5秒を要し、この位置精度を2倍向上しようとした場合、調芯精度がX軸で0.4μm、Y軸で1μmと低下するため、各走査軸の走査速度が低下し、10秒を要するものであった。
【0027】
これに対して本実施形態による調芯方法は、前記走査条件且つ調芯時間5秒としたとき、前記工程S402により抽出した最大照度のフレーム画像f0においてはフレームレート制限(1秒間に撮影可能なフレーム数の制限)のために本来の最大照度位置からずれたフレーム画像が選択される可能性があるものであったが、最大照度のフレーム画像f0を中心としたXY方向の所定数範囲のXY周辺フレーム画像を抽出し、前記円形度確認処理を施した最大照度のフレーム画像及び所定数範囲のフレーム画像を含む複数フレーム画像中の光画像XY座標の二次近似演算による多項式曲線フィッティングを行い、XY座標における最高照度値のピーク座標を算出し、このピーク座標を調芯目標(レーザ光の光軸)の座標Bとして適用することによって、従来技術に比べて高速且つ高精度の調芯を行うことができる。
【0028】
なお、前述の実施形態においては、円形度を確認した最も照度が大きい座標A(基準座標)を基準としてXY方向に±3フレーム離れたXY周辺フレーム画像を抽出する例を説明したが、本発明は基準座標を中心としたXY方向の任意数のフレーム画像を抽出してXY軸毎に二次近似演算による多項式曲線フィッティングを行うものに限られるものではなく、円形度を確認した最大照度座標を基準とした所定距離や所定領域のフレーム画像を抽出対象のXY周辺フレーム画像として選択しても良く、例えば、最大輝度座標を基準とする±2umの領域内の全ての撮像フレームを対象として多項式曲線フィッティングを行うように構成しても良い。
【0029】
また、本実施形態による調芯方法は、従来技術においては装置固有ノイズやカメラ素子固有の出力のバラツキや迷光成分による各種ノイズが含まれるXY座標の抽出であったが、前述の最大照度のフレーム画像及び所定数範囲のフレーム画像を含む複数フレーム画像の二次近似演算を行うことによって最小二乗法による多項式曲線フィッティングを適用し、前述のノイズ成分を除去することができ、より正確な高精度な調芯を行うことができる。
【0030】
このように本実施形態による光学部品の高精度調芯方法及び高精度調芯装置は、光導波路が開口されたスライダに半導体レーザ素子からのレーザ光を調芯する際、スライダの所定領域とレーザ光を発する半導体レーザ素子とを相対的にXY軸移動させながら前記スライダの光導波路を通過するレーザ光を含む複数のフレーム画像を撮影し、前記撮影した複数のフレーム画像の内の円形度を確認した最大照度のフレーム画像中に含まれる光画像を基準としてスライダを位置決めすることによって、迷光によるスライダの誤位置決めを防止し、磁気ヘッドスライダの光導波路と半導体レーザ素子光軸とを高精度且つ高速に調芯することができる。
【符号の説明】
【0031】
01 半導体レーザ素子、02 Z軸ステージ、03 レーザ把持治具、
04 X軸ステージ、05 Y軸ステージ、07 除振台、
08 微細XY軸コントローラ、12 ファンクションジェネレータ、
14 DA変換器、15 AD変換器、16 モータコントローラ、
17 カメラリンク、18 制御コンピュータ、19 ディスプレイ、
20 カメラコントローラ、21 モータドライバ、22 CCDカメラ、
23 NFPカメラ、24 NFP光学系、25 Z軸ステージ、
26 スライダ、27 Y軸ピエゾステージ、28 X軸ピエゾステージ
30 光導波路