(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、施設(テナントビル、病院、ホテル、商業施設、学校など)における設備機器(空調、防災、防犯、照明、エレベータなど)の運転状況、温度および流量などの計測データおよび制御出力値、入退室履歴、ならびに警報履歴などは、施設管理装置で一括管理している。また、施設管理装置は、上記情報の管理だけでなく、「火災発生時に空調機を停止する」といったイベントプログラムを作成し、イベント発生時の設備機器の運転状況および制御状況なども監視および管理している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
設備機器の点検を行う際は、施設管理装置から設備機器へ擬似的にイベント発生の発令を行い、設備機器がイベントプログラムに従った運転状況および制御状況に移行することを確認している。しかしながら、確認点検を行う際には施設内に居住者がいるため、「火災発生時に空調機を停止する」イベントプログラムだったとしても実際に空調機を停止することは難しい。そこで、オペレータが、イベントプログラムを実施する制御有効の状態からイベントプログラムを実施しない制御無効の状態に切り替えて、模擬的な火災発生時に空調機が停止しないようにした上で、確認点検作業を実施するようにしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、イベントプログラムを制御無効な状態に切り替えた場合、確認点検作業の終了時に制御有効の状態に戻し忘れてしまうという課題があった。
【0006】
なお、戻し忘れの対策として、制御無効に切り替わっている場合に施設管理装置の表示画面にインジケータを点灯させてオペレータに報知することが考えられるが、制御無効が一時的なものなのか、恒久的なものなのか施設管理装置では判断ができないため、正しく報知することができない。同様の理由により、施設管理装置が自動的に制御無効を制御有効に戻すこともできない。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、制御命令を制御有効から一時的に制御無効に切り替え可能、かつ、一時的に無効に切り替えた場合に人為的な戻し忘れを防止可能な施設管理装置および試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1に係る施設管理装置は、所定の設備機器の動作を制御する制御命令を、有効にするか一時的に無効にするか切り替える制御有効/無効切替手段と、制御有効/無効切替手段が有効に切り替えた制御命令を実施し、一時的に無効に切り替えた制御命令を実施しない機器制御手段と、制御有効/無効手段が一時的に無効に切り替えた制御命令が存在することを表すインジケータを表示するインジケータ表示手段と
、インジケータ表示手段が表示するインジケータに対する操作があった場合、制御有効/無効切替手段が一時的に無効に切り替えた制御命令の一覧を表示する一覧表示手段とを備えるものである。
【0009】
この発明の請求項2に係る施設管理装置は、所定の条件が成立したイベント発生時に所定の設備機器の動作を制御する制御命令を作成する制御命令作成手段を備え、制御有効/無効切替手段は、イベント発生時を模擬した試験を行う場合に制御命令を有効にするか一時的に無効にするか切り替えるものである。
【0011】
この発明の請求項
3に係る試験方法は、所定の条件が成立したイベント発生時に所定の設備機器の動作を制御する制御命令を作成する制御命令作成ステップと、イベント発生時を模擬した試験を行う前に、制御命令作成ステップで作成した制御命令を有効にするか一時的に無効にするか切り替える制御有効/無効切替ステップと、制御有効/無効切替ステップで一時的に無効に切り替えた制御命令が存在することを表すインジケータを表示するインジケータ表示ステップと、イベント発生時を模擬した試験を行い、制御有効/無効切替ステップで有効に切り替えた制御命令を実施し、一時的に無効に切り替えた制御命令を実施しない機器制御ステップと、イベント発生時を模擬した試験の終了後に、制御有効/無効切替ステップで一時的に無効に切り替えた制御命令を有効に戻す制御復帰切替ステップと、制御復帰切替ステップですべての制御命令が有効に切り替わった場合、インジケータ点灯ステップで点灯したインジケータを消灯するインジケータ消灯ステップと
、インジケータ点灯ステップで点灯中のインジケータに対する操作があった場合、制御有効/無効切替ステップで一時的に無効に切り替えた制御命令の一覧を表示する一覧表示ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の請求項1によれば、一時的に無効に切り替えた制御命令が存在する間、インジケータを点灯するようにしたので、一時的に無効の制御命令が存在することをオペレータに報知して人為的な戻し忘れを防止することができる施設管理装置を提供することができる。
また、インジケータ操作により、一時的に無効に切り替えた制御命令の一覧を表示するようにしたので、オペレータは操作に手間をかけずに制御命令の切替状況を把握することができ、戻し忘れをよりいっそう防止することができる。
【0013】
この発明の請求項2によれば、イベント発生時を模擬した試験を行う場合に、制御命令の有効と一時的な無効を切り替えることができ、かつ、試験終了後の戻し忘れも防止することができる。
【0015】
この発明の請求項
3によれば、イベント発生時を模擬した試験を行う場合に、一時的に無効に切り替えた制御命令が存在する間、インジケータを点灯するようにしたので、試験終了後に、一時的に無効の制御命令が存在することをオペレータに報知して人為的な戻し忘れを防止する試験方法を提供することができる。
また、インジケータ操作により、一時的に無効に切り替えた制御命令の一覧を表示するようにしたので、オペレータは操作に手間をかけずに制御命令の切替状況を把握することができ、戻し忘れをよりいっそう防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る施設管理システムの構成を示すブロック図である。この施設管理システムは、施設に設置されている空調設備、防犯設備、照明設備、防災設備などの各種の設備機器20と、これら各種の設備機器20を監視および制御する施設管理装置10とから構成される。
【0018】
設備機器20は、コントローラ21と、フィールド機器(不図示)のI/O(入出力端子)22とを有している。例えば、設備機器20が空調設備の場合、この空調設備20aは送風機のインバータ、冷温水弁、ダンパ、フィルタ、給気温度センサなどのフィールド機器を有する。これらのフィールド機器に対する制御命令(発停、設定値など)は施設管理装置10からコントローラ21を介して、I/O22へ入力される。また、フィールド機器からのデータ(運転状態、警報状態、現在出力値など)はI/O22からコントローラ21を介して、施設管理装置10に入力される。
【0019】
施設管理装置10は、制御命令作成手段11、制御有効/無効切替手段12、コメント生成表示手段13、機器制御手段14、インジケータ表示手段15、および一覧表示手段16を備えている。この施設管理装置10は、ハードウェアである設備機器20のI/O22と、ソフトウエア上のデータ管理単位であるポイント(管理点)とを対応付けて、設備機器20の監視および制御を行う。また、この施設管理装置10は、表示装置(不図示)、およびオペレータの操作を受け付ける入力装置(不図示)を備えている。
【0020】
制御命令作成手段11は、オペレータの指示に従って、設備機器20の動作を制御する制御命令を作成する。例えば「火災発生時に空調設備20aを停止する」制御命令は、火災発生の警報を出力するI/O22に対応したポイントがOFF(正常)からON(火災発生)に変化した場合(イベント発生)、空調設備20aの発停のI/O22に対応するポイントをON(発動)からOFF(停止)にするイベントプログラムである。
【0021】
制御有効/無効切替手段12は、オペレータの指示に従って、制御命令作成手段11が作成した制御命令を有効にするか、または一時的に無効にするか切り替える。実際の火災発生時には上述した制御命令の通りに空調設備20aを停止するが、防災設備等の確認点検のために火災発生を模擬した火災試験を行う際には、施設内に居住者がいたりテナントが入っていたりするため、空調設備20aを停止することは好ましくない。そこで、オペレータは、制御命令自体は施設管理装置10に登録したまま、その制御命令を一時的に無効にして、空調設備20aに対する制御命令を実施しない(即ち、空調設備20aが停止しない)ようにする。そして、火災試験終了後に有効に切り替える。
【0022】
また、例えばスケジュールに従って設備機器20の動作を制御する制御命令が施設管理装置10に登録されている場合、オペレータは、この設備機器20を保守点検するために制御命令を一時的に無効に切り替え、保守点検終了後に有効に切り替える。
【0023】
コメント生成表示手段13は、一時的に無効に切り替えた制御命令に対してオペレータからコメント入力を受け付けて保持する。また、コメント生成表示手段13は必要に応じて、表示装置の画面にそのコメントを表示する。なお、予め複数のコメントを用意しておき、オペレータに選択させるようにしてもよい。コメントは「点検中のため一時停止中」、「火災試験のため一時停止中」といった、制御命令を一時的に無効に切り替えた理由を分かり易く表現したものが望ましい。
【0024】
機器制御手段14は、制御命令作成手段11が作成した制御命令のうち、制御有効/無効切替手段12が有効に切り替えた制御命令を実施して、対象となる設備機器20の動作を制御する。例えば「火災発生時に設備機器20を停止する」制御命令が有効の場合、機器制御手段14は、火災発生の警報を出力するI/O22に対応するポイントがOFFからONに変化すると(イベント発生)、空調設備20aのコントローラ21に停止命令を出す。この停止命令を受けたコントローラ21がフィールド機器を停止する。
一方、火災試験を行うためにこの制御命令が一時的に無効に切り替えられている場合、機器制御手段14は、イベントが発生しても空調設備20aに停止命令を出さない。
【0025】
インジケータ表示手段15は、一時的に無効に切り替えた制御命令が存在する場合に、表示装置の画面にインジケータを表示して、一時的に無効になっている制御命令があることをオペレータに知らせる。制御命令を一時的に無効に切り替えた理由が消滅したときに、オペレータが一時的な無効から有効に戻し忘れることを防止するために、どの画面にもインジケータを表示することが望ましい。
【0026】
一覧表示手段16は、インジケータ表示手段15が表示したインジケータに対してオペレータの操作があった場合に、一時的に無効に切り替えた制御命令の一覧を表示装置の画面に表示して、オペレータに視認させる。
【0027】
次に、
図2に示すフローチャートを用いて、施設管理装置10の動作を説明する。
前提として、制御命令作成手段11により「火災発生時に空調設備20aを停止する」制御命令が作成され(制御命令作成ステップ)、制御有効/無効切替手段12によりこの制御命令が有効に切り替えられている。
【0028】
火災試験を実施する際、施設内に居住者等がいるため、空調設備20aは停止しない火災試験を計画する。
まずステップST1(制御有効/無効切替ステップ)において、オペレータが火災試験の準備として、停止させたくない空調設備20aが登録されている制御命令の設定画面を開き、その制御命令を一時的に無効に切り替える。なお、この施設管理装置10では、制御命令の一時的な無効状態を保守中として取り扱うこととする。
【0029】
図3に、「火災発生時に空調設備20aを停止する」制御命令の設定画面の一例を示す。この画面上には、制御命令の有効/一時的な無効(保守)を切り替える保守切替画面33を呼び出す保守切替アイコン30が表示されている。保守切替アイコン30に隣接して、一時的な無効(保守)に切り替えられた制御命令の有無を示すインジケータ31が表示されている。また、インジケータ31に隣接して、一時的な無効(保守)に切り替えられた制御命令に対するコメントを表示するコメント表示欄32が表示されている。
【0030】
オペレータの保守切替アイコン30に対する操作を受け付けると、制御有効/無効切替手段12が保守切替画面33を表示する。保守切替画面33には、制御命令を有効、または一時的に無効(保守)に切り替える選択肢と、コメントを入力する入力欄とが表示されている。制御有効/無効切替手段12は、オペレータの「一時的に無効(保守)」の選択操作を受け付けて、「火災発生時に空調設備20aを停止する」制御命令を一時的に無効(保守)に切り替える。また、コメント生成表示手段13は、オペレータの「火災試験のため一時停止中」のコメント入力を受け付けて、このコメントを制御命令に対応付けて保持すると共に、コメント表示欄32に表示する。
【0031】
「火災発生時に空調設備20aを停止する」制御命令が一時的に無効(保守)に切り替わったので、ステップST2(インジケータ点灯ステップ)においてインジケータ表示手段15が設定画面のインジケータ31を点灯する。これにより、オペレータは、一時的に無効(保守)中の制御命令が存在することが分かる。
【0032】
ステップST3(機器制御ステップ)において、オペレータが模擬火災を発生させ、火災試験を実施する。機器制御手段14は、有効になっている制御命令を実施する一方、一時的に無効(保守)に切り替わっている「火災発生時に空調設備20aを停止する」制御命令は実施しない。よって、火災試験中に空調設備20aが停止することはない。
【0033】
ステップST4(制御復帰切替ステップ)において、火災試験の終了後、オペレータは一時的に無効(保守)に切り替わっている制御命令を有効に戻す。
例えば、画面上に表示されている点灯中のインジケータ31が選択操作されると、一覧表示手段16が一時的に無効(保守)な制御命令の一覧画面を表示する。
図4に、一時的に無効(保守)な制御命令の一覧画面の一例を示す。この画面上にも点灯中のインジケータ31が表示されている。
画面中央には、一時的に無効(保守)な制御命令をリスト化した保守中制御命令一覧40が表示されている。保守中制御命令一覧40は、制御命令の選択アイコン、ID、名称、警報、状態から構成されており、状態の欄にはコメント生成表示手段13の保持するコメントが表示されている。これにより、制御命令が一時的に無効になっている理由を、オペレータが理解しやすい。
【0034】
保守中制御命令一覧40の選択アイコンに対するオペレータの選択操作を受け付けると、制御有効/無効切替手段12が
図2に示す保守切替画面33を表示する。そして、制御有効/無効切替手段12は、オペレータの「有効」の選択操作を受け付けて、その制御命令を有効に戻す。これにより、オペレータは、インジケータ31を選択する操作を行うだけで、保守中制御命令一覧40を表示して切替状況、切替理由などを把握することができる。また、保守中制御命令一覧40の選択アイコンを選択する操作を行うだけで、保守切替画面33を表示して有効と一時的な無効(保守)とを切り替えることができる。
【0035】
全ての制御命令が有効に戻ると、ステップST5(インジケータ消灯ステップ)においてインジケータ表示手段15が画面上のインジケータ31を消灯する。これにより、火災試験終了後に制御命令を有効に戻し忘れた場合でも、インジケータ31が点灯しっぱなしになるので、オペレータが気付くことができる。
なお、
図4の保守中制御命令一覧40では「火災試験のため一時停止中」の制御命令だけでなく、「点検中のため一時停止中」の制御命令も存在しているので、インジケータ31は消灯しない。
【0036】
また、
図4の一覧画面では、保守中制御命令一覧40に加え、保守中のポイントをリスト化した保守中ポイント一覧41も同時に表示している。施設管理装置10において、ポイントには保守機能が備わっており、点検時に該当するポイントを「保守中」に設定しておくことで、ポイントの監視を一時的に停止する機能がある。一覧表示手段16がこの機能を利用して、「保守中」に設定されたポイントの情報を保守中ポイント一覧41に表示する。ただし、同時表示は必須ではなく、保守中制御命令一覧40と保守中ポイント一覧41とを別画面に分けてもよい。
【0037】
なお、火災試験以外の試験を行う場合にも、上記動作に準じて試験を行えばよい。また、イベント発生時の制御命令を一時的に無効(保守)にする例を説明したが、これに限定されるものではなく、点検時に制御命令を一時的に無効に切り替え、点検終了後に制御命令を有効に戻すなど、イベント発生時以外の用途でも切替可能である。
【0038】
以上より、実施の形態1によれば、施設管理装置10は、所定の設備機器20の動作を制御する制御命令を、有効にするか一時的に無効にするか切り替える制御有効/無効切替手段12と、制御有効/無効切替手段12が有効に切り替えた制御命令を実施し、一時的に無効に切り替えた制御命令を実施しない機器制御手段14と、制御有効/無効切替手段12が一時的に無効に切り替えた制御命令が存在することを表すインジケータ31を表示するインジケータ表示手段15とを備えるように構成した。このため、一時的に無効の制御命令が存在することをオペレータに報知して人為的な戻し忘れを防止することができる。
【0039】
また、実施の形態1によれば、施設管理装置10は、所定の条件が成立したイベント発生時に所定の設備機器20の動作を制御する制御命令を作成する制御命令作成手段11を供え、制御有効/無効切替手段12は、イベント発生時を模擬した試験を行う場合に制御命令を有効にするか一時的に無効にするか切り替えるように構成した。このため、火災発生などのイベント発生時を模擬した試験を行う場合に、制御命令の有効と一時的な無効を切り替えることができ、かつ、試験終了後の戻し忘れも防止することができる。
【0040】
また、実施の形態1によれば、施設管理装置10は、インジケータ表示手段15が表示するインジケータ31に対する操作があった場合、制御有効/無効切替手段12が一時的に無効に切り替えた制御命令の一覧を、保守中制御命令一覧40として表示する一覧表示手段16を備えるように構成した。このため、オペレータは操作に手間をかけずに制御命令の切替状況を把握することができ、戻し忘れをよりいっそう防止することができる。
【0041】
なお、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。