(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、現在は増粘多糖類及び水溶性糖類の造粒物がトロミ剤として主流になっている。しかし、一方で、新たに以下のような課題が認知されつつある;
1)分散性を向上させるために顆粒化することで嵩高くなり、運搬時や保存時に嵩張る、
2)通常、規定量の液状組成物に対して一袋使用するといった、使い切りの小袋に封入した形態で提供されるため、液状組成物の量が規定量よりも少ない場合若しくは規定量の倍数でない場合には、どれだけの量を加えて良いか分かりにくく、利便性に欠ける、また残った顆粒が吸湿する、
3)使用毎に計量する形態(大容量の密封保存容器で提供)をとった場合であっても、計量に手間がかかる、経時的に顆粒が吸湿する、計量の繰り返しによって衛生状態が低下する等の課題が生じる。
【0006】
上記課題を解決する手法として、増粘多糖類を錠剤化する方法が考えられる。
しかし、増粘多糖類はそれ自体が非常にダマになりやすいため水に分散しにくく、打錠により押し固めると、より一層分散させることが困難となる。
具体的には、「ダマ」は粉末の増粘多糖類を水中に添加した際に、当該粉末の集合体の表面部分のみが水和、溶解し、集合体内部まで水分が移行しない(内部が粉末状態で残存する)ことにより形成される。粉末状又は顆粒状の増粘多糖類を打錠により押し固めると、より一層内部への水の移行が困難となり、「ダマ」の発生を助長し、結果として増粘多糖類を分散させることが難しい。なお、特許文献1をはじめとする現在主流となっている顆粒品は、内部に水を浸入させやすくするために、適度に空隙を設けている。顆粒品であっても打錠してしまうと空隙がつぶれて分散しないものになる。そのため、錠剤として実用的な硬度を保ちつつ、増粘多糖類の分散性を維持した状態で錠剤化することは技術的に不可能であると考えられてきた。
かかる従来技術の中、本発明では、携帯性に優れ、計量性もよく、取扱いも容易で、衛生的にも優れ、しかも分散性の良い、増粘多糖類を含む錠剤型の増粘化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、増粘多糖類、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩を用いて、特定範囲の組成で錠剤化することにより、驚くべきことに、実用的な硬度を持ちながらも、手撹拌のような緩い撹拌でも水中で容易に崩壊し、短時間で粘度発現する錠剤を得られることを見出し、本発明を成すに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
項1.キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を15〜40質量%、崩壊用寒天を15〜40質量%、水溶性糖類を10〜70質量%及び金属塩を0.2〜10質量%含有し、硬度が15〜70Nである、錠剤型増粘化剤。
項2.金属塩が塩化カルシウム、塩化カリウム又はクエン酸ナトリウムからなる群から選択される一種以上である、項1に記載の錠剤型増粘化剤。
項3.さらに重曹を1〜10質量%及び有機酸を1〜10質量%含有する、項1又は2に記載の錠剤型増粘化剤。
項4.咀嚼・嚥下機能低下者用の増粘化剤である、項1〜3のいずれかに記載の錠剤型増粘化剤。
【0008】
本発明はまた、次に掲げる錠剤型の増粘化剤の製造方法にも関する;
項5.キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類と、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩からなる群から選択される少なくとも1種以上とを予め造粒し、得られた顆粒を用いて打錠により錠剤化することを特徴とする、項1〜4のいずれかに記載の錠剤型増粘化剤の製造方法。
項6.キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩を予め造粒し、得られた顆粒を用いて打錠により錠剤化する、項5に記載の錠剤型増粘化剤の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、実用的な硬度を持ちつつも水中での分散性に優れる、増粘多糖類を含有する錠剤型の増粘化剤を提供できる。本発明の錠剤型増粘化剤は、従来のトロミ剤に比較して携帯性、計量性、取り扱い性及び衛生的に優れるという利点も有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.増粘多糖類を含有する錠剤型増粘化剤
本発明の錠剤型増粘化剤は、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を15〜40質量%、崩壊用寒天を15〜40質量%、水溶性糖類を10〜70質量%及び金属塩を0.2〜10質量%含有し、硬度が15〜70Nである。
錠剤とは、有効成分又は有効成分に賦形剤等を加えたものを圧縮成形などの方法により一定の形に成形した固形製剤のことである。粉体や液体製剤に比べて携帯性に優れ、容易に一定量を取ることができるため、計量性や取り扱いに優れ、さらに衛生面にも優れるという特徴を有する。
【0012】
本発明の錠剤型増粘化剤の硬度は15〜70Nである。硬度が低いほど分散性は良好になるが、硬度が15N未満であると、軽く指で押しただけでも錠剤に割れ・欠けが生じてしまうため、輸送中、携帯時の保形性が担保できず、実用性に劣る。硬度が70Nを超えると、錠剤が水中で崩壊しにくく、分散性が極端に悪化する。好ましくは25〜60Nである。 本発明において、硬度は、テクスチャーアナライザーTA−XT plus(Stable Micro Systems社)により測定した値をいう。
【0013】
本発明の錠剤型増粘化剤は、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を15〜40質量%含有する。
キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類、特にキサンタンガムは、液状組成物にトロミを付与する増粘化剤として、粘度発現性に優れ、良好な食感を有することなどから、増粘化剤に好適に用いることができる多糖類であるが、一方で増粘多糖類の中でも、特にダマになりやすい性質を有する。しかし、本発明にかかる構成要件をとることで、手撹拌であっても水中で容易に分散し、ダマにならず迅速に対象液状組成物に粘度を付与することが可能となる。
【0014】
錠剤中におけるキサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類含量は15〜40質量%である。増粘多糖類の含量が15質量%未満では、液状組成物に粘度を付与する際に必要な錠剤数が多くなる、若しくは必要以上に錠剤を大型化しなければならない。
一方、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類含量が40質量%を越えると、錠剤表面のみが水和して錠剤が崩壊しない、崩壊しても増粘多糖類がダマになり分散性が悪化する等の問題が生じる。
好ましくは25〜35質量%である。
【0015】
本発明の錠剤型増粘化剤は、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を15〜40質量%含有していれば、本発明の効果を妨げない範囲において、他の増粘多糖類を併用することができる。
【0016】
本発明でいう崩壊用寒天とは、崩壊性に優れた寒天であり、特許第3845149号公報の記載に従って製造される寒天をいう。
具体的には、下記第1〜3のいずれかの製造方法で得られる寒天をいう;
第1)固形または粉末の寒天を加水して吸水膨潤させて軟質化させる工程と、この工程で吸水膨潤させた寒天を再度脱水乾燥させる工程を経て製造する方法;
第2)海藻から抽出、濾過工程を経て得られ、あるいは固形または粉末の寒天を加水し加熱溶解して得られた寒天ゾルを冷却して寒天ゾルを形成する工程と、この工程で得られた寒天ゲルを凍結乾燥した後粉砕する工程を経て製造する方法;
第3)海藻から抽出、濾過工程を経て得られ、あるいは固形または粉末の寒天を加水し加熱溶解して得られた寒天ゲルを微粒子化する工程と、この工程で微粒子化された寒天ゲルを凍結乾燥した後粉砕する工程を経て製造する方法;
本発明の錠剤型増粘化剤中における崩壊用寒天の含量は15〜40質量%である。15質量%未満では錠剤が水中で崩壊しにくく、分散性が悪化することが多い。40質量%を超えた場合は、ざらつきが生じ液状組成物(特に液状食品に使用した場合)の食感が悪化する傾向がある。好ましくは15〜30質量%である。
【0017】
本発明で用いる水溶性糖類としては、例えば、デキストリンのような澱粉分解物、乳糖、グルコース、果糖、砂糖、キシロース、トレハロースなどの糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、粉末還元水飴などの糖アルコール類、セロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖などのオリゴ糖類などが挙げられる。本発明では、溶解性、風味などの観点から、デキストリン、乳糖、及び糖アルコールからなる群から選択される一種以上が好ましい。錠剤中における水溶性糖類の含量は、10〜70質量%である。10質量%未満では十分な分散性が得られないことが多い。70質量%を超えると、錠剤中に処方可能な増粘多糖類含量が相対的に減少するため、結果として液状組成物に添加する錠剤数を増加させる、若しくは錠剤を大型化する必要性が出てくる。好ましくは15〜70質量%である。
【0018】
本発明で用いる金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、クエン酸ナトリウム(クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)などが挙げられる。特に、塩化カルシウム、塩化カリウム及びクエン酸ナトリウムからなる群から選択される一種以上を用いることが好ましい。
錠剤型増粘化剤中に金属塩を0.2〜10質量%含有することにより、増粘多糖類の分散性が大幅に向上する。0.2質量%未満の添加では増粘多糖類の分散性向上に対する影響は小さく、10質量%を超えると、最終食品に対する風味への影響が強く出るため好ましくない。好ましくは1〜8質量%である。金属塩は無水物でも、結晶水を持つものであっても、その混合物でも構わないが、結晶水を持つ場合は、無水物換算した質量で含量を計算する。
【0019】
本発明の錠剤型増粘化剤は、崩壊性を向上させるために、さらに重曹及び有機酸を含有することが好ましい。両者を併用することで、水中に投入時、重曹及び有機酸が相互作用して発泡するため、増粘多糖類を含有する錠剤の崩壊性をより一層向上させることが出来る。
重曹を1〜10質量%、有機酸を1〜10質量%含有することが好ましい。より好ましい含量は、重曹1〜5質量%、有機酸1〜5質量%である。重曹又は有機酸の含量が10質量%を超えると味に対する影響が大きく好ましくない。重曹は一般的に入手可能なものであればよく、炭酸水素ナトリウムを主体とするもので、酸と相互作用して発泡するものであれば、特に制限はない。また、重曹又は有機酸が1質量%未満であると発泡が不十分になる可能性がある。本発明の有機酸としては、飲食可能であり、常温で固体のものが好ましい。例えば、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルコン酸、グルクロン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0020】
本発明の錠剤型増粘化剤は、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩以外に、崩壊用寒天以外の崩壊剤、滑沢剤や食品素材など、その他の成分を含んでも構わない。
崩壊剤としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、α化デンプン、部分α化デンプン等のデンプン類、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
【0021】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、酒石酸カリウムナトリウム、軽質無水ケイ酸、カルナウバロウ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、硬化油等が挙げられる。滑沢効果が高い滑沢剤は、錠剤の崩壊性を悪化させる傾向にあるため、滑沢性と崩壊性のバランスに優れたステアリン酸カルシウム、タルク、硬化ナタネ油が好ましい。錠剤型増粘化剤中における滑沢剤の含量は好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。
食品素材としては、例えば、抹茶粉末、野菜粉末、青汁粉末、ココアパウダー、コーヒーパウダー、脱脂粉乳、果物粉末、コンソメエキス、ビーフエキス、チキンエキスなど、目的・用途に応じて様々な食品素材を添加することが出来る。例えば、抹茶粉末を加えて錠剤型増粘化剤とすることにより、トロミがあり、適度に濁った本格的なお茶が、容易に調製可能となる。
【0022】
本発明の錠剤型増粘化剤は、剤形に特に制限はないが、目安は5〜20mmφである。あまりに小さい錠剤であると、トロミを付けるのに大量の錠剤が必要となってしまい、携帯性や取り扱いに優れるという本発明の効果が薄れてしまう。一般的に錠剤が5mmφ以上では崩壊性が極端に低下する傾向があるが、本発明では5〜20mmφの錠剤、特には10mmφ以上であっても極めて良好な崩壊性を示すという利点を有する。
【0023】
かくして得られた本発明の錠剤型増粘化剤は、水やお茶、ジュース、牛乳、スープ、味噌汁、流動食などの液状組成物にトロミをつけるといったトロミ剤として有用に利用できる。従来技術では、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を15〜40質量%含有し、かつ液状組成物中で容易に分散し、粘度を付与する錠剤を提供することができなかったが、本発明の錠剤型増粘化剤は、手撹拌(例.150〜300rpm)などの緩い撹拌条件であっても容易に崩壊しダマにならず、かつ良好な粘度発現性を有するという従来にない効果を奏する。
本効果から、本発明の錠剤型増粘化剤は、咀嚼・嚥下機能低下者用の増粘化剤(介護用途)として有用に利用できる。
【0024】
さらに、本発明の錠剤型増粘化剤は、咀嚼・嚥下機能低下者用の増粘化剤としての用途に限らず、中華丼のタレ、片栗粉等、一般的なトロミを付ける素材の代替としての利用も可能である。
【0025】
2.増粘多糖類を含有する錠剤型増粘化剤の製造方法
本発明は、上記「1.増粘多糖類を含有する錠剤型増粘化剤」の製造方法にも関する。
本発明の錠剤型増粘化剤は、上記原料を含有する混合粉体及び/又はその顆粒を圧縮成形することで製造できる。
具体的には、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を15〜40質量%、15〜40質量%の崩壊用寒天、10〜70質量%の水溶性糖類及び0.2〜10質量%の金属塩を混合後、硬度15〜70Nに打錠(圧縮成形)することを特徴とする錠剤の製造方法に関する。
打錠装置としては、単発打錠機、卓上錠剤成型機など、目的とする錠剤量や大きさにより適宜選択することが可能である。
また粉末や顆粒を臼に供給するフィーダー部は、粉末の流動性や顆粒の大きさから、攪拌フィーダーやオープンフィーダーなどフィーダーの種類を選択することができる。
【0026】
本発明では打錠の際に、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類と、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩からなる群から選択される少なくとも1種以上とをあらかじめ造粒した顆粒を用いることが好ましい。顆粒に用いる増粘多糖類、崩壊用寒天、水溶性糖類、金属塩等は、錠剤中の各成分の含有量が本発明の範囲に含まれる限りは、錠剤に使用する全量を顆粒にしてから打錠しても良く、一部を顆粒に用いて残りを粉末で後添して打錠しても構わない。また、増粘多糖類と、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩からなる群から選択される少なくとも1種以上とを予め造粒した顆粒として、各々造粒した顆粒を用いても良い。
【0027】
金属塩を予め造粒した顆粒として用いる場合、金属塩は造粒時のバインダー液として用いても良く、造粒時の原料粉末として用いても良い。
【0028】
本発明における好ましい製造態様を以下に例示するが、本発明は特にこれに制限されない;
(I)キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩の混合物を造粒した顆粒、並びに残りの原料(必要に応じて増粘多糖類、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩の残部、重曹、有機酸等)を混合後、硬度15〜70Nに打錠する、錠剤の製造方法。
(II)キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類、水溶性糖類及び金属塩の混合物を造粒した顆粒、並びに残りの原料(崩壊用寒天、必要に応じて増粘多糖類、水溶性糖類及び金属塩の残部、重曹、有機酸等)を混合後、硬度15〜70Nに打錠する、錠剤の製造方法。
(III)金属塩を含有する溶液をバインダー液に用いてキサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類、崩壊用寒天及び水溶性糖類の混合物を造粒後、残りの原料(必要に応じて増粘多糖類、崩壊用寒天、水溶性糖類、金属塩の残部、重曹、有機酸等)を混合し、硬度15〜70Nに打錠する、錠剤の製造方法。
(IV)金属塩を含有する溶液をバインダー液に用いてキサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類及び水溶性糖類の混合物を造粒後、残りの原料(崩壊用寒天、必要に応じて増粘多糖類、水溶性糖類、金属塩の残部、重曹、有機酸等)を混合し、硬度15〜70Nに打錠する、錠剤の製造方法。
特に好ましくは、(I)又は(III)の実施形態である。
【0029】
錠剤中の増粘多糖類含量が高い場合、例えば30〜40質量%である場合は、上記製造態様(I)〜(IV)の造粒原料に用いる増粘多糖類として、予め造粒した顆粒を用いることも可能である。例えば上記製造態様(I)であれば、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類を予め造粒した顆粒、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩の混合物を造粒した顆粒、並びに残りの原料(必要に応じて増粘多糖類、崩壊用寒天、水溶性糖類及び金属塩の残部、重曹、有機酸等)を混合後、硬度15〜70Nに打錠する、錠剤の製造方法をとることができる。
本製法では、キサンタンガム、カラギナン及びグァーガムからなる群から選択される少なくとも一種以上の増粘多糖類に対して二段階の造粒工程が行われる。つまり、打錠時に用いる増粘多糖類は二段階の造粒を経た二次造粒品である。
【0030】
造粒方法には特に制限はないが、流動層造粒法が増粘多糖類の分散性や作業性の観点から最も好ましい。その他、転動造粒法、複合造粒法、撹拌造粒法、押出し造粒法、噴霧乾燥造粒法、真空凍結造粒法などで造粒した顆粒を用いても構わない。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を
制限するものではない。
【0032】
実験例1:増粘多糖類を含有する錠剤型増粘化剤(崩壊用寒天含量に関する試験)
表1の処方に基づき、増粘多糖類を含有する錠剤型増粘化剤を調製した。
具体的には、表1に示すキサンタンガム、デキストリン及び塩化カルシウムを粉体混合し、バインダー液に水を用いて流動層造粒にて顆粒を調製した。次いで、調製した顆粒、及び表1の粉末部に示す量の乳糖、崩壊用寒天、重曹及びクエン酸を混合し、卓上錠剤成型機(市橋精機)にて硬度25〜33Nに打錠した。1錠当たり0.5gとなるように錠剤を調製した。
得られた実施例1−1〜1−4及び比較例1−1の錠剤型増粘化剤について、溶解性試験を行なった。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
注1)塩化カルシウム・2水和物を使用。表中、()内の数値は無水物換算量を示す。
注2)伊那食品工業株式会社製の崩壊用寒天「崩壊用精製寒天」を使用。
注3)テクスチャーアナライザーTA−XT plus(Stable Micro Systems社)を使用して、1錠に対して圧縮速度2mm/secで一軸圧縮測定した。破断荷重を錠剤の硬度とした。5錠の測定値を平均し、錠剤硬度とした。
【0035】
(錠剤の溶解性試験)
100mlのビーカーにイオン交換水100gと、長さ2cmの回転子を入れ、恒温槽中20℃に調温した。スターラー(アズワン社製REXIM)にビーカーを乗せ、水がこぼれないようにゆっくりと回転数を240rpmまで上げた。240rpmは手撹拌を再現するための撹拌条件である。そこに、錠剤2錠(計1g)を加え、30秒間撹拌し、撹拌後の状態を下の基準で判断した。
【0036】
(溶解性 評価基準)
− :錠剤が完全に崩壊し、増粘多糖類もダマを生じることなく良好に崩壊する。
± :錠剤がほぼ崩壊し、増粘多糖類も大きなダマを生じることなく良好に溶解する。
+ :錠剤が部分的に崩壊(一錠の半分以上)し、崩壊した部分は増粘多糖類が溶解するが、未崩壊部分が残存する。
++ :錠剤は一部崩壊するが、半分以上塊として残り、増粘多糖類も溶解しない。
+++:錠剤表面のみ水和し、全く崩壊しない。
【0037】
キサンタンガム25質量%、金属塩として塩化カルシウム2質量%、水溶性糖類(デキストリン、乳糖)、及び崩壊用寒天を15〜40質量%含有する実施例1−1〜1−4の錠剤型増粘化剤は、27〜33Nと実用的な硬度を有しつつも、手撹拌を想定した緩い撹拌条件(240rpm)でも容易に錠剤が崩壊し、かつキサンタンガムがダマを生じることなく極めて良好な溶解性を示した。
更には、実施例1−1〜1−4の錠剤型増粘化剤は3分といった極めて短時間でイオン交換水にトロミを付けることもでき、トロミ剤として優れた利点を有していた。参考として、実施例1−3の溶解性試験時の写真を
図1に示す。
一方、比較例1−1のように、錠剤型増粘化剤中の崩壊用寒天含量が10質量%であると、錠剤の表面のみが水和し、錠剤自体が崩壊せず、溶解性が非常に悪かった(
図2)。
【0038】
実験例2:増粘多糖類を含有する錠剤(増粘多糖類含量に関する試験)
表2の処方に基づき、増粘多糖類を含有する錠剤(錠剤型増粘化剤)を調製した。
具体的には、実施例2−1〜2−2、比較例2−1はキサンタンガム、デキストリン及び金属塩(塩化カルシウム、塩化カリウム)を粉体混合し、バインダー液に水を用いて流動層造粒にて顆粒を調製した。次いで、調製した顆粒、及び表2の粉末部に示す量の乳糖、崩壊用寒天、重曹及びクエン酸を混合した。実施例2−3はキサンタンガム、崩壊用寒天及び塩化カリウムを粉体混合し、バインダー液に水を用いて流動層造粒にて顆粒を調製した。次いで、調製した顆粒、及び表2の粉末部に示す量の乳糖、重曹及びクエン酸を混合した。比較例2−2はキサンタンガム、デキストリン及び塩化カルシウムを粉体混合し、バインダー液に水を用いて流動層造粒にて顆粒を調製した。次いで、調製した顆粒、及び表2の粉末部に示す量の乳糖、寒天、重曹及びクエン酸を混合した。これらの混合物を卓上錠剤成型機(市橋精機)にて硬度27〜29Nに打錠した。1錠当たり0.5gとなるように錠剤を調製した。
得られた実施例2−1〜2−3及び比較例2−1〜2−2の錠剤型増粘化剤について、実験例1と同様に溶解性試験を行なった。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
注4)崩壊用寒天以外の寒天「UP−37(伊那食品工業株式会社製)」を用いた。本寒天は、本明細書の段落番号0016に記載の崩壊用寒天の製法1〜3の何れの製法も用いていない寒天である。
【0041】
キサンタンガム15〜40質量%、崩壊用寒天20〜30質量%、金属塩2〜5質量%及び水溶性糖類(デキストリン、乳糖)を含有する実施例2−1〜2−3の錠剤型増粘化剤は、27〜29Nと実用的な硬度を有しつつも、手撹拌を想定した緩い撹拌条件(240rpm)で容易に錠剤型増粘化剤が崩壊し、かつキサンタンガムがダマを生じることなく極めて良好な溶解性を示した。
特に実施例2−3の錠剤型増粘化剤は、キサンタンガム含量が40質量%と高含量であるにも関わらず、緩い撹拌条件でも容易に錠剤が崩壊し、かつキサンタンガムがダマを生じることなく容易に溶解していた。更には、短時間で十分なトロミを付けることができ、トロミ剤として非常に優れた性質を有していた。
キサンタンガム含量が50質量%の比較例2−1は、錠剤の表面のみ水和し、錠剤自体が崩壊せず、溶解性が非常に悪かった。
崩壊用寒天以外の寒天を用いた比較例2−2も、錠剤の表面のみが水和し、錠剤自体が崩壊せず、溶解性が非常に悪かった。
【0042】
実験例3:増粘多糖類を含有する錠剤(金属塩含量に関する試験)
表3の処方に基づき、増粘多糖類を含有する錠剤(錠剤型増粘化剤)を調製した。
具体的には、表3に示すキサンタンガム、デキストリン及び金属塩(塩化カルシウム、塩化カリウム、又はクエン酸三ナトリウム)を粉体混合し、バインダー液に水を用いて流動層造粒にて顆粒を調製した。次いで、調製した顆粒、及び表3の粉末部に示す量の乳糖、崩壊用寒天、重曹及びクエン酸を混合し、卓上錠剤成型機(市橋精機)にて硬度27〜40Nに打錠した。1錠当たり0.5gとなるように錠剤を調製した。
得られた実施例3−1〜3−8の錠剤型増粘化剤について、実験例1と同様に溶解性試験を行なった。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
キサンタンガム25質量%、崩壊用寒天20質量%、金属塩0.2〜10質量%、及び水溶性糖類(デキストリン、乳糖)を含有する実施例3−1〜3−8の錠剤型増粘化剤は、27〜40Nと実用的な硬度を有しつつも、手撹拌を想定した緩い撹拌条件(240rpm)でも容易に錠剤が崩壊し、かつキサンタンガムがダマを生じることなく極めて良好な溶解性を示した。金属塩は塩化カルシウム、塩化カリウム、クエン酸三ナトリウムのいずれの塩においても顕著な効果を奏した。
また、実施例3−1〜3−8のいずれの錠剤も短時間で十分なトロミを付けることができ、トロミ剤として非常に優れた性能を有していた。
【0045】
実験例4:増粘多糖類を含有する錠剤
表4の処方に基づき、増粘多糖類を含有する錠剤(錠剤型増粘化剤)を調製した。
具体的には、表4に示す増粘多糖類(グァーガム、カラギナン)、デキストリン及び塩化カルシウムを粉体混合し、バインダー液に水を用いて流動層造粒にて顆粒を調製した。次いで、調製した顆粒、及び表4の粉末部に示す量の乳糖、崩壊用寒天、重曹及びクエン酸を混合し、卓上錠剤成型機(市橋精機)にて硬度28〜32Nに打錠した。1錠当たり0.5gとなるように錠剤を調製した。
得られた実施例4−1及び4−2の錠剤について、実験例1と同様に溶解性試験を行なった。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
増粘多糖類としてグァーガムを用いた実施例4−1及びカラギナンを用いた実施例4−2の錠剤型増粘化剤は、キサンタンガムの場合と同様に、28〜32Nと実用的な硬度を有しつつも、手撹拌を想定した緩い撹拌条件(240rpm)でも容易に錠剤が崩壊し、かつ増粘多糖類がダマを生じることなく極めて良好な溶解性を示した。また、実施例4−1及び4−2のいずれの錠剤も短時間で十分なトロミを付けることができ、トロミ剤として非常に優れた性能を有していた。
【0048】
実験例5:増粘多糖類を含有する錠剤
表5の処方に基づき、増粘多糖類を含有する錠剤(錠剤型増粘化剤)を調製した。
具体的には、表5に示す顆粒部の原料を粉体混合し、実施例5−1はバインダー液に水を用いて、実施例5−2はバインダー液に表5に示す量のクエン酸三ナトリウムを用いて流動層造粒にて顆粒を調製した。次いで、調製した顆粒、及び表5の粉末部に示す量の原料を混合し、卓上錠剤成型機(市橋精機)にて硬度30〜33Nに打錠した。1錠当たり0.5gとなるように錠剤を調製した。
得られた実施例5−1〜5−2の錠剤型増粘化剤について、実験例1と同様に溶解性試験を行なった。結果を表5に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
実施例5−1は、キサンタンガム及び水溶性糖類の一部(デキストリン)を予め造粒した顆粒を用いて、打錠した例である。重曹及びクエン酸を不使用としながらも錠剤が容易に崩壊して、キサンタンガムがダマにならず良好な溶解性を示した。
実施例5−2は、クエン酸三ナトリウムをバインダー液に用いて、キサンタンガム及び水溶性糖類の一部(デキストリン)を予め造粒した顆粒を打錠した例である。33Nと実用的な硬度を有しつつも、錠剤が容易に崩壊し、キサンタンガムがダマにならず、良好な溶解性を示した。
また、実施例5−1〜5−2のいずれの錠剤も短時間で十分なトロミを付けることができ、トロミ剤としても非常に優れた性能を有していた。
【0051】
実験例6:増粘多糖類を含有する錠剤(粘度発現性試験)
上記実験例によって得られた実施例1−4及び実施例3−6の錠剤について、粘度発現性試験を行った。各々の錠剤組成を表6に、粘度発現性の試験結果を表7に示す。
【0052】
【表6】
【0053】
(錠剤の粘度発現性試験)
実験例で得られた錠剤を用いて、お茶、アイソトニック飲料における粘度発現(経時的な粘度変化)を評価した。200mlのビーカーに、20℃に調温したお茶(おーいお茶/伊藤園)、アイソトニック飲料(ポカリスウェット/大塚製薬)を各々100gずつ量りとり、スパーテルで4回転/秒の速度で撹拌しながら、各錠剤を5錠(計2.5g/キサンタンガム含量0.625g)添加した。同じ撹拌速度でさらに30秒間撹拌後、スクリュー瓶に充填し、経時的な粘度変化を測定した。粘度はB型回転粘度計、12rpm、ローターNo.3を用いて測定した。
【0054】
【表7】
【0055】
実施例1−4の錠剤は、お茶に対して3分といった極めて短時間でトロミを付けることができ、10分で粘度を安定化させることができ、トロミ剤として非常に優れた性能を有していた。
実施例3−6の錠剤は、アイソトニック飲料に対して10分といった短時間でトロミを付けることができ、トロミ剤として非常に優れた性能を有していた。