(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記刃物が前記芯線に接触したか否かの検知を行う対象時点又は時間が任意に設定され、前記剥離動作の開始時、終了直前又は途中、更には前記芯線に対する前記刃物の接触時間の各時間的要素を管理する機能を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載した電線被覆材剥離装置。
前記時間的要素の管理機能によって、前記芯線に前記刃物が接触しても、その接触時間又は接触箇所によっては、不良品とはしない判定条件も設定可能とする、請求項5に記載した電線被覆材剥離装置。
電線収納部から引き出された前記電線の先端部にて、前記電線の被覆材に前記刃物を切り込ませ、前記電線を後方へ搬送して前記被覆材の一部分を剥離する際に、芯線接触検知手段によって前記芯線に対する前記刃物の接触が検知され、
この先端部での被覆材剥離後に、前記電線をその引き出し方向である前方へ所定長だけ搬送した状態で、前記先端部より後方側の位置にて前記電線を前記刃物によって切断した後、前記電線を剥離予定長だけ後方へ戻し、更にこの状態で前記被覆材に前記刃物を切り込ませ、前記電線を前方へ搬送して前記被覆材の一部分を剥離する際にも、前記芯線接触検知手段によって前記芯線に対する前記刃物の接触が検知されるように構成された、請求項1〜6のいずれか1項に記載した電線被覆材剥離装置。
前記刃物が前記芯線に接触したか否かの検知を行う電極が前記刃物であり、前記電気信号(前記刃物への入力)と、前記芯線と前記刃物との接触検知信号(前記刃物からの出力)とが同一箇所(前記刃物)を通して印加もしくは取出される、請求項1〜7のいずれか1項に記載した電線被覆材剥離装置。
前記刃物の一対が前記電線を挟んで対向配置された状態で前記切り込み後に前記電線が移動可能に構成され、かつ前記電線の先端が前記一対の刃物間への挿通後にセンサロッドの先端側に接当することによって前記剥離動作が開始される、請求項1〜8のいずれか1項に記載した電線被覆材剥離装置。
前記電線の被覆材の一部分を剥離する機能と共に、前記電線の所定位置を切断する機能も有する自動機として構成された、請求項1〜9のいずれか1項に記載した電線被覆材剥離装置。
【背景技術】
【0002】
電線の被覆材に刃物を切り込ませ、この刃物を前記電線に対し相対的に移動させることによって、前記被覆材の一部分を剥離する(剥ぎ取る)ように構成された電線被覆材剥離装置(以下、ワイヤストリッパーと称することがある。)が知られている。
【0003】
こうしたワイヤストリッパーによる電線被覆材の剥離においては、電線被覆材の切り口をより精密かつシャープに切断するため、なるべく深く刃物を電線被覆材に切り込ませる必要がある。しかしながら、刃物が電線の芯線に接触すると、芯線に傷が付いたり、芯線の一部が切断されることがあり、不良品となってしまう。
【0004】
特に自動車や航空機に用いられる電線には、絶対の安全が求められるため、芯線に微小な傷があると、可動部や振動のある箇所に用いられる場合、その傷に応力が集中して電線の破損を起こし、重大事故に繋がることから、少しでも傷がある電線は不良品とされる。
【0005】
そこで、電線の芯線に刃物が接触したことを検知する機能がワイヤストリッパーに必要とされ、昨今、自動機においては上記の接触検知機能を有する装置が多数開発されている。しかし、その多くが芯線と刃物に電極を設け、その電気的導通を検知する方法を用いている。
【0006】
一例として、後記の特許文献1(特開平7−87643号公報)による芯線傷検出装置を
図10について説明する。
【0007】
この公知の技術によれば、電線63をワイヤガイド84に通して電線把持部85により固定する。その後、カセットブレード86を作動させ、電線63の芯線70を被覆する絶縁被覆材71に口出しカッター87により切り込みを入れるとともに、切断カッター82により電線63を切断し、同時に電線把持部85によって左右に引き、被覆材の剥離を行う。
【0008】
ここで、カセットブレード86内の口出しカッター87が被覆材71に切り込んだ際に、芯線70に接触すると、これを介して電線63と電線把持部85との間に生じる静電容量−検出器88−交流電源89の経路で交流電流が流れ、この電流に応じた電圧が検出器88によって検出される。この結果、口出しカッター87が芯線70に接触したことが検知される。
【0009】
図10に示す特許文献1(特開平7−87643号公報)による芯線傷検出方法では、加工電線の長さが短い場合は、その仕掛けを取り付ける場所を確保することが非常に困難である。又、当該検出方式で卓上型ワイヤストリッパーを用いて手作業で行う場合は、安全面からも不適切である。
【0010】
そこで、本出願人は、自らが所有する先願特許を記載した後記の特許文献2(特許第4883821号)において、カッター(刃物)を検知センサとして、電線の芯線が保有するインピーダンス(レジスタンス、インダクタンス及びキャパシタンスを含む。)を検出することによって、如何なる長さに切断された短い電線でも、又、長い電線でも、同一の条件にて高精度に芯線傷を検出することのできる電線被覆材剥離装置(以下、先願特許発明のワイヤストリッパーと称する。)を既に提起した。
【0011】
この先願特許発明のワイヤストリッパーによれば、
図11に例示するように、電気信号発生回路(信号生成回路)75からの電気信号が電流制限回路76を経て導線73を通して刃物27、27に与えられるが、この電気信号は更に、ノイズ等を除去するためのフィルタ回路77を通し、刃物27、27が芯線70に触れたときの微小な変化を監視するための信号増幅回路78を通して信号解析回路74に伝達される。この信号解析回路74で得られた信号と、制御回路79から得られる予め設定された電線被覆材剥離動作の判定時間とを、判定ロジック回路(信号判定回路)80にて判定し、刃物27、27と芯線70との接触の最終判断を行い、有害な接触があったと判断された場合には、表示器付きの表示窓21にエラー(Err)の表示をする。
【0012】
上記の電気信号は、例えばμ秒単位の周期でのサンプリングを行うことが可能であり、電線W(63)の芯線70に刃物27が接触したときに、被覆材71の剥離動作時の刃物位置に応じてパルス出力を発生させ、これが芯線70のインピーダンスの加算によるインピーダンスの変化として信号解析回路74で検出される。
【0013】
このようにして、前記刃物が芯線に接触したか否かの検知を行うに際して、接触した位置や時間的要素を任意に設定可能とし、前記剥離動作の開始直後から終了に至る間、刃物27、27と芯線70との接触時間やその位置などの時間的要素を管理する機能によって、芯線に刃物が接触しても、その程度や箇所によっては製品不良とはしない判定も可能とし、自動機などに採用した場合、不要な稼動停止を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の先願特許発明のワイヤストリッパーにおいては、
図12(A)に示すように、信号生成回路75又は信号判定回路80(これらは共に
図10に示したコントロール基板53上に組み込まれているが、概略的に図示し、また他の回路要素は図示省略している。)と刃物(ブレード)27との間を接続する中心導体73はシールド線(シールドケーブル)100の信号ラインであり、このシールド線のシールド材(金属導体)101の側は接地されている。なお、シールド線100において、中心導体73の絶縁被覆材、シールド材101の周囲の絶縁外被は図示省略した(以下、同様)。
【0015】
従って、シールド線100の中心導体73を通して上記の電気信号を刃物27へ又は刃物27から伝達する際に、
図12(B)に等価的に示すように、導線73とシールド材101との間での電位差によって、それらの間に存在する静電容量102を介して信号電流がリークしてしまう。この結果、電気信号の減衰量が増え、上記したようにして芯線70に刃物27が接触したことを検出する際の検出精度が低下し、接触判定を正確に行えないことがある。また、これはシールド線100の長さによっても変動し、ノイズなどの外的要因によって信号レベルが変動を受け易くなる。このことは、先願特許発明とは異なって、刃物に印加する電気信号の変位を検出する他の方式又は機構においても同様である。
【0016】
本発明の目的は、例えば先願特許発明と同様に、ワイヤストリッパーにおいて、刃物を検知センサとして、電線の芯線が保有するインピーダンス(レジスタンス、インダクタンス及びキャパシタンスを含む。)などを検出することによって、如何なる長さに切断された短い電線でも、又、長い電線でも、同一の条件にて高精度に芯線傷を検出することができる上に、その検出時に信号ラインとシールド材との間の電流リークの発生を減少もしくはなくして、シールド線の長さやノイズなどに影響されることなしに検出性能及び接触判定精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明は、電線の被覆材に刃物を切り込ませ、この刃物を前記電線に対して相対的に移動させることによって、前記被覆材の一部分を剥離するように構成された電線被覆材剥離装置(ワイヤストリッパー)において、
前記刃物を通して例えばインピーダンス(レジスタンス、インダクタンス及びキャパ シタンスを含む。)を検出するための電気信号を発生する電気信号発生回路と、例えば 前記インピーダンスによる電気信号の変化を検知する信号解析回路と、前記刃物への前 記電気信号及び前記刃物からの変化した電気信号を中心導体(信号ライン)によって伝 達するシールド線と、前記中心導体の絶縁性被覆材の外周囲に配されたシールド材に、 前記電気信号又は/及び前記の変化した電気信号と同一レベルの信号を印加する信号印 加手段とを有し、
前記電線の被覆材の剥離過程にて前記刃物が前記電線の芯線に接触した場合、前記刃 物からの変化した電気信号、例えば前記刃物に前記芯線の前記インピーダンスが加算さ れることによる前記インピーダンスの変化が検出され、これによって前記刃物が前記芯 線に接触したことが検知されると共に、
この検知に際して、前記信号印加手段によって、前記シールド線の中心導体(信号ラ イン)と前記シールド線のシールド材との間での電流リークを減少させもしくは発生さ せないようにした、
電線被覆材剥離装置に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記刃物を検知センサとして、前記刃物に印加する電気信号の変化、例えば電線の芯線が保有するインピーダンス(レジスタンス、インダクタンス及びキャパシタンスを含む。)を検出することによって、如何なる長さに切断された短い電線でも、又、長い電線でも、同一の条件にて高精度に芯線傷を検出することができる。
【0019】
そして、前記刃物への又は前記刃物からの電気信号を伝達する前記シールド線のシールド材に、前記刃物への電気信号又は/及び前記刃物からの変化した電気信号と同一レベルの信号を印加する前記信号印加手段によって、前記中心導体と前記シールド材との間の電位差が信号進行方向位置でほぼなくなるので、前記シールド線の信号ラインと前記シールド線のシールド材との間に存在する静電容量により発生しうる電流リーク(従って信号の減衰)を減少させもしくは発生させないようにし、上記の検出時にシールド線の長さやノイズなどに影響されることなしに検出性能及び接触判定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のワイヤストリッパーにおいては、前記信号印加手段が、前記電気信号発生回路及び前記信号解析回路と前記シールド線のシールド材との間に接続されて前記同一レベルの信号を前記シールド線のシールド材側に出力するバッファ回路であるのがよい。
【0022】
また、前記刃物に対して前記電気信号を印加し、前記電線の芯線に前記刃物が接触すると、前記芯線が有する前記インピーダンスによって前記電気信号が変化し、この現象を監視する機能を有し、それを以って前記芯線と前記刃物とが接触したことを検知することができる。
【0023】
また、前記刃物が前記芯線に接触したか否かの検知を行う対象時点又は時間が任意に設定され、前記剥離動作の開始時、終了直前又は途中、更には前記芯線に対する前記刃物の接触時間の各時間的要素を管理する機能を有するのがよい。
【0024】
この場合、前記時間的要素の管理機能によって、前記芯線に前記刃物が接触しても、その接触時間又は接触箇所によっては、不良品とはしない判定条件も設定することができる。即ち、前記刃物が芯線に接触したか否かの検知を行うに際して、接触した位置や時間的要素を任意に設定可能とし、前記剥離動作の開始直後から終了に至る間、刃物と芯線との接触時間やその位置などの時間的要素を管理する機能によって、芯線に刃物が接触しても、その程度や箇所によっては製品不良とはしない判定も可能とし、自動機などに採用した場合、不要な稼動停止を防止することができる。
【0025】
また、前記被覆材の一部分を剥離する機能と共に、前記電線の所定位置を切断する機能も有する自動機として構成される望ましい態様によるワイヤストリッパーは、
電線収納部から引き出された前記電線の先端部にて、前記電線の被覆材に前記刃物を 切り込ませ、前記電線を後方へ搬送して前記被覆材の一部分を剥離する際に、芯線接触 検知手段によって前記芯線に対する前記刃物の接触が検知されると共に、
この先端部での被覆材剥離後に、前記電線をその引き出し方向である前方へ所定長だ け搬送した状態で、前記先端部より後方側の位置にて前記電線を前記刃物によって切断 した後、前記電線を剥離予定長だけ後方へ戻し、更にこの状態で前記被覆材に前記刃物 を切り込ませ、前記電線を前方へ搬送して前記被覆材の一部分を剥離する際にも、前記 芯線接触検知手段によって前記芯線に対する前記刃物の接触が検知されるように構成さ れた、
自動ワイヤストリッパーである。
【0026】
なお、本発明のワイヤストリッパーにおいて、実際には、前記刃物が前記芯線に接触したか否かの検知を行う電極が前記刃物であり、前記電気信号(前記刃物への入力)と、前記芯線と前記刃物との接触検知信号(前記刃物からの出力)とが同一箇所(前記刃物)を通して印加もしくは取出される。
【0027】
そして、前記刃物の一対が前記電線を挟んで対向配置された状態で前記切り込み後に前記電線が移動可能に構成され、かつ前記電線の先端が前記一対の刃物間への挿通後にセンサロッドの先端側に接当することによって前記剥離動作が開始されるのがよい。
【0028】
次に、
図1〜
図9について、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0029】
まず、
図4、
図5、
図6を参照して、本発明の一実施形態による卓上型ワイヤストリッパーを詳細に説明する。以下の説明において、電線をワイヤと記すことがある。
【0030】
図4について、本実施の形態によるワイヤストリッパーの内部構造を説明する。この装置は、本出願人が所有する特許第3501596号によるワイヤストリッパーと同等の構成に、電線の芯線と刃物との接触を検知する機構又は機能を付加したものである。以下の説明において、ワイヤ挿入側となる図面左側を前部、同右側を後部と称することとする。
【0031】
この装置において、機枠1の前部から中間部の側壁2a、2b間の下方位置にかけて、主軸3が回転可能かつ軸方向に摺動可能に支持され、この主軸3の直上方位置には、互いに平行する2本の副軸4、4が同じく側壁2a、2b間に回転自在に支持されており、更に、これらの副軸4、4間の中央位置の上方には、ワイヤ端の挿入位置を定めるとともに起動信号を得るための位置決めロッド5が設けられている。
【0032】
主軸3の直上には主軸3と平行に軸を配し、その後端範囲をスプライン軸6とし、側壁2bの後部に搭載された電動のモーター7の回転軸が摺動可能に嵌合され、モーター7の回転がスプライン軸6を通してスプライン軸6と同軸上のボールネジ軸8に伝達されるようになっている。ボールネジ軸8の回動によりボールナット部材9が軸方向に進退移動自在とされている。スプライン軸6とボールネジ軸8との間に回動自在に嵌合されたアーム10の下部が主軸3を把持し、ボールネジ軸8と同一の位置を保つように主軸3を軸方向に摺動させる。
【0033】
主軸3には、前部側が小径の第1円錐カム11及び第2円錐カム12が同軸的に摺動可能に嵌合され、それぞれにコイルバネからなる圧縮バネ13a、13bが介装され、ピン14a、14bを介して第1円錐カム11及び第2円錐カム12をそれぞれ前方へ規定強さで押し付けている。また、主軸3は、ボールナット部材9が固着された移動板15に固着されたブッシュ16に摺動可能に挿通されている。
【0034】
機枠1の側壁2aから突出した主軸3の前端部には、電線の被覆材への刃物の切り込み量を調節する切り込み量調節ノブ17が配され、切り込み量調節ノブ17の回動により、位置決め部材18をネジによって進退可能とし、位置決め部材18が第1円錐カム11のピン14aと当接自在とされていることにより、第1円錐カム11の前進を止めることができる。また、切り込み量調節ノブ17に連動し、装置正面上部の表示窓21に切り込み径を表示するようになっている。
【0035】
副軸4、4の前端側には、パイプ状の管軸22、22が摺動可能に外嵌され、これらの管軸22、22の後端は、移動板15に固着された側面Z状のアーム23の軸受部24に挿通支持されている。管軸22、22から突出した副軸4、4の前端部には、グリッパー25、25の基部が固着され、また管軸22、22の前端には、グリッパー25、25の背後に位置する刃物ホルダー26、26の基部が固着されており、これらの刃物ホルダー26、26の先端の対向面には、
図6に示すようにV字状の刃先を有する刃物(ストリップブレード)27、27が固着されている。
【0036】
モーター7の正転駆動当初においては、
図4のようにボールナット部材9の位置は固定されているので、ボールネジ軸8の正転によりボールナット部材9内のボールとの螺合によって、ボールネジ軸8の前進により主軸3が前進する。これにより、先ず第1円錐カム11でカムローラ33、33を両側方に押すので、揺動部材31、31の上端が互いに離反する方向に揺動し、これらの揺動部材31、31がアーム34、34のローラ35、35を押して、これと一体の管軸22、22をそれぞれ回動させ、その前端の刃物ホルダー26、26が閉じる方向に作動する。これによって、
図6(B)に示すように、刃物ホルダー26、26の刃物27、27がワイヤWの被覆材71を所定深さに切り込んで挟持する。
【0037】
副軸4、4の後端近くには、アーム28、28の上端が固着されて垂下され、これらのアーム28、28の下端に水平面内で回転自在に軸着されたカムローラ29、29が、第2円錐カム12の周面に当接して第2円錐カム12の前進時にその周面により押され、これによって副軸4、4が互いに反対方向に回転するようになっており、この第2円錐カム12の前進時にはグリッパー25、25が閉じる方向に、同後退時には開く方向に回動されるようになっている。
【0038】
第1円錐カム11の両側には、下端が側壁2aに軸30、30により揺動自在に枢支された揺動部材31、31が設けられ、この揺動部材31の上下方向の軸32上のカムローラ33が第1円錐カム11の周面に当接するようになっている。また、この揺動部材31の上端外側面には、管軸22、22に固着のアーム34、34の下端に水平面内で回転自在に軸着されたローラ35、35が当接されている。この第1円錐カム11の進退動に、アーム34、34を介して管軸22、22が互いに反対方向に回転し、第1円錐カム11の前進時には、刃物ホルダー26、26が閉じる方向に、同後退時に開く方向に回動されるようになっている。
【0039】
移動板15と機枠1の後部の側壁2bとの間にはブレーキ装置36が介装されている。このブレーキ装置36は、ボールナット部材9の後退移動時に抵抗を与えるものであって、側壁2bに固定のベース37に形成された水平方向の長孔38に、貫通する軸39により移動板15側のプレート40を連結し、この軸39を介してバネ41によりシュー42に付与されるバネ力による摩擦ブレーキ作用を与え、ボールナット部材9の戻り時の抵抗がグリッパー25、25の把持力と刃物27、27の切り込み力とに変換されるように構成されている。
【0040】
第1円錐カム11及び第2円錐カム12の移動タイミングは、主軸3の前進時にはボールナット部材9が固定状態のまま主軸3がそのボールネジ軸8により前進し、第1円錐カム11で刃物ホルダー26、26を閉じ、次いで第2円錐カム12の前進でグリッパー25、25が閉じられる。第2円錐カム12の進行が止まると、その反力でボールナット部材9がブレーキ装置36の負荷に抗して後退し、そのブレーキ装置36の抵抗がグリッパー25、25の閉じ方向の力となって電線63を把持するとともに、ボールナット部材9の後退により刃物ホルダー26、26が後退して被覆材を芯線から抜き外す(剥離する)ことになる。
【0041】
また、
図5に示すように、引導長調整用ノブ58を回動することにより、引導長調整用ノブ58のネジ軸59に螺合されたブラケット60上のモーター逆転指令用センサ61の位置を調整することができ、被覆材の引導長さを調整できる。また、表示窓57にモーター逆転指令用センサ61の位置を被覆材の引導長さとして表示されるようになっている。なお、
図6の符号62は、ワイヤを挿入する際の支持部である。
【0042】
従って、ノブ54を回動して位置決め部材56の位置を変えることにより、外管43の図示せぬ引張バネによりレバー51を介し外管43の位置が定められ、センサロッド45のストッパ46の位置が定められ、これによってワイヤ端の挿入深さ(又は位置)が設定され、被覆材の剥ぎ取り長さが選定される。なお、ノブ54を回動させると、装置側面に設けられ、目盛りが付された表示窓57に、位置決め部材56の位置が被覆材の剥ぎ取り長さに換算して表示されるようになっている(
図5参照)。
【0043】
刃物ホルダー26、26は、刃物27、27が固着されている上部が絶縁物からなり、下部が金属からなる上下二分割構造となっており、刃物27、27を装置から電気的に絶縁する構造になっている。
【0044】
上記した装置において、電線W(63)の被覆材71の一部を剥離するに際し、本発明に基づいて、電線W(63)の芯線70に刃物27が接触したことを次のようにして検知する。
【0045】
刃物27、27は、
図11に示した先願特許発明と同様に、コントロール基板53とインピーダンス検知用の導線73によって接続され、上述した構造により、電極になる刃物27、27を通してインピーダンス、例えばキャパシタンス(以下、同様)を測定することができる。また、刃物27、27と電線W(63)の芯線70との接触の検知判定回路において、電気信号発生回路75で生成された電気信号である例えば矩形波信号が、電流制限回路76を通して刃物27、27に伝えられる。
【0046】
そして、
図11に示した先願特許発明と同様に、刃物27、27に与えられた電気信号は、ノイズ等を除去するためのフィルタ回路77を通し、刃物27、27が芯線70に触れたときの微小な変化を監視するための信号増幅回路78を通して信号解析回路74に伝達される。この信号解析回路74で得られた信号と、制御回路79から得られる予め設定された電線被覆材剥離動作の判定時間とを、判定ロジック回路80にて判定し、刃物27、27と芯線70との接触の最終判断を行い、有害な接触があったと判断された場合には、表示器付きの表示窓21にエラー(Err)の表示をする。
【0047】
上記の電気信号は、例えばμ秒単位の周期でのサンプリングを行うことが可能であり、電線W(63)の芯線70に刃物27が接触したときに、被覆材71の剥離動作時の刃物位置に応じてパルス出力を発生させ、これが芯線70のインピーダンスの加算によるインピーダンスの変化として信号解析回路74で検出される。
【0048】
このように、刃物27を検知センサとして、電線Wの芯線70が保有するインピーダンス(レジスタンス、インダクタンス及びキャパシタンスを含む。)を検出することによって、如何なる長さに切断された短い電線でも、又、長い電線でも、同一の条件にて高精度に芯線傷を検出することができる。
【0049】
この検出時において重要なことは、
図1に示すように、電気信号発生(生成)回路75及び信号判定回路80とシールド線100のシールド材101との間に公知のバッファ回路103を接続して、刃物27への電気信号及び刃物27からの変化した電気信号を伝達する中心導体(信号ライン)73を有するシールド線100において、そのシールド材(金属導体)101の側に、刃物27への電気信号又は/及び刃物27からの変化した電気信号と同一レベルの信号を印加していることである。
【0050】
このバッファ回路103からの上記電気信号によって、シールド線100の信号ライン73とシールド線100のシールド材101との間に生じる電化差が大きく減少し、場合によってはなくすことができるので、信号ライン73とシールド材101との間に静電容量が存在していても、この静電容量を介しての電流リークを減少させもしくは生じないようにし、上記の検出時にシールド線100の長さやノイズなどに影響されることなしに芯線70に対する刃物27の検出性能及び接触判定精度を向上させることができる。
【0051】
換言すれば、上記検出時に、信号ライン73とシールド材101とに同一レベルの信号を印加し、両者の位相(伝搬のタイミング)が一致するように信号を印加することによって、バッファ回路103が信号ライン73とシールド材101の信号レベルを信号の進行方向位置で常にほぼ同レベルに保つことができるので、信号ライン73とシールド材101との間での電位差をほぼなくせるため、それらの間に存在する静電容量を介しての電流リークを減少させもしくはなくすことができる。従って、
図12(B)に示した如き静電容量102による悪影響をなくすことができる。
【0052】
この結果、検出信号のレベルが、シールド線100固有の、信号ライン73とシールド材101との間の静電容量により減衰して正規の信号と誤差が発生することを抑制でき、信号の減衰を低減し、芯線70と刃物27との接触に検出する際の検出性能及び接触判定精度を向上させることが可能となる。また、上記したように、電流リークを低減しもしくはなくせるので、シールド線100の長さの違いにより信号レベルに誤差が生じることや、ノイズなどの外的要因による信号レベルの変動も抑えることができる。
【0053】
図1に示した構成は、具体的には
図2に示すように構成することができる。
【0054】
まず、
図2(A)の構成は、バッファ回路103をシールド材101の一端側に接続し、その他端側を接地して電気信号をシールド材101の一方向に沿って流す例である。
【0055】
図2(B)の構成は、
図2(A)に示す例では接地側からの信号の戻りが生じることがあるので、これを避けるために接地とシールド材101との間に、特定インピーダンスをもつマッチング回路104を接続した例である。
【0056】
図2(C)の構成は、
図2(A)と同様にバッファ回路103によって中心導体73と同一レベルの信号をシールド材101に印加すると共に、刃物27からの変位した信号を中心導体73によって信号判定回路80の側へ位搬すると同時に、同一レベルの信号を刃物27からシールド材101にも導いて中心導体73とシールド材101との間での信号レベルを同一にすることによって、刃物27からの信号の戻り時にもそれらの間での電流リークを減少させもしくはなくせるようにした例である。ただし、この時点ではバッファ回路103は作動させず、接地状態に切り替えることが必要である。
【0057】
次に、こうした検知動作を含めた被覆材剥離動作を、卓上型ワイヤストリッパーの動作図にて説明する。
【0058】
まず最初に、切り込み量調整用ノブ17を回動して、取り扱う電線径に応じた切り込み深さが得られるように表示窓21に表示される値を設定するとともに、被覆材の剥ぎ取り長さをストッパ位置調整用ノブ54の回動によって、引導長さを引導長調整用ノブ58の回動によって、表示窓57を見ながら所望の値に設定する。この場合、切り込み深さの設定を可能な限り大きくすることにより、被覆材を引きちぎる量(厚み)が減り、ストリップ動作をスムーズかつ安定に行うことができる。
【0059】
図6(A)に模式的に示すように、電線W(63)の先端をグリッパー25、25間に通して挿入すると、電線W端がセンサロッド45の前端のストッパ46に接当し、これを若干後方へ押すことによりセンサロッド45が弱いバネ48に抗して後退し、その後端がセンサ47を遮る。このセンサ47がセンサロッド45の後退を検知すると、その検知信号によりモーター7が正転駆動し、主軸3が前進運動する。
【0060】
また、センサ47が検知した信号により、ストリップ加工を始める直前のインピーダンスを記憶すると同時に、上記した接触検知の判定動作を開始し、以降はモーター停止信号によってモーターが停止するまでの一工程の間、電線W(63)の芯線70と刃物27とが接触したか否かの判定を行う。
【0061】
図3(A)から(B)までの期間、即ち、切り込み時からストリップ過程の初期は、
図3(E)のように僅かでも接触すれば不良と判断しても、それ以降の過程では、
図3(F)のような接触は不良とは判定しないこともできる。
図3(C)から(D)までの期間、即ち、ストリップ過程の終了間際の刃物と芯線との接触を検知しない等、時間的管理機能を用いて判定を任意に設定することができる。
【0062】
このように、時間的管理機能を用いることによって、ストリップ過程の終了間際に発生する
図3(G)のような先端の微小な接触傷は、これを判定対象から除外することも可能である。
【0063】
また、モーターの起動、反転、及び停止信号を用いて、その信号が出力された直後は判定から除外することによって、モーターから発する起動時のスパイクノイズの影響を防ぐことができ、より精度の高い検出が可能となる(
図8参照)。
【0064】
上記した時間的管理機能は、電線の芯線と刃物とが接触し続ける時間も判定の基準にすることができる。つまり、長時間接触し続けると、長く深い傷が付き、極微少な時間の接触の場合は、程度によっては傷が付かない。そこで、μ秒単位で電線の芯線と刃物との接触時間をサンプリングすることにより、品質に影響しない極微少時間の接触と、長い時間の接触とを判別し、これを判定基準とすることも可能である。また、上記の時間的管理機能の要素機器は、エンコーダーやマグネットスケールのような位置情報機器に置き換えることもできる。
【0065】
モーター7の正転駆動当初においては、
図4のようにボールナット部材9の位置は固定されているので、ボールネジ軸8の正転によりボールナット部材9内のボールとの螺合によって、ボールネジ軸8の前進により主軸3が前進する。これにより、先ず第1円錐カム11でカムローラ33、33を両側方に押すので、揺動部材31、31の上端が互いに離反する方向に揺動し、これらの揺動部材31、31がアーム34、34のローラ35、35を押して、これと一体の管軸22、22をそれぞれ回動させ、その前端の刃物ホルダー26、26が閉じる方向に作動する。これによって、
図6(B)のように、刃物ホルダー26、26の刃物27、27がワイヤWの被覆材71を所定深さに切り込んで挟持する。
【0066】
更に、主軸3の前進運動により、第2円錐カム12で副軸4、4のアーム28、28のカムローラ29、29を両方向に押し、これにより、副軸4、4が互いに反対方向に回動してグリッパー25、25が閉じ、ワイヤWを把持する。
【0067】
この状態に至ると、主軸3の第1円錐カム11のピン14aに、位置決め部材18の先端が当接して前進が止められるので、ボールネジ軸8の回転でボールナット部材9が後退する方向に動き出す。このボールナット部材9の後退によりレバー51の軸受部50が後退するので、位置決めロッド5が引張バネの付勢によってレバー51の上端を押しながら後退するとともに、副軸4、4にアーム23を介して連結されている管軸22、22が後退し、これによって、
図6(C)に示すように、刃物27、27で切断されたワイヤ端の被覆材71が芯線70から引き抜かれて剥ぎ取られる。
【0068】
上記した剥離動作のフローは
図7にまとめて示し、またモーター動作を含めた接触判定のフローは
図8にまとめて示す。
【0069】
図9は、一般的に用いられている自動ワイヤストリッパー(以下、自動機と称することがある。)に本発明を適用した例の動作説明図である。この自動ワイヤストリッパーは、電線の被覆剥離機能と共に、電線を一定の長さに切断する測長切断機能を有する。
【0070】
図9(A)のように、電線が収納されているボビン90から引き出された電線63aを、搬送ローラ91で刃物93の先端位置まで搬送し、刃物93を被覆材に切り込ませ、搬送ローラ91を反転させて被覆材を剥ぎ取る。
【0071】
次に、
図9(B)のように、電線63aを指定の長さ搬送し、搬送ローラ92に挿入した後、刃物93によって電線を切断する。切断後は、
図9(C)のように、刃物93を開き、切断された電線63bを搬送ローラ92でストリップ長さ分戻して、刃物93を再度被覆材に切り込ませ、搬送ローラ92を反転させて被覆材を剥ぎ取る。
【0072】
本発明は、特に高速運転の自動ワイヤストリッパーに好適である。
図9に示した電線63aの芯線傷は公知の芯線傷検知システムでも検知可能であるが、短く切断された後の電線63bの芯線傷検知は公知技術では困難である。この場合も、既述した本発明による芯線接触検知機能によって検知可能である。
【0073】
電線のストリップ過程において刃物と電線芯線とが接触する確率は高く、既存の芯線傷検知システムでは、刃物と電線芯線が接触する度にエラー信号が発せられ、自動機は頻繁に停止する。しかし、本発明によって、接触時間やその位置などの時間的要素を既述した如くに管理する機能を有することによって、芯線に刃物が接触しても、その程度や箇所によっては製品不良とはしない判定も可能であり、不要な稼動停止を防止することができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々に変形可能である。
【0075】
例えば、上述した例のように信号生成回路からの電気信号と同一レベルの信号をバッファ回路によってシールド材に印加するだけでなく、或いはこれに代えて、刃物からのインピーダンス変化による変位した信号と同一レベルの信号を刃物に接続されたバッファ回路(図示せず)によってシールド材に印加することができる。
【0076】
また、上述した矩形波信号に代えて、一定の周波数を有する他のパルス信号や、正弦波等の交流信号をはじめとする他の電気信号を印加してもよい。また、電気信号は単電源のみならず、複数の電源を用いて発生させてよい。
【0077】
また、上述した例では、電気信号の印加によるインピーダンスの変化を検出したが、これに代えて、刃物からの電気信号の変化、例えば電流の変化を検出する他の方式又は機構にも本発明は適用可能である。
【0078】
また、上述したシールド材への信号印加方法又は手段は様々に変更してもよい。