(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0016】
[電源装置の構成]
実施例1の電源装置としての自励型回路であるリンギングチョークコンバータ(以下、RCCとする)の回路図を
図1に示す。本実施例のRCCは、コンデンサC11〜C14、抵抗R101〜111、MOSFETQ11(以下、主スイッチング素子Q11とする)、トランジスタQ12〜14、ダイオードD11〜D13を備える。更に本実施例のRCCは、フライバックトランス(以下、単にトランスとする)T11、ツェナーダイオードVZ11、フォトカプラPC11〜12、オペアンプOP11、中央演算処理装置(以下、CPUとする)100を備える。トランスT11は、一次巻線、二次巻線及び補助巻線を有する。
【0017】
ダイオードD11とコンデンサC14は、トランスT11の二次巻線に発生する電圧を整流し平滑する整流平滑回路を構成する。また、抵抗R107、R108、オペアンプOP11、抵抗R106、ツェナーダイオードVZ11は、整流平滑回路の出力電圧を基準電圧と比較し、その差に応じた電圧を出力する誤差検出回路を構成する。抵抗R105、フォトカプラPC11は、誤差検出回路の出力である二次側の情報を一次側に伝達する伝達回路を構成する。更に、フォトカプラPC12、抵抗R104、抵抗R110、コンデンサC13、ダイオードD12、トランジスタQ14は、本実施例の特徴である、主スイッチング素子Q11のオン時間を決定する決定回路を構成する。
【0018】
本実施例のRCCでは、CPU100は、RCCに間欠発振動作を実行させるための信号を出力端子Port1からトランジスタQ13へ出力する。本実施例の特徴的な構成として、CPU100の出力端子Port2は、フォトカプラPC12のLEDに抵抗R111を介して接続されている。CPU100は、出力端子Port2に所定のレベルの信号を出力することによりフォトカプラPC12を制御できるようになっている。即ち、CPU100は、トランスT11の二次巻線の出力電圧に応じて、トランスT11の補助巻線に接続された決定回路が決定するオン時間を切り替える切替手段として機能する。次に
図2のタイミングチャートと照らし合わせながら
図1のRCCの動作を説明する。
【0019】
[電源装置の動作]
図2は、上から二次側出力電圧、主スイッチング素子Q11のドレイン電流、CPU100の出力端子Port1の出力、出力端子Port2の出力を示している。
【0020】
(区間A)
図2において、区間Aは本電源回路が商用電源に接続されておらず、起動していない状態である。二次側出力電圧はゼロで、その出力電圧を電力源とするCPU100も停止しており、CPU100からの信号は出力されていない。従ってCPU100の出力端子Port2からの出力もローレベルであり、フォトカプラPC12はオフとなっている。
【0021】
(区間B)
次に、本実施例の電源回路を商用電源に接続すると区間Bへと移行する。商用電源に接続された初期の段階では、主スイッチング素子Q11のゲート電圧を上昇させるための電流は、起動抵抗R101から供給される。主スイッチング素子Q11がオンになると、トランスT11の一次巻線に電流が流れ、補助巻線に巻線比に応じた電圧が発生する。トランスT11の二次巻線は一次巻線と巻方向が逆であり、ダイオードD11に遮られて電流は流れない。このとき、CPU100も停止しており、CPU100の出力端子Port2の出力はローレベルである。このため、フォトカプラPC12のLEDは、二次側出力電圧がゼロのため発光しておらず、フォトカプラPC12のフォトトランジスタもオフである。従って、補助巻線に発生した電圧による電流は、抵抗R110からトランジスタQ14のベース・エミッタ間を通りコンデンサC13に流れる。これによりトランジスタQ14がオンになり、抵抗R104からもトランジスタQ14のコレクタ・エミッタ間経由でコンデンサC13に電流が流れる。即ち、抵抗R104と抵抗R110は並列に接続される。
【0022】
時間と共にコンデンサC13の電圧が上昇して、トランジスタQ12のベース・エミッタ間電圧のしきい値電圧を超えると、トランジスタQ12がオンになる。トランジスタQ12がオンになると、主スイッチング素子Q11のゲート・ソース間電圧を引き下げるため、主スイッチング素子Q11はオフになる。区間Bでは、主スイッチング素子Q11のドレイン電流のピーク値は、抵抗R110のみからコンデンサC13が充電される場合に比べて小さい。
【0023】
主スイッチング素子Q11がオフになると、トランスT11は蓄えたエネルギーを放出するため、二次巻線に先程とは逆極性の電圧を発生させる。そうすると二次側のダイオードD11が導通し、コンデンサC14が充電され始める。トランスT11に蓄えられた全てのエネルギーが放出されると、自由振動により各巻線の電圧が再び反転する。トランスT11の補助巻線にも主スイッチング素子Q11をターンオンする方向の電圧が発生するが、この時点では二次側の出力電圧がほとんど上昇していないため、このとき補助巻線に発生する電圧では主スイッチング素子Q11をターンオンすることができない。結果として、二次側出力電圧がある程度上昇してくるまでは、主スイッチング素子Q11は起動抵抗R101からの電流供給によるオンしかできない。これが区間Bであり、起動抵抗R101からの電流供給による主スイッチング素子Q11のターンオンには時間がかかるため、主スイッチング素子Q11のドレイン電流の波形は、1波ずつの間隔が長くなっている。
【0024】
(区間C)
区間Cでは、二次側出力電圧の上昇に伴い自由振動による補助巻線の電圧が、主スイッチング素子Q11をターンオンするのに十分な電圧まで達し、起動抵抗R101からの電流に頼らず再度オンできる。このように、連続的に主スイッチング素子Q11がオンオフされている状態を連続発振状態と呼ぶことにする。このため、起動抵抗R101のみでオンしていた区間Bに比べて、主スイッチング素子Q11のターンオンには時間がかからず、区間Cの主スイッチング素子Q11のドレイン電流の波形は、1波ずつの間隔が区間Bに比べて短くなっている。
【0025】
また、区間Cでは、CPU100の出力端子Port2からの出力はローレベルであり、フォトカプラPC12はオフである。このため区間B同様、コンデンサC13へは抵抗R110と抵抗R104を介して電流が流れ、トランジスタQ12がオフするまでの時間が短く、主スイッチング素子Q11のオン時間が短い。このため、主スイッチング素子Q11のドレイン電流のピーク値は、抵抗R110のみからコンデンサC13が充電される場合に比べて小さい。
【0026】
(区間D)
区間Dでは、二次側出力電圧が目標値に達し、オペアンプOP11がフィードバック制御を行っている。同時にCPU100も起動し、効率改善のため出力端子Port1からパルス信号を出力している。CPU100が出力端子Port1からハイレベルの信号を出力すると、トランジスタQ13がオンになり、フォトカプラPC11のLEDが発光する。そして、フォトカプラPC11のフォトトランジスタがオンとなるため、トランジスタQ12がオンになり、主スイッチング素子Q11がオフになる。これにより連続発振状態が強制的に断たれ、電源装置は再度、抵抗R101からの電流供給により起動する状態となる。このように、CPU100は、出力端子Port1からハイレベルの信号を断続的に出力することにより、電源装置に起動と停止を繰り返させ、停止している割合を長くすることで軽負荷時の効率を改善する。このように、間欠的に主スイッチング素子Q11がオンオフされている状態を間欠発振状態とする。区間D以降、CPU100は出力端子Port1からパルス信号を出力し、RCCは間欠発振動作を行う。また、トランスT11の二次側出力電圧は目標電圧に到達し、区間D以降、RCCは間欠発振動作を行いつつ定電圧制御を行う。
【0027】
ここで、区間Dでは、CPU100は出力端子Port2からローレベルの信号を出力しており、区間B、区間C同様、主スイッチング素子Q11のドレイン電流のピーク値は、抵抗R104のみから充電される場合に比べて小さい。このように、間欠発振状態となった区間Dにおいて、ドレイン電流のピーク値が小さいことから、区間DではトランスT11から発生する磁歪音を低減することができる。尚、磁歪音を発生させる要因については後述する。
【0028】
(区間E)
区間Eでは、CPU100は、区間Aから区間Dまでローレベルとしていた出力端子Port2の出力をハイレベルにする。そうすると、フォトカプラPC12のLEDが点灯してフォトカプラPC12のフォトトランジスタがオンし、トランジスタQ14のベース・エミッタ間を短絡する。これによりトランジスタQ14はオフとなり、コンデンサC13への電流供給経路は抵抗R110のみとなる。従って、CPU100が出力端子Port2からローレベルの信号を出力していたときに比べてコンデンサC13の電圧上昇に時間がかかるようになり、結果として主スイッチング素子Q11のオン時間が延びることになる。
【0029】
このように、区間Dまでは、主スイッチング素子Q11のオン時間は、抵抗R104、110及びコンデンサC13の時定数により決定されていた。即ち、並列に接続された抵抗R104とR110の合成抵抗値とコンデンサC13の容量によって時定数が決定されていた。これに対して区間E以降は、CPU100の出力端子Port2からハイレベルの信号を出力することにより、主スイッチング素子Q11のオン時間が、抵抗R110及びコンデンサC13の時定数により決定されるように切り替わる。即ち、本実施例では、時定数を決定している抵抗の抵抗値を切り替えることにより、スイッチング素子Q11のオン時間を決定している時定数を切り替えている。
【0030】
尚、区間Eでは発振は行われていない。これは、二次側出力電圧が目標値に対して十分高い値であるため、オペアンプOP11による通常のフィードバック制御によって発振が抑えられているためである。即ち、区間Eでは、誤差検出回路及び伝達回路によりトランジスタQ12がオンされ、主スイッチング素子Q11がオフとなっており、ドレイン電流も0となっている。時間が経過し二次側出力電圧が低下してくると、オペアンプOP11による発振の抑制が解除され、起動抵抗R101からの電流によって再度発振を再開する。それが次の区間Fの部分である。
【0031】
(区間F)
区間Fでは、時定数が切り替わったことによる、主スイッチング素子Q11のオン時間が延びた効果が表れている。
図2に示すように、主スイッチング素子Q11のオン時間が延びて、ドレイン電流のピーク値が区間B〜区間Dに比べて高くなっている。これにより電源装置は同じ間欠発振状態の区間Dより大きな出力を得ることができるようになる。
【0032】
また、電源起動の区間である区間Bと区間Cでは、主スイッチング素子Q11のオン時間が短く制限されているため、発振周波数が高くなる。そのためこの区間での発振周波数を人間の可聴域以上になるように設定すれば起動時や間欠動作時に聞こえる磁歪音を軽減することができる。区間G以後の区間の動作は、区間EとFの動作を繰り返すこととなる。
【0033】
(磁歪音を生じさせる要因)
ここで、起動時や間欠発振動作時に聞こえる磁歪音について説明する。磁歪音は、トランスT11の巻線やコアの振動を原因とし、この振動は磁束が作り出している。このため、1回あたりのスイッチング動作で発生する磁束の最大値を小さく抑えることで振動を抑制することができ、磁歪音を低減することができる。ここで、磁束Φは、「Φ=LI」(L:インダクタンス、I:電流値)であるため、電流値Iを小さくすることで振動を抑制し、磁歪音を低減することができる。このため、本実施例では、主スイッチング素子Q11のドレイン電流のピーク値を小さくする、即ち、主スイッチング素子Q11のオン時間を短くする。そして、電源起動時に主スイッチング素子Q11のオン時間を短くするために、本実施例では、CPU100がフォトカプラPC12のオンオフを制御し、補助巻線に接続された抵抗とコンデンサを有する回路の時定数を切り替える構成である。この構成により、電源起動時の二次側出力電圧が0又は低い場合に、CPU100がフォトカプラPC12をオフとする。そして、主スイッチング素子Q11のオン時間を、抵抗R104、110及びコンデンサC13の時定数によって決定することで、主スイッチング素子Q11のオン時間を短くしている。
【0034】
本実施例では、二次側出力電圧に応じて停止又は起動するCPU100が出力端子Port2からフォトカプラPC12のオンオフを制御する信号を出力し、フォトカプラPC12のオンオフに応じて、コンデンサC13に流れる電流の経路を切り替える。尚、コンデンサC13に流れる電流の経路を切り替えるということは、時定数を切り替えることでもある。本実施例では、CPU100が主スイッチング素子Q11のオン時間を決定している時定数を切り替えることにより、電源起動時の主スイッチング素子Q11の最大オン時間を制限している。
【0035】
以上、本実施例によれば、僅かな部品追加によりRCCにソフトスタート機能を付与し、且つ、間欠発振動作時の音の対策とすることができる。これによってMOSFETである主スイッチング素子Q11の耐圧ディレーティングを広げる又はRCCの最大出力を引き上げることが可能となる。また、トランスT11の含浸や電源の騒音対策を軽減することが可能となり、コストダウンに繋げることができる。このように、電源装置の起動時(区間B、区間C)には、CPU100の出力端子Port2からローレベルの信号を出力して主スイッチング素子Q11のオン時間を短くすることにより、ドレイン・ソース間電圧を低減させる。また、間欠発振動作時(区間D)には、CPU100の出力端子Port2からローレベルの信号を出力して主スイッチング素子Q11のオン時間を短くすることにより、磁歪音を低減することができる。以上、本実施例によれば、起動時の主スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧を低減させ、且つ、間欠発振動作時に発生する音を低減することができる。
【実施例2】
【0036】
実施例2のRCCの構成を
図3に示す。本実施例では、実施例1のトランジスタQ14を、PNPトランジスタに変更し、抵抗R104、R110、ダイオードD12、フォトカプラPC12の接続関係を変更したものである。このため、実施例1の
図1と同じ構成には同じ符号を付し、説明は省略する。また、全体的な動作は実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0037】
本実施例では、CPU100の出力端子Port2からローレベルの信号を出力しフォトカプラPC12のLEDが消灯して、フォトカプラPC12のフォトトランジスタがオフしているときに、トランジスタQ14がオンする。このとき、トランジスタQ14のエミッタ・ベース間経由で抵抗R110に電流が流れ、抵抗R104にも電流が流れる。即ち、
図2で説明した区間A〜区間Dに相当する。
【0038】
一方、CPU100の出力端子Port2からハイレベルの信号を出力し、フォトカプラPC12のLEDが点灯しているときは、フォトカプラPC12のフォトトランジスタがオンし、トランジスタQ14のエミッタ・ベース間が短絡される。このため、トランジスタQ14はオフとなる。その結果、コンデンサC13を充電する電流供給経路は、抵抗R110を流れる経路のみとなる。即ち、
図2で説明した区間E以降に相当する。
【0039】
本実施例では、
図3のように構成することにより、主スイッチング素子Q11のオン時間を決定する時定数を、CPU100の出力端子Port2からの出力信号に応じてフォトカプラPC12により切り替える。これにより、本実施例によれば、起動時の主スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧を低減させ、且つ、間欠発振動作時に発生する音を低減することができる。
【実施例3】
【0040】
実施例3の電源装置の構成を
図4に示す。本実施例では、実施例1に対して主スイッチング素子Q11の最大オン時間を変更する方法を、抵抗の切り替えからコンデンサの切り替えに変えたものである。具体的には実施例1に対して抵抗R104、トランジスタQ14、ダイオードD12を削除し、本実施例では、フォトカプラPC12の接続先を変えてコンデンサC15を追加している。尚、実施例1の
図1と同じ構成には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0041】
CPU100は、出力端子Port2からローレベルの信号を出力し、フォトカプラPC12のLEDを消灯させ、フォトカプラPC12のフォトトランジスタをオフする。フォトカプラPC12がオフしているとき、抵抗R110を流れる電流は全てコンデンサC13を充電する。即ち、主スイッチング素子Q11のオン時間は、抵抗R110及びコンデンサC13の時定数によって決定される。尚、この状態は、
図2で説明した区間Dまでに相当する。
【0042】
一方、CPU100は、出力端子Port2からハイレベルの信号を出力し、フォトカプラPC12のLEDを点灯させ、フォトカプラPC12のフォトダイードをオンする。フォトカプラPC12がオンしているとき、抵抗R110を流れる電流はコンデンサC13とコンデンサC15の両方を充電する。即ち、フォトカプラPC12のLEDを点灯すると、主スイッチング素子Q11のオン時間が、抵抗R110及びコンデンサC13、C15の時定数によって決定されるように切り替わる。このように、本実施例では、時定数を決定しているコンデンサの容量を切り替えることにより、スイッチング素子Q11のオン時間を決定している時定数を切り替えている。そして、トランジスタQ12のベース・エミッタ間電圧が上昇するのに時間がかかるようになるため、主スイッチング素子Q11のオン時間を長くすることができ、実施例1と同等の効果を得られる。尚、この状態は、
図2で説明した区間E以降に相当する。
【0043】
以上、本実施例によれば、起動時の主スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧を低減させ、且つ、間欠発振動作時に発生する音を低減することができる。
【実施例4】
【0044】
実施例4の電源装置のタイミングチャートを
図5に示す。尚、本実施例の電源装置の回路図は実施例1の
図1と同様とし、説明は省略する。実施例1では、起動時の主スイッチング素子Q11のドレイン・ソース間電圧の跳ね上がりを抑え、且つ間欠発振状態(
図2の区間F等)では比較的大きな出力を取り出せることを特徴としていた。これに対し、本実施例では、間欠発振状態で取り出せる出力を抑える代わりに間欠発振状態での磁歪音を低減させる方法を示す。
【0045】
図5において、区間A〜Dまでは実施例1と同様であり、説明を省略する。区間E〜Gに関し、実施例1ではCPU100の出力端子Port2の出力信号がハイレベルになっていた。本実施例では、CPU100の出力端子Port2の出力信号を区間Dまでと同様にローレベルのままとする。そのようにすることで間欠発振状態である区間D〜Gの全ての区間において、主スイッチング素子Q11のオン時間を短いままとすることができる。これにより、ドレイン電流の変化幅が小さく、従って磁束の変化量も少ないため磁歪音が低減される。
【0046】
また、二次側から大きな出力を取り出す必要が発生した場合には、例えば区間Hに示すように、CPU100の出力端子Port2の出力信号をハイレベルとする。これにより、主スイッチング素子Q11のオン時間を長くし、且つCPU100の出力端子Port1の出力信号をローレベルとすることでトランジスタQ13へのパルス信号の入力を停止して連続発振動作を行わせ、電源装置としての最大出力を得ることができる。このように、CPU100は、磁歪音の低減を優先する場合には出力端子Port2の出力信号をローレベルとし、大きな出力を得ることを優先する場合には出力端子Port2の出力信号をハイレベルとすればよい。
【0047】
このように、本実施例では、CPU100が、フォトカプラPC12のLEDの点灯を任意に制御する構成とする。これにより、例えば本実施例の電源装置を製品に搭載する際には、製品において重い負荷のないスタンバイ状態において区間D〜Gの制御方法を適用し、大きな出力が必要となる製品動作状態において区間Hの制御方法を適用することができる。そして、本実施例の電源装置を搭載した製品においては、スタンバイ状態では高い効率と低い磁歪音を両立させ、動作状態では大きな出力を取り出すことが可能となる。尚、
図5に、電源(製品)としての動作を示す。例えば、RCCは、区間B、区間Cでは起動状態であり、区間D〜区間Gでは間欠発振動作(スタンバイ状態でもある)であり、区間Hでは連続発振状態(動作状態)である。尚、実施例2のようにトランジスタQ14をPNPトランジスタとした構成や、実施例3のようにコンデンサの容量を切り替えることで時定数を切り替える構成に対して、本実施例の構成を適用してもよい。
【0048】
以上、本実施例によれば、起動時の主スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧を低減させ、且つ、間欠発振動作時に発生する音を低減することができる。
【実施例5】
【0049】
実施例5の電源装置の回路図を
図6に示す。本実施例の電源装置では、実施例1の
図1からCPU100を削除し、代わりに二次側の出力電圧を抵抗R112と抵抗R113で分圧し、抵抗R114とコンデンサC16から成る積分回路を介してフォトカプラPC12のLEDに直接接続する構成である。即ち、抵抗R112及び抵抗R113は、トランスT11の二次巻線の出力電圧に応じて、トランスT11の補助巻線に接続された決定回路が決定するオン時間を切り替える切替手段として機能する。尚、実施例1の
図1と同じ構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0050】
これらの定数の設定については、次のようにする。まず、抵抗R112と抵抗R113については次のように設定する。抵抗R112と抵抗R113はフォトカプラPC12のLEDが点灯するタイミングを決める回路である。このため、二次側出力電圧が所望の電圧になったときに、抵抗R113に発生する電圧がフォトカプラPC12のLEDの順方向電圧以上となるように分圧比を設定する。
【0051】
また、抵抗R114とコンデンサC16から成る積分回路は、電源装置の起動が完了する前にフォトカプラPC12のLEDが点灯してしまわないように時間差をつけるためのものである。これによりCPU100がない構成においても、電源起動時のソフトスタートが可能になる。
【0052】
具体的には、起動する前は二次側出力電圧がゼロであるため、フォトカプラPC12は消灯したままであり、実施例1に示すように主スイッチング素子Q11のオン時間は短いままとなる。従ってドレイン・ソース間電圧は抑えられた状態で電源が起動する。一方、二次側出力電圧が十分に上昇して起動が完了したときに、抵抗R112と抵抗R113によって分圧された電圧によって、フォトカプラPC12のLEDが点灯する。この場合、抵抗R114とコンデンサC16から成る積分回路によって、所定の時間差でフォトカプラPC12のLEDが点灯する。フォトカプラPC12のLEDの点灯により、主スイッチング素子Q11のオン時間の抑制が解除され、大きな出力を得ることが可能となる。
【0053】
尚、実施例2のようにトランジスタQ14をPNPトランジスタとした構成や、実施例3のようにコンデンサの容量を切り替えることで時定数を切り替える構成に対して、本実施例の構成を適用してもよい。
【0054】
以上、本実施例によれば、起動時の主スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧を低減させ、且つ、間欠発振動作時に発生する音を低減することができる。
【実施例6】
【0055】
実施例1〜5で説明した電源装置であるRCCは、例えば画像形成装置の低圧電源、即ちコントローラ(制御部)やモータ等の駆動部へ電力を供給する電源として適用可能である。以下に、実施例1〜5の電源装置が適用される画像形成装置の構成を説明する。
【0056】
[画像形成装置の構成]
画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタを例にあげて説明する。
図7に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ300は、静電潜像が形成される像担持体としての感光ドラム311、感光ドラム311を一様に帯電する帯電部317(帯電手段)、感光ドラム311に形成された静電潜像をトナーで現像する現像部312(現像手段)を備えている。そして、感光ドラム311に現像されたトナー像をカセット316から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写部318(転写手段)によって転写して、シートに転写したトナー像を定着器314で定着してトレイ315に排出する。この感光ドラム311、帯電部317、現像部312、転写部318が画像形成部である。また、レーザビームプリンタ300は、実施例1〜5で説明した電源装置であるRCC400を備えている。尚、実施例1〜5のRCC400を適用可能な画像形成装置は、
図7に例示したものに限定されず、例えば複数の画像形成部を備える画像形成装置であってもよい。更に、感光ドラム311上のトナー像を中間転写ベルトに転写する一次転写部と、中間転写ベルト上のトナー像をシートに転写する二次転写部を備える画像形成装置であってもよい。
【0057】
レーザビームプリンタ300は、画像形成部による画像形成動作や、シートの搬送動作を制御する不図示のコントローラを備えており、実施例1〜5に記載のRCC400は、例えばコントローラに電力を供給する。また、実施例1〜5に記載のRCC400は、感光ドラム311を回転するため又はシートを搬送する各種ローラ等を駆動するためのモータ等の駆動部に電力を供給する。
【0058】
本実施例の画像形成装置は、実施例1〜5で説明したソフトスタート機能を備えるRCC400を備えている。このため、本実施例の画像形成装置は、商用電源からの電力供給を開始した電源起動時に、RCC400の主スイッチング素子Q11のドレイン・ソース間電圧を低減することができる。また、本実施例の画像形成装置は、省電力を実現する待機状態(例えば、省電力モードや待機モード)にある場合に、例えばコントローラのみに電力を供給する等、負荷を軽くして消費電力を低減させることができる。即ち、本実施例の画像形成装置では、省電力モード時に、実施例1〜5で説明したRCC400が軽負荷時の間欠発振動作を行う。そして、画像形成装置が省電力モードで稼働している際には、実施例1〜5で説明した構成によって、RCC400から発生する磁歪音を低減することができる。
【0059】
以上本実施例によれば、画像形成装置の電源装置において、起動時の主スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧を低減させ、且つ、間欠発振動作時に発生する音を低減することができる。