特許第6045260号(P6045260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045260
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20161206BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20161206BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20161206BHJP
   H01M 4/62 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
   H01M4/134
   H01M4/70 Z
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 C
   H01G11/26
   !H01M4/62 Z
【請求項の数】14
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2012-195648(P2012-195648)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2013-84581(P2013-84581A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2015年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-203579(P2011-203579)
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-207692(P2011-207692)
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-217646(P2011-217646)
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】田島 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】小國 哲平
(72)【発明者】
【氏名】長多 剛
(72)【発明者】
【氏名】笹川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】栗城 和貴
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−239122(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/138617(WO,A2)
【文献】 特開2010−250968(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/109477(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
H01G 11/22−11/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通部、及び前記共通部から突出される複数の突起と、
前記共通部及び前記複数の突起上に設けられたグラフェンと、
を有する負極を有し、
前記共通部及び前記複数の突起は、活物質であり、
前記複数の突起それぞれの軸の方向は揃っており、
前記複数の突起の間隔は、前記突起の根元部分の幅の1.29倍以上2倍以下であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
集電体と、
前記集電体から突出される複数の突起と、
前記集電体及び複数の突起上に設けられたグラフェンと、
を有する負極を有し、
前記複数の突起は、活物質であり、
前記複数の突起それぞれの軸の方向は揃っており、
前記複数の突起の間隔は、前記突起の根元部分の幅の1.29倍以上2倍以下であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
集電体と、
前記集電体上に設けられる共通部と、
前記共通部から突出される複数の突起と、
前記共通部及び前記複数の突起上に設けられたグラフェンと、
を有する負極を有し、
前記共通部及び前記複数の突起は、活物質であり、
前記複数の突起それぞれの軸の方向は揃っており、
前記複数の突起の間隔は、前記突起の根元部分の幅の1.29倍以上2倍以下であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
共通部、及び前記共通部から突出される複数の突起と、
前記共通部及び前記複数の突起上に設けられたグラフェンと、
を有する負極を有し、
前記共通部及び前記複数の突起は、活物質であり、
前記負極の上面図において、前記複数の突起は、並進対称性を有するように配置されており、
前記複数の突起の間隔は、前記突起の根元部分の幅の1.29倍以上2倍以下であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
集電体と、
前記集電体から突出される複数の突起と、
前記集電体及び複数の突起上に設けられたグラフェンと、
を有する負極を有し、
前記複数の突起は、活物質であり、
前記負極の上面図において、前記複数の突起は、並進対称性を有するように配置されており、
前記複数の突起の間隔は、前記突起の根元部分の幅の1.29倍以上2倍以下であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
集電体と、
前記集電体上に設けられる共通部と、
前記共通部から突出される複数の突起と、
前記共通部及び前記複数の突起上に設けられたグラフェンと、
を有する負極を有し、
前記共通部及び前記複数の突起は、活物質であり、
前記負極の上面図において、前記複数の突起は、並進対称性を有するように配置されており、
前記複数の突起の間隔は、前記突起の根元部分の幅の1.29倍以上2倍以下であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項7】
請求項1、請求項3、請求項4、及び請求項6のいずれか一項において、
前記突起の横断面形状において、前記突起の先端部分の断面積より、前記共通部と接する前記突起の根元部分の断面積の方が大きいことを特徴とする蓄電装置。
【請求項8】
請求項1、請求項3、請求項4、及び請求項6のいずれか一項において、
前記突起の縦断面形状において、前記突起の先端部分の幅の長さより、前記共通部と接する前記突起の根元部分の幅の方が長いことを特徴とする蓄電装置。
【請求項9】
請求項2または請求項5において、
前記突起の横断面形状において、前記突起の先端部分の断面積より、前記集電体と接する前記突起の根元部分の断面積の方が大きいことを特徴とする蓄電装置。
【請求項10】
請求項2または請求項5において、
前記突起の縦断面形状において、前記突起の先端部分の幅の長さより、前記集電体と接する前記突起の根元部分の幅の方が長いことを特徴とする蓄電装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
前記共通部または前記複数の突起は、シリコンで形成されることを特徴とする蓄電装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項において、
前記複数の突起は、柱状、錐体状、板状、またはパイプ状であることを特徴とする蓄電装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項において、
前記複数の突起の先端と前記グラフェンの間に、保護層を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一項において、
前記突起の先端のグラフェン上に絶縁層を有することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池などの、蓄電装置の開発が行われている。
【0003】
蓄電装置用の電極は、集電体の一表面に活物質を形成することにより作製される。負極活物質としては、例えば炭素またはシリコンなど、キャリアとなるイオン(以下、キャリアイオンと示す。)の吸蔵及び放出が可能な材料が用いられる。例えば、シリコンまたはリンがドープされたシリコンは、炭素に比べ、約4倍のキャリアイオンを吸蔵することが可能であるため、理論容量が大きく、蓄電装置の大容量化という点において優れている。
【0004】
しかしながら、キャリアイオンの吸蔵量が増えると、充放電サイクルにおけるキャリアイオンの吸蔵放出に伴う体積の変化が大きく、集電体及びシリコンの密着性が低下してしまい、充放電により電池特性が劣化してしまうという問題がある。そこで、集電体上に、シリコンからなる層を形成し、該シリコンからなる層上にグラファイトからなる層を設けることで、シリコンからなる層の膨張収縮による電池特性の劣化を低減している(特許文献1参照)。
【0005】
また、シリコンは炭素と比較して電気伝導性が低いため、シリコン粒子の表面をグラファイトで被覆し、当該シリコン粒子を含む活物質層を集電体上に形成することで、活物質層の抵抗率を低減した負極を作製している。
【0006】
一方、近年、半導体装置において、導電性を有する電子部材としてグラフェンを用いることが検討されている。グラフェンとは、二重結合(グラファイト結合またはsp結合ともいう。)を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。
【0007】
グラフェンは化学的に安定であり、且つ電気特性が良好であるため、半導体装置に含まれるトランジスタのチャネル領域、ビア、配線等への応用に期待されている。また、リチウムイオンバッテリ用の電極材料の導電性を高めるために、粒子状の活物質にグラファイトまたはグラフェンを被覆している(特許文献2参照)。
【0008】
また、複数の突起が設けられた正極及び負極を用いることで大容量化を図った蓄電装置において、充放電による電極の体積膨張により、電極の間に設けられるセパレータにかかる圧力を低減するため、正極及び負極のそれぞれ突起の先端に絶縁体を設けている(特許文献3乃至5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−283834号公報
【特許文献2】特開2011−29184号公報
【特許文献3】特開2010−219030号公報
【特許文献4】特開2010−239122号公報
【特許文献5】特開2010−219392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、集電体上に設けられたシリコンからなる層をグラファイトからなる層で覆う場合、グラファイトからなる層の厚さがサブミクロンからミクロンと厚くなってしまい、電解質及びシリコンからなる層の間でのキャリアイオンの移動量が低減してしまう。一方、グラファイトを被覆したシリコン粒子を含む活物質層は、活物質層に含まれるシリコン含有量が低減してしまう。これらの結果、シリコン及びキャリアイオンの反応量が低下してしまい、充放電容量の低下の原因となると共に、蓄電装置の急速充放電が困難である。
【0011】
また、粒子状の活物質をグラフェンで被覆しても、度重なる充放電により生じる体積の膨張及び収縮、並びにそれに伴う粒子状の活物質の微粉化を抑制することは困難であった。
【0012】
そこで、本発明の一態様は、充放電容量が大きく、急速充放電が可能であり、且つ充放電による電池特性の劣化が少ない蓄電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、共通部と、共通部から突出する複数の突起と、共通部及び複数の突起上に設けられたグラフェンと、を有し、少なくとも複数の突起は活物質として機能し、複数の突起の軸は揃っている負極を有することを特徴とする蓄電装置である。
【0014】
なお、横断面形状において、複数の突起の先端部分より、共通部と接する複数の突起の根元部分の断面積が大きくてもよい。また、縦断面形状において、複数の突起の先端部分より、共通部と接する複数の突起の根元部分の幅が長くてもよい。
【0015】
本発明の一態様は、集電体と、集電体上に設けられる活物質層とを有し、活物質層は、集電体から突出する複数の突起と、該複数の突起上に設けられたグラフェンとを有し、複数の突起の軸は揃っている負極を有することを特徴とする蓄電装置である。なお、集電体及び複数の突起の間に、共通部を有してもよい。
【0016】
なお、複数の突起の先端部分より、集電体と接する複数の突起の根元部分の断面積が大きくてもよい。また、縦断面形状において、複数の突起の先端部分より、集電体と接する複数の突起の根元部分の幅が長くてもよい。
【0017】
本発明の一態様は、共通部と、共通部から突出する複数の突起と、共通部及び複数の突起上に設けられたグラフェンと、を有し、少なくとも複数の突起は活物質として機能し、複数の突起の上面形状が並進対称性を有することを特徴とする蓄電装置である。
【0018】
なお、横断面形状において、複数の突起の先端部分より、共通部と接する複数の突起の根元部分の断面積が大きくてもよい。また、縦断面形状において、複数の突起の先端部分より、共通部と接する複数の突起の根元部分の幅が長くてもよい。
【0019】
本発明の一態様は、集電体と、集電体上に設けられる活物質層とを有し、活物質層は、集電体から突出する複数の突起と、該複数の突起上に設けられたグラフェンとを有し、複数の突起の上面形状が並進対称性を有することを特徴とする蓄電装置である。なお、集電体及び複数の突起の間に、共通部を有してもよい。
【0020】
なお、複数の突起の先端部分より、集電体と接する複数の突起の根元部分の断面積が大きくてもよい。また、縦断面形状において、複数の突起の先端部分より、集電体と接する複数の突起の根元部分の幅が長くてもよい。
【0021】
上記電極において、共通部とは、集電体の全面を覆い、且つ複数の突起と同様の材料により形成される領域である。また、複数の突起の軸とは、突起の頂点(または上面の中心)と、突起が共通部または集電体と接する面の中心とを通る直線をいう。すなわち、突起の長手方向における中心を通る直線をいう。なお、複数の突起の軸が揃っているとは、複数の突起それぞれの当該直線が略一致することをいい、代表的には、複数の突起それぞれの当該直線でなす角度が10度以下、好ましくは5度以下である。以上のように、複数の突起とは、エッチング工程により形成した構造体を指し、任意の方向にランダムに伸長したウィスカー状の構造体とは異なる。
【0022】
共通部及び複数の突起はシリコンで形成されてもよい。または、共通部及び複数の突起は、リンまたはボロン等の導電性を付与する不純物が添加されたシリコンで形成されてもよい。共通部及び複数の突起は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、若しくは非晶質シリコンで形成されてもよい。または、共通部が単結晶シリコン若しくは多結晶シリコンで形成され、複数の突起が非晶質シリコンで形成されてもよい。または、共通部及び複数の突起の一部が単結晶シリコン若しくは多結晶シリコンで形成され、複数の突起の他部が非晶質シリコンで形成されてもよい。
【0023】
複数の突起は、柱状、錐体状、板状、またはパイプ状であってもよい。
【0024】
複数の突起の先端とグラフェンの間に、保護層を有していてもよい。
【0025】
グラフェンは複数の突起の表面を覆ってもよい。また、グラフェンは、単層のグラフェン及び多層グラフェンを含む。また、グラフェンは、2atomic%以上11atomic%以下、好ましくは3atomic%以上10atomic%以下の酸素を含んでもよい。
【0026】
また、上記負極のグラフェン上に、スペーサとして機能する絶縁層を有してもよい。
【0027】
負極のグラフェン上に設けられる絶縁層は、ドット状、矩形状、格子状等の上面形状を有し、一または複数の突起の先端上に設けられる。また、負極のグラフェン上に設けられる絶縁層は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミド等の有機材料、ガラスペースト、ガラスフリット、ガラスリボン等の低融点ガラスで形成されることが好ましい。なお、負極のグラフェン上に設けられる絶縁層に、電解質の溶質が含まれていてもよい。また、負極のグラフェン上に設けられる絶縁層の厚さは、1μm以上10μm以下、好ましくは2μm以上7μm以下とすることが好ましい。
【0028】
本発明の一態様は、シリコン基板上にマスクを形成した後、シリコン基板の一部をエッチングして、共通部と、共通部から突出される複数の突起とを形成し、共通部および複数の突起上にグラフェンを形成することを特徴とする電極の作製方法である。
【0029】
本発明の一態様は、集電体上にシリコン層を形成し、シリコン層上にマスクを形成した後、シリコン層の一部をエッチングして、集電体から突出する複数の突起を形成し、少なくとも前記複数の突起上にグラフェンを形成することを特徴とする電極の作製方法である。
【0030】
本発明の一態様は、シリコン基板上にマスクを形成した後、シリコン基板の一部をエッチングして、共通部と、共通部から突出される複数の突起とを形成し、さらに酸素プラズマ処理などによって、マスクを後退させて新たなマスクを形成した後、少なくとも共通部から突出される複数の突起の一部をエッチングして、共通部と、横断面形状において複数の突起の先端部分より共通部と接する複数の突起の根元部分の断面積が大きい複数の突起と、を形成し、さらに共通部および当該複数の突起上にグラフェンを形成することを特徴とする負極の作製方法である。
【0031】
本発明の一態様は、集電体上にシリコン層を形成し、シリコン層上にマスクを形成した後、シリコン層の一部をエッチングして、集電体から突出する複数の突起を形成し、さらにマスクをレジストスリミングなどによって後退させて新たなマスクを形成した後、少なくとも集電体から突出する複数の突起の一部をエッチングして、横断面形状において複数の突起の先端部分より集電体と接する複数の突起の根元部分の断面積が大きい複数の突起と、を形成し、さらに集電体および当該複数の突起上にグラフェンを形成することを特徴とする負極の作製方法である。
【0032】
本発明の一態様は、シリコン基板上にマスクを形成した後、シリコン基板の一部をエッチングして、共通部と、共通部から突出される複数の突起とを形成し、共通部および複数の突起上にグラフェンを形成し、グラフェン上にスペーサとして機能する絶縁層を設けることを特徴とする負極の作製方法である。
【0033】
本発明の一態様は、集電体上にシリコン層を形成し、シリコン層上にマスクを形成した後、シリコン層の一部をエッチングして、集電体から突出する複数の突起を形成し、少なくとも前記複数の突起上にグラフェンを形成し、グラフェン上にスペーサとして機能する絶縁層を設けることを特徴とする負極の作製方法である。
【0034】
電極の活物質は、共通部、及び共通部から突出する複数の突起を有する。また、複数の突起の軸が揃っており、さらに共通部に対して垂直方向に突出しているため、電極において突起の密度を高めることが可能であり、活物質の表面積を増加させることができる。また、複数の突起の間には隙間が設けられており、さらに活物質上にグラフェンが設けられることで、充電により活物質が膨張しても、突起同士の接触を低減することが可能であると共に、活物質が剥離しても、活物質の崩落を防ぐことができる。また、複数の突起は並進対称性を有し、負極において均一性高く形成されているため、正極及び負極においての局所的な反応が低減し、キャリアイオン及び活物質の反応が正極及び負極の間で均一に生じる。これらにより、当該負極を蓄電装置に用いた場合、高速な充放電が可能となると共に、充放電による活物質の崩壊及び剥離を抑制できる。すなわち、高充放電サイクル特性がさらに向上した蓄電装置を作製することができる。
【0035】
また、本発明の一態様において、複数の突起は、横断面形状において、複数の突起の先端部分より、集電体または共通部と接する複数の突起の根元部分の断面積が大きい形状である。つまり、当該複数の突起は、先端部分よりも根元部分が太い形状をしている。そのため、機械的強度が向上し、さらに充放電反応による活物質の膨張及び収縮に対しても、微粉化及び剥離などの劣化を抑制することができる。さらに、先端部分よりも根元部分が太い形状である複数の突起を負極に用いて、電池のセル組みを行った場合において、たとえ複数の突起の先端部分が、セパレータなどと接触して折れてしまっても、複数の突起の根元部分は強度が強いため残りやすい。そのため、電池のセル組みによる歩留まりを向上させることができる。
【0036】
また、蓄電装置において、活物質表面が電解質と接触することにより、電解質及び活物質が反応し、活物質の表面に被膜が形成される。当該被膜は(SEI(Solid Electrolyte Interface))と呼ばれ、活物質と電解質の反応を緩和し、安定化させるために必要であると考えられている。しかしながら、当該被膜が厚くなると、キャリアイオンが活物質に吸蔵されにくくなり、活物質と電解質間のキャリアイオン伝導性の低下などの問題がある。そこで、活物質をグラフェンで被覆することで、当該被膜の膜厚の増加を抑制することが可能であり、キャリアイオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0037】
シリコンは炭素と比較すると電気伝導性が低く、また充放電による非晶質化によりさらに電気伝導性が低下するため、シリコンを活物質とする負極は抵抗率が高くなる。しかしながら、グラフェンは導電性が高いため、シリコンをグラフェンで被覆することで、キャリアイオンが通過する場であるグラフェンにおいて電子の移動を十分速くすることができる。また、グラフェンは厚さの薄いシート状であるため、複数の突起をグラフェンで覆うことで、活物質層に含まれるシリコン量をより多くすることが可能であると共に、キャリアイオンの移動がグラファイトより容易となる。これらの結果、キャリアイオンの伝導性を高めることができ、活物質であるシリコン及びキャリアイオンの反応性を高めることが可能であり、キャリアイオンが活物質に吸蔵されやすくなる。このため、当該負極を用いた蓄電装置において、急速充放電が可能となる。
【0038】
また、負極のグラフェン上にスペーサとして機能する絶縁層を有すると、負極及び正極の間にセパレータを設ける必要がなく、負極及び正極の間隔を狭くすることができる。この結果、負極及び正極の間のキャリアイオンの移動量を高めることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の一態様により、複数の突起を有する活物質と、該活物質上に設けられるグラフェンを少なくとも有することで、充放電容量が高く、急速充放電が可能であり、且つ充放電による劣化が少ない蓄電装置を提供することができる。
【0040】
また、本発明の一態様により、複数の突起を有する活物質と、該活物質上に設けられるグラフェンを有し、横断面形状において、複数の突起の先端部分より、集電体または共通部と接する複数の突起の根元部分の断面積が大きい形状であることで、充放電容量が高く、急速充放電が可能であり、且つ充放電による劣化が少ない蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】負極を説明する図である。
図2】負極が有する突起の形状を説明する図である。
図3】負極を説明する図である。
図4】負極の作製方法を説明する図である。
図5】負極を説明する図である。
図6】負極の作製方法を説明する図である。
図7】負極を説明する図である。
図8】負極が有する突起の形状を説明する図である。
図9】負極を説明する図である。
図10】負極の作製方法を説明する図である。
図11】負極の作製方法を説明する図である。
図12】負極を説明する図である。
図13】負極の作製方法を説明する図である。
図14】負極の作製方法を説明する図である。
図15】負極を説明する図である。
図16】スペーサの形状を説明する図である。
図17】負極の作製方法を説明する図である。
図18】負極を説明する図である。
図19】負極の作製方法を説明する図である。
図20】正極を説明する図である。
図21】正極を説明する図である。
図22】蓄電装置を説明する図である。
図23】電子機器を説明する図である。
図24】電子機器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0043】
(実施の形態1)
本実施の形態では、充放電による劣化が少なく、高充放電サイクル特性を有する蓄電装置の負極の構造及びその作製方法について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0044】
図1(A)は負極206の断面図である。負極206が、活物質として機能する構造である。
【0045】
なお、活物質とは、キャリアイオンの吸蔵及び放出に関わる物質を指す。活物質層は、活物質の他に、導電助剤、バインダー、グラフェン等のいずれか一以上を有する。よって、活物質と活物質層は区別される。
【0046】
また、キャリアイオンとしてリチウムイオンを用いる二次電池をリチウム二次電池という。また、リチウムイオンの代わりに用いることが可能なキャリアイオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオン等がある。
【0047】
ここで、負極206の詳細な構造について、図1(B)及び図1(C)を用いて説明する。なお、負極206の代表形態を、図1(B)及び図1(C)において、それぞれ負極206a、206bとして説明する。
【0048】
図1(B)は、負極206aの拡大断面図である。負極206aは、活物質202、及び活物質202上に設けられるグラフェン204を有する。また、活物質202は、共通部202a、及び共通部202aから突出する複数の突起202bを有する。グラフェン204は、活物質202の少なくとも一部を覆っている。また、活物質202の共通部202a及び複数の突起202bの表面を覆っていてもよい。
【0049】
活物質202としては、キャリアであるイオンの吸蔵及び放出が可能なシリコン、ゲルマニウム、スズ、アルミニウム等のいずれか一以上を用いる。なお、充放電の理論容量が高いため、活物質202としてシリコンを用いることが好ましい。または、リン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンを用いてもよい。リン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンは、導電性が高くなるため、負極の導電率を高めることができる。このため、活物質202としてシリコンを用いた負極を有する蓄電装置より、さらに放電容量を高めることができる。
【0050】
共通部202aは、複数の突起202bの下地層として機能する。また、共通部202aは連続した層であり、共通部202a及び複数の突起202bは接している。
【0051】
突起202bは、円柱状221(図2(A)参照。)または角柱状等の柱状、円錐状222(図2(B)参照。)または角錐状等の錐体状、板状223(図2(C)参照。)、パイプ状224(図2(D)参照)。)等の形状を適宜有することができる。なお、突起202bの頂部または稜は湾曲していてもよい。図1(B)においては、突起202bとして円柱状の突起を用いて示す。
【0052】
本実施の形態に示す電極の上面形状について、図3を用いて説明する。
【0053】
図3(A)は、共通部202aと、共通部202aから突出する複数の突起202bの上面図である。ここでは、上面形状が円形である複数の突起202bが配置されている。図3(B)は、図3(A)を方向aに移動したときの上面図である。図3(A)及び図3(B)おいて、複数の突起202bの位置が同一である。すなわち、図3(A)に示す複数の突起202bは並進対称性を有する。なお、ここでは、図3(A)において、方向aに移動したが、方向b、方向cにそれぞれ移動しても、図3(B)と同様の配置となる。
【0054】
また、複数の突起202bにおいて、破線205で示す対称性の単位において、突起202bが占める割合は、25%以上60%以下が好ましい。すなわち、対称性の単位の空隙率は40%以上75%以下であることが好ましい。対称性の単位において、突起202bの占める割合を25%以上とすると、負極における充放電の理論容量を約1000mAh/g以上とすることができる。一方、60%以下とすることで、充放電容量を最大(すなわち、理論容量)とし隣り合う突起が膨張しても突起同士が接触せず、突起の崩壊を防ぐことができる。この結果、高い充放電容量を達成すると共に、充放電による負極の劣化を低減することができる。
【0055】
また、図3(C)は、共通部202aと、共通部202aから突出する複数の突起の上面図である。ここでは、上面形状が円形である突起202bと、上面形状が正方形である突起202cが交互に配置されている。図3(D)は、突起202b、202cを方向bに移動したときの上面図である。図3(C)及び図3(D)の上面図において、突起202b、202cの配置が同一である。すなわち、図3(C)に示す複数の突起202b、202cは並進対称性を有する。
【0056】
複数の突起を、並進対称性を有するように配置することで、複数の突起それぞれの電子伝導性のばらつきを低減することができる。このため、正極及び負極においての局所的な反応が低減され、キャリアイオン及び活物質の反応が均一に生じ、拡散過電圧(濃度過電圧)を防ぐと共に、電池特性の信頼性を高めることができる。
【0057】
共通部202a及び複数の突起202bは適宜、単結晶構造または多結晶構造とすることができる。または、共通部202aを単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起202bを非晶質構造とすることができる。または、共通部202a及び複数の突起202bの一部を単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起202bの他部を非晶質構造とすることができる。なお、当該複数の突起202bの一部は少なくとも共通部202aと接する領域を含む。
【0058】
なお、共通部202a及び複数の突起202bの界面は明確でない。このため、活物質202において、複数の突起202bの間に形成される谷のうち最も深い谷の底を含み、且つ活物質202において、突起202bが形成される面と平行な面を、共通部202a及び複数の突起202bの界面233として定義する。
【0059】
また、複数の突起202bの長手方向は、揃っている。すなわち、複数の突起202bの軸231が揃っている。さらに好ましくは、複数の突起202bのそれぞれの形状が略同一である。このような構造とすることで、活物質の体積を制御することが可能である。なお、突起の軸231とは、突起の頂点(または上面の中心)と、突起が共通部と接する面の中心とを通る直線をいう。すなわち、突起の長手方向における中心を通る直線をいう。なお、複数の突起の軸が揃っているとは、複数の突起それぞれの軸が略一致することをいい、代表的には、複数の突起それぞれの軸でなす角度が10度以下、好ましくは5度以下である。
【0060】
なお、複数の突起202bが共通部202aから伸張している方向を長手方向と呼び、長手方向に切断した断面形状を縦断面形状と呼ぶ。また、複数の突起202bの長手方向と略垂直な面において切断した断面形状を横断面形状と呼ぶ。
【0061】
複数の突起202bについて、横断面形状における幅は、0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.2μm以上0.5μm以下である。また、複数の突起202bの高さは、複数の突起の幅の5倍以上100倍以下、好ましくは10倍以上50倍以下であり、代表的には0.5μm以上100μm以下、好ましくは1μm以上50μm以下である。
【0062】
複数の突起202bの横断面形状における幅を、0.1μm以上とすることで、充放電容量を高めることが可能であり、1μm以下とすることで、充放電において複数の突起が膨張及び収縮しても、崩壊することを抑制することができる。また、複数の突起202bの高さを、0.5μm以上とすることで、充放電容量を高めることが可能であり、100μm以下とすることで、充放電において突起が膨張及び収縮しても、崩壊することを抑制することができる。
【0063】
なお、複数の突起202bにおける「高さ」とは、縦断面形状において、複数の突起202bの頂点(または上面の中心)を通る軸に沿う方向の該頂点と共通部202aの間隔をいう。
【0064】
また、複数の突起202bはそれぞれ、一定の間隔を空けて共通部202a上に設けられる。複数の突起202bの間隔は、複数の突起202bの幅の1.29倍以上2倍以下とすることが好ましい。この結果、当該負極を用いた蓄電装置の充電により突起202bの体積が膨張しても、突起202b同士が接触せず、突起202bの崩壊を妨げることができると共に、蓄電装置の充放電容量の低下を妨げることができる。
【0065】
グラフェン204は、導電助剤として機能する。また、グラフェン204は、活物質として機能する場合もある。
【0066】
グラフェン204は、単層グラフェンまたは多層グラフェンを含む。グラフェン204は、長さが数μmのシート状である。
【0067】
単層グラフェンは、sp結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいい、極めて厚さが薄い。また、炭素で構成される六員環が平面方向に広がっており、一部に、七員環、八員環、九員環、十員環等の、六員環の一部の炭素−炭素結合が切断された多員環が形成される。
【0068】
なお、多員環は、炭素及び酸素で構成される場合がある。または、炭素で構成される多員環の炭素に酸素が結合する場合がある。このような多員環は、六員環の一部の炭素−炭素結合が切断され、結合が切断された炭素に酸素が結合して形成される。このため、当該炭素及び酸素の結合の内部には、イオンの移動が可能な通路として機能する間隙を有する。すなわち、グラフェンに含まれる酸素の割合が多いほど、イオンの移動が可能な通路である間隙の割合が増加する。
【0069】
なお、グラフェン204に酸素が含まれる場合、酸素の割合は全体の2atomic%以上11atomic%以下、好ましくは3atomic%以上10atomic%以下である。酸素の割合が低い程、グラフェンの導電性を高めることができる。また、酸素の割合を高める程、グラフェンにおいてイオンの通路となる間隙をより多く形成することができる。
【0070】
グラフェン204が多層グラフェンの場合、複数の単層グラフェンで構成され、代表的には、単層グラフェンが2層以上100層以下で構成されるため、極めて厚さが薄い。単層グラフェンが酸素を有することで、グラフェンの層間距離は0.34nmより大きく0.5nm以下、好ましくは0.38nm以上0.42nm以下、更に好ましくは0.39nm以上0.41nm以下となる。通常のグラファイトは、単層グラフェンの層間距離が0.34nmであり、グラフェン204の方が層間距離が長いため、単層グラフェンの表面と平行な方向におけるイオンの移動が容易となる。また、酸素を含み、多員環が構成される単層グラフェンまたは多層グラフェンで構成され、所々に間隙を有する。このため、グラフェン204が多層グラフェンの場合、単層グラフェンの表面と平行な方向、即ち単層グラフェン同士の隙間と共に、グラフェンの表面に対する垂直方向、即ち単層グラフェンそれぞれに設けられる間隙をイオンが移動することが可能である。
【0071】
負極の活物質として、シリコンを用いることで、グラファイトを活物質として用いた場合と比較して、理論容量が大きいため、蓄電装置の小型化に有利である。
【0072】
また、負極206の活物質202において共通部202aから複数の突起202bが突出しているため、板状の活物質に比べて表面積が広い。また、複数の突起の軸が揃っており、さらに共通部に対して垂直方向に突出しているため、負極において突起の密度を高めることが可能であり、表面積をより増加させることができる。また、複数の突起の間には隙間が設けられており、さらに、活物質上にグラフェンが設けられるため、充電により活物質が膨張しても、突起同士の接触を低減することが可能である。さらに、活物質が剥離してもグラフェンにより、活物質の崩落を防ぐことができる。また、複数の突起は並進対称性を有し、負極において均一性高く形成されているため、正極及び負極においての局所的な反応が低減し、キャリアイオン及び活物質の反応が正極及び負極の間で均一に生じる。これらのため、負極206を蓄電装置に用いた場合、高速な充放電が可能となると共に、充放電による活物質の崩壊及び剥離を抑制でき、サイクル特性がさらに向上した蓄電装置を作製することができる。さらには、突起の形状が略一致することで、局所的な充放電を低減すると共に、活物質の重量を制御することが可能である。また、突起の高さが揃っていると、電池の作製工程時において局所的な荷重を防ぐことが可能であり、歩留まりを高めることができる。これらのため、電池の仕様を制御しやすい。
【0073】
また、蓄電装置において、活物質202表面が電解質と接触することにより、電解質及び活物質が反応し、活物質の表面に被膜が形成される。当該被膜はSEIと呼ばれ、活物質と電解質の反応を緩和し、安定化させるために必要であると考えられている。しかしながら、当該被膜が厚くなると、キャリアイオンが活物質に吸蔵されにくくなり、活物質と電解質間のキャリアイオン伝導性の低下などの問題がある。
【0074】
活物質202をグラフェン204で被覆することで、当該被膜の膜厚の増加を抑制することが可能であり、キャリアイオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0075】
また、グラフェンは導電性が高いため、シリコンをグラフェンで被覆することで、グラフェンにおいて電子の移動を十分速くすることができる。また、グラフェンは厚さの薄いシート状であるため、複数の突起上にグラフェンを設けることで、活物質層に含まれる活物質量をより多くすることが可能であると共に、キャリアイオンの移動がグラファイトより容易となる。これらの結果、キャリアイオンの伝導性を高めることができ、活物質であるシリコン及びキャリアイオンの反応性を高めることが可能であり、キャリアイオンが活物質に吸蔵されやすくなる。このため、当該負極を用いた蓄電装置において、急速充放電が可能である。
【0076】
なお、活物質202とグラフェン204の間に、酸化シリコン層を有してもよい。活物質202上に酸化シリコン層を設けることで、蓄電装置の充電時に酸化シリコン中にキャリアであるイオンが挿入される。この結果、LiSiO、NaSiO、KSiO等のアルカリ金属シリケート、CaSiO、SrSiO、BaSiO等のアルカリ土類金属シリケート、BeSiO、MgSiO等のシリケート化合物が形成される。これらのシリケート化合物は、キャリアイオンの移動パスとして機能する。また、酸化シリコン層を有することで、活物質202の膨張を抑制することができる。これらのため、充放電容量を維持しつつ、活物質202の崩壊を抑えることができる。なお、充電の後、放電しても、酸化シリコン層において形成されたシリケート化合物から、キャリアイオンとなる金属イオンは全て放出されず、一部残存するため、酸化シリコン層は、酸化シリコン及びシリケート化合物の混合層となる。
【0077】
また、当該酸化シリコン層の厚さを2nm以上10nm以下とすることが好ましい。酸化シリコン層の厚さを2nm以上とすることで、充放電による活物質202の膨張を緩和することができる。また、酸化シリコン層の厚さ10nm以下であると、キャリアとなるイオンの移動が容易であり、放電容量の低下を妨げることができる。酸化シリコン層を活物質202上に設けることで、充放電における活物質202の膨張及び収縮を緩和し、活物質202の崩壊を抑制することができる。
【0078】
また、図1(C)に示す負極206bのように、活物質202に含まれる複数の突起202bの頂部及びグラフェン204の間に、保護層207を設けてもよい。このとき、複数の突起202bの側面はグラフェン204と接する。
【0079】
保護層207は、導電層、半導体層、または絶縁層を適宜用いることができる。保護層207の厚さは100nm以上10μm以下が好ましい。なお、活物質202と比較してエッチング速度の遅い材料を用いて保護層207を形成することで、保護層207が複数の突起をエッチングにより形成する際のハードマスクとして機能し、複数の突起の高さのばらつきを低減することができる。
【0080】
次に、負極206の作製方法について図4を用いて説明する。ここでは、負極206の一形態として、図1(B)に示す負極206aを用いて説明する。
【0081】
図4(A)に示すように、シリコン基板200上にマスク208a〜208eを形成する。
【0082】
シリコン基板200は、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板を用いる。なお、シリコン基板は、リンが添加されたn型シリコン基板、ボロンが添加されたp型シリコン基板を用いることで、集電体を設けずとも、活物質を負極として用いることができる。
【0083】
マスク208a〜208eは、フォトリソグラフィ工程により形成することができる。また、マスク208a〜208eは、インクジェット法、印刷法等を用いて形成することができる。
【0084】
次に、マスク208a〜208eを用いて、シリコン基板200を選択的にエッチングして、図4(B)に示すように、活物質202を形成する。シリコン基板のエッチング方法としては、ドライエッチング法、ウエットエッチング法を適宜用いることができる。なお、深堀りエッチング法であるボッシュ法を用いることで、高さの高い突起を形成することができる。
【0085】
例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)装置を用い、エッチングガスとして塩素、臭化水素、及び酸素を用いて、n型のシリコン基板をエッチングすることで、活物質202を形成することができる。なお、ここでは、共通部202aが残存するように、エッチング時間を調整する。また、エッチングガスの流量比は適宜調整すればよいが、エッチングガスの流量比の一例として、塩素、臭化水素、及び酸素それぞれの流量比を10:15:3とすることができる。
【0086】
本実施の形態に示すように、マスクを用いてシリコン基板をエッチングすることで、軸が揃っている複数の突起を形成することができる。さらには、形状が略一致している複数の突起を形成することができる。
【0087】
次に、活物質202上にグラフェン204を形成することで、図4(C)に示すように、負極206aを作製することができる。
【0088】
グラフェン204の形成方法としては、活物質202上にニッケル、鉄、金、銅またはそれらを含む合金を核として形成した後、メタンまたはアセチレン等の炭化水素を含む雰囲気で核からグラフェンを成長させる気相法がある。また、酸化グラフェンを含む分散液を用いて、活物質202の表面に酸化グラフェンを設けた後、酸化グラフェンを還元し、グラフェンとする液相法がある。
【0089】
酸化グラフェンを含む分散液を得る方法としては、酸化グラフェンを溶媒に分散させる方法、溶媒中でグラファイトを酸化した後、酸化グラファイトを酸化グラフェンに分離して、酸化グラフェンを含む分散液を形成する方法等がある。ここでは、グラファイトを酸化した後、酸化グラファイトを酸化グラフェンに分離して形成した酸化グラフェンを含む分散液を用いて、活物質202上にグラフェン204を形成する方法について、説明する。
【0090】
本実施の形態では、Hummers法と呼ばれる酸化法を用いて酸化グラフェンを形成する。Hummers法は、グラファイト粉末に過マンガン酸カリウムの硫酸溶液等を加えて酸化反応させて酸化グラファイトを含む混合液を形成する。酸化グラファイトは、グラファイトの炭素の酸化により、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基を有する。このため、複数のグラフェンの層間距離がグラファイトと比較して長い。次に、酸化グラファイトを含む混合液に超音波振動を加えることで、層間距離の長い酸化グラファイトを劈開し、酸化グラフェンを分離することができると共に、酸化グラフェンを含む分散液を形成することができる。なお、Hummers法以外の酸化グラフェンの形成方法を適宜用いることができる。
【0091】
なお、酸化グラフェンは、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を有する。なお、これらの置換基は極性が高いため、極性を有する液体中において異なる酸化グラフェン同士は分散しやすく、特に、カルボニル基を有する酸化グラフェンは極性を有する液体中において水素が電離するため、酸化グラフェンはイオン化し、異なる酸化グラフェン同士がより分散しやすい。このため、極性を有する液体においては、均一に酸化グラフェンが分散すると共に、後の工程において、活物質202の表面に均一な割合で酸化グラフェンを設けることができる。
【0092】
酸化グラフェンを含む分散液に活物質202を浸し、活物質202上に酸化グラフェンを設ける方法としては、塗布法、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、電気泳動法等がある。また、これらの方法を複数組み合わせてもよい。なお、電気泳動法を用いると、イオン化した酸化グラフェンを電気的に活物質まで移動させることができるため、複数の突起と接しない共通部の表面にまで酸化グラフェンを設けることが可能である。このため、複数の突起の高さが高い場合でも、共通部及び複数の突起の表面に均一に酸化グラフェン設けることができる。
【0093】
活物質202上に設けられた酸化グラフェンを還元する方法としては、真空中、空気中、あるいは不活性ガス(窒素あるいは希ガス等)中等の雰囲気で、150℃以上、好ましくは200℃以上の温度、活物質202が耐えうる温度以下で加熱する方法がある。加熱する温度が高い程、また、加熱する時間が長いほど、酸化グラフェンが還元されやすく、純度の高い(すなわち、炭素以外の元素の濃度の低い)グラフェンが得られる。または、還元性溶液に浸し、酸化グラフェンを還元する方法がある。
【0094】
なお、Hummers法では、グラファイトを硫酸で処理するため、酸化グラフェンには、スルホン基等も結合しているが、この分解(脱離)は、200℃以上300℃以下、好ましくは200℃以上250℃以下で行われる。したがって、加熱により酸化グラフェンを還元する方法において、酸化グラフェンの還元を200℃以上で行うことが好ましい。
【0095】
上記還元処理において、隣接するグラフェン同士が結合し、より巨大な網目状あるはシート状となる。また、当該還元処理において、酸素の脱離により、グラフェン内には間隙が形成される。更には、グラフェン同士が基体の表面に対して、平行に重なり合う。この結果、グラフェンの層間及びグラフェン内の間隙においてイオンの移動が可能なグラフェンが形成される。
【0096】
本実施の形態により、図1(B)に示す負極206aを形成することができる。
【0097】
なお、シリコン基板200上に保護層を形成し、当該保護層上にマスク208a〜208eを形成し、当該マスク208a〜208eを用いて、分離された保護層207(図1(C)参照。)を形成した後、当該マスク208a〜208e及び分離された保護層を用いてシリコン基板200を選択的にエッチングすることで、図1(C)に示す負極206bを形成することができる。このとき、複数の突起202bの高さが高い場合、即ちエッチング時間が長い場合、エッチング工程においてマスクの厚さが徐々に薄くなり、一部のマスクが除去され、シリコン基板200が露出されてしまう。この結果、突起の高さにばらつきが生じるが、分離された保護層207をハードマスクとして用いることで、シリコン基板200の露出を妨げることが可能であり、突起の高さのばらつきを低減することができる。
【0098】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる構造の負極及びその作製方法について、図5及び図6を用いて説明する。本実施の形態で説明する負極は、実施の形態1と比較して、集電体を有する点が異なる。
【0099】
図5(A)は負極216の断面図である。負極216は、集電体211上に活物質層215が設けられる。
【0100】
ここで、負極216の詳細な構造について、図5(B)乃至図5(D)を用いて説明する。ここでは、負極216に含まれる活物質層215の代表形態を、図5(B)乃至図5(D)において、それぞれ活物質層215a、215b、215cとして説明する。
【0101】
図5(B)は、集電体211及び活物質層215aの拡大断面図である。集電体211上に活物質層215aが設けられる。また、活物質層215aは、活物質212及び活物質212上に設けられるグラフェン214を有する。また、活物質212は、共通部212a、及び共通部212aから突出する複数の突起212bを有する。また、複数の突起212bの長手方向は、揃っている。すなわち、複数の突起212bの軸241が揃っている。なお、突起の軸241とは、突起の頂点(または上面の中心)と、突起が共通部と接する面の中心とを通る直線をいう。すなわち、突起の長手方向における中心を通る直線をいう。
【0102】
また、集電体211としてシリサイドを形成する金属材料を用いる場合、集電体211において、活物質212と接する側にシリサイド層が形成される場合がある。集電体211にシリサイドを形成する金属材料を用いると、チタンシリサイド、ジルコニウムシリサイド、ハフニウムシリサイド、バナジウムシリサイド、ニオブシリサイド、タンタルシリサイド、クロムシリサイド、モリブデンシリサイド、コバルシリサイド、ニッケルシリサイド等がシリサイド層として形成される。
【0103】
集電体211は、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、アルミニウム、銅、チタン等に代表される金属、及びこれらの合金など、導電性の高い材料を用いることができる。なお、集電体211として、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることが好ましい。また、集電体211として、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。
【0104】
集電体211は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。
【0105】
活物質212は、実施の形態1に示す活物質202と同様の材料を適宜用いることができる。
【0106】
共通部212aは、実施の形態1に示す共通部202aと同様に、複数の突起212bの下地層として機能し、集電体211上に連続している層である。また、共通部212a及び複数の突起212bは接している。
【0107】
複数の突起212bは、実施の形態1に示す複数の突起202bの形状を適宜用いることができる。
【0108】
共通部212a及び複数の突起212bは適宜、単結晶構造、多結晶構造、または非晶質構造とすることができる。また、微結晶構造等、これらの中間に位置する結晶構造とすることができる。さらに、共通部212aを単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起212bを非晶質構造とすることができる。または、共通部212a及び複数の突起212bの一部を単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起212bの他部を非晶質構造とすることができる。なお、当該複数の突起212bの一部は少なくとも共通部212aと接する領域を含む。
【0109】
複数の突起212bの幅及び高さは、実施の形態1に示す突起202bと同様にすることができる。
【0110】
グラフェン214は、実施の形態1に示すグラフェン204を適宜用いることができる。
【0111】
なお、図5(C)の活物質層215bに示すように、共通部を有さず、集電体211上に分離された複数の突起212bが設けられ、集電体211及び複数の突起212b上にグラフェン214が形成されてもよい。複数の突起212bの軸251が揃っている。ここでの突起212bの軸251とは、突起の頂点(または上面の中心)と、突起212bが集電体211と接する面の中心とを通る直線をいう。すなわち、突起の長手方向における中心を通る直線をいう。
【0112】
グラフェン214は集電体211の一部と接するため、グラフェン214において電子が流れやすくなり、キャリアイオン及び活物質の反応性を高めることができる。
【0113】
また、図5(D)に示す活物質層215cのように、複数の突起212bの先端及びグラフェン214の間に保護層217を設けてもよい。保護層217は、実施の形態1に示す保護層207と同様の材料を適宜用いることができる。ここでは、図5(B)に示す活物質212を用いて説明したが、図5(C)に示す活物質に保護層217を設けてもよい。
【0114】
本実施の形態に示す負極は、集電体211を支持体として、活物質層を設けることができる。このため、集電体211が箔状、網状等の可撓性を有する場合、可撓性を有する負極を作製することができる。
【0115】
次に、負極216の作製方法について図6を用いて説明する。ここでは、活物質層215の一形態として、図5(B)に示す活物質層215aを用いて説明する。
【0116】
図6(A)に示すように、集電体211上にシリコン層210を形成する。次に、シリコン層210に、実施の形態1と同様に、マスク208a〜208eを形成する。
【0117】
シリコン層210は、CVD法、スパッタリング法等を適宜用いて形成することができる。シリコン層210としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、または非晶質シリコンを用いて形成する。なお、シリコン層210は、リンが添加されたn型シリコン層、ボロンが添加されたp型シリコン層としてもよい。
【0118】
次に、マスク208a〜208eを用いて、シリコン層210を選択的にエッチングして、図6(B)に示すように、活物質212を形成する。シリコン層210のエッチング方法としては、ドライエッチング法、ウエットエッチング法を適宜用いることができる。なお、ドライエッチング法でも、ボッシュ法を用いることで、高さの高い突起を形成することができる。
【0119】
次に、マスク208a〜208eを除去した後、活物質212上に、グラフェン214を形成することで、集電体211上に活物質層215aを有する負極216を作製することができる。
【0120】
グラフェン214は、実施の形態1に示すグラフェン204と同様に形成することができる。
【0121】
なお、図6(B)において、共通部212aをエッチングし、集電体211を露出させることで、図5(C)に示す活物質層215bを有する負極を作製することができる。
【0122】
また、シリコン層210上に保護層を形成し、当該保護層上にマスク208a〜208eを形成し、当該マスク208a〜208eを用いて、分離された保護層217(図5(C)参照。)を形成した後、当該マスク208a〜208e及び分離された保護層217を用いてシリコン層210を選択的にエッチングすることで、図5(D)に示すような活物質層215cを有する負極を形成することができる。このとき、複数の突起212bの高さが高い場合、即ちエッチング時間が長い場合、エッチング工程においてマスクの厚さが徐々に薄くなり、一部のマスクが除去され、シリコン層210が露出されてしまう。この結果、突起の高さにばらつきが生じるが、分離された保護層217をハードマスクとして用いることで、シリコン層210の露出を妨げることが可能であり、突起の高さのばらつきを低減することができる。
【0123】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2と異なる負極の構造及びその作製方法について、図7乃至図11を用いて説明する。
【0124】
図7(A)は負極266の断面図である。負極266が、活物質として機能する構造である。
【0125】
ここで、負極266の詳細な構造について、図7(B)及び図7(C)を用いて説明する。なお、負極266の代表形態を、図7(B)及び図7(C)において、それぞれ負極266a、266bとして説明する。
【0126】
図7(B)は、負極266aの拡大断面図である。負極266aは、活物質262、及び活物質262上に設けられるグラフェン264を有する。また、活物質262は、共通部262a、及び共通部262aから突出する複数の突起262bを有する。グラフェン264は、活物質262の少なくとも一部を覆っている。また、活物質262の共通部262a及び複数の突起262bの表面を覆っていてもよい。
【0127】
活物質262としては、実施の形態1に示す活物質202に列挙する材料の一以上を用いる。
【0128】
共通部262aは、複数の突起262bの下地層として機能する。また、共通部262aは連続した層であり、共通部262a及び複数の突起262bは接している。
【0129】
突起262bは、図7(B)および図7(C)に示すように、縦断面形状において、突起262bの先端部分より、共通部262aと接する突起262bの根元部分の幅が大きい形状である。また、突起262bは円柱状281(図8(A)参照。)または角柱状等の柱状、円錐状282(図8(B)参照。)または角錐状等の錐体状、板状283(図8(C)参照。)、パイプ状284(図8(D)参照)。)等の形状を適宜有することができる。なお、突起262bの頂部または稜は湾曲していてもよい。図7(B)においては、突起262bとして円柱状の突起を用いて示す。
【0130】
このように、複数の突起は、縦断面形状において、突起262bの先端部分より、共通部262aと接する突起262bの根元部分の幅が大きい形状である。つまり、当該複数の突起は、先端部分よりも根元部分が太い形状をしている。そのため、機械的強度が向上し、さらに充放電反応による活物質の膨張及び収縮に対しても、微粉化及び剥離などの劣化を抑制することができる。さらに、先端部分よりも根元部分が太い形状である複数の突起を負極に用いて、電池のセル組みを行った場合において、たとえ複数の突起の先端部分が、セパレータなどと接触して折れてしまっても、複数の突起の根元部分は強度が強いため残りやすい。そのため、電池のセル組みによる歩留まりを向上させることができる。
【0131】
本実施の形態に示す電極の上面形状について、図9を用いて説明する。
【0132】
図9(A)は、共通部262aと、共通部262aから突出する複数の突起262bの上面図である。ここでは、上面形状が円形である複数の突起262bが配置されている。また、図7(B)および図7(C)に示すように、縦断面形状において、突起262bの先端部分より、共通部262aと接する突起262bの根元部分の幅が大きい形状であるため、上面形状において、突起262bは、異なる2つの円形で表される。なお、本実施の形態においては、上面形状において2つの異なる断面積からなる円形によって示される突起262bを示したが、これに限られるものではなく、2つ以上の異なる断面積からなる円形で示される突起を用いてもよい。図9(B)は、図9(A)を方向aに移動したときの上面図である。図9(A)及び図9(B)おいて、複数の突起262bの位置が同一である。すなわち、図9(A)に示す複数の突起262bは並進対称性を有する。なお、ここでは、図9(A)において、方向aに移動したが、方向b、方向cにそれぞれ移動しても、図9(B)と同様の配置となる。
【0133】
また、複数の突起262bにおいて、破線269で示す対称性の単位において、突起262bが占める割合は、25%以上60%以下が好ましい。すなわち、対称性の単位の空隙率は40%以上75%以下であることが好ましい。対称性の単位において、突起262bの占める割合を25%以上とすると、負極における充放電の理論容量を約1000mAh/g以上とすることができる。一方、60%以下とすることで、充放電容量を最大(すなわち、理論容量)とし、隣り合う突起が膨張しても突起同士が接触せず、突起の崩壊を防ぐことができる。この結果、高い充放電容量を達成すると共に、充放電による負極の劣化を低減することができる。
【0134】
また、図9(C)は、共通部262aと、共通部262aから突出する複数の突起の上面図である。ここでは、上面形状が円形である突起262bと、上面形状が正方形である突起262cが交互に配置されている。図9(D)は、突起262b、262cを方向bに移動したときの上面図である。図9(C)及び図9(D)の上面図において、突起262b、262cの配置が同一である。すなわち、図9(C)に示す複数の突起262b、262cは並進対称性を有する。
【0135】
複数の突起を、並進対称性を有するように配置することで、複数の突起それぞれの電子伝導性のばらつきを低減することができる。このため、正極及び負極においての局所的な反応が低減され、キャリアイオン及び活物質の反応が均一に生じ、拡散過電圧(濃度過電圧)を防ぐと共に、電池特性の信頼性を高めることができる。
【0136】
共通部262a及び複数の突起262bは適宜、単結晶構造または多結晶構造とすることができる。または、共通部262aを単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起262bを非晶質構造とすることができる。または、共通部262a及び複数の突起262bの一部を単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起262bの他部を非晶質構造とすることができる。なお、当該複数の突起262bの一部とは少なくとも共通部262aと接する領域を含む。
【0137】
なお、共通部262a及び複数の突起262bの界面は明確でない。このため、活物質262において、複数の突起262bの間に形成される谷のうち最も深い谷の底を含み、且つ活物質262において、突起262bが形成される面と平行な面を、共通部262a及び複数の突起262bの界面233として定義する。
【0138】
また、複数の突起262bの長手方向は、揃っている。すなわち、複数の突起262bの軸231が揃っている。さらに好ましくは、複数の突起262bのそれぞれの形状が略同一である。このような構造とすることで、活物質の体積を制御することが可能である。なお、突起の軸231とは、突起の頂点(または上面の中心)と、突起が共通部と接する面の中心とを通る直線をいう。すなわち、突起の長手方向における中心を通る直線をいう。なお、複数の突起の軸が揃っているとは、複数の突起それぞれの軸が略一致することをいい、代表的には、複数の突起それぞれの軸でなす角度が10度以下、好ましくは5度以下である。
【0139】
なお、複数の突起262bが共通部262aから伸張している方向を長手方向と呼び、長手方向に切断した断面形状を縦断面形状と呼ぶ。また、複数の突起262bの長手方向と略垂直な面において切断した断面形状を横断面形状と呼ぶ。
【0140】
複数の突起262bについて、根元部分における横断面形状の幅は、0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.2μm以上0.5μm以下である。また、複数の突起262bの高さは、複数の突起262bの根元部分の幅の5倍以上100倍以下、好ましくは10倍以上50倍以下であり、代表的には0.5μm以上100μm以下、好ましくは1μm以上50μm以下である。
【0141】
複数の突起262bの根元部分における横断面形状の幅を、0.1μm以上とすることで、充放電容量を高めることが可能であり、1μm以下とすることで、充放電において突起が膨張しても、崩壊することを抑制することができる。また、複数の突起262bの高さを、0.5μm以上とすることで、充放電容量を高めることが可能であり、100μm以下とすることで、充放電において突起が膨張しても、崩壊することを抑制することができる。
【0142】
なお、複数の突起262bにおける「高さ」とは、縦断面形状において、複数の突起262bの頂点(または上面の中心)を通る軸に沿う方向の該頂点と共通部262aの間隔をいう。
【0143】
また、複数の突起262bはそれぞれ、一定の間隔を空けて共通部262a上に設けられる。複数の突起262bの間隔は、複数の突起262bの根元部分の幅の1.29倍以上2倍以下とすることが好ましい。この結果、当該負極を用いた蓄電装置の充電により複数の突起262bの体積が膨張しても、複数の突起262b同士が接触せず、複数の突起262bの崩壊を妨げることができると共に、蓄電装置の充放電容量の低下を妨げることができる。
【0144】
グラフェン264は、導電助剤として機能する。また、グラフェン264は、活物質として機能する場合もある。グラフェン264としては、実施の形態1に示すグラフェン204を適宜用いることができる。
【0145】
また、負極266の活物質262において共通部262aから複数の突起262bが突出しているため、板状の活物質に比べて表面積が広い。また、複数の突起の軸が揃っており、さらに共通部に対して垂直方向に突出しているため、負極において突起の密度を高めることが可能であり、より表面積を増加させることができる。また、複数の突起の間には隙間が設けられており、さらに、活物質をグラフェンが覆うため、充電により活物質が膨張しても、突起同士の接触を低減することが可能である。さらに、活物質が剥離してもグラフェンにより、活物質の崩落を防ぐことができる。また、複数の突起は並進対称性を有し、負極において均一性高く形成されているため、正極及び負極においての局所的な反応が低減し、キャリアイオン及び活物質の反応が正極及び負極の間で均一に生じる。これらのため、負極266を蓄電装置に用いた場合、高速な充放電が可能となると共に、充放電による活物質の崩壊及び剥離を抑制でき、サイクル特性がさらに向上した蓄電装置を作製することができる。さらには、突起の形状が略一致することで、局所的な充放電を低減すると共に、活物質の重量を制御することが可能である。また、突起の高さが揃っていると、電池の作製工程時において局所的な荷重を防ぐことが可能であり、歩留まりを高めることができる。これらのため、電池の仕様を制御しやすい。
【0146】
また、蓄電装置において、活物質262表面が電解質と接触することにより、電解質及び活物質が反応し、活物質の表面に被膜が形成される。当該被膜はSEIと呼ばれ、活物質と電解質の反応を緩和し、安定化させるために必要であると考えられている。しかしながら、当該被膜が厚くなると、キャリアイオンが活物質に吸蔵されにくくなり、活物質と電解質間のキャリアイオン伝導性の低下などの問題がある。
【0147】
活物質262をグラフェン264で被覆することで、当該被膜の膜厚の増加を抑制することが可能であり、キャリアイオン伝導性の低下を抑制することができる。
【0148】
また、グラフェンは導電性が高いため、シリコンをグラフェンで被覆することで、グラフェンにおいて電子の移動を十分速くすることができる。また、グラフェンは厚さの薄いシート状であるため、複数の突起をグラフェンで覆うことで、活物質層に含まれる活物質量をより多くすることが可能であると共に、キャリアイオンの移動がグラファイトより容易となる。これらの結果、キャリアイオンの伝導性を高めることができ、活物質であるシリコン及びキャリアイオンの反応性を高めることが可能であり、キャリアイオンが活物質に吸蔵されやすくなる。このため、当該負極を用いた蓄電装置において、急速充放電が可能である。
【0149】
なお、実施の形態1に示す活物質202及びグラフェン204の間と同様に、活物質262とグラフェン264の間に、酸化シリコン層を有してもよい。このとき、複数の突起262bの側面はグラフェン264と接する。
【0150】
また、図7(C)に示す負極266bのように、活物質262に含まれる複数の突起262bの頂部及びグラフェン264の間に、保護層277を設けてもよい。
【0151】
保護層277は、実施の形態1に示す保護層207と同様に形成することができる。
【0152】
次に、負極266の作製方法について図10及び図11を用いて説明する。ここでは、負極266の一形態として、図7(B)に示す負極266aを用いて説明する。
【0153】
図10(A)に示すように、シリコン基板260上にマスク268a〜268eを形成する。
【0154】
シリコン基板260は、実施の形態1に示すシリコン基板200を適宜用いることができる。
【0155】
マスク268a〜268eは、実施の形態1に示すマスク208a〜208eと同様に形成することができる。
【0156】
次に、マスク268a〜268eを用いて、シリコン基板260を選択的にエッチングして、図10(B)に示すように、活物質261を形成する。シリコン基板260のエッチング方法は、シリコン基板200のエッチング方法を適宜用いることができる。
【0157】
次に、酸素プラズマ処理などによってマスク268a〜268eを後退させ、図10(C)に示すようにマスク268f〜268jを形成する。
【0158】
次に、マスク268f〜268jを用いて、活物質261を選択的にエッチングして、図11(A)に示すように、共通部262a及び複数の突起262bを有する活物質262を形成することができる。なお、ここでは、共通部262aが残存すると共に、縦断面形状において、突起262bの先端部分より、共通部262aと接する突起262bの根元部分の幅が大きい形状となるように、エッチング時間を調整する。活物質261のエッチング方法は、上記シリコン基板260のエッチングと同様に行うことができる。
【0159】
本実施の形態に示すように、マスクを用いてシリコン基板をエッチングすることで、軸が揃っている複数の突起を形成することができる。さらには、形状が略一致している複数の突起を形成することができる。
【0160】
次に、マスク268f〜268jを除去した後に、活物質262上にグラフェン264を形成することで、図11(B)に示すように、負極266aを作製することができる。
【0161】
グラフェン264の形成方法としては、実施の形態1に示すグラフェン204の形成方法を適宜用いることができる。
【0162】
本実施の形態により、図7(B)に示す負極266aを形成することができる。
【0163】
なお、シリコン基板260上に保護層を形成し、当該保護層上にマスク268a〜268eを形成し、当該マスク268a〜268eを用いて、分離された保護層を形成した後、当該マスク268a〜268e及び分離された保護層を用いてシリコン基板260を選択的にエッチングし、その後酸素プラズマ処理などによってマスク268a〜268eを後退させて、新たなマスク268f〜268jおよび保護層267(図7(C)参照。)を形成し、当該マスク268f〜268j及び分離された保護層267を用いて、さらに選択的にエッチングすることで、図7(C)に示す負極266bを形成することができる。このとき、複数の突起262bの高さが高い場合、即ちエッチング時間が長い場合、エッチング工程においてマスクの厚さが徐々に薄くなり、一部のマスクが除去され、シリコン基板260が露出されてしまう。この結果、突起の高さにばらつきが生じるが、分離された保護層267をハードマスクとして用いることで、シリコン基板260の露出を妨げることが可能であり、突起の高さのばらつきを低減することができる。
【0164】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態3と異なる構造の負極及びその作製方法について、図12乃至図14を用いて説明する。本実施の形態で説明する負極は、実施の形態1及び実施の形態3と比較して、集電体を有する点が異なる。また、実施の形態2と比較して、突起の形状が異なる。
【0165】
図12(A)は負極276の断面図である。負極276は、集電体271上に活物質層275が設けられる。
【0166】
ここで、負極276の詳細な構造について、図12(B)乃至図12(D)を用いて説明する。ここでは、負極276に含まれる活物質層275の代表形態を、図12(B)乃至図12(D)において、それぞれ活物質層275a、275b、275cとして説明する。
【0167】
図12(B)は、集電体271及び活物質層275aの拡大断面図である。集電体271上に活物質層275aが設けられる。また、活物質層275aは、活物質272及び活物質272上に設けられるグラフェン274を有する。また、活物質272は、共通部272a、及び共通部272aから突出する複数の突起272bを有する。また、複数の突起272bの長手方向は、揃っている。すなわち、複数の突起272bの軸241が揃っている。
【0168】
複数の突起272bは、図12(B)乃至図12(D)に示すように、縦断面形状において、複数の突起272bの先端部分より、共通部または集電体と接する複数の突起272bの根元部分の幅が大きい形状である。
【0169】
このように、複数の突起は、縦断面形状において、突起272bの先端部分より、共通部または集電体と接する突起272bの根元部分の幅が大きい形状である。つまり、当該複数の突起は、先端部分よりも根元部分が太い形状をしている。そのため、機械的強度が向上し、さらに充放電反応による活物質の膨張及び収縮に対しても、微粉化及び剥離などの劣化を抑制することができる。さらに、先端部分よりも根元部分が太い形状である複数の突起を負極に用いて、電池のセル組みを行った場合において、たとえ複数の突起の先端部分が、セパレータなどと接触して折れてしまっても、複数の突起の根元部分は強度が強いため残りやすい。そのため、電池のセル組みによる歩留まりを向上させることができる。
【0170】
集電体271は、実施の形態2に示す集電体211を適宜用いることができる。
【0171】
活物質272は、実施の形態1に示す活物質202と同様の材料を適宜用いることができる。
【0172】
共通部272aは、実施の形態3に示す共通部262aと同様に、複数の突起272bの下地層として機能し、集電体271上に連続している層である。また、共通部272a及び複数の突起272bは接している。
【0173】
複数の突起272bは、実施の形態3に示す複数の突起262bの形状を適宜用いることができる。
【0174】
共通部272a及び複数の突起272bは適宜、単結晶構造、多結晶構造、または非晶質構造とすることができる。また、微結晶構造等、これらの中間に位置する結晶構造とすることができる。さらに、共通部272aを単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起272bを非晶質構造とすることができる。または、共通部272a及び複数の突起272bの一部を単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起272bの他部を非晶質構造とすることができる。なお、当該複数の突起272bの一部とは少なくとも共通部272aと接する領域を含む。
【0175】
複数の突起272bの幅及び高さは、実施の形態3に示す突起262bと同様にすることができる。
【0176】
グラフェン274は、実施の形態3に示すグラフェン264と同様の構造を適宜用いることができる。
【0177】
なお、図12(C)の活物質層275bに示すように、共通部を有さず、集電体271上に分離された複数の突起272bが設けられ、集電体271及び複数の突起272b上にグラフェン274が形成されてもよい。複数の突起272bの軸251が揃っている。
【0178】
グラフェン274は集電体271の一部と接するため、グラフェン274において電子が流れやすくなり、キャリアイオン及び活物質の反応性を高めることができる。
【0179】
また、図12(D)に示す活物質層275cのように、複数の突起272bの先端及びグラフェン274の間に保護層277を設けてもよい。保護層277は、実施の形態1に示す保護層207と同様の材料を適宜用いることができる。ここでは、図12(B)に示す活物質272を用いて説明したが、図12(C)に示す活物質に保護層277を設けてもよい。
【0180】
本実施の形態に示す負極は、集電体271を支持体として、活物質層を設けることができる。このため、集電体271が箔状、網状等の可撓性を有する場合、可撓性を有する負極を作製することができる。
【0181】
次に、負極276の作製方法について図13及び図14を用いて説明する。ここでは、活物質層275の一形態として、図12(B)に示す活物質層275aを用いて説明する。
【0182】
図13(A)に示すように、集電体271上に、実施の形態2と同様にシリコン層270を形成する。次に、シリコン層270に、実施の形態1と同様に、マスク268a〜268eを形成する。
【0183】
次に、マスク268a〜268eを用いて、シリコン層270を選択的にエッチングして、図13(B)に示すように、活物質280を形成する。シリコン層270のエッチング方法としては、実施の形態1に示すエッチング法を適宜用いることができる。
【0184】
次に、酸素プラズマ処理などによってマスク268a〜268eを後退させ、図13(C)に示すようにマスク268f〜268jを形成する。
【0185】
次に、マスク268f〜268jを用いて、活物質280を選択的にエッチングして、図14(A)に示すように、共通部272a及び複数の突起272bを有する活物質272を形成することができる。なお、ここでは、共通部272aが残存すると共に、縦断面形状において、突起272bの先端部分より、共通部272aと接する突起272bの根元部分の幅が大きい形状となるように、エッチング時間を調整する。活物質280のエッチング方法は、上記シリコン層270のエッチングと同様に行うことができる。
【0186】
次に、マスク268f〜268jを除去した後に、活物質272上にグラフェン274を形成することで、図14(B)に示すように、集電体271上に活物質層275aを有する負極を作製することができる。
【0187】
グラフェン274は、実施の形態1に示すグラフェン204と同様に形成することができる。
【0188】
なお、図14(A)において、共通部272aをエッチングし、集電体271を露出させることで、図12(C)に示す活物質層275bを有する負極を作製することができる。
【0189】
また、シリコン層270上に保護層を形成し、当該保護層上にマスク268a〜268eを形成し、当該マスク268a〜268eを用いて、分離された保護層を形成した後、当該マスク268a〜268e及び分離された保護層を用いてシリコン層270を選択的にエッチングし、その後酸素プラズマ処理などによってマスク268a〜268eを後退させて、新たなマスク268f〜268jおよび保護層277(図12(D)参照。)を形成し、当該マスク268f〜268j及び分離された保護層277を用いて、さらに選択的にエッチングすることで、図12(D)に示す負極を形成することができる。このとき、複数の突起272bの高さが高い場合、即ちエッチング時間が長い場合、エッチング工程においてマスクの厚さが徐々に薄くなり、一部のマスクが除去され、シリコン層270が露出されてしまう。この結果、突起の高さにばらつきが生じるが、分離された保護層277をハードマスクとして用いることで、シリコン層270の露出を妨げることが可能であり、突起の高さのばらつきを低減することができる。
【0190】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4とは異なる負極の構造及びその作製方法について、図15乃至図17を用いて説明する。なお、本実施の形態では、実施の形態1を用いて説明するが、適宜実施の形態3に本実施の形態を適用してもよい。
【0191】
図15(A)は負極206の断面図である。負極206が、活物質として機能する構造である。また、負極206上にスペーサとして機能する絶縁層(以下、スペーサ209と示す。)を有する。
【0192】
ここで、負極206の詳細な構造について、図15(B)及び図15(C)を用いて説明する。なお、負極206の代表形態を、図15(B)及び図15(C)において、それぞれ負極206a、206bとして説明する。
【0193】
図15(B)は、負極206a及びスペーサ209の拡大断面図である。負極206aは、活物質202、及び活物質202上に設けられるグラフェン204を有する。また、活物質202は、共通部202a、及び共通部202aから突出する複数の突起202bを有する。また、負極206aのグラフェン204上にスペーサ209を有する。
【0194】
スペーサ209は、絶縁性を有し、且つ電解質と反応しない材料を用いて形成する。代表的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミド等の有機材料、ガラスペースト、ガラスフリット、ガラスリボン等の低融点ガラスの材料等を用いることができる。なお、上記絶縁性を有し、且つ電解質と反応しない材料に、後に説明する電解質の溶質を混合させてもよい。この結果、スペーサ209は固体電解質としても機能する。
【0195】
スペーサ209の厚さは、1μm以上10μm以下、好ましくは2μm以上7μm以下とすることが好ましい。この結果、従来の蓄電装置のように、正極及び負極の間に厚さ数十μmのセパレータを設けた場合と比較して、正極及び負極の間隔を狭めることが可能であり、正極及び負極の間のキャリアイオンの移動距離を短くできる。このため、正極及び負極の接触を防ぐと共に、蓄電装置内に含まれるキャリアイオンを充放電に有効活用できる。
【0196】
スペーサ209の形状について、図16を用いて説明する。図16は負極206の上面図である。スペーサ209の代表形態を、図16(A)乃至図16(C)において、それぞれスペーサ209a〜209cとして説明する。また、図16において、複数の突起202bを破線で示し、スペーサ209a〜209cを実線で示す。
【0197】
図16(A)は、突起202bそれぞれに一つのスペーサ209aが設けられる負極206の上面図である。ここでは、スペーサ209aの形状を円形としているが、適宜多角形としてもよい。
【0198】
図16(B)は、突起202b上に矩形状のスペーサ209bが設けられる負極206の上面図である。ここでは、複数の突起202bを直線上でまたぐように一つのスペーサ209bが設けられる。なお、ここでは、スペーサ209bの側面は直線状であるが、曲線状であってもよい。
【0199】
図16(C)は、突起202b上に格子状のスペーサ209cが設けられる負極206の上面図である。ここでは、複数の突起202bの先端上に一つのスペーサ209cが設けられる。
【0200】
なお、スペーサ209は、図16の形状に限定されず、一部開口部を有していればよく、円または多角形の閉ループ状でもよい。
【0201】
スペーサ209を負極206上に設けることで、後に形成する蓄電装置において、セパレータが不要である。この結果、蓄電装置の部品数を削減することが可能であり、コストを削減できる。
【0202】
また、図15(C)に示す負極206bのように、活物質202に含まれる複数の突起202bの頂部及びグラフェン204の間に、保護層207を設けてもよい。
【0203】
次に、負極206の作製方法について図17を用いて説明する。ここでは、負極206の一形態として、図15(B)に示す負極206aを用いて説明する。
【0204】
図17(A)に示すように、実施の形態1と同様に、シリコン基板200上にマスク208a〜208eを形成する。
【0205】
次に、実施の形態1と同様に、マスク208a〜208eを用いて、シリコン基板200を選択的にエッチングして、図17(B)に示すように、活物質202を形成する。
【0206】
次に、マスク208a〜208eを除去した後に、実施の形態1と同様に、活物質202上にグラフェン204を形成することで、図17(C)に示すように、負極206aを作製することができる。
【0207】
次に、グラフェン204上にスペーサ209を形成する(図17(C)参照。)。スペーサ209は、印刷法、インクジェット法等を用いて、選択的にスペーサ209の材料を含む組成物を突起上に設けた後、加熱することで、スペーサ209の材料を含む組成物の溶媒を気化させ、スペーサ209を形成することができる。または、スペーサ209の材料を含む組成物に突起の先端のみを浸漬した後、加熱することで、スペーサ209の材料を含む組成物の溶媒を気化させ、スペーサ209を形成することができる。
【0208】
本実施の形態により、図15(B)に示す負極206aを形成することができる。
【0209】
なお、シリコン基板200上に保護層を形成し、当該保護層上にマスク208a〜208eを形成し、当該マスク208a〜208eを用いて、分離された保護層207(図15(C)参照。)を形成した後、当該マスク208a〜208e及び分離された保護層を用いてシリコン基板200を選択的にエッチングする。この後、グラフェン204及びスペーサ209を形成することで、図15(C)に示す負極206bを形成することができる。このとき、複数の突起202bの高さが高い場合、即ちエッチング時間が長い場合、エッチング工程においてマスクの厚さが徐々に薄くなり、一部のマスクが除去され、シリコン基板200が露出されてしまう。この結果、突起の高さにばらつきが生じるが、分離された保護層207をハードマスクとして用いることで、シリコン基板200の露出を妨げることが可能であり、突起の高さのばらつきを低減することができる。
【0210】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態5と異なる構造の負極及びその作製方法について、図18及び図19を用いて説明する。本実施の形態で説明する負極は、実施の形態5と比較して、集電体を有する点が異なる。なお、本実施の形態では、実施の形態2を用いて説明するが、適宜実施の形態4に本実施の形態を適用してもよい。
【0211】
図18(A)は負極216の断面図である。負極216は、集電体211上に活物質層215が設けられる。また、負極216上にスペーサとして機能する絶縁層(以下、スペーサ219と示す。)を有する。
【0212】
ここで、負極216の詳細な構造について、図18(B)乃至図18(D)を用いて説明する。ここでは、負極216に含まれる活物質層215の代表形態を、図18(B)乃至図18(D)において、それぞれ活物質層215a、215b、215cとして説明する。
【0213】
図18(B)は、集電体211、活物質層215a及びスペーサ219の拡大断面図である。集電体211上に活物質層215aが設けられる。また、活物質層215aのグラフェン214上にスペーサ219を有する。
【0214】
スペーサ219は、実施の形態5に示すスペーサ209と同様の材料を適宜用いることができる。
【0215】
なお、図18(C)の活物質層215bに示すように、共通部を有さず、集電体211上に分離された複数の突起212bが設けられ、集電体211及び複数の突起212b上にグラフェン214が形成されてもよい。
【0216】
グラフェン214は集電体211の一部と接するため、グラフェン214において電子が流れやすくなり、キャリアイオン及び活物質の反応性を高めることができる。
【0217】
また、図18(D)に示す活物質層215cのように、複数の突起212bの先端及びグラフェン214の間に保護層217を設けてもよい。
【0218】
次に、負極216の作製方法について図19を用いて説明する。ここでは、活物質層215の一形態として、図18(B)に示す活物質層215aを用いて説明する。
【0219】
図19(A)に示すように、実施の形態2と同様に、集電体211上にシリコン層210を形成する。次に、シリコン層210に、実施の形態2と同様に、マスク208a〜208eを形成する。
【0220】
次に、実施の形態1と同様に、マスク208a〜208eを用いて、シリコン層210を選択的にエッチングして、図19(B)に示すように、活物質212を形成する。
【0221】
次に、実施の形態1と同様に、マスク208a〜208eを除去した後に、活物質212上に、グラフェン214を形成する。
【0222】
グラフェン214は、実施の形態5に示すグラフェン204と同様に形成することができる。
【0223】
次に、グラフェン214上にスペーサ219を形成する(図19(C)参照。)。
【0224】
スペーサ219は、実施の形態5に示すスペーサ209と同様に形成することができる。
【0225】
以上の工程により、集電体211上に活物質層215aを有する負極216、及びスペーサ219を作製することができる。
【0226】
なお、図19(B)において、共通部212aをエッチングし、集電体211を露出させることで、図18(C)に示す活物質層215bを有する負極を作製することができる。
【0227】
また、シリコン層210上に保護層を形成し、当該保護層上にマスク208a〜208eを形成し、当該マスク208a〜208eを用いて、分離された保護層217(図18(C)参照。)を形成した後、当該マスク208a〜208e及び分離された保護層を用いてシリコン層210を選択的にエッチングする。この後、グラフェン214及びスペーサ219を形成することで、図18(D)に示すような活物質層215cを有する負極を作製することができる。このとき、複数の突起212bの高さが高い場合、即ちエッチング時間が長い場合、エッチング工程においてマスクの厚さが徐々に薄くなり、一部のマスクが除去され、シリコン層210が露出されてしまう。この結果、突起の高さにばらつきが生じるが、分離された保護層217をハードマスクとして用いることで、シリコン層210の露出を妨げることが可能であり、突起の高さのばらつきを低減することができる。
【0228】
(実施の形態7)
本実施の形態では、蓄電装置の構造及び作製方法について説明する。
【0229】
はじめに、正極及びその作製方法について説明する。
【0230】
図20(A)は正極311の断面図である。正極311は、正極集電体307上に正極活物質層309が形成される。
【0231】
正極集電体307は、白金、アルミニウム、銅、チタン、ステンレス等の導電性の高い材料を用いることができる。また、正極集電体307は、箔状、板状、網状等の形状を適宜用いることができる。
【0232】
正極活物質層309は、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn等のリチウム化合物、V、Cr、MnO等を材料として用いることができる。
【0233】
または、オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物(一般式LiMPO(Mは、Fe,Mn,Co,Niの一以上)を用いることができる。一般式LiMPOの代表例としては、LiFePO、LiNiPO、LiCoPO、LiMnPO、LiFeNiPO、LiFeCoPO、LiFeMnPO、LiNiCoPO、LiNiMnPO(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFeNiCoPO、LiFeNiMnPO、LiNiCoMnPO(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFeNiCoMnPO(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
【0234】
または、一般式LiMSiO(Mは、Fe,Mn,Co,Niの一以上)等のリチウム含有複合酸化物を用いることができる。一般式LiMSiOの代表例としては、LiFeSiO、LiNiSiO、LiCoSiO、LiMnSiO、LiFeNiSiO、LiFeCoSiO、LiFeMnSiO、LiNiCoSiO、LiNiMnSiO(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、LiFeNiCoSiO、LiFeNiMnSiO、LiNiCoMnSiO(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、LiFeNiCoMnSiO(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
【0235】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、正極活物質層309として、上記リチウム化合物及びリチウム含有複合酸化物において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等)、ベリリウム、またはマグネシウムを用いてもよい。
【0236】
図20(B)は、正極活物質層309の平面図である。正極活物質層309は、キャリアイオンの吸蔵放出が可能な粒子状の正極活物質321と、当該正極活物質321の複数を覆いつつ、当該正極活物質321が内部に詰められたグラフェン323とを有する。複数の正極活物質321の表面を異なるグラフェン323が覆う。また、一部において、正極活物質321が露出していてもよい。なお、グラフェン323は、実施の形態1に示すグラフェン204を適宜用いることができる。
【0237】
正極活物質321の粒径は、20nm以上100nm以下が好ましい。なお、正極活物質321内を電子が移動するため、正極活物質321の粒径はより小さい方が好ましい。
【0238】
また、正極活物質層309はグラフェン323を有することで、正極活物質321の表面にグラファイト層が被覆されていなくとも十分な特性が得られるが、グラファイト層が被覆されている正極活物質及びグラフェン323を共に用いると、電子が正極活物質間をホッピングし、電流が流れるためより好ましい。
【0239】
図20(C)は、図20(B)の正極活物質層309の一部における断面図である。正極活物質層309は、正極活物質321、及び該正極活物質321を覆うグラフェン323を有する。グラフェン323は断面図においては線状で観察される。同一のグラフェンまたは複数のグラフェンにより、複数の正極活物質を内包する。即ち、同一のグラフェンまたは複数のグラフェンの間に、複数の正極活物質が内在する。なお、グラフェンは袋状になっており、該内部において、複数の正極活物質を内包する場合がある。また、グラフェンに覆われず、一部に正極活物質が露出している場合がある。
【0240】
正極活物質層309の厚さは、20μm以上100μm以下の間で所望の厚さを選択する。なお、クラックや剥離が生じないように、正極活物質層309の厚さを適宜調整することが好ましい。
【0241】
なお、正極活物質層309には、グラフェンの体積の0.1倍以上10倍以下のアセチレンブラック粒子や1次元の拡がりを有するカーボン粒子(カーボンナノファイバー等)、公知のバインダーを有してもよい。
【0242】
なお、正極活物質においては、キャリアとなるイオンの吸蔵により体積が膨張する材料がある。このため、充放電により、正極活物質層が脆くなり、正極活物質層の一部が崩落してしまい、この結果蓄電装置の信頼性が低下する。しかしながら、正極活物質の周辺をグラフェン323で覆うことで、正極活物質が充放電により体積が増減しても、正極活物質の分散や正極活物質層の崩落を妨げることが可能である。即ち、グラフェンは、充放電にともない正極活物質の体積が増減しても、正極活物質同士の結合を維持する機能を有する。
【0243】
また、グラフェン323は、複数の正極活物質と接しており、導電助剤としても機能する。また、キャリアイオンの吸蔵放出が可能な正極活物質321を保持する機能を有する。このため、正極活物質層にバインダーを混合する必要が無く、正極活物質層当たりの正極活物質量を増加させることが可能であり、蓄電装置の放電容量を高めることができる。
【0244】
次に、正極活物質層309の作製方法について説明する。
【0245】
粒子状の正極活物質及び酸化グラフェンを含むスラリーを形成する。次に、正極集電体上に、当該スラリーを塗布した後、実施の形態1に示すグラフェンの作製方法と同様に、還元雰囲気での加熱により還元処理を行って、正極活物質を焼成すると共に、酸化グラフェンに含まれる酸素を脱離させ、グラフェンに間隙を形成する。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て還元されず、一部の酸素はグラフェンに残存する。以上の工程により、正極集電体307上に正極活物質層309を形成することができる。この結果、正極活物質層の導電性が高まる。
【0246】
酸化グラフェンは酸素を含むため、極性溶媒中では負に帯電する。この結果、酸化グラフェンは互いに分散する。このため、スラリーに含まれる正極活物質が凝集しにくくなり、焼成による正極活物質の粒径の増大を低減することができる。このため、正極活物質内の電子の移動が容易となり、正極活物質層の導電性を高めることができる。
【0247】
なお、図21に示すように、正極311の表面にスペーサ331を設けてもよい。図21(A)はスペーサを有する正極の斜視図であり、図21(A)の一点波線A−Bの断面図を図21(B)に示す。
【0248】
図21(A)及び図21(B)に示すように、正極311は、正極集電体307上に正極活物質層309が設けられる。また、正極活物質層309上にスペーサ331が設けられる。
【0249】
スペーサ331は、絶縁性を有し、且つ電解質と反応しない材料を用いて形成することが可能であり、代表的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミド、の有機材料、ガラスペースト、ガラスフリット、ガラスリボン等の低融点ガラスを用いることができる。スペーサ331を正極311上に設けることで、後に形成する蓄電装置において、セパレータが不要である。この結果、蓄電装置の部品数を削減することが可能であり、コストを削減できる。
【0250】
スペーサ331は、平面形状を格子状、円または多角形の閉ループ状等の、一部の正極活物質層309を露出させる形状とすることが好ましい。この結果、正極及び負極の接触を防ぐと共に、正極及び負極の間のキャリアイオンの移動を促すことができる。
【0251】
スペーサ331の厚さは、1μm以上5μm以下、好ましくは2μm以上3μmとすることが好ましい。この結果、従来の蓄電装置のように、正極及び負極の間に厚さ数十μmのセパレータを設けた場合と比較して、正極及び負極の間隔を狭めることが可能であり、正極及び負極の間のキャリアイオンの移動距離を短くできる。このため、蓄電装置内に含まれるキャリアイオンを充放電に有効活用できる。
【0252】
スペーサ331は、印刷法、インクジェット法等を適宜用いて形成することができる。
【0253】
次に、蓄電装置の構造及び作製方法について説明する。
【0254】
本実施の形態の蓄電装置の代表例であるリチウム二次電池の一形態について図22を用いて説明する。ここでは、リチウム二次電池の断面構造について、以下に説明する。
【0255】
図22は、リチウム二次電池の断面図である。
【0256】
リチウム二次電池400は、負極集電体407及び負極活物質層409で構成される負極411と、正極集電体401及び正極活物質層403で構成される正極405と、負極411及び正極405で挟持されるセパレータ413とで構成される。なお、セパレータ413中には電解質415が含まれる。また、負極集電体407は外部端子419と接続し、正極集電体401は外部端子417と接続する。外部端子419の端部はガスケット421に埋没されている。即ち、外部端子417、419は、ガスケット421によって絶縁されている。
【0257】
負極411は、実施の形態1に示す負極206、実施の形態2に示す負極216、実施の形態3に示す負極266、または実施の形態4に示す負極276を適宜用いて形成すればよい。
【0258】
正極集電体401及び正極活物質層403はそれぞれ、本実施の形態に示す正極集電体307及び正極活物質層309を適宜用いることができる。
【0259】
セパレータ413は、絶縁性の多孔体を用いる。セパレータ413の代表例としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレン等がある。
【0260】
なお、正極405として、図21に示すように、正極活物質層上にスペーサを有する正極を用いる場合は、セパレータ413を設けなくともよい。
【0261】
電解質415の溶質は、キャリアイオンを有する材料を用いる。電解質の溶質の代表例としては、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSON等のリチウム塩がある。
【0262】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、電解質415の溶質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等)、ベリリウム、またはマグネシウムを用いてもよい。
【0263】
また、電解質415の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な材料を用いる。電解質415の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解質415の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性を含めた安全性が高まる。また、リチウム二次電池400の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。また、電解質415の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。
【0264】
また、電解質415として、LiPO等の固体電解質を用いることができる。なお、電解質415として固体電解質を用いる場合は、セパレータ413は不要である。
【0265】
外部端子417、419は、ステンレス鋼板、アルミニウム板などの金属部材を適宜用いることができる。
【0266】
なお、本実施の形態では、リチウム二次電池400として、コイン型リチウム二次電池を示したが、封止型リチウム二次電池、円筒型リチウム二次電池、角型リチウム二次電池等様々な形状のリチウム二次電池とすることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0267】
次に、本実施の形態に示すリチウム二次電池400の作製方法について説明する。
【0268】
実施の形態1及び本実施の形態に示す作製方法により、適宜正極405及び負極411を作製する。
【0269】
次に、正極405、セパレータ413、及び負極411を電解質415に含浸させる。次に、外部端子417に、正極405、セパレータ413、ガスケット421、負極411、及び外部端子419の順に積層し、「コインかしめ機」で外部端子417及び外部端子419をかしめてコイン型のリチウム二次電池を作製することができる。
【0270】
なお、外部端子417及び正極405の間、または外部端子419及び負極411の間に、スペーサ、及びワッシャを入れて、外部端子417及び正極405の接続、並びに外部端子419及び負極411の接続をより高めてもよい。
【0271】
(実施の形態8)
本発明の一態様に係る蓄電装置は、電力により駆動する様々な電気機器の電源として用いることができる。
【0272】
本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器の具体例として、表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのカメラ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、エアコンディショナーなどの空調設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、透析装置などが挙げられる。また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持った複合型自動車(ハイブリッドカー)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車などが挙げられる。
【0273】
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための蓄電装置(主電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができる蓄電装置(無停電電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うための蓄電装置(補助電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
【0274】
図23に、上記電気機器の具体的な構成を示す。図23において、表示装置5000は、本発明の一態様に係る蓄電装置5004を用いた電気機器の一例である。具体的に、表示装置5000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体5001、表示部5002、スピーカー部5003、蓄電装置5004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置5004は、筐体5001の内部に設けられている。表示装置5000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置5004を無停電電源として用いることで、表示装置5000の利用が可能となる。
【0275】
表示部5002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0276】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0277】
図23において、据え付け型の照明装置5100は、本発明の一態様に係る蓄電装置5103を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置5100は、筐体5101、光源5102、蓄電装置5103等を有する。図23では、蓄電装置5103が、筐体5101及び光源5102が据え付けられた天井5104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置5103は、筐体5101の内部に設けられていても良い。照明装置5100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置5103を無停電電源として用いることで、照明装置5100の利用が可能となる。
【0278】
なお、図23では天井5104に設けられた据え付け型の照明装置5100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井5104以外、例えば側壁5105、床5106、窓5107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0279】
また、光源5102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0280】
図23において、室内機5200及び室外機5204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置5203を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機5200は、筐体5201、送風口5202、蓄電装置5203等を有する。図23では、蓄電装置5203が、室内機5200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置5203は室外機5204に設けられていても良い。或いは、室内機5200と室外機5204の両方に、蓄電装置5203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機5200と室外機5204の両方に蓄電装置5203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置5203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0281】
なお、図23では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
【0282】
図23において、電気冷凍冷蔵庫5300は、本発明の一態様に係る蓄電装置5304を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫5300は、筐体5301、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303、蓄電装置5304等を有する。図23では、蓄電装置5304が、筐体5301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫5300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置5304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置5304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫5300の利用が可能となる。
【0283】
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0284】
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫5300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置5304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置5304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0285】
次に、電気機器の一例である携帯情報端末について、図24を用いて説明する。
【0286】
図24(A)及び図24(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。図24(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0287】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
【0288】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0289】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
【0290】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0291】
また、図24(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0292】
図24(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する。なお、図24(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示しており、バッテリー9635は、上記実施の形態で説明した蓄電装置を有している。
【0293】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0294】
また、この他にも図24(A)及び図24(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0295】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の一面または二面に設けることによって効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0296】
また、図24(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図24(C)にブロック図を示し説明する。図24(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図24(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0297】
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0298】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力電送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0299】
また、上記実施の形態で説明した蓄電装置を具備していれば、図24に示した電気機器に特に限定されないことは言うまでもない。
【0300】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
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