(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
--実施形態1--
[円筒形二次電池の構造]
以下、この発明による円筒形蓄電素子について、リチウムイオン円筒形二次電池を一実施形態として図面と共に説明する。
図1は、この発明の円筒形二次電池の一実施形態を示す断面図であり、
図2は、
図1に示された円筒形二次電池の分解斜視図である。
円筒形二次電池1は、例えば、外形40mmφ、高さ100mmの寸法を有する。
この円筒形二次電池1は、有底円筒形の電池缶2およびハット形の上蓋3の内部に、以下に説明する発電用の各構成部材を収容している。有底円筒形の電池缶2には、その開放側である上端部側に電池缶2の内側に突き出した溝2aが形成されている。
【0011】
(電極群)
電池缶2内には電極群10が収容されている。電極群10は、中央部に軸芯15を有し、軸芯15の周囲に正極電極11(
図3参照)および負極電極12(
図3参照)が捲回されている。
図3は、電極群10の構造の詳細を示し、一部を切断した状態の斜視図である。
図3に図示されるように、電極群10は、軸芯15の周囲に、正極電極11、負極電極12、および第1、第2のセパレータ13、14が捲回された構成を有する。
軸芯15は、中空円筒状を有し、軸芯15には、負極電極12、第1のセパレータ13、正極電極11および第2のセパレータ14が、この順に積層され、捲回されている。最内周の負極電極12の内側には第1のセパレータ13および第2のセパレータ14が数周(
図3では、1周)捲回されている。また、最外周は負極電極12およびその外周に捲回された第1のセパレータ13となっている。最外周の第1のセパレータ13が接着テープ19で止められる(
図2参照)。
【0012】
正極電極11は、アルミニウム、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属箔により形成され長尺な形状を有し、正極金属箔11aと、この正極金属箔11aの両面に正極合剤が塗布された正極合剤塗工部11bを有する。この正極合剤未塗工部11cには、軸芯15と平行に上方に突き出す多数の正極タブ16が等間隔に一体的に形成されている。
【0013】
正極合剤は正極活物質と、正極導電材と、正極バインダとからなる。正極活物質はリチウム酸化物が好ましい。例として、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウム複合酸化物(コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる2種類以上を含むリチウム酸化物)などが挙げられる。正極導電材は、正極合剤中におけるリチウムの吸蔵放出反応で生じた電子の正極電極11への伝達を補助できるものであれば制限は無い。しかし中でも上述の材料である、コバルト酸リチウムとマンガン酸リチウムとニッケル酸リチウムとからなるリチウム複合酸化物を使用することにより良好な特性が得られる。
【0014】
正極バインダは、正極活物質と正極導電材を結着させ、また正極合剤と正極集電体を結着させることが可能であり、非水電解液との接触により、大幅に劣化しなければ特に制限はない。正極バインダの例としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)やフッ素ゴムなどが挙げられる。正極合剤層の形成方法は、正極電極上に正極合剤が形成される方法であれば制限はない。正極合剤の形成方法の例として、正極合剤の構成物質の分散溶液を正極金属箔11a上に塗布する方法が挙げられる。このような方法で製造することにより特性の優れた正極合剤が得られる。
【0015】
正極合剤を正極金属箔11aに塗布する方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法、などが挙げられる。正極合剤に分散溶液の溶媒例としてN−メチルピロリドン(NMP)や水等を添加し、混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム系金属箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、裁断する。正極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。正極金属箔11aを裁断する際、正極タブ16を一体的に形成する。すべての正極タブ16の長さは、ほぼ同じである。
【0016】
負極電極12は、銅、銅合金等の銅系金属箔により形成され長尺な形状を有し、負極金属箔12aと、この負極金属箔12aの両面に負極合剤が塗布された負極合剤塗工部12bを有する。負極金属箔12aの長手方向に沿う下方側の側縁は、負極合剤が塗布されず銅系金属箔が表出した負極合剤未塗工部12cとなっている。この負極合剤未塗工部12cには、正極タブ16とは反対方向に延出された、多数の負極タブ17が等間隔に一体的に形成されている。
【0017】
負極合剤は、負極活物質と、負極バインダと、増粘剤とからなる。負極合剤は、アセチレンブラックなどの負極導電材を有しても良い。負極活物質としては、黒鉛炭素を用いること、特に人造黒鉛を使用することが好ましい。しかしその中でも次に記載する方法により優れた特性の負極合剤が得られる。黒鉛炭素を用いることにより、大容量が要求されるプラグインハイブリッド自動車や電気自動車向けのリチウムイオン二次電池が作製できる。負極合剤の形成方法は、負極金属箔12a上に負極合剤が形成される方法であれば制限はない。負極合剤を負極金属箔12aに塗布する方法の例として、負極合剤の構成物質の分散溶液を負極金属箔12a上に塗布する方法が挙げられる。塗布方法の例として、ロール塗工法、スリットダイ塗工法などが挙げられる。
【0018】
負極合剤を負極金属箔12aに塗布する方法の例として、負極合剤に分散溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンや水を添加し、混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅系金属箔の両面に均一に塗布し、乾燥させた後、裁断する。負極合剤の塗布厚さの一例としては片側約40μmである。負極金属箔12aを裁断する際、負極タブ17を一体的に形成する。すべての負極タブ17の長さは、ほぼ同じである。
なお、本発明の実施形態において、負極タブ17の成形時に補強用変形部が形成される。補強用変形部の構造、製造方法等、詳細は後述する。
【0019】
第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の幅は、負極金属箔12aに形成される負極合剤塗工部12bの幅より大きく形成されている。また、負極合剤塗工部12bの幅は、正極金属箔11aに形成される正極合剤塗工部11bの幅より大きく形成されている。
つまり、正極合剤塗工部11bの幅よりも、常に、負極合剤塗工部12bの幅が大きい。これは、リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質であるリチウムがイオン化してセパレータを浸透するが、負極側に負極活物質が形成されておらず負極金属箔12aが露出していると負極金属箔12aにリチウムが析出し、内部短絡を発生する原因となるからである。
セパレータ13は、例えば、厚さ40μmのポリエチレン製多孔膜である。
【0020】
(発電ユニット)
図1および
図3において、中空な円筒形状の軸芯15の上端部に正極集電部材31が圧入されている。正極集電部材31は、ほぼ、円盤形状に形成され、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金などのアルミニウム系金属により形成されている。
正極金属箔11aの正極タブ16は、正極集電部材31の上部筒部31aに溶接される。この場合、
図2に図示されるように、正極タブ16は、正極集電部材31の上部筒部31a上に重なり合って接合されている。
【0021】
軸芯15の下端部の外周には、負極集電部材21が圧入されて固定されている。負極集電部材21は、ほぼ、円盤状に形成され、例えば、銅または銅合金などの銅系金属により形成されている。
負極金属箔12aの負極タブ17は、すべて、負極集電部材21の外周筒部21aに超音波溶接等により溶接されている。
【0022】
負極集電部材21の外周筒部21aの外周には、負極金属箔12aの負極タブ17およびリング状の押え部材22が溶接されている。多数の負極タブ17は、負極集電部材21の外周筒部21aの外周に密着させておき、負極タブ17の外周に押え部材22を巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
【0023】
負極集電部材21の下面には、銅製の負極通電リード23が溶接されている。
負極通電リード23は、電池缶2の底部において、電池缶2に溶接されている。
電池缶2は、例えば、0.5mmの厚さの炭素鋼で形成され、表面にニッケルメッキが施されている。このような材料を用いることにより、負極通電リード23は、電池缶2に抵抗溶接等により溶接することができる。
【0024】
正極集電部材31の中央部には、負極通電リード23を電池缶2に溶接するための電極棒(図示せず)を挿通するための開口部31bが形成されている。より詳細には、電極棒を正極集電部材31に形成された開口部31bから軸芯15の中空部に差し込み、その先端部で負極通電リード23を電池缶2の底部内面に押し付けて抵抗溶接を行う。
【0025】
正極集電部材31の上部筒部31aの外周には、正極金属箔11aの正極タブ16およびリング状の押え部材32が溶接されている。多数の正極タブ16は、正極集電部材31の上部筒部31aの外周に密着させておき、正極タブ16の外周に押え部材32を巻き付けて仮固定し、この状態で溶接される。
多数の正極タブ16が正極集電部材31に溶接され、多数の負極タブ17が負極集電部材21に溶接されることにより、正極集電部材31、負極集電部材21および電極群10が一体的にユニット化された発電ユニット20が構成される(
図2参照)。但し、
図2においては、図示の都合上、負極集電部材21、押え部材22および負極通電リード23は発電ユニット20から分離して図示されている。
【0026】
(円筒形二次電池)
正極集電部材31の上面には、複数のアルミニウム箔が積層されて構成されたフレキシブルな接続部材33が、その一端を溶接されて接合されている。接続部材33は、複数枚のアルミニウム箔を積層して一体化することにより、大電流を流すことが可能とされ、且つ、フレキシブル性を付与されている。
【0027】
正極集電部材31上には、円形の開口部41aを有する絶縁性樹脂材料からなるリング状の絶縁板41が載置されている。
絶縁板41は、開口部41a(
図2参照)と下方に突出す側部41bを有している。絶縁板41の開口部41a内には接続板35が嵌合されている。接続板35の下面には、フレキシブルな接続部材33の他端が、接続板35に溶接されて固定されている。
【0028】
接続板35は、アルミニウム合金で形成され、中央部を除くほぼ全体が均一でかつ、中央側が少々低い位置に撓んだ、ほぼ皿形状を有している。接続板35の厚さは、例えば、1mm程度である。接続板35の中心には、突起部35aが形成されている。
【0029】
接続板35の突起部35aはダイアフラム37の中央部の底面に抵抗溶接または摩擦拡散接合により接合されている。ダイアフラム37はアルミニウム合金で形成され、切込み37aを有する。ダイアフラム37は、電池の安全性確保のために設けられており、電池の内圧が上昇すると、切込み37aにおいて開裂し、内部のガスを放出する機能を有する。
【0030】
ダイアフラム37は周縁部において上蓋3の周縁部を固定している。ダイアフラム37は
図2に図示されるように、当初、周縁部に上蓋3側に向かって垂直に起立する側部37bを有している。この側部37b内に上蓋3を収容し、かしめ加工により、側部37bを上蓋3の上面側に屈曲して固定する。
上蓋3は、炭素鋼等の鉄で形成してニッケルめっきが施されており、ダイアフラム37に接触する円盤状の周縁部3aとこの周縁部3aから上方に突出す有頭の筒部3bを有するハット形を有する。筒部3bには複数の開口部3cが形成されている。この開口部3cは、電池内部に発生するガス圧によりダイアフラム37が開裂した際、ガスを電池外部に放出するためのものである。
【0031】
ダイアフラム37の側部37bと周縁部を覆ってガスケット43が設けられている。ガスケット43は、当初、
図2に図示されるように、リング状の基部43aの周側縁に、上部方向に向けてほぼ垂直に起立して形成された外周壁部43bと、内周側に、基部43aから下方に向けてほぼ垂直に垂下して形成された筒部43cとを有する形状を有している。
プレス等により、電池缶2と共にガスケット43の外周壁部43bを折曲して基部43aと外周壁部43bにより、ダイアフラム37と上蓋3を軸方向に圧接するようにかしめ加工される。これにより、上蓋3とダイアフラム37とがガスケット43を介して電池缶2に固定される。
【0032】
電池缶2の内部には、非水電解液が所定量注入されている。非水電解液の一例としては、リチウム塩がカーボネート系溶媒に溶解した溶液を用いることが好ましい。リチウム塩の例として、フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、などが挙げられる。また、カーボネート系溶媒の例として、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、或いは上記溶媒の1種類以上から選ばれる溶媒を混合したもの、が挙げられる。
【0033】
図4は、
図3に図示された電極群の終端側を展開した状態の平面図であり、
図5は、
図3に図示された電極群を作製する方法を説明するための斜視図であり、
図6は、
図3に図示された電極群の完成状態を示す外観斜視図である。
図3に図示されるように電極群10は、終端側からみて最外周に第1のセパレータ13が捲回され、その内側に負極電極12が捲回され、負極電極12の内側に第2のセパレータ14が捲回され、第2のセパレータ14の内側に正極電極11が捲回されている。
【0034】
従って、
図4に図示されるように、第1のセパレータ13の長さが最も長くその終端縁13aが軸芯15から径方向に最も遠くに位置する。第1のセパレータ13の次に第2のセパレータ14が長く、その終端縁14aが第1のセパレータ13の終端縁13aより少し軸芯15側に位置している。正極電極11と負極電極12とは、負極電極12の方が長い。しかし、負極電極12は、第2のセパレータ14より短く、負極電極12の終端縁12dは、第2のセパレータ14の終端縁14aより軸芯15側に位置している。正極電極11は、負極電極12より短く、その終端縁11dは最も軸芯15に近い位置となっている。
【0035】
また、第1のセパレータ13と第2のセパレータ14の幅は同一であり、共に、正極電極11および負極電極12の幅よりも大きく、正極電極11の正極タブ16の根元および負極電極12の負極タブ17の根元を覆っている。しかし、正極タブ16の根元より先端側の部分および負極タブ17の根元より先端側の部分は第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の外側に延出されている。
【0036】
正極電極11の正極タブ16および負極電極12の負極タブ17は所定のピッチPで配列されている。また、正極タブ16の最も外側(外周側)の正極タブ16の中心と終端縁11dの距離はP/2であり、負極タブ17の最も外側(外周側)の負極タブ17の中心と終端縁12dの距離はP/2である。ここで、正極タブ16の幅、および負極タブ17の幅を、それぞれ、wとし、正極タブ16の間隔および負極タブ17の間隔を、それぞれ、Sとすると、S=(P−w)となる。
【0037】
図5は、第1のセパレータ13、第2のセパレータ14、負極電極12および正極電極11を軸芯15に捲回する状態における先端側を示す斜視図である。第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の先端縁(図示せず)を、軸芯15に溶着し、1〜数周、軸芯15に捲回する。この場合、第1のセパレータ13の先端縁および第2のセパレータ14の先端縁はその位置を揃えてもよいし、ずらしてもよい。
そして、第2のセパレータ14と第1のセパレータ13との間に負極電極12を挟み込む。また、第1のセパレータ13と第2のセパレータ14との間に正極電極11を挟み込む。この時、正極電極11の先端縁11eが負極電極12の先端縁12eよりも外周側に位置するようにする。
【0038】
この後、図示はしないが、捲回装置の回転軸を軸芯15に連結して軸芯15を回転駆動すると、負極電極12および正極電極11は、第1のセパレータ13および第2のセパレータ14の間で圧接され、軸芯15の周囲に所定の回転トルクで捲回される。そして、最外周の第1のセパレータ13の外周を接着テープ19で接着する。
【0039】
図6は、このようにして作製された電極群10の完成状態を示す斜視図である。上述した如く、正極合剤塗工部11b、正極合剤未塗工部11c、負極合剤塗工部12b、負極合剤未塗工部12cはすべて第1、第2のセパレータ13、14に覆われている。
図6に図示されるように、電極群10の最外周では、第1のセパレータ13が露出され、第1のセパレータ13の最外周端部は接着テープにより巻き止めされている。正極タブ16と負極タブ17は、根元部よりも先端側が第1のセパレータ13から露出している。
【0040】
上述した如く、本発明の実施形態では、負極タブ17には、補強用変形部が形成されている。補強用変形部は、電極群10を作製する工程において、負極タブ17と一体的に形成されるものであり、以下に、電極群10の製造方法と共に負極タブ17の構造および形成方法について説明する。
【0041】
[円筒形二次電池の製造方法]
図7は、本発明の円筒形二次電池の製造方法の一実施の形態を示す処理フロー図であり、
図8は、負極タブを形成する方法を説明するための平面図である。また、
図9(a)は負極タブ付近の拡大平面図であり、
図9(b)は、
図9(a)の側面図であり、
図10は、負極タブを形成する方法を説明する拡大断面図である。
先ず、負極タブ17の構造について説明する。
負極タブ17は、負極電極12の負極金属箔12aに、負極合剤未塗工部12cと一体に、負極金属箔12aの長手方向の一側縁61図(
図4、
図9参照)に沿って、所定のピッチPで配列されている。
【0042】
(負極タブの詳細構造)
各負極タブ17は、
図9(a)、
図9(b)に図示されるように、山折り部50(補強用変形部)を備える。すなわち、負極タブ17は負極金属箔12aの長手方向の長さwを有し、そのほぼ中央に、負極タブ17の延出方向に沿う稜線51が負極タブ17の先端部から負極合剤未塗工部12cの一側縁61付近まで延出して形成されている。稜線51からタブの各側縁52に向かってそれぞれ下り勾配のほぼ平面状の斜面が形成されている。稜線51は、負極合剤未塗工部12cの表面62から、所定の高さhだけ突出している。
このように、負極タブ17は、山折り部50を備える形状とされることにより、その剛性は、山折り部50を持たないタブ形状に比べて大きい。
次に、
図7を参照して、電極群10の作製方法を中心に、本発明の円筒形二次電池の製造方法を説明する。
【0043】
ステップS1において、正・負極金属箔11a、12aの表裏両面に、それぞれ、正・負極合剤を塗工して、正・負極合剤塗工部11b、12bを形成する。
すなわち、正極金属箔11aの表裏両面に、それぞれ、正極金属箔11aの長手方向に沿う一側縁に正極合剤が塗布されず正極金属箔11aが露出した正極合剤未塗工部11cが形成されるように正極合剤を塗工して正極合剤塗工部11bを形成する。
同様に、負極金属箔12aの表裏両面に、それぞれ、負極金属箔12aの長手方向に沿う一側縁61に負極合剤が塗布されず負極金属箔12aが露出した負極合剤未塗工部12cが形成されるように負合剤を塗工して負極合剤塗工部12bを形成する。
【0044】
ステップS2では、正・負極タブ16、17を形成する。
正極金属箔11aに対しては、正極合剤未塗工部11cの一側縁に沿って、正極タブ16が所定のピッチPで配列されるように正極金属箔11aを裁断する。これにより、正極電極11が作製される。
【0045】
次に、負極電極12の製造方法について説明する。
図8に図示されるように、負極金属箔12aの負極合剤未塗工部12cの一側縁に沿って、タブ形成装置100を配置する。タブ形成装置100は、負極タブ17を複数個分、成形することが可能な幅を有するパンチ100aとダイ100bとを備えている。
図10は、負極タブ17の1個分の領域におけるタブ形成装置100の断面図である。
パンチ100aは、負極タブ17の外形に対応する形状を有する切断用突出部111と、隣接する一対の切断用突出部111の幅方向における中央部に、切断用突出部111よりも高さが低い折曲用突出部112とを備えている。
図9(a)に、切断用突出部111と折曲用突出部112の平面形状が二点鎖線で示されている。折曲用突出部112は、中央に、頂部112aを有する。頂部112aは、負極タブ17の先端から一側縁61付近まで延出される長さに形成されている。
ダイ100bは、切断用突出部111を挿通する一対の貫通孔121を備えている。
【0046】
表裏両面に負極合剤塗工部12bが形成された負極金属箔12aを、ダイ100bの上面に載置し、パンチ100aを下降する。パンチ100aの切断用突出部111により負極金属箔12aが切断され、負極タブ17の外形形状が形成される。また、パンチ100aの折曲用突出部112の頂部112aにより負極タブ17が加圧されることにより、
図10に二点鎖線で示すように負極タブ17が、稜線51を中央にして各側縁52(
図9参照)側に向けて上昇するように傾斜する。つまり、山折り部50が形成される。このため、負極タブ17の剛性が大きくなる。このようにして、山折り部50を備える負極タブ17が形成された負極電極12が作製される。
【0047】
ステップS3では、正極電極11および負極電極12を加熱し、正極合剤塗工部11bの正極合剤、および負極合剤塗工部12bの負極合剤を乾燥する。
ステップS3において、負極電極12の負極金属箔12aの材料である銅系金属が焼鈍され、特に、幅狭で長い形状の負極タブ17は、その剛性が低下する。剛性の低下により、負極タブ17は、自重あるいはその運動エネルギーにより、捻れ、倒れあるいは折れ等が発生し易くなる。しかし、この実施形態では、予め、負極タブ17が山折り部50を備える形状にして剛性を大きくしているので、負極タブ17は、捻れ、倒れあるいは折れ等が発生し難いものとなっている。
【0048】
ステップS4では、正極電極11および負極電極12を、第1、第2のセパレータ13、14を介在して軸芯15の周囲に捲回して電極群10を作製する。この工程は、
図5に関して説明した通りである。この場合、負極電極12は、山折り側を軸芯15側に向けても、それとは反対に谷折り側を軸芯15側に向けてもよい。
【0049】
ステップS5では、発電ユニット20を組み立てる。
電極群10の軸芯15の下部に負極集電部材21を取り付ける。次に、負極集電部材21の外周筒部21aの外周の全周囲に亘り、負極タブ17を密着し、負極タブ17の外周に押え部材22を巻き付ける。そして、超音波溶接等により、負極集電部材21に負極タブ17および押え部材22を溶接する。
次に、軸芯15の下端面と負極集電部材21とに跨るように負極通電リード23を負極集電部材21に溶接する。
【0050】
次に、正極集電部材31に接続部材33の一端部を、例えば超音波溶接等により溶接する。次に、接続部材33が溶接された正極集電部材31の下部を軸芯15の上端側に取り付ける。この状態で、正極集電部材31の上部筒部31aの外周の全周囲に亘り、正極タブ16を密着し、正極タブ16の外周に押え部材32を巻き付ける。そして、超音波溶接等により、正極集電部材31に正極タブ16および押え部材32を溶接する。このようにして、
図2に図示される発電ユニット20が作製される。
【0051】
ステップS6では、電池缶2内に発電ユニット20を収容して、円筒形二次電池1を組み立てる。
電池缶2内に発電ユニット20を収容し、発電ユニット20の負極通電リード23を電池缶2の底部内面に抵抗溶接等により溶接する。次に、電池缶2の上端部側の一部を絞り加工して内方に突出し、外面にほぼV字状の溝2aを形成する。そして、発電ユニット20が収容された電池缶2の内部に、非水電解液を所定量注入する。
【0052】
一方、ダイアフラム37に上蓋3を固定しておく。ダイアフラム37と上蓋3との固定は、かしめ等により行う。
図2に図示された如く、当初、ダイアフラム37の側部37bは基部37aに垂直に形成されているので、上蓋3の周縁部3aをダイアフラム37の側部37b内に配置する。そして、ダイアフラム37の側部37bをプレス等により変形させて、上蓋3の周縁部の上面および下面、および外周側面を覆って圧接する。
【0053】
また、接続板35を絶縁板41の開口部41aに嵌合して取り付けておく。そして、接続板35の突起部35aを、上蓋3が固定されたダイアフラム37の底面に溶接する。この場合の溶接方法は、抵抗溶接または摩擦拡散接合を用いることができる。接続板35とダイアフラム37を溶接することにより、接続板35が嵌合された絶縁板41および接続板35に固定された上蓋3が接続板35およびダイアフラム37に一体化される。
【0054】
次に、電池缶2の溝2aの上にガスケット43を収容する。この状態におけるガスケット43は、
図2に図示するように、リング状の基部43aの上方に、基部43aに対して垂直な外周壁部43bを有する構造となっている。この構造で、ガスケット43は、電池缶2の溝2a上部の内側に留まっている。ガスケット43の材料の一例として、PFA(ポリテトラフルオロエチレン)をあげることができる。
【0055】
プレス等により、電池缶2と共にガスケット43の外周壁部43bを折曲して基部43aと外周壁部43bにより、ダイアフラム37と上蓋3を軸方向に圧接するようにかしめ加工される。これにより、上蓋3とダイアフラム37とがガスケット43を介して電池缶2に固定され、円筒形二次電池1が作製される。
【0056】
ステップS7では、作製された円筒形二次電池1の充放電テストが行われる。このテストにおいて所定の特性を満足するものが良品として選定される。
【0057】
--実施形態2--
図11は、本発明の実施形態2を示し、
図11(a)は負極タブ付近の拡大平面図であり、
図11(b)は、
図11(a)の側面図である。
実施形態2では、負極タブ17は、表裏両面に山折り部50を備える形状とされている。
すなわち、負極タブ17は、表裏両面のそれぞれに、負極合剤未塗工部12cの表面62から、所定の高さhだけ突出した稜線51が形成され、稜線51と各側縁52との間、および稜線51間が斜面とされた2つの山折り部50が形成されている。
実施形態2においても、実施形態1と同様な効果を奏する。
なお、表裏両面に突き出して形成する稜線51の負極合剤未塗工部12cの表面62からの所定の高さhは、表裏面で異なる高さとしてもよい。
【0058】
--実施形態3--
図12は、本発明の実施形態3を示し、
図12(a)は負極タブ付近の拡大平面図であり、
図12(b)は、
図12(a)の側面図である。
実施形態3では、負極タブ17は、山折り部50を3つ備える形状とされている。山折り部50の中、両側の山折り部50は、負極合剤未塗工部12cの表面62から、所定の高さhだけ突出した稜線51を有し、中央の山折り部50は、負極合剤未塗工部12cの表面62と同一面若しくは負極合剤未塗工部12cの表面62より凹んでいる。
実施形態3においても、実施形態1と同様な効果を奏する。
なお、実施形態3において、中央の山折り部50の稜線51を負極合剤未塗工部12cの表面62より突き出すようにしてもよい。
【0059】
--実施形態4--
図13は、本発明の実施形態4を示し、
図13(a)は負極タブ付近の拡大平面図であり、
図13(b)は、
図13(a)の側面図である。
実施形態1〜3においては、負極タブ17は、稜線51の両側に斜面が形成された山折り部50を備えるものであった。
実施形態4においては、負極タブ17は、断面ほぼ台形状の突出部(補強用変形部)50Aを備えている。突出部50Aは、負極合剤未塗工部12cの表面62から所定の高さhだけ突出して形成されている。
【0060】
図14は、実施形態4の負極タブ17の1個分の領域におけるタブ形成装置100Aの断面図である。
パンチ100a
1は、負極タブ17の外形に対応する形状を有する切断用突出部111と、切断用突出部111の幅方向における中央部に形成された切断用突出部111よりも高さが低い凹部形成用突出部113と、凹部形成用突出部113の両側に形成された押え用突出部114とを備えている。
ダイ100b
1は、切断用突出部111を挿通する一対の貫通孔121と、凹部形成用突出部113に対応して位置に形成された凹部122とを備えている。
【0061】
表裏両面に負極合剤塗工部12bが形成された負極金属箔12aを、ダイ100b
1の上面に載置し、パンチ100a
1を下降する。パンチ100aの切断用突出部111により負極金属箔12aが切断され、負極タブ17の外形形状が形成される。また、パンチ100a
1の凹部形成用突出部113により加圧され、負極タブ17がダイ100b
1の凹部122内に屈曲される。これにより、
図13に図示される負極合剤未塗工部12cの表面62から突出して形成された突出部50Aを備えた負極タブ17が形成される。
なお、パンチ100a
1に形成された押え用突出部114は、凹部形成用突出部113により負極タブ17が加圧された際、ダイ100b
1の凹部122の周縁部に対応する負極タブ17が反力により浮き上がるのを防止する機能を有する。
実施形態4においても、実施形態1と同様な効果を奏する。
【0062】
実施形態4において、負極タブ17の補強用変形部を、断面が台形状に凸である突出部50Aとして例示した。しかし、突出部50Aは、種々の形状とすることが可能であり、例えば、断面が三角形状に凸、円弧状に凸、矩形状に凸等にしてもよい。
【0063】
--実施形態5--
図15は、発明の実施形態5
を示し、
図15(a)は負極タブ付近の拡大平面図であり、
図15(b)は、
図15(a)の側面図である。
実施形態5では、実施形態1として
図9に図示された負極タブ17に対して、山折り部50B、すなわち、補強用変形部が、負極タブ17の根元から先端までの長さLの1/3程度の長さに形成されている点が相違する。
すなわち、山折り部50Bは、負極タブ17の根元から先端までの長さLの全長に亘り形成する必要はなく、長さLの1/3程度以上の長さに形成されていれば十分である。
【0064】
このことは実施形態2〜4においても同様であり、それぞれの実施形態において山折り部50または突出部50Aの長さを、負極タブ17の長さLの1/3程度以上とすればよい。
【0065】
以上説明した通り、本発明の各実施形態では、各負極タブ17における負極合剤未塗工部12cに接続される根元部に、タブの面内変形に対する剛性を有する補強用変形部を形成したので、負極タブ17の剛性を大きくすることができる。このため、負極金属箔12aを高温で乾燥する工程において、負極タブ17の剛性が低下しても、負極タブ17は、予め、その剛性が大きくされているので、自重あるいはその運動エネルギーにより、捻れ、倒れあるいは折れ等が発生し難いものとなっている。この結果、この後の工程の効率を向上することができる。
【0066】
各実施形態において説明した通り、負極タブ17に形成する山折り部50、50B、突出部50Aは、負極タブ17の外形形成と同時に形成することができる。
従って、負極タブ17に補強用変形部を形成しても、生産効率の低下を抑えることができる。
【0067】
なお、上記実施形態では、負極金属箔12aが銅系金属で形成されているものとして例示した。しかし、本発明は銅系金属に限られるものではなく、正・負極合剤塗工部11b、12bを高温で乾燥する工程で、正・負極タブ16、17の剛性が低下する材料に対して、すべて適用することが可能である。
【0068】
また、上記各実施形態では、円筒形蓄電素子として、リチウム二次電池を例として説明したが、この発明は、リチウム二次電池に限られるものではなく、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池など、他の円筒形二次電池にも適用をすることができる。また、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタにも本発明を適用することができる。
【0069】
その他、本発明の円筒形蓄電素子は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して構成することが可能であり、要は、負極金属箔と一体に形成される負極タブにおける、少なくとも、負極合剤未塗工部に接続される根元部に、負極タブの面内変形に対する剛性を高くする補強用変形部を備えているものであればよい。