特許第6045309号(P6045309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダルトンの特許一覧

特許6045309陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法
<>
  • 特許6045309-陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法 図000002
  • 特許6045309-陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法 図000003
  • 特許6045309-陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法 図000004
  • 特許6045309-陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法 図000005
  • 特許6045309-陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法 図000006
  • 特許6045309-陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045309
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/00 20060101AFI20161206BHJP
   C25D 11/32 20060101ALI20161206BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C25D17/00 A
   C25D11/32
   C25D21/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-247377(P2012-247377)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-95124(P2014-95124A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】512284033
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】中澤 研一
(72)【発明者】
【氏名】星子 貴広
(72)【発明者】
【氏名】向井 義雄
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−284622(JP,A)
【文献】 特開平10−312990(JP,A)
【文献】 特開昭59−227129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 11/32
C25D 17/00
C25D 21/00
H01L 21/306 − 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質溶液を貯留する溶液槽と、前記電解質溶液を介し電流を通すための正電極と負電極と、を備え、前記正電極と前記負電極間に配設したシリコン基板に陽極酸化処理を施す陽極酸化装置であって、
前記溶液槽は底部に前記電解質溶液を注入排出するための通路が開設され、前記溶液槽の一の側面は前記シリコン基板で閉塞され且つ前記シリコン基板が外側から前記正電極で押圧され、前記一の側面と対向する他の側面は熱吸収フィルタで密接され且つ外側に光源が設置されていることを特徴とする陽極酸化装置。
【請求項2】
前記正電極は、銅板若しくはステンレス板の片側表面がメッシュ状の白金で接合されていることを特徴とする請求項1に記載の陽極酸化装置。
【請求項3】
前記正電極は、銅板若しくはステンレス板の片側表面が針状の白金で接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の陽極酸化装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の陽極酸化装置と、陽極酸化処理を施した前記シリコン基板を洗浄する洗浄装置と、前記溶液槽から排出された電解質溶液を冷却する冷却装置と、前記シリコン基板を搬送する搬送装置と、を備えたことを特徴とする陽極酸化システム。
【請求項5】
電解質溶液を貯留する溶液槽と、前記電解質溶液を介し電流を通すための正電極と負電極と、を備えた陽極酸化装置を用い、前記正電極と前記負電極間に配設したシリコン基板に陽極酸化処理を施す陽極酸化方法であって、
前記溶液槽の一の側面と対向する他の側面に熱吸収フィルタを密接し且つ外側に光源を設置し、前記一の側面は前記シリコン基板で閉塞し且つ前記シリコン基板を外側から前記正電極で押圧し、前記溶液槽の底部に開設されている通路から前記電解質溶液を前記溶液槽に注入して前記シリコン基板に陽極酸化処理を施すことを特徴とする陽極酸化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法に関する。更に詳しくは、P型及びN型の両方のシリコン基板に陽極酸化処理を施すことができ、しかも陽極酸化処理が施されるシリコン基板を容易に着脱しシリコン基板を大量に陽極酸化することができる陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質溶液、特にフッ化水素酸(以下、「HF」と略す)溶液中で、P型及びN型のシリコン基板に陽極酸化処理を施すことでシリコン基板に多孔質が形成されることが知られている。
【0003】
下記特許文献には、図5に示す通り、溶液槽100の内部に負電極101を配設すると共に、溶液槽100の底部を陽極酸化処理するためのP型のシリコン基板102で閉塞し、該P型のシリコン基板102を外側から正電極103で押圧して溶液槽100を密封し電解質溶液104が漏洩しないようにした陽極酸化装置200Pを用い、溶液槽100に電解質溶液104を注入し、正電極103と負電極101との間の外部電源105を接続して電圧を印加し、P型のシリコン基板102に陽極酸化処理を施すことが記載されている。
【0004】
また、図6には、N型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す場合が記載されている。N型のシリコン基板に陽極酸化処理を施すには、光を照射することが必要である。従って、N型のシリコン基板102に陽極酸化処理を施す陽極酸化装置200Nは、P型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す陽極酸化装置200Pに、熱吸収フィルタ110をシリコン基板102の外側に配設すると共に、その熱吸収フィルタ110の更に外側に光源であるハロゲンランプ111を配設することが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記の従来例では、シリコン基板102が溶液槽100の底面に配設されているので、シリコン基板の着脱作業が煩雑となり、大量のシリコン基板に陽極酸化処理を施すには不適当であった。
【0006】
更に、N型のシリコン基板102に陽極酸化処理を施すのと、P型のシリコン基板102に陽極酸化処理を施すのでは、陽極酸化装置が異なるので、一台の機械でP型及びN型のシリコン基板に陽極酸化処理を施すには不適当であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−159439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の不具合点を解決するためになされたものであって、その目的とするとこは、シリコン基板を容易に着脱することができ、大量のシリコン基板に陽極酸化処理を施すことができる陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法を提供することである。
【0009】
また別の目的は、P型及びN型のシリコン基板に陽極酸化処理を施すことができる陽極酸化装置及び陽極酸化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る陽極酸化装置は、電解質溶液を貯留する溶液槽と、前記電解質溶液を介し電流を通すための正電極と負電極と、を備え、前記正電極と前記負電極間に配設したシリコン基板に陽極酸化処理を施す陽極酸化装置であって、前記溶液槽は底部に前記電解質溶液を注入排出するための通路が開設され、前記溶液槽の一の側面は前記シリコン基板で閉塞され且つ前記シリコン基板が外側から前記正電極で押圧され、前記一の側面と対向する他の側面はフィルタで密接され且つ外側に光源が設置され或いは前記フィルタの代替として前記シリコン基板で閉塞され且つ前記シリコン基板が外側から前記正電極で押圧されていることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明の請求項2に係る陽極酸化装置は、請求項1に記載の陽極酸化装置において、前記正電極は、銅板若しくはステンレス板の片側表面がメッシュ状の白金で接合されていることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の請求項3に係る陽極酸化装置は、請求項1または2に記載の陽極酸化装置において、前記正電極は、銅板若しくはステンレス板の片側表面が針状の白金で接合されていることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明の請求項4に係る陽極酸化システムは、請求項1乃至3のいずれかに記載の陽極酸化装置と、陽極酸化処理を施した前記シリコン基板を洗浄する洗浄装置と、前記溶液槽から排出された電解質溶液を冷却する冷却装置と、前記シリコン基板を搬送する搬送装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
また本発明の請求項5に係る陽極酸化方法は、電解質溶液を貯留する溶液槽と、前記電解質溶液を介し電流を通すための正電極と負電極と、を備えた陽極酸化装置を用い、前記正電極と前記負電極間に配設したシリコン基板に陽極酸化処理を施す陽極酸化方法であって、前記溶液槽の一の側面と対向する他の側面にフィルタを密接し且つ外側に光源を設置し、前記一の側面は前記シリコン基板で閉塞し且つ前記シリコン基板を外側から前記正電極で押圧し、前記溶液槽の底部に開設されている通路から前記電解質溶液を前記溶液槽に注入して前記シリコン基板に陽極酸化処理を施すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
上記構成を備えた本発明の陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法は、溶液槽の側面をシリコン基板で閉塞し、側面を閉塞したシリコン基板の外側を正電極で押圧することでシリコン基板を装着するので、シリコン基板の着脱が容易で自動化することが可能となり、大量のシリコン基板に陽極酸化処理を容易に施すことができる。
【0016】
更に、本発明の陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法は、溶液槽の側面をシリコン基板で閉塞するので、シリコン基板の内側の面は電解質溶液に接触し陽極酸化処理が施されるが、シリコン基板の外側の面は電解質溶液に接触しないため、片面のみ陽極酸化処理を施すことができる。
【0017】
更に、本発明の陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法は、溶液槽の底部に電解質溶液を注入排出するための通路が開設されているので、電解質溶液を溶液槽の下部から注入し上部よりオーバーフローさせて循環させることができ、シリコン基板の表面に気泡が付着するのを防止することができると共に、電解質溶液の濃度を均一としシリコン基板の反応速度を均一にすることができる。
【0018】
更に、本発明の陽極酸化装置、陽極酸化システム及び陽極酸化方法は、溶液槽の側面を閉塞するシリコン基板を押圧する正電極は、銅板若しくはステンレス板の片側表面を接合する白金がメッシュ状又は針状であるので、シリコン基板の全面を均一に正電極の白金と接触させることができ、シリコン基板に陽極酸化処理を均一に施すことができる。
【0019】
更に、本発明の陽極酸化装置、陽極酸化システムは、一の側面と対向する他の側面に、フィルタを装着することも、またフィルタの代替としてシリコン基板を装着することもできるので、一台の装置にて、P型のシリコン基板にもN型のシリコン基板にも陽極酸化処理を施すことができる。
【0020】
更に、本発明の陽極酸化装置、陽極酸化システムは、一の側面と対向する他の側面に、フィルタの代替としてシリコン基板を装着したときには、溶液槽内部に配設されている1個の負電極で同時に両側面に装着されている2枚のP型のシリコン基板に陽極酸化処理を施すことができ、少ない電極で効率よくシリコン基板に陽極酸化処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る陽極酸化装置の概略断面説明図
図2】本発明に係る別の実施例の陽極酸化装置の概略断面説明図
図3】本発明に係る陽極酸化システムの概略説明図
図4】本発明に係る別の実施例の陽極酸化システムの概略説明図
図5】従来例の陽極酸化装置の概略断面説明図
図6】別の従来例の陽極酸化装置の概略断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明の実施形態を例示して説明する。
【0023】
第一実施形態
本発明に係る陽極酸化装置1は、N型のシリコン基板とP型のシリコン基板の両方のシリコン基板に陽極酸化処理を施すことができ、図1は、N型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す実施例の場合の陽極酸化装置1Nの概略断面説明図であり、図2は、P型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す実施例の場合の陽極酸化装置1Pの概略断面説明図である。図1のN型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す溶液酸化装置1Nは、溶液槽10と、正電極30と、負電極40と、シリコン基板50と、フィルタ20と、光源21と、を備えている。尚、P型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す場合の陽極酸化装置1Pは、図2に示す通り、N型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す場合の陽極酸化装置1Nの他の側面に装着されているフィルタ20の代替としてP型のシリコン基板20を装着し、光源21を取り外した場合であるので、N型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す陽極酸化装置1Nについて説明するときに、異なるところについて併せて説明する。
【0024】
溶液槽10は、電解質溶液5を収容する容器で、収容される電解質溶液5としては、HFが用いられるが、これに限定されるものではなく他の電解質溶液であっても良い。尚、電解質溶液5には、シリコン基板50の酸化面51から気泡を除去するために必要に応じてエチルアルコール等のアルコールを添加しても良い。溶液槽10の底部11には、電解質溶液5を注入排出するための通路12が開設されていて、通路12は電解質溶液貯蔵槽6に連結している注入配管7に繋がっている。通路12が底部11に開設されていることで電解質溶液5が下部から注入され上部に向かって流れるようになり、シリコン基板50の酸化面51に付着する気泡が除去されるようになっている。また、電解質溶液5の濃度が均一に保たれシリコン基板50に陽極酸化処理が均一に施されるようになっている。
【0025】
溶液槽10は、前面、後面及び底部11は、四フッ化エチレン樹脂等により成形されているが、対向する両側面(13A,13B)は、一の側面13Aに後述するシリコン基板50を装着できるように、他の側面13Bに後述するフィルタ20を装着できるように或いは図2に示す通りフィルタの代替としてシリコン基板50を装着できるように、上枠14及び下枠15のみで形成されている。上枠14の下部及び下枠15の上部には凹溝16が全幅で形成されていて、凹溝16にはフッ素樹脂製のOリング17が嵌め込まれている。Oリング17が嵌め込まれていることで、フィルタ20或いはシリコン基板50が装着されたとき上枠14及び下枠15との密接が確保され、電解質溶液5の漏洩が防止されるようになっている。
【0026】
他の側面13Bに装着されているフィルタ20は、アクリル樹脂等で成形された熱吸収フィルタである。フィルタ20の外側である反溶液槽10側にはハロゲンランプの光源21が設置されていて、光源21からの光がフィルタ20を通してN型のシリコン基板50を照射し、N型のシリコン基板50への陽極酸化処理の促進を図るようになっている。尚、他の側面13Bは、図2に示す通り、フィルタ20の代替として、一の側面13Aと同様にシリコン基板50Bが装着される。この場合、フィルタ20の外側に配設されている光源21は取り外され、シリコン基板50Bは、一の側面13Aと同様に外側から後述する正電極30Bで溶液槽10側に押圧されることになる。
【0027】
溶液層10の中央には、上部と下部に四フッ化エチレン樹脂で成形されたホルダー18が配設されていて、ホルダー18に白金で成形された負電極40が支持されている。従って、図2に示す通り両側面(13A,13B)にP型のシリコン基板(50A,50B)を装着した場合は、中央に配設された負電極40が両P型のシリコン基板(50A,50B)を押圧している両正電極30(30A,30B)と対を成すので、少ない電極で多くのP型のシリコン基板50に陽極酸化処理を施すことができるようになっている。
【0028】
シリコン基板50は、シリコンウェアー等の半導体シリコン基板で、図1ではN型のシリコン基板が、図2ではP型のシリコン基板が装着される。シリコン基板50は、陽極酸化処理を施す酸化面51を電解質溶液5と接触するように溶液槽10側に向けて溶液槽10の側面13を閉塞する。シリコン基板50が側面13を閉塞することで、シリコン基板50は片面のみ電解質溶液5と接触し陽極酸化処理が施されるようになっている。シリコン基板50の大きさは限定されるものではない。尚、シリコン基板50の大きさ(インチ)を変更するときは、電流の密度が略同一になるように調整する必要がある。
【0029】
正電極30は、銅板若しくはステンレス板31の片面全面にメッシュ状若しくは針状の白金32が接合していて、白金32が接合している面が溶液槽10に装着されたシリコン基板50に接触するような状態で、シリコン基板50を溶液槽10側に外側から押圧する。白金32がメッシュ状若しくは針状に成形されているので、シリコン基板50を押圧したときにシリコン基板50に白金32が全面で接触し、陽極酸化処理が全面均一に施されるようになっている。更に、正電極30で押圧されることでシリコン基板50が溶液槽10の側面13に密接し装着されることになるので、シリコン基板50の着脱が容易となり、シリコン基板50の着脱の自動化が可能となっている。
【0030】
溶液槽10内のホルダー18に支持されている負電極40と、側面13のシリコン基板を押圧している正電極30との間には、外部電源60が接続されている。
【0031】
次に、N型のシリコン基板10に陽極酸化処理が施される方法について説明する。
【0032】
溶液槽10の一の側面(右側面)13Aに対向する他の側面(左側面)13Bにフィルタ20を装着し、フィルタ20の反溶液槽10側に光源21を配設する。光源21は、陽極酸化処理が促進されるように、フィルタ20を通してN型のシリコン基板50に照射される光量と照射位置が調整される。次いで、溶液槽10の一の側面13AをN型のシリコン基板50で閉塞する。N型のシリコン基板50は、陽極酸化処理を施す酸化面51を電解質溶液5と接触するように溶液槽10側に向けて一の側面13Aを閉塞する。N型のシリコン基板50の中央部が、溶液槽10の上枠14に形成されている凹溝16に嵌め込まれているOリング17と下枠15に形成されている凹溝16に嵌め込まれているOリング17の中央部と略一致するように一の側面13Aを閉塞する。
【0033】
次いで、溶液槽10の外側から正電極30がN型のシリコン基板50を溶液槽10側に押圧することで、N型のシリコン基板50が上枠14及び下枠15の凹溝16に嵌め込まれているOリング17と密接し装着されることになる。正電極30は、銅板若しくはステンレス板31に接合している白金32の面がN型のシリコン基板50と接触するように向けられていて、白金32はメッシュ状又は針状に形成されているので、白金32はN型のシリコン基板50と全面で接触する。
【0034】
次いで、溶液槽10の底部11に開設されている通路12が開放され、通路12に連結している注入配管7を通して電解質溶液貯蔵槽6に貯留している電解質溶液5が溶液槽10に注入される。
【0035】
溶液槽10に規定量の電解質溶液5が注入されると、溶液槽10内のホルダー18に支持されている負電極40と側面13に装着されたN型のシリコン基板50を押圧している正電極30との間の電源60が接続されて電圧が印加され、併せて光源21が照射され、N型のシリコン基板50の酸化面51と電解質溶液5との界面に陽極酸化反応を生じさせる電解電流が流れ、電解質溶液5と接している酸化面51に陽極酸化処理が施される。
【0036】
電解質溶液5は、溶液槽10の底部11に開設されている通路12を通して常時流入し、溶液槽10の上部よりオーバーフローして電解液溶液貯蔵槽6に収容されるように常時下部から上部に向かって循環している。従って、N型のシリコン基板10の陽極酸化処理が施される酸化面51の表面に気泡の付着が防止されると共に、電解質溶液5の濃度が均一に保持されるのでN型のシリコン基板10に陽極酸化処理が均一に施される。
【0037】
次に、P型のシリコン基板50に陽極酸化処理が施される方法について説明する。
【0038】
はじめに、N型のシリコン基板50に陽極酸化処理を施すため、溶液槽10の一の側面(右側面)13Aに対向する他の側面(左側面)13Bに装着されていたフィルタ20、及びフィルタ20の外側である反溶液槽10側に設置されている光源21を取り外す。
【0039】
次に、各P型のシリコン基板(50A,50B)で溶液槽10の対向する両側面(13A,13B)を閉塞する。P型のシリコン基板50は、陽極酸化処理を施す酸化面51を電解質溶液5と接触するように溶液槽10側に向けて側面13を閉塞する。P型のシリコン基板50の中央部が、溶液槽10の上枠14に形成されている凹溝16に嵌め込まれているOリング17と下枠15に形成されている凹溝16に嵌め込まれているOリング17との中央部と略一致するように側面13を閉塞する。
【0040】
次いで、溶液槽10の外側から各正電極(30A,30B)が各P型のシリコン基板(50A,50B)を溶液槽10側に押圧する。これにより、P型のシリコン基板50が上枠14及び下枠15の凹溝16に嵌め込まれているOリング17と密接する。正電極30は、銅板若しくはステンレス板31の片面表面に接合している白金32の面がP型のシリコン基板50と接触するように向けられていて、白金32はメッシュ状又は針状に形成されているので、白金32がP型のシリコン基板50と全面で接触する。尚、両側面(13A,13B)を各P型のシリコン基板(50A,50B)で閉塞した後に、各P型のシリコン基板(50A,50B)を各正電極(30A,30B)で押圧したが、一の側面13AをP型のシリコン基板50Aで閉塞し、続けて正電極30Aで押圧し、その後に他の側面13BをP型のシリコン基板50Bで閉塞し、続けて正電極30Bで押圧しても良い。
【0041】
次いで、溶液槽10の底部11に開設されている通路12が開放され、通路12に連結している注入配管7を通して電解質溶液貯蔵槽6に貯留している電解質溶液5が溶液槽10に注入される。
【0042】
溶液槽10に規定量の電解質溶液5が注入されると、溶液槽10内のホルダー18に支持されている負電極40と両側面(13A,13B)に装着された各P型のシリコン基板(50A,50B)を押圧している各正電極(30A,30B)との間の電源60が接続されて電圧が印加され、各P型のシリコン基板(50A,50B)の酸化面(51A,51B)と電解質溶液5との界面に陽極酸化反応を生じさせる電解電流が流れ、電解質溶液5と接している酸化面(51A,51B)に陽極酸化処理が施される。
【0043】
電解質溶液5は、溶液槽10の底部11に開設されている通路12を通して常時流入し、溶液槽10の上部よりオーバーフローして電解液溶液貯蔵槽6に収容されるように常時下部から上部に向かって循環している。従って、P型のシリコン基板10の陽極酸化処理が施される酸化面51に気泡の付着が防止されると共に、電解質溶液5の濃度が均一に保持されるのでP型のシリコン基板10に陽極酸化処理が均一に施される。
【0044】
第二実施形態
次に、本発明に係る陽極酸化システムについて説明する。陽極酸化システムは、第一実施形態で説明した陽極酸化装置1を含むシステムであるので、第一実施形態と異なる点について主に説明する。陽極酸化装置1は、N型のシリコン基板とP型のシリコン基板の両方のシリコン基板に陽極酸化処理を施すことができるので、陽極酸化システム2においても、図3は、N型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す実施例の場合の陽極酸化システム2Nの概略説明図であり、図4は、P型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す実施例の場合の陽極酸化システム2Pの概略説明図である。陽極酸化システム2は、図3及び4に示す通り、陽極酸化装置1と、電解質溶液貯蔵槽6と、洗浄装置70と、冷却装置80と、搬送装置90と、を備えている。この陽極酸化システム2は、例えば電算機により動作が制御される。
【0045】
陽極酸化装置1は、第一実施形態で説明した装置を用いる。即ち、N型のシリコン基板50に陽極酸化処理を施す陽極酸化システム2Nでは、図1に示すN型のシリコン基板50に陽極酸化処理を施す陽極酸化装置1Nを用い、P型のシリコン基板50に陽極酸化処理を施す陽極酸化システム2Pでは、図4に示すP型のシリコン基板50に陽極酸化処理を施す陽極酸化装置1Pを用いる。尚、陽極酸化装置1の設置台数は、本実施形態では1台であるが複数台であっても良い。
【0046】
洗浄装置70は、洗浄槽71より構成されていて、陽極酸化処理が施されたシリコン基板50を洗浄するための純水が貯留されている。洗浄槽71は、N型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す陽極酸化システム2Nの場合は、図3に示す通り、溶液槽10の脇に1台設置されるが、P型のシリコン基板に陽極酸化処理を施す陽極酸化システム2Pの場合は、図4に示す通り、溶液槽10の右側面13Aに装着された右側面用P型のシリコン基板50Aを洗浄する右洗浄槽71Aと、溶液槽10の左側面13Bに装着された左側面用P型のシリコン基板50Bを洗浄する左洗浄槽71Bとが、溶液槽10の両脇に対になって設置される。洗浄槽71は、複数のシリコン基板50を同時に洗浄することができるようになっていて、本実施例では25枚を同時に洗浄できるようになっている。
【0047】
冷却装置80は、電子冷却器81より構成されていて、溶液槽10内で陽極酸化処理に使用されたことで熱せられた電解質溶液5を冷却するものである。溶液槽10内の電解質溶液5は、陽極酸化処理が終了すると溶液槽10の底部11に開設されている通路12より注入配管7を経由して電解質溶液貯蔵槽6に回収されるので、電子冷却器81は熱せられた電解質溶液5を貯留している電解質溶液貯蔵槽6を冷却するようになっている。
【0048】
搬送装置90は、真空チャック91より構成されていて、図示されていないキャリア上に載置されているシリコン基板50を溶液槽10の側面13の装着できる位置まで搬送し、正電極30により押圧されるまでシリコン基板50を保持するようになっている。また、陽極酸化処理が施された溶液槽10の側面13に装着されているシリコン基板50を保持し、正電極30の押圧が外れるとシリコン基板50を洗浄槽71まで搬送するようになっている。
【0049】
次に、N型のシリコン基板10に陽極酸化処理が施され、洗浄されるまでのフローについて説明する。
【0050】
初めに、真空チャック91はキャリア上に載置されているN型のシリコン基板50を把持し、溶液槽10の一の側面(右側面)13Aの所定の装着位置まで搬送し、その位置で保持し続ける。溶液槽10の外側から溶液槽10に向かって正電極30がN型のシリコン基板50を押圧し、N型のシリコン基板50が溶液槽10の上枠14及び下枠15の凹溝16に嵌め込まれているOリング17に密接されると、真空チャック91はN型のシリコン基板50を放し、元の位置まで戻る。
【0051】
右側面13AがN型のシリコン基板50で密封されると、溶液槽10の底部11に開設されている通路12が開放され、注入配管7を経由して電解質溶液貯蔵槽6から電解質溶液5が溶液槽10に注入される。
【0052】
溶液槽10に規定量の電解質溶液5が注入されると、溶液槽10内のホルダー18に支持されている負電極40と、右側面13Aに装着されているN型のシリコン基板50を押圧している正電極30との間の電源60が接続されて電圧が印加され、併せて光源21が照射され、N型のシリコン基板50の酸化面51と電解質溶液5との界面に陽極酸化反応を生じさせる電解電流が流れ、電解質溶液5と接している酸化面51に陽極酸化処理が施される。
【0053】
電解質溶液5は、溶液槽10の通路12を通して下部から常時流入し、溶液槽10の上部よりオーバーフローして電解質溶液貯蔵槽6に収容されることで電解質溶液5は下から上へと循環しているので、N型のシリコン基板50の酸化面51に気泡が付着するのが防止される。
【0054】
陽極酸化処理が終了し、電解質溶液5が通路12から注入配管7を経由して電解質溶液貯蔵槽6に全量が回収されると、電子冷却器81が作動し電解質溶液貯蔵槽6内の電解質溶液5が一定温度に低下するまで冷却する。
【0055】
溶液槽10より電解質溶液5が排出されると、溶液槽10にはエチルアルコール貯蔵槽82からエチルアルコールが注入配管7を経由して通路12から注入され、規定量が注入されると通路12が閉鎖される。溶液槽10内のエチルアルコールによりN型のシリコン基板50の洗浄が終了すると通路12が開放され、エチルアルコールは通路12から注入配管7を経由してエチルアルコール貯蔵槽82に回収される。
【0056】
溶液槽10よりエチルアルコールが排出されると、真空チャック91は、移動して右側面13Aに装着されているN型のシリコン基板50を把持すると、N型のシリコン基板50を押圧していた正電極30が反溶液槽10側に移動する。続いて、真空チャック91はN型のシリコン基板50を洗浄槽71まで搬送して洗浄槽71内の所定位置に固定すると、真空チャック91は、N型のシリコン基板50を放し元の位置まで戻る。
【0057】
以上の繰り返しが行われることで、大量のN型のシリコン基板50に陽極酸化処理を自動的に施すことが可能となる。
【0058】
次に、P型のシリコン基板10に陽極酸化処理が施され、洗浄されるまでのフローについて説明する。
【0059】
初めに、真空チャック91はキャリア上に載置されているP型のシリコン基板50を把持し、右側面用P型のシリコン基板50Aとして溶液槽10の右側面13Aの所定の装着位置まで搬送し、その位置で保持し続ける。溶液槽10の外側から溶液槽10に向かって右正電極30Aが右側面用P型のシリコン基板50Aを押圧し、右側面用P型のシリコン基板50Aが溶液槽10の右上枠14A及び右下枠15Aの右凹溝16Aに嵌め込まれている右Oリング17Aに密接されると、真空チャック91は右側面用P型のシリコン基板50Aを放し、元の位置まで戻る。
【0060】
次いで、真空チャック91はキャリア上に載置されているP型のシリコン基板50を把持し、左側面用P型のシリコン基板50Bとして反転させた後、溶液槽10の左側面13Bの所定の装着位置まで搬送し、その位置で保持し続ける。溶液槽10の外側から溶液槽10に向かって左正電極30Bが左側面用P型のシリコン基板50Bを押圧し、左側面用P型のシリコン基板50Bが溶液槽10の左上枠14B及び左下枠15Bの左凹溝16Bに嵌め込まれている左Oリング17Bに密接されると、真空チャック91は左側面用P型のシリコン基板50Bを放し、元の位置まで戻る。
【0061】
両側面13がP型のシリコン基板50で密封されると、溶液槽10の底部11に開設されている通路12が開放され、注入配管7を経由して電解質溶液貯蔵槽6から電解質溶液5が溶液槽10に注入される。
【0062】
溶液槽10に規定量の電解質溶液5が注入されると、溶液槽10内のホルダー18に支持されている負電極40と、両側面(13A,13B)に装着されている各P型のシリコン基板(50A,50B)を押圧している各正電極(30A,30B)との間の電源60が接続されて電圧が印加され、P型のシリコン基板50の酸化面51と電解質溶液5との界面に陽極酸化反応を生じさせる電解電流が流れ、電解質溶液5と接している酸化面51に陽極酸化処理が施される。
【0063】
電解質溶液5は、溶液槽10の通路12を通して下部から常時流入し、溶液槽10の上部よりオーバーフローして電解質溶液貯蔵槽6に収容されることで電解質溶液5は下から上へと循環しているので、P型のシリコン基板50の酸化面51に気泡が付着するのが防止される。
【0064】
陽極酸化処理が終了し、電解質溶液5が通路12から注入配管7を経由して電解質溶液貯蔵槽6に全量が回収されると、電子冷却器81が作動し電解質溶液貯蔵槽6内の電解質溶液5が一定温度に低下するまで冷却する。
【0065】
溶液槽10より電解質溶液5が排出されると、溶液槽10にはエチルアルコール貯蔵槽82からエチルアルコールが注入配管7を経由して通路12から注入され、規定量が注入されると通路12が閉鎖される。溶液槽10内のエチルアルコールによりP型のシリコン基板50の洗浄が終了すると通路12が開放され、エチルアルコールは通路12から注入配管7を経由してエチルアルコール貯蔵槽82に回収される。
【0066】
溶液槽10よりエチルアルコールが排出されると、真空チャック91は、移動して右側面13Aに装着されている右側面用P型のシリコン基板50Aを把持すると、右側面用P型のシリコン基板50Aを押圧していた右正電極30Aが反溶液槽10側に移動する。続いて、真空チャック91は右側面用P型のシリコン基板50Aを右洗浄槽71Aまで搬送して右洗浄槽71A内の所定位置に固定すると、真空チャック91は、右側面用P型のシリコン基板50Aを放し元の位置まで戻る。
【0067】
次いで、真空チャック91は、移動して左側面13Bに装着されている左側面用P型のシリコン基板50Bを把持すると、左側面用P型のシリコン基板50Bを押圧していた左正電極30Bが反溶液槽10側に移動する。次いで、真空チャック91は左側面用P型のシリコン基板50Bを左洗浄槽71Bまで搬送して左洗浄槽71B内の所定位置に固定すると、真空チャック91は、左側面用P型のシリコン基板50Bを放し元の位置まで戻る。
【0068】
以上の繰り返しが行われることで、大量のP型のシリコン基板50に陽極酸化処理を自動的に施すことが可能となる。
【0069】
尚、本実施形態では、装着時及び取り外し時共に、右側面用P型のシリコン基板50A、左側面用P型のシリコン基板50Bの順に説明したが、左側面用P型のシリコン基板50B、右側面用P型のシリコン基板50Aと逆の順に行っても良い。また、装着時は、右側面用P型のシリコン基板50A、左側面用P型のシリコン基板50Bの順とし、取り外し時は、左側面用P型のシリコン基板50B、右側面用P型のシリコン基板50Aとしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 陽極酸化装置
2 陽極酸化システム
5 電解質溶液
6 電解質溶液貯蔵槽
7 注入配管
10 溶液槽
11 底部
12 通路
13,13A,13B 側面
14,14A,14B 上枠
15,15A,15B 下枠
16,16A,16B 凹溝
17,17A,17B Oリング
18 ホルダー
20 フィルタ
21 光源
30,30A,30B 正電極
31 銅板若しくはステンレス板
32 白金
40 負電極
50,50A,50B 基板
51 酸化面
60 電源
70 洗浄装置
71,71A,71B 洗浄槽
80 冷却装置
81 電子冷却器
82 エチルアルコール貯蔵槽
90 搬送装置
91 真空チャック




図1
図2
図3
図4
図5
図6