特許第6045310号(P6045310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045310
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】小片部材の貼り付け装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/78 20060101AFI20161206BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20161206BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B29C65/78
   H05K3/00 L
   B29C65/02
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-248992(P2012-248992)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-97581(P2014-97581A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】594123387
【氏名又は名称】ヤマハファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 徹
【審査官】 井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−168214(JP,A)
【文献】 特開平03−191982(JP,A)
【文献】 特開昭62−109084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
H05K 3/00−3/46
B65C 1/00−11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された薄板状の小片部材を搬送装置で搬送して被定置部材の被定置部に圧接して貼り付ける小片部材の貼り付け装置であって、
前記小片部材と前記被定置部とが加熱された状態で互いに圧接することにより接着する材料で構成され、
前記搬送装置に、
前記小片部材を保持する保持部と、
前記保持部を加熱することによって、前記保持部を介して前記小片部材を加熱する加熱部と、
前記保持部と前記加熱部を支持する基部に対して前記保持部と前記加熱部を昇降させる保持器具昇降機構を含み、前記小片部材を前記被定置部材の被定置部に押し付ける押圧部とが備わって
前記小片部材を搬送しながら加熱し、加熱された前記小片部材を前記被定置部に押し付けることにより貼り付けて固定することを特徴とする小片部材の貼り付け装置。
【請求項2】
前記搬送装置が、前記保持部、前記加熱部および前記押圧部を左右方向、前後方向、上下方向および上下に延びる軸を中心とした回転方向に移動させる移動機構を備え、前記保持部の下端部が前記加熱部の下方に配置されている請求項1に記載の小片部材の貼り付け装置。
【請求項3】
前記保持部が、下部中央と側部との間に吸引孔が形成された熱伝導体で構成され、前記吸引孔の側部の開口から吸引することにより、前記保持部の下部で前記小片部材を保持できるようにした請求項1または2に記載の小片部材の貼り付け装置。
【請求項4】
前記保持部が、前記小片部材を把持できる把持部で構成されている請求項1または2に記載の小片部材の貼り付け装置。
【請求項5】
前記小片部材の少なくとも上面が磁性を備えた吸着面で構成されており、前記保持部が磁力による吸引力を利用した吸引機構で構成されている請求項1または2に記載の小片部材の貼り付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状の小片部材を被定置部材に貼り付ける小片部材の貼り付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、フレキシブルプリント基板を作成する際には、配線パターンが形成された樹脂製の基板の配線パターン形成面にカバーレイフィルムからなる小片部材を貼り付けて配線パターンを保護している。このような場合に、所定の形状に切断された小片部材を、基板に貼り付ける貼り付け装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この貼り付け装置では、補強板生成装置で形成された補強板(小片部材)を、補強板貼り付けアームでベースフィルム保持テーブルに保持されたベースフィルムの所定位置に貼り付け、補強板が貼り付けられたベースフィルムをベースフィルム搬送装置で熱圧着装置に搬送したのちに、熱圧着装置でベースフィルムと補強板とを熱圧着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4719790号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、前述した従来の貼り付け装置では、補強板がベースフィルムに貼り付けられるベースフィルム保持テーブルと、補強板がベースフィルムに熱圧着される熱圧着装置とが個別に設置されているため、補強板が貼り付いた状態のベースフィルムをベースフィルム搬送装置で移動させる必要がある。このため、補強板をベースフィルムに対して正確に位置合わせしても、ベースフィルム保持テーブルから熱圧着装置に移動する間に、補強板にずれが生じることがある。また、熱圧着装置においては、補強板が貼り付いた状態のベースフィルム全体を加熱するため、エネルギー損失が大きいという問題や、熱の影響により精度が不安定になるという問題が生じる。さらに、熱圧着装置の構成部品に熱による劣化が生じやすくなるという問題もある。また、加熱されるベースフィルムの温度分布が不均一になり易く、これによると、補強板のベースフィルムに対する熱圧着の強度にばらつきが生じやすくなる。
【0005】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、その目的は、小片部材の被定置部材に対する設置と貼り付けによる固定とを同時に行うことにより、高速かつ高精度の処理が可能になる小片部材の貼り付け装置を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る小片部材の貼り付け装置の構成上の特徴は、加熱された薄板状の小片部材(A,B,C)を搬送装置(10a)で搬送して被定置部材(13)の被定置部(13a)に圧接して貼り付ける小片部材の貼り付け装置(10)であって、小片部材と被定置部とが加熱された状態で互いに圧接することにより接着する材料で構成され、搬送装置に、小片部材を保持する保持部(24,45,55,65,75,85)と、保持部を加熱することによって、保持部を介して小片部材を加熱する加熱部(23b,44a,54a,74a)と、保持部と加熱部を支持する基部(17b,31)に対して保持部と加熱部を昇降させる保持器具昇降機構(21,32)を含み、小片部材を被定置部材の被定置部に押し付ける押圧部(21,22,32,34,43)とが備わり、小片部材を搬送しながら加熱し、加熱された小片部材を被定置部に押し付けることにより貼り付けて固定することにある。
【0007】
本発明に係る小片部材の貼り付け装置では、小片部材と、小片部材が貼り付けられる被定置部とが加熱された状態で互いに圧接されることにより接着する材料で構成されている。そして、小片部材を搬送する搬送装置に、小片部材を保持するための保持部だけでなく、保持部を介して小片部材を加熱する加熱部も備わっている。このため、小片部材を搬送しながら、同時に加熱することができ、この加熱された小片部材を被定置部材の被定置部に押圧部を介して押し付けることにより、そのまま小片部材を被定置部に貼り付けて固定することができる。これによって、小片部材の被定置部材に対する設置および貼り付けによる固定を同時に行うことができ、高速かつ高精度の処理が可能になる。すなわち、本発明によると、小片部材を被定置部材に設置したのちにずれが生じることがないため、高精度になる。
【0008】
また、小片部材は、加熱部の発熱で加熱された保持部によって加熱されるため、各小片部材に対する加熱が均一になるとともに、効率的な加熱が可能になる。さらに、小片部材だけを加熱する構成になっているため、熱エネルギーの損失や、搬送装置の構成部品に熱による劣化が生じることを最小限にできる。なお、小片部材や被定置部を構成する材料としては、加熱により軟化して粘着性が増す接着剤や、熱可塑性または熱硬化性の樹脂材料等を用いることができる。この材料で構成される部分は、小片部材と被定置部との一方に設けても双方に設けてもよいが、一方に設ける場合には、直接加熱される小片部材側に設けることが好ましい。この場合、小片部材や被定置部の全体をこの材料で構成してもよいし、対向する面側部分だけをこの材料で構成してもよい。
【0009】
被定置部を前述した材料で構成する場合には、被定置部材全体をこの材料で構成してもよいし、被定置部の表面だけをこの材料で構成してもよい。なお、被定置部を前述した材料で構成する場合には、被定置部は、小片部材に接触することによって加熱される。また、前述した材料としては、例えば、200℃程度かそれ以下の温度で変化して接着可能になる材料を用いることが好ましい。要は、使用する材料に応じて、保持後貼り付けまでの間に最適な温度になる様に温度制御することが重要である。さらに、保持部と加熱部とは、複数組備わっていることが好ましい。そして、この場合の各組における保持部間の間隔を、保持部に保持される前の小片部材(複数個がトレイに配置されている)の間隔と同じにしておくことがさらに好ましい。これによると、同時に複数個の小片部材の貼り付けが行えるため、さらに高速かつ効率のよい処理が可能になる。
【0010】
本発明に係る小片部材の貼り付け装置の他の構成上の特徴は、搬送装置が、保持部、加熱部および押圧部を左右方向、前後方向、上下方向および上下に延びる軸を中心とした回転方向に移動させる移動機構(15,16,17,18)を備え、保持部の下端部が加熱部の下方に配置されていることにある。
【0011】
本発明によると、保持部に保持された小片部材の向きをどの方向にでも変更することができる。このため、小片部材を被定置部に正確に設置することができる。なお、本発明の移動機構は、保持部、加熱部および押圧部を左右方向に移動させる左右方向移動機構、保持部、加熱部および押圧部を前後方向に移動させる前後方向移動機構、保持部、加熱部および押圧部を上下方向に移動させる昇降機構、および、保持部、加熱部および押圧部を軸周り方向に回転させる回転機構で構成される。
【0012】
本発明に係る小片部材の貼り付け装置のさらに他の構成上の特徴は、保持部(24,45,55)が、下部中央と側部との間に吸引孔(45a)が形成された熱伝導体で構成され、吸引孔の側部の開口から吸引することにより、保持部の下部で小片部材を保持できるようにしたことにある。
【0013】
本発明によると、小片部材を保持しながら加熱できる保持部を簡単な構造で構成することができる。すなわち、保持部の下部における中央部分は、小片部材を吸着する吸引孔の開口になり、その吸引孔の開口の周囲は、小片部材を加熱する部分になるため、保持部の下部を有効に利用して構造を単純にすることができる。また、小片部材における被定置部に固定される部分が環状になるため、その外周部を大きくすることができ、これによって、小片部材の被定置部への固定がより確実になる。なお、保持部の下部を上部に対して着脱可能にして、保持部の下部を小片部材の種類によって取り替え可能にすることもできる。これによると、小片部材の形状に応じた最適な貼り付けが可能になる。
【0014】
本発明に係る小片部材の貼り付け装置のさらに他の構成上の特徴は、保持部(65,75)が、小片部材を把持できる把持部で構成されていることにある。この把持部としては、例えば、小片部材の両側を挟んで挟持できる複数の爪を備えたもので構成することができる。本発明によると、機械的な構造で小片部材を直接保持できるため、保持部を単純な構造にすることができる。
【0015】
本発明に係る小片部材の貼り付け装置のさらに他の構成上の特徴は、小片部材(C)の少なくとも上面が磁性を備えた吸着面で構成されており、保持部(85)が磁力による吸引力を利用した吸引機構で構成されていることにある。
【0016】
本発明によると、磁力で吸引することにより小片部材を保持できるため、保持部を単純な構造にすることができる。また、磁力による吸引力を発生するものとしては、磁気発生ソレノイドや、永久磁石に磁気発生ソレノイド組み合わせたものを用いることができる。磁気発生ソレノイドを用いれば、電源をオン状態にして小片部材を吸着し、電源をオフ状態にして小片部材の吸着を解除することができる。また、永久磁石に磁気発生ソレノイドを組み合わせる場合には、小片部材を吸着する際には、永久磁石の吸引力を利用し、小片部材の吸着を解除する際には、磁気発生ソレノイドに通電し、永久磁石と反対の磁極を発生させる。これによって、永久磁石による小片部材の吸着を解除することができる。
【0017】
なお、本発明においては、小片部材を、加熱によって変化して被定置部に接着可能になる樹脂材料の成形体や、金属板の下面に樹脂材料を貼り付けた積層体で構成することができる。これによると、接着可能な面が、保持部によって加熱される小片部材に形成されるため、小片部材を搬送する間に、小片部材の接着面が接着可能な状態になるように加熱することができる。これによって、小片部材を被定置部に貼り付ける時間を最短にすることができる。また、小片部材を樹脂材料で構成した場合には、フレキシブルプリント基板に用いるカバーレイフィルムとして使用することができ、小片部材を積層体で構成した場合には、リジットフレックス基板に用いる補強板として使用することができる。なお、小片部材がカバーレイフィルムである場合には、軟化しすぎることを防止するため、保持部の温度が最適になるように温度制御する必要がある。
【0018】
さらに、本発明においては、被定置部を、加熱によって変化して小片部材に接着可能になる樹脂材料で構成することもできる。これによると、小片部材が、加熱されても接着可能にならない材料、例えば、金属で構成されていても、被定置部に貼り付けることが可能になる。この場合、被定置部は、加熱された小片部材に接触することにより接着可能な状態になる。また、被定置部における接着可能な部分は、少なくとも小片部材に接触する表面に形成されていればよい。さらに、被定置部材全体を、加熱によって接着可能になる樹脂材料で構成してもよく、少なくとも被定置部の表面が前述した樹脂材料で構成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る小片部材の貼り付け装置を示した斜視図である。
図2】小片部材の貼り付け装置に備わった保持ユニットを示した斜視図である。
図3】第1実施形態の第1変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わった保持ユニットを示した斜視図である。
図4】第1実施形態の第2変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わった加熱保持器具を示した断面図である。
図5】第1実施形態の第3変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わった加熱保持器具を示した断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る小片部材の貼り付け装置に備わった加熱保持器具を示した断面図である。
図7】第2実施形態の変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わった加熱保持器具を示した断面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る小片部材の貼り付け装置に備わった加熱保持器具を示した断面図である。
図9】第3実施形態の変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わった加熱保持器具を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る小片部材の貼り付け装置10を示している。この小片部材の貼り付け装置10は、トレイ11の上面に配置されたフィルム状の小片部材Aを搬送して固定テーブル12の上面に設置された電子基板からなる被定置部材13の被定置部13aに貼り付けるための装置である。小片部材Aは、熱可塑性ポリイミドからなっており、200℃程度に加熱すると可塑化して接着性が生じるとともに、硬化したのちは被定置部13aに固定される。また、小片部材Aを構成する材料としては、ポリイミド以外の熱可塑性樹脂材料や、熱硬化性樹脂材料を用いることもできる。
【0021】
また、被定置部材13はポリイミド等の樹脂材料からなっている。小片部材の貼り付け装置10には、前述したトレイ11および固定テーブル12の他、小片部材Aを搬送する搬送装置10a、画像認識装置14aおよび小片部材用状態検出装置14bが備わっている。また、図示は省略しているが、トレイ11を搬送するトレイ搬送装置や、固定テーブル12を搬送する固定テーブル搬送装置も備わっている。
【0022】
搬送装置10aは、保持ユニット20と、保持ユニット20を、種々の方向に移動させる移動機構とで構成されている。そして、移動機構は、保持ユニット20を左右方向(図1に矢印Xで示した方向)に移動させる左右方向移動機構15、保持ユニット20を前後方向(図1に矢印Yで示した方向)に移動させる前後方向移動機構16、保持ユニット20を上下方向(図1に矢印Zで示した方向)に移動させる昇降機構17および保持ユニット20を回転方向(図1に矢印Rで示したZ軸周り方向)に回転させる回転機構18(図2参照)で構成されている。
【0023】
左右方向移動機構15は、前後に間隔を保って配置され左右方向に平行して延びる一対のXレール15a,15bと、Xレール15aに移動可能に設置された脚部15cと、Xレール15bに移動可能に設置された脚部15dと、左右方向駆動装置(図示せず)とで構成されている。左右方向駆動装置は、脚部15c,15dの一方に螺合するボールねじと、このボールねじを回転させるX軸モータとを備えており、X軸モータの駆動によりボールねじを回転させて、脚部15c,15dをXレール15a,15bに沿って移動させる。
【0024】
前後方向移動機構16は、脚部15c,15dの上端側部分に左右に一定間隔を保った状態で平行して掛け渡されて前後方向に延びる棒状の一対のYレール16a,16bと、前後方向駆動装置16cとで構成されている。前後方向駆動装置16cは、Yレール16a,16bに沿って移動可能な移動軸部と、その移動軸部に設けられたY軸モータ(図示せず)とを備えており、Y軸モータの駆動により、Yレール16a,16bに沿って移動する。そして、前後方向駆動装置16cの移動軸部から下方に向かって保持ユニット昇降軸17aが延びており、この保持ユニット昇降軸17aの下部に保持ユニット20が取り付けられている。
【0025】
昇降機構17は、保持ユニット昇降軸17aと、保持ユニット20の内部に設置されたZ軸モータ(図示せず)とを備えており、Z軸モータの駆動により、保持ユニット20を保持ユニット昇降軸17aに沿って昇降させる。また、保持ユニット20には、保持ユニット20を保持ユニット昇降軸17aの軸周り方向に回転させる回転機構18も設けられており、回転機構18は、図2に示した保持ユニット旋回軸18aと、保持ユニット旋回軸18aを回転させるR軸モータ(図示せず)とを備えている。このため、保持ユニット20は、左右方向移動機構15の駆動により左右方向に移動し、前後方向移動機構16の駆動により前後方向に移動し、昇降機構17の駆動により上下方向に移動し、さらに、回転機構18の駆動により回転する。
【0026】
保持ユニット20は、図2に示したように構成されており、昇降機構17の下部を構成する基部17bに、5個の保持器具昇降機構21を介して、5個の加熱保持器具22が取り付けられている。この保持器具昇降機構21および加熱保持器具22で本発明に係る押圧部が構成される。各加熱保持器具22は、加熱冷却機器23と、保持部24とを備えており、図2において図示は省略しているが、保持部24には、吸引用のホースが接続されている。加熱冷却機器23は、加熱冷却機器本体23aと、加熱冷却機器本体23aから下方に突出した棒状のヒータ23bとで構成されており、ヒータ23bは、通電により発熱する。
【0027】
加熱冷却機器本体23aには、ヒータ23bの温度を検出する温度センサやヒータ23bを冷却する冷却装置が備わっており、温度センサが検出する温度に応じて、ヒータ23bに通電したり、その通電を停止したりする。また、冷却装置は、加熱冷却機器本体23a内に外部の空気を取り込むことにより、必要に応じて、ヒータ23bを冷却する。保持部24は熱伝導性のよい矩形の鋼材からなっており、上面中央が、ヒータ23bの下部に連結されている。また、図2において図示は省略しているが、保持部24の下面中央と側部との間には吸引孔が形成されている。
【0028】
そして、保持部24の側部の開口に、吸引用のホースの先端部が接続されている。この吸引用ホースの基端部は、吸引装置(図示せず)に接続されており、吸引装置の作動により、小片部材Aを吸引して保持部24の下面で保持することができ、吸引装置の作動を停止させることにより小片部材Aを解放することができる。小片部材Aが保持部24に保持されている間、小片部材Aは保持部24によって加熱されるが、このときの保持部24の温度が、小片部材Aの保持および貼り付けに最適な温度、例えば、200℃程度になるように、ヒータ23bは制御される。また、各加熱保持器具22は、それぞれ対応する保持器具昇降機構21の作動により個別に昇降できる。保持器具昇降機構21は、昇降モータとボールねじとで構成されている。
【0029】
また、保持ユニット20には、画像認識装置14aが取り付けられている。この画像認識装置14aは、例えば、CCDカメラで構成することができ、保持ユニット20の側部に固定され、保持ユニット20とともに移動する。そして、画像認識装置14aは、トレイ11の上面に配置された小片部材Aの状態を検出したり位置を確認したりする。また、被定置部材13の上面における小片部材Aが固定される被定置部13aの位置の確認や被定置部材13の上面に固定された小片部材Aの配置の確認のためなどに用いられる。
【0030】
また、小片部材用状態検出装置14bは、トレイ11の設置場所と、固定テーブル12の設置場所との間に設置されており、例えば、CCDカメラで構成することができる。この小片部材用状態検出装置14bは、保持部24に保持されて搬送される小片部材Aの状態を下方から確認する。この場合の小片部材Aの状態とは、小片部材Aの向きや保持部24への吸着状態等である。
【0031】
小片部材の貼り付け装置10には、前述した装置の他、CPU、ROMおよびRAMからなる記憶装置、画像処理装置、入力装置およびセンサ等からなる各種の検出装置等、小片部材の貼り付け装置10を作動するために必要な各種の装置が備わっている。記憶装置には、小片部材の貼り付け装置10が備える各装置を作動させるための各種のプログラムや、トレイ11の設置位置、小片部材Aの設置位置や形状、被定置部材13の設置位置、被定置部13aの位置や形状等に関するデータ等の各種のデータが記憶されている。
【0032】
画像処理装置は、画像認識装置14aおよび小片部材用状態検出装置14bに接続されており、画像認識装置14aおよび小片部材用状態検出装置14bの撮影画像を画像処理して、画像データとして記憶装置に記憶させる。入力装置は、記憶装置に記憶されたプログラムを選択するための入力や、各種のデータ等の入力に用いられる。また、検出装置は、X軸モータ、Y軸モータ等の各種のモータの回転数を検出して、保持ユニット20の左右、前後、上下および回転方向の位置を認識する。そして、CPUは、記憶装置が記憶するプログラムや各種のデータ、入力装置の入力データおよび検出装置の検出値等に基づいて、小片部材の貼り付け装置10が備える各装置を作動させる。
【0033】
このように構成された小片部材の貼り付け装置10を用いて、被定置部材13の被定置部13aに、小片部材Aを貼り付ける場合の処理は、CPUが、前述した各種のプログラムを実行することによって行われる。この場合、まず、複数の小片部材Aが配置されたトレイ11を保持ユニット20の移動範囲の下方に設置するとともに、被定置部材13を保持ユニット20の移動範囲の下方に設置する。ついで、保持ユニット20をトレイ11の上方に位置させる。このとき、画像認識装置14aで小片部材Aの位置を確認しながら保持ユニット20を移動させる。
【0034】
つぎに、ヒータ23bに通電して、ヒータ23bの発熱により保持部24を、例えば、200℃に加熱して、保持ユニット20を下降させる。そして、保持部24が小片部材Aに接近したところで、吸引装置を作動させて小片部材Aを保持部24の下面に吸着させる。この場合、複数の小片部材Aを、複数の保持部24に同時に吸着させてもよい。つぎに、保持ユニット20を上昇させて、被定置部材13の上方に移動させる。その移動の際に、保持ユニット20を小片部材用状態検出装置14bの上方を通過させて、小片部材用状態検出装置14bによって、保持部24に吸着された小片部材Aの状態を確認する。
【0035】
つぎに、画像認識装置14aで被定置部材13の被定置部13aの位置の位置を確認して、保持ユニット20を回転させ、小片部材Aの向きを、被定置部13aの向きに合わせる。そして、保持ユニット20を下降させて、小片部材Aを被定置部13aに重ね合わせる。小片部材Aは、トレイ11から搬送される間に加熱されて変化し、被定置部13aに接着され易い状態になっている。このため、小片部材Aは被定置部13aに押し付けられて被定置部13aに接着される。
【0036】
小片部材Aが被定置部13aに貼り付けられて固定された状態で、吸引装置を停止させて、保持ユニット20を上昇させる。これによって、図1に示したように、例えば、2個の小片部材Aがそれぞれ2か所の被定置部13aに固定される。そして、保持ユニット20を再度トレイ11の上方に移動させ、前述した操作を繰り返すことにより、全ての小片部材Aが被定置部13aに固定される。なお、図1に示した被定置部材13には、一部の被定置部13aしか図示していない。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る小片部材の貼り付け装置10では、小片部材Aが加熱されることにより可塑化して接着剤としても機能する熱可塑性ポリイミドで構成されている。そして、小片部材Aを搬送する搬送装置10aの加熱保持器具22に、小片部材Aを保持するための保持部24だけでなく、保持部24を介して小片部材Aを加熱するヒータ23bも備わっている。このため、小片部材Aを搬送しながら、加熱することができ、この加熱された小片部材Aを被定置部材13の被定置部13aに押し付けることにより、そのまま小片部材Aを被定置部13aに貼り付けて固定することができる。これによって、小片部材Aの被定置部材13に対する設置と貼り合わせとを同時に行うことができ、高速処理が可能になるとともに、小片部材Aを被定置部材13に設置したのちにずれが生じることがないため、精度のよい貼り付けが可能になる。
【0038】
また、小片部材Aは、保持部24の下面に接触することよって加熱されるため、各小片部材Aに対する加熱が均一になるとともに、効率的な加熱が可能になる。さらに、保持部24は、下面に接触する小片部材Aだけを加熱するため、熱エネルギーの損失や、搬送装置10aの他の構成部品に熱による劣化が生じることを最小限にできる。また、搬送装置10aに、保持ユニット20を左右方向、前後方向、上下方向および回転方向に移動させる左右方向移動機構15、前後方向移動機構16、昇降機構17および回転機構18が備わっているため、保持部24に保持された小片部材Aの向きをどの方向にでも変更することができる。さらに、各加熱保持器具22が、保持器具昇降機構21によって個別に昇降できるため、複数の加熱保持器具22を個別に昇降制御できる。このため、小片部材Aを被定置部13aに対して正確に固定することができる
【0039】
また、保持部24の上部がヒータ23bの下部に連結されているため、ヒータ23bが、保持部24を支持する部材と、保持部24を加熱する部材とを兼ねるようになり、部材点数を減少させて、加熱保持器具22の構造を簡単なものにすることができる。また、保持部24の下面中央に設けられた吸引孔の開口で小片部材Aを吸着するため、小片部材Aは中央部分が吸引されるようになり、安定した吸着が可能になる。そして、保持部24の下面における吸引孔の開口の周囲部分全体が、小片部材Aを加熱する部分になるため、小片部材Aにおける被定置部13aに固定される部分の面積を広くすることができ、小片部材Aの被定置部13aへの固定がより確実になる。
(第1変形例)
【0040】
図3は、前述した第1実施形態の第1変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わっている保持ユニット30を示している。この保持ユニット30では、上下方向移動機構の下部を構成する基部31に、5個の保持器具昇降機構32が設けられており、この保持器具昇降機構32にそれぞれ保持器具個別旋回軸33を介して加熱保持器具34が取り付けられている。保持器具個別旋回軸33は、上部を構成する矩形の旋回軸本体33aと、旋回軸本体33aの後部から下方に延びて保持器具昇降機構32に摺動可能に係合し保持器具昇降機構32の作動力を受ける摺動部33bと、旋回軸本体33aの下面から下方に延びる軸部33cとで構成されている。そして、旋回軸本体33aの内部には、軸部33cを軸周り方向に回転させる回転駆動モータが設置されている。
【0041】
加熱保持器具34は、前述した加熱保持器具22と同一の器具で構成されている。すなわち、この保持ユニット30は、前述した保持ユニット20を回転させる回転機構18に代えて5個の保持器具個別旋回軸33を設けたものであり、これによって、各加熱保持器具34を個別に回転させることができる。この保持ユニット30のそれ以外の部分の構成は、前述した保持ユニット20と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。また、保持ユニット30は、前述した保持ユニット20代えて、前述した小片部材の貼り付け装置10で用いることができ、この場合、基部31は、前述した保持ユニット昇降軸17aに連結される。
【0042】
また、図3には、保持部24に吸着される小片部材として、小片部材Bが示されている。この小片部材Bは、四角形の薄いステンレス板と、そのステンレス板の下面に形成された加熱により変化して接着可能になる接着層とで構成されている。この小片部材Bを用いても、前述した小片部材Aと同様、高速かつ高精度の処理が可能になる。この保持ユニット30を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の作用効果は、前述した小片部材の貼り付け装置10の作用効果と同様である。
(第2変形例)
【0043】
図4は、前述した第1実施形態の第2変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わっている加熱保持器具41を示している。この加熱保持器具41は、摺動部材42と、シリンダー43と、加熱機器44と保持部45と、ガイド部46とを備えている。摺動部材42は、断面形状がL形を上下に反転させた形状になっており、上下に延びる支持片42aと、支持片42aの上端から水平方向に延びる固定片42bとを備えている。この摺動部材42は、前述した保持器具昇降機構21,32と同様の保持器具昇降機構の作動によって昇降する。また、図示は省略しているが、支持片42aの内面(図4の左側の面)には上下に延びる溝状のレール部(図示せず)が形成され、固定片42bの中央近傍には上下に貫通する軸挿通穴が形成されている。
【0044】
そして、固定片42bの上面に、シリンダー43が設置されている。このシリンダー43は、下方に延びる伸縮軸43aを固定片42bの軸挿通穴に挿通させた状態で固定片42bに固定されている。また、シリンダー43の側部にはコネクタ43bを介してホース43cが接続され、ホース43cの基端部にはエアコンプレッサー(図示せず)が接続されている。シリンダー43は、エアコンプレッサーから圧縮空気が供給されることにより、伸縮軸43aを下方に突出させ、圧縮空気の供給が停止すると、伸縮軸43aを上昇させる。
【0045】
加熱機器44は、ヒータ44aと、ヒータ44aの温度を検出する温度センサとを備えている。すなわち、この加熱機器44は、前述した加熱冷却機器23から冷却装置を除いた構成をしている。また、加熱機器44の上部にはコネクタ44bを介して電源を供給するための配線44cが接続されている。保持部45は、前述した保持部24と同じ構成をしており、上面中央が、ヒータ44aの下部に連結されている。そして、保持部45の下面中央と側部との間には吸引孔45aが形成され、吸引孔45aにおける保持部45の側部の開口に、吸引用のホース45bが接続されている。この吸引用のホース45bの基端部は、吸引装置(図示せず)に接続されている。
【0046】
ガイド部46は、摺動部材42のレール部に沿って昇降可能なガイド部本体46aと、ガイド部本体46aとヒータ44aとを連結する棒状の連結部46bとで構成されており、シリンダー43の作動によって昇降する加熱機器44に追従して昇降する。これによって、加熱機器44および保持部45は、搖動することなく安定した状態で昇降できる。このように構成された加熱保持器具41を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の部分の構成は、前述した小片部材の貼り付け装置10と同一である。
【0047】
この加熱保持器具41を備えた小片部材の貼り付け装置によると、小片部材Aを被定置部13aに貼り付けて固定する際に、シリンダー43を作動させて、小片部材Aを被定置部13aに対してより強く圧接することができるため、小片部材Aの被定置部13aに対する固定をより確実にすることができる。この加熱保持器具41を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の作用効果は、前述した小片部材の貼り付け装置10の作用効果と同様である。
(第3変形例)
【0048】
図5は、前述した第1実施形態の第3変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わっている加熱保持器具51を示している。この加熱保持器具51では、加熱保持器具51の本体部分を構成する加熱機器54と保持部55とが、ケース57に設けられている。このケース57は下部が保持部55の一部を構成するとともに、内部における下部に加熱機器54を設置して構成されている。保持部55は、下面中央とケース57の下部に位置する側部とに開口を形成し、吸引用のホース55aを外部から側部の開口に通しその先端部を下面中央の開口に固定することにより形成されている。すなわち、この保持部55では、ホース55aにおける両開口の間に位置する部分が本発明に係る吸引孔となる。
【0049】
そして、加熱機器54は、ヒータ54aと、ヒータ54aの温度を検出する温度センサとを備えており、ヒータ54aは、中央に上下に貫通する穴が形成された板状に形成されている。このヒータ54aは、中央の穴にホース55aを通した状態で、保持部55の内部の下部に設置され通電により、保持部55の下面部を加熱する。また、ケース57の側部における上下方向の中央部分には挿通穴が形成されており、加熱機器54に接続された配線54bが、この挿通穴を通過して外部に延びている。
【0050】
そして、ケース57の側部における上下方向の中央よりもやや上部側には、ガイド部57aが形成されている。このガイド部57aの先端部(図の右側の端部)は、前述したガイド部46のガイド部本体46aと同形に形成されている。この加熱保持器具51のそれ以外の部分の構成は、前述した加熱保持器具41と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。また、このように構成された加熱保持器具51を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の部分の構成は、前述した小片部材の貼り付け装置10と同一である。
【0051】
この加熱保持器具51を備えた小片部材の貼り付け装置によると、保持部55の下面部を効率的に加熱することができる。また、加熱機器54と保持部55とを含む加熱保持器具51の本体部分を堅牢に形成することができる。この加熱保持器具51を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の作用効果は、前述した加熱保持器具41を備えた小片部材の貼り付け装置の作用効果と同様である。
【0052】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る小片部材の貼り付け装置に備わっている加熱保持器具61を示している。この加熱保持器具61では、保持部65が、吸引により小片部材Aや小片部材Bを保持するのではなく、機械的な機構を用いて把持することにより保持できるように構成されている。この保持部65としては、種々のものを用いることができ、例えば、枠状に形成されて枠内に小片部材Aや小片部材Bを挿し込むことにより保持できるものや、複数の爪部を備え、その爪部で小片部材Aや小片部材Bを挟むことにより保持できるものを用いることができる。この加熱保持器具61のそれ以外の部分の構成は、前述した加熱保持器具41と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0053】
また、このように構成された加熱保持器具61を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の部分の構成も、前述した小片部材の貼り付け装置10と同一である。この加熱保持器具61を備えた小片部材の貼り付け装置は、特に、小片部材Bのように、ある程度の硬度を備え変形し難い小片部材を被定置部13aに貼り付ける場合に、確実な保持ができるため好適である。この加熱保持器具61を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の作用効果は、前述した小片部材の貼り付け装置10の作用効果と同様である。
【0054】
(第2実施形態の変形例)
図7は、前述した第2実施形態の変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わっている加熱保持器具71を示している。この加熱保持器具71では、ケース77の下部が、前述した保持部65と同様、小片部材Bを挟むことにより保持できる保持部75で構成されている。そして、加熱機器74のヒータ74aが、穴のない板状に形成されている。この加熱保持器具71のそれ以外の部分の構成は、前述した加熱保持器具51と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。また、このように構成された加熱保持器具71を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の部分の構成も、前述した小片部材の貼り付け装置10と同一である。
【0055】
この加熱保持器具71を備えた小片部材の貼り付け装置によると、保持部75の下面部を効率的に加熱することができる。また、加熱機器74と保持部75とを含む加熱保持器具71の本体部分を堅牢に形成することができる。この加熱保持器具71を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の作用効果は、前述した加熱保持器具61を備えた小片部材の貼り付け装置の作用効果と同様である。
【0056】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る小片部材の貼り付け装置に備わっている加熱保持器具81を示している。この加熱保持器具81では、保持部85が、鋼板からなる箱状の収容部85aの内部に磁気発生用のソレノイド85bを収容して構成されている。そして、ソレノイド85bに接続された配線85cが、収容部85aの上部から外部に延びている。この保持部85は、ソレノイド85bが発生する磁気の吸引力によって、収容部85aの下面に小片部材Cを吸着する。この小片部材Cは、小片部材Bと同様、薄いステンレス板と、そのステンレス板の下面に形成された接着層とで構成されているが、このステンレス板には、磁性を有するステンレス鋼が用いられている。この加熱保持器具81のそれ以外の部分の構成は、前述した加熱保持器具41と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0057】
また、このように構成された加熱保持器具81を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の部分の構成も、前述した小片部材の貼り付け装置10と同一である。この加熱保持器具81を備えた小片部材の貼り付け装置は、小片部材Cのように、磁性を備えた小片部材を被定置部13aに貼り付ける場合に用いることができる。そして、この加熱保持器具81を備えた小片部材の貼り付け装置によっても、加熱保持器具41を備えた小片部材の貼り付け装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
(第3実施形態の変形例)
図9は、前述した第3実施形態の変形例に係る小片部材の貼り付け装置に備わっている加熱保持器具91を示している。この加熱保持器具91では、ケース97内の上部に、前述したソレノイド85bと同様のソレノイド95が設置されており、ソレノイド95に接続された配線95aが、ケース97の上部から外部に延びている。また、ケース97の下面は平面状に形成されている。すなわち、この加熱保持器具91では、ケース97とソレノイド95とで保持部が構成される。この加熱保持器具91のそれ以外の部分の構成は、前述した加熱保持器具71と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。また、このように構成された加熱保持器具91を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の部分の構成も、前述した小片部材の貼り付け装置10と同一である。
【0059】
この加熱保持器具91を備えた小片部材の貼り付け装置も、小片部材Cのように、磁性を備えた小片部材を被定置部13aに貼り付ける場合に用いることができる。そして、この加熱保持器具91によると、加熱機器74とソレノイド95とを含む加熱保持器具91の本体部分を堅牢に形成することができる。この加熱保持器具91を備えた小片部材の貼り付け装置のそれ以外の作用効果は、前述した加熱保持器具81を備えた小片部材の貼り付け装置の作用効果と同様である。
【0060】
なお、前述した各実施形態や各変形例において用いられた小片部材A,B,Cに代えて、金属材料等、加熱されても接着性が生じない材料だけで構成された小片部材を用いることもできる。この場合も、第3実施形態およびその変形例に係る小片部材の貼り付け装置を使用する場合は、磁性を備えた小片部材とする。そして、被定置部材13は、200℃以下の温度に加熱すると変化して接着性が生じる熱可塑性ポリイミドや、他の熱可塑性樹脂材料または熱硬化性樹脂材料等で成する。この場合、被定置部材13の被定置部13aは、小片部材に接触することによって加熱され、小片部材に接着する。
【0061】
また、本発明に係る小片部材の貼り付け装置は、前述した各実施形態および各変形例に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した各実施形態等では、加熱保持器具22,34等がそれぞれ5個設けられているが、この加熱保持器具22,34等は、5個以外の複数個設けてもよいし、1個だけ設けてもよい。また、加熱保持器具22,34等を複数個設ける場合には、各加熱保持器具22,34等の間隔とトレイ11上に配置される小片部材A,B,C等の間隔を同じにしておくことが好ましい。
【0062】
また、保持部24,45等の下部を上部に対して着脱可能にして、保持部24,55等の下部を小片部材A,B,C等の形状に応じたものに取り替え可能にすることもできる。これによると、小片部材A,B,C等の形状に応じた最適な貼り付けが可能になる。また、前述した第3実施形態およびその変形例に係る小片部材の貼り付け装置では、磁力による吸引力を発生するものとして、ソレノイド85b,95を用いているが、これに代えて永久磁石とソレノイドとを組み合わせたものを使用することもできる。この場合には、永久磁石の吸引力を利用して小片部材Cを吸着し、小片部材Cの吸着を解除する際には、ソレノイドに、永久磁石と反対の磁極を発生させる。これによって、永久磁石による小片部材Cの吸着を解除することができる。また、本発明に係る小片部材の貼り付け装置を構成するそれ以外の部分についても、本発明の技術的範囲で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…小片部材の貼り付け装置、10a…搬送装置、13…被定置部材、13a…被定置部、15…左右方向移動機構、16…前後方向移動機構、17…昇降機構、18…回転機構、21,32…保持器具昇降機構、22,34…加熱保持器具、23b,44a,54a,74a…ヒータ、24,45,55,65,75,85…保持部、43…シリンダー、45a…吸引孔、85b,95…ソレノイド、A,B,C…小片部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9