(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分離ローラ軸に、前記分離ローラを、シート搬送方向に回転する前記搬送ローラに対して従動回転させるトルクリミッタを設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート給送装置。
シートに画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部にシートを給送する請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート給送装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置は、カセットにセットされたシートを給送ローラにより1枚ずつ分離して画像形成部に給送するシート給送装置を備えている。そして、シート給送装置は、シートを給送する際、シートが2枚以上送り出されるシートの重送を防ぐため、シートを1枚ずつ分離する分離部を備えている。
【0003】
このような分離部として、給送ローラと同方向に回転するフィードローラと、フィードローラに所定の大きさの圧接力(以下、リタード圧という)で圧接する分離ローラであるリタードローラとを備えたリタードローラ分離方式のものがある。ここで、リタードローラは、トルクリミッタを介してシート搬送方向と逆方向(以下、逆送方向という)に一定のトルクで駆動(以下、回転トルクという)が付与され、シート搬送方向及び逆送方向のいずれの方向にも回転可能な構成である。そして、フィードローラとリタードローラとのニップ部(以下、分離ニップ部という)に2枚以上のシートが進入したとき、リタードローラが逆送方向に回転することにより、シートの重送を防止する。
【0004】
また、リタードローラ分離方式の分離部として、リタードローラを逆送方向に回転させることで生じるくい込み力によりリタードローラをフィードローラに付勢する構成のものがある(特許文献1参照)。この構成では、リタードローラに駆動を伝達することにより、リタードローラに回転を伝達する駆動系に、リタードローラをフィードローラに圧接する方向のモーメントが生じ、このモーメントによりリタードローラがフィードローラに付勢される。以下、このようにリタードローラを逆送方向に回転させる駆動を伝達することで生じるくい込み力により所定のリタード圧を得る方式をくい込みリタード分離方式という。
【0005】
ところで、近年、画像形成装置で使用されるシート(メディア)の中には、紙粉量が多いシートや、シートを形成する材質にローラへダメージを与え易い材質を含有するシートが使用されることが多くなってきている。そして、このようなシートを使用すると、リタードローラの表面が短時間で摩耗し、ローラが短寿命化する。
【0006】
次に、リタードローラの摩耗について説明する。リタードローラはトルクリミッタを介して常に逆送方向に回転トルクが加えられているが、フィードローラとリタードローラの表面の静摩擦力がトルクリミッタによる戻し力よりも大きいため、リタードローラはフィードローラに従動回転したり、停止したりする。しかし、リタードローラとシートの摩擦係数が、シートとシートの摩擦係数よりも小さくなると、リタードローラでシートを戻すことができなくなり重送が発生する。
【0007】
また、摩耗が進みリタードローラの表面摩擦係数が低下すると、フィードローラ表面との間の静摩擦力が小さくなってリタードローラが従動回転しなくなり、リタードローラはフィードローラに対してスリップして停止又は逆送方向に回転する。そして、この状態のときシート先端が分離ニップ部に到達すると、リタードローラが停止又は逆送方向に回転していることにより、シート先端が折り曲げられてしまうことがある。
【0008】
このような問題を防止するため、分離ニップ部をシートの先端が通過した後にリタードローラに逆送方向の回転駆動を伝達するように制御するものがある(特許文献2参照)。この制御では、給送ローラにより送られてくるシートの先端が分離ニップ部を通過するまではリタードローラをシート搬送方向に回転させておく。これにより、シート搬送方向に回転するフィードローラ及びリタードローラによりシート先端を分離ニップ部にスムーズに進入させることができる。そして、シート先端が分離ニップ部に進入した後に、リタードローラに逆送方向に回転させる駆動を伝達することにより、分離ニップ部においてシートを1枚ずつに分離することができる。このように構成することによって、リタードローラが摩耗してフィードローラに従動回転しなくなってもシート先端の折れ曲がりを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の一例であるフルカラーレーザービームプリンタの構成を示す図である。
【0018】
図1において、201はフルカラーレーザービームプリンタ(以下、プリンタという)、201Aは画像形成装置本体であるプリンタ本体、201Bはシートに画像を形成する画像形成部、220は定着部である。202はプリンタ本体201Aの上方に略水平に設置された上部装置である画像読取装置であり、この画像読取装置202とプリンタ本体201Aとの間に、シート排出用の排出空間Sが形成されている。なお、230はプリンタ本体201Aの下部に設けられたシート給送装置、215はトナーカートリッジである。
【0019】
画像形成部201Bは、4ドラムフルカラー方式のものであり、レーザスキャナ210と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー画像を形成する4個のプロセスカートリッジ211を備えている。ここで、各プロセスカートリッジ211は、感光体ドラム212、帯電手段である帯電器213、現像手段である現像器214及び不図示のクリーニング手段であるクリーナを備えている。また、画像形成部201Bは、プロセスカートリッジ211の上方に配された中間転写ユニット201Cを備えている。
【0020】
中間転写ユニット201Cは、駆動ローラ216a及びテンションローラ216bに巻き掛けられた中間転写ベルト216を備えている。また、中間転写ユニット201Cは、中間転写ベルト216の内側に設けられ、感光体ドラム212に対向した位置で中間転写ベルト216に当接する1次転写ローラ219を備えている。ここで、中間転写ベルト216は、フィルム状部材で構成されると共に各感光体ドラム212に接するように配置され、不図示の駆動部により駆動される駆動ローラ216aにより矢印方向に回転するようになっている。
【0021】
そして、この中間転写ベルト216に1次転写ローラ219によって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の負極性を持つ各色トナー像が順次中間転写ベルト216に多重転写される。これにより、中間転写ベルト上にはカラー画像が形成される。なお、中間転写ユニット201Cの駆動ローラ216aと対向する位置には、中間転写ベルト上に形成されたカラー画像をシートPに転写する2次転写部を構成する2次転写ローラ217が設けられている。さらに、この2次転写ローラ217の上部に定着部220が配置され、この定着部220の左上部には第1排出ローラ対225a、第2排出ローラ対225b及び反転排紙部である両面反転部201Dが配置されている。この両面反転部201Dは、正逆転可能なシート反転搬送ローラである反転ローラ対222及び一面に画像が形成されたシートを再度、画像形成部201Bに搬送する再搬送通路R等が設けられている。
【0022】
次に、このように構成されたプリンタ201の画像形成動作について説明する。まず、原稿の画像情報を画像読取装置202によって読み取ると、この画像情報は画像処理された後、電気信号に変換されて画像形成部201Bのレーザスキャナ210に伝送される。なお、画像情報は不図示のパソコン等の外部機器から画像形成部201Bに入力される場合もある。
【0023】
画像形成部201Bでは、各プロセスカートリッジ211の感光体ドラム212の表面をレーザスキャナ210から射出されたイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック成分色の画像情報に対応するレーザ光により走査する。これにより、帯電器213によって表面が所定の極性・電位に一様に帯電されている感光体ドラム212の表面が順次露光され、各プロセスカートリッジ211の感光体ドラム上に、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの静電潜像が順次形成される。
【0024】
この後、この静電潜像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色トナーにより現像して可視化すると共に、1次転写ローラ219に印加した1次転写バイアスにより、各感光体ドラム上の各色トナー像を中間転写ベルト216に順次重ね合わせて転写する。これにより、中間転写ベルト216上にトナー画像が形成される。なお、トナー像転写後に感光体ドラム212に残留したトナーは、不図示のクリーナによって除去される。
【0025】
また、このトナー画像形成動作に並行してシート給送装置230によりシートカセット230aに収納されたシートPが送り出され、この後、シートPは、レジストレーションローラ対240まで搬送される。そして、シートPは、レジストレーションローラ対240により斜行が補正されると共に、中間転写ベルト216に形成されたトナー像の移動速度に同期したタイミングで回転を開始する。この回転開始と共に、シートPは、レジストレーションローラ対240から駆動ローラ216aと2次転写ローラ217とにより構成される2次転写部に到達する。この後、2次転写部にて、2次転写ローラ217に印加した2次転写バイアスにより、トナー像がシートP上に一括して転写される。なお、2次転写部で転写されずに中間転写ベルト上に残留したトナーは、不図示のクリーナによって回収される。
【0026】
次に、このようにトナー像が転写されたシートPは、定着部220に搬送され、定着部220において熱及び圧力を受けて各色のトナーが溶融混色し、シートPにカラーの画像として定着される。この後、画像が定着されたシートPは、定着部220の下流に設けられた第1排出ローラ対225a又は第2排出ローラ対225bによって排出空間Sに排出され、排出空間Sの底面に突出された積載部23に積載される。
【0027】
シートの両面に画像を形成する場合、片面に画像が形成されたシートは、定着部220を通過した後、不図示の切替手段及び反転ローラ対222によってシートPの後端が定着部220を通過する。この後、所定のタイミングで反転ローラ対222が逆転し、これによりシートPは、反転して再搬送通路Rに搬送された後、再びレジストレーションローラ対240へと搬送される。そして、再度裏面に対する画像形成及び定着がなされ、この後、第1排出ローラ対225a又は第2排出ローラ対225bによって排出空間Sに排出され、積載部23上に積載される。
【0028】
次に、
図2を用いてシート給送装置230について説明する。なお、本実施の形態において、このシート給送装置230の分離方式は、背景技術で説明したくい込み方式のリタードローラ分離方式である。シート給送装置230は、シート収納部であるシートカセット230aの上方に昇降可能に配設された給送ローラとしてのピックアップローラ1を備えている。また、シート給送装置230は、ピックアップローラ1のシート給送方向下流側に配設され、ピックアップローラ1により送り出されたシートを搬送する搬送ローラとしてのフィードローラ2を備えている。さらに、シート給送装置230は、フィードローラ2に圧接し、フィードローラ2と共にシートを1枚ずつ分離する分離部(圧接部)230bを構成すると共に、フィードローラ2に対して従動回転可能な分離ローラとしてのリタードローラ3を備えている。
【0029】
リタードローラ3は、分離ローラ軸としてのリタードローラ軸107に取り付けられると共に、後述する分離モータ121により、リタードローラ軸107に設けられたトルクリミッタ10を介して回転することにより、シートの重送を防止する。また、リタードローラ3は、フィードローラ2との分離ニップ部にシートが1枚進入した場合には、シートから受ける負荷が大きくなることから、トルクリミッタ10の駆動伝達が切れてシートを介してフィードローラ2に従動してシート搬送方向に回転する。
【0030】
分離ニップ部に複数枚のシートが進入した場合には、リタードローラ3が受ける負荷が小さいことから、トルクリミッタ10による駆動伝達が切れないため、リタードローラ3は逆送方向に回転する。そして、リタードローラ3が逆送方向に回転することにより、分離ニップ部に進入した複数枚のシートのうちリタードローラ3側のシートから順にシートカセット230aの方向に戻され、最上位のシートが1枚ずつ分離されて搬送される。
【0031】
図2において、122はピックアップローラ1とフィードローラ2を駆動する給送モータである。給送モータ122の駆動は駆動ベルト124を介してフィードローラ駆動軸108に固定されたプーリ段ギア125に伝えられることによりフィードローラ駆動軸108が回転し、フィードローラ2が回転する。また、フィードローラ駆動軸108の回転は、フィードローラ駆動軸108に取付けられているピックアップローラ入力ギア132からアイドラギア133を介してピックアップローラギア131に伝達され、これによりピックアップローラ1が回転する。つまり、本実施の形態においては、フィードローラ2とピックアップローラ1は、給送モータ122が駆動すると回転する。
【0032】
また、
図2において、121はリタードローラ3を、シート搬送方向及びシート搬送方向と逆方向の逆送方向に回転させるための駆動部としての正逆転可能な分離モータである。分離モータ121の駆動は、駆動ベルト123を介して駆動伝達軸であるリタードローラ駆動ギア軸106に固定されたプーリ120に伝えられてリタードローラ駆動ギア軸106が回転する。リタードローラ駆動ギア軸106には、リタードローラ3を、逆送方向に回転させるための逆転駆動入力ギア102及びシート搬送方向に回転させるための正転駆動入力ギア104が、シート搬送方向と直交する軸方向に所定の間隔を設けて固定されている。なお、給送モータ122及び分離モータ121の駆動は、制御部200により制御される。
【0033】
この逆転駆動入力ギア102には、リタードローラ軸107に固定されたリタードローラ逆転駆動ギア103が噛合し、正転駆動入力ギア104には、リタードローラ軸107に固定されたリタードローラ正転駆動ギア105が噛合している。ここで、逆転駆動入力ギア102、正転駆動入力ギア104、リタードローラ逆転駆動ギア103及びリタードローラ正転駆動ギア105はワンウエイクラッチが一体に設けられている。
【0034】
これにより、分離モータ121が正回転してリタードローラ駆動ギア軸106が正回転すると、ワンウエイクラッチの作用により、リタードローラ駆動ギア軸106と一体的に正転駆動入力ギア104が回転するが、逆転駆動入力ギア102は回転しない。また、分離モータ121が逆転してリタードローラ駆動ギア軸106が逆回転すると、ワンウエイクラッチの作用により、正転駆動入力ギア104が回転しないが、リタードローラ駆動ギア軸106と一体的に逆転駆動入力ギア102が回転する。
【0035】
リタードローラ駆動ギア軸106は、不図示の本体フレームに固定された支持板112に取り付けられた軸受135と、不図示の本体フレームに固定された支持板110に取り付けられた軸受134とにより回転可能に支持されている。リタードローラ軸107の端部はリタードローラ加圧アーム101により回転自在に支持され、リタードローラ軸107の中央部は支持板111に設けられた軸受117により支持されている。
【0036】
リタードローラ加圧アーム101は、
図3の(a)及び(c)に示すように、付勢手段であるバネ150より矢印Aで示す搬送ローラ側であるフィードローラ方向に常時、付勢されている。即ち、リタードローラ3は、リタードローラ加圧アーム101を介してバネ150により矢印A方向に付勢される状態となっている。なお、このバネ150による付勢力(加圧力)は、分離ニップ部に進入したシートを確実に1枚ずつ分離搬送するために必要なリタード圧より小さい。
【0037】
このシート給送装置230において、分離モータ121を逆回転させてリタードローラ駆動ギア軸106を逆転させると、
図3の(b)に示すように逆転駆動入力ギア102と噛合するリタードローラ逆転駆動ギア103が矢印Eで示す逆送方向に回転する。そして、リタードローラ逆転駆動ギア103が回転すると、ワンウエイクラッチの作用によりリタードローラ軸107がリタードローラ逆転駆動ギア103と一体的に、矢印E方向に回転する。なお、このようにリタードローラ軸107が回転しても、リタードローラ正転駆動ギア105はワンウエイクラッチの作用により回転しない。
【0038】
分離モータ121を正回転させてリタードローラ駆動ギア軸106を正回転させると、
図3の(d)に示すように正転駆動入力ギア104と噛合するリタードローラ正転駆動ギア105が矢印Dで示すシート搬送方向に回転する。そして、リタードローラ正転駆動ギア105が回転すると、ワンウエイクラッチの作用によりリタードローラ軸107がリタードローラ正転駆動ギア105と一体的に矢印D方向に回転する。なお、このようにリタードローラ軸107が回転しても、リタードローラ逆転駆動ギア103はワンウエイクラッチの作用により回転しない。このように、本実施の形態において、分離モータ121の駆動をリタードローラ軸107に伝達すると共に、リタードローラ軸107を揺動させる駆動伝達部160は、リタードローラ逆転駆動ギア103、リタードローラ正転駆動ギア105を備えている。また、駆動伝達部160は、逆転駆動入力ギア102及び正転駆動入力ギア104を備えている。
【0039】
ところで、既述したようにリタードローラ軸107の中央部は、支持手段である支持板111の軸受117で支持されているが、この軸受117は、
図4に示すように、リタードローラ逆転駆動ギア103と正転駆動入力ギア104の間に配置されている。このような位置に軸受117を配置した場合、リタードローラ軸107は軸受117を支点として揺動する。つまり、本実施の形態において、リタードローラ軸107は、矢印Sで示す軸受117を揺動支点として揺動可能となっている。
【0040】
リタードローラ駆動ギア軸106が逆回転し、逆転駆動入力ギア102が回転すると、逆転駆動入力ギア102と噛合するリタードローラ逆転駆動ギア103が回転する。この際、逆転駆動入力ギア102の歯により、リタードローラ逆転駆動ギア103の歯に対して圧が加わる。
【0041】
そして、この逆転駆動入力ギア102の歯がリタードローラ逆転駆動ギア103の歯に対して加える圧(以下、歯面圧という)により、揺動可能なリタードローラ軸107には、リタードローラ3をフィードローラ2に向けて付勢する方向のモーメントが生じる。つまり、リタードローラ3を逆送方向に回転させる駆動が伝達された場合には、逆転駆動入力ギア102とリタードローラ逆転駆動ギア103の歯面圧により、リタードローラ軸107にはリタードローラ3をフィードローラ2に付勢させる方向のモーメントが生じる。
【0042】
この結果、くい込みリタード方式のリタードローラ軸107が
図3の(b)の矢印E方向(逆送方向)に回転すると、逆転駆動入力ギア102の矢印B方向の歯面圧によるモーメントにより、リタードローラ軸107は軸受117を揺動支点として揺動する。そして、リタードローラ軸107が揺動すると、リタードローラ3が矢印A方向に加圧され、
図4に示す加圧力F
1が生じる。この結果、フィードローラ2とリタードローラ3とのリタード圧は、バネ150による付勢力に加圧力F
1を加えたものとなる。つまり、リタードローラ軸107が
図3の(b)の矢印E方向(逆送方向)に回転するときのリタード圧は、リタードローラ軸107の揺動による加圧力F
1とバネ150による付勢力により与えられる。
【0043】
逆に、リタードローラ軸107が
図3の(d)の矢印Dで示すシート搬送方向に回転する場合、正転駆動入力ギア104がリタードローラ正転駆動ギア105に対して加える歯面圧の方向は矢印Fの方向となる。ここで、リタードローラ軸107は軸受117を支点として揺動するので、リタードローラ軸107にはリタードローラ3をフィードローラ2に付勢させる方向のモーメントが生じる。
【0044】
そして、このモーメントにより、リタードローラ軸107には
図4に示す加圧力F
2が生じる。この結果、フィードローラ2とリタードローラ3とのリタード圧は、バネ150による付勢力に加圧力F
2を加えたものとなる。つまり、リタードローラ軸107が
図3の(d)の矢印D方向に回転するときのリタード圧は、リタードローラ軸107の揺動による加圧力F
2とバネ150により与えられる。
【0045】
次に、このような構成のシート給送装置230のシート給送動作について説明する。まず、ピックアップローラ1が不図示のソレノイドにより下降してシートカセット230aに収納されたシートの最上位シートに当接した後、制御部200は、給紙信号に基づいて給送モータ122の回転を開始する。これにより、フィードローラ2とピックアップローラ1が回転する。同時に、制御部200は、分離モータ121を正回転させ、正転駆動入力ギア104とリタードローラ正転駆動ギア105を介してリタードローラ軸107を、
図3の(c)及び(d)に示す矢印D方向に回転させる。
【0046】
これにより、リタードローラ3はシート搬送方向に回転する。即ち、フィードローラ2、ピックアップローラ1、リタードローラ3が同時にシート給送方向に回転する。このときの、リタード圧は、正転駆動入力ギア104による加圧力F
2とバネ150による加圧力が加わった大きさである。
【0047】
次に、ピックアップローラ1により送り出されたシートの先端が分離ニップ部に進入すると、制御部200は、所定のタイミングで、すなわち給紙信号から所定の時間が経過したとき、分離モータ121の回転方向を正回転から逆回転に切換える。この分離モータ121の逆回転により、逆転駆動入力ギア102とリタードローラ逆転駆動ギア103を介してリタードローラ軸107が
図3の(a)及び(b)に示す矢印E方向に回転する。なお、分離ニップ部にシートが進入したことを検知する検知部材を設け、この検知部材の検知タイミングに基づいて、制御部200が分離モータ121の回転方向の切換を制御するようにしても良い。
【0048】
ここで、シート1枚のみが分離ニップ部に搬送されたときは、トルクリミッタの作用トルクにより搬送に必要なリタード圧が生じてリタードローラ3が
図3の(c)及び(d)に示す矢印D方向に回転してシートを搬送する。また、シートが2枚以上、分離ニップ部に搬送されたときは、トルクリミッタの作用トルクにより、リタードローラ3が
図3の(a)及び(b)に示す矢印E方向に回転することで、シートを戻すことができる。これにより、シートが1枚ずつ分離搬送される。
【0049】
ところで、本実施の形態においては、既述したように正転駆動入力ギア104をリタードローラ軸107の揺動支点に対してリタードローラ3から離れた位置に配置している。これにより、リタードローラ3が搬送方向に回転し、駆動による加圧力F
2が矢印F方向に作用しても、リタードローラ軸107が揺動するので、リタードローラ3に対するリタード圧を生じる方向(矢印A方向)への加圧が可能となる。なお、正転駆動入力ギア104をリタードローラ軸107の揺動支点よりもリタードローラに近いリタードローラ側(例えば、ギア102と同じ位置)の位置に配置すると、駆動による加圧力F
2が矢印F方向に作用するのでリタード圧が低下する。この場合、シートを分離搬送するのに必要なリタード圧(圧接力)が得られなくなり、搬送不良が発生する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態においては、リタードローラ3を回転させる際、リタードローラ軸107を、リタードローラ軸107の回転方向にかかわらずリタードローラ3がフィードローラ2に圧接する方向に揺動させるようにしている。これによりリタードローラ3の回転方向にかかわらず、リタード圧をシートの分離が可能な大きさとすることができ、シートを確実に分離して搬送することができる。
【0051】
ところで、使用時間やシートによるダメージによりリタードローラ3の表面の摩擦係数が低下すると、フィードローラ2とリタードローラ3の表面の静摩擦力がトルクリミッタによる戻し力よりも小さくなる。この状態では、リタードローラ3は、フィードローラ2に従動回転することが難しくなり、ローラ回転起動時スリップが生じることがある。しかし、本実施の形態によれば、シート給送動作時に一度シート給送方向にリタードローラ3を回転させることにより、ローラ回転起動時のスリップ等を防止することができ、この結果、ローラの表面の摩耗を低減させることができ、寿命を延ばすことができる。
【0052】
また、リタードローラ3として硬度の低いスポンジローラを使用する場合があり、この場合、経時変化によりスポンジローラが変形すると、リタードローラは、フィードローラに従動回転することが難しくなり、スリップが生じることがある。しかし、本実施の形態によれば、シート給送動作時に一度シート給送方向にリタードローラを回転させることにより、硬度の低いスポンジローラの変形による起動時スリップ等を防止することができ、ローラ寿命を延ばすことができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図5は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を説明する図である。なお、
図5において、既述した
図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0054】
図5において、122Aは給送モータであり、本実施の形態において、この給送モータ122Aは一方向にのみ回転する。給送モータ122Aの駆動は駆動ベルト124を介してフィードローラ駆動軸108に固定されたプーリ段ギア125に伝えられてフィードローラ駆動軸108が回転し、フィードローラ2が回転する。また、フィードローラ駆動軸108の回転は、フィードローラ駆動軸108に取付けられているピックアップローラ入力ギア132からアイドラギア133を介してピックアップローラギア131に伝達され、ピックアップローラ1が回転する。
【0055】
また、
図5において、140は第1駆動伝達軸であるリタードローラ正転ギア軸129の軸上に配置された第1クラッチである第1電磁クラッチである。また、141は第2駆動伝達軸であるリタードローラ逆転ギア軸128の軸上に配置された第2クラッチである第2電磁クラッチである。なお、この第1電磁クラッチ140及び第2電磁クラッチ141のオン、オフは、給送モータ122Aの駆動を制御する制御部200により制御される。そして、フィードローラ駆動軸108に固定されたプーリ段ギア125は、第1電磁クラッチ140のギア部140aと噛合している正転アイドラギア143と噛合すると共に、第2電磁クラッチ141のギア部141aと噛合している。
【0056】
これにより、給送モータ122Aから駆動ベルト124を介してプーリ段ギア125に伝えられた駆動は、正転アイドラギア143を介して第1電磁クラッチ140のギア部140aに駆動が伝えられる。そして、第1電磁クラッチ140をオンにすることにより、第1電磁クラッチ140のギア部140aが固定されているリタードローラ正転ギア軸129が回転する。同様に、給送モータ122Aから駆動ベルト124を介してプーリ段ギア125に伝えられた駆動は、第2電磁クラッチ141のギア部141aに伝えられる。そして、第2電磁クラッチ141がオンになると、第2電磁クラッチ141のギア部141aが固定されているリタードローラ逆転ギア軸128を回転する。
【0057】
つまり、給送モータ122Aの回転は、制御部200による第1電磁クラッチ140及び第2電磁クラッチ141のオン/オフ制御により、リタードローラ逆転ギア軸128又はリタードローラ正転ギア軸129に伝達される。そして、第1電磁クラッチ140をオンすることにより、リタードローラ正転ギア軸129を回転し、第2電磁クラッチ141がオンになるとリタードローラ逆転ギア軸128が回転する。このように、本実施の形態においては、リタードローラ3を回転させるための駆動部161は、給送モータ122Aと、第1電磁クラッチ140と、第2電磁クラッチ141等により構成される。
【0058】
リタードローラ逆転ギア軸128にはリタードローラ軸107に固定されたリタードローラ駆動ギア127と噛合する逆転駆動入力ギア102が固定されている。これにより、リタードローラ逆転ギア軸128が回転すると、逆転駆動入力ギア102及びリタードローラ駆動ギア127を介してリタードローラ軸107が、
図6の(a)の矢印Eで示すシート搬送方向と逆方向に回転する。また、リタードローラ正転ギア軸129には、リタードローラ軸107に固定されたリタードローラ駆動ギア127と噛合する正転駆動入力ギア109が固定されている。これにより、リタードローラ正転ギア軸129が回転すると、正転駆動入力ギア109及びリタードローラ駆動ギア127を介してリタードローラ軸107が
図6の(c)の矢印Dで示すシート搬送方向に回転する。
【0059】
このように、本実施の形態では、電磁クラッチ140,141を用いてリタードローラ逆転ギア軸128及びリタードローラ正転ギア軸129を選択的に回転させている。また、逆転駆動入力ギア102、正転駆動入力ギア109、リタードローラ駆動ギア127を、それぞれの軸107,128,129に固定することにより、各ギア102,109,127をそれぞれの軸107,128,129と一体に回転させている。
【0060】
リタードローラ逆転ギア軸128は、支持板110の軸受134と支持板118の軸受135によって回転可能に支持されており、リタードローラ正転ギア軸129は、支持板110の軸受136と支持板118の軸受137とにより回転可能に支持されている。リタードローラ軸107は、リタードローラ3から離れた側の一端部が支持板111の軸受117で回転可能に支持され、リタードローラ側の端部は支持板118の軸受138によって回転可能に支持されている。
【0061】
なお、リタードローラ軸107は、
図6の(a)及び(c)に示すように、支持板118に形成されたU溝部118aに嵌め込まれており、このU溝部118aにより上下方向の移動が案内される。これにより、リタードローラ軸107は軸受117を支点として上下方向に揺動可能となる。また、軸受138は、
図6の(a)及び(c)に示すようにバネ150により矢印A方向(フィードローラ方向)に常時加圧される。
【0062】
このように構成することにより、
図6の(a)に示すようにリタードローラ軸107が矢印E方向に回転すると、リタードローラ軸107には逆転駆動入力ギア102により
図6の(b)に示すように矢印B方向に駆動による加圧力Bが与えられる。これにより、リタードローラ軸107は軸受117を支点として上方に揺動し、リタードローラ3が矢印A方向に加圧される。
【0063】
また、
図6の(c)に示すように、リタードローラ軸107が矢印D方向に回転すると、リタードローラ軸107には正転駆動入力ギア109により矢印B´方向に駆動による加圧力B´が与えられる。これにより、リタードローラ軸107が矢印E方向に回転するときと同様に、リタードローラ軸107は軸受117を支点として上方に揺動し、リタードローラ3が矢印A方向に加圧される。つまり、本実施の形態のように、逆転駆動入力ギア102と正転駆動入力ギア109をリタードローラ駆動ギア127に対して対称位置で噛合させることにより、リタードローラ軸107の回転方向にかかわらず矢印A方向に加圧力を与えることができる。
【0064】
このように、本実施の形態においては、給送モータ122Aの駆動をリタードローラ軸107に伝達すると共に、リタードローラ軸107を揺動させる駆動伝達部160Aは、逆転駆動入力ギア102、正転駆動入力ギア109を備えている。また、駆動伝達部160Aは、リタードローラ駆動ギア127を備えている。
【0065】
次に、このように構成された本実施の形態のシート給送装置230のシート給送動作について説明する。まず、ピックアップローラ1が不図示のソレノイドにより下降してシートカセット230aに収納されたシートの最上位シートに当接した後、給紙信号に基づいて給送モータ122Aが回転を開始すると、フィードローラ2とピックアップローラ1が回転する。
【0066】
同時に、第1電磁クラッチ140をオンすることにより、リタードローラ正転ギア軸129を回転させ、リタードローラ軸107を
図6の(c)の矢印Dで示すシート搬送方向に回転させる。これにより、ピックアップローラ1、フィードローラ2、リタードローラ3が同時にシート搬送方向に回転する。なお、このとき第2電磁クラッチ141はオフであり、リタードローラ逆転ギア軸128はフリー状態で待機している。また、このときのリタード圧は、正転駆動入力ギア109による加圧力B´とバネ150による付勢力が加わった圧力となる。
【0067】
次に、ピックアップローラ1により送り出されたシートの先端が分離ニップ部に進入すると、
図5に示す制御部200は、所定のタイミングで第1電磁クラッチ140をオフにすると共に第2電磁クラッチ141をオンにする。なお、2つの電磁クラッチ140,141の切換えは、分離ニップ部にシートが進入したことを検知する検知部材を配置して、切換える構成にしてもよい。
【0068】
これにより、リタードローラ逆転ギア軸128が回転し、リタードローラ軸107を
図6の(a)の矢印Eで示す逆送方向に回転させる。なお、このとき第1電磁クラッチ140はオフなので、リタードローラ正転ギア軸129はフリー状態で待機している。また、このときのリタード圧は、逆転駆動入力ギア102による加圧力Bとバネ150による付勢力が加わった圧力となる。
【0069】
このように、本実施の形態においては、リタードローラ軸107の回転方向にかかわらずリタードローラ軸107を、リタードローラ3がフィードローラ2に圧接する方向に揺動させるようにしている。これにより、リタードローラ軸107の回転方向にかかわらずリタードローラ3に対して矢印A方向に加圧力を与えることができるようになり、この結果、シートを1枚ずつ確実に分離搬送することができる。