特許第6045332号(P6045332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045332
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】整流板、バーナノズル及びボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23D 1/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   F23D1/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-283082(P2012-283082)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-126270(P2014-126270A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】天野 五輪麿
(72)【発明者】
【氏名】下之門 智史
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼▲崎▼ 慎也
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆一郎
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−081414(JP,U)
【文献】 実開昭61−181910(JP,U)
【文献】 特開平09−133322(JP,A)
【文献】 特開平11−281009(JP,A)
【文献】 米国特許第05215259(US,A)
【文献】 特開2010−270993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 1/00
F23K 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状に形成された曲面部と、粉体燃料流れ方向に平行な平面部及び前記粉体燃料流れ方向の下流側で折曲された傾斜平面部とにより形成された折曲平面部とからなる略扇型形状の断面を有し、前記曲面部及び前記折曲平面部の外表面にセラミックスタイルが張り付けられている整流板であって、
前記曲面部と前記折曲平面部の前記平面部とが接合される前記粉体燃料流れ方向の上流側端部に、前記曲面部側に張り付ける前記セラミックスタイルの端部を前記折曲平面部の外表面より突出させた突出部を設け、
前記折曲平面部の端部に張り付けた前記セラミックスタイルと前記平面部の外表面との接合面が、前記粉体燃料流れ方向上流側から見て前記突出部の後方に配置されていることを特徴とする整流板。
【請求項2】
前記セラミックスタイルが矩形状に形成されるとともに、前記粉体流れ方向と平行でかつ前記セラミックスタイルどうしの間に設けられた空隙箇所である接合線が不連続となる千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の整流板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の整流板を備え、前記粉体燃料が内部を流れるバーナノズルであって、
前記整流板が、前記バーナノズルの中心軸に対して前記粉体流れ方向と直交する上下方向に一対設けられ、
上方側に位置する前記整流板は、前記曲面部が前記バーナノズルの外周面側でかつ前記平面部がバーナノズルの中心軸側となるように配置され、
下方側に位置する前記整流板は、前記上方側の前記整流板とバーナノズルの中心軸において対称に配置されることを特徴とするバーナノズル。
【請求項4】
請求項3に記載のバーナノズルを備えていることを特徴とするボイラ。
【請求項5】
円弧状に形成された曲面部と、粉体燃料流れ方向に平行な平面部及び前記粉体燃料流れ方向の下流側で折曲された傾斜平面部とにより形成された折曲平面部とからなる略扇型形状の断面を有し、前記曲面部及び前記折曲平面部の外表面にセラミックスタイルが張り付けられている整流板のセラミックスタイル張付方法であって、
前記曲面部と前記折曲平面部とが接合される前記整流板の前記粉体燃料流れ方向上流側端部で、前記曲面部側の端部に張り付ける前記セラミックスタイルの端部を前記折曲平面部より突出させる突出部を設けて張り付ける曲面部張付工程と、
前記折曲平面部側の端部に、前記平面部の外表面との接合面が粉体燃料流れ方向上流側から見て前記突出部の前記粉体燃料流れ方向下流側後方に配置されるように前記セラミックスタイル)を張り付ける平面部張付工程と、
を有することを特徴とする整流板のセラミックスタイル張付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉炭等の粉体燃料を燃焼させるバーナノズル等に用いられる整流板、この整流板を備えたバーナノズル及びこのバーナノズルを備えたボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭等をミルで粉砕して得られる固体炭素質の粉体燃料を燃料とし、その代表例である微粉炭をバーナノズルで燃焼させる微粉炭焚きボイラが知られている。このような微粉炭焚きボイラにおいては、バーナノズルが微粉炭の粉体流に曝されるため、摩耗対策として整流板等の必要箇所にセラミックス等の摩耗に強い材料を用いることが行われている。(たとえば、下記の特許文献1〜5を参照)
【0003】
また、例えば図3に示すように、微粉炭焚きボイラのバーナノズル10には、略扇型の断面形状を有する扇型整流板(以下、「整流板」と呼ぶ)11を備えたものがある。
図示の整流板11は、バーナノズル10の中心軸に対して粉体燃料流れ方向と直交するようにして上下方向に一対配置されており、上方に配置された上方整流板11aと、下方に配置された下方整流板11bとなる。
【0004】
この整流板11は、バーナノズル10の外周側を向く面(図示の例では、上方整流板11aの上面及び下方整流板11bの下面)が粉体燃料流れ方向に対して円弧状の曲面とされ、バーナノズル10の中心軸側となる面は、粉体燃料の流れ方向に対して平行な面と、粉体燃料の流れ方向下流側で折曲されて傾斜した面とにより形成された折曲平面となっている。すなわち、整流板11の断面形状は、円弧状の曲面及び折曲平面よりなる略扇型形状となる。なお、上下一対の整流板11は、バーナノズル10の軸中心において上下対称である。
【0005】
図4は、略扇型断面形状を有する整流板11の粉体燃料流れ方向上流側の先端角部に対し、整流板11を形成する母材13の金属面上(整流板外表面)にセラミックスタイル12を張り付ける場合の従来構造を示している。
なお、以下の説明では、セラミックスタイル全体を示す場合にセラミックスタイル12とし、セラミックスタイル毎の区別が必要となる場合には、例えばセラミックスタイル12a,12b等のように添え字を付すこととする。
【0006】
この従来構造では、整流板11の下面に対して先にセラミックスタイル12aを張り付け、そのタイル先端をタイル厚さ(t)と略同じ程度だけ粉体燃料流れ方向の上流側へ突出させておく。この突出部分は、円弧状曲面部に張り付けるセラミックスタイル12bの下端部を載置して位置決めするために利用でき、位置決めが容易で製造作業を容易にすることから広く採用されている。
なお、図4においては、整流板11の先端角部に張り付けられたセラミックスタイル12a,12bを誇張し、他のセラミックスタイルについては図示が省略されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−41813号公報
【特許文献2】実開平2−36713号公報
【特許文献3】実開昭61−181910号公報
【特許文献4】特開昭62−147285号公報
【特許文献5】特開昭62−80308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来構造では、セラミックスタイル12aの粉体燃料流れ方向上流側先端部とセラミックスタイル12bの下端部との間に、図4に示すような隙間14が形成される。この隙間14は、粉体燃料流れ方向と略平行に形成されているだけでなく、セラミックスタイル12aと整流板11を形成する母材13の表面との接合面に連通する。
このため、上流から流入してくる粉体燃料は、セラミックスタイル12bと母材13の表面との間に入り込んで摩耗を生じさせる。微粉炭焚きボイラの運転中は、このような摩耗が長時間にわたって継続することになるので、時間の経過に伴って母材13が摩耗してセラミックスタイル12aとの間に隙間を形成し、この隙間にさらに粉体燃料が流入して隙間を広げることとなる。
【0009】
そこで、隙間14にセラミックスを主成分とした充填材(不図示)を注入し、隙間14を埋めることで粉体燃料の流入を防止している。
しかし、このセラミックスを含有した充填材は、セラミックスタイル12に比べ摩耗耐久性が低く、従来構造では隙間14に埋められた液体セラミックスに直接粉体燃料の流れが衝突する。このため、摩耗やひび割れを発生する可能性があり、そこから粉体燃料が流入する恐れがある。
【0010】
この結果、セラミックスタイル12aと母材13との間は、時間の経過とともに粉体燃料流入量が増加して摩耗を拡大することになるので、運転時間の増加により施工したセラミックスタイル12及び母材13を損傷し、セラミックスタイル12の脱落や粉体燃料漏洩等のトラブル発生が懸念される。
すなわち、セラミックスタイル12を張り付けたバーナノズル10は、母材先端部が隙間14を介して粉体燃料流れに接しているため、粉体燃料流れが母材13の端面を徐々に摩耗せしめることにより、ついにはセラミックスタイル12が脱落して上述した粉体燃料漏洩に至ることが懸念される。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、粉体燃料のような粉体燃料を燃焼させるバーナノズルの扇型整流板において、セラミックスタイルの張付構造を改善することにより、微粉炭のような粉体燃料の流れが整流板の平面部と整流板の曲面部とのセラミックスタイル継ぎ目から流入することを防止し、信頼性や耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る整流板は、円弧状に形成された曲面部と、粉体燃料流れ方向に平行な平面部及び前記粉体燃料流れ方向の下流側で折曲された傾斜平面部とにより形成された折曲平面部とからなる略扇型形状の断面を有し、前記曲面部及び前記折曲平面部の外表面にセラミックスタイルが張り付けられている整流板であって、前記曲面部と前記折曲平面部の前記平面部とが接合される前記粉体燃料流れ方向の上流側端部に、前記曲面部側に張り付ける前記セラミックスタイルの端部を前記折曲平面部の外表面より突出させた突出部を設け、前記折曲平面部の端部に張り付けた前記セラミックスタイルと前記平面部の外表面との接合面が、前記粉体燃料流れ方向上流側から見て前記突出部の後方に配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
このような本発明の整流板によれば、円弧状曲面と平面とが連結される整流板の粉体燃料流れ方向上流側端部で、円弧状曲面側に張り付けるセラミックスタイルの端部を平面より突出させた突出部を設け、平面側に張り付けるセラミックスタイルと外表面との接合面が、粉体燃料流れ方向上流側から見て突出部の後方に位置しているので、母材外表面を摩耗させる粉体燃料の流れが接合面に流入することを防止できる。
【0014】
上記の発明において、前記セラミックスタイルが矩形状に形成されるとともに、前記粉体流れ方向と平行でかつ前記セラミックスタイルどうしの間に設けられた空隙箇所である接合線が不連続となる千鳥状に配置されていることが好ましく、これにより、接合線に流入した粉体燃料はセラミックスタイルの側面(端面)に衝突することになり、この結果、粉体燃料の流れは、流速の低下や流れ方向の転換を余儀なくされる。
【0015】
本発明のバーナノズルは、請求項1または2に記載の整流板を備え、前記粉体燃料が内部を流れるバーナノズルであって、前記整流板が、前記バーナノズルの中心軸に対して前記粉体流れ方向と直交する上下方向に一対設けられ、上方側に位置する前記整流板は、前記曲面部が前記バーナノズルの外周面側でかつ前記平面部がバーナノズルの中心軸側となるように配置され、下方側に位置する前記整流板は、前記上方側の前記整流板とバーナノズルの中心軸において対称に配置されることを特徴とするものである。
【0016】
このような本発明のバーナノズルによれば、本発明の整流板を備えているので、母材外表面を摩耗させる粉体燃料の流れが、整流板の外表面とセラミックスタイルとの接合面に流入することを防止できる。
【0017】
本発明に係るボイラは、請求項3に記載のバーナノズルを備えていることを特徴とするものである。
【0018】
このような本発明のボイラによれば、請求項3に記載のバーナノズルを備えているので、整流板に張り付けたセラミックスタイルの接合面に粉体燃料の流れが流入することを防止できる。
【0019】
本発明に係るバーナノズルのセラミックスタイル張付方法は、円弧状に形成された曲面部と、粉体燃料流れ方向に平行な平面部及び前記粉体燃料流れ方向の下流側で折曲された傾斜平面部とにより形成された折曲平面部とからなる略扇型形状の断面を有し、前記曲面部及び前記折曲平面部の外表面にセラミックスタイルが張り付けられている整流板のセラミックスタイル張付方法であって、前記曲面部と前記折曲平面部とが接合される前記整流板の前記粉体燃料流れ方向上流側端部で、前記曲面部側の端部に張り付ける前記セラミックスタイルの端部を前記折曲平面部より突出させる突出部を設けて張り付ける曲面部張付工程と、前記折曲平面部側の端部に、前記平面部の外表面との接合面が粉体燃料流れ方向上流側から見て前記突出部の前記粉体燃料流れ方向下流側後方に配置されるように前記セラミックスタイルを張り付ける平面部張付工程と、を有することを特徴とするものである。
【0020】
このような本発明のバーナノズルのセラミックスタイル張付方法によれば、曲面部と折曲平面部とが接合される整流板の粉体燃料流れ方向上流側端部で、曲面部側の端部に張り付けるセラミックスタイルの端部を折曲平面部より突出させる突出部を設けて張り付ける曲面部張付工程と、折曲平面部側の端部に、平面部の外表面との接合面が粉体燃料流れ方向上流側から見て突出部の粉体燃料流れ方向下流側後方に配置されるようにセラミックスタイルを張り付ける平面部張付工程と、を有するので、母材外表面を摩耗させる粉体燃料の流れが接合面に流入することを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
上述した本発明によれば、粉体燃料等の粉体燃料を燃焼させるバーナノズルに適用される略扇型断面形状の整流板において、セラミックスタイルの張付構造が改善されたことにより、粉体燃料の流れ方向上流側端部で、粉体燃料の流れが母材とセラミックスタイルとの継ぎ目から流入することを防止できる。この結果、粉体燃料の流れに起因して整流板の母材が摩耗することを防止または抑制できるようになるので、この整流板を備えたバーナノズル及びこのバーナノズルを備えたボイラの信頼性向上及び耐久性向上という顕著な効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るバーナノズルの一実施形態として、略扇型形状の断面に形成された整流板に対するセラミックスタイル張付構造を示す断面図である。
図2】略扇型形状の断面に形成された整流板の平面図である。
図3】略扇型形状の断面に形成された整流板を備えたバーナノズルの一例を示す断面図である。
図4】略扇型形状の断面に形成された整流板について、従来のセラミックスタイル張付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るバーナノズルの一実施形態を図1図3に基づいて説明する。
図3に示すバーナノズル10は、例えば微粉炭等のような固体炭素質の粉体燃料を燃料として運転するボイラに設置される。
本実施形態のバーナノズル10は全体が略円筒形状とされ、粉体燃料の一例として微粉炭を燃料とする微粉炭焚きボイラに使用されるものである。図示のバーナノズル10は、内部に紙面右側から燃料の粉体燃料(微粉炭)が空気とともに流入し、紙面左側の出口から火炉内に投入される。
【0024】
バーナノズル10の内部には、粉体燃料を流す略円形断面の流出流路15が形成されている。そして、流出流路15の火炉側に開口するノズル出口付近には、整流板11が設けられている。
整流板11は、図1に示すように、折曲平面部17と曲面部18とにより、略扇型形状の断面形状に形成されている。
【0025】
一方の折曲平面部17は、平面部17aと傾斜平面部17bとが接合されて連続する部分である。平面部17aは、粉体燃料流れに対して略平行な平面であり、傾斜平面部17bは、粉体燃料流れ方向の下流側で平面部17aを折曲して傾斜させた平面である。他方の曲面部18は、粉体燃料流れ方向に対して円弧状に形成された曲面である。
また、整流板11は、バーナノズル10の内部において、粉体燃料流れ方向と直交するようにしてバーナノズル10の中心軸に対して上方に配置された上方整流板11aと、下方に配置された下方整流板11bとを一対設けている。
【0026】
図1及び3に示すように、上方整流板11aは、その上面側(バーナノズル10の外周側の面)が曲面部18となり、下面側(バーナノズル10の中心軸側の面)が折曲平面部17となる。この折曲平面部17には、粉体燃料流れ方向上流側に平面部17aが、粉体燃料流れ方向の下流側に傾斜平面部17bが、各々配置されている。
また、それぞれの接合関係を説明すると、折曲平面部17は、平面部17aの一端部が曲面部18の一端部に接続され、平面部17aの他端部が傾斜平面部17bの一端部に接続されている。さらに、傾斜平面部17bは、粉体燃料流れ方向において下流側へ斜め外向きに傾斜するよう折曲された他端部が、曲面部18の他端部と接合されている。
【0027】
また、下方整流板11bは、上方整流板11aとバーナノズル10の中心軸に対して対称の構造であり同様の効果を有する。
なお、上述の折曲平面部17(平面部17a、傾斜平面部17b)及び曲面部18における一端部とは、粉体燃料流れ方向上流側の端部であり、他端部とは、粉体燃料流れ方向の下流側の端部である。
【0028】
この整流板11は、例えば金属製板材の母材13を成形した略扇型形状の中空部材であり、その外表面にセラミックスタイル12を張り付けることで、燃料の粉体燃料により比較的薄い母材13が摩耗して損傷することを防止している。
本実施形態のセラミックスタイル12は、例えば図2に示すように、粉体燃料の流れに接する整流板11の全面を覆うように張り付けられている。また、円弧状の曲面部18に張り付けられたセラミックスタイル12により、粉体燃料の流れが整流板11の上下方向に分割される。
【0029】
さて、本実施形態では、上述した構造の整流板11に張り付けるセラミックスタイル12の張付構造、及びセラミックスタイル12の張付方法に特徴を有している。なお、以下では上方整流板11aについて説明するが、下方整流板11bにおいても同様の張付構造及び張付方法に特徴を有している。
図3に示す流出流路15の上部に設置された上方整流板11aの場合、円弧状として曲面部18の一端部と折曲平面部17の一端部とが接合される上方整流板11aの粉体燃料流れ方向上流側端部において、セラミックスタイル12cを張り付ける曲面部張付工程によって、上面側の円弧状の曲面部18側に張り付けるセラミックスタイル12cの下端部を下面の折曲平面部17より下方に突出させて突出部Pを設ける。
【0030】
また、セラミックスタイル12dを張り付ける平面部張付工程によって、セラミックスタイル12dを折曲平面部17の粉体燃料流れ方向上流側端部に、上述した突出部Pより粉体燃料流れ方向下流側に配置されるように張り付けを行う。
また、セラミックスタイル12を施工後に、セラミックスを主成分とした充填材をセラミックスタイル12cと12dの間の隙間19に注入し、隙間19を埋める充填工程を備えることが好ましい。このような充填工程により、隙間19から粉体燃料が流入することを防ぐことができ、摩耗をより生じにくくすることができる。
【0031】
上述した突出部Pは、従来のセラミックスタイル12aのように略厚さ分確保する必要はなく、折曲平面部17の平面部17aに張り付けるセラミックスタイル12dと母材13の外表面との接合面16が見えないように覆われればよいが、セラミックスタイル12cの粉体燃料流れ方向上流側端部の突出部Pの突出長さL3については、5mm以上8mm以下の範囲で設けることがより好ましい。
【0032】
突出部Pの突出長さを5mm以上8mm以下の範囲とした理由は、5mm以下にするとセラミックスタイル12dを覆うことができず、粉体燃料流れがセラミックスタイル12dに衝突することで摩耗が生じ、脱落してしまう恐れがあるためである。
また、突出部Pの突出長さが8mmを越えると、突出部Pがセラミックスタイル12dの厚さより長くなり、セラミックスタイル12cに衝突後の粉体燃料流れが平面部17側へ向かう流れに変化するため、平面部17a側に張り付けたセラミックスタイル12に粉体燃料が衝突し、摩耗を進行させる可能性がある。
なお、図1に示したセラミックスタイル12は、張付構造の特徴が明確となるように、紛体燃料流れ方向上流側端部のセラミックスタイル12c,12dを拡大表示しており、他のセラミックスタイル12については図示が省略されている。
【0033】
換言すれば、折曲平面部17の平面部17aに張り付けるセラミックスタイル12dと母材13の外表面との接合面16は、粉体燃料流れ方向と略平行に形成されるが、図1に示すように、粉体燃料流れ方向上流側から見て、セラミックスタイル12cにより形成された突出部Pに突出長さL3を設けることにより、接合面16が突出部Pの粉体燃料流れ方向下流側に位置して隠されていればよい。
【0034】
このように、円弧状の曲面部18と折曲平面部17とが接合される整流板11の粉体燃料流れ方向上流側端部において、円弧状の曲面部18側に張り付けるセラミックスタイル12cの端部を平面より下方に突出させた突出部Pを設け、平面部17aに張り付けるセラミックスタイル12dと母材13の外表面との接合面16が粉体燃料流れ方向上流側から見て突出部Pの粉体燃料流れ方向下流側に位置するようにすれば、接合面16へ向けて略直進する粉体燃料の流れは突出部Pに衝突することとなる。
この結果、母材13の外表面を摩耗させる粉体燃料の流れは接合面16に到達できず、硬いセラミックスタイル12cに衝突したことによって方向転換し、火炉内へ向かう粉体燃料の主流に合流することとなる。
【0035】
このため、上流から流入してくる粉体燃料は、セラミックスタイル12dと母材13の表面との接合面16に入り込み、母材13の表面に微少な摩耗を生じさせることはない。従って、微粉炭焚きボイラの運転中において、このような簡易な構造への変更で、微少摩耗が長時間にわたって継続することがなく、時間の経過に伴って母材13の摩耗が進行することもないため、運転時間の増加により施工したセラミックスタイル12及び母材13が損傷し、セラミックスタイル12の脱落や粉体燃料漏洩等のトラブルが発生することを防止できる。
【0036】
ところで、上述したセラミックスタイル12は、例えば図2に示すように、整流板11に張り付けられたセラミックスタイル12同士の間に線状の空隙個所が設けられ、この線状の空隙個所である接合線L2が粉体燃料流れ方向において不連続となる千鳥状に配置されている。すなわち、セラミックスタイル12は、同一矩形状のものを並べて外表面に張り付けるが、この場合のタイル配置については、粉体燃料流れ方向と直交する方向の接合線L1が整流板11の両端まで連続する直線となるように配列し、粉体燃料流れ方向と平行な方向の接合線L2が1列毎に不連続となるように、セラミックスタイル12の接合線位置を約0.5枚分ずらした配列にしている。なお、本実施形態ではセラミックスタイル12の形状として矩形状のものを用いているがこれに限ることはなく、例えば菱形や三角形状等を用いることができる。
【0037】
このようなセラミックスタイル12の千鳥配置を採用すれば、接合線L2に流入した粉体燃料が粉体燃料流れ方向下流側に位置するセラミックスタイル12の側面(端面)に衝突するので、このような粉体燃料の流れは、流速の低下や流れ方向の転換を余儀なくされる。
従って、この千鳥配置によっても、セラミックスタイル12及び母材13が損傷し、セラミックスタイル12の脱落や粉体燃料漏洩等のトラブルが発生することを防止できる。
【0038】
このように本実施形態のバーナノズル10によれば、粉体燃料等を燃焼させるバーナノズル10に設置される扇型の整流板11において、セラミックスタイル12の張付構造、方法が改善されたものとなる。この結果、粉体燃料の流れは、粉体燃料の流れ方向上流側端部において、従来問題となっていた母材13の外表面とセラミックスタイル12との継ぎ目から流入することを防止できるようになり、粉体燃料の流れに起因して整流板11の母材13が摩耗することを防止または抑制できるので、整流板11を備えたバーナノズル10及びこのバーナノズル10を備えたボイラの信頼性や耐久性が向上する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、例えば粉体燃料が微粉炭でなくとも粉体とされた固体炭素質の燃料であればよく、例えば紛体とされたバイオマス燃料なども利用することができ、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 バーナノズル
11 整流板(扇型整流板)
11a 上方整流板
11b 下方整流板
12 セラミックスタイル
13 母材
14 隙間
15 流出流路
16 接合面
17 折曲平面部
17a 平面部
17b 傾斜平面部
18 曲面部
L1,L2 接合線
L3 突出長さ
P 突出部
図1
図2
図3
図4