特許第6045341号(P6045341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045341
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】車両用ミラー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/06 20060101AFI20161206BHJP
   B60R 1/072 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B60R1/06 G
   B60R1/072
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-287959(P2012-287959)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129043(P2014-129043A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂樹
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−166947(JP,A)
【文献】 特開昭60−053442(JP,A)
【文献】 実開昭60−171762(JP,U)
【文献】 実開平07−040285(JP,U)
【文献】 特開2000−264130(JP,A)
【文献】 特開2002−144959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06
B60R 1/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のミラーに対し付加され、展開及び格納可能にされた付加体と、
前記付加体を展開位置及び格納位置の一方から他方へ向かう一側に移動させると共に、前記付加体の他側への移動を許容する移動機構と、
前記展開位置及び格納位置の一方に停止させた前記付加体を前記移動機構が前記一側に前記展開位置及び格納位置の他方を越えて移動させた後に前記付加体が前記他側に移動されることで前記付加体を前記展開位置及び格納位置の他方に停止させると共に、前記展開位置及び格納位置の他方に停止させた前記付加体を前記移動機構が前記一側に移動させた後に前記付加体が前記他側に前記展開位置及び格納位置の他方を越えて移動されることで前記付加体を前記展開位置及び格納位置の一方に停止させる停止機構と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記付加体側に連絡されたウォームホイールと、
前記ウォームホイールの前記付加体連絡側とは反対側に係合され、回転されることで前記ウォームホイールが回転されると共に、前記ウォームホイールが回転されることで回転可能にされたウォームと、
を有する請求項1記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記ウォームを複数条ウォームにした請求項2記載の車両用ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加体が展開及び格納可能にされた車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のドアミラーでは、モータがウォーム及びホイールウォームを介して補助ミラーに連絡されており、モータが駆動されて、ウォームが回転されることで、ホイールウォームが回転されて、補助ミラーが排出及び格納される。
【0003】
しかしながら、このドアミラーでは、モータの駆動が停止された際に、補助ミラーを排出位置及び格納位置に停止させるために、ホイールウォームの回転力によってはウォームが回転不能にされている。このため、ウォームを回転させてホイールウォームを回転させる必要があり、モータを正方向及び逆方向に駆動することで、補助ミラーを排出及び格納している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−166947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、移動機構が付加体を一側のみに移動させる場合でも付加体を展開及び格納できる車両用ミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用ミラー装置は、車両のミラーに対し付加され、展開及び格納可能にされた付加体と、前記付加体を展開位置及び格納位置の一方から他方へ向かう一側に移動させると共に、前記付加体の他側への移動を許容する移動機構と、前記展開位置及び格納位置の一方に停止させた前記付加体を前記移動機構が前記一側に前記展開位置及び格納位置の他方を越えて移動させた後に前記付加体が前記他側に移動されることで前記付加体を前記展開位置及び格納位置の他方に停止させると共に、前記展開位置及び格納位置の他方に停止させた前記付加体を前記移動機構が前記一側に移動させた後に前記付加体が前記他側に前記展開位置及び格納位置の他方を越えて移動されることで前記付加体を前記展開位置及び格納位置の一方に停止させる停止機構と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の車両用ミラー装置は、請求項1に記載の車両用ミラー装置において、前記移動機構は、前記付加体側に連絡されたウォームホイールと、前記ウォームホイールの前記付加体連絡側とは反対側に係合され、回転されることで前記ウォームホイールが回転されると共に、前記ウォームホイールが回転されることで回転可能にされたウォームと、を有している。
【0008】
請求項3に記載の車両用ミラー装置は、請求項2に記載の車両用ミラー装置において、前記ウォームを複数条ウォームにしている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の車両用ミラー装置では、車両のミラーに対し付加体が付加されており、移動機構が付加体を展開位置及び格納位置の一方から他方へ向かう一側に移動させる
【0010】
ここで、停止機構が展開位置及び格納位置の一方に停止させた付加体を移動機構が一側に展開位置及び格納位置の他方を越えて移動させた後に、付加体が他側(展開位置及び格納位置の他方から一方へ向かう側)に移動されることで、停止機構が付加体を展開位置及び格納位置の他方に停止させる。さらに、停止機構が展開位置及び格納位置の他方に停止させた付加体を移動機構が一側に移動させた後に、付加体が他側に展開位置及び格納位置の他方を越えて移動されることで、停止機構が付加体を展開位置及び格納位置の一方に停止させる。
【0011】
このように、停止機構が付加体を展開位置及び格納位置に停止させることができるため、移動機構が付加体を一側のみに移動させる場合でも、付加体を展開及び格納できる。
【0012】
請求項2に記載の車両用ミラー装置では、移動機構のウォームホイールが付加体側に連絡されると共に、移動機構のウォームがウォームホイールの付加体連絡側とは反対側に係合されており、ウォームが回転されることで、ウォームホイールが回転される。
【0013】
ここで、ウォームホイールが回転されることで、ウォームが回転可能にされている。このため、移動機構がウォームホイールとウォームとを有する場合でも、移動機構が付加体を他側に移動させなくても、付加体を他側に移動させることができる。
【0014】
請求項3に記載の車両用ミラー装置では、ウォームが複数条ウォームにされている。このため、ウォームの回転によるウォームホイールの回転速度を大きくでき、移動機構による付加体の移動速度を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両後側かつ車幅方向内側から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動体、移動機構及びハートカム機構を示す車両後側から見た正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動機構を示す車両後側から見た正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動体、移動機構及びハートカム機構を示す上方から見た平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動体及び移動機構を示す車幅方向内方から見た断面図(図4の5−5線断面図)である。
図6】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動体、移動機構及びハートカム機構を示す車両前側から見た背面図である。
図7】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動体及びハートカム機構を示す車幅方向内方から見た断面図(図4の7−7線断面図)である。
図8】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置におけるハートカム機構のカム板を示す車両前側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本発明の車両用ミラー装置が適用された実施形態に係る車両用ドアミラー装置10が車両後側かつ車幅方向内側(車両右側)から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両左方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示す。
【0017】
本実施形態に係る車両用ドアミラー装置10は、車両の車体側のドア(フロントサイドドア、図示省略)の上下方向中間部の車両前側端における外部に設置されている。
【0018】
図1に示す如く、車両用ドアミラー装置10は、設置体としてのステー12を備えており、ステー12がドアに設置されることで、車両用ドアミラー装置10がドアに設置されている。
【0019】
ステー12の上側には、格納機構(図示省略)が支持されている。格納機構には、軸部材としてのスタンドが設けられており、スタンドがステー12に固定されることで、格納機構がステー12に支持されている。スタンドには、回動体が支持されており、回動体は、スタンドに対し車幅方向外側へ展開(起立)されている。格納機構が正作動された際には、回動体がスタンドに対し車両後側かつ車幅方向内側へ回動されて格納される(折畳まれる)。さらに、格納機構が逆作動された際には、回動体がスタンドに対し車両前側かつ車幅方向外側へ回動されて展開(復帰)される。
【0020】
回動体には、被覆部材(格納部材)としての樹脂製で略直方体形容器状のバイザ14が支持されており、バイザ14は、内部の車幅方向内側部分に回動体を収容して、回動体に対し車幅方向外側へ延出されている。バイザ14の車両後側面には、開口16が形成されており、開口16は、バイザ14内を車両後側に開口させている。
【0021】
回動体には、補強部材(剛性部材)としての例えば金属製のリンフォース(図示省略)が支持されており、リンフォースは、回動体に対し車幅方向外側へ延出されると共に、バイザ14内に収容されている。リンフォースは、バイザ14に比し剛性が高くされており、リンフォースは、バイザ14と一体にされて、バイザ14を補強している。
【0022】
バイザ14及びリンフォースの少なくとも一方には、略矩形板状のミラー18が支持されており、ミラー18は、バイザ14の開口16部分に配置(収容)されて、全周及び車両前側がバイザ14によって被覆されている。ミラー18の表面(鏡面)は、開口16によって車両後側に露出されており、これにより、車両の乗員(特に運転手)がミラー18によって車両の後側を視認可能にされている。
【0023】
上述の如く、格納機構が正作動された際には、回動体と一体にミラー18(バイザ14及びリンフォースを含む)がスタンドに対し車両後側かつ車幅方向内側へ回動されて格納される(折畳まれる)。さらに、格納機構が逆作動された際には、回動体と一体にミラー18(バイザ14及びリンフォースを含む)がスタンドに対し車両前側かつ車幅方向外側へ回動されて展開(復帰、起立)される。
【0024】
バイザ14内の下側部分には、図2図7に示す略矩形筒状のブラケット20が固定されており、ブラケット20内は、バイザ14の下側に開放されている。
【0025】
ブラケット20内には、付加体としての移動体22が配置されており、移動体22は、バイザ14内の下側部分に格納(収容)されている(図1の2点鎖線参照)。
【0026】
移動体22には、支持体としての略三角柱形箱状のハウジング24が設けられており、ハウジング24は、車幅方向内側端において、支持軸26によってブラケット20に上下方向へ所定範囲で回動(移動)可能に支持されている。支持軸26は、移動手段(付勢手段)としての捩りコイルスプリング32内に挿通されており、捩りコイルスプリング32は、一端がブラケット20に係止されると共に、他端がハウジング24に係止されて、ハウジング24を下側に回動させる方向に付勢している。
【0027】
ハウジング24の下面は、バイザ14の下面から下側に露出されており、ハウジング24の下面は、バイザ14の下面と面一に配置されている。ハウジング24の車幅方向外側部分には、略矩形柱状の凹部28が形成されており、凹部28は、車両後側に開放されている。
【0028】
ハウジング24の凹部28内には、付加部としての略矩形板状の補助ミラー30が支持されており、補助ミラー30の表面(鏡面)は、車両後側に向けられている。
【0029】
ブラケット20の車幅方向外側かつ車両前側の部分には、移動機構34が設けられている。
【0030】
移動機構34には、駆動手段としてのモータ36が設けられており、モータ36には、制御装置38(図3参照)が電気的に接続されている。制御装置38には、給電部が設けられており、制御装置38の制御により、移動機構34が作動されて、給電部からモータ36に電流が供給されることで、モータ36が一方向に回転駆動される。制御装置38には、検知部(検知回路)が設けられており、検知部は、給電部からモータ36に供給される電流を検知する。
【0031】
モータ36の出力軸36Aには、ギア機構(減速機構)を構成するウォーム40が同軸上に固定されており、ウォーム40は、出力軸36Aと一体に回転可能にされている。ウォーム40には、ギア機構を構成するウォームホイールとしてのヘリカルギア42が噛合(係合)されており、ヘリカルギア42は、回転軸44が同軸上に固定されて、回転軸44と一体に回転可能にされている。
【0032】
ウォーム40は、複数条ウォーム(例えば3条ウォーム)にされており、ウォーム40とヘリカルギア42との間の摩擦係数μが0.12以上である場合には、ウォーム40の進み角γが7度以上(例えば21度)にされている。これにより、ウォーム40が回転されることでヘリカルギア42が回転されるのみならず、ヘリカルギア42が回転されることでウォーム40が回転可能にされている。また、ヘリカルギア42が回転されることでウォーム40が回転される際には、ウォーム40がヘリカルギア42に回転抵抗力を作用させる。
【0033】
回転軸44には、ヘリカルギア42の車両後側において、ギア機構を構成するピニオン46が同軸上に固定されており、ピニオン46は、回転軸44と一体に回転可能にされている。ピニオン46には、ギア機構を構成するスパ48が噛合(係合)されており、スパ48は、ハウジング24に固定されると共に、支持軸26の周方向(ハウジング24の回動方向)に沿って延伸されている。
【0034】
このため、上述の如くモータ36が一方向に回転駆動された際には、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48が一方向に回転されて、移動体22が上側に回動される。さらに、モータ36が回転駆動されない際でも、捩りコイルスプリング32の付勢力によって、移動体22に下側への回動力が作用されて、スパ48、ピニオン46及び回転軸44を介してヘリカルギア42に他方向への回転力が作用されることで、ウォーム40及び出力軸36Aが他方向に回転可能にされている。
【0035】
図3に示す如く、上記制御装置38は、車両の自動変速機50(変速機)及びセンサ52に電気的に接続されており、センサ52は、車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側(例えば車両の後輪近傍)における障害物(特に乗員がミラー18によっては視認できないものであって、例えばパイロン等のミラー18の下端より高さが低いもの)を検知可能にされている。
【0036】
図6図8に示す如く、ブラケット20及び移動体22には、車幅方向中央かつ車両前側の部分において、停止機構としてのハートカム機構54が設けられている。
【0037】
ハートカム機構54には、係止部材としての略矩形板状の係止板56が設けられており、係止板56は、上端部において、ブラケット20に回動可能に支持されている。係止板56の上端部とブラケット20との間には、抵抗手段としてのウェーブワッシャ(図示省略)が挟持されており、ウェーブワッシャは、係止板56に回動抵抗力を作用させている。係止板56の下端部には、円柱状の係止軸56Aが一体に設けられており、係止軸56Aは、係止板56から車両後側(移動体22側)に延出されると共に、係止板56がウェーブワッシャの回動抵抗力に抗して回動されることで移動(回動)可能にされている。
【0038】
ハートカム機構54には、カム部材としての略矩形板状のカム板58が設けられており、カム板58は、移動体22のハウジング24に一体に設けられている。カム板58の車両前側面(係止板56側面)には、カム部としての正面視略環状のカム路60が形成されており、カム路60は、断面矩形状にされると共に、車両前側に開放されている。
【0039】
カム路60の下端近傍は、第1係止路62にされており、第1係止路62は、ほぼ移動体22の回動径方向に延伸されている。第1係止路62の上側面には、第1係止部としての断面三角形状の第1凹部62Aが形成されており、第1凹部62A内は、下側に開放されている。第1係止路62の下側面は、第1案内部としての第1傾斜面62Bにされており、第1傾斜面62Bは、車幅方向内側へ向かうに従い下側へ向かう方向に傾斜されている。また、第1凹部62Aの上端(底部)は、第1傾斜面62Bに移動体22の回動周方向において対向されている。
【0040】
カム路60の車幅方向内側部分は、第1通過路64にされており、第1通過路64は、ほぼ移動体22の回動周方向に延伸されている。第1通過路64の下端64A近傍は、第1係止路62に連通されており、第1通過路64の下端64Aは、第1係止路62に対し下側に延伸されている。
【0041】
カム路60の上端部は、第2係止路66にされており、第2係止路66は、ほぼ移動体22の回動周方向に延伸されると共に、下側部分に第1通過路64の上端が連通されている。第2係止路66の上側面には、第2係止部としての断面半円状の第2凹部66Aが形成されており、第2凹部66A内は、下側に開放されている。第2係止路66の下側面は、第2案内部としての第2傾斜面66Bにされており、第2傾斜面66Bは、車幅方向外側へ向かうに従い下側へ向かう方向に傾斜されている。また、第2凹部66Aは、第2傾斜面66Bに移動体22の回動周方向において対向されている。
【0042】
カム路60の車幅方向外側部分は、第2通過路68にされており、第2通過路68は、ほぼ移動体22の回動周方向に延伸されると共に、上端に第2係止路66の下側部分が連通されている。第2通過路68の下端68A近傍は、第1係止路62に連通されており、第2通過路68の下端68Aは、第1係止路62に対し下側に延伸されている。また、第2通過路68の下端68Aは、第1凹部62Aの車幅方向外側端部に移動体22の回動周方向において対向されている。
【0043】
係止板56の係止軸56Aは、カム路60の第1係止路62に挿入されており、捩りコイルスプリング32の付勢力による移動体22の下側への回動力によって、係止軸56Aが第1係止路62の第1凹部62A上端に係止されている。これにより、移動体22の下側への回動が係止されることで、移動体22が格納位置に停止されて、バイザ14内に格納されている。
【0044】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0045】
以上の構成の車両用ドアミラー装置10では、ハートカム機構54において、係止板56の係止軸56Aがカム板58におけるカム路60の第1係止路62の第1凹部62A上端に係止されることで、移動体22(補助ミラー30を含む)が、格納位置に停止されて、バイザ14内に格納されている。
【0046】
自動変速機50がリバースレンジ(後退レンジ)にされた際かつセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知した際(第1の機会)には、移動機構34において、制御装置38の制御によってモータ36に電流が供給されて、モータ36が一方向に回転駆動されることで、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48が一方向に回転されて、移動体22が捩りコイルスプリング32の付勢力に抗して上側(一側)に回動される。
【0047】
このため、係止軸56Aが、第1係止路62の第1傾斜面62Bに当接されると共に、第1傾斜面62Bによって車幅方向内側に移動(案内)されて、カム路60の第1通過路64の下端64Aに係止されることで、移動体22の上側への回動が係止される。これにより、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48の一方向への回転が停止されて、モータ36に供給される電流が急激に増加され、制御装置38の検知部が当該電流の急激な増加を検知することで、制御装置38の制御により、モータ36への電流の供給が停止されて、モータ36の一方向への回転駆動が停止される。
【0048】
その後、捩りコイルスプリング32の付勢力によって、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48が他方向に回転されつつ、移動体22が下側(他側)に格納位置を越えて回動されることで、係止軸56Aが、第1通過路64を上側に移動(通過)されて、カム路60の第2係止路66の第2凹部66Aに係止される。これにより、移動体22が、展開位置に停止されて、バイザ14から下側(車両前斜め下方又は車両後斜め下方でもよい)に展開される(図1の実線参照)。
【0049】
したがって、補助ミラー30がバイザ14の下側に露出されることで、乗員が補助ミラー30によって車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側(特に障害物及びその周囲)を視認できる。これにより、ミラー18による乗員の視認可能範囲が変化することを防止しつつ、補助ミラー30によって乗員の視認可能範囲を拡大できて、車両の後退の際に乗員が視線を変更しなくても補助ミラー30によって車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側を注意できる。
【0050】
自動変速機50がリバースレンジ以外にされた際及びセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知しなくなった際(第2の機会)には、移動機構34において、制御装置38の制御によってモータ36に電流が供給されて、モータ36が一方向に回転駆動されることで、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48が一方向に回転されて、移動体22が捩りコイルスプリング32の付勢力に抗して上側に回動される。
【0051】
このため、係止軸56Aが、第2係止路66の第2傾斜面66Bに当接されると共に、第2傾斜面66Bによって車幅方向外側に移動(案内)されて、第2通過路68を下側に移動(通過)されることで、移動体22が上側に格納位置を越えて回動された後に、係止軸56Aが第2通過路68の下端68Aに係止されて、移動体22の上側への回動が係止される。これにより、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48の一方向への回転が停止されて、モータ36に供給される電流が急激に増加され、制御装置38の検知部が当該電流の急激な増加を検知することで、制御装置38の制御により、モータ36への電流の供給が停止されて、モータ36の一方向への回転駆動が停止される。
【0052】
その後、捩りコイルスプリング32の付勢力によって、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48が他方向に回転されつつ、移動体22が下側に回動されることで、係止軸56Aが、第1係止路62の第1凹部62Aに当接されると共に、第1凹部62Aによって車幅方向内側に移動(案内)されて、第1凹部62Aの上端に係止される。これにより、移動体22が、格納位置に停止されて、バイザ14内に格納される(図1の2点鎖線参照)。
【0053】
ところで、本実施形態では、モータ36を一方向に回転駆動させた際の方が、モータ36を他方向に回転駆動させた際に比し、モータ36、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48の作動音が移動体22の作動を演出する音又は乗員の邪魔にならない音として好ましくされた構造にされている。
【0054】
ここで、上述の如く、ハートカム機構54が移動体22を展開位置及び格納位置に停止させることができるため、移動機構34がモータ36を一方向のみに回転駆動させて移動体22を上側のみに回動させる場合でも、移動体22を展開及び格納できる。
【0055】
このため、移動機構34の作動音を、常に、モータ36の一方向への回転駆動によるモータ36、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48の作動音にできて、移動体22の作動を演出する音又は乗員の邪魔にならない音にできる。これにより、モータ36の他方向への回転駆動によるモータ36、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48の作動音を乗員が不快に感じることを防止でき、移動機構34の作動音を乗員が不快に感じることを抑制できる。
【0056】
しかも、モータ36の回転駆動を停止させるためにモータ36に供給される電流を検知する制御装置38の検知部を、モータ36の一方向への回転駆動を停止させるためのもののみにできて、モータ36の他方向への回転駆動を停止させるためのものは不要にできる。これにより、制御装置38の構造を簡単にできると共に、モータ36の回転駆動の停止制御を簡単にできる。
【0057】
また、移動機構34では、捩りコイルスプリング32の付勢力によって移動体22が下側に回動される際に、ヘリカルギア42が回転されることで、ウォーム40が回転される。このため、本実施形態の如く移動機構34のギア機構がウォーム40とヘリカルギア42とを有する場合でも、移動機構34が移動体22を下側に移動させなくても、捩りコイルスプリング32の付勢力によって移動体22を下側に移動させることができる。
【0058】
さらに、ウォーム40が複数条ウォームにされている。このため、ウォーム40の条数が大きい程、ウォーム40の回転によるウォームホイールの回転速度を大きくでき、移動機構34がモータ36を一方向に回転駆動させることによる移動体22の上側への回動速度を大きくできる。これにより、移動体22がバイザ14から展開されるための時間及び移動体22がバイザ14内に格納されるための時間が不要に長くなることを抑制できる。特に、移動体22がバイザ14から展開されるための時間が不要に長くなることを抑制できるため、乗員が早期に補助ミラー30によって車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側を視認できる。
【0059】
しかも、捩りコイルスプリング32の付勢力によって移動体22が下側に回動される際(ヘリカルギア42が回転されることでウォーム40が回転される際)には、ウォーム40の条数が大きい程、また、ウォーム40の進み角γが小さい程、ウォーム40がヘリカルギア42に大きな回転抵抗力を作用させることで、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、回転軸44、ピニオン46及びスパ48の他方向への回転速度を低下できて、移動体22の下側への回動速度を低下できる。これにより、捩りコイルスプリング32の付勢力による移動体22の下側への回動動作を乗員が上品に感じることができて、車両用ドアミラー装置10に高級感を付与できる。
【0060】
さらに、移動機構34のギア機構がウォーム40及びヘリカルギア42を有しない(例えば平歯車のみで構成される)場合と異なり、ギア機構を小型化しても、ウォーム40の条数が小さい程、また、ウォーム40の進み角γが小さい程、ギア機構の減速比をウォーム40及びヘリカルギア42によって大きくできる。これにより、移動機構34を小型化できると共に、移動機構34が移動体22を回動させるための駆動力を大きくできる。
【0061】
また、自動変速機50がリバースレンジにされた際かつセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知した際のみに、移動体22が展開される。このため、通常時には、移動体22をバイザ14内に格納でき、移動体22によって車両用ドアミラー装置10の見栄えが悪くなることを抑制できる。
【0062】
さらに、仮に、移動機構34が故障した際でも、移動機構34に代えて手動により移動体22を上側に回動させることで、移動体22をバイザ14内に格納できると共に、移動体22をバイザ14から展開できる。このため、移動体22がバイザ14内に格納された状態及び移動体22がバイザ14から展開された状態が維持されることを防止できる。
【0063】
なお、本実施形態では、回動不能なカム板58に対して係止板56を回動可能に設けた。しかしながら、回動不能な係止板56に対してカム板58を回動可能に設けてもよい。
【0064】
さらに、本実施形態では、係止板56をブラケット20側に設けると共に、カム板58を移動体22側に設けた。しかしながら、係止板56をブラケット20側に設けると共に、カム板58を移動体22側に設けてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、移動機構34が移動体22を上側に回動させると共に、捩りコイルスプリング32の付勢力によって移動体22を下側に回動させる。しかしながら、移動機構34が移動体22を下側に回動させると共に、捩りコイルスプリング32の付勢力によって移動体22を上側に回動させてもよい。
【0066】
さらに、本実施形態では、捩りコイルスプリング32の付勢力によって移動体22を他側(下側)に回動させる。しかしながら、他の移動手段(例えば移動体22の自重)によって移動体22を他側に回動させてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、自動変速機50がリバースレンジにされた際かつセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知した際のみに、移動体22を展開させた。しかしながら、自動変速機50がリバースレンジにされた際のみ又はセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知した際のみに、移動体22を展開させてもよい。
【0068】
さらに、本実施形態において、車内(車室)の操作部を乗員が操作した際に、制御装置38の制御により移動機構34を作動させて、移動体22を展開及び格納させてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、制御装置38の検知部が検知するモータ36に供給される電流に基づき、制御装置38の制御によりモータ36への電流の供給を停止させて、モータ36の回転駆動を停止させる。しかしながら、制御装置38の検知部を例えばリミットスイッチにして、検知部が検知する移動体22の回動位置(スパ48又は支持軸26の回転位置でもよい)に基づき、制御装置38の制御によりモータ36への電流の供給を停止させて、モータ36の回転駆動を停止させてもよい。
【0070】
さらに、本実施形態では、移動機構34がモータ36によって移動体22を回動させる。しかしながら、移動機構34がソレノイド(駆動手段)によって移動体22を回動させてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、移動体22を回動可能にした。しかしながら、移動体22をスライド可能にしてもよい。
【0072】
さらに、本実施形態では、移動体22をバイザ14の下側に展開させる。しかしながら、移動体22をバイザ14の他の方向(例えば上側、車両前側、車両後側、車幅方向外側又は車幅方向内側)に展開させてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、移動体22に付加部として補助ミラー30を設けた。しかしながら、これに代えて、又は、これと共に、移動体22に付加部としてディスプレイ(表示機能部)、カメラ(撮像機能部)、センサ(検出機能部)及びランプ(照明機能部)の少なくとも1つを設けてもよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、移動体22を付加体として、移動体22を展開及び格納可能にした。しかしながら、格納機構の回動体を付加体として、回動体を展開及び格納可能にしてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、本発明の車両用ミラー装置を車両用ドアミラー装置10に適用した。しかしながら、本発明の車両用ミラー装置を車両外部の他の車両用アウタミラー装置(例えば車両用フェンダミラー装置)又は車両内部の車両用インナミラー装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
18 ミラー
22 移動体(付加体)
34 移動機構
40 ウォーム
42 ヘリカルギア(ウォームホイール)
54 ハートカム機構(停止機構)
図1
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図8