特許第6045350号(P6045350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6045350-ゴム混合物 図000034
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045350
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/08 20060101AFI20161206BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20161206BHJP
   C08K 5/5435 20060101ALI20161206BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20161206BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C08L33/08
   C08K3/04
   C08K5/5435
   B60C1/00 A
   H01B7/18 H
【請求項の数】9
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-570(P2013-570)
(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公開番号】特開2013-142157(P2013-142157A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2015年10月9日
(31)【優先権主張番号】10 2012 200 166.2
(32)【優先日】2012年1月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンケ ブルーメ
(72)【発明者】
【氏名】オイゲニー カラゼヴィチュ
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−239713(JP,A)
【文献】 特開2004−131545(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/162004(WO,A1)
【文献】 特開平06−322036(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/026596(WO,A1)
【文献】 特開昭58−210905(JP,A)
【文献】 特開2003−252932(JP,A)
【文献】 特開2007−099844(JP,A)
【文献】 特開2006−249238(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0167159(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0090424(US,A1)
【文献】 特開2010−155883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00
C08F 220/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム混合物であって、以下:
(A)少なくとも1のポリアクリレートゴム、
(B)少なくとも1のカーボンブラック、及び、
(C)少なくとも1のエポキシシラン
を含有し、
その際、
該ポリアクリレートゴムが、ACMポリアクリレートゴムであり、
該エポキシシランが、一般式I
【化1】
[式中、
Xは、−OCH−CHであり、
Iは、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、飽和の、脂肪族の、適宜、置換基を有する二価のC1〜C30炭化水素基であるか、又は、二価のアルキルエーテル基である]
のエポキシシランであり、かつゴム100質量部に対して、1〜20質量部で存在しており、かつ
該カーボンブラックが、ゴム100質量部に対して、5〜150質量部で存在していることを特徴とするゴム混合物。
【請求項2】
エポキシシランが、以下:
【化2】
の一般式Iを有している、請求項記載のゴム混合物。
【請求項3】
エポキシシランが、一般式Iのエポキシシランの混合物である、請求項又は記載のゴム混合物。
【請求項4】
エポキシシランが、有機若しくは無機の不活性担体上に吸収されているか、又は有機若しくは無機の担体と予備反応されている、請求項1記載のゴム混合物。
【請求項5】
さらなるシランを含有している、請求項1記載のゴム混合物。
【請求項6】
以下:
(D)チウラムスルフィド促進剤、及び/又はカルバメート促進剤、及び/又は相応する亜鉛塩、
(E)適宜、窒素含有の補助活性化剤、
(F)適宜、さらなるゴム助剤、及び、
(G)適宜、さらなる促進剤
を含有している、請求項1記載のゴム混合物。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項記載のゴム混合物の製造法において、少なくとも1のポリアクリレートゴムと、少なくとも1のカーボンブラックと、少なくとも1のエポキシシランとを混合し、
その際、
該ポリアクリレートゴムが、ACMポリアクリレートゴムであり、
該エポキシシランが、式I
【化3】
[式中、
Xは、−OCH−CHであり、
Iは、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、飽和の、脂肪族の、適宜、置換基を有する二価のC1〜C30炭化水素基であるか、又は、二価のアルキルエーテル基である]のエポキシシランであり、かつゴム100質量部に対して、1〜20質量部で存在しており、かつ
該カーボンブラックが、ゴム100質量部に対して、5〜150質量部で存在している
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
成形品を製造するための、請求項1からまでのいずれか1項記載のゴム混合物の使用。
【請求項9】
空気ばね、空気入りタイヤ又は他のタイヤ、タイヤトレッド、ケーブル外装、ホース、伝動ベルト、コンベヤベルト、ロール被覆、靴底、シールリング及び制動要素における、請求項1からまでのいずれか1項記載のゴム混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム混合物、その製造及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアクリレートエラストマーをベースとする加硫可能なゴム混合物は、"High−Performance HT−ACMs for automotive moulded and extruded applications", Rubber World Oct. 2007, pp. 46−54に開示されている。
【0003】
ポリアクリレートエラストマーを含有する公知のゴム混合物は、動的特性が不良であるという欠点を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"High−Performance HT−ACMs for automotive moulded and extruded applications", Rubber World Oct. 2007, pp. 46−54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明による課題は、ポリアクリレートエラストマーを含有し、かつ改善された動的特性を有するゴム混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴム混合物であって、以下
(A)少なくとも1のポリアクリレートゴム、
(B)少なくとも1の、ケイ酸塩系充填剤、又は酸化物系充填剤、又はカーボンブラック、及び、
(C)少なくとも1のエポキシシラン
を含有することを特徴とするゴム混合物を提供する。
【0007】
エポキシシランは、好ましくは少なくとも1のアルコキシ基又はアルキルポリエーテル基を含んでよい。
【0008】
エポキシシランは、式I
【化1】
[式中、
Xは、相互に独立して、
アルキルポリエーテル基O−((CRII2w−O−)tAlk、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のアルキル基、好ましくは、C1〜C18アルキル基、特に好ましくは、−CH3、−CH2−CH3、−CH(CH3)−CH3、−CH2−CH2−CH3、又はC4−C18アルキル基、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のアルコキシ基、好ましくは、分枝鎖状又は非分枝鎖状のC1〜C22アルコキシ基、特に好ましくは、−OCH3、−OCH2−CH3、−OCH(CH3)−CH3、−OCH2−CH2−CH3、−OC919、−OC1021、−OC1123、−OC1225、−OC1327、−OC1429、−OC1531、−OC1633、−OC1735、又は−OC1837
分枝鎖状又は非分枝鎖状のC2〜C25アルケニルオキシ基、好ましくは、C4〜C20アルケニルオキシ基、特に好ましくは、C6〜C18アルケニルオキシ基、
6〜C35アリールオキシ基、好ましくは、C9〜C30アリールオキシ基、特に好ましくは、フェニルオキシ基(−OC65)又はC9〜C18アリールオキシ基、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のC7〜C35アルキルアリールオキシ基、好ましくは、C9〜C30アルキルアリールオキシ基、特に好ましくは、ベンジルオキシ、−O−CH2−C65、又は−O−CH2−CH2−C65、又は、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のC7〜C35アラルキルオキシ基、好ましくは、C9〜C25アラルキルオキシ基、特に好ましくは、トリルオキシ基(−O−C64−CH3)、又はC9〜C18アラルキルオキシ基であり、
ここで、RIIは、相互に独立して、H、フェニル基、又はアルキル基であり、
wは、2〜20、好ましくは2〜17、特に好ましくは2〜15、極めて特に好ましくは2〜13、非常に好ましくは2〜10であり、
tは、2〜20、好ましくは3〜17、特に好ましくは3〜15、極めて特に好ましくは4〜15、非常に好ましくは4〜10であり、
Alkは、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、置換されたか又は置換されていない、脂肪族の、芳香族の、又は脂肪族と芳香族との混合型の、6個を上回る炭素原子を有する一価の炭化水素基、好ましくは、C7〜C25炭化水素基、特に好ましくはC8〜C22炭化水素基、極めて特に好ましくは、C8〜C17炭化水素基、非常に好ましくは、C11〜C16炭化水素基であり、
Iは、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、脂肪族の、芳香族の、又は脂肪族と芳香族との混合型の、適宜、置換基を有する二価のC1〜C30炭化水素基であるか、又は、二価のアルキルエーテル基である]
のエポキシシランであってよい。
【0009】
基(CRII2wは、
【化2】
であってよい。
【0010】
Iは、
【化3】
又は
【化4】
であってよい。
【0011】
アルキルポリエーテル基O−((CRII2w−O−)tAlkは、O−(CRII2−CRII2−CRII2−O)t−Alk、O−(CRII2−CRII2−CRII2−CRII2−O)t−Alk、好ましくは、O−(−CH2−CH2−CH2−CH2−)t−Alk、又はO−(CRII2−CRII2−CRII2−CRII2−CRII2−O)t−Alkであってよい。
【0012】
アルキルポリエーテル基O−((CRII2w−O−)tAlkは、O−(CRII2−CRII2−O)t−Alkであってよい。
【0013】
基O−(CRII2−CRII2−O)t−Alkは、好ましくは、エチレンオキシド単位、O−(CH2−CH2−O)t−Alk、プロピレンオキシド単位、例えばO−(CH(CH3)−CH2−O)t−Alk、又はO−(CH2−CH(CH32−O)t−Alk、又はブチレンオキシド単位、例えばO−(−CH(CH2−CH3)−CH2−O)t−Alk、又はO−(−CH2−CH(CH2−CH3)−O)t−Alkを含んでよい。
【0014】
一般式Iのエポキシシランは、
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
【化7】
【0017】
【化8】
【0018】
【化9】
【0019】
【化10】
【0020】
【化11】
【0021】
【化12】
【0022】
【化13】
【0023】
【化14】
【0024】
【化15】
【0025】
【化16】
であってよく、ここで、アルキル部分(Alk)は非分枝鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。
【0026】
本発明によるゴム混合物は、一般式Iのエトキシシラン、又は一般式Iのエトキシシランの混合物を使用することができる。
【0027】
本発明によるゴム混合物は、加水分解物、オリゴマーシロキサン又はポリマーシロキサン、及び一般式Iの化合物の縮合物を使用することができる。
【0028】
式Iのエトキシシランを混合プロセスに添加する形態は、純粋な形態であってもよいし、有機若しくは無機の不活性担体上に吸収された形態であってもよいし、有機若しくは無機の担体と予備反応された形態であってもよい。好ましい担体材料は、沈降シリカ若しくはフュームドシリカ、ワックス、熱可塑性樹脂、天然若しくは合成のケイ酸塩、天然若しくは合成の酸化物、例えば酸化アルミニウム、又はカーボンブラックであってよい。式Iのエトキシシランは、また、使用されるべき充填剤と予備反応された形態で混合プロセスに添加することもできる。
【0029】
好ましいワックスは、50℃〜200℃の、好ましくは70℃〜180℃の、特に好ましくは90℃〜150℃の、非常に特に好ましくは100℃〜120℃の融点、溶融範囲又は軟化範囲を有するワックスであってよい。
【0030】
使用されるワックスは、オレフィン系ワックスであってよい。
【0031】
使用されるワックスは、飽和及び不飽和の炭化水素鎖を有してよい。
【0032】
使用されるワックスは、ポリマー又はオリゴマー、好ましくはエマルションSBR及び/又は溶液SBRを含んでよい。
【0033】
使用されるワックスは、長鎖アルカン及び/又は長鎖カルボン酸を含んでよい。
【0034】
使用されるワックスは、エチレン−ビニルアセテート及び/又はポリビニルアルコールを含んでよい。
【0035】
一般式Iのエトキシシランは、有機物質と物理的に混合された形態で、又は有機物質混合物と物理的に混合された形態で、混合プロセスに添加することができる。
【0036】
前記の有機物質又は有機物質混合物は、ポリマー又はオリゴマーを含んでよい。
【0037】
ポリマー又はオリゴマーは、ヘテロ原子を含むポリマー又はオリゴマー、例えばエチレン−ビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコールであってよい。
【0038】
ポリマー又はオリゴマーは、飽和又は不飽和のエラストマー、好ましくはエマルションSBR及び/又は溶液SBRであってよい。
【0039】
式Iのエトキシシランと有機物質との混合物、又は式Iのエトキシシランと有機物質混合物との混合物の、融点、溶融範囲又は軟化範囲は、50℃〜200℃、好ましくは70℃〜180℃、特に好ましくは70℃〜150℃、極めて特に好ましくは70℃〜130℃、非常に好ましくは90℃〜110℃であってよい。
【0040】
以下のものを、本発明によるゴム混合物のためのケイ酸塩系若しくは酸化物系充填剤として使用することができる:
− 例えば、ケイ酸塩の溶液の沈殿(沈降シリカ)又はハロゲン化ケイ素の火炎加水分解(フュームドシリカ)により製造されるアモルファスシリカ。該アモルファスシリカの比表面積は、5〜1000m2/g、好ましくは20〜400m2/g(BET表面積)であってよく、かつその一次粒度は、10〜400nmであってよい。該シリカは、適宜、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛及び酸化チタンなどの他の金属酸化物との混合酸化物の形態を採ってもよい。
【0041】
− 合成ケイ酸塩、例えばアルミニウムケイ酸塩又はアルカリ土類金属ケイ酸塩、例えばマグネシウムケイ酸塩又はカルシウムケイ酸塩。該合成ケイ酸塩のBET表面積は、20〜400m2/gであってよく、かつその一次粒径は、10〜400nmであってよい。
【0042】
− 合成若しくは天然のアルミニウム酸化物及び合成若しくは天然のアルミニウム水酸化物。
【0043】
− 天然のケイ酸塩、例えばカオリン及び他の天然産生シリカ。
【0044】
− ガラス繊維及びガラス繊維製品(マット、ストランド)又はガラスマイクロビーズ。
【0045】
ケイ酸塩の溶液の沈殿により製造されたBET表面積20〜400m2/gを有するアモルファスシリカ(沈降シリカ)を使用することが好ましいことがある。使用できるアモルファスシリカの量は、それぞれゴム100部に対して、5〜150質量部(phr)である。
【0046】
使用できるカーボンブラックの例は、ランプブラック、ファーネスブラック、ガスブラック又はサーマルブラックである。前記カーボンブラックのBET表面積は、20〜200m2/g、好ましくは30〜100m2/gであってよい。前記カーボンブラックは、適宜、ケイ素などのヘテロ原子を含んでもよい。カーボンブラックの使用量は、それぞれゴム100部に対して、5〜150質量部(phr)であってよい。
【0047】
挙げられた充填剤を、単独若しくは混合物で使用することができる。
【0048】
特に好ましい一実施態様において、ゴム混合物は、それぞれゴム100質量部に対して、ケイ酸塩系若しくは酸化物系充填剤10〜150質量部を、適宜、カーボンブラック0〜100質量部と一緒に含んでよく、さらに、式Iのエトキシシラン1〜20質量部を含んでよい。
【0049】
他の特に好ましい実施態様において、ゴム混合物は、それぞれゴム100質量部に対して、カーボンブラック10〜150質量部を、適宜、酸化物系充填剤0〜100質量部と一緒に含んでよく、さらに、式Iのエトキシシラン1〜20質量部を含んでよい。
【0050】
本発明によるゴム混合物中のポリアクリレートゴムは、例えばACMポリアクリレートゴム、又はエチレン−アクリレートゴム(AEM)であってよい。ACMは、高い耐酸素性、耐オゾン性及び耐高温性を有しており、かつ鉱油中での膨潤に対する良好な抵抗性を有しているが、吸水性が高く、かつ耐加水分解性が不良である。AEMは、例えばDUPONT社製のVAMACの商標で知られている。AEMの特性はACMの特性と類似しているが、但し、より良好な強度及び耐熱性を有しているものの、耐鉱油性がより不良である。
【0051】
本発明によるゴム混合物は、さらに、天然ゴム又は合成ゴムを含有してよい。好ましい合成ゴムは、例えばW.Hofmann,Kautschuktechnologie[Rubber technology], Genter Verlag,Stuttgart 1980に記載されている。前記ゴムは、とりわけ
− ポリブタジエン(BR);
− ポリイソプレン(IR);
− スチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)、例えばエマルションSBR(E−SBR)又は溶液SBR(S−SBR)[該スチレン−ブタジエンコポリマーは、1〜60質量%の、好ましくは2〜50質量%の、特に好ましくは10〜40質量%の、非常に特に好ましくは15〜35質量%のスチレン含有率を有してよい];
− クロロプレン(CR);
− イソブチレン−イソプレンコポリマー(IIR);
− ブタジエン−アクリロニトリルコポリマーであって、アクリロニトリル含有率が5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%(NBR)、特に好ましくは10〜45質量%(NBR)、極めて特に好ましくは19〜45質量%(NBR)であるコポリマー;
− 部分的に水素化された又は完全に水素化されたNBRゴム(HNBR);
− エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー(EPDM);
− 前記のゴムであって、また官能基、例えばカルボキシ基、シラノール基若しくはエポキシ基を有するゴム、例えばエポキシ化NR、カルボキシ官能化されたNBR、又はシラノール(−SiOH)官能化若しくはシリルアルコキシ(−Si−OR)官能化されたSBR;
又は前記ゴムの混合物を含む。
【0052】
本発明によるゴム混合物は、他のゴム助剤、例えば反応促進剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物及びまた活性化剤、例えばトリエタノールアミン若しくはヘキサントリオールを含んでよい。
【0053】
他のゴム助剤は、以下のものであってよい:
50〜50000g/モル、好ましくは50〜20000g/モル、特に好ましくは200〜10000g/モル、極めて特に好ましくは400〜6000g/モル、非常に好ましくは500〜3000g/モルの分子量を有する、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール及び/又はポリブチレングリコール、
末端に炭化水素を有するポリエチレングリコールAlkI−O−(CH2−CH2−O)yI−H、又はAlkI−(CH2−CH2−O)yI−AlkI
末端に炭化水素を有するポリプロピレングリコールAlkI−O−(CH2−CH(CH3)−O)yI−H、又はAlkI−O−(CH2−CH(CH3)−O)yI−AlkI
末端に炭化水素を有するポリブチレングリコールAlkI−O−(CH2−CH2−CH2−CH2−O)yI−H、AlkI−O−(CH2−CH(CH3)−CH2−O)yI−H、AlkI−O−(CH2−CH2−CH2−CH2−O)yI−AlkI、又はAlkI−O−(CH2−CH(CH3)−CH2−O)yI−AlkI
ここで、yIの平均は、2〜25、好ましくは2〜15、特に好ましくは3〜8及び10〜14、極めて特に好ましくは3〜6及び10〜13であり、かつAlkIは、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、置換されたか又は置換されていない、飽和又は不飽和の、1〜35個、好ましくは4〜25個、特に好ましくは6〜20個、極めて特に好ましくは10〜20個、非常に好ましくは11〜14個の炭素原子を有する炭化水素である、
ポリエチレングリコールでエーテル化された、ポリプロピレングリコールでエーテル化された、ポリブチレングリコールでエーテル化された、又はその混合物でエーテル化された、ネオペンチルグリコールHO−CH2−C(Me)2−CH2−OH、ペンタエリトリトールC(CH2−OH)4、又はトリメチロールプロパンCH3−CH2−C(CH2−OH)3、ここで、エーテル化されたポリアルコール中の、エチレングリコール、プロピレングリコール及び/又はブチレングリコールの繰返し単位の数は、2〜100、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜30、極めて特に好ましくは3〜15であってよい。
【0054】
分析により求めることができるポリアルキレングリコール単位の量を、分析により求めることができる−AlkIの量で除す[(ポリアルキレングリコール単位の量)/(−AlkIの量)]ことによって、yIの平均を算出することができる。これらの量を求めるのには、例えば1H及び13C核共鳴分光法を用いることができる。
【0055】
本発明によるゴム混合物は、さらなるシランを含んでよい。
【0056】
本発明によるゴム混合物に添加することができるさらなるシランは、エトキシシリル基を有するメルカプトオルガニルシラン、及び/又はエトキシシリル基を有するチオシアナトオルガニルシラン、及び/又はエトキシシリル基を有するブロックトメルカプトオルガニルシラン、及び/又はエトキシシリル基を有するポリスルフィド性アルコキシシランである。
【0057】
本発明によるゴム混合物に添加することができるさらなるシランは、トリエトキシシリル基を有するメルカプトオルガニルシラン、及び/又はトリエトキシシリル基を有するチオシアナトオルガニルシラン、及び/又はトリエトキシシリル基を有するブロックトメルカプトオルガニルシラン、及び/又はトリエトキシシリル基を有するポリスルフィド性アルコキシシランである。
【0058】
本発明によるゴム混合物に添加することができるさらなるシランは、C817−O−基、C1021−O−基、C1225−O−基、C1429−O−基、C1633−O−基、又はC1837−O−基をケイ素上に有するメルカプトオルガニル(アルコキシシラン)である。
【0059】
本発明によるゴム混合物に添加することができるさらなるシランは、C817−O−基、C1021−O−基、C1225−O−基、C1429−O−基、C1633−O−基、又はC1837−O−基をケイ素上に有するブロックトメルカプトオルガニル(アルコキシシラン)である。
【0060】
本発明によるゴム混合物に添加することができるさらなるシランは、二官能性アルコール(ジオール)をケイ素上に有するブロックトメルカプトオルガニル(アルコキシシラン)(例えば、General Electric社製のNXT LowV、又はNXT Ultra−LowV)である。
【0061】
本発明によるゴム混合物に添加することができるさらなるシランは、式
【化17】
のポリスルフィド性アルコキシシランである。
【0062】
本発明によるゴム混合物に添加することができるさらなるシランは、3−メルカプトプロピル(トリエトキシシラン)(例えば、Evonik Industries AG社製のSi 263)、3−チオシアナトプロピル(トリエトキシシラン)(例えば、Evonik Industries AG社製のSi 264)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド(例えば、Evonik Industries AG社製のSi 69)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、Evonik Industries AG社製のSi 266)である。
【0063】
本発明によるゴム混合物に添加することができるさらなるシランは、アルキルポリエーテルアルコール含有のメルカプトオルガニルシラン(例えば、Evonik Industries AG社製のSi 363)、及び/又はアルキルポリエーテルアルコール含有のチオシアナトオルガニルシラン、及び/又はアルキルポリエーテルアルコール含有のブロックトメルカプトオルガニルシラン、及び/又はアルキルポリエーテルアルコール含有のポリスルフィド性シランである。
【0064】
アルキルポリエーテルアルコール含有のメルカプトオルガニルシランは、一般式II
【化18】
[式中、
少なくとも1のXは、アルキルポリエーテル基である]
の化合物であってよい。
【0065】
アルキルポリエーテルアルコール含有のブロックトメルカプトオルガニルシランは、一般式III
【化19】
[式中、
少なくとも1のXは、アルキルポリエーテル基であり、かつ、
AlkIIは、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、置換されたか又は置換されていない、脂肪族の、芳香族の、又は脂肪族と芳香族との混合型の一価の炭化水素基であり、好ましくは、C1〜C25炭化水素基、特に好ましくは、C2〜C22炭化水素基、極めて特に好ましくは、C7〜C17炭化水素基、非常に好ましくは、C11〜C16炭化水素基である]
の化合物であってよい。
【0066】
使用されるゴム助剤の量は、とりわけ意図される目的に応じて知られた量であってよい。使用される加工助剤に関連して、慣用の量は、ゴムに対して、0.001〜50質量%の、好ましくは0.001〜30質量%の、特に好ましくは0.01〜30質量%の、極めて好ましくは0.1〜30質量%の量(phr)であってよい。
【0067】
本発明によるゴム混合物は、硫黄で加硫可能なゴム混合物であってよい。
【0068】
本発明によるゴム混合物は、ペルオキシドにより架橋可能なゴム混合物であってよい。
【0069】
使用することができる架橋剤は、硫黄又は硫黄供与物質であってよい。使用される硫黄の量は、ゴムに対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%であってよい。
【0070】
本発明によるゴム混合物は、さらなる加硫促進剤を含んでよい。
【0071】
使用することができる加硫促進剤の量は、使用されるゴムに対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0072】
本発明によるゴム混合物は、以下:
(D)チウラムスルフィド促進剤、及び/又はカルバメート促進剤、及び/又は相応する亜鉛塩、
(E)適宜、窒素含有の補助活性化剤、
(F)適宜、さらなるゴム助剤、及び、
(G)適宜、さらなる促進剤
を含んでよい。
【0073】
本発明はさらに、本発明によるゴム混合物の製造方法であって、該方法が、少なくとも1のポリアクリレートゴムと、少なくとも1のケイ酸塩系若しくは酸化物系充填剤又はカーボンブラックと、少なくとも1のエポキシシランとを混合することを特徴とする前記製造方法を提供する。
【0074】
エポキシシランは、一般式Iのエポキシシランであってよい。
【0075】
本発明による方法は、25℃を上回る温度で実施することができる。
【0076】
本発明による方法は、80℃〜200℃の、好ましくは100℃〜180℃の、特に好ましくは110℃〜160℃の温度範囲で実施することができる。
【0077】
該方法は、連続的に又はバッチ式に実施することができる。
【0078】
一般式Iのエポキシシランの添加と、また充填剤の添加も、組成物の温度が100〜200℃であるときに実施することができる。しかしながら、より低い40〜100℃の温度で、例えばさらなるゴム助剤を一緒に用いて実施することもできる。
【0079】
ゴムと充填剤と、適宜、ゴム助剤と、一般式Iのエポキシシランとの配合は、ロール、密閉式ミキサー及び混合押出機などの慣用の混合アセンブリにおいて又はその上で実施することができる。これらのゴム混合物は、通常は、密閉式ミキサー中で、1若しくはそれより多くの連続的な熱機械的混合ステージから始まって製造することができ、前記混合ステージにおいては、ゴムと、充填剤と、一般式Iのエポキシシランと、ゴム助剤とが、100〜170℃で混合によって合わせられる。個々の成分の添加の順序と添加の時点は、ここで、生ずる混合物の特性に決定的な影響を及ぼすことがある。架橋性の化学物質は、通常は、密閉式ミキサー中で又はロール上で40〜110℃で、こうして得られたゴム混合物と混和され、そして加工されることで、粗製混合物として知られるものが得られ、それに、後続のプロセス工程、例えば成形及び加硫がなされる。
【0080】
本発明によるゴム混合物の加硫は、80〜200℃の、好ましくは130〜180℃の温度で、適宜、10〜200バールの圧力下で実施することができる。
【0081】
本発明によるゴム混合物は、成形品の製造に、例えば、空気ばね、空気入り及び他のタイヤ、タイヤトレッド、ケーブル外装、ホース、伝動ベルト、コンベヤベルト、ロール被覆、靴底、及びシール要素、例えばリングシール、及び制動要素の製造に使用することができる。
【0082】
本発明はさらに、本発明によるゴム混合物から加硫により得ることができる成形品を提供する。
【0083】
本発明によるゴム混合物の動的特性は、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】加硫物のtanδの温度依存性の結果を示す図。
【実施例】
【0085】
以下の化合物をゴム混合物において使用する:
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランは、EVONIK Industries社製のDYNASILAN GLYMOとして入手可能である。
【0086】
3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランは、EVONIK Industries社製のDYNASILAN GLYEOとして入手可能である。
【0087】
アミノプロピルトリエトキシシランは、EVONIK Industries社製のDYNASILAN AMEOとして入手可能である。
【0088】
ASTM N 339カーボンブラックは、Orion Engineered Carbons社製のCorax N 339として入手可能である。
【0089】
ASTM N 660カーボンブラックは、Orion Engineered Carbons社製のCorax N 660として入手可能である。
【0090】
ASTM N 550カーボンブラックは、Orion Engineered Carbons社製のCorax N 550として入手可能である。
【0091】
実施例1:ゴム混合物
ゴム混合物に使用する元の配合を、以下の第1表に示す。ここで、単位phrは、使用される生ゴム100部に対する質量割合を意味する。
【0092】
ゴム混合物及びその加硫物の一般的な製造法は、書籍:"Rubber Technology Handbook", W. Hofmann, Hanser Verlag 1994に記載されている。
【0093】
【表1】
【0094】
ポリマーHytemp AR 71は、Zeon Chemicals社製の、42〜54のムーニー粘度を有するポリアクリレートゴムを含有している。
【0095】
Ultrasil 360は、EVONIK Industries社製のシリカである。
【0096】
Struktol WB 222は、Struktol Company of America社製の、高分子の脂肪族脂肪酸エステルと縮合物との無水ブレンドであり、Rhenofit OCD−SGは、RheinChemie社製のオクチル化ジフェニルアミンであり、かつ、Vulkanol 81は、Lanxess社製のチオエステルとカルボン酸エステルとの混合物である。Rhenofit Na stearate 80は、RheinChemie社製のシリカに結合したステアリン酸ナトリウムである。
【0097】
ゴム混合物を、第2表における混合規定に従って、密閉式ミキサー中で製造する。
【0098】
【表2】
【0099】
加硫を、160℃で30分間行い、これに引き続き180℃で2時間コンディショニングを行う。
【0100】
第3表に、ゴム試験に関する方法をまとめる。
【0101】
【表3】
【0102】
第4a表及び第4b表は、加硫物からの結果を示す。
【0103】
【表4】
【0104】
アミノシランの場合、加硫後に得られた分出しされたシートは不良であり、かつ、若干のケースではほぼ「脆い」状態であった。
【0105】
動的データを除いて、エポキシシランを含有する混合物に関する加硫物データは、カーボンブラックを含有する混合物に関する加硫物データと類似している。理想的な破断伸びは、シリカを40phr使用することにより達成される。しかしながら、カーボンブラックを含有する混合物と比較したエポキシシランを含有する混合物に関する極めて明確な利点は、反発弾性試験において、及び、加硫物のRPA試験におけるtanδにおいて認められる。N339と比較して50%の改善、及び、N660と比較して20%の改善が、反発弾性試験において達成されている。
【0106】
実施例2:ゴム混合物
ゴム混合物に使用する元の配合を、第5表に示す。ここで、単位phrは、使用される生ゴム100部に対する質量割合を意味する。
【0107】
【表5】
【0108】
化学物質は実施例1において規定されている。
【0109】
以下のカーボンブラックは、ゴム工業において一般に使用されている:N339、N550及びN660。ゴム混合物を、第6表における混合規定に従って、密閉式ミキサー中で製造する。
【0110】
【表6】
【0111】
加硫を、160℃で30分間行い、これに引き続き180℃で2時間コンディショニングを行う。
【0112】
第7表に、ゴム試験に関する方法をまとめる。
【0113】
【表7】
【0114】
第8表及び図1(tanδの温度依存性)に、加硫物からの結果を示す。
【0115】
【表8】
【0116】
Glyeoエポキシシランを含有するカーボンブラック混合物と、シランを含有していないカーボンブラック混合物との比較により、Glyeoを含有する混合物に関して、60℃で、明らかにより高い反発弾性が明らかとなった。また、図1中にシランを含有するカーボンブラック混合物に関して示されているtanδは、シランを含有していない混合物に関して示されているtanδよりも明らかに低い。この傾向は、N339カーボンブラックに関して最も顕著である。
【0117】
本発明の態様
1.ゴム混合物であって、以下:
(A)少なくとも1のポリアクリレートゴム、
(B)少なくとも1の、ケイ酸塩系若しくは酸化物系充填剤、又はカーボンブラック、及び、
(C)少なくとも1のエポキシシラン
を含有していることを特徴とするゴム混合物。
【0118】
2.エポキシシランが、式I
【化20】
[式中、
Xは、相互に独立して、
アルキルポリエーテル基O−((CRII2w−O−)tAlk、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のアルキル基、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のアルコキシ基、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のC2〜C25アルケニルオキシ基、
6〜C35アリールオキシ基、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のC7〜C35アルキルアリールオキシ基、又は、
分枝鎖状又は非分枝鎖状のC7〜C35アラルキルオキシ基であり、
ここで、RIIは、相互に独立して、H、フェニル基、又はアルキル基であり、
wは、2〜20であり、
tは、2〜20であり、
Alkは、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、置換されたか又は置換されていない、脂肪族の、芳香族の、又は脂肪族と芳香族との混合型の、6個を上回る炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、
Iは、分枝鎖状又は非分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、脂肪族の、芳香族の、又は脂肪族と芳香族との混合型の、適宜、置換基を有する二価のC1〜C30炭化水素基であるか、又は、二価のアルキルエーテル基である]
のエポキシシランである、1に記載のゴム混合物。
【0119】
3.エポキシシランが、以下:
【化21】
の一般式Iを有している、2に記載のゴム混合物。
【0120】
4.エポキシシランが、一般式Iのエポキシシランの混合物である、2又は3に記載のゴム混合物。
【0121】
5.エポキシシランが、有機若しくは無機の不活性担体上に吸収されているか、又は有機若しくは無機の担体と予備反応されている、1に記載のゴム混合物。
【0122】
6.さらなるシランを含有している、1に記載のゴム混合物。
【0123】
7.以下:
(D)チウラムスルフィド促進剤、及び/又はカルバメート促進剤、及び/又は相応する亜鉛塩、
(E)適宜、窒素含有の補助活性化剤、
(F)適宜、さらなるゴム助剤、及び、
(G)適宜、さらなる促進剤
を含有している、1に記載のゴム混合物。
【0124】
8.1から6までのいずれか1に記載のゴム混合物の製造法において、少なくとも1のポリアクリレートゴムと、少なくとも1のケイ酸塩系若しくは酸化物系充填剤又はカーボンブラックと、少なくとも1のエポキシシランとを混合することを特徴とする方法。
【0125】
9.成形品を製造するための、1から7までのいずれか1に記載のゴム混合物の使用。
【0126】
10.空気ばね、空気入りタイヤ又は他のタイヤ、タイヤトレッド、ケーブル外装、ホース、伝動ベルト、コンベヤベルト、ロール被覆、靴底、シールリング及び制動要素における、1から7までのいずれか1に記載のゴム混合物の使用。
図1