特許第6045367号(P6045367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6045367-原子炉給水流量制御装置 図000007
  • 特許6045367-原子炉給水流量制御装置 図000008
  • 特許6045367-原子炉給水流量制御装置 図000009
  • 特許6045367-原子炉給水流量制御装置 図000010
  • 特許6045367-原子炉給水流量制御装置 図000011
  • 特許6045367-原子炉給水流量制御装置 図000012
  • 特許6045367-原子炉給水流量制御装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045367
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】原子炉給水流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   G21D 3/08 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G21D3/08 PGDB
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-10512(P2013-10512)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-142246(P2014-142246A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】石飛 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】元塚 博文
(72)【発明者】
【氏名】北村 純一
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 隆
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−117002(JP,A)
【文献】 特開昭59−105599(JP,A)
【文献】 特開昭63−238305(JP,A)
【文献】 特開昭59−150391(JP,A)
【文献】 実開昭63−000298(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21D 3/08
G21D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子力発電所の原子炉の水位設定信号と水位信号の差分を入力信号とし、この入力信号を比例動作させた成分を生成する比例動作回路、前記入力信号を単位時間積分動作させた成分を生成する積分動作回路とを有し、前記入力信号を比例動作させた成分と前記単位時間積分動作させた成分を加算して出力信号を生成し、この出力信号で低出力運転中の給水流量調節弁の開度を制御する原子炉給水流量制御装置であって、
前記原子炉の運転モード変更によって前記比例動作のためのゲインが減少変更される場合に、前記比例動作と前記積分動作のうち少なくとも前記比例動作による成分の前記出力信号への供給を遮断するスイッチを備えこのスイッチは前記比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間遮断することを特徴とする原子炉給水流量制御装置。
【請求項2】
前記原子炉給水流量制御装置は、前記入力信号の回路を分岐点で分岐させ、一の分岐側には前記比例動作回路を、他の分岐側には前記積分動作回路を、並列に接続すると共に、前記比例動作回路と前記積分動作回路の下流側の合流点で接続して信号を加算し、その下流側に前記出力信号をフィードバックさせるフィードバック回路を接続して前記単位時間前の出力信号を加算し、前記比例動作のためのゲインの減少変更の指令信号を否定回路を介して前記分岐点よりも上流側又は前記合流点よりも下流側であって前記フィードバック回路との接続点よりも上流側に前記スイッチを設け、前記比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、前記比例動作成分と前記単位時間積分動作成分の前記出力信号への供給を前記スイッチによって遮断することを特徴とする請求項1記載の原子炉給水流量制御装置。
【請求項3】
前記スイッチは、前記分岐点よりも上流側又は前記合流点よりも下流側であって前記フィードバック回路との接続点よりも上流側に代えて、前記分岐点から前記合流点までの比例動作回路の一部に設け、前記比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、前記比例動作成分の前記出力信号への供給を遮断することを特徴とする請求項2に記載の原子炉給水流量制御装置。
【請求項4】
前記原子炉給水流量制御装置は、前記積分動作回路が、前記入力信号を単位時間積分動作させた成分を,前記単位時間の前までに積分動作させた成分に加算して生成する積分動作回路であって、前記入力信号の回路を分岐点で分岐させ、一の分岐側には前記比例動作回路を、他の分岐側には前記積分動作回路を、並列に接続すると共に、前記比例動作回路と前記積分動作回路の下流側の合流点で接続して信号を加算し、前記比例動作のためのゲインの減少変更の指令信号を否定回路を介して前記分岐点から前記合流点までの比例動作回路の一部に前記スイッチを設け、前記比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、前記比例動作成分の前記出力信号への供給を前記スイッチによって遮断することを特徴とする請求項1記載の原子炉給水流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子力発電所の原子炉への給水流量を制御する装置に係り、特に原子炉が低出力で運転されている過渡状態で、原子炉水位偏差がある場合に運転モードが変更され制御のためのゲインが変動してもより安全に運転員への負荷も低減可能な原子炉給水流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、沸騰水型原子力発電所における原子炉水位の制御は、原子炉において発生する蒸気の流量、原子炉水位、原子炉への給水流量の3要素を用いて行われている。
図7を参照しながら従来技術について説明する。
沸騰水型原子力発電所では、原子炉50内に給水配管53を介して給水ポンプ52によって水(冷却水)が供給される。原子炉50内には核燃料が装荷されており、その核燃料の発熱によって冷却水から蒸気を発生させ、蒸気は原子炉50から主蒸気配管56を介してタービン(図示せず)に供給され、発電機を駆動して発電を行っている。仕事をした蒸気は復水器(図示せず)に導入されて復水となり、再度給水に供される。また、原子炉50周りには、起動時や通常運転時に原子炉50内部の冷却水の不純物等を除去する原子炉浄化系51があり、この原子炉浄化系51にはCUWダンプ弁57が設けられている。このCUWダンプ弁57はプラント起動時に開動作させて原子炉50内の冷却水を排水するために用いられている。
原子炉50の内部には、下部に核燃料が配置されており、上部にはより乾燥した蒸気を取り出すための気水分離器や蒸気乾燥器といった構造物が配置されているので、原子炉水位は一定の幅の中で制御されることが必要である。
そこで、冒頭説明したとおり、いわゆる3要素による制御がなされている。
具体的には、原子炉給水制御系11を用いて制御が実施されている。この原子炉給水制御系11では、原子炉50からの水位信号2と、給水配管53に設置された給水流量計54からの給水流量信号7、及び主蒸気配管56に設置された主蒸気流量計55からの主蒸気流量信号7を受信して、水位信号2と水位設定信号により演算された水位偏差信号と、給水流量信号7と主蒸気流量信号7から演算されるミスマッチ流量信号との差分信号を流量制御器への入力信号としている。流量制御器(PID制御器)では、比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインによる補償演算を行って流量制御信号としての出力信号を生成して、これを用いて給水配管53に設けられた給水ポンプ52の出力や給水流量調節弁4の開度を制御している。
さらに、沸騰水型原子力発電所では運転状態に即した運転モードがあり、その運転モードが相違すれば、原子炉50に必要な水位に応じて水位制御も異なるので、前述のゲインも異なっていた。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示される「原子炉給水制御装置」では、入力信号に対する比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインや関数を、特に給水ポンプの流量信号や給水ポンプの運転台数に応じて設定を変える可変ゲイン設定器や可変関数設定器を備えて制御する技術が開示されている。
これによってあらゆる運転状況に応じて最適な制御ゲインや関数を用いて、安定した給水流量制御を実施することができる。
【0004】
また、特許文献2では、「原子炉給水ポンプ流量制御装置」という名称で、原子炉給水ポンプが停止した際を考慮し、流量制御器(PID制御装置)に対し、入力信号に原子炉給水ポンプが停止した場合のポンプ要求信号を加えて、給水流量要求信号と給水ポンプ流量信号またはポンプ要求信号との差信号を入力し、比例、積分、微分動作させて、この動作信号をポンプ要求信号として流量制御器から出力するようにして、ポンプ停止時には微分動作を停止する微分動作停止装置を有している。
この特許文献2においては、原子炉給水ポンプ停止時においては、給水ポンプ流量信号を用いることなくポンプ要求信号を用いて、しかも大きなゲインを生じる可能性のある微分動作を停止させることで安定した制御を可能としている。
【0005】
最後に、特許文献3では、「原子炉給水制御装置」という名称で、前述の3要素を用いる制御において、主蒸気流量と給水流量信号を水位信号に換算するミスマッチゲインを再循環ポンプランバック、再循環ポンプトリップ、給水ポンプトリップ、原子炉スクラムの各事象発生時にミスマッチゲイン設定装置によって大きくして実際より少ない給水流量に絞り込む技術が開示されている。
この技術によって、不要なトリップや警報の発生を最小限に抑えることが可能となり、原子炉水位の静定時間を短縮することが可能となり、運転員の負担軽減、プラントの稼働率の向上を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−16993号公報
【特許文献2】特開昭59−108993号公報
【特許文献3】特開平5−52991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される発明においては、比例ゲイン、積分ゲイン及び微分ゲインや関数を、給水ポンプの流量信号や給水ポンプの運転台数に応じて設定を変えることはむしろ煩雑であり、すべての事象に対応させることは困難であり、プラント設計に時間と費用がかかるという課題を有していた。また、設定が変更されたことを運転員が認識する必要もあり、運転員の負担も大きく、プラント運転に対しては必ずしも容易に対応できるものでもなかった。
【0008】
また、特許文献2に開示される発明においても、給水ポンプ停止の場合においては有効な発明であるとも考えられるが、そもそも給水ポンプは停止しているので、これを制御するという思想自体に無理があると考えられる。しかも、入力信号に原子炉給水ポンプが停止した場合のポンプ要求信号を加えるため、従来の制御方法を変更する必要があり、それに伴う運転員の精神的な負担やコスト増、更には原子炉周りの機器などの設計に与える影響も大きく安全性にも影響がでる可能性があるという課題があった。さらに、通常の沸騰水型原子力発電所では蒸気によるタービン駆動の給水ポンプと電動によるモータ駆動の給水ポンプがそれぞれ2台設置されており、これらがすべて停止するようなプラントの運転は給水がないためごく限られており、むしろ給水ポンプが減速運転している状態における水位制御の方が難しく運転員の負担が大きいにもかかわらず、本技術では解決できていないという課題があった。
【0009】
特許文献3に開示される発明では、特許文献2のように給水ポンプ停止時のみに配慮したものではなく、再循環ポンプランバック(減速運転)も配慮されているものの、主蒸気流量信号と給水流量信号を水位信号に換算するミスマッチゲインを、大きくして実際よりも水位の静定時間を短縮するものであるため、過渡現象を緩やかに解消するものではなく、いわば急激な変化で解消しようとするものであり、このことは予期していない事象が生じた場合には、運転員が対応する時間的かつ精神的な余裕を奪ってしまう可能性が高く、負担が大きく混乱を招くことでヒューマンエラーを引き起こす可能性もあり安全性にも影響が大きいという欠点があった。
【0010】
以下、新型の沸騰水型原子炉を例に用いて説明する。新型の沸騰水型原子炉では、これまでの特許文献1乃至3に開示された技術で採用されていた再循環ポンプは採用されておらず、原子炉内の底部にインターナルポンプが設置されている。また、原子炉給水流量制御に用いる流量制御器は比例動作と積分動作のみを用いており、微分動作を採用していないPI制御器である。
この新型の沸騰水型原子炉の運転においては、タービンがトリップしてタービン駆動の給水ポンプもトリップし、インターナルポンプがランバック運転されつつモータ駆動の給水ポンプのみが駆動している低出力運転モードが想定されているが、このような場合に、原子炉水位が上昇すると、従来の技術で述べたとおり、原子炉の上部に存在する構造物を保護すべく、水位を下げるように入力信号が流量制御器に入力される。その際に運転員は水位の低下を促進するために手動で原子炉浄化系(CUW)51のCUWダンプ弁57を開動作させる場合がある。このような場合、このCUWダンプ弁57が開動作されるので原子炉浄化系51の起動が許可されることになり、その許可信号7が原子炉給水制御系11に入力されることで、流量制御器が自動運転されている場合には、低出力運転モードから(原子炉の)起動モードへの変更がなされることになる。
このように起動モードへの変更があった場合、低出力運転モードとは相違するゲインへ切り替わる。特に比例動作のゲインが切り替わる際に、このゲインの変動によれば、一時的に出力信号が大きく変動する。そして、その出力信号は事象とは逆に水位を上昇させるように働く出力信号であり、運転員に大きな精神的な負担をかけてしまうとともに、安定的なプラント制御も困難となってしまう。
さらに、元々このゲインの相違(この場合は小さくなること)は運転員の手動動作に基づくものであり、自動運転では想定されていない事象であるので、このような事象まで含めて運転モードを検討して特許文献1のようにゲインに対応させるのは非常に困難である。
しかも、低出力運転時でタービン駆動の給水ポンプが停止し、またモータ駆動の給水ポンプが1台あるいは2台運転しているような小流量の給水を行っているような状況では給水ポンプに対する要求信号を出力するよりも、給水流量調節弁を制御する方が効率的かつ安定的であり、さらに、なるべく軽微な変更や改良で効果的な原子炉水位制御が求められるという課題もあった。
【0011】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、原子炉が低出力で運転されている過渡状態で、原子炉水位が上昇している場合に運転モードが変更され制御のためのゲインが変動してもより安全に運転員への負荷も低減可能であり、かつ既存の原子力制御システムに軽微な追加・改良で安定的な制御が可能な原子炉給水流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明である原子炉給水流量制御装置は、沸騰水型原子力発電所の原子炉の水位設定信号と水位信号の差分を入力信号とし、この入力信号を比例動作させた成分を生成する比例動作回路、前記入力信号を単位時間積分動作させた成分を生成する積分動作回路とを有し、前記入力信号を比例動作させた成分と前記単位時間積分動作させた成分を加算して出力信号を生成し、この出力信号で低出力運転中の給水流量調節弁の開度を制御する原子炉給水流量制御装置であって、前記原子炉の運転モード変更によって前記比例動作のためのゲインが減少変更される場合に、前記比例動作と前記積分動作のうち少なくとも前記比例動作による成分の前記出力信号への供給を遮断するスイッチを備えこのスイッチは前記比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間遮断させることを特徴とするものである。
上記構成の発明においては、低出力運転中で給水ポンプの制御が困難な状況で給水流量調節弁の開度を制御するように作用する。その際に、原子炉の水位設定信号と水位信号の差分が負値(水位設定信号<水位信号)の場合には水位を下げるように制御されるが、その際に運転モードの変更が重なる場合であって比例動作のためのゲインが減少変更される場合には、比例動作させた成分が増加となることで、水位を上げるように制御されることになってしまう。逆に、原子炉の水位設定信号と水位信号の差分が正値(水位設定信号>水位信号)の場合には水位を上げるように制御されるが、その際に運転モードの変更が重なる場合であって比例動作のためのゲインが減少変更される場合には、比例動作させた成分が減少となることで、水位を下げるように制御されることになってしまう。
そこで、請求項1に記載の発明では、そのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、少なくとも比例動作による成分の出力信号への供給を遮断させるように作用する。
【0013】
請求項2記載の発明である原子炉給水流量制御装置は、請求項1記載の原子炉給水流量制御装置であって、前記入力信号の回路を分岐点で分岐させ、一の分岐側には前記比例動作回路を、他の分岐側には前記積分動作回路を、並列に接続すると共に、前記比例動作回路と前記積分動作回路の下流側の合流点で接続して信号を加算し、その下流側に前記出力信号をフィードバックさせるフィードバック回路を接続して前記単位時間前の出力信号を加算し、前記比例動作のためのゲインの減少変更の指令信号を否定回路を介して前記分岐点よりも上流側又は前記合流点よりも下流側であって前記フィードバック回路との接続点よりも上流側に前記スイッチを設け、前記比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、前記比例動作成分と前記単位時間積分動作成分の前記出力信号への供給を前記スイッチによって遮断することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、比例動作回路が比例動作を行うように作用し、積分動作回路が単位時間の積分動作を行うように作用する。積分動作回路が単位時間の積分動作を行うため、その単位時間前までの積分動作の成分については、出力信号をフィードバックさせることで加算する。すなわち、フィードバック回路が、比例動作の成分と積分動作の成分をフィードバックさせるように作用している。また、比例動作回路及び積分動作回路が並列に接続されることが、入力信号に対して独立に比例動作成分及び積分動作成分をそれぞれ演算させるように作用する。
さらに、比例動作のためのゲインの減少変更の指令信号があった場合には否定回路はこの指令信号を否定するので、スイッチ信号は発生しない。従って、スイッチは、開いたままとなり分岐点より上流側に設置される場合は、入力信号は比例動作回路及び積分動作回路に入力されず、演算が停止されるように作用する。また、合流点より下流側であってフィードバック回路との接続点よりも上流側に設置される場合には、出力信号への出力が遮断されるように作用する。いずれにしても、比例動作成分と単位時間積分成分の出力信号への供給が遮断されるように作用するのである。なお、本願において、比例動作成分や単位時間積分成分の供給を「遮断する」とは、比例動作成分や単位時間積分成分の値が供給されない、あるいは「0」として供給されることを意味している。
従って、出力信号は、比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、単位時間前の出力信号がフィードバックされるのみとなり一定値となる。
【0014】
請求項3記載の発明である原子炉給水流量制御装置は、請求項2記載の原子炉給水流量制御装置であって、前記スイッチは、前記分岐点よりも上流側又は前記合流点よりも下流側であって前記フィードバック回路との接続点よりも上流側に代えて、前記分岐点から前記合流点までの比例動作回路の一部に設け、前記比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、前記比例動作成分の前記出力信号への供給を遮断することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項2記載の発明と同様に作用するが、スイッチが比例動作回路の一部に設けられることで、積分動作回路には入力信号が入力され、その単位時間積分動作成分は出力信号に加算されるように作用する。従って、出力信号は、比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、比例動作成分のみが出力信号への供給が遮断されるので、フィードバックされる単位時間前の出力信号には積分動作成分のみが含まれるので、漸減するようになる。
【0015】
請求項4記載の発明である原子炉給水流量制御装置は、請求項1記載の原子炉給水流量制御装置における積分動作回路が、前記入力信号を単位時間積分動作させた成分を,前記単位時間の前までに積分動作させた成分に加算して生成する積分動作回路であって、前記原子炉給水流量制御装置は、前記入力信号の回路を分岐点で分岐させ、一の分岐側には前記比例動作回路を、他の分岐側には前記積分動作回路を、並列に接続すると共に、前記比例動作回路と前記積分動作回路の下流側の合流点で接続して信号を加算し、前記比例動作のためのゲインの減少変更の指令信号を否定回路を介して前記分岐点から前記合流点までの比例動作回路の一部に前記スイッチを設け、前記比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、前記比例動作成分の前記出力信号への供給を前記スイッチによって遮断することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じように作用する。また、請求項2及び請求項3に記載の発明とは異なり、積分動作回路が単位時間積分動作成分を出力するのではなく、その単位時間前の単位時間までに積算された積分動作成分を含めて出力するように作用する。従って単位時間前の出力信号をフィードバックさせるためのフィードバック回路を必要としないのである。すなわち、積分動作回路自身にフィードバック機能を付加しているのである。このような構成では、比例動作回路のみを加算しないように遮断させればよいので、比例動作回路の一部にスイッチを設けている。なお、比例動作回路、積分動作回路、否定回路やスイッチの作用については、請求項2,3に記載されている作用と同様である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1記載の原子炉給水流量制御装置によれば、原子力制御システムの軽微な変更で低出力運転時の原子炉水位制御を給水流量調節弁の開度を制御することで効率的かつ安定的に行うことができる。また、過渡事象時の低出力運転時において、原子炉水位が上昇した際に、手動で原子炉浄化系のダンプ弁を開動作させることで起動モードに変更されたとしても、原子炉給水流量制御装置の出力信号が大きく変化することがないので、原子力発電所の運転員の精神的な負担を軽減することができ、ヒューマンエラーを防止してプラント運転の安全性を向上させることも可能である。
さらに、比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、比例動作成分と単位時間積分動作成分の出力信号への供給遮断という軽微な改良によって上記のような効果を発揮させることができるので、プラントに対する設計変更や改修などの負担を軽くすることが可能である。
【0017】
請求項2に記載の原子炉給水流量制御装置によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を発揮できるのとともに、積分動作回路で単位時間積分動作成分を演算することで、単位時間前の出力信号をフィードバック回路を設けて出力信号にフィードバックさせることで、比例動作回路と積分動作回路で生成される成分の出力信号への遮断を行った場合でも、比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、単位時間前の出力信号がフィードバックされるので出力信号を安定的に出力することができる。これによって運転員の精神的な負担を軽減可能な緩やかな制御を実行することができる。
また、スイッチによって比例動作回路と積分動作回路で生成される成分の出力信号への供給遮断を行なうことができる。
【0018】
請求項3に記載の原子炉給水流量制御装置によれば、請求項2に記載の発明と同様な効果を発揮することができることに加えて、スイッチを比例動作回路の一部に設けることで、比例動作成分のみを出力信号への供給を遮断することができる。従って、請求項2に記載の発明のように比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、出力信号が一定とはならないものの、漸減するので緩やかに安定した制御を行うことが可能である。
【0019】
請求項4に記載の原子炉給水流量制御装置によれば、積分動作回路が単位時間積分動作成分を出力するのではなく、その単位時間までの積分動作成分を含めて出力するので、請求項2,3に記載の発明のように、単位時間前の出力信号をフィードバックさせるためのフィードバック回路を設ける必要がない。
その他の効果は請求項2,3に記載される発明の効果と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る原子炉給水流量制御装置を説明するための概念図である。
図2】本発明の実施例1に係る原子炉給水流量制御装置の構成図である。
図3】従来技術における原子炉給水流量制御装置の入力信号、比例動作成分、積分動作成分及び出力信号を模式的に示す概念図である。
図4】本発明の実施の形態における原子炉給水流量制御装置の入力信号、比例動作成分、積分動作成分及び出力信号を模式的に示す概念図である。
図5】本発明の実施例2に係る原子炉給水流量制御装置の構成図である。
図6】本発明の実施例3に係る原子炉給水流量制御装置の構成図である。
図7】沸騰水型原子力発電所の原子炉の水位制御を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態に係る原子炉給水流量制御装置について実施例1乃至実施例3を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1に係る原子炉給水流量制御装置について図1乃至図4を参照しながら詳細に説明する。(特に、請求項1,2に対応)
図1は実施例1乃至3に共通する本発明の実施の形態に係る原子炉給水流量制御装置を説明するための概念図である。図7で説明した構成要素と同一のものについては同一符号を付している。
図1において、本発明の実施の形態に係る原子炉給水流量制御装置1に対しては、水位信号2(減算)と水位設定信号3(加算)の差分が入力信号Xとして入力される。今回の発明に係る原子炉給水流量制御装置1が対象としている事象は、原子炉50(図7参照)が低出力での運転状態であり、原子炉水位の制御は原子炉給水ポンプ52の下流側の給水流量調節弁4により制御している。
従って、原子炉給水流量制御装置1からの出力信号Yは給水流量調節弁4に対して出力されている。
今回の発明では、このような低出力運転時に原子炉水位が上昇している状態で、運転員が原子炉浄化系51(図7参照)のCUWダンプ弁57を開動作させて水位を下げる場合を想定しているが、その際には起動モード変更論理回路6が働き、原子炉給水流量制御装置1に対して起動モード変更信号5が出力される。この起動モード変更信号5によって原子力プラントの運転モードが低出力運転モードから起動モードに変更されるのである。
この起動モードに変更されるためには、図中の起動モード変更論理回路6に示されるとおり、給水流量低、主蒸気流量低、原子炉浄化系(CUW)起動許可、電動給水ポンプ1台以上運転、給水流量調節弁(LFCV)開度小、制御器自動運転などの運転状態信号7を入力することで出力される起動モード変更信号5が必要となる。なお、起動モード変更論理回路6中に示される符号8は否定回路、符号9a,9bは論理積回路、符号10は論理和回路である。
【0023】
次に、図2を参照しながら、低出力運転モードから起動モードへ変更された場合に本発明の実施例1に係る原子炉給水流量制御装置1の動作について説明する。図2は本発明の実施の形態の実施例1に係る原子炉給水流量制御装置の構成図である。
図2において、原子炉給水制御系11(図7参照)に含められる原子炉給水流量制御装置1は、起動モード変更論理回路6を備えた運転モード変更部12から出力される起動モード変更信号5をゲイン変更部13で受信して、ゲイン変更部13はゲイン変更要求信号19を出力する。
原子炉給水流量制御装置1に備えられているPI制御装置14aは、入力信号回路21が分岐点23で比例動作回路17と積分動作回路18に分岐され、再び合流点24で合流して、そこから出力信号回路25を形成している。また、出力信号回路25は、フィードバック分岐点27で分岐して接続点26に合流するフィードバック回路28を備えている。なお、本願では、比例動作回路17と積分動作回路18はそれぞれ内部の論理回路のみならず、分岐点23から合流点24までのライン(配線)をも含む概念である。
さらに、PI制御装置14aは比例動作回路17と積分動作回路18の合流点24から接続点26までの出力信号回路25にスイッチ22を備えており、このスイッチ22は前述のゲイン変更要求信号19がタイマー回路15によって一定時間(Δt)出力されるように作用して、さらに否定回路16によってゲイン変更要求信号19が存在していない場合には信号が発生するので、低出力運転モードから起動モードへ変更されていない場合には、スイッチ22は入ったままとなって入力信号Xが比例動作回路17と積分動作回路18で演算された動作成分は出力信号Yに含まれるようになる。
【0024】
一方、低出力運転モードから起動モードへ変更された場合には、否定回路16から信号が送信されないのでスイッチ22が解除された状態となり、入力信号Xは比例動作回路17と積分動作回路18に入力され演算されるものの出力信号Yとして接続点26まで届くことがない。
このように構成される本実施例1に係る原子炉給水流量制御装置1の比例動作回路17と積分動作回路18における動作について説明する。
まず、低出力運転モードの場合には、比例動作回路17では、ゲイン変更部13からゲイン信号20を受けて、式(1)で示されるように入力信号XとゲインGの積の差分、すなわち、入力信号XとゲインGの積に関する今回値と単位時間(1演算周期)前の前回値の差分を演算して出力信号Ypとする。すなわち、比例動作回路は単位時間毎の変化として入力信号Xとの間で演算される。従って、単位時間毎に繰り返し演算される出力信号Ypは、合流点24で常に加算されるのではなく、比例動作演算に変化が生じた場合にのみ加算されるのである。
【0025】
【数1】
【0026】
また、積分動作回路18では、同じくゲイン信号20を受けて式(2)で示されるように入力信号Xを単位時間(1演算周期)積分演算して出力信号Yiとする。なお、式(2)中のtは時間の変数を表している。また、式(2)では、積分値を積分時間TIで除することで単位時間の積分演算値を演算している。
【0027】
【数2】
【0028】
なお、出力信号回路25は前述の通りフィードバック分岐点27から接続点26にフィードバック回路28を備えているので、このフィードバック回路28でフィードバックされる信号を先行信号Fとすれば、出力信号Yは、式(3)で表現される。なお、この先行信号Fは、単位時間(1演算周期)前の出力信号Yであり、出力信号Yは、単位時間(1演算周期)毎にYpとYiの増分が生じていることになる。
【0029】
【数3】
【0030】
一方、低出力運転モードから起動モードへ運転モードが変更された場合には、ゲイン変更要求信号19がタイマー回路15によって一定時間、例えば200msec〜300msec程度出力されるので、その開始から終了までの時間、否定回路16によってゲイン変更要求信号19が停止してスイッチ22は解除される。従って、入力信号Xが比例動作回路17及び積分動作回路18に入力されそれぞれ動作成分の演算がなされるがスイッチ22で遮断され、最終的には比例動作回路17及び積分動作回路18による動作成分の出力信号Yへの供給は遮断されることになる。
すなわち、比例動作回路17の出力信号であるYpと積分動作回路18の出力信号であるYiのいずれも0となり、結局フィードバックの先行信号のFのみとなり、Y=Fとなる。
なお、本実施例1ではスイッチ22が比例動作回路17と積分動作回路18の合流点24から出力信号回路25とフィードバック回路28の接続点26の間に設けられているが、スイッチ22は入力信号回路21に設けられてもよい。この場合は入力信号Xに対して比例動作回路17及び積分動作回路18でそれぞれの動作成分は演算されないので、この場合も比例動作回路17及び積分動作回路18による動作成分の出力信号Yへの供給はないことになる。すなわち、YpとYiのいずれも0とみなしてよく、結局Y=Fとなる。
但し、スイッチ22を入力信号回路21に設ける場合には、比例動作回路17と積分動作回路18の入力側で入力信号Xが断たれるので、スイッチ22のオンオフによって、比例動作回路17や積分動作回路18に対する入力信号Xがステップ的に変化してしまい、式(1)、(2)で表現されるYp、Yiも影響を受けることになるので、この場合にはこのステップ入力が正規のステップ入力かモード切替に伴う変化かを認識して処理を変更する必要がある。
【0031】
次に、実施例1に係る原子炉給水流量制御装置1がどのような効果を発揮することができるかについて、図3及び図4を比較参照しながら説明する。図3は従来技術における原子炉給水流量制御装置の入力信号、比例動作成分、積分動作成分及び出力信号を模式的に示す概念図であり、図4は本発明の実施例1における原子炉給水流量制御装置の入力信号、比例動作成分、積分動作成分及び出力信号を模式的に示す概念図である。
図3、4において、縦に示される点線は時間的なタイミングを示しており、時刻t1は通常運転モード時、時刻t2は通常運転モードから低出力運転モードへのモード変更時、時刻t3は低出力運転モードから起動モードへのモード変更時を示している。
また、図3,4中のそれぞれ4本の線図は、符号40は入力信号、符号41は比例動作回路17で演算される比例動作成分の積分値、符号42は積分動作回路18で演算される積分動作成分、符号43a,43bは出力信号の経時変化を示すものである。入力信号40、比例動作成分41、積分動作成分42はいずれも同じであるが、出力信号43a,43bが従来技術と本実施例では相違している。
入力信号40は通常運転モード時では、水位は水位設定に対して安定していると仮定すると、それらの信号の差分は生じることなく0%で推移することになる。また、この通常運転モード時のゲインが「g0」であったとしても、入力信号40が0の場合には、式(1)、(2)から理解されるように、比例動作回路17や積分動作回路18における比例動作成分41や積分動作成分42も0%となり、結局出力信号43aも0%で維持されることになる。
【0032】
一方、時刻t2になると、運転状態に対するゲインを何らかの原因で原子炉が過渡状態となり低出力運転モードとなる。また、その際に原子炉水位が上昇すると、水位に対して水位設定が低くなるので、入力信号40は「−a」(負値)となる。低出力運転時のゲインを比例動作回路17では「g1」、積分動作回路18では「g2」(式(2)においてg2=1/TI、以下同様)とすると、それぞれ図3,4に示すとおり、時刻t2から時刻t3まででは比例動作成分41は0%から「−a*(g1−g0)」、積分動作成分42は「−a*g2*t」となる。ここでのtも時間の変数である。ところが、出力信号43aがあまり大きく変動することを避けるためにリミッタが働くため、出力信号43aは「−b」(但し、b<a*g1)となる。
【0033】
さらに、時刻t3になると、運転モードが低出力運転モードから起動モードとなる。起動モードでは、さらにゲインが変動して比例動作回路17では「g3」、積分動作回路18では「g4」になるとする。その場合、それぞれ図3,4に示すとおり、比例動作成分41は「−a*(g3−g1)」(但し、g3<g1)、積分動作成分42は「−a*g4*t」(但し、g4<g3)となる。
この場合積分動作成分42は、入力信号40は不変で「−a」であるものの、ゲインが小さくなったことから時刻t2における値を基準に考えるとあたかも水位を上昇させるような方向に振れたように見える。この場合、リミッタは効かないため、従来技術の場合では、出力信号43aは「c1」(正値、c1=−b+a*(g1−g3))となってしまい、水位を上昇させようとする出力信号43aが生成されるのである。なお、a,b,c,g0〜g4はすべて定数であり、本実施例では、c1>bとなっている。なお、リミッタの値は、低出力運転モードから起動モードに運転モードが変化すると「−b」よりも低くリミッタ値が変更されるので、「c1」から低下する出力信号43aは、低出力運転モード時のリミッタ値「−b」を超えて低下する場合もある。
【0034】
これに対して実施例1の出力信号43bは、図2を参照して説明したとおり、Δtの間はスイッチ22が遮断状態となるため、入力信号40が比例動作回路17と積分動作回路18に供給されて動作成分を演算しても、比例動作回路17及び積分動作回路18による動作成分の出力信号43bへの供給は接続点26までに消滅してしまい、出力信号43bへの供給が遮断され(供給が0となり)、結局先行成分Fのみが出力信号43bの成分となり、図4中の点線で描かれる円内を符号Aで示すとおり、時刻t2から時刻t3までの成分を踏襲することになる。すなわち、「−b」が維持される。
時刻t3からΔt後は、ゲイン変更要求信号19が停止されて存在していない状態になるので、否定回路16で否定されて信号が発生し、スイッチ22は入った状態が維持され入力信号Xが比例動作回路17と積分動作回路18で演算された比例動作成分41と積分動作成分42は再度出力信号43bに含まれるようになる。
その際には、比例動作成分41ではゲインの変化が終了しており、単位時間の演算前後で起動モードのゲインとなっていることから比例動作成分41の値として出力信号43bに与える変化がなく(すなわち、Yp=0)、積分動作成分42によって得られる緩やかな変化が先行信号F(図中の−b)と相まって出力信号43bとして出力されることになる。すなわち、出力信号43bは「c2」(c2=−b−a*g4*t)となる。
なお、図4においても起動モード時のリミッタの値は、「−b」よりも低く変更されるので、起動モードでの「c2」は、「−b」を超えて低下することが可能である。
【0035】
このように本実施例1では、運転モードが低出力運転モードから起動モードへ変更される際のゲインが減少変更される場合には、比例動作のためのゲインの減少変更の開始から終了までの時間、合流点24から接続点26の間の出力信号回路25上に設けられたスイッチ22を用いて比例動作回路17と積分動作回路18からの出力信号Yp,Yiを遮断して出力信号Yへ含まれないようにすることができ、その結果、先行信号Fのみをフィードバック回路28を用いて出力信号Yの成分として、出力信号Yが急激に正値で大きな値となることを防止することができる。Δtの時間後も緩やかに減少する出力信号を維持することが可能である。
従って、原子力プラントにおける過渡事象中の低出力運転時において、原子炉水位が上昇した際に、手動で原子炉浄化系のダンプ弁を開動作させることで起動モードに変更されたとしても、急激に水位を上昇させるような制御状態となることを防止することができる。このことから運転員に対して精神的な負担をかけることがなく、精神的な余裕からヒューマンエラーを引き起こす可能性が少ないので、原子炉の運転維持が可能となる。また、過渡時の低出力運転時においても原子炉内の構造物に対して適切な原子炉水位を保持することができるので、より安全なプラント運転が可能であるという優れた効果を有している。
【実施例2】
【0036】
次に本発明の実施例2に係る原子炉給水流量制御装置について図5を参照しながら説明する。(特に、請求項1,3に対応)
図5は本発明の実施例2に係る原子炉給水流量制御装置の構成図であるが、本図において図2と同一の構成要素には同一符号を付してその構成についての説明は省略する。
図5において、実施例2に係る原子炉給水流量制御装置1では、実施例1で出力信号回路25に設けられたスイッチ22を比例動作回路17の論理回路の下流側のラインで合流点24までの位置に設けたものであり、それ以外の構成は実施例1と同様である。
このように構成される実施例2においては、実施例1と同様に、低出力運転モードから起動モードへの運転モード変更時にゲイン変更部13から出力されるゲイン変更要求信号19が、否定回路16によって否定されるため、否定回路16から信号が送信されないのでスイッチ22が解除された状態となり、入力信号Xは比例動作回路17と積分動作回路18に入力され演算されるものの比例動作回路17の出力信号Ypは遮断され、合流点24で加算されず、積分動作回路18の出力信号Yiのみ、接続点26で先行信号Fと加算されて、出力信号Yとして出力されることになる。
なお、本実施例2では論理回路の下流側の合流点24までの位置にスイッチ22を設けたが、論理回路の上流側の分岐点23の位置までにスイッチ22を設けても同様の効果が得られる。
このような実施例2では、図4に示される入力信号40、比例動作成分41、積分動作成分42は同様であるが、実施例1では時刻t3の出力信号43bが「−b」であったのに対し、実施例2では積分動作成分42は遮断されず、先行信号Fと加算されるため、「−b−a*g4*t」となり、緩やかな傾斜が実施例1に比較してΔtだけ早めに始まるが、この実施例2においても実施例1の優れた効果は発揮されることが容易に理解される。この場合においても起動モード時のリミッタ値は、「−b」よりも低く変更されるので、起動モードでの「c2」は、「−b」を超えて低下することが可能である。
【実施例3】
【0037】
最後に本発明の実施例3に係る原子炉給水流量制御装置について図6を参照しながら説明する。(特に、請求項1,4に対応)
図6は本発明の実施例3に係る原子炉給水流量制御装置の構成図であるが、本図において図3と同一の構成要素には同一符号を付してその構成についての説明は省略する。
図6において、実施例3に係る原子炉給水流量制御装置1では、実施例2でフィードバック分岐点27から分岐されて設けられていたフィードバック回路28を削除したものであり、それ以外の構成は実施例2と同様である。
この実施例3では、フィードバック回路28を設ける代わりに、積分動作回路18にフィードバック機能を備えたものである。すなわち、積分動作回路18の出力信号Yiとして、式(4)で示されるように単位時間(1演算周期)における積分値をそのまま先行信号Fとして前回計算に加算するようにしたものである。但し、この式(4)におけるFYiは、式(3)におけるFが出力信号Yの先行信号であったのに対して、積分動作回路18の出力信号Yiの先行信号である点で異なる。この場合、出力信号Yは、式(5)のように表現できる。
【0038】
【数4】
【数5】
【0039】
このように構成される実施例3では、実施例2のように比例動作回路17の回路の一部にスイッチ22を設けることで、スイッチ22によって遮断される信号が比例動作回路17からの出力信号Yp分であることから、出力信号Yは、先行信号FYiを含んだYiとなる。この場合、積分動作回路18の出力信号Yiに含まれる先行信号FYiは、式(3)における先行信号Fとは定義は異なるものの、ステップ状に変化する比例動作回路17の出力信号Ypが遮断されるため、実質的に同等として考えることができる。
すなわち、本実施例3における図4の出力信号43bの線図は実施例2と同様に表現できる。従って、本実施例3は実施例2と同様の効果を発揮することが可能である。
なお、本願では実施例1−3として、原子炉の水位設定信号と水位信号の差分が負値(水位設定信号<水位信号)の場合について説明したが、逆に、原子炉の水位設定信号と水位信号の差分が正値(水位設定信号>水位信号)の場合でも、同様に実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明は、沸騰水型原子力発電所の原子炉給水制御系の原子炉給水流量制御装置の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…原子炉給水流量制御装置 2…水位信号 3…水位設定信号 4…給水流量調節弁 5…起動モード変更信号 6…起動モード変更論理回路 7…運転状態信号 8…否定回路 9a,9b…論理積回路 10…論理和回路 11…原子炉給水制御系 12…運転モード変更部 13…ゲイン変更部 14a,〜14c…PI制御装置 15…タイマー回路 16…否定回路 17…比例動作回路 18…積分動作回路 19…ゲイン変更要求信号 20…ゲイン信号 21…入力信号回路 22…スイッチ 23…分岐点 24…合流点 25…出力信号回路 26…接続点 27…フィードバック分岐点 28…フィードバック回路 40…入力信号 41…比例動作成分 42…積分動作成分 43a,43b…出力信号 50…原子炉 51…原子炉浄化系 52…給水ポンプ 53…給水配管 54…給水流量計 55…主蒸気流量計 56…主蒸気配管 57…CUWダンプ弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7