【実施例】
【0028】
図1は本発明の電動湿式微粒化装置の一実施例の構成を示す構成図である。
図1に示す通り、本実施例の電動湿式微粒化装置10は、駆動源として中空サーボモータ1と、この中空サーボモータ1の正逆回転運動を往復運動に変換する動力伝達機構として高効率ネジ機構のローラーネジ機構5と、このローラーネジ機構5により高圧シリンダ6内を往復運動するプランジャ8と、前記プランジャ8の往復運動を制御する駆動制御手段としてのシーケンサ14及びサーボアンプ15とを備え、前記プランジャ8の往復運動により液体吸引口11から高圧シリンダ6内に液体原料を吸入し加圧して吐出口12から吐出する。
【0029】
中空サーボモータ1の仕様は、駆動電圧100V,駆動電流15A,駆動出力1.5kWである。動力伝達機構として、ローラーネジ機構5を採用しているため、動力の伝達効率が高まり、100Vで駆動される中空サーボモータ1でも、高圧力の出力が得られる。
【0030】
詳しくは、ローラーネジ機構5は、同じ高効率ネジ機構のボールネジ機構と比較しても動力の伝達効率が高く、100Vで駆動される中空サーボモータ1でも、最高圧力が245MPaの高圧力の出力が得られる。尚、最高圧力が245MPaを必要としないのならば、ローラーネジ機構5に変えて同じ高効率ネジ機構であるボールネジ機構を採用しても良いことは言うまでもない。
【0031】
また、中空サーボモータ1は、ロータの中空部2内に配設された前記ネジ機構のナット部3を正逆回転させ、この中空部を貫通するネジシャフト部4を前記ナット部3の回転軸方向に前進・後退させるモータである。これにより、小型化のために力のロスが多い2軸をタイミングベルトで連結する機構を採用せずとも、設置面積を縮小させることができ、より力の伝達が良好で尚且つ小型化を達成することができた。
【0032】
本実施例の電動湿式微粒化装置10はプランジャ8の往復運動により高圧シリンダ6内に液体吸引口11よりシリンダ6内に液体原料を吸入し加圧して吐出口12から吐出するが、プランジャ8の往復運動はプランジャ8の先端が昇圧前進端位置と昇圧後退端位置との間を往復運動することにより行われる。なお、本実施例におけるプランジャ8の直径は8〜30mmとすることが好ましい。
【0033】
これは、ローラーネジ機構5の昇圧後退端位置のネジシャフト部4の後端部を、原点位置検知センサ9が認識し、操作盤16に連絡したシーケンサ14に検知信号を発し、この検知信号によって原点位置を確定し、ネジシャフト部4の回転角度を検知するレゾルバ13の回転角度を検知してプランジャ8の先端部の位置を検知する。プランジャ8の先端部の位置が予め定められた昇圧前進端位置に達したことを検知した場合に、電源17に連絡されたサーボアンプ15によって中空サーボモータ1の回転を逆転させる指令が発せられる。
【0034】
即ち、中空サーボモータ1の回転によりローラーネジ機構のナット部3を駆動し、ネジシャフト部4を高圧シリンダ6方向に前進させる。これにより、高圧シリンダ6内部の液体原料がプランジャ8によって加圧され、高圧シリンダ6の先端部の吐出口12から吐出される。プランジャ8の先端部の位置が、レゾルバ13の検知から昇圧前進端位置に達することが判断された場合に中空サーボモータ1の回転を停止させ、引き続き回転を反転させる。この時、プランジャ8の先端面は高圧シリンダ6の先端部面には到達しない手前の距離に設計されている。
【0035】
反転駆動された中空サーボモータ1によってナット部3が反回転する。これに伴い、高圧シリンダ6内をプランジャ8が後退する。これにより、高圧シリンダ6内に液体吸引口11より逆止弁を解除しつつ高圧シリンダ6内に液体原料が吸入される。プランジャ8の先端部の位置がレゾルバ13の検知によって昇圧後退端位置に達したと判断された場合、中空サーボモータ1の回転を停止させ、反転駆動から正転駆動に反転させる。
【0036】
上述のような加圧・吐出工程及び吸引工程とを繰り返す。詳しくは、昇圧・前進端から1ストローク分後退した位置の間で前進・後退を繰り返すことにより吸引・昇圧を行う。後退スピードは一定(約40mm/s)、前進スピードは操作盤16のタッチパネルにて設定・変更可能である。その前進スピードで昇圧圧力の設定を行う。
【0037】
本実施例においては、原料替えや洗浄時に、コンタミネーションを防止するために、高圧シリンダ6の後端部に配された
高圧パッキンシール材7を取り外して、洗浄又は交換する必要がある。この際には、プランジャ8がレゾルバ13の検知によって分解最後端に達したと判断されて、中空サーボモータ1の駆動を終了させた状態で、分解時モードに移行させる。
【0038】
分解最後端部では、ネジシャフト部4の先端に接続されたプランジャ8の先端が
高圧パッキンシール材7から外れる状態となる。この状態まで後退させた後に高圧シリンダ6を取り外し、洗浄又は交換する。これにより、容易に高圧シリンダ6を洗浄又は交換することが可能となる。
【0039】
図2は
図1の電動湿式微粒化装置の仕様による吸引・加圧吐出の繰り返しによる圧力波形の模式図である。
図2に示す通り、昇圧後退端位置のプランジャ8を約1〜5秒で前進させ、245MPaの高圧力を得る。プランジャ8が昇圧前進端位置に到達するとプランジャ8の前進が停止され、約2秒を掛けて後退させる。このようにプランジャ8の前進・後退を繰り返して液体原料の解砕、分散を行う。
【0040】
本実施例の電動湿式微粒化装置の噴射圧力を中空サーボモータの負荷から測定できるか否かの検証を行った。
図3は
図1の電動湿式微粒化装置の吸引・加圧吐出の繰り返しによる電圧出力値の計測結果を示す線図である。
図3に示す通り、中空サーボモータ1の電圧出力値を検証すると、電圧がプラスの領域ではプランジャ8が後退している状態であり、電圧がマイナスの領域ではプランジャ8が前進している状態であることが検証され、
図3においては、マイナス領域の電圧が最低の状態の時に、シリンダ6内の圧力が最高であることが検証された。
【0041】
したがって、噴射圧力はモータ負荷の電流値又は電圧値から求めればよいことが判る。
図4は
図1の電動湿式微粒化装置の吸引・加圧吐出の繰り返しによる圧力値の計測結果を示す線図である。
図4においては、プランジャ8が前進開始直後に最高圧(約124MPa)に達することが検証された。
【0042】
そこで、同一の電動湿式微粒化装置でプランジャ8の前進速度を変更させた場合の昇圧時最高圧力とその時の電流値を幾つか計測した結果が
図5である。
図5に示す通り、電動湿式微粒化装置の電流値と噴射圧力の関係は、一定の範囲で比例関係が得られていることが検証された。なお、プランジャ径やノズル径のそれぞれの組み合わせによっても特定の比例関係が得られた。
【0043】
また、
図4で使用したプランジャ径の大きさよりも約80%小さいプランジャを使用した場合の圧力値の計測結果を
図6に示す。この結果では、最高圧約185MPaを示している。このように、プランジャ径を変更することで、最高圧を適宜設定することが可能である。さらに、
図6で使用したプランジャ径よりも更に85%小さいプランジャを使用すると、最高圧245MPaになる。
【0044】
なお、本発明は100V電源で使用できる電動湿式微粒化装置であるが、200V電源であっても同様に使用できる。