特許第6045372号(P6045372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045372
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】電動湿式微粒化装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/06 20060101AFI20161206BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20161206BHJP
   B01F 5/12 20060101ALI20161206BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B01F5/06
   B01F3/08 Z
   B01F5/12
   F16H25/20
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-14856(P2013-14856)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-144434(P2014-144434A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】北村 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】秋元 亮一
(72)【発明者】
【氏名】原島 謙一
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−5558(JP,A)
【文献】 特開2012−209991(JP,A)
【文献】 特開2007−144250(JP,A)
【文献】 特表2002−506954(JP,A)
【文献】 特許第2897915(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 5/06
B01F 3/08
B01F 5/12
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を駆動源としてこの駆動源の正逆回転運動を往復運動に変換する動力伝達機構と、
この動力伝達機構によりシリンダ内を往復運動するプランジャと、
前記プランジャの往復運動を制御する駆動制御手段とを備え、
前記プランジャの往復運動によりシリンダ内に液体原料を吸入し加圧して吐出する湿式微粒化装置であって、
前記動力伝達機構が、
正逆回転運動を行うナット部と、
このナット部の回転運動を往復運動に変換するネジシャフト部と、
これらの間に介される複数の転動体と
を備えた高効率ネジ機構であり、
前記駆動源は、
ロータの中空部内に配設された前記ネジ機構のナット部を正逆回転させ、
この中空部を貫通するネジシャフト部を介して前記プランジャを前記ナット部の回転軸方向に前進・後退させる中空サーボモータであり、
前記高効率ネジ機構のネジシャフト部の回転角度を検知して前記プランジャの現在位置を検知する回転角度検知センサを更に備え、
前記回転角度検知センサが、前記プランジャの予め定められた昇圧前進端位置と昇圧後退端位置とを検知したとき、前記中空サーボモータの回転方向を切換えて前記シリンダ内に液体原料を吸入し加圧して吐出させることを特徴とする電動湿式微粒化装置。
【請求項2】
前記高効率ネジ機構が、前記転動体をローラ状としたローラーネジ機構であることを特徴とする請求項1に記載の電動湿式微粒化装置。
【請求項3】
前記プランジャが出入りするシリンダ後端部に高圧パッキンシール材が配設され、
前記プランジャの駆動最後端位置を、プランジャ先端が前記高圧パッキンシール材から外れる位置としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動湿式微粒化装置。
【請求項4】
前記プランジャの昇圧後退端位置を原点として検知する原点位置検知センサを更に備え、
前記駆動制御手段が、前記プランジャの往復運動開始前に前記原点位置検知センサにより検知された位置を原点とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電動湿式微粒化装置。
【請求項5】
前記駆動源は電圧100Vで駆動する電動機であり、最高圧力245MPaで前記液体原料を加圧して吐出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電動湿式微粒化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、100Vの一般的な交流電圧でも使用可能な小型の電動湿式微粒化装置に関し、原料替えや洗浄時に高圧パッキン等を容易に取り外すことの可能な電動湿式微粒化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿式微粒化装置は、ウォータージェットにより、原料を245MPaもの高圧に加圧し、噴射口径0.05〜0.5mmの微細ノズルから高速噴射させることによって、噴射の際の粒子同士または硬質部材への衝突やノズル通過及び対向流により生じる剪断力、また噴流キャビテーションによる衝撃力で、主に1次粒子が集まってなる2次凝集粒子の解砕、分散を行うものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような湿式微粒化装置においては、245MPaもの高圧を得るためには、従来より油圧駆動を用いたブースタータイプ(増圧タイプ)が用いられているが、医薬品製造及び精密電子部品製造等の製造においては、汚染防止のため、駆動油を使用する雰囲気自体を嫌う傾向にあった。このような微粒化装置としては、モータを駆動源とし、小型化を目指した微粒化装置も既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3151706号公報
【特許文献2】特許第2897915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油圧駆動等の電源には、通常工場電源200Vを使用しているが、簡易実験室では、200V電源がない場合があり、使用に際しては200V電源を新たに設置する必要があった。100V電源で駆動できれば、研究用途で使われることが多い微粒化装置の実験機を設置することが容易となる。
【0006】
更に、モータの回転駆動からプランジャの直動への変換機構には、ボールネジを使用したり、モータとプランジャを平行に配置し、タイミングベルトで連結しているものもある。例えば、実験機で装置構成部品が小型の場合、ボールネジの許容トルク、許容推力が小さくなる課題があった。尚、2軸をタイミングベルトで連結すると、設置面積が大きくなり、また、動力の伝達効率も悪くなるという課題もあった。
【0007】
また、高圧シール用パッキンは原料替えや洗浄時に交換しなければならないが、高圧シール用パッキンはプランジャ、高圧シリンダに強固に組み込まれているため、これらの分解・交換作業は困難であった。
【0008】
加えて、パッキンの組み込まれた高圧シリンダをプランジャから引き抜く場合、高圧シリンダをハンマで抜く側にたたくか、専用の引き抜き治具を使用しなければならないため、シリンダを引き抜く際にプランジャが損傷する恐れもあった。
【0009】
本発明は、これら従来の不都合を解消し、小型タイプの電動式湿式微粒化装置を提供する。
即ち、油圧駆動ではなく電動機を駆動源とし、小型で、100Vの電源で簡易実験室等でも使用でき、また、シリンダ内部に組み込まれている高圧パッキンシール材の交換作業を容易とする電動式湿式微粒化装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明に係る電動湿式微粒化装置は、電動機を駆動源としてこの駆動源の正逆回転運動を往復運動に変換する動力伝達機構と、この動力伝達機構によりシリンダ内を往復運動するプランジャと、前記プランジャの往復運動を制御する駆動制御手段とを備え、前記プランジャの往復運動によりシリンダ内に液体原料を吸入し加圧して吐出する湿式微粒化装置であって、
前記動力伝達機構が、正逆回転運動を行うナット部と、このナット部の回転運動を往復運動に変換するネジシャフト部と、これらの間に介される複数の転動体とを備えた高効率ネジ機構であり、
前記駆動源は、ロータの中空部内に配設された前記ネジ機構のナット部を正逆回転させ、この中空部を貫通するネジシャフト部を介して前記プランジャを前記ナット部の回転軸方向に前進・後退させる中空サーボモータであり、
前記高効率ネジ機構のネジシャフト部の回転角度を検知して前記プランジャの現在位置を検知する回転角度検知センサを更に備え、
前記回転角度検知センサが、前記プランジャの予め定められた昇圧前進端位置と昇圧後退端位置とを検知したとき、前記中空サーボモータの回転方向を切換えて前記シリンダ内に液体原料を吸入し加圧して吐出させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載された発明に係る電動湿式微粒化装置は、請求項1に記載の高効率ネジ機構が、前記転動体をローラ状としたローラーネジ機構であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明に係る電動湿式微粒化装置は、請求項1又は2に記載のプランジャが出入りするシリンダ後端部に高圧パッキンシール材が配設され、
前記プランジャの駆動最後端位置を、プランジャ先端が前記高圧パッキンシール材から外れる位置としたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載された発明に係る電動湿式微粒化装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載のプランジャの昇圧後退端位置を原点として検知する原点位置検知センサを更に備え、前記駆動制御手段が、前記プランジャの往復運動開始前に前記原点位置検知センサにより検知された位置を原点とすることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載された発明に係る電動湿式微粒化装置は、請求項1〜4の何れか1項に記載の電動湿式微粒化装置であって、前記駆動源は電圧100Vで駆動する電動機であり、最高圧力245MPaで前記液体原料を加圧して吐出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、油圧駆動ではなく電動機を駆動源とし、小型で、100Vの電源で簡易実験室等でも使用でき、また、シリンダ内部に組み込まれている高圧パッキンシール材の交換作業を容易とする電動式湿式微粒化装置を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の電動湿式微粒化装置の一実施例の構成を示す構成図である。
図2図1の電動湿式微粒化装置の仕様による吸引・加圧吐出の繰り返しによる圧力波形の模式図である。
図3図1の電動湿式微粒化装置の吸引・加圧吐出の繰り返しによる電圧出力値の計測結果を示す線図である。
図4図1の電動湿式微粒化装置の吸引・加圧吐出の繰り返しによる圧力値の計測結果を示す線図である。
図5図1の電動湿式微粒化装置の電流値と噴射圧力の関係の例である。
図6】実施例の電動湿式微粒化装置のプランジャ径を小さくした場合の吸引・加圧吐出の繰り返しによる圧力値の計測結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、電動機を駆動源としてこの駆動源の正逆回転運動を往復運動に変換する動力伝達機構と、この動力伝達機構によりシリンダ内を往復運動するプランジャと、前記プランジャの往復運動を制御する駆動制御手段とを備え、前記プランジャの往復運動によりシリンダ内に液体原料を吸入し加圧して吐出する湿式微粒化装置であって、
前記動力伝達機構が、正逆回転運動を行うナット部と、このナット部の回転運動を往復運動に変換するネジシャフト部と、これらの間に介される複数の転動体とを備えた高効率ネジ機構であり、
前記駆動源は、ロータの中空部内に配設された前記ネジ機構のナット部を正逆回転させ、この中空部を貫通するネジシャフト部を介して前記プランジャを前記ナット部の回転軸方向に前進・後退させる中空サーボモータである。このため、油圧駆動ではなく電動機を駆動源とし、小型で、100Vの電源で簡易実験室等でも使用できる。
【0018】
即ち、一次駆動源を油圧ではなく、電動モータ(サーボモータ)としたため、医薬品製造や精密電子部品製造においても、油圧の駆動油による汚染防止を配慮することが不要となる。また、動力伝達機構を採用すること、特に好ましくは高効率ネジ機構を採用することにより、100Vの一般電源で最高圧力245MPaまでの高圧力の出力が得られるようにした。このため、200V電源がない駆動場所、特に簡易的な実験室等においても、設置が容易となる利点がある。また、動力伝達機構として高効率ネジ機構を設けることにより、動力効率を上げることができる。
【0019】
尚、動力伝達機構としては、例えば、2軸をタイミングベルトで連結すること等が想定されるが、設置面積が大きくなり、また、動力の伝達効率も悪くなるため、ボールネジ機構及びローラーネジ機構等の高効率ネジ機構が好適となり、転動体をローラ状としたローラーネジ機構がより好適である。
【0020】
詳しくは、実験機で装置構成部品が小型の場合には、ボールネジ機構においては、許容トルク、許容推力が小さくなる。小型で必要なトルク、必要な推力を満たすためローラーネジ機構を用いた。具体的には、ローラーネジ機構を中空サーボモータの内部に取り付け、ローラーネジ機構のナット部をモータ内部で回転させ、ネジシャフト部(シャフト)を前進・後退するようにした。
【0021】
加えて、本発明においては、駆動源として中空サーボモータを採用している。この中空サーボモータは中空部を内部に備えた内円筒を回転させており、その内部に取り付けたローラーネジのナット部を回転させることで、中心のネジシャフト部が前進後退する。ネジシャフト部の軸に高圧発生のプランジャを結合することで、高圧発生の前後運動に切り替わる。
【0022】
本発明では、プランジャが出入りするシリンダ後端部に高圧パッキンシール材が配設され、プランジャの駆動最後端位置をプランジャ先端が前記高圧パッキンシール材から外れる位置とすることにより、高圧シール用パッキンの交換に際しては、駆動制御手段によりプランジャを駆動最後端位置(=分解最後端)に移動させることで、プランジャとシリンダを分離することができるため、治具無しで高圧シリンダをプランジャから抜くことができ、原料替えや洗浄時における高圧パッキンシール材の取り外しが容易になるとともに、プランジャへの損傷もなくなる。
【0023】
尚、取付けの際には、プランジャの分解最後端位置でパッキンを組み込んだ高圧シリンダを本体に取り付けた後、プランジャを前進させ、モータの推力で高圧パッキンシール材内径部にプランジャを挿入することで容易に装着することが可能となる。
【0024】
本発明の電動湿式微粒化装置はプランジャの往復運動によりシリンダ内に液体原料を吸入し加圧して吐出する。この場合、プランジャの往復運動は、プランジャの昇圧前進端位置と昇圧後退端位置との間の往復運動であり、駆動制御手段によってプランジャの位置制御を行っている。ここで、駆動制御手段と位置制御について説明する。駆動制御手段は、シーケンサとサーボアンプとを備え、シーケンサからサーボアンプへプランジャの目標位置を指令している。ここでいう目標位置とはプランジャの昇圧前進端位置、昇圧後退端位置、および分解最後端位置である。
【0025】
駆動制御手段は、プランジャの往復運動開始前にプランジャの昇圧後退端位置を原点として検知する原点位置検知センサにより位置制御の基準となる原点を認識し、指令した目標位置と高効率ネジ機構の回転軸の角度を検知する回転角度検知センサにより検知した現在位置とを比較することで、プランジャの位置制御をしている。このようにプランジャの位置制御を行うことにより、確実にシリンダ内に液体原料を吸入し加圧して吐出することができる。
【0026】
回転角度検知センサは、高効率ネジ機構の回転軸の角度を検知することにより、プランジャの現在位置を認識させることができる。回転角度検知センサとしては、エンコーダやレゾルバが挙げられるが、レゾルバの出力をシーケンサに接続し、組み合わせる事でアナログ出力が可能となり、ノイズに強く好ましい。
【0027】
また、本発明の電動湿式微粒化装置においては、噴射圧力はモータ負荷の電流値(電圧表示)から求めればよい。
【実施例】
【0028】
図1は本発明の電動湿式微粒化装置の一実施例の構成を示す構成図である。図1に示す通り、本実施例の電動湿式微粒化装置10は、駆動源として中空サーボモータ1と、この中空サーボモータ1の正逆回転運動を往復運動に変換する動力伝達機構として高効率ネジ機構のローラーネジ機構5と、このローラーネジ機構5により高圧シリンダ6内を往復運動するプランジャ8と、前記プランジャ8の往復運動を制御する駆動制御手段としてのシーケンサ14及びサーボアンプ15とを備え、前記プランジャ8の往復運動により液体吸引口11から高圧シリンダ6内に液体原料を吸入し加圧して吐出口12から吐出する。
【0029】
中空サーボモータ1の仕様は、駆動電圧100V,駆動電流15A,駆動出力1.5kWである。動力伝達機構として、ローラーネジ機構5を採用しているため、動力の伝達効率が高まり、100Vで駆動される中空サーボモータ1でも、高圧力の出力が得られる。
【0030】
詳しくは、ローラーネジ機構5は、同じ高効率ネジ機構のボールネジ機構と比較しても動力の伝達効率が高く、100Vで駆動される中空サーボモータ1でも、最高圧力が245MPaの高圧力の出力が得られる。尚、最高圧力が245MPaを必要としないのならば、ローラーネジ機構5に変えて同じ高効率ネジ機構であるボールネジ機構を採用しても良いことは言うまでもない。
【0031】
また、中空サーボモータ1は、ロータの中空部2内に配設された前記ネジ機構のナット部3を正逆回転させ、この中空部を貫通するネジシャフト部4を前記ナット部3の回転軸方向に前進・後退させるモータである。これにより、小型化のために力のロスが多い2軸をタイミングベルトで連結する機構を採用せずとも、設置面積を縮小させることができ、より力の伝達が良好で尚且つ小型化を達成することができた。
【0032】
本実施例の電動湿式微粒化装置10はプランジャ8の往復運動により高圧シリンダ6内に液体吸引口11よりシリンダ6内に液体原料を吸入し加圧して吐出口12から吐出するが、プランジャ8の往復運動はプランジャ8の先端が昇圧前進端位置と昇圧後退端位置との間を往復運動することにより行われる。なお、本実施例におけるプランジャ8の直径は8〜30mmとすることが好ましい。
【0033】
これは、ローラーネジ機構5の昇圧後退端位置のネジシャフト部4の後端部を、原点位置検知センサ9が認識し、操作盤16に連絡したシーケンサ14に検知信号を発し、この検知信号によって原点位置を確定し、ネジシャフト部4の回転角度を検知するレゾルバ13の回転角度を検知してプランジャ8の先端部の位置を検知する。プランジャ8の先端部の位置が予め定められた昇圧前進端位置に達したことを検知した場合に、電源17に連絡されたサーボアンプ15によって中空サーボモータ1の回転を逆転させる指令が発せられる。
【0034】
即ち、中空サーボモータ1の回転によりローラーネジ機構のナット部3を駆動し、ネジシャフト部4を高圧シリンダ6方向に前進させる。これにより、高圧シリンダ6内部の液体原料がプランジャ8によって加圧され、高圧シリンダ6の先端部の吐出口12から吐出される。プランジャ8の先端部の位置が、レゾルバ13の検知から昇圧前進端位置に達することが判断された場合に中空サーボモータ1の回転を停止させ、引き続き回転を反転させる。この時、プランジャ8の先端面は高圧シリンダ6の先端部面には到達しない手前の距離に設計されている。
【0035】
反転駆動された中空サーボモータ1によってナット部3が反回転する。これに伴い、高圧シリンダ6内をプランジャ8が後退する。これにより、高圧シリンダ6内に液体吸引口11より逆止弁を解除しつつ高圧シリンダ6内に液体原料が吸入される。プランジャ8の先端部の位置がレゾルバ13の検知によって昇圧後退端位置に達したと判断された場合、中空サーボモータ1の回転を停止させ、反転駆動から正転駆動に反転させる。
【0036】
上述のような加圧・吐出工程及び吸引工程とを繰り返す。詳しくは、昇圧・前進端から1ストローク分後退した位置の間で前進・後退を繰り返すことにより吸引・昇圧を行う。後退スピードは一定(約40mm/s)、前進スピードは操作盤16のタッチパネルにて設定・変更可能である。その前進スピードで昇圧圧力の設定を行う。
【0037】
本実施例においては、原料替えや洗浄時に、コンタミネーションを防止するために、高圧シリンダ6の後端部に配された高圧パッキンシール材7を取り外して、洗浄又は交換する必要がある。この際には、プランジャ8がレゾルバ13の検知によって分解最後端に達したと判断されて、中空サーボモータ1の駆動を終了させた状態で、分解時モードに移行させる。
【0038】
分解最後端部では、ネジシャフト部4の先端に接続されたプランジャ8の先端が高圧パッキンシール材7から外れる状態となる。この状態まで後退させた後に高圧シリンダ6を取り外し、洗浄又は交換する。これにより、容易に高圧シリンダ6を洗浄又は交換することが可能となる。
【0039】
図2図1の電動湿式微粒化装置の仕様による吸引・加圧吐出の繰り返しによる圧力波形の模式図である。図2に示す通り、昇圧後退端位置のプランジャ8を約1〜5秒で前進させ、245MPaの高圧力を得る。プランジャ8が昇圧前進端位置に到達するとプランジャ8の前進が停止され、約2秒を掛けて後退させる。このようにプランジャ8の前進・後退を繰り返して液体原料の解砕、分散を行う。
【0040】
本実施例の電動湿式微粒化装置の噴射圧力を中空サーボモータの負荷から測定できるか否かの検証を行った。図3図1の電動湿式微粒化装置の吸引・加圧吐出の繰り返しによる電圧出力値の計測結果を示す線図である。図3に示す通り、中空サーボモータ1の電圧出力値を検証すると、電圧がプラスの領域ではプランジャ8が後退している状態であり、電圧がマイナスの領域ではプランジャ8が前進している状態であることが検証され、図3においては、マイナス領域の電圧が最低の状態の時に、シリンダ6内の圧力が最高であることが検証された。
【0041】
したがって、噴射圧力はモータ負荷の電流値又は電圧値から求めればよいことが判る。図4図1の電動湿式微粒化装置の吸引・加圧吐出の繰り返しによる圧力値の計測結果を示す線図である。図4においては、プランジャ8が前進開始直後に最高圧(約124MPa)に達することが検証された。
【0042】
そこで、同一の電動湿式微粒化装置でプランジャ8の前進速度を変更させた場合の昇圧時最高圧力とその時の電流値を幾つか計測した結果が図5である。図5に示す通り、電動湿式微粒化装置の電流値と噴射圧力の関係は、一定の範囲で比例関係が得られていることが検証された。なお、プランジャ径やノズル径のそれぞれの組み合わせによっても特定の比例関係が得られた。
【0043】
また、図4で使用したプランジャ径の大きさよりも約80%小さいプランジャを使用した場合の圧力値の計測結果を図6に示す。この結果では、最高圧約185MPaを示している。このように、プランジャ径を変更することで、最高圧を適宜設定することが可能である。さらに、図6で使用したプランジャ径よりも更に85%小さいプランジャを使用すると、最高圧245MPaになる。
【0044】
なお、本発明は100V電源で使用できる電動湿式微粒化装置であるが、200V電源であっても同様に使用できる。
【符号の説明】
【0045】
1…中空サーボモータ、
2…中空部、
3…ナット部、
4…ネジシャフト部、
5…ローラーネジ機構(高効率ネジ機構)、
6…高圧シリンダ、
7…高圧パッキンシール材
8…プランジャ、
9…原点位置検知センサ、
10…電動湿式微粒化装置、
11…液体吸引口、
12…吐出口、
13…レゾルバ、
14…シーケンサ(駆動制御手段)、
15…サーボアンプ(駆動制御手段)、
16…操作盤、
17…電源、
18…ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6