特許第6045402号(P6045402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045402
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A47J27/00 103F
   A47J27/00 103H
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-44356(P2013-44356)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-171515(P2014-171515A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】秋山 昌美
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健三
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−072253(JP,A)
【文献】 特開2008−080097(JP,A)
【文献】 特開平09−215591(JP,A)
【文献】 特開2000−287832(JP,A)
【文献】 特開平09−140566(JP,A)
【文献】 特開平09−140565(JP,A)
【文献】 特開平11−076046(JP,A)
【文献】 特開平09−140564(JP,A)
【文献】 特開2009−219737(JP,A)
【文献】 特開平09−129361(JP,A)
【文献】 特開2009−45194(JP,A)
【文献】 特開2007−260323(JP,A)
【文献】 特開平11−276343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内釜収納部を有し、蓋体によって開閉される本体と、
前記内釜収納部に着脱自在に収納される内釜と、
高周波磁界を発生し、前記内釜を誘導加熱する加熱コイルと
前記内釜収納部の底部中央に配置され、前記内釜の温度を検出する温度センサーと、を備え、
前記内釜には、前記温度センサーが当接する部分の周りに、壁となる第1の段差部が形成されているとともに、外周面に、壁となる第2の段差部が形成されており、
前記第1の段差部と前記第2の段差部との間には、複数の凹凸面が設けられているとともに、前記凹凸面の形成部位を覆うように、前記温度センサーが当接する部分に孔が形成された断熱性を有する弾性体が設けられており、
前記弾性体の両端部が、それぞれ前記第1の段差部と前記第2の段差部とに当接していることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
内釜収納部を有し、蓋体によって開閉される本体と、
前記内釜収納部に着脱自在に収納される内釜と、
高周波磁界を発生し、前記内釜を誘導加熱する加熱コイルと、
前記内釜収納部の底部中央に配置され、前記内釜の温度を検出する温度センサーと、を備え、
前記内釜には、前記温度センサーが当接する部分の周りに、壁となる第1の段差部が形成されているとともに、外周面の上端に、フランジと前記フランジの外周縁に下方へ折り曲げられた折曲部が形成されており、
前記第1の段差部と前記折曲部との間には、複数の凹凸面が設けられているとともに、前記凹凸面の形成部位を覆うように、前記温度センサーが当接する部分に孔が形成された断熱性を有する弾性体が設けられており、
前記弾性体の両端部が、それぞれ前記第1の段差部と前記フランジの前記折曲部とに当接していることを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
前記弾性体は、前記内釜の外面に一体成型されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記弾性体は、シリコンゴムから構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記弾性体は、抗菌剤又は脱臭剤入シリコンゴムから構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器において、本体の内釜収納部の底部及び底部外周に加熱コイルを配置し、この加熱コイルには、駆動部によって高周波電力を供給して、内釜収納部に収容した内釜を誘導加熱するものがある。そしてこのようなものにおいて、内釜の磁性金属の外面に複数の凹凸面を設けて発熱面積を増加させ、凸部の発熱を強くして、凹凸面の温度差によって内釜の内側に細かい対流を発生させ、均一加熱を実現しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3477951号公報(請求項1、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内釜の磁性金属の外面に複数の凹凸面を設けて発熱面積を増加させたものにあっては、逆に放熱面積の増加にもつながる。そのため、保温時においては、内釜に蓄熱した熱が、凹凸面から放熱し易くなり、保温性能が悪くなっていた。
【0005】
また、内釜外面の凹凸面は、卓上に置いたときは安定性が悪く、かつ卓上を傷つける原因になっていた。
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、均一加熱を実現させるとともに、保温性能の向上と、卓上に置いたとき安定性が良く、卓上を傷つけることがない炊飯器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、内釜収納部を有し、蓋体によって開閉される本体と、前記内釜収納部に着脱自在に収納される内釜と、高周波磁界を発生し、前記内釜を誘導加熱する加熱コイルと、前記内釜収納部の底部中央に配置され、前記内釜の温度を検出する温度センサーと、を備え、前記内釜には、前記温度センサーが当接する部分の周りに、壁となる第1の段差部が形成されているとともに、外周面に、壁となる第2の段差部が形成されており、前記第1の段差部と前記第2の段差部との間には、複数の凹凸面が設けられているとともに、前記凹凸面の形成部位を覆うように、前記温度センサーが当接する部分に孔が形成された断熱性を有する弾性体が設けられており、前記弾性体の両端部が、それぞれ前記第1の段差部と前記第2の段差部とに当接しているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明において、加熱コイルに対向する内釜の外面に設けた複数の凹凸面は、発熱面積を増加させ、凸部の発熱を強くする。すなわち、磁力線は凹凸面の凸部に集中するので、凹凸面の凸部の発熱が強まり、凹凸面で温度差が生じ、内釜の内面に細かい対流が多数発生して調理物の対流が活発になり、均一加熱が得られる。また、凹凸面の形成部位を覆うように設けた断熱性を有する弾性体は、保温性能を向上させ、かつ卓上に置いたときの安定性を良くし、卓上を傷つけることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る炊飯器の全体構成を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る炊飯器の内釜と凹凸面と弾性体との関係を示す縦断面図である。
図3】本発明の実施形態2に係る炊飯器の内釜と凹凸面と弾性体との関係を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る炊飯器を説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。
なお、以下の説明において、理解を容易にするために位置を表す用語(例えば「上」、「下」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものではない。
【0011】
実施形態1.
図1は本発明の実施形態1に係る炊飯器の全体構成を示す縦断面図である。図2は本発明の実施形態1に係る炊飯器の内釜と凹凸面と弾性体との関係を示す縦断面図である。
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る炊飯器100は、本体51と、本体51にヒンジ12で結合されてラッチ16と解除ボタン17で開閉される蓋体52とを備えている。また、炊飯器100は、本体51内にコイル台となる内釜収納部53を備えており、内釜収納部53には、内釜1が着脱自在に収容される。内釜収納部53の底部の中心部の周りとその外周のコーナー部には、内釜1を誘導加熱するための加熱コイル2が配置されている。また、内釜収納部53には、その底部中央に、貫通穴が形成され、この貫通穴に、内釜1の下面に接触して内釜1の温度を検出する温度センサー54が出没自在に設置されている。加熱コイル2は、電源基板9に実装された駆動部によって高周波電力が供給され内釜1を誘導加熱する。すなわち、駆動部は、商用交流電源からの交流電圧を、図示しない整流部で一旦直流に変換し、その後、スイッチング素子のスイッチングにて高周波に変換し、この高周波電流を加熱コイル2に供給する。
【0012】
内釜1は、その上端にフランジ1aが形成され、このフランジ1aが内釜収納部53への収納時に、内釜収納部53の上端に載置されて支持されるようになっている。また、内釜1は、蓋体52の閉時に、蓋体52側に設けたパッキン55がフランジ1aの上面に押圧されることによって密閉されるようになっている。また、内釜1には、その加熱コイル2と対向する外面に、複数の凹凸面1cが設けられている。また、内釜1には、凹凸面1cの形成部位を覆うように、断熱性を有する例えばシリコンゴムから構成される弾性体20が一体成型されている。
【0013】
弾性体20は、例えば内釜1そのものを金型(雄型)として用いて一体成型されたものであり、凹凸面1cによって内釜1との密着面積が大きくなり、密着性が良い。また、弾性体20は、成型時に凹凸面1cの凹部内にシリコンゴムが流れ込むため、凹部の部位にへこみは発生せず、表面はフラットである。
【0014】
加熱コイル2は、既述したように、内釜1の底部の中心部の周りとその外周のコーナー部に対向させて配置されている。弾性体20は、図1及び図2に示すように、これら加熱コイル2に対向する内釜1の外面を覆う高さまで設けられている。内釜1の下面の中央部は、温度センサー54のセンサー当接部1bとなるため、弾性体20におけるセンサー当接部1bに対応する部位には弾性体20が除かれて、孔20aが形成されている。孔20aのエッジは、弾性体20の下端部20bを構成する。
【0015】
弾性体20は、その上端部20cと下端部20bとが、内釜1に設けた壁に当接している。すなわち、内釜1には、その下面の中心部の周りに、環状の壁となる第1の段差部1dが形成されているとともに、その外周面の高さ方向の中間部に、環状の壁となる第2の段差部1eが形成されており、第1の段差部1dと第2の段差部1eとの間が外面がその他の外面よりも内方に凹陥して形成されている。弾性体20は、第1の段差部1dと第2の段差部1eとの間の前記凹陥している部分に設けられており、その下端部20bが第1の段差部1dに当接し、その上端部20cが第2の段差部1eに当接している。
【0016】
次に、実施形態1に係る炊飯器100の動作を図1及び図2に基づき説明する。
【0017】
使用者の操作部からの設定に基づく炊飯指示等の加熱開始の指示がなされると、制御部は、駆動部の制御を開始する。駆動部は、商用交流電源からの交流電圧を、整流部で一旦直流に変換し、その後、スイッチング素子のスイッチングにて高周波に変換し、この高周波電流が加熱コイル2に供給される。加熱コイル2に高周波電流が流れると、加熱コイル2からは交番磁界が発生し、内釜1に磁束が与えられる。この磁束によって内釜1には渦電流が発生し、この渦電流と内釜1の電気抵抗によってジュール熱が発生し、内釜1が加熱され、炊飯が行われる。
【0018】
保温中においては、本体51の内釜収納部53の内周面と内釜1の外周面との間の隙間gから、内釜1の外面の熱は外部に放散されるが、内釜1の外面に設けた断熱性を有する弾性体20によって内釜1から外部への放熱が抑えられる。
【0019】
このように、本発明の実施形態1に係る炊飯器100は、少なくとも加熱コイル2に対向する内釜1の外面に複数の凹凸面1cを設けているので、発熱面積を増加させ、凸部の発熱を強くする。すなわち、磁力線は凹凸面1cの凸部に集中するので、凹凸面1cの凸部の発熱が強まり、凹凸面1cで温度差が生じ、内釜1の内面に細かい対流が多数発生して調理物の対流が活発になり、均一加熱が得られる。また、凹凸面1cの形成部位を覆うように設けたシリコンゴムから構成される弾性体20は、保温性能を向上させ、かつ卓上に置いたときの安定性を良くし、卓上を傷つけることがない。
【0020】
また、弾性体20は、内釜1の外面に一体成型されているので、凹凸面1cによって内釜1との密着面積が大きくなり、密着性が良い。また、弾性体20は、成型時に凹凸面1cの凹部内にシリコンゴムが流れ込むため、凹部の部位にへこみが発生せず、表面がフラットであり、卓上に置いたときの安定性が向上する。
【0021】
保温時には、断熱性を有する弾性体20によって、内釜1の外面からの放熱が抑えられ、本体51の内釜収納部53の内周面と内釜1の外周面との間の隙間gから、内釜1の外面の熱が外部に放散されるのが抑制される。このため、保温性能が向上し、省エネルギー化が図れる。
【0022】
また、内釜1を誤って落下させた場合、内釜1の外面に設けた弾性体20がクッションとなり、床面又は内釜1の損傷を防ぐことができる。このため、使い勝手が向上する。
【0023】
また、弾性体20は、その下端部20bと上端部20cとが、それぞれ内釜1の第1の段差部1dと第2の段差部1eとに当接しているので、弾性体20の両端部が擦れることがなく剥れにくくなる。
【0024】
実施形態2.
図3は本発明の実施形態2に係る炊飯器の内釜と凹凸面と弾性体との関係を示す縦断面図である。図中、前述の実施形態1と同一機能部分には同一符号を付してある。なお、説明にあたっては前述の図1を参照するものとする。
本発明の実施形態2に係る炊飯器100は、図3に示すように、内釜1の凹凸面1cの形成部位を含む内釜1の外面全体を、断熱性を有する例えばシリコンゴムから構成される弾性体20Aで一体に覆ったものである。なお、ここでも弾性体20Aにおけるセンサー当接部1bに対応する部位には弾性体20Aが除かれて、孔20aが形成されている。孔20aのエッジは、弾性体20の下端部20bを構成する。
【0025】
弾性体20Aは、その上端部20dと下端部20bとが、内釜1に設けた壁に当接している。すなわち、内釜1には、その下面の中心部の周りに、環状の壁となる第1の段差部1dが形成されているとともに、その外周面の上端に、フランジ1aとこのフランジ1aの外周縁に下方へ折り曲げられた壁となる折曲部1fが形成されている。弾性体20Aは、第1の段差部1dと折曲部1fとの間に設けられており、その下端部20bが第1の段差部1dに当接し、その上端部20dがフランジ1aの折曲部1fに当接している。それ以外の構成は前述の実施形態1のものと同様である。
【0026】
本発明の実施形態2に係る炊飯器100において、弾性体20Aは、内釜1の外面に一体成型されている。このため、凹凸面1cによって内釜1との密着面積が大きくなり、密着性が良い。また、弾性体20Aは、成型時に凹凸面1cの凹部内にシリコンゴムが流れ込むため、凹部の部位にへこみが発生せず、表面がフラットであり、卓上に置いたときの安定性が向上する。
【0027】
保温時には、断熱性を有する弾性体20Aによって、内釜1の外面からの放熱が抑えられ、本体51の内釜収納部53の内周面と内釜1の外周面との間の隙間gから、内釜1の外面の熱が外部に放散されるのが抑制される。このため、保温性能が向上し、省エネルギー化が図れる。
【0028】
また、内釜1を誤って落下させた場合、内釜1の外面に設けた弾性体20Aがクッションとなり、床面又は内釜1の損傷を防ぐことができる。このため、使い勝手が向上する。
【0029】
また、弾性体20Aは、その下端部20bと上端部20cとが、それぞれ内釜1の第1の段差部1dとフランジ1aの折曲部1fとに当接しているので、弾性体20Aの両端部が擦れることがなく剥れにくくなる。
【0030】
内釜1の外面の凹凸面1cは、「リング状」「ディンプル」など、如何様な形状も採用できる。また、凹凸面1cの加工は「ショットブラスト」「削り加工」など、種々の加工法が採用できる。いずれの場合も同様の効果が得られる。
【0031】
また、弾性体20、20Aとしてシリコンゴムを用いることで、耐熱性の確保が容易となり、長寿命化が図れる。
【0032】
また、弾性体20として抗菌剤又は脱臭剤入シリコンゴムを用いれば、使用中に発生する雑菌又は臭いの付着を防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 内釜、1a フランジ、1b センサー当接部、1c 凹凸面、1d 第1の段差部、1e 第2の段差部、1f 折曲部、2 加熱コイル、9 電源基板、12 ヒンジ、16 ラッチ、17 解除ボタン、20,20A 弾性体、20a 孔、20b 下端部、20c,20d 上端部、51 本体、52 蓋体、53 内釜収納部、54 温度センサー、55 パッキン、100 炊飯器、g 隙間。
図1
図2
図3