【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「マイクロ波プラズマ燃焼エンジンの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
気筒の燃焼室内に臨むアンテナを介して燃焼室内に放射される電界と、点火プラグの中心電極と接地電極との間に発生する火花放電とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し、混合気に着火する火花点火式内燃機関を制御するものであって、
燃料カット条件の成立に伴い燃料噴射を一時中止する燃料カットを実施することとし、
燃料カット中にアンテナから電界を放射したときに計測される反射波の大きさと、その燃料カットの実施前またはその燃料カットの終了後にアンテナから電界を放射したときに計測される反射波の大きさとを比較することを通じて、燃焼室内に電界を生成するシステムに故障が生じていないかどうかを判定することを特徴とする火花点火式内燃機関の制御装置。
燃料カット条件の成立後、実際に燃料カットを開始する前の時期に電界を放射した結果計測される反射波の大きさを、燃料カットの開始後に電界を放射した結果計測される反射波の大きさと比較する請求項1記載の火花点火式内燃機関の制御装置。
【背景技術】
【0002】
火花点火式内燃機関に実装されている点火装置では、イグナイタが消弧した際に点火コイルに発生する高電圧を点火プラグの中心電極に印加することで、点火プラグの中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起、点火する。
【0003】
近時では、気筒の燃焼室内にある混合気に確実に着火させ、安定した火炎を得ることができるようにするために、電界発生回路、換言すればマグネトロンが出力するマイクロ波若しくは高周波発振器が出力する高周波を燃焼室内に放射する着火法が試みられている(例えば、下記特許文献1または2を参照)。この着火法によれば、中心電極と接地電極との間の空隙にマイクロ波若しくは高周波電界が形成され、この電界中で発生したプラズマが成長して、火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きな火炎核を生成することができる。
【0004】
燃焼室内に放射されたマイクロ波若しくは高周波が内燃機関外に漏出すると、エンジンルームの内外にある電気・電子機器に電雑がもたらされ、これら機器の動作に悪影響を与える懸念がある。よって、まずはマイクロ波若しくは高周波電界の漏洩を検知する必要があるが、電界の漏洩を検知するための新たな装置を設置することはコストの騰貴を招く不利がある上、ただでさえ狭いエンジンルームのどこに当該装置を配置するのかというスペースの問題にも頭を悩ませることになる。
【0005】
加えて、マグネトロンまたは高周波発振器とアンテナとを接続する線路上に断線や短絡等が発生する可能性も予め考慮に入れておく必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。この内燃機関は、火花点火式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(
図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。
【0013】
本実施形態の内燃機関には、点火の際に気筒1の燃焼室内でプラズマを生成する目的で、燃焼室内に電界を発生させる電磁波放射部を付帯させている。本実施形態における電磁波放射部は、燃焼室内にマイクロ波電界を印可するものであり、車載バッテリを電源としてマイクロ波を発生させるマグネトロン14及びこれを制御する制御回路15と、マグネトロン14が発生させたマイクロ波を伝送する伝送回路16と、伝送回路16に接続したアンテナ17とを要素とする。
【0014】
制御回路15は、本実施形態の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0から出力される制御信号lを受け、この制御信号lに基づいてマグネトロン14が発振するマイクロ波の電力及びその発振時期を制御する。
【0015】
伝送回路16は、マイクロ波を伝搬させることのできる導波管や同軸ケーブル等を主体とする。この伝送回路16には、アイソレータ18及びパワーメータ19が付随している。アイソレータ18は、アンテナ17からの反射波を吸収してマグネトロン14を安定的に動作させるための保護機器であり、マグネトロン14とアンテナ17との間に介在している。
【0016】
アイソレータ18は、サーキュレータとダミーロードとからなる。サーキュレータは、マグネトロン14から発振される入射電力と、アンテナ17から返ってくる反射電力とを、導波管または同軸ケーブル等のT字部(または、分岐部)に設けたフェライト及び磁界の作用により分離する。そして、入射電量を殆ど損失なしにアンテナ17へと伝送する一方、反射電力をダミーロード側へと導入する。ダミーロードは、例えば反射電力を水等により吸収し熱として排出する水冷式のものである。ダミーロードは、導波管または同軸ケーブル等の終端に接続しており、余剰のマイクロ波エネルギを効率よく吸収する。
【0017】
パワーメータ19は、マグネトロン14からアンテナ17に向けて伝搬する入射電力と、アンテナ17から返ってくる反射電力とを分けて検出する。パワーメータ19は、導波管または同軸ケーブル等の中途に挿入してある。このパワーメータ19は、方向性結合器、同軸無反射終端器、マイクロ波用ダイオードであるクリスタルマウント、電流計、同軸ケーブル等を用いて構成される既知のものである。本実施形態では、双方向性結合器の進行波検出ポート及び反射波検出ポートの各々にクリスタルマウント、同軸無反射終端器及び電流計を接続することで入射電力及び反射電力の双方を同時に読み取り可能な態様のパワーメータ19を採用している。
【0018】
アンテナ17は、その一部が気筒1の燃焼室内に露出し、マグネトロン14から発振され伝送回路16を伝搬するマイクロ波を気筒1の燃焼室内に放射する。アンテナ17は、例えば
図2に示すように、燃焼室の天井の点火プラグ13付近に配設したモノポール型アンテナであり、先端部を燃焼室内に表出させ、その他の部分を絶縁体により被覆してある。アンテナ17の先端面は、燃焼室の内面と略面一とする。尤も、アンテナ17の形状及び配設位置は一意には限定されない。
【0019】
電界発生装置であるマグネトロン14が発振する高周波電圧は、通常、火花放電開始と略同時、火花放電開始直前または火花放電開始直後に、アンテナ17に印加する。これにより、燃焼室内における、点火プラグ12の周囲の空間に、マイクロ波電界が形成される。そして、マイクロ波電界と火花放電との相互作用を通じて、プラズマが発生し、このプラズマが火炎伝搬燃焼の始まりとなる大きなラジカルプラズマ火炎核を生成する。
【0020】
上記の自走、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じたイオンやラジカルが、電界の影響を受け振動、蛇行することで行路長が長くなり、周囲の水分子や窒素分子と衝突する回数が飛躍的に増加することによるものである。イオンやラジカルの衝突を受けた水分子や窒素分子は、OHラジカルやNラジカルになるとともに、イオンやラジカルの衝突を受けた周囲の気体も電離した状態、即ちプラズマ状態となることで、飛躍的に混合気への着火領域が大きくなり、火炎核も大きくなるのである。この結果、火花放電のみによる二次元的な着火から三次元的な着火に増幅され、燃焼が燃焼室内に急速に伝播、高い燃焼速度で拡大することとなる。
【0021】
内燃機関の気筒1に吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
【0022】
気筒1から排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
【0023】
内燃機関の運転制御を司るECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
【0024】
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、吸気カムシャフトまたは排気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号f、マグネトロン14から発される入射波の強度及びアンテナ17から返ってくる反射波の強度を検出するパワーメータ19から出力される入射波信号g及び反射波信号h等が入力される。
【0025】
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、マグネトロン14の制御回路15に対してマイクロ波発生指令信号l等を出力する。
【0026】
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気量を推算する。そして、それらエンジン回転数及び吸気量等に基づき、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、燃焼室内に電界を発生させるか否かやその電界の強度といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
【0027】
本実施形態のECU0は、所定の燃料カット条件が成立したときに、インジェクタ11からの燃料噴射を停止し、かつ点火プラグ12による火花点火を停止する燃料カットを実行する。ECU0は、少なくとも、アクセルペダルの踏込量が0または0に近い閾値以下となり、かつエンジン回転数が燃料カット許可回転数以上あることを以て、燃料カット条件が成立したものと判断する。
【0028】
因みに、燃料カット条件が成立したとしても、即時に燃料噴射を停止するわけではない。エンジントルクが比較的大きい段階で、急に燃料供給を遮断すると、エンジン回転数や車速がステップ的に急落するトルクショックが発生し、運転者を含む搭乗者に衝撃を感じさせる。このトルクショックを軽減するべく、燃料カット条件が成立した後、遅延時間の経過を待ってから、はじめて燃料噴射を停止する。この遅延時間中には、点火タイミングを遅角補正し、エンジントルクを積極的に低下させる。
【0029】
燃料カットの開始後、所定の燃料カット終了条件が成立したときには、燃料カットを終了することとし、燃料噴射及び火花点火を再開する。ECU0は、アクセルペダルの踏込量が閾値を上回った、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数まで低下した等のうちの何れかを以て、燃料カット終了条件が成立したものと判断する。
【0030】
また、ECU0は、所定のアイドルストップ条件が成立したときに、内燃機関のアイドル回転を停止させるアイドルストップを実行する。ECU0は、車速が所定値(例えば、10km/hないし13km/hの値)以下で、ブレーキペダルが踏み込まれており、冷却水温及びバッテリ電圧が十分高い、といった諸条件がおしなべて成立したことを以て、アイドルストップ条件が成立したものと判断する。
【0031】
燃料カットの開始後、燃料カット終了条件が成立することなくアイドルストップ条件が成立した暁には、燃料カットとアイドルストップとの間に燃料噴射の再開を挟むことなく、燃料カットからアイドルストップまでが一貫して連続することとなる。
【0032】
ECU0は、アイドルストップ条件の成立後、所定のアイドルストップ終了条件が成立したときに、内燃機関を再始動する。ECU0は、運転者がブレーキペダルから足を離した、逆にブレーキペダルがさらに強く踏み込まれた、アクセルペダルが踏み込まれた、アイドルストップ状態で所定時間(例えば、3分)が経過した等のうち何れかを以て、アイドルストップ終了条件が成立したものと判断する。
【0033】
ECU0は、内燃機関の始動(冷間始動であることもあれば、アイドリングストップからの復帰であることもある)時において、電動機(スタータモータまたはモータジェネレータ)に制御信号oを入力し、電動機によりクランクシャフトを回転させるクランキングを行う。クランキングは、内燃機関が初爆から連爆へと至り、エンジン回転数即ちクランクシャフトの回転速度が冷却水温等に応じて定まる判定値を超えたときに(完爆したものと見なして)終了する。
【0034】
しかして、本実施形態のECU0は、燃料カット条件が成立した際に、気筒1の燃焼室内に電界を生成するシステムに故障が発生していないかどうかの判定を行う。故障の種類としては、アンテナ17から気筒1の燃焼室内に放射したマイクロ波の内燃機関(気筒1、吸気通路3または排気通路4)外への漏出や、マグネトロン14とアンテナ17とを繋ぐ線路16の断線若しくは短絡、または当該線路16上に存在するアイソレータ18やパワーメータ19等の機器の異常等が挙げられる。
【0035】
図3に、システムの故障の有無の判定にあたりECU0が実行する処理の手順例を示している。ECU0は、燃料カット条件が成立(ステップS1)した後、実際に燃料噴射及び点火を停止する燃料カット(ステップS3)の実行を開始する前の時期において、アンテナ17からマイクロ波を放射し、その反射波の強度(特に、マグネトロン14からアンテナ17に向けて伝搬する入射電力に対する、アンテナ17から返ってくる反射電力の比)をパワーメータ19を介して計測する(ステップ2)。
【0036】
ステップS2の反射波の計測は、気筒1の燃焼室内で混合気が燃焼し、イオンまたはプラズマが発生している状況の下で行う。このときのマイクロ波の放射は、混合気への着火(火花点火とマイクロ波電界との相互作用)を目的としたものであってもよいし、混合気への着火とは別個独立したもの(着火は火花点火のみを以て行い、マイクロ波の放射は専ら反射波を計測するため)であってもよいが、当該気筒1の吸気バルブ及び排気バルブがともに閉止しているタイミング、即ち圧縮上死点近傍から膨張行程の範囲内で実行することが望ましい。
【0037】
加えて、ECU0は、燃料カット中にアンテナ17からマイクロ波を放射し、その反射波の強度をパワーメータ19を介して計測する(ステップ4)。ステップS4の反射波の計測は、気筒1の燃焼室内にイオンまたはプラズマが殆どまたは全く存在していない状況の下で行う。このときのマイクロ波の放射もまた、当該気筒1の吸気バルブ及び排気バルブがともに閉止しているタイミング、即ち圧縮上死点近傍から膨張行程の範囲内で実行することが望ましい。
【0038】
さらに、ECU0は、燃料カットを終了して燃料噴射及び点火を再開(ステップS5)した後にも、アンテナ17からマイクロ波を放射して、その反射波の強度をパワーメータ19を介して計測する(ステップ6)。ステップS5は、燃料カット中に燃料カット終了条件が成立したことに伴うものであることもあれば、アイドルストップした内燃機関の再始動後であることもある。何れにせよ、ステップS6は、上記ステップS2と全く同様である。
【0039】
そして、ECU0は、ステップS2にて計測した反射波の大きさと、ステップS4にて計測した反射波の大きさと、ステップS6にて計測した反射波の大きさとを相互に比較する。
【0040】
ステップS2やステップS6でアンテナ17から放射されたマイクロ波は、燃焼室内に存在するイオンまたはプラズマに吸収され、その電力が消費される。故に、マイクロ波は部分反射となるはずである。これに対し、ステップS4でアンテナ17から放射されたマイクロ波は、燃焼室内にイオンまたはプラズマが存在しないことにより、その電力が殆どまたは全く消費されない。故に、マイクロ波はほぼ全反射するはずである。
【0041】
従って、ステップS4にて計測した反射波と、ステップS2及び/またはS6にて計測した反射波とを比べて、前者が後者よりも所定以上大きい(または、前者の後者に対する比率が所定以上大きい)ならば(ステップS7)、マグネトロン14が出力するマイクロ波が正常に伝送回路16を伝搬して気筒1の燃焼室内に放射されている、つまりシステムに故障はないと判定することができる(ステップS8)。
【0042】
さもなくば、システムに何らかの故障が発生しているものと考えられる。とりわけ、ステップS2にて計測した反射波、ステップS4にて計測した反射波、ステップS6にて計測した反射波の全てが所定の高位閾値よりも大きい(ステップS9)、即ち燃焼室内における燃焼の有無によらず反射波が大きい場合には、マグネトロン14からアンテナ17までの途中経路で反射が起こっており(この反射は、伝送回路16の断線若しくは短絡、または伝送回路16上に存在するアイソレータ18やパワーメータ19等の機器の異常等に起因すると想像される)、気筒1の燃焼室内にマイクロ波が十分に放射されていないと判定することができる(ステップS10)。
【0043】
あるいは、ステップS2にて計測した反射波、ステップS4にて計測した反射波、ステップS6にて計測した反射波の全てが所定の低位閾値よりも小さい(ステップS11)、即ち燃焼室内における燃焼の有無によらず反射波が小さい場合には、アンテナ17から放射されたマイクロ波電界が内燃機関外に漏洩していると判定することができる(ステップS12)。
【0044】
燃焼室内にマイクロ波電界を形成するためのシステムに故障が存在していることを検知したECU0は、その判定結果に係る故障の種別(途中経路での反射(ステップS10)、漏洩(ステップS12)、またはそれ以外の故障)を識別する情報(ダイアグノーシスコード)をメモリに記憶して保持し(ステップS13)、事後の検査や修理の作業における原因究明及び修繕箇所の探索の助けとする。
【0045】
並びに、ECU0は、システムに故障が存在している旨を、運転者の視聴覚に訴えかける態様にて報知する(ステップS15)。ステップS15では、例えば、車両のコックピット内に設置された警告灯(エンジンチェックランプ)を点灯させたり、ディスプレイに表示させたり、ブザーまたはスピーカから警告音を音声出力させたりする。
【0046】
さらに、以降の運転における、気筒1の燃焼室内にマイクロ波電界を放射する着火を禁止する(ステップS14)。即ち、以降の運転ではアンテナ17からマイクロ波を放射せず、点火プラグ12による火花放電のみを以て気筒1に充填された混合気に着火して、混合気を燃焼させる。
【0047】
本実施形態では、気筒1の燃焼室内に臨むアンテナ17を介して燃焼室内に放射される電界と、点火プラグ12の中心電極と接地電極との間に発生する火花放電とを相互作用させて燃焼室内にプラズマを生成し、混合気に着火する火花点火式内燃機関を制御するものであって、燃料カット条件の成立に伴い燃料噴射を一時中止する燃料カットを実施することとし、燃料カット中(ステップS4)にアンテナ17から電界を放射したときに計測される反射波の大きさと、その燃料カットの実施前(ステップS2)またはその燃料カットの終了後(ステップS6)にアンテナ17から電界を放射したときに計測される反射波の大きさとを比較することを通じて、燃焼室内に電界を生成するシステムに故障が生じていないかどうかを判定することを特徴とする火花点火式内燃機関の制御装置0を構成した。
【0048】
本実施形態によれば、伝送回路16の断線やマイクロ波電界の内燃機関外への漏洩等を検知するための専用の装置を実装することなく、低コストでシステムの故障の発生を検知することが可能となる。
【0049】
加えて、燃料カット条件の成立後、実際に燃料カットを開始する直前の時期(ステップS2)に電界を放射した結果計測される反射波の大きさを、その直後の燃料カット中(ステップS4)に電界を放射した結果計測される反射波の大きさと比較することで、システムの故障の有無を判定するようにしているため、気筒1の燃焼室内温度や吸気温、吸気湿度、大気圧、燃料温度その他の条件をほぼ同等とした上で双方の反射波を比較することができる。従って、故障を見逃したり、故障がないにもかかわらず故障であると誤判断したりするおそれが低下する。また、燃料カット条件の成立時は、そもそもアクセル開度が小さく、燃料噴射量ひいては機関出力が小さいため、燃料カットの実行開始前の時期にアンテナ17から電磁波を放射したとしても、機関出力が大きく変動することはない。電磁波の放射及び反射波の計測は、燃料カットの実行開始直前の時期及びその後の燃料カット中に短時間だけ行えばよく、速やかに故障判定を完遂できる上、電力消費も小さく済む。
【0050】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、ステップS7の分岐判断が真となる(故障なしと判定する)条件として、ステップS4にて計測した反射波が所定の高位閾値よりも大きい、及び/または、ステップS2及び/またはS6にて計測した反射波が所定の低位閾値よりも小さいことを追加してもよい。
【0051】
内燃機関の気筒1の燃焼室内でプラズマを生成する目的で電界を発生させる電界発生装置は、マグネトロン14には限定されない。電界発生装置として、高周波の交流電圧を出力してアンテナに印加する交流電圧発生回路や、高周波の脈流電圧を出力してアンテナに印加する脈流電圧発生回路等を採用してもよい。
【0052】
電界発生装置として脈流電圧発生回路を採用する場合、当該脈流電圧発生回路は周期的に電圧が変化する直流電圧を発生させるものであればよく、その波形も任意であってよい。脈流電圧は、基準電圧(0Vであることがある)から一定周期で一定電圧まで変動するパルス電圧、交流電圧を半波整流した電圧、交流電圧に直流バイアスを加味した電圧等をおしなべて含む。電界発生装置が発振する高周波電圧は、周波数が200kHzないし3000kHz程度、振幅が3kVp−pないし10kVp−p程度であることが好ましい。
【0053】
上記実施形態における内燃機関は、点火プラグ12とは別に電解放射用のアンテナ17を実装しているものであったが、電界発生装置が出力するマイクロ波若しくは高周波を点火プラグ12の中心電極に印加し、その中心電極から気筒1の燃焼室内に電界を放射する、即ち点火プラグ12の中心電極をアンテナとして利用するものであってもよい。
【0054】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。