【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1の排水スリーブ設置用治具の(a)正面図(b)側面図(C)要部A-A断面図である。また、
図2は、本発明の実施例1の排水スリーブ設置用治具の取付手順を示す図である。
図3は、本発明の実施例1の排水スリーブ設置用治具の反割パイプへの取付状態を示す斜視図である。
【0018】
排水スリーブ設置用治具1は、塩化ビニル製で円筒状のパイプを断面が半円の円弧状となるように半分に切断した形状の半割パイプからなる排水スリーブ2をコンパネ3で四方を囲んで形成される型枠で区画されたところに設置する際に使用する排水スリーブ設置用治具である。なお、
図2等において排水スリーブ2の開口端接触面122と反対側の長手方向に延在する部分は図示を省略している。排水スリーブ設置用治具1は、湾曲部11とフランジ部12と係合部14と貫通孔13とを備えるものであり、これらは一体として樹脂材料の金型成形で製造できる。排水スリーブ設置用治具1は、
図2に示されるとおり、生コンクリートを流し込むための型枠を形成するコンパネ3すなわち型枠のコンクリート型枠用合板の表面に対して立設して固定し、排水スリーブ設置用治具1の外側から、排水スリーブを形成する排水スリーブ2を嵌合して使用するものである。
【0019】
湾曲部11は、半円形で、外周側に排水スリーブ2の内周面22へ当接可能である円弧面を有する。円弧面の曲率は排水スリーブ2の内周面22の曲率と概ね一致する曲率としてある。本実施例においては、外周全体が排水スリーブ2の内周面22に当接する内周接触円弧面である。また、フランジ部12側から離れるにしたがって、径が小さくなるテーパ形状になっている。本実施例では湾曲部11とフランジ部12のなす角は、排水スリーブ2載置側で91°であるが、これに限られない。本実施例において、湾曲部11の幅は20mm程度であるがこれに限定されない。
【0020】
フランジ部12は、湾曲部11の一方の端面側に湾曲部11の径方向外方へ半円扇形の鍔状に突設されている。フランジ部12では、湾曲部11側が排水スリーブ2の開口端部21に当接可能な開口端接触面122となっている。また、フランジ部12では、開口端接触面122と反対側が型枠であるコンパネ3の表面に当接可能な型枠接触面121となっている。湾曲部11とフランジ部12と、排水スリーブ設置用治具1に固定されたコンパネ3とにより、排水スリーブ2の開口端部21が密閉される。本実施例において、フランジ部12の厚みは3mm程度であるがこれに限定されない。
【0021】
貫通孔13は、コンパネ3の表面に型枠接触面121を接触させた状態で固定するための食い込み部材(図示しない)を取付するための穴である。貫通孔13は湾曲部11の内側面左右2か所に設けられている。本実施例の排水スリーブ設置用治具1は、湾曲部11の開口側両端を結ぶ支柱15aと支柱15aと垂直であって湾曲部11の中央部と支柱15aの中央部とを結ぶ支柱15bを有し、貫通孔13が湾曲部11の内側面の他に支柱15bにも設けられているが、支柱15bのみに貫通孔13があってもよい。貫通孔13は、湾曲部11の内周接触円弧面よりも内側に設けてある。
【0022】
係合部14は、湾曲部11のフランジ部12側の端面にフランジ部12と平行にリブ状に立設されている。また、係合部14は、湾曲部11へ排水スリーブ2を当接させた後、湾曲部11の外周面23を係止可能とする爪を開口端接触面122側に有する。開口端接触面122側の爪の上部は湾曲部11方向に裾広がりの傾斜があり、爪の突出した部分の下面は平らになっている。なお、
図1(b)の側面図においては、係合部14の図示を省略してある。本実施例において、係合部14のリブ部分の厚みは1mm程度であるがこれに限定されない。
【0023】
係合部14は本実施例では2か所設けてあるが、中央部だけでもよいし、3か所以上設けてもよい。係合部14は、弾性を有しているので、フランジ部12の型枠接触面121がコンパネ3の表面に密着した状態で排水スリーブ2を挿入するときにも、爪の上部傾斜が排水スリーブ2開口端に押されると反って挿入しやすくすることができる。係合部14で固定されるため、フランジ部12と開口端部21との間に隙間が形成されることを防止できる。
【0024】
係合部14は、また、排水スリーブ2を挿入して湾曲部11に当接して嵌合した後には浮き上がって外れないように、湾曲部11の外周面から前記爪までの長さが排水スリーブ2の厚みより僅かに長くなっており、排水スリーブ2を排水スリーブ設置用治具1に嵌めた後に型枠内に生コンクリートを流し込んだ際に排水スリーブ2が排水スリーブ設置用治具1から外れてしまうことを防止できる。
【0025】
本実施例の排水スリーブ設置用治具1は、コンパネ3を、高層ビルなどの建設現場や家屋の最下層における、土間スラブなどの排水スリーブ設置場所に型枠を立設して区画した床面に排水スリーブ2となる半割パイプを、コンパネ3の向かい合う面に排水スリーブ2の両端が接するように、かつ排水スリーブ2の開口部が床面に当接するように載置し、型枠内に生コンクリートを打設し、型枠内に流し込まれた生コンクリートが固まった後で型枠を取り外して形成する。生コンクリートの他、流動性があって静置して一定時間経過後に固化する他の固化剤でもよい。型枠には固化剤が固まった後、剥離可能な表面を有するものを用いる。コンクリートが固化した後、排水スリーブ2はコンクリートの中に埋設され、型枠のコンパネ3を取り外すことで排水スリーブ2の流水出入口が確保される。排水スリーブ2を使って集められた排水は揚水ポンプなどで外部に放出できる。
【0026】
まずは対向する2枚のコンパネ3の表面それぞれに排水スリーブ設置用治具1を型枠接触面121がコンパネ3に接触するようにして排水スリーブ2を設けたい位置に置いて、貫通孔13に食込み部材を差し込んでコンパネ3までねじ込み等により貫入して排水スリーブ設置用治具1をコンパネ3に固定する。食込み部材としては、釘が好適に用いられるが、ネジ等を用いることも可能である。排水スリーブ設置用治具1を取り付けた2枚のコンパネ3を排水スリーブ2の流入口となる側に平行に置き、他の複数のコンパネを排水スリーブ2の長手方向となる側等に立設してすべてのコンパネで排水スリーブ2を取り囲むようにして、生コンクリートを打設するための型枠を形成する。床面にねじ止めする必要がないため、床面が硬質でも設置可能となり、壁面に沿って或いは壁面近傍に設置することも可能となる。
【0027】
あとは、排水スリーブ2を排水スリーブ設置用治具1に、開口端部21が開口端接触面122に接した状態で内周面22が湾曲部11の内周接触円弧面に密着するように嵌め込むだけで型枠内に生コンクリートを流し込んで固め、型枠を取り外すだけで、容易にコンクリート内に埋設された排水スリーブの設置が完成し排水トンネルを形成する。係合部14の爪で排水スリーブ2が固定されるため、生コンクリートを型枠内に流し込む際の流動圧力によって排水スリーブ2の位置が所定の位置からずれてしまうおそれがない。排水スリーブ2の両端とコンパネ3との間はフランジ部12で密着されているため、生コンクリートが排水スリーブ2内に流入して内部にコンクリートが残留して固まってしまうおそれがない。
【0028】
型枠の壁であるコンパネ3を外す際には、食込み部材によってコンパネ3側に固定された排水スリーブ設置用治具1を一体として取り外せるので、ハンマー等で叩き割る等の作業を要しない。本実施例においては、湾曲部11はテーパ状になっており、すなわち排水スリーブ2の内周面22から徐々に離れる方向に傾斜しているので、コンパネ3を外す時に係合部14の爪に引っかからず無理な力を与えなくても、極めて容易に外れる。コンパネ3を外すと排水スリーブ2内は完全な空洞で張り出しなどが残らないため排水の障害となることがない。
【0029】
本実施例によれば、排水スリーブ設置時の位置ずれを防止し、排水スリーブ内への生コンクリートの流入を阻止するとともに、排水スリーブ形成後に簡易に排水スリーブから取り外すことを可能とする。本実施例によれば、ピットに溜まった水の水抜きのための排水トンネルを手間なく美しい仕上がりで設置することができる。
【実施例2】
【0030】
図4は、本発明の実施例2の排水スリーブ設置用治具の(a)正面図(b)要部A´-A´面断面図である。
図5は、本発明の実施例2の排水スリーブ設置用治具の斜視図である。実施例2の排水スリーブ設置用治具1´は湾曲部の形状以外実施例1の排水スリーブ設置用治具1の構造と一致するので、説明は省略する(
図4及び
図5において、実施例1と一致する部分については同一の番号を付する)。実施例2の湾曲部11´は、
図4及び
図5に示すとおり、周方向に連続して形成することを要せず、排水スリーブ2の径に対応させた内周接触円弧面111´を他の部分と分断して湾曲部11´を形成することができる。内周接触円弧面111´の方が他の部分の半径より大きい。排水スリーブ2に用いられる塩化ビニル製の半割パイプは、VP管とVU管があり、径にも75、100、150、200といった種類がある。実施例1の金型成形に使用される金型の湾曲部11部分を、使用する排水スリーブ2のうち最小の径となるようにしておき、湾曲部11´の内周接触円弧面111´に対応する部分だけ独立したコマとしておくことにより、排水スリーブ2の径に対応してコマの位置を変更することができ、同一の金型を用いて、様々な半割パイプに装着可能な排水スリーブ設置用治具を成形することができる。金型作成にはコストがかかるため、コマの位置変更だけで様々な径用の排水スリーブ設置用治具が製造できることによってコストダウンを実現できる。なお、半割パイプの代わりに円筒状のパイプで排水スリーブを設ける場合、2つの排水スリーブ設置用治具を用いて設置することもできる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々と変形実施が可能である。