特許第6045425号(P6045425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045425
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】プリテンショナ機構
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/46 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   B60R22/46 142
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-77760(P2013-77760)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-201154(P2014-201154A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大久保 真一
(72)【発明者】
【氏名】堀 誠司
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/065656(WO,A1)
【文献】 特開昭56−023972(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員を拘束可能にされたウェビングと、
食込部が設けられ、回転されることで前記ウェビングによる乗員の拘束力が増加される回転部材と、
移動されることで前記食込部の食込みにより前記回転部材を回転させると共に、前記食込部が食込開始可能位置において食込みを開始可能にされる移動部材と、
前記回転部材の食込開始可能位置より回転方向側に配置され、前記移動部材の前記回転部材と共に回転される部分に係合して前記回転部材から前記移動部材が離脱される係合手段と、
を備えたプリテンショナ機構。
【請求項2】
前記移動部材が移動されることで前記移動部材に前記係合手段が係合する請求項1記載のプリテンショナ機構。
【請求項3】
前記移動部材の前記回転部材と共に回転される部分の前記回転部材とは反対側の縁より前記回転部材側に前記係合手段を配置した請求項1又は請求項2記載のプリテンショナ機構。
【請求項4】
前記回転部材の回転方向に向かうに従い前記回転部材の回転径方向外側へ向かう方向に前記係合手段が前記移動部材を案内する請求項1〜請求項3の何れか1項記載のプリテンショナ機構。
【請求項5】
前記回転部材の回転中心軸線より前記移動部材の移動方向側に前記係合手段を配置した請求項1〜請求項4の何れか1項記載のプリテンショナ機構。
【請求項6】
前記係合手段の前記移動部材への係合開始部分を前記係合手段の前記移動部材への係合開始端における前記回転部材の回転接線方向に延伸させた請求項1〜請求項5の何れか1項記載のプリテンショナ機構。
【請求項7】
前記係合手段が前記移動部材を案内して前記移動部材が排出される排出部を備えた請求項1〜請求項6の何れか1項記載のプリテンショナ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動部材が移動されることで回転部材が回転されてウェビングによる乗員の拘束力が増加されるプリテンショナ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のプリテンショナ装置では、力伝達要素が移動されることで、力伝達要素に駆動輪のタービン翼又は歯が食込むことにより、力伝達要素が駆動輪を回転させて、ベルトスプールに安全ベルトが巻取られる。
【0003】
ここで、このプリテンショナ装置では、力伝達要素の駆動輪を回転させた部分が継続して駆動輪と共に回転される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006031359号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、移動部材の回転部材を回転させた部分が継続して回転部材と共に回転されることを抑制できるプリテンショナ機構を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のプリテンショナ機構は、車両の乗員を拘束可能にされたウェビングと、食込部が設けられ、回転されることで前記ウェビングによる乗員の拘束力が増加される回転部材と、移動されることで前記食込部の食込みにより前記回転部材を回転させると共に、前記食込部が食込開始可能位置において食込みを開始可能にされる移動部材と、前記回転部材の食込開始可能位置より回転方向側に配置され、前記移動部材の前記回転部材と共に回転される部分に係合して前記回転部材から前記移動部材が離脱される係合手段と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載のプリテンショナ機構は、請求項1に記載のプリテンショナ機構において、前記移動部材が移動されることで前記移動部材に前記係合手段が係合する。
【0008】
請求項3に記載のプリテンショナ機構は、請求項1又は請求項2に記載のプリテンショナ機構において、前記移動部材の前記回転部材と共に回転される部分の前記回転部材とは反対側の縁より前記回転部材側に前記係合手段を配置している。
【0009】
請求項4に記載のプリテンショナ機構は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のプリテンショナ機構において、前記回転部材の回転方向に向かうに従い前記回転部材の回転径方向外側へ向かう方向に前記係合手段が前記移動部材を案内する。
【0010】
請求項5に記載のプリテンショナ機構は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のプリテンショナ機構において、前記回転部材の回転中心軸線より前記移動部材の移動方向側に前記係合手段を配置している。
【0011】
請求項6に記載のプリテンショナ機構は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のプリテンショナ機構において、前記係合手段の前記移動部材への係合開始部分を前記係合手段の前記移動部材への係合開始端における前記回転部材の回転接線方向に延伸させている。
【0012】
請求項7に記載のプリテンショナ機構は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のプリテンショナ機構において、前記係合手段が前記移動部材を案内して前記移動部材が排出される排出部を備えている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載のプリテンショナ機構では、移動部材が移動されることで、回転部材の食込部の移動部材への食込みにより、移動部材が回転部材を回転させて、ウェビングによる乗員の拘束力が増加される。
【0014】
ここで、移動部材の回転部材と共に回転される部分に係合手段が係合して、回転部材から移動部材が離脱される。このため、移動部材の回転部材を回転させた部分が継続して回転部材と共に回転されることを抑制できる。
【0015】
請求項2に記載のプリテンショナ機構では、移動部材が移動されることで、移動部材に係合手段が係合する。このため、移動部材の移動力によって移動部材に係合手段が係合でき、構成を簡単にできる。
【0016】
請求項3に記載のプリテンショナ機構では、移動部材の回転部材と共に回転される部分の回転部材とは反対側の縁より回転部材側に係合手段が配置されている。このため、移動部材が回転部材と共に回転されることで係合手段に係合でき、移動部材が係合手段に容易に係合できる。
【0017】
請求項4に記載のプリテンショナ機構では、回転部材の回転方向に向かうに従い回転部材の回転径方向外側へ向かう方向に係合手段が移動部材を案内する。このため、移動部材の回転部材と共に回転される部分が係合手段によって回転部材の回転径方向外側に案内されることで、回転部材から移動部材を効果的に離脱できる。
【0018】
請求項5に記載のプリテンショナ機構では、一般に、移動部材が移動により回転部材を回転させる力は、移動部材の回転部材回転中心軸線より移動方向とは反対側の部分が移動部材の回転部材回転中心軸線より移動方向側の部分に比し大きい。
【0019】
ここで、回転部材の回転中心軸線より移動部材の移動方向側に係合手段が配置されている。このため、移動部材が移動により回転部材を回転させる力を係合手段が減少させることを抑制できる。
【0020】
請求項6に記載のプリテンショナ機構では、係合手段の移動部材への係合開始部分が係合手段の移動部材への係合開始端における回転部材の回転接線方向に延伸されている。このため、移動部材の回転部材と共に回転される部分に係合手段が容易に係合できる。
【0021】
請求項7に記載のプリテンショナ機構では、係合手段が移動部材を案内して、移動部材が排出部に排出される。このため、移動部材を適切に排出部に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態におけるウェビング巻取装置を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るプリテンショナ機構を示す一側方から見た側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るプリテンショナ機構の主要部を示す下方から見た断面図(図2の3−3線断面図)である。
図4】本発明の第2実施形態に係るプリテンショナ機構の主要部を示す下方から見た断面図(図2の3−3線位置断面図)である。
図5】本発明の第3実施形態に係るプリテンショナ機構の主要部を示す一側方から見た側面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係るプリテンショナ機構の主要部を示す一側方から見た側面図である。
図7】(A)〜(C)は、本発明の第1実施形態〜第4実施形態に係るプリテンショナ機構における係合部の第1変形例〜第3変形例をそれぞれ示す断面図である。
図8】本発明の第5実施形態に係るプリテンショナ機構を示す一側方から見た側面図である。
図9】本発明の第5実施形態に係るプリテンショナ機構の主要部を示す下方から見た断面図(図8の9−9線断面図)である。
図10】(A)〜(E)は、本発明の第1実施形態〜第5実施形態に係るプリテンショナ機構におけるピニオン歯の第1変形例〜第5変形例をそれぞれ示す平面図(ピニオンの回転方向に沿って見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るプリテンショナ機構20が適用されたウェビング巻取装置10が正面図にて示されている。なお、図面では、車幅方向外側を矢印OUTで示し、車両前後方向一側を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示す。
【0024】
図1に示す如く、本実施形態におけるウェビング巻取装置10には、支持部材としての金属製で断面U字形板状のフレーム12が設けられており、フレーム12には、背面側の背板12Aと、一側方の脚板12Bと、他側方の脚板12Cと、が設けられている。ウェビング巻取装置10は、フレーム12の背板12Aにおいて、車両の骨格部材としての矩形筒状のピラー(図示省略)内に固定されており、これにより、ウェビング巻取装置10が車両に設置されて、ウェビング巻取装置10の正面側、一側方及び上方が、それぞれ車幅方向外側、車両前後方向一側(車両前側又は車両後側)及び車両上方へ向けられている。
【0025】
フレーム12の脚板12Bと脚板12Cとの間には、略円柱状の巻取軸14が回転可能に支持されている。巻取軸14には、長尺帯状のウェビング16(ベルト)が基端側から巻取られており、ウェビング16は、フレーム12から上側へ延出されて、車両のシート(図示省略)に着座した乗員に装着可能にされている。また、巻取軸14が巻取方向(図2の矢印Aの方向)へ回転されることで、ウェビング16が巻取軸14に巻取られると共に、ウェビング16が巻取軸14から引出されることで、巻取軸14が引出方向(図2の矢印Bの方向)へ回転される。
【0026】
フレーム12の脚板12C外側には、規制手段(ロック手段)としてのロック機構18が設置されており、ウェビング16の巻取軸14からの急激な引出し時や車両の急減速時には、ロック機構18が作動されることで、ロック機構18が巻取軸14の引出方向への回転を規制(ロック)する(巻取軸14の巻取方向への回転は許容される)。
【0027】
フレーム12の脚板12C外側には、付勢手段としてのぜんまいばね(図示省略)が設置されており、ぜんまいばねは、巻取軸14に連結されて、巻取軸14に巻取方向への付勢力を作用させている。
【0028】
図1図3に示す如く、フレーム12の脚板12B外側には、プリテンショナ機構20が設置されている。
【0029】
プリテンショナ機構20には、金属製で略直方体形箱状のカバー22が設けられており、カバー22は、フレーム12の脚板12B外側に固定されている。
【0030】
カバー22内には、回転部材としてのピニオン24が設けられており、ピニオン24は、巻取軸14に同軸上に連結されて、巻取軸14と一体回転可能にされている。ピニオン24の外周全体には、食込部としてのピニオン歯24Aが突出形成されており、ピニオン歯24Aは、三角形柱状にされて、先端が尖った形状にされている。
【0031】
カバー22内には、筒部材としての金属製で略円筒状のシリンダ26が固定されており、シリンダ26は、長手方向(軸方向)が逆J字状に湾曲されて、基端側部分(下部)がカバー22から下側に延出されている。シリンダ26の先端部26Aは、ピニオン24の背板12A側に配置されており、シリンダ26の先端部26Aの長手方向は、上下方向に延伸されて、ピニオン24の軸方向(回転軸方向)に垂直に配置されている。シリンダ26の先端部26Aには、ピニオン24側において、開口28が形成されており、開口28は、シリンダ26の先端部26A内をピニオン24側に開放させている。
【0032】
シリンダ26の基端(下端)内には、移動手段としての略円柱状のガスジェネレータ30が挿入かつ固定されており、ガスジェネレータ30は、シリンダ26の基端を閉塞している。ガスジェネレータ30は、車両の制御装置32に電気的に接続されており、車両の衝突時(車両の衝突が検出された際、車両の緊急時である所定の機会)には、制御装置32の制御によって、プリテンショナ機構20が作動されることで、ガスジェネレータ30が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ26の基端内に供給する。
【0033】
シリンダ26内には、移動部材としての円柱状のラック34が設けられている。ラック34の材料は、ナイロン(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はエラストマ等の軟質樹脂にされており、ラック34は、ピニオン24のピニオン歯24Aが食込み可能(特に突刺さり可能)にされると共に、径方向へ湾曲変形可能にされている。ラック34は、シリンダ26内に嵌合された状態で、基端をガスジェネレータ30の近傍に配置されると共に、先端をシリンダ26の開口28近傍に配置されており、ラック34の長手方向(軸方向)は、シリンダ26の長手方向に沿って逆J字状に湾曲されている。
【0034】
ラック34の径寸法(図3のL)は、ピニオン歯24Aのピニオン24軸方向における寸法(図3のT)に比し大きくされると共に、カバー22における脚板12C側の一側壁22Aと脚板12Cとは反対側の他側壁22Bとのピニオン24周辺でのピニオン24軸方向における離間寸法に対し同一にされている(僅かに大きく又は僅かに小さくされてもよい)。
【0035】
カバー22内には、ピニオン24の下側において、排出部としての直方体形箱状の排出箱36が形成されており、排出箱36の上面は、全体が開口されると共に、シリンダ26の先端面が配置されている。
【0036】
カバー22の一側壁22A及び他側壁22Bには、カバー22内側の内面において、それぞれ係合手段としての断面矩形凹状で長尺の係合部38が所定数(本実施形態では5個)形成されており、係合部38は、シリンダ26の先端部26Aの中心軸線(少なくともシリンダ26の先端部26A内のピニオン24とは反対側の縁)よりピニオン24側に配置されている。係合部38は、ピニオン24の中心軸線(回転中心軸線)と排出箱36との間の上下方向範囲に配置されており、係合部38は、上端がピニオン24の回転外周の内側範囲に配置されると共に、下端面が排出箱36の上面に配置されている。
【0037】
係合部38は、長手方向が上端におけるピニオン24の回転接線方向に直線状に延伸されており、係合部38は、ピニオン24の巻取方向へ向かうに従いピニオン24の回転径方向外側へ向かう方向に延伸されている。本実施形態では、シリンダ26の先端部26A側の各2個の係合部38が上下方向に延伸されると共に、シリンダ26の先端部26Aとは反対側の各3個の係合部38が下方へ向かうに従いシリンダ26の先端部26Aとは反対側へ向かう方向に延伸されている。
【0038】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0039】
以上の構成のウェビング巻取装置10では、巻取軸14からウェビング16が引出されて、車両のシートに着座した乗員にウェビング16が装着された際に、ぜんまいばねが巻取軸14に巻取方向への付勢力を作用させることで、ウェビング16に巻取軸14への巻取力が作用されて、ウェビング16の緩みが除去される。
【0040】
車両の衝突時には、ウェビング16が巻取軸14から急激に引出され又は車両が急減速されて、ロック機構18が作動されることで、巻取軸14の引出方向への回転が規制される。これにより、ウェビング16の巻取軸14からの引出しが規制されて、ウェビング16が乗員を拘束する。
【0041】
さらに、車両の衝突時には、制御装置32の制御によって、プリテンショナ機構20が作動されることで、ガスジェネレータ30が高圧のガスを瞬時に発生してシリンダ26の基端内に供給する。このため、ラック34が当該ガスの圧力(移動力)を基端側(シリンダ26の基端側)から受けることで、ラック34が長手方向一側(基端側から先端側へ向かう方向)に移動(スライド)される。これにより、ラック34がシリンダ26先端部26Aの開口28からピニオン24側に露出されると共に、ラック34のピニオン24とは反対側への移動がシリンダ26先端部26Aのピニオン24とは反対側の周壁によって規制されて、ラック34にピニオン24のピニオン歯24Aが食込む(特に突刺さる)ことで、ラック34の長手方向一側(下側)への移動によってピニオン24が巻取方向へ回転されて、巻取軸14が巻取方向へ回転される。このため、巻取軸14にウェビング16が巻取られて、ウェビング16による乗員の拘束力が増加される。
【0042】
また、ラック34が長尺にされることで、ラック34の長手方向一側への移動によってピニオン24が一周を越えて回転可能にされている。さらに、ラック34のピニオン24を巻取方向へ回転させた後の部分は、下側の排出箱36内に排出(収容)される。
【0043】
ここで、カバー22の一側壁22A及び他側壁22Bの内面における係合部38が、ラック34のピニオン24と共に回転される部分に係合して、ラック34の当該回転部分を案内することで、ピニオン24からラック34が離脱される。このため、ラック34のピニオン24を回転させた部分が継続してピニオン24と共に回転されることを抑制できる。これにより、ラック34の長手方向一側への移動によってピニオン24が一周を越えて回転される場合でも、ラック34のピニオン24と共に一周を越えて回転される部分がラック34のシリンダ26開口28から露出された部分へのピニオン歯24Aの食込みを制限することを抑制でき、ピニオン24の一周を越える回転が制限されることを抑制できる。しかも、ラック34のピニオン24と共に継続して回転される部分がカバー22の一側壁22A及び他側壁22Bに対し摺動してピニオン24の回転力が減少されることを抑制でき、巻取軸14によるウェビング16の巻取力が減少されることを抑制できる。
【0044】
さらに、係合部38がピニオン24の巻取方向に向かうに従いピニオン24の回転径方向外側へ向かう方向に延伸されているため、係合部38がラック34のピニオン24と共に回転される部分をピニオン24の巻取方向に向かうに従いピニオン24の回転径方向外側へ向かう方向に案内する。このため、ラック34の当該回転部分が係合部38によってピニオン24の回転径方向外側に案内されることで、ピニオン24からラック34を効果的に離脱できる。
【0045】
また、ラック34のピニオン24と共に回転される部分では、ラック34がピニオン歯24Aの食込みにより拡径されて凹状の係合部38に侵入する(食込む)ことで、係合部38がラック34に係合する。このため、係合部38がラック34に効果的に係合でき、ピニオン24からラック34を効果的に離脱できる。
【0046】
さらに、係合部38がシリンダ26の先端部26Aの中心軸線(シリンダ26先端部26A内のラック34の中心軸線)よりピニオン24側に配置されている。このため、ラック34がピニオン24と共に回転されることで係合部38に係合でき、ラック34が係合部38に容易に係合できて、ピニオン24からラック34を容易に離脱できる。
【0047】
しかも、係合部38の上端(係合開始端部)がピニオン24の回転接線方向に延伸されている。このため、ラック34のピニオン24と共に回転される部分に係合部38が容易に係合でき、ピニオン24からラック34を容易に離脱できる。
【0048】
さらに、ラック34が長手方向一側への移動によりピニオン24を巻取方向へ回転させる力は、ラック34のピニオン24中心軸線より上側部分(移動方向とは反対側の部分)がラック34のピニオン24中心軸線より下側部分(移動方向側の部分)に比し大幅に大きい。ここで、ピニオン24の中心軸線より下側に係合部38が配置されている。このため、ラック34が長手方向一側への移動によりピニオン24を巻取方向へ回転させる力を係合部38が減少させることを抑制できる。
【0049】
また、ラック34が移動されることで、ラック34に係合部38が係合する。このため、ラック34の移動力によってラック34に係合部38が係合でき、構成を簡単にできる。
【0050】
さらに、係合部38が排出箱36の上面まで延伸されているため、係合部38がラック34を案内することで、ラック34が排出箱36内に排出される。このため、ラック34を適切に排出箱36内に排出できる。
【0051】
また、ラック34の径寸法(図3のL)がピニオン歯24Aのピニオン24軸方向における寸法(図3のT)に比し大きくされている。このため、ラック34がピニオン歯24Aの食込みによりせん断される際には、ラック34のピニオン歯24Aによる最大せん断長さを、ピニオン歯24Aのピニオン24軸方向における寸法(図3のT)とピニオン歯24Aのラック34へのピニオン24回転径方向における最大食込み寸法(図3のM)の2倍との合計(T+2M)にできて、長くでき、ラック34のせん断強度を大きくできる。これにより、ラック34の長手方向一側への移動力を大きくしても、ラック34がピニオン歯24Aによりせん断される際に、ラック34にピニオン歯24Aによるせん断部分に連続する亀裂が発生してラック34が破壊されることを抑制でき、ラック34の移動力のピニオン24への伝達ロスを小さくできて、巻取軸14によるウェビング16の巻取力を大きくできる。
【0052】
[第2実施形態]
図4には、本発明の第2実施形態におけるウェビング巻取装置50のプリテンショナ機構20の主要部が下方から見た断面図(図2の3−3線位置断面図)にて示されている。
【0053】
本実施形態におけるウェビング巻取装置50は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0054】
図4に示す如く、本実施形態におけるウェビング巻取装置50のプリテンショナ機構20では、カバー22の一側壁22A及び他側壁22Bの内面における係合部38が断面矩形凸状にされている。
【0055】
ここで、プリテンショナ機構20が作動された際には、ラック34のピニオン24と共に回転される部分に凸状の係合部38が侵入する(食込む)ことで、係合部38がラック34に係合する。
【0056】
このため、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0057】
[第3実施形態]
図5には、本発明の第3実施形態におけるウェビング巻取装置60のプリテンショナ機構20の主要部が一側方から見た側面図にて示されている。
【0058】
本実施形態におけるウェビング巻取装置60は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0059】
図5に示す如く、本実施形態におけるウェビング巻取装置60のプリテンショナ機構20では、カバー22の一側壁22A及び他側壁22Bの内面における係合部38(本実施形態ではシリンダ26の先端部26Aとは反対側の各3個の係合部38)が、長手方向において、ピニオン24の中心軸線とは反対側へ凸状に湾曲されている(曲げられている)。
【0060】
ここで、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、係合部38の長手方向がピニオン24の中心軸線とは反対側へ凸状に湾曲されている。このため、プリテンショナ機構20が作動されて、当該係合部38がラック34のピニオン24と共に回転される部分に係合した際には、当該係合部38がラック34の当該回転部分を円滑に案内でき、ピニオン24からラック34を容易に離脱できると共に、ラック34を排出箱36内に容易に排出できる。
【0062】
なお、本実施形態では、シリンダ26の先端部26Aとは反対側の各3個の係合部38の長手方向をピニオン24の中心軸線とは反対側へ凸状に湾曲させた。しかしながら、これと共に、又は、これに代えて、シリンダ26の先端部26A側の各2個の係合部38の長手方向をピニオン24の中心軸線とは反対側へ凸状に湾曲させてもよい。
【0063】
[第4実施形態]
図6には、本発明の第4実施形態におけるウェビング巻取装置70のプリテンショナ機構20の主要部が一側方から見た側面図にて示されている。
【0064】
本実施形態におけるウェビング巻取装置70は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0065】
図6に示す如く、本実施形態におけるウェビング巻取装置70のプリテンショナ機構20では、カバー22の一側壁22A及び他側壁22Bの内面における係合部38(本実施形態ではシリンダ26の先端部26Aとは反対側の各3個の係合部38)が、長手方向において、ピニオン24の中心軸線側へ凸状に湾曲されている(曲げられている)。
【0066】
ここで、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、係合部38の長手方向がピニオン24の中心軸線側へ凸状に湾曲されている。このため、プリテンショナ機構20が作動されて、当該係合部38がラック34のピニオン24と共に回転される部分に係合した際には、当該係合部38がラック34の当該回転部分を円滑に案内でき、ピニオン24からラック34を容易に離脱できると共に、ラック34を排出箱36内に容易に排出できる。
【0068】
なお、本実施形態では、シリンダ26の先端部26Aとは反対側の各3個の係合部38の長手方向をピニオン24の中心軸線側へ凸状に湾曲させた。しかしながら、これと共に、又は、これに代えて、シリンダ26の先端部26A側の各2個の係合部38の長手方向をピニオン24の中心軸線側へ凸状に湾曲させてもよい。
【0069】
また、上記第3実施形態及び第4実施形態では、係合部38を凹状にした。しかしながら、上記第2実施形態と同様に、係合部38を凸状にしてもよい。
【0070】
さらに、上記第1実施形態〜第4実施形態では、係合部38を断面矩形状にした。しかしながら、図7(A)に示す如く、凹状又は凸状の係合部38を断面三角形状にしてもよく、図7(B)に示す如く、凹状又は凸状の係合部38を断面半円状(断面半楕円状でもよい)にしてもよく、図7(C)に示す如く、凹状又は凸状の係合部38を断面台形状にしてもよく、また、凹状又は凸状の係合部38を断面が五角形以上の多角形状にしてもよい。
【0071】
[第5実施形態]
図8には、本発明の第5実施形態におけるウェビング巻取装置80のプリテンショナ機構20が一側方から見た側面図にて示されている。
【0072】
本実施形態におけるウェビング巻取装置80は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0073】
図8に示す如く、本実施形態におけるウェビング巻取装置80のプリテンショナ機構20では、上記第1実施形態における係合部38が設けられていない。
【0074】
図8及び図9に示す如く、カバー22の一側壁22A及び他側壁22Bには、カバー22内側の内面において、それぞれ係合手段としての長尺矩形板状の係合板82が固定されており、係合板82は、シリンダ26の先端部26Aの中心軸線とピニオン24の中心軸線との間に配置されている。係合板82は、長手方向がピニオン24の中心軸線と上下方向同一位置の部分(係合開始部分)におけるピニオン24の回転接線方向に直線状に延伸されており、係合板82は、上下方向に延伸されている。これにより、係合板82のピニオン24中心軸線より下側の部分は、ピニオン24の巻取方向へ向かうに従いピニオン24の回転径方向外側へ向かう方向に延伸されている。
【0075】
係合板82は、シリンダ26の開口28上端と排出箱36との間に配置されて、シリンダ26の先端部26A内でのラック34の移動軌跡にピニオン24の中心軸線側において隣設されており、係合板82の下端面は、排出箱36の上面に配置されている。
【0076】
ここで、プリテンショナ機構20が作動された際には、係合板82のピニオン24中心軸線より下側の部分が、ラック34のピニオン24と共に回転される部分に係合(当接)して、ラック34の当該回転部分を案内することで、ピニオン24からラック34が離脱される。
【0077】
このため、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0078】
なお、本実施形態において、上記第3実施形態及び第4実施形態の係合部38と同様に、係合板82の長手方向をピニオン24の中心軸線とは反対側又はピニオン24の中心軸線側へ凸状に湾曲させてもよい(曲げてよい)。
【0079】
また、上記第1実施形態〜第5実施形態では、ピニオン24のピニオン歯24Aを三角形柱状にして、ピニオン歯24Aの先端を平面視(ピニオン回転方向視)で直線状にした。しかしながら、図10(A)に示す如く、ピニオン歯24Aの先端を平面視で波状にしてもよく、図10(B)に示す如く、ピニオン歯24Aの先端に平面視三角形状(平面視多角形状であればよい)の凸部90を設けてもよく、図10(C)に示す如く、ピニオン歯24Aの先端に平面視三角形状(平面視多角形状であればよい)の凹部92を設けてもよく、図10(D)に示す如く、ピニオン歯24Aの先端に平面視半円状(平面視半楕円状でもよい)の凹部94を設けてもよく、図10(E)に示す如く、ピニオン歯24Aの先端に平面視半円状(平面視半楕円状でもよい)の凸部96を設けてもよい。これにより、ラック34の径寸法(図3のL)がピニオン歯24Aのピニオン24軸方向における寸法(図3のT)に対し同一又は小さくされる場合でも、上記第1実施形態〜第5実施形態と同様に、ラック34がピニオン歯24Aの食込みによりせん断される際には、ラック34のピニオン歯24Aによる最大せん断長さを長くでき、ラック34のせん断強度を大きくできる。
【0080】
さらに、上記第1実施形態〜第5実施形態では、ラック34を円柱状にした。しかしながら、ラック34は柱状(例えば矩形柱状)であればよい。
【0081】
また、上記第1実施形態〜第5実施形態では、ラック34を1部品により構成した。しかしながら、ラック34を長手方向において複数の柱状(例えば円柱状)の分割体に分割して構成してもよい。この場合、プリテンショナ機構20が作動されて、特にラック34の分割体間にピニオン24のピニオン歯24Aが食込むことで、分割体が収縮変形されてピニオン24のピニオン歯24A間に挟持されても、係合部38又は係合板82が、当該分割体に係合して、当該分割体を案内することで、ピニオン24から当該分割体を離脱できる。
【0082】
さらに、上記第1実施形態〜第5実施形態では、本発明の排出部を箱状の排出箱36にした。しかしながら、本発明の排出部を筒状(例えば円筒状)の排出筒にしてもよい。この場合でも、係合部38又は係合板82によってラック34を排出筒に案内して排出できる。
【0083】
また、本発明は、シートベルト装置におけるセレクタブルフォースリミッタの切替機構や、ラッププリテンショナ機構や、バックルプリテンショナ機構のような移動部材の移動により作動する作動機構に適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
16 ウェビング
20 プリテンショナ機構
24 ピニオン(回転部材)
24A ピニオン歯(食込部)
34 ラック(移動部材)
36 排出箱(排出部)
38 係合部(係合手段)
82 係合板(係合手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10